説明

道路情報特定方法、道路情報特定装置、ナビゲーションシステム、道路情報を特定するためのコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを記録した記録媒体

【課題】一時停止の中でも、警告が真に必要な一時停止が付された交差点進入道路を特定し、当該進入道路ついての道路情報を自動的に作成する方法及びその装置を提供する。
【解決手段】一時停止情報の付された交差点への進入道路を抽出し、
交差点ごとに当該各進入道路につき、退出道路以外の道路に車輌不在のとき、他の道路(退出道路を含む)から進入する他の車輌の全進路と当該進入道路の車輌の退出進路との交差点における交差の有無を評価し、当該他の車輌の進路と当該進入道路の車輌の進路との交差が認められないとき、該進入道路を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路情報特定方法及びその装置に関する。更に詳しくは、一時停止が必要な道路において、道路環境の面から特に注意が必要な道路情報を特定し、さらに、道路や交差点へ予め注意喚起のための道路情報を付与することにより、ナビゲーションシステムによる経路案内に反映させようとするものである。
【背景技術】
【0002】
一時停止が必要な道路走行中、運転者が一時停止操作を行わないことにより、重大な事故を招くことがある。このような事態を回避するために、車両の一時停止を支援する運転支援装置が知られている。
一時停止の交通規制があるたびに、その旨を運転者に警告していると、警告自体の効果が希釈されるので、必要に応じて警告を発することが好ましい。そのため、特許文献1には、一時停止位置の手前における車両減速中にその一時停止位置を示す指標物への運転者の注視行動を検出し、その注視行動の有無に応じて、運転操作の支援仕様を切り替えることが可能な運転支援を提供する技術が提案されている。つまり、車両減速中に注視行動が検出されなかった場合に、適切な運転支援を行うので、一時停止位置を認識している運転者に煩わしい支援を提供することなく、一時停止位置を見落としている運転者にはより安全な支援を提供することができることとなる。
また、特許文献2にも関連する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−37201号公報
【特許文献2】特開平10−76922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、運転者の注視行動を検出する必要があるため、ナビゲーションシステム等に検出装置及びその他の装置を付加しなければならない。よって、ナビゲーションシステム等が複雑かつ高コストになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は、警告が真に必要な一時停止を他の一時停止と区別し、前者についてのみ警告を出すようにすればよいことに気がついた。かかる処理は、警告が真に必要な一時停止と他の一時停止とを峻別できるように情報(ナビゲーションシステムに利用されるもの)を作り込むことにより、ナビゲーションシステムに何ら装置的な負担を強いることなく実行できる。
発明者は、警告が真に必要な一時停止を次のように考えた。
即ち、一時停止の交通規制が付される道路においても、特に注意すべき道路がある。運転者の傾向として、見通しが良い道路において対向車がないことを目視確認できれば、一時停止を無視することがある。その場合においても、歩行者まで完全に目視確認することは困難であるので、歩行者に対する安全義務違反を生じる確率が高くなる。換言すれば、運転者の注意は専ら対向車両に注がれるので、対向車両が存在しないときや対向車両が存在してその対向車の進路が自身の進路と何ら干渉しないとき、交通規制を無視する傾向がある。
【0006】
警告が真に必要な一時停止を上記のように定義した結果、本発明者らは、かかる道路環境を生じさせる可能性のある交差点の進入道路の一時停止については、他の一般的な一時停止と峻別し、これへ峻別のためのフラッグをたてることを考え、この発明に想到した。
即ち、この発明の第1の局面は次のように構成される。
一時停止情報の付された交差点への進入道路を抽出し、
交差点ごとに前記各進入道路につき、退出道路以外の道路に車輌不在のとき、他の道路(退出道路を含む)から進入する他の車輌の全進路と前記進入道路の車輌の退出進路との交差点における交差の有無を評価し、
前記他の車輌の進路と前記進入道路の車輌の進路との交差が認められないとき、該進入道路を特定する特定進入道路特定方法。
【0007】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面で特定された特定進入道路に注意喚起情報を付与する。
このように規定される第2の局面の発明によれば、特定進入道路情報に基づき、注意喚起情報が付与されるので、当該特定進入道路において注意を払うべき対象をより具体化できる。これにより、安全運行に集中できる。
【0008】
また、この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
一時停止情報の付された交差点への進入道路において、警告が真に必要な一時停止が付された進入道路の道路情報を特定する特定進入道路情報特定装置であって、
交通規制情報を保存する交通規制情報保存部と、
ノード情報及びリンク情報を含む地図情報を保存する地図情報保存部と、
前記交通規制情報及び前記地図情報を参照して、前記進入道路を抽出する一時停止情報付き交差点進入道路抽出手段と、
前記抽出手段で抽出された前記進入道路について、該進入道路に対応する退出道路を定めた場合に、該退出道路以外の一の道路に車輌不在のとき、該退出道路を含む他の道路から前記交差点へ進入する他の車輌の全進路と前記進入道路の車輌の退出進路との前記交差点における交差の有無を評価する評価手段と、
前記評価手段において、前記交差が無いとの評価結果に基づき、前記特定進入道路と特定する特定進入道路特定手段と、
を備える、ことを特徴とする特定進入道路情報特定装置。
このように規定される第3の局面に規定の道路情報特定装置によれば、第1の局面と同等の作用を奏する。
【0009】
この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、
第3の局面に規定の特定進入道路情報特定装置において、
特定された前記特定進入道路情報に基づいて注意喚起メッセージを作成する注意喚起メッセージ作成手段を備える。
このように規定される第4の局面に規定の道路情報特定装置によれば、第2の局面と同等の作用を奏する。
【0010】
第3又は第4の局面に規定される特定進入道路情報特定装置を備えたナビゲーションシステムが第5の局面として規定される。
【0011】
更に、この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、
一時停止情報の付された交差点への進入道路において、警告が真に必要な一時停止が付された進入道路を特定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
一時停止情報の付された交差点への進入道路を抽出する手段と、
交差点ごとに前記各進入道路につき、退出道路以外の道路に車輌不在のとき、他の道路(退出道路を含む)から進入する他の車輌の全進路と前記進入道路の車輌の退出進路との交差点における交差の有無を評価する手段と、
前記他の車輌の進路と前記進入道路の車輌の進路との交差が認められないとき、該進入道路を特定進入道路と特定する手段、
として機能させる、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
このように規定される第6の局面に規定のコンピュータプログラムによれば、第1の局面と同等の作用を奏する。
【0012】
この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、
第6の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、更に、
前記特定進入道路に注意喚起情報を付与する手段として機能させる。
このように規定される第7の局面に規定のコンピュータプログラムによれば、第2の局面と同等の作用を奏する。
【0013】
第6又は第7の局面で規定されるコンピュータプログラムを記録する記録媒体が第8の局面として規定される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態の道路情報特定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】一時停止情報付き交差点進入道路の評価方法を説明する模式図である。
【図3】一時停止情報付き交差点進入道路の評価方法を説明する模式図である。
【図4】この発明の実施の形態の道路情報特定装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態の一時停止付き交差点進入道路評価部の動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の他の実施の形態の道路情報特定装置の構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の他の実施の形態の道路情報特定装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】実施例の特定進入道路を特定するための特定パターン(A)〜(D)を示す図である。
【図9】実施例の道路情報特定装置の構成を示すブロック図である。
【図10】実施例の道路情報特定装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】他の特定進入道路を特定するための特定パターンを示す図である。
【図12】他の特定進入道路を特定するための特定パターンを示す図である。
【図13】実施例の道路情報特定装置を構成するコンピュータシステムを示す。
【図14】道路情報特定装置で特定されたナビゲーション情報を利用するナビゲーションシステムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
図1に、この発明の道路情報特定装置1の機能ブロック図を示す。図2及び図3は、一時停止情報付き交差点進入道路の評価方法を説明する模式図である。図4及び図5には道路情報特定装置1の動作に対応するフローチャートを示す。
図1に示すように、この道路情報特定装置1はナビゲーション情報保存部2、一時停止情報付き交差点進入道路抽出部3、一時停止情報付き交差点進入道路評価部4及び特定進入道路特定部5を備えている。
【0016】
ナビゲーション情報保存部2は交通規制情報保存部6、地図情報保存部7及び道路情報保存部8を備える。
交通規制情報保存部6には交通規制情報が保存される。交通規制情報として、例えば財団法人日本交通管理技術協会の提供するデジタル交通規制データを用いることができる。デジタル交通規制データに挙げられる交通規制情報の全てが必要ではなく、この発明では一時停止情報に関する交通規制情報のみが保存されていれば良い。
地図情報保存部7には地図情報が保存される。地図情報にはリンクやノードなど地図情報を規定するための道路要素に関する情報と地図に描画される情報等が含まれる。
道路情報保存部8には道路や交差点など各道路要素の特性を規定する道路情報が保存される。例えば道路(リンク)の特性を規定する道路情報として、道路種、道路幅、走行規制及びその他がある。この道路情報保存部8には特定進入道路情報保存部9が備えられる。後述するようにこの発明では、特に注意が必要とされる一時停止情報付き交差点進入道路を特定し、当該道路要素に関連する道路情報が、当該特定進入道路情報保存部9に設定される。また、当該設定された道路情報へ注意喚起情報を関連付けることができる。
【0017】
一時停止情報付き交差点進入道路抽出部3は、交通規制情報保存部6に保存される交通規制情報を参照して一時停止の交通規制情報が設定されている道路要素を特定する。さらに、この交通規制情報と地図情報保存部7に保存される地図情報とを参照し、特定した一時停止情報の付された道路要素において、交差点へ進入する道路を抽出する(ステップ1)。
【0018】
一時停止情報付き交差点進入道路評価部4は、一時停止情報付き交差点進入道路抽出部3で抽出された一時停止情報付き交差点進入道路について以下の評価を行い、後述する特定進入道路特定部5へ当該評価結果を送る(ステップ3)。
図2、図3及び図5を用いて、一時停止情報付き交差点進入道路評価部4における評価の方法を説明する。
図2に示すのは、一時停止情報付き交差点進入道路抽出部3において抽出された一時停止情報付き交差点進入道路としてのリンク106aを含む交差点100(ノード105)である。当該ノード105にはリンク106aの他にリンク106b〜106dが接続している。
【0019】
一時停止情報付き交差点進入道路評価部4は、まず、ノード105に接続するリンク106a〜106dのうち、一時停止情報が付された一の交差点進入道路としてリンク106aを選択する(ステップ31)。当該リンク106aを第1の一時停止情報付き交差点進入道路とする。
次に、リンク106b〜106dのうち、リンク106aから退出可能な一の道路としてリンク106bを選択する(ステップ32)。当該リンク106bを第1の退出道路とする。
さらに、リンク106b以外の道路であって、当該道路には車輌が不在と仮定される一の道路としてリンク106cを選択する(ステップ33)。当該リンク106cを第1の車輌不在道路とする。
【0020】
リンク106a〜106dのうち、第1の進入道路(リンク106a)及び第1の車輌不在道路(リンク106c)以外の道路(リンク106b及び106d)を第1の他の道路とする。当該第1の他の道路には、第1の退出道路(リンク106b)が含まれることとなる。
続いて、図2に示すように、交差領域107を設定する(ステップ34)。交差領域107は、当該交差点100に接続する道路に対応するそれぞれのリンク、すなわちリンク106a〜106dを中心に所定幅(例えば10m)を与え、交差点100に対応するノード105から所定幅(例えば10m)を外縁とすることにより規定される。
【0021】
この交差領域107における、各道路からの進入軌跡の交差の有無を評価する。交差の有無の評価は、次のように行う。
第1の進入道路から第1の退出道路へ走行する際の当該交差領域107における走行進路108を特定する(ステップ35)。一方、各第1の他の道路から交差点100へ進入する全走行進路109a〜109fを特定する(ステップ35)。このように特定された走行進路109a〜109fのそれぞれと第1の退出道路への走行進路108との交差領域107における交差の有無を評価する(ステップ36)。図2の例では、第1の他の道路からの走行進路109eが走行進路108と交差する。この場合に、一時停止情報付き交差点進入道路評価部4は、「交差あり」と評価する(ステップ36:有)。
【0022】
上記の評価(S33〜S36)を、車輌不在道路を変えながら実行する。
更には、退出道路を変えて、上記の処理を繰り返す。
その結果、1つでも「交差なし」の場合があれば、当該一時停止情報付き進入道路は特定進入道路と特定される。このように特定された特定進入道路はその退出道路とセットで特定されることが好ましい。
【0023】
全ての場合において、「交差あり」と評価された一時停止情報付き進入道路は、特定進入道路と特定されない。このような道路環境の場合、即ち、第1の車輌不在道路に車輌が存在しない場合であっても、第1の進入道路からの走行進路と、第1の他の道路からの走行進路が交差領域において交差する道路環境の場合には、当該交差点内で対向車と交差する可能性があるので、運転者は注意を解くことがない。よって、第1の進入道路に付された一時停止を軽視することはない。
当該交差点に接続する、一時停止情報の付された他の道路(リンク106b〜106d)についても、順に上記と同様の評価を行う。
本発明者の検討によれば、4つ以上の進入道路が交差する交差点においては、その何れの進入道路も上記「交差なし」の場合に該当するものは存在しない。
【0024】
図3に別の例を示す。図3は、一時停止情報付き交差点進入道路抽出部3において、抽出された一時停止情報付き交差点進入道路としてのリンク206aを含む交差点200(ノード205)である。当該ノード205にはリンク206aの他にリンク206b及びリンク206cが接続している。
一時停止情報付き交差点進入道路評価部4は、まず、ノード205に接続するリンク206a〜206cのうち、一時停止情報が付された一の交差点進入道路としてリンク206aを選択する(ステップ31)。当該リンク206aを第1の一時停止情報付き交差点進入道路とする。
次に、リンク206b及びリンク206cのうち、リンク206aから退出可能な一の道路としてリンク206bを選択する(ステップ32)。当該リンク206bを第1の退出道路とする。
【0025】
さらに、リンク206b以外の道路であって、当該道路には車輌が不在と仮定される一の道路としてリンク206cを選択する(ステップ33)。当該リンク206cを第1の車輌不在道路とする。
リンク206a〜206cのうち、第1の進入道路(リンク206a)及び第1の車輌不在道路(リンク206c)以外の道路(リンク206b)を第1の他の道路とする。この例では、当該第1の他の道路と第1の退出道路は同一の道路(リンク206b)となる。
【0026】
続いて、図3に示すように、交差領域207を設定する(ステップ34)。交差領域207は、当該交差点200に接続する道路に対応するそれぞれのリンク、すなわちリンク206a〜206cを中心に所定幅(例えば10m)を与え、交差点200に対応するノード205から所定幅(例えば10m)を外縁とすることにより規定される。
この交差領域207における、各道路からの進入軌跡の交差の有無を評価する。交差の有無の評価は、次のように行う。
第1の進入道路から第1の退出道路へ走行する際の当該交差領域207における走行進路208を特定する(ステップ35)。一方、第1の他の道路から交差点へ進入する全走行進路209a及び209bを特定する(ステップ35)。このように特定された走行進路209a及び209bのそれぞれと走行進路208との交差領域207における交差の有無を評価する(ステップ36)。図3の例では、第1の他の道路からの走行進路209a及び209bはいずれも走行進路208と交差しない。この場合、一時停止情報付き交差点進入道路評価部4は、「交差なし」と評価する(ステップ36:無)。
【0027】
「交差なし」との評価結果は、特定進入道路特定部5に送られる。特定進入道路特定部5は、当該「交差なし」との評価結果に基づき、当該一時停止情報付き進入道路を特定進入道路と特定する(ステップ5)。特定結果は、特定進入道路情報として、道路情報保存部8の特定進入道路保存部9へ保存される(ステップ7)。
【0028】
ここで特定進入道路特定部5は、特定した特定進入道路情報に「要注意道路」フラグを設定しても良いし、また、特定した特定進入道路に付されている一時停止情報を、特に注意を要する一時停止として変性させても良い。
また、特定進入道路とその「交差なし」環境を生じる退出道路とを併せて保存することが好ましい。
【0029】
図6に、他の実施の形態の道路情報特定装置11を示す。図7には道路情報特定装置11の動作に対応するフローチャートを示す。図6及び図7において、図1及び図4と同一の要素には同一の符号を付してその説明を部分的に省略する。
注意喚起メッセージ作成部12は、特定進入道路情報保存部9に保存された特定進入道路情報を受け、各種のメッセージを作成する。
作成されたメッセージは、注意喚起メッセージ保存部13に保存される。リンクやノードに関連付けて設定されたフラグに応じたメッセージが、注意喚起メッセージ保存部13から読み出されてナビゲーションシステムの出力部から、画像情報もしくは音声情報として出力される。
【実施例】
【0030】
以下、この発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。
【0031】
以下、図8、図9及び図10を参照して詳細に説明する。
図5の処理を多くの交差点に対して実行した結果、特定進入道路に該当する道路の殆どは特定パターンの三叉路交差点への進入道路であることが判明した。 当該特定パターンを図8に示す。
パターン(A)は、T字型三叉路交差点300Aであって、交差点に進入する全ての道路に一時停止が付されている。この場合、T字の横棒においてT字の縦棒に対して左折となる進入道路301Aが特定進入道路となる。この特定進入道路301Aの退出道路302Aは左折方向の道路である。
【0032】
パターン(B)は、T字型三叉路交差点300Bであって、T字の横棒においてT字の縦棒に対して右折となる進入道路301Bに一時停止が付され、T字の横棒であってT字の縦棒に対して左折となる進入道路は交差点側から進入禁止の一方通行道路である。この場合の、T字の横棒であってT字の縦棒に対して右折となる進入道路301Bが特定進入道路となる。この特定進入道路301Bの退出道路302Bは右折方向の道路である。
パターン(C)は、Y字型の三叉路交差点300Cであって、Y字の縦棒に該当する進入道路の右折レーンに一時停止が付されているとき、当該Y字の縦棒に該当する進入道路301Cが特定進入道路となる。この特定進入道路301Cの退出道路302Cは右折方向の道路である。
【0033】
パターン(D)は、T字型三叉路交差点300Dであって、T字の横棒に該当する道路には中央分離帯が存在し、T字の縦棒に該当する道路にのみ一時停止が付され、かつ当該道路とT字横棒に該当する道路との右側角部に地図情報保存部7に含まれる住所地番が付されていないとき、当該T字の縦棒に該当する道路が特定進入道路301Dである。なお、この特定進入道路301Dからは左折方向にしか進行できない。ここにおいて、T字の縦棒に該当する道路とT字の横棒に該当する道路との右側角部に住所番地が付されていないときは建物がない場合が多く、見通しが良くなる。その結果、T字の縦棒に該当する道路から進入したとき、T字の横棒に該当する道路に車輌が存在しないとき、T字の縦棒に該当する道路に一時停止が付されていても、それを無視して左折する場合があり得る。
【0034】
この実施例では、図8の特定パターンに基づき特定進入道路を特定する。図8の特定パターンはナビゲーション情報保存部2の特定パターン保存部22に保存されている。
図9、図10を参照すると、この実施例の道路情報特定装置21は、一時停止情報付き交差点進入道路評価部として、特定パターン交差点抽出部23を備える。この特定パターン交差点抽出部23は交通規制情報と地図情報とに基づき、図8に示した特定パターンの三叉路交差点を抽出する(ステップ21)。
より具体的は、地図情報から三叉路交差点を抽出し、抽出された三叉路交差点の各進入道路に付されている交通規制情報を特定する。このようにして各進入道路の交通規制情報が特定された三叉路交差点につき、特定パターン保存部22に保存されている特定パターン(図8(A)〜(D)参照)と比較し、いずれかの特定パターンに該当するか否かを検討する。
【0035】
特定進入道路特定部25により特定パターンに該当する三叉路についてはその特定進入道路を特定する(ステップ23)。
特定された特定進入道路は特定進入道路情報保存部27に保存される(ステップ25)。また、それに応じて、注意喚起メッセージ作成部12が注意喚起メッセージを作成し(ステップ27)、それを注意喚起メッセージ保存部13に保存する(ステップ29)。
【0036】
上記の場合は、交差点への進入道路に付された一時停止を判定対象としている。
本発明者の検討によれば、無視されがちな他の一時停止の存在が判明した。図11に示すように、点滅式信号の設置された交差点では、赤の点滅側は一時停止する必要がある。また、図12に示すように、踏切であっても、線路内の道路が狭く実質的に片側通行となる場合、線路内での交差を避けるために、対向側に車輌が存在しないときには一時停止を無視して踏切内へ進入する場合がある。
かかる点滅信号機を有する交差点における赤点滅側進入道路及び図12の踏切に対する両進入道路についても、特定進入道路として扱うことが好ましい。
【0037】
図13は道路情報特定装置21のハード構成を示すブロック図である。
この装置21のハード構成は、一般的なコンピュータシステムと同様に中央制御装置221に対してシステムバス222を介して各種の要素が結合されたものである。
中央制御装置221は汎用的なCPU、メモリ制御装置、バス制御装置、割り込み制御装置更にはDMA(直接メモリアクセス)装置を含み、システムバス222もデータライン、アドレスライン、制御ラインを含む。システムバス222にはRAM(ランダムアクセスメモリ)223、不揮発メモリ(ROM224,CMOS−RAM225等)からなるメモリ回路が接続されている。RAM223に格納されるデータは中央制御装置221や他のハードウエア要素によって読み取られたり、書き換えられたりする。不揮発メモリのデータは読み取り専用であり、装置をオフとしたときにもそこのデータは喪失されない。このハードウエアを制御するシステムプログラムはハードディスク装置227に保存されており、また、RAM223に保存されており、ディスクドライブ制御装置226を介して適宜中央制御装置221に読みこまれて使用される。このハードディスク装置227には、汎用的な構成のコンピュータシステムを道路情報特定装置21として動作させるためのコンピュータプログラムを保存する領域が確保される。
このハードディスク装置227の所定の領域がナビゲーション情報保存部2用に割り付けられる。
ハードディスク装置227の他の領域へ選択したリンクや抽出したノード、更には規制時間を一旦保存するためのバッファメモリを割り付けることができる。
【0038】
システムバス222には、フレキシブルディスク232に対してデータの読み込み及び書き込みを行うフレキシブルドライブ制御装置231、コンパクトディスク234に対してそれからデータの読み取りを行うCD/DVD制御装置233が接続されている。この実施例ではプリンタインターフェース237にプリンタ238を接続させている。
システムバス222にはキーボード・マウス制御装置241が接続され、キーボード242及びマウス243からのデータ入力を可能としている。モニタ245がモニタ制御装置244を介してシステムバス222に接続されている。モニタ245にはCRTタイプ、液晶タイプ、プラズマディスプレイタイプなどを利用することができる。
各種の要素(モデムなど)の増設を可能とするため空きのスロット251が準備されている。
【0039】
このコンピュータシステムからなる道路情報特定装置21を稼動させるために必要なプログラム(OSプログラム、アプリケーションプログラム(本発明のものも含む))は、各種の記録媒体を介してシステムの中にインストールされる。例えば非書き込み記録媒体(CD−ROM、ROMカード等)、書き込み可能記録媒体(FD、DVD等)、更にはネットワークNを利用して通信媒体の形式でインストールすることも可能である。勿論、不揮発メモリ224、225やハードディスク装置227に予めこれらのプログラムを書きこんでおくこともできる。
【0040】
ナビゲーション情報保存部2の情報はナビゲーションシステムによりそのまま利用できる。ナビゲーションシステムの例を図14に示す。
このナビゲーションシステム400は制御部401、メモリ部402、入力部403、出力部404、インターフェース部405、自車位置特定部406、探索部407、ナビゲーション情報保存部2を備えている。
制御部401はCPU、バッファメモリその他の装置を備えたコンピュータ装置であり、ナビゲーションシステム400を構成する他の要素を制御する。
メモリ部402にはコンピュータプログラムが保存され、このコンピュータプログラムはコンピュータ装置である制御部401に読み込まれて、これを機能させる。このコンピュータプログラムはDVD等の汎用的な媒体へ保存できる。
入力部403は目的地等を設定するために用いられる。入力部403としてディスプレイの表示内容と協働するタッチパネル式の入力装置を用いることができる。
【0041】
出力部404はディスプレイを含み、ナビゲーションに必要な地図情報、その他の情報を表示する。この出力部404は音声案内装置を含むこともできる。
インターフェース部405はナビゲーションシステム400を無線ネットワーク等へ連結させる。
自車位置特定部406はGPS装置やジャイロ装置を用いて利用者端末の現在の位置を検出する。
探索部407は指定された出発地から目的地までの経路を探索する。経路探索の際に、探索部407はナビゲーション情報保存部2に保存された情報を参照する。
【0042】
特定進入道路へ注意喚起メッセージを関連付けておくことにより、ナビゲーションシステム400は、当該特定進入道路へアクセスしたときに当該注意喚起メッセージを出力できる。この場合、制御部401は、探索した経路上の道路に設定されている特定進入道路情報のフラグに関連する注意喚起メッセージをナビゲーション情報保存部2内に備えられた注意喚起メッセージ保存部13から読み出し、出力部404を介して出力する。
経路探索をせずに、ナビゲーションシステム400の出力部404のディスプレイへ現在の地図を表示している場合においても、自車の進行先の道路について上記と同様に処理することができる。また、当該進入道路情報をナビゲーションシステムにおける被探索対象の判断材料として用いることもできる。例えば、当該特定進入道路は「要注意道路」扱いとし、もって経路案内された車輌がこの道路を通行しないようすることができる。
【0043】
また、当該注意喚起メッセージは、当該車輌の方向指示器と連動させて出力することができる。この場合、当該車輌の方向指示器が示す方向が、特定進入道路とセットで特定された退出道路と一致したとき、注意喚起メッセージを出力することとなる。当該注意喚起メッセージを出力するタイミングは、当該車輌が交差点に進入する手前(例えば、30m手前)であれば特に限定されない。さらに、当該注意喚起メッセージは、注意喚起メッセージを出力するタイミングに合わせて、当該タイミングにおける車輌速度を測定し、当該車輌速度が一定速度以上(例えば、10km/h以上)であるとき、出力することとしてもよい。
【0044】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 11 21 道路情報特定装置
2 ナビゲーション情報保存部
3 一時停止付き交差点進入道路抽出部
4 一時停止付き交差点進入道路評価部
5 25 特定進入道路特定部
6 交通規制情報保存部
7 地図情報保存部
8 道路情報保存部
9 27 特定進入道路情報保存部
12 注意喚起メッセージ作成部
13 注意喚起メッセージ保存部
22 特定パターン保存部
23 特定パターン抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一時停止情報の付された交差点への進入道路を抽出し、
交差点ごとに前記各進入道路につき、退出道路以外の道路に車輌不在のとき、他の道路(退出道路を含む)から進入する他の車輌の全進路と前記進入道路の車輌の退出進路との交差点における交差の有無を評価し、
前記他の車輌の進路と前記進入道路の車輌の進路との交差が認められないとき、該進入道路を特定する特定進入道路特定方法。
【請求項2】
請求項1で特定された特定進入道路に注意喚起情報を付与する地図情報の作成方法。
【請求項3】
一時停止情報の付された交差点への進入道路において、警告が真に必要な一時停止が付された進入道路の道路情報を特定する特定進入道路情報特定装置であって、
交通規制情報を保存する交通規制情報保存部と、
ノード情報及びリンク情報を含む地図情報を保存する地図情報保存部と、
前記交通規制情報及び前記地図情報を参照して、前記進入道路を抽出する一時停止情報付き交差点進入道路抽出手段と、
前記抽出手段で抽出された前記進入道路について、該進入道路に対応する退出道路を定めた場合に、該退出道路以外の一の道路に車輌不在のとき、該退出道路を含む他の道路から前記交差点へ進入する他の車輌の全進路と前記進入道路の車輌の退出進路との前記交差点における交差の有無を評価する評価手段と、
前記評価手段において、前記交差が無いとの評価結果に基づき、前記特定進入道路と特定する特定進入道路特定手段と、
を備える、ことを特徴とする特定進入道路情報特定装置。
【請求項4】
特定された前記特定進入道路情報に基づいて注意喚起メッセージを作成する注意喚起メッセージ作成手段、
を備える、ことを特徴とする請求項3に記載の特定進入道路情報特定装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の特定進入道路情報特定装置を備えたナビゲーションシステム。
【請求項6】
一時停止情報の付された交差点への進入道路において、警告が真に必要な一時停止が付された進入道路を特定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
一時停止情報の付された交差点への進入道路を抽出する手段と、
交差点ごとに前記各進入道路につき、退出道路以外の道路に車輌不在のとき、他の道路(退出道路を含む)から進入する他の車輌の全進路と前記進入道路の車輌の退出進路との交差点における交差の有無を評価する手段と、
前記他の車輌の進路と前記進入道路の車輌の進路との交差が認められないとき、該進入道路を特定進入道路と特定する手段、
として機能させる、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記コンピュータを、更に、
前記特定進入道路に注意喚起情報を付与する手段、
として機能させる、ことを特徴とする請求項6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のコンピュータプログラムを記録する記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−7720(P2011−7720A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153445(P2009−153445)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(501271479)株式会社トヨタマップマスター (56)
【Fターム(参考)】