説明

過酸化チタンゲルによる有機染料および有機汚染物質の除去

高分子を使用しない過酸化チタンゲルを含む、すなわち、高ゼータ電位の溶液から発色団/染料/有機汚染物質を除去するワンステップの方法を開示する。発色団の濃度が、95〜100%まで除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野:]
本発明は、過酸化チタンゲルを用いての溶液からの有機染料および有機汚染物質の除去方法に関する。また、本発明は、その除去方法に再生利用できる過酸化チタンゲルの再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[背景と先行技術:]
繊維および染料産業は、両者とも汚染産業の最たるものに数えられている。廃液中の被着色成分や着色寄与成分の濃度はごくわずかであるかもしれず、常に毒性があるとも限らないとはいえ、廃液の強烈な受け入れがたい色ゆえに、公衆の大きな不安をかき立てる原因となっている。これらの発色団を処理しようと、物理学的、化学的、生物学的、そして物理化学的な方法が試みられてきたが、どれも一長一短あった。今では、それらを処理しようとするアプローチからそれらを除去しようとするアプローチへと方法論が変化しているようである。物理学的、化学的、生物学的および物理化学的方法による除去に関して考慮すべき要素としては、費用、有効性、色、広い空間領域の必要性、使いやすさ、濃縮スラッジの生成、その再循環の際に問題となる大量の溶解固形物、もしくは環境内でのその安全な廃棄処分などが挙げられる。
【0003】
半導体材料(たとえば、二酸化チタン)を用いた新規な光触媒の研究は、学術上および商業上の目的のため、着実にすすめられてきている。特に、二酸化チタン光触媒は、深刻な環境問題を引き起こす汚染物質を除去する手段として用いられてきた。
【0004】
R. S. Sonawana, M. K. Dongare による共著論文「日光下でのフェノールの光触媒分解のためのAu/Ti02薄膜のゾル−ゲル合成(Sol-gel synthesis of Au/Ti02 thin films for photo catalytic degradation of phenol in sunlight)」(Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 243 (2006) 68-76)に、有機物の光触媒分解に用いられ、繰り返しの再利用が可能なAu/TiO薄膜の調製について開示されている。
【0005】
水中の、アリザリンS(Alizarin S)、クロセインオレンジG(Crocein Orange G)、メチルレッド(Methyl Red)、コンゴーレッド(Congo Red)、メチレンブルー(Methylene Blue)などの各種染料や他の有機汚染物質の、UV照射チタニアによる光触媒分解が、Hinda Lachheb, Eric Puzenat, Ammar Houas による共著論文「UV照射チタニアによる、水中の各種染料の光触媒分解(Photocatalytic degradation of various types of dyes in water by UV-irradiated titania)」(Applied Catalysis B: Environmental Volume 39, Issue 1, 2002年11月8日、75〜90頁)に開示されている。
【0006】
Fang Han, Venkata Subba らによる共著論文「廃水処理における有機染料の分解のための調整された二酸化チタン光触媒:概説(Tailored titanium dioxide photocatalysts for the degradation of organic dyes in watstewater treatment: A review)」(applied Catalysis A: General Volume 359, Issues 1-2, 2009年5月15日、25〜40頁)には、TiO2または修飾TiO2を含む産業廃水流出物からの有機汚染物質および有機染料の光触媒分解について開示されている。
【0007】
R. S. Sonawane, S. G. Hedge, M. K. Dongare による共著論文「ゾル−ゲル浸漬被覆法による酸化チタン(IV)薄膜光触媒の調製(Preparation of titanium (IV) oxide thin film photo catalyst by sol-gel dip coating)」(Materials Chemistry and Physics 77 (2002) 744-750)には、サリチル酸およびメチレンブルーの光触媒分解に用いられたTiO2膜が開示されている。
【0008】
Nor Hafizah およびIis Sopyan らによる、International Journal of Photoenergy Volume 2009, Article ID 962783, 8頁 doi:10.1155/2009/962783に掲載された共著論文「ゾル−ゲル法によるナノサイズのTiO光触媒粉体:加水分解度の粉体特性への影響(Nanosized TiO2 photocatalyst powder via sol-gel method: effect of hydrolysis degree on powder properties)」には、フェノールおよび他の有機汚染物質の分解のため、メタノール中に、前駆物質としてチタンテトライソプロポキシド(TPT)を用いたゾル−ゲル法により、ナノサイズのTiO2粉体を合成することが開示されている。
【0009】
Behnajady M. A. らによる共著論文「ガラス板上の固定化したTiOによる筒状連続流通光反応器内のアゾ染料の光触媒分解(Photocatalytic degradation of an azo dye in a tubular continuous-flow photoreactor with immobilized TiO2 on glass plates)」(Chemical engineering journal ISSN 1385-8947, 2007, vol. 127, no 1-3, pp. 167-176)には、ガラス板上の固定化したTiO2による筒状連続流通光反応器内の水溶液中のC.I.アシッドレッド27(AR27)、酸クラスのアニオンモノアゾ染料の光触媒分解について開示されている。除去効率は、光の強度が上昇するにつれ向上する一方で、流量が増加すると減少することが観察されている。光反応器の最終出口の流れにおいては染料の完全な無機物化がみられた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
二酸化チタンを光触媒に使用することにともなうデメリットは、紫外(UV)領域の短波長の光が必要となることである。また、TiO2が吸収するエネルギーは太陽スペクトルの3〜5%に過ぎない。これらの理由により、可視光下であっても、光触媒活性をもつことが可能な光触媒材料を開発するために純粋な二酸化チタンを修飾することが引き続き必要とされている。
【0011】
さらに、先行技術の方法で達成される分子の修飾は、複雑で、モノマー濃度と、二分子縮合率と、加水分解率に依存する官能性とに左右される。また、TiO2は、薄膜として、または高分子ゲル粉体で用いられる。光触媒活性は、空隙率が低く表面積が小さいことによって低くなることが観察されている。
【0012】
また、有機物の光触媒分解のためのTiO2膜は、効率と汎用性に難点がある。薄膜は100%TiO2からなるが、本発明ではゲルとして、きわめて低濃度のTiの塩で調製した。さらに、Ti膜は、本明細書で例示している本発明のゲルに対し、多様な染料を処理できる能力において制約がある。
【0013】
したがって、当該技術分野において、発色団の除去のための簡易な方法を提供する必要性が依然として存在する。また、その方法は、発色団を除去した後の処理廃液が無色に見えるようなものであるべきである。その方法から生成するスラッジは、時間およびエネルギーの資源を必要とする複雑な工程をさらに経ることなく簡単に分解可能なものとなるのが好ましい。さらに、フェノール、メタノール、ホルマリン、ヘキサミンなどの他の汚染物質を廃液から除去することも、環境保護規制に適合させるための難しい課題なので、本発明の発色団を除去する方法が、同時にこれらを除去ものであれば、明らかにアドバンテージとなるだろう。
【0014】
[発明の目的:]
本発明の主たる目的は、過酸化チタンゲルを用いて溶液から有機染料および有機汚染物質を除去する方法を開発することである。
【0015】
本発明の他の目的は、高分子を使用しない修飾過酸化チタンゲルを用いて有機染料および有機汚染物質を分離するための効率的で経済的な方法を開発することである。
【0016】
本発明の別の目的は、環境汚染物質の分離のために使用された過酸化チタンゲルを再生および再利用することができるようにする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
[発明の概要:]
したがって、本発明は、過酸化チタンゲルを用いて溶液から有機染料および有機汚染物質を除去する方法であって、発色団、染料または有機汚染物質からなる溶液を室温で過酸化チタンゲルと混合し、5〜25分間放置しておくことで透明でほとんど無色の溶液を得る方法を提供する。
【0018】
一つの側面において、粘度が高くゼータ電位が高い過酸化チタンゲルに、任意選択的に金属または金属酸化物がドープされる。本発明の過酸化チタンゲルは、高分子を使用しないものである。ゲル中のチタン塩は、0.001〜0.005重量%の範囲である。0.1〜4重量%の範囲で金属がドープされており、ドープされる金属の粒径は、10nm未満である。
【0019】
他の側面において、過酸化チタンゲルは、自然のまたは人工の光源からの光に曝すこと、物理的な処理を施すこと、化学的な処理を施すこと、次亜塩素酸または市販の漂白剤のような酸化剤で処理することなどから選択されるが、それらに限定されない方法によって、発色団/染料/有機汚染物質を分解することにより回収可能である。
【0020】
本発明の方法の別の側面において、管状器具にゲルを入れて染料溶液を通過させることで、下流側で透明な溶液を回収する。
【0021】
本発明の一実施形態において、過酸化チタンゲルを用いて溶液から有機染料および/または有機汚染物質を除去するワンステップの方法であって、
a)ゲル/染料溶液の体積比1:5〜1:20の範囲の比率で溶液中に過酸化チタンゲルを添加するステップと、
b)ステップ(a)で得られた混合物を、25〜35℃の範囲の温度で、勢いよく振り混ぜるステップと、
c)ステップ(b)で得られた混合物を5〜25分間放置して、染料または有機汚染物質を吸着させた過酸化チタンゲルと透明で無色な上澄みを生成した後、当該混合物を濾過して染料または有機汚染物質を吸着させた過酸化チタンゲルを得るステップと、
d)ステップ(c)で得られた染料または有機汚染物質を吸着させた過酸化チタンゲルを、水が入ったビーカーに移すステップと、
e)前記染料または有機汚染物質を吸着させた過酸化チタンゲルから、吸着した染料または有機汚染物質を分解して、再循環および再利用できる過酸化チタンゲルを回収するステップと
を含む方法。
【0022】
本発明の他の実施形態において、前記溶液は、有機染料および/または有機汚染物質と、水、アセトン、塩素化処理した溶剤およびアルコール類からなる群から選択された溶剤とを含む。
【0023】
本発明の他の実施形態において、ステップ(a)で使用する過酸化チタンゲルは、ゼータ電位が−54〜−25mVの範囲であり、粘度が12000〜15000cpsの範囲である。
【0024】
本発明の他の実施形態において、ステップ(a)で使用する過酸化チタンゲルは、任意選択的に、0.1〜4重量%の範囲で、Au、Ag、ニッケル、銅、鉄、モリブデン、バナジウム、タングステンおよび白金からなる群から選択された貴金属および遷移金属がドープされている。
【0025】
本発明の他の実施形態において、使用される有機染料または有機汚染物質は、メチレンブルー、メチルオレンジ、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、ローダミンB、ブロモフェノールブルー、パラベース溶液、マゼンタ溶液、インク、ホルムアルデヒド溶液、合成ヘキサミン廃水、フェノールからなる群から選択される。
【0026】
本発明の他の実施形態において、任意選択的に、ステップ(a)で使用する過酸化チタンゲルを管状器具に入れて、前記染料溶液にその中を通過させることで、透明で無色の上澄みを得る。
【0027】
本発明の他の実施形態において、前記した有機染料および有機汚染物質の濃度は、95〜100%まで除去される。
【0028】
本発明の他の実施形態において、前記した、ステップ(f)における染料または有機汚染物質を吸着させた過酸化チタンゲルからの有機染料および有機汚染物質の分解は、酸化剤とともにまたは酸化剤なしで、日光下に曝すことによってなされる。
【0029】
本発明の他の実施形態において、使用される酸化剤は、過酸化水素および次亜塩素ナトリウムからなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[発明の詳細な説明]
本発明の「過酸化チタンゲル(Titanium peroxide gel)」は、本文書の目的のため、「縮合/重合後に高いゼータ電位をもつ粘性ゼリー状構造を形成するチタン塩の溶液」と定義されるものとする。
【0031】
本発明の「有機染料(Organic dye)」は、その色に寄与する成分である発色団を含む。
【0032】
本発明は、任意選択的に修飾/ドーピングがなされる、高い粘性と高いゼータ電位を有する過酸化チタンゲルを、産業水性廃液から、発色団/染料/有機汚染物質をそれらのゲルに吸着させることによって除去するために使用する方法に関連する。ゲルは、水溶液に不溶であり、回収が可能で、何度も再利用が可能である。
【0033】
本発明は、
a)任意選択的にドーピングがなされた、高分子を使用しない過酸化チタンゲルを、発色団/染料/有機汚染物質と混合し、その混合物を5〜25分間放置しておくことによって前記発色団/染料/有機汚染物質を前記ゲルに吸着させるステップと、
b)前記吸着されたゲル−発色団、ゲル−染料またはゲル−汚染物質を分離して、透明で無色の上澄みを得るステップと、
c)前記分離したゲル−発色団、ゲル−染料またはゲル−汚染物質を分解して、再循環および再利用が可能なゲルを回収するステップと
からなる諸ステップにより、発色団/染料/有機汚染物質を除去するためのワンポットの方法に関連する。
【0034】
代替的に、有機染料または汚染物質の分離のための方法は、任意選択的にドーピングがなされた高分子を使用しない過酸化チタンゲルを含むガラス管状器具を介して、発色団/染料/有機汚染物質の溶液を、5ml/分の速度で溶離して、透明で無色の溶液を得るステップを含む。この方法で用いられる過酸化チタンゲルは、発色団/染料/有機汚染物質を分解することによって回収することができる。
【0035】
本発明の方法ステップ(a)および(b)は、発色団/染料/有機汚染物質の溶液と、任意選択的にドーピングがなされた過酸化チタンゲルとを混合し、よく攪拌して、5〜25分間放置しておくことを含み、それによって前記発色団/染料/有機汚染物質が前記ゲルに吸着される。落ち着くと、吸着したゲル−発色団/染料/有機汚染物質が分離し、透明で無色の上澄みが得られる。上澄み中の汚染物質の含有量は、その光吸収をUV−VIS分光光度計を用いて665、612、290および245nmの波長で計測することにより測定される。
【0036】
ゲル−発色団/染料/有機汚染物質は、濾過やデカンテーション(傾瀉)などから選択された方法により、処理後の溶液から分離される。
【0037】
溶液中の発色団の濃度は、10−3〜10−6モル濃度であり、本発明の過酸化チタンゲルでの処理後には、ほとんどゼロになる。
【0038】
本発明の方法は、ステップ(c)がゲルの再循環及び再利用のための再生を含む。したがって、濾過した後に得られる吸着汚染物質を含有する過酸化チタンゲルを水で洗浄した後でその汚染物質を分解する。分解は、自然のまたは人工の光源からの光に曝すこと、物理的な処理を施すこと、化学的な処理を施すこと、次亜塩素酸または市販の漂白剤のような酸化剤で処理することなどから選択されるが、それらに限定されない方法によって達成することができる。
【0039】
そして、再生されたゲルは、ステップ(a)に記載した発色団/染料/有機汚染物質の除去にあたり、その効率がほとんど変わらない状態で再循環および再利用が可能である。
【0040】
さらに、本発明の方法に用いられる過酸化チタンゲルは、前駆物質としてのチタンアルコキシドおよび過酸化水素から合成することができる。したがって、脱イオン化水(DI water)を用いて、チタンブトキシドを加水分解して水酸化チタンを沈殿させた後に、過酸化水素を加え、黄色の過酸化チタンゾルを生成し、さらに希釈して、4〜5cpという非常に粘度の低い過酸化チタンを得る。約48時間の間放置しておくと、12000〜16000cpsの範囲の高い粘度で、−54〜−25mVの範囲の高いゼータ電位の、高分子を使用しない過酸化チタンゲルが得られる。ゲル中のチタン塩の濃度は、0.001〜0.005重量%の範囲である。
【0041】
本発明の発色団は、産業廃液、有機発色団、被着色化合物、染料、アゾ染料などから選択されるがそれらに限定されない。染料は、メチレンブルー、メチルオレンジ、ベーシックバイオレット、パラベース、ブロモフェノールブルーおよび天然インクの群から選択される。有機汚染物質は、ヘキサミン、廃水、メタノールおよびフェノールから選択されるが、これらに限定されない。
【0042】
染料溶液を形成するために用いられる溶剤は、水、アセトン、塩素系溶剤、アルコール類などから選択されるが、これらに限定されない。
【0043】
チタン(IV)ラジカル錯体は、300〜500nmの領域で強い吸収バンドを有するので、ゲル上に吸着された発色団および有機汚染物質の分解を促進する光触媒プロセスを起こす。
【0044】
本発明では、過酸化物の光触媒活性は、ゲル中に金属または金属酸化物をドープすることによって、さらに強化することができる。金属は、Au、Ag、Ni、Cu、Pt等の貴金属から選択される。鉄、モリブデン、バナジウム、タングステンも、そのまままたは塩の形態で、ドープ剤として使用される。ドープされる金属の粒径は、10nm未満である。金属は、0.1〜4重量%の範囲でドープされる。
【0045】
本発明では、上述のように金属または金属酸化物でドープすることでバンドギャップエネルギーが低減されるので、光触媒が、可視域でも光触媒活性を示すことができるものとなる。
【0046】
ドーピングがなされた過酸化チタンゲルは、塩または酸化物の形態の金属の前駆物質の水溶液を低粘度(4〜5cp)の過酸化チタン溶液の中に溶かすことにより調製され、約48時間そのままに保つと、12000〜15000cpsの範囲の高い粘度と−52〜−25mVの範囲の高いゼータ電位を有し、高分子を使用しないゲルが得られる。ゲルの粘度は、RV型スピンドルを備えるブルックフィールド(Brookfield)粘度計を用いて計測した。ゲルのゼータ電位は、米国のブルックヘイブンインスツルメント社(Brookhaven Instrument Corporation USA)製の「90プラス粒径分析器(90 Plus Particle size analyzer)」を用いて計測した。
【0047】
本発明の方法は、可視域における吸光度がゼロであることから看取されるように、任意選択的に金属または金属酸化物がドープされた前記過酸化チタンゲルを用いて有機汚染物質とともに発色団/染料を完全に除去するのに有利であることがわかっている。
【0048】
本発明を、実施例を参照しつつさらに詳しく説明するが、実施例は、例示として提示されるのに過ぎないのであり、したがって、発明の範囲を限定するものであると解釈されるべきではない。
【0049】
[実施例1]
本発明に用いられる過酸化チタンゲルを、チタン源としてチタンブトキシド(ARグレード Aldrich社製)を使用して調製した。4.6gのチタンブトキシドを25mlの蒸留水を用いて加水分解し、水酸化チタン沈殿物を形成する。水酸化チタンからの上澄み液を傾瀉(decant)し、その水酸化チタンに25mlの過酸化水素(50% Asian Peroxide社製)をゆっくり加えた。過酸化水素と新たに調製した水酸化チタンとの間の非常に激しい発熱反応によって黄色の過酸化チタンゾルが得られ、これをさらに450mlに蒸留水で希釈し、5cpという非常に低い粘度の過酸化チタンを得た。このようにして得られた過酸化チタン溶液を約48時間放置したところ、ゲルの粘度が12000cpsまで高くなった。このようにして得られたゲルのゼータ電位を計測したところ、漸進的に上昇して−54ミリボルトというゲルの安定性を示す値に達したことが確認された。粘度が12000cpsでゼータ電位が−54ミリボルトのゲルを本発明において使用した。
【0050】
[実施例2]
実施例1に示した手順によって低粘度(5cp)の過酸化チタン溶液を調製した。0.021gのクロロ金酸を200mlの蒸留水の中に溶かすことによってAuナノ粒子溶液を調製し、さらに、水素化ホウ素ナトリウム溶液(水25mlの中に0.0045g)を用いて還元し、ピンク色の溶液を得た。金のナノ粒子からなるこのピンクの溶液を、前述の過酸化チタン溶液に加え、均質なバイオレット色の透明溶液を得た。このようにして得られた金を含有する過酸化チタン溶液を約48時間放置したところ、ゲルの粘度が12000〜15000cpsまで高くなった。このようにして得られたゲルのゼータ電位は、漸進的に上昇して−31ミリボルトにまで達し、ゲルの安定性が時間とともに増したことが示された。粘度が15000cpsでゼータ電位が−31ミリボルトのゲルを本発明において使用した。
【0051】
[実施例3]
実施例1に示した手順によって低粘度(5cp)の過酸化チタン溶液を調製した。硝酸鉄の水溶液(水25mlの中に0.055g)を、前述の過酸化チタン溶液に加えた。このようにして得られた鉄を含有する過酸化チタン溶液を約48時間放置したところ、ゲルの粘度が12000〜15000cpsまで高くなる。このようにして得られたゲルのゼータ電位を計測したところ、漸進的に上昇して−25ミリボルトにまで達し、ゲルの安定性を示す値となることが確認された。粘度が15000cpsでゼータ電位が−25ミリボルトのゲルを本発明において使用した。
【0052】
[実施例4]
実施例1に示した手順によって低粘度(5cp)の過酸化チタン溶液を調製した。25mlの水中に、五酸化バナジウム(0.05g)を懸濁させた。この懸濁液に、5mlの過酸化水素(50% Asian Peroxide社製)をゆっくり加え、透明な赤色のペルオキソバナジウム酸溶液を得た。このペルオキソバナジウム酸溶液を、前述の過酸化チタン溶液に加えた。このようにして得られたバナジウムを含有する過酸化チタン溶液を約48時間放置したところ、ゲルの粘度が12000〜15000cpsまで高くなる。このようにして得られたゲルのゼータ電位を計測したところ、漸進的に上昇して−27ミリボルトというゲルの安定性を示す値に達したことが確認された。粘度が15000cpsでゼータ電位が−27ミリボルトのゲルを本発明において使用した。
【0053】
[実施例5]
実施例1に示した手順によって低粘度(5cp)の過酸化チタン溶液を調製した。10mlの水中に、七モリブデン酸アンモニウム(0.023g)を懸濁させた。この懸濁液に、5mlの過酸化水素(50% Asian Peroxide社製)をゆっくり加え、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を、前述の過酸化チタン溶液に加えた。このようにして得られたモリブデンを含有する過酸化チタン溶液を約48時間放置したところ、ゲルの粘度が12000〜15000cpsまで高くなる。このようにして得られたゲルのゼータ電位を計測したところ、漸進的に上昇して−57ミリボルトというゲルの安定性を示す値に達したことが確認された。粘度が15000cpsでゼータ電位が−57ミリボルトのゲルを本発明において使用した。
【0054】
[実施例6]
実施例1に示した手順によって低粘度(5cp)の過酸化チタン溶液を調製した。0.027gのクロロ白金酸を200mlの蒸留水の中に溶かすことによってPtナノ粒子溶液を調製し、さらに、水素化ホウ素ナトリウム溶液(水25mlの中に0.0045g)を用いて還元し、ピンク色の溶液を得た。白金のナノ粒子からなる当該黒い溶液を、前述の過酸化チタン溶液に加え、均質な暗色の透明溶液を得た。このようにして得られた白金を含有する過酸化チタン溶液を約48時間放置したところ、ゲルの粘度が12000〜15000cpsまで高くなった。粘度が15000cpsのゲルを本発明において使用した。
【0055】
実施例1にしたがって調製した過酸化チタンゲルを実施例7〜8において使用した。
【0056】
[実施例7]
10−4モルのメチレンブルー溶液100mlが入った250mlビーカーに10gの過酸化チタンゲルを加えた。溶液を勢いよく振り混ぜて、5分間放置した。メチレンブルー染料が過酸化チタンゲル上に吸着してビーカーの底に落ち着くと、上澄み溶液は無色になった。メチレンブルー染料を吸着させた過酸化チタンを含有する溶液を、G1のワットマン(Whatman)濾紙を用いて濾過し、無色の溶液を得た。処理前後の溶液中のメチレンブルー含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その665、612、290および245nmの波長での吸収を計測することによって監視した。初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0057】
【表1】

【0058】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度ゼロは、水溶液からのメチレンブルーの完全な除去がなされたことを示している。
【0059】
[実施例8]
前記実施例7でG1のワットマン濾紙を用いて濾過した、メチレンブルーを吸着させて含む過酸化チタンゲルを、10mlの水が入った250mlのビーカーに移した。このビーカーを、ゲルの青色が消えて再びその元の色である黄色に戻るまで4時間日光下に放置した。再び、10−4モルのメチレンブルー溶液100mlをこの再生ゲルに加え、勢いよく振り混ぜ、5分間放置した。メチレンブルー染料が再生過酸化チタンゲルに吸着してビーカーの底に落ち着くと、上澄み溶液は無色になった。メチレンブルー染料を吸着させた再生過酸化チタンゲルを含む溶液を、G1のワットマン濾紙を用いて濾過し、無色の溶液を得た。処理前後の溶液中のメチレンブルー含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その665、612、290および245nmの波長での吸収を計測することによって監視した。初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0060】
【表2】

【0061】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度ゼロは、水溶液からのメチレンブルーの完全な除去がなされたことを示している。
【0062】
[実施例9]
前記実施例7でG1のワットマン濾紙を用いて濾過した、メチレンブルーを吸着させて含む過酸化チタンゲルを、10mlの水が入った250mlのビーカーに移した。このゲルに、0.5mlの30%過酸化水素を加えた。このビーカーを、ゲルの青色が消えて再びその元の色である黄色に戻るまで1.5時間日光下に放置した。再び、10−4モルのメチレンブルー溶液100mlをこの再生ゲルに加え、勢いよく振り混ぜ、5分間放置した。メチレンブルー染料が再生過酸化チタンゲルに吸着してビーカーの底に落ち着くと、上澄み溶液は無色になった。メチレンブルー染料を吸着させた再生過酸化チタンゲルを含む溶液を、G1のワットマン濾紙を用いて濾過し、無色の溶液を得た。処理前後の溶液中のメチレンブルー含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その665、612、290および245nmの波長での吸収を計測することによって監視した。初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0063】
【表3】

【0064】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度ゼロは、水溶液からのメチレンブルーの完全な除去がなされたことを示している。
【0065】
[実施例10]
過酸化チタンゲル10gを、溶液の流量を調整するために焼結板(G0)および活栓を装着した内径15mm長さ25cmのガラスの管状器具に入れた。10−4モルのメチレンブルー溶液250mlを、5ml/分の流量で、このゲルを通過させた。ゲルによって着色有機染料分子を濾過し、濾過液として透明無色の溶液を得た。処理溶液前後の溶液中のメチレンブルー含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その665、612、290および245nmの波長での吸収を計測することによって監視した。初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0066】
【表4】

【0067】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度ゼロは、水溶液からのメチレンブルーの完全な除去がなされたことを示している。
【0068】
[実施例11]
過酸化チタンゲル10gを、溶液の流量を調整するために焼結板(G0)および活栓を装着した内径15mm長さ25cmのガラスの管状器具に入れた。10−4モルのメチルオレンジ溶液250mlを、5ml/分の流量で、このゲルを通過させた。ゲルによって着色有機染料分子を濾過し、濾過液として透明無色の溶液を得た。処理の初期及び最終の溶液中のメチルオレンジ含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その464および270nmの波長での吸収を計測することによって監視した。
【0069】
初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0070】
【表5】

【0071】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度ゼロは、水溶液からのメチルオレンジの完全な除去がなされたことを示している。
【0072】
[実施例12]
過酸化チタンゲル10gを、溶液の流量を調整するために焼結板(G0)および活栓を装着した内径15mm長さ25cmのガラスの管状器具に入れた。10−4モルのメチルバイオレット溶液250mlを、5ml/分の流量で、このゲルを通過させた。ゲルによって着色有機染料分子を濾過し、濾過液として透明無色の溶液を得た。処理の初期及び最終の溶液中のメチルバイオレット含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その581、299、246および205nmの波長での吸収を計測することによって監視した。
【0073】
初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0074】
【表6】

【0075】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度ゼロは、水溶液からのメチルバイオレットの完全な除去がなされたことを示している。
【0076】
[実施例13]
過酸化チタンゲル10gを、溶液の流量を調整するために焼結板(G0)および活栓を装着した内径15mm長さ25cmのガラスの管状器具に入れた。10−4モルのマラカイトグリーン溶液250mlを、5ml/分の流量で、このゲルを通過させた。ゲルによって着色有機染料分子を濾過し、濾過液として透明無色の溶液を得た。処理の初期及び最終の溶液中のマラカイトグリーン含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その618、423、315および254.8nmの波長での吸収を計測することによって監視した。
【0077】
初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0078】
【表7】

【0079】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度ゼロは、水溶液からのマラカイトグリーンの完全な除去がなされたことを示している。
【0080】
[実施例14]
過酸化チタンゲル10gを、溶液の流量を調整するために焼結板(G0)および活栓を装着した内径15mm長さ25cmのガラスの管状器具に入れた。10−4モルのローダミンB溶液250mlを、5ml/分の流量で、このゲルを通過させた。ゲルによって着色有機染料分子を濾過し、濾過液として透明無色の溶液を得た。処理の初期及び最終の溶液中のローダミンB含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その551、354および258nmの波長での吸収を計測することによって監視した。
【0081】
初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0082】
【表8】

【0083】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度ゼロは、水溶液からのローダミンBの完全な除去がなされたことを示している。
【0084】
[実施例15]
前記実施例11で用いたゲルを酸化剤次亜塩素酸ナトリウムを用いて再生した。市販の4%NaOCl溶液1mlを100mlに希釈した。この希釈溶液を前記管状器具内の使用済みゲルを通過させた。ゲル中に吸着された染料は完全に分解されて、元の色である黄色のゲルが残った。このゲルを、再使用する前に、さらに200mlの水で洗浄してゲル中の余分な酸化剤を除去した。10−4モルのローダミンB溶液250mlを、5ml/分の流量で、この再生ゲルを通過させた。再生ゲルによって着色有機染料分子を濾過し、濾過液として透明無色の溶液を得た。処理の初期及び最終の溶液中のローダミンB含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その551、354および258nmの波長での吸収を計測することによって監視した。
【0085】
初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0086】
【表9】

【0087】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度ゼロは、水溶液からのローダミンBの完全な除去がなされたことを示している。
【0088】
[実施例16]
過酸化チタンゲル10gを、溶液の流量を調整するために焼結板(G0)および活栓を装着した内径15mm長さ25cmのガラスの管状器具に入れた。10−4モルのブロモフェノールブルー溶液250mlを、5ml/分の流量で、このゲルを通過させた。ゲルによって着色有機染料分子を濾過し、濾過液として透明無色の溶液を得た。処理の初期及び最終の溶液中のブロモフェノールブルー含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その590、434、311、261および214nmの波長での吸収を計測することによって監視した。
【0089】
初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0090】
【表10】

【0091】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度ゼロは、水溶液からのブロモフェノールブルーの完全な除去がなされたことを示している。
【0092】
[実施例17]
過酸化チタンゲル10gを、溶液の流量を調整するために焼結板(G0)および活栓を装着した内径15mm長さ25cmのガラスの管状器具に入れた。中性pH(7)のエタノール水混合液(5mlのエタノール+245mlの水)中の10−4モルのパラベース溶液250mlを、5ml/分の流量で、このゲルを通過させた。ゲルによって着色有機染料分子を濾過し、濾過液として透明無色の溶液を得た。処理の初期及び最終の溶液中のパラベース含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その540、284および242nmの波長での吸収を計測することによって監視した。光吸収の変化は以下の通りであった。
【0093】
【表11】

【0094】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度ゼロは、水溶液からのパラベースの完全な除去がなされたことを示している。
【0095】
[実施例18]
過酸化チタンゲル10gを、溶液の流量を調整するために焼結板(G0)および活栓を装着した内径15mm長さ25cmのガラスの管状器具に入れた。10−4モルのフクシン(basic magenta)溶液250mlを、5ml/分の流量で、このゲルを通過させた。ゲルによって着色有機染料分子を濾過し、濾過液として透明無色の溶液を得た。処理の初期及び最終の溶液中のフクシン含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その542、287および207nmの波長での吸収を計測することによって監視した。光吸収の変化は以下の通りであった。
【0096】
【表12】

【0097】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度ゼロは、水溶液からのフクシンの完全な除去がなされたことを示している。
【0098】
[実施例19]
10mlのインク溶液100mlが入った100mlビーカーに10gの過酸化チタンゲルを入れた。溶液を勢いよく振り混ぜて、約5分間放置した。インクは過酸化チタンゲル上に吸着して、無色の上澄み溶液をともないビーカーの底に落ち着いた。インクを吸着させた過酸化チタンゲルを含有する溶液を、G1のワットマン濾紙を用いて濾過し、無色の溶液を得た。
【0099】
[実施例20]
過酸化チタンゲル10gを、10−4モルのマラカイトグリーン溶液100mlが入った250mlビーカーに入れた。溶液を勢いよく振り混ぜて、5分間放置した。マラカイトグリーン染料は過酸化チタンゲル上に吸着して、無色の上澄み溶液をともないビーカーの底に落ち着いた。マラカイトグリーン染料を吸着させた過酸化チタンゲルを含有する溶液を、G1のワットマン濾紙を用いて濾過し、無色の溶液を得た。マラカイトグリーン染料を吸着させた過酸化チタンゲルを含有する溶液を、G1のワットマン濾紙を用いて濾過し、無色の溶液を得た。マラカイトグリーンを吸着させたゲルをビーカーに移し、蒸留水100mlを加えた。ゲルを4時間日光下にさらし、ゲルはその元の色に戻った。ゲルを10−4モルのマラカイトグリーン溶液を処理するのに再利用した。処理の初期及び最終の溶液中のマラカイトグリーン含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その618、423、315および254.8nmの波長での吸収を計測することによって監視した。
【0100】
初期の、および再生過酸化チタンゲルでの処理後の最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0101】
【表13】

【0102】
[実施例21]
金過酸化チタンゲル10gを、溶液の流量を調整するために焼結板(G0)および活栓を装着した内径15mm長さ25cmのガラスの管状器具に入れた。564ppmのホルムアルデヒド水溶液100mlを、5ml/分の流量で、このゲルを通過させた。得られた濾過液はホルムアルデヒド60ppmを含有するものであったが、これは、水溶液からホルムアルデヒドが90%除去されたことを確認するものである。
【0103】
[実施例22]
金過酸化チタンゲル10gを、溶液の流量を調整するために焼結板(G0)および活栓を装着した内径15mm長さ25cmのガラスの管状器具に入れた。水に1000ppmのホルマリン、3500ppmのメタノール、2000ppmのヘキサミンおよび500ppmのアンモニアを含有してなる合成ヘキサミン廃水50mlを、3時間にわたり、このゲルを通過させた。濾過液のCODは、ゲルで処理する前の初期ヘキサミン廃水が12000のCODだったのに比べ、800であった。
【0104】
[実施例23]
金過酸化チタンゲル10gを、溶液の流量を調整するために焼結板(G0)および活栓を装着した内径15mm長さ25cmのガラスの管状器具に入れた。50%メタノール水溶液100mlを、2時間にわたり、このゲルを通過させた。濾過液中のメタノール含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その245および235nmの波長での吸収を計測し、UVにより較正曲線と比較することによって監視した。メタノールの濃度は、50%〜12.5%に低下した。
【0105】
[実施例24]
金過酸化チタンゲル10gを500ppmのフェノール水溶液50mlが入った250mlビーカーに加えた。溶液を勢いよく振り混ぜて、30分間放置した。金過酸化チタンゲルを含有する溶液を、G1のワットマン濾紙を用いて濾過した。濾過液のCODは、初期の500ppmフェノール溶液に対する1040から、240まで低下した。
【0106】
[実施例25]
10−4モルのマラカイトグリーンのアセトン溶液100mlが入った250mlビーカーに10gの過酸化チタンゲルを加えた。溶液を勢いよく振り混ぜて、30分間放置した。マラカイトグリーン染料が過酸化チタンゲル上に吸着してビーカーの底に落ち着くと、上澄み溶液はほとんど無色になった。マラカイトグリーン染料を吸着させた過酸化チタンゲルを含有する溶液を、G1のワットマン濾紙を用いて濾過し、ほとんど無色の溶液を得た。処理前後の溶液中のマラカイトグリーン含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、アセトンを基準として、その623、427および341nmの波長での吸収を計測することによって監視した。初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0107】
【表14】

【0108】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度の大幅な低下は、アセトン溶液からのマラカイトグリーンの最大限の除去がなされたことを示している。
【0109】
[実施例26]
10−4モルのマラカイトグリーンのクロロホルム溶液100mlが入った250mlビーカーに10gの過酸化チタンゲルを加えた。溶液を勢いよく振り混ぜて、30分間放置した。マラカイトグリーン染料が過酸化チタンゲル上に吸着して、ゲルがクロロホルム上に浮遊し、クロロホルム層はほとんど無色になった。マラカイトグリーン染料を吸着させた過酸化チタンゲルを含有する溶液を、G1のワットマン濾紙を用いて濾過し、ほとんど無色の溶液を得た。処理前後の溶液中のマラカイトグリーン含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、クロロホルムを基準として、その623、427および341nmの波長での吸収を計測することによって監視した。初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0110】
【表15】

【0111】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度の大幅な低下は、クロロホルム溶液からのマラカイトグリーンの最大限の除去がなされたことを示している。
【0112】
[実施例27]
10−4モルのメチルバイオレットのアセトン溶液100mlが入った250mlビーカーに10gの過酸化チタンゲルを加えた。溶液を勢いよく振り混ぜて、30分間放置した。メチルバイオレット染料が過酸化チタンゲル上に吸着してビーカーの底に落ち着くと、上澄み溶液はほとんど無色になった。メチルバイオレット染料を吸着させた過酸化チタンゲルを含有する溶液を、G1のワットマン濾紙を用いて濾過し、ほとんど無色の溶液を得た。処理前後の溶液中のメチルバイオレット含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、アセトンを基準として、その581および543nmの波長での吸収を計測することによって監視した。初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0113】
【表16】

【0114】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度の大幅な低下は、アセトン溶液からのメチルバイオレットの最大限の除去がなされたことを示している。
【0115】
[実施例28]
10−4モルのメチルバイオレットのエタノール溶液100mlが入った250mlビーカーに10gの過酸化チタンゲルを加えた。溶液を勢いよく振り混ぜて、30分間放置した。メチルバイオレット染料が過酸化チタンゲル上に吸着してビーカーの底に落ち着くと、上澄み溶液はほとんど無色になった。メチルバイオレット染料を吸着させた過酸化チタンゲルを含有する溶液を、G1のワットマン濾紙を用いて濾過し、ほとんど無色の溶液を得た。処理前後の溶液中のメチルバイオレット含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、エタノールを基準として、その581および543nmの波長での吸収を計測することによって監視した。初期および最終の溶液の光吸収は以下の通りであった。
【0116】
【表17】

【0117】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度の大幅な低下は、アセトン溶液からのメチルバイオレットの最大限の除去がなされたことを示している。
【0118】
[実施例29]
実施例2〜6に示した手順によって調製したゲル10gを、別々に、10−4モルのメチレンブルー溶液100mlが入った250mlビーカーに加えた。各溶液を勢いよく振り混ぜて、5分間放置した。メチレンブルー染料がそれぞれのゲル上に吸着して各ビーカーの底に落ち着くと、上澄み溶液は無色になった。メチレンブルー染料を吸着させた各ゲルを含有する溶液を、G1のワットマン濾紙を用いて濾過し、無色の溶液を得た。処理前後の溶液中のメチレンブルー含有量を、UV−VIS分光光度計(島津製作所、2010年)により、その665、612、290および245nmの波長での吸収を計測することによって監視した。初期および最終の溶液の光吸収は、すべてのゲルに対して同様に、以下の通りであった。
【0119】
【表18】

【0120】
過酸化チタンゲルでの処理後の吸光度ゼロは、水溶液からのメチレンブルーの完全な除去がなされたことを示している。
【0121】
G1のワットマン濾紙を用いて濾過した、メチレンブルーを吸着させて含む各ゲルを、水10mlが入った250mlビーカーに移した。各ビーカーは、ゲルの青色が消え、再びその元の色に戻るまで日光下に放置した。日光下でのメチレンブルーの分解についての各ゲルの活性は、次の順序に従うものであった。
Pt−Tiゲル(実施例6)>Au−Tiゲル(実施例2)>Mo−Tiゲル(実施例5)>V−Tiゲル(実施例4)>Fe−Tiゲル(実施例3)>Tiゲル(実施例1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化チタンゲルを用いて溶液から有機染料および/または有機汚染物質を除去するワンステップの方法であって、
a)ゲル/染料溶液の体積比1:5〜1:20の範囲の比率で溶液中に過酸化チタンゲルを添加するステップと、
b)ステップ(a)で得られた混合物を、25〜35℃の範囲の温度で、勢いよく振り混ぜるステップと、
c)ステップ(b)で得られた混合物を5〜25分間放置して、染料または有機汚染物質を吸着させた過酸化チタンゲルと透明で無色な上澄みを生成した後、当該混合物を濾過して染料または有機汚染物質を吸着させた過酸化チタンゲルを得るステップと、
d)ステップ(c)で得られた染料または有機汚染物質を吸着させた過酸化チタンゲルを、水が入ったビーカーに移すステップと、
e)前記染料または有機汚染物質を吸着させた過酸化チタンゲルから、吸着した染料または有機汚染物質を分解して、過酸化チタンゲルを再利用のために回収するステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(a)で使用する溶液は、有機染料および/または有機汚染物質と、水、アセトン、塩素化処理した溶剤およびアルコール類からなる群から選択された溶剤とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)で使用する過酸化チタンゲルは、ゼータ電位が−54〜−25mVの範囲であり、粘度が12000〜15000cpsの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)で使用する過酸化チタンゲルは、任意選択的に、0.1〜4重量%の範囲で、Au、Ag、ニッケル、銅、鉄、モリブデン、バナジウム、タングステンおよび白金からなる群から選択された貴金属および遷移金属がドープされている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
有機染料または有機汚染物質は、メチレンブルー、メチルオレンジ、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、ローダミンB、ブロモフェノールブルー、パラベース溶液、マゼンタ溶液、インク、ホルムアルデヒド溶液、合成ヘキサミン廃水、フェノールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
任意選択的に、ステップ(a)で使用する過酸化チタンゲルを管状器具に入れて、前記染料溶液にその中を通過させることで、透明で無色の上澄みを得る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記した有機染料および有機汚染物質の濃度が、95〜100%まで除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記した、ステップ(e)における染料または有機汚染物質を吸着させた過酸化チタンゲルからの有機染料および有機汚染物質の分解は、酸化剤とともにまたは酸化剤なしで、日光下に曝すことによってなされる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
使用される酸化剤が、過酸化水素および次亜塩素ナトリウムからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
本明細書に実質的に記載され例示された、過酸化チタンゲルを用いて溶液から有機染料および汚染物質有機汚染物質を除去するための、ワンステップの方法。

【公表番号】特表2013−500846(P2013−500846A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522341(P2012−522341)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000507
【国際公開番号】WO2011/013146
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(511295508)カウンシィル オブ サイアンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (3)
【Fターム(参考)】