説明

遠心ファン

【課題】遠心ファンを小型化すること、また、軸方向の寸法を抑制しつつ、静圧を高めることである。
【解決手段】ハウジング40A内に、上流側インペラ20Aから気流を受ける第1風洞部721Aと、下流側インペラ30Aから気流を受ける第2風洞部761Aと、が設けられている。第1風洞部721Aは、上流側インペラ20Aの下側において、周方向に延びている。第2風洞部761Aは、下流側インペラ30Aの上側において、周方向に延びている。このため、第1風洞部721Aおよび第2風洞部761Aを各インペラの径方向外側に配置する場合と比べて、遠心ファン1Aの径方向の寸法が、抑制される。また、第2風洞部761Aが、下流側インペラ30Aの上側に配置されているため、第1吸気口71Aと排気口77との間の軸方向の距離が、短縮される。これにより、遠心ファン1Aを小型化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インペラにより気流を発生させる遠心ファンが知られている。例えば、特表2009−537735号公報には、3つのインペラと電動モータとを備えた遠心式の送風機が、記載されている。特表2009−537735号公報の送風機では、モータ、インペラ、入口、および出口が、同軸に配置されている(要約,請求項2)。
【特許文献1】特表2009−537735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特表2009−537735号公報では、概ね円筒形の送風機の一方の端部に入口が配置され、他方の端部に出口が配置されている(段落0036)。そして、軸に沿って配置された3つの段を通って、入口から出口へ空気が送られる(段落0040〜0042)。各段において加速された空気は、インペラより径方向外側の部位を通って、下流側へ送られる(図5b,図5d〜図5f)。このような構造では、送風機を小型化することが難しい。特に、人工呼吸器や排痰装置等の医療機器においては、携帯性等の要求から、送風機を小型化することが望まれている。
【0004】
また、遠心ファンの性能を示す指標の1つとして、静圧がある。静圧を高めるためには、モータの回転数を上げたり、ハウジング内の流路を長くしたりすることが、考えられる。しかしながら、モータの回転数を上げると、発熱対策が必要となる。また、特表2009−537735号公報の送風機において、単純に流路を長くしようとすると、送風機の軸方向の寸法が著しく増大する。特に、人工呼吸器や排痰装置等の医療機器においては、上述の通り小型化が望まれている一方で、要求される静圧は高い。
【0005】
本発明の第1の目的は、遠心ファンを小型化することである。また、本発明の第2の目的は、遠心ファンにおいて、軸方向の寸法を抑制しつつ、静圧を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の例示的な第1発明は、上下に延びる中心軸を中心として回転する上流側インペラと、前記上流側インペラより下方において、前記中心軸を中心として回転する下流側インペラと、前記上流側インペラおよび前記下流側インペラを回転させるモータと、前記上流側インペラ、前記下流側インペラ、および前記モータを内部に収容するハウジングと、を備え、前記ハウジングは、外部から気体を吸引する第1吸気口と、外部へ気体を排出する排気口と、前記ハウジングの内部において前記第1吸気口と前記排気口とを連通する流路と、を有し、前記流路は、前記上流側インペラの下側において周方向に延び、前記上流側インペラから気流を受ける第1風洞部と、前記下流側インペラの上側において周方向に延び、前記下流側インペラから気流を受ける第2風洞部と、を含む遠心ファンである。
【0007】
本願の例示的な第2発明は、上下に延びる中心軸を中心として回転する上流側インペラと、前記上流側インペラより下方において、前記中心軸を中心として回転する下流側インペラと、前記上流側インペラおよび前記下流側インペラを回転させるモータと、前記上流側インペラ、前記下流側インペラ、および前記モータを内部に収容するハウジングと、を備え、前記ハウジングは、外部から気体を吸引する吸気口と、外部へ気体を排出する排気口と、前記ハウジングの内部において前記吸気口と前記排気口とを連通する流路と、を有し、前記流路は、前記上流側インペラの下方かつ前記下流側インペラの上方において、周方向に延びる中間弧状部を有する遠心ファンである。
【発明の効果】
【0008】
本願の例示的な第1発明によれば、第1風洞部および第2風洞部を各インペラの径方向外側に配置する場合と比べて、遠心ファンの径方向の寸法を、抑制できる。また、第2風洞部が、下流側インペラの上側に配置されているため、第1吸気口と排気口との間の軸方向の距離を、短縮できる。これにより、遠心ファンを小型化できる。
【0009】
本願の例示的な第2発明によれば、周方向に延びる中間弧状部を設けることにより、遠心ファンの軸方向の寸法を抑制しつつ、ハウジング内の流路長さを延ばすことができる。これにより、静圧を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、遠心ファンの縦断面図である。
【図2】図2は、遠心ファンの縦断面図である。
【図3】図3は、遠心ファンの外観斜視図である。
【図4】図4は、遠心ファンの縦断面図である。
【図5】図5は、ハウジングの分解斜視図である。
【図6】図6は、遠心ファンの部分縦断面図である。
【図7】図7は、上流側インペラおよび上カバー部材の部分縦断面図である。
【図8】図8は、下流側インペラおよび下カバー部材の部分縦断面図である。
【図9】図9は、モータ、第1連結部材、および第2連結部材の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、遠心ファンの中心軸に沿う方向を上下方向とし、下流側インペラに対して上流側インペラ側を上として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、これは、あくまで説明の便宜のために上下方向を定義したものであって、本発明に係る遠心ファンの使用時の向きを限定するものではない。
【0012】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る遠心ファン1Aの縦断面図である。図1に示すように、遠心ファン1Aは、モータ10A、上流側インペラ20A、下流側インペラ30A、およびハウジング40Aを、備えている。モータ10A、上流側インペラ20A、および下流側インペラ30Aは、ハウジング40Aの内部に収容されている。下流側インペラ30Aは、上流側インペラ20Aより下方に、配置されている。上流側インペラ20Aおよび下流側インペラ30Aは、モータ10Aにより、中心軸9Aを中心として回転する。
【0013】
ハウジング40Aは、外部から気体を吸引する第1吸気口71Aと、外部へ気体を排出する排気口77Aと、を有している。また、ハウジング40Aの内部には、第1吸気口71Aと排気口77Aとを連通する流路が、設けられている。当該流路は、第1風洞部721Aおよび第2風洞部761Aを、含んでいる。第1風洞部721Aは、上流側インペラ20Aから気流を受ける。第2風洞部761Aは、下流側インペラ30Aから気流を受ける。
【0014】
図1に示すように、この遠心ファン1Aでは、第1風洞部721Aが、上流側インペラ20Aの下側において、周方向に延びている。また、第2風洞部761Aが、下流側インペラ30Aの上側において、周方向に延びている。このため、第1風洞部721Aおよび第2風洞部761Aを各インペラ20A,30Aの径方向外側に配置する場合と比べて、遠心ファン1Aの径方向の寸法を、抑制できる。また、第2風洞部761Aが、下流側インペラの上側に配置されているため、第1吸気口71Aと排気口77Aとの間の軸方向の距離を、短縮できる。これにより、遠心ファン1Aを小型化できる。
【0015】
<2.第2実施形態>
図2は、本発明の第2実施形態に係る遠心ファン1Bの縦断面図である。図2に示すように、遠心ファン1Bは、モータ10B、上流側インペラ20B、下流側インペラ30B、およびハウジング40Bを、備えている。モータ10B、上流側インペラ20B、および下流側インペラ30Bは、ハウジング40Bの内部に収容されている。下流側インペラ30Bは、上流側インペラ20Bより下方に、配置されている。上流側インペラ20Bおよび下流側インペラ30Bは、モータ10Bにより、中心軸9Bを中心として回転する。
【0016】
ハウジング40Bは、外部から気体を吸引する第1吸気口71Bと、外部へ気体を排出する排気口77Bと、を有している。また、ハウジング40Bの内部には、第1吸気口71Aと排気口77Bとを連通する流路が、設けられている。当該流路は、上流側インペラ20Bの下方かつ下流側インペラ30Bの上方において、周方向に延びる中間弧状部73Bを、含んでいる。
【0017】
このような中間弧状部73Bを設けることにより、遠心ファン1Bの軸方向の寸法を抑制しつつ、ハウジング40B内の流路長さを延ばすことができる。したがって、遠心ファン1Bの静圧を高めることができる。
【0018】
<3.第3実施形態>
<3−1.遠心ファンの全体構成>
図3は、本発明の第3実施形態に係る遠心ファン1の外観斜視図である。図4は、遠心ファン1の縦断面図である。本実施形態の遠心ファン1は、例えば、人工呼吸器や排痰装置等の医療機器の送風機として、使用される。ただし、本発明の遠心ファンは、他の用途に使用されるものであってもよい。例えば、本発明の遠心ファンは、OA機器や家電製品に搭載されて、機器内の電子部品を冷却するものであってもよい。
【0019】
図3および図4に示すように、本実施形態の遠心ファン1は、モータ10、上流側インペラ20、下流側インペラ30、およびハウジング40を備えている。
【0020】
モータ10は、上流側インペラ20および下流側インペラ30を回転させる、インナーロータ型のモータである。モータ10は、静止部11と、静止部11の内側に配置された回転部12と、を有している。静止部11は、ハウジング40に固定されている。回転部12は、静止部11に対して、回転可能に支持されている。
【0021】
静止部11は、上流側インペラ20の下方かつ下流側インペラ30の上方に、配置されている。本実施形態の静止部11は、ケース51、上軸受部52、下軸受部53、ステータコア54、およびコイル55を有している。
【0022】
ケース51は、略円筒状のモータ保持部材である。上軸受部52、下軸受部53、ステータコア54、およびコイル55は、ケース51の内部に収容されている。ケース51は、例えば、アルミニウム合金、鉄合金、真鍮等の金属からなる。ケース51は、後述する第1連結部材42および第2連結部材43の内側に、配置される。第2連結部材43の下部には、ケース51の下端部を支持する固定部材431が、取り付けられている。
【0023】
上軸受部52は、上軸受保持部材521を介して、ケース51の上端部付近に固定されている。下軸受部53は、下軸受保持部材531を介して、ケース51の下端部付近に固定されている。上軸受部52および下軸受部53には、例えば、球体を介して外輪と内輪とを相対回転させるボールベアリングが、使用される。ただし、上軸受部52および下軸受部53に、すべり軸受等の他の方式の軸受が、使用されていてもよい。
【0024】
ステータコア54およびコイル55は、駆動電流に応じて磁束を発生させる部位である。ステータコア54は、例えば、電磁鋼板を軸方向(中心軸9に沿う方向)に積層した積層鋼板からなる。ステータコア54は、ケース51の内周面に、固定されている。ステータコア54は、径方向(中心軸9に直交する方向)内側へ向けて突出した複数本のティースを有している。コイル55は、ティースの周囲に巻回された導線により、構成されている。
【0025】
本実施形態の回転部12は、シャフト61、ロータコア62、およびマグネット63を有している。
【0026】
シャフト61は、中心軸9に沿って延びる略円柱状の部材である。シャフト61は、上軸受部52および下軸受部53に支持されつつ、中心軸9を中心として回転する。シャフト61の上端部は、上軸受部52より上方へ延びている。シャフト61の上端部には、上流側インペラ20が固定されている。シャフト61の下端部は、下軸受部53より下方へ延びている。シャフト61の下端部には、下流側インペラ30が固定されている。
【0027】
ロータコア62は、上軸受部52と下軸受部53との間において、シャフト61に固定されている。ロータコア62は、略円筒状の外周面を有する。マグネット63は、ロータコア62の外周面に固定されている。マグネット63の径方向外側の面は、ティース541の径方向内側の端面と、周方向に対向する。マグネット63の径方向外側の面には、N極とS極とが、周方向に交互に並ぶように着磁されている。
【0028】
このようなモータ10において、コイル55に駆動電流を与えると、ステータコア54のティースに径方向の磁束が発生する。そして、ティースとマグネット63との間の磁束の作用により、周方向のトルクが発生する。その結果、静止部11に対して回転部12が、中心軸9を中心として回転する。シャフト61に固定された上流側インペラ20および下流側インペラ30は、シャフト61とともに、中心軸9を中心として回転する。
【0029】
上流側インペラ20および下流側インペラ30は、中心軸9に直交する方向に広がる、略円板状の部材である。上流側インペラ20および下流側インペラ30の材料には、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタラート)やPC(ポリカーボネート)等の樹脂が使用される。ただし、本発明の上流側インペラおよび下流側インペラは、樹脂以外の材料、例えば金属からなるものであってもよい。上流側インペラ20および下流側インペラ30は、複数の羽根を有している。上流側インペラ20および下流側インペラ30が回転すると、複数の羽根により、気体が接線方向に加速される。その結果、各インペラ20,30の付近において、中心軸9から離れる方向に、気流が発生する。
【0030】
この遠心ファン1は、ハウジング40の内部において、2つのインペラ20,30を利用して、気流を発生させる。このため、単一のインペラを有するファンと同等の回転数で、高い静圧を得ることができる。つまり、この遠心ファン1は、単一のインペラを有するファンより低い回転数で、同等の静圧を得ることができる。モータ10の回転数を抑制できれば、遠心ファン1の駆動時の騒音や振動も、抑制できる。
【0031】
モータ10、上流側インペラ20、および下流側インペラ30は、ハウジング40の内部に収容されている。図5は、ハウジング40の分解斜視図である。図3〜図5に示すように、本実施形態のハウジング40は、上カバー部材41、第1連結部材42、第2連結部材43、下カバー部材44、および底部材45を、有している。
【0032】
ハウジング40を構成する各部材41〜45の材料には、PBT(ポリブチレンテレフタラート)やPC(ポリカーボネート)等の樹脂が使用される。ただし、本発明のハウジングは、樹脂以外の材料、例えば金属からなるものであってもよい。各部材41〜45は、ねじ止めや係合によって、互いに固定される。また、各部材の間には、図示を省略したエラストマー製のシール材が、挟まれている。当該シール材により、部材41〜45の隙間からの気体の漏れが、防止されている。
【0033】
上カバー部材41は、上流側インペラ20の外周部付近を覆う、環状の部材である。上カバー部材41は、下方へ向かうにつれて径が拡大するように、曲面状に広がっている。上カバー部材41の中央には、外部から気体を吸引する第1吸気口71が、設けられている。第1吸気口71は、上流側インペラ20の中央部の上方に、配置されている。
【0034】
第1連結部材42は、上カバー部材41の下側に配置された、環状の部材である。上カバー部材41と第1連結部材42との間には、上流側インペラ20を収容する第1インペラ室72が、設けられている。すなわち、本実施形態では、上カバー部材41の下面が、第1インペラ室72の上部界面を、構成している。また、第1連結部材42の上面が、第1インペラ室72の下部界面を、構成している。
【0035】
第1インペラ室72は、上流側インペラ20の下方において周方向に延びる第1風洞部721を、含んでいる。第1風洞部721は、第1連結部材42の上面に設けられた円弧状の溝により、形成されている。図4に示すように、本実施形態では、上流側インペラ20の径方向外側の端縁部が、第1風洞部721の径方向中央部より、やや径方向外側に位置している。
【0036】
上流側インペラ20を回転させると、第1吸気口71から第1インペラ室72へ気体が吸引される。そして、第1インペラ室72へ吸引された気体は、上流側インペラ20の中央付近から外周部付近を経て、第1風洞部721へ送られる。
【0037】
第2連結部材43は、第1連結部材42の下側に配置された、環状の部材である。第1連結部材42と第2連結部材43との間には、モータ10の外周面に沿って周方向に延びる中間弧状部73が、設けられている。本実施形態では、第1連結部材42下面に設けられた溝が、中間弧状部73の上部界面を構成している。また、第2連結部材43の上面に設けられた溝が、中間弧状部73の下部界面を構成している。
【0038】
中間弧状部73は、第1インペラ室72と後述する第2インペラ室76とをつなぐ連結流路78の一部分である。中間弧状部73の上流側の端部は、第1風洞部721に連通している。また、中間弧状部73の下流側の端部は、後述するバイパス流路74に連通している。
【0039】
中間弧状部73は、第1インペラ室72と第2インペラ室76との間において、周方向に延びている。このような中間弧状部73を設けることにより、遠心ファン1の軸方向の長さを抑制しつつ、ハウジング40内の流路長さを延ばすことができる。ハウジング40内の流路長さを延ばせば、遠心ファン1の静圧が向上する。したがって、気体の逆流が生じにくくなる。
【0040】
また、本実施形態では、モータ10のケース51の外周面が、中間弧状部73に露出している。このため、モータ10の駆動により発生した熱は、ケース51から中間弧状部73内の気体へ、放散される。つまり、中間弧状部73内の気流によって、モータ10が冷却される。これにより、駆動時におけるモータ10の過熱が、抑制される。モータ10の過熱が抑制されれば、モータ10自体の劣化が防止されるとともに、モータ10の近傍に配置された上軸受部52や下軸受部53の劣化も防止される。
【0041】
特に、本実施形態のケース51は、金属製であるため、樹脂製のケースに比べて、熱伝導率が高い。このため、本実施形態のケース51は、効率よく冷却される。なお、ケース51は、図4のように、外周面の一部分が中間弧状部73に露出していてもよく、外周面の全体が中間弧状部73に露出していてもよい。
【0042】
また、中間弧状部73は、本実施形態のように、略同じ高さ位置で周方向に延びるものであってもよく、徐々に高さ位置を下げつつ螺旋状に延びるものであってもよい。ただし、中間弧状部を螺旋状にすると、中間弧状部が軸方向に長くなる。このため、本実施形態では、中間弧状部73を、ケース51の周囲に、半周以上かつ全周未満の範囲で、設けている。これにより、中間弧状部73の軸方向の寸法を抑制しつつ、ケース51の露出面を広く確保している。
【0043】
中間弧状部73の下流側の端部と、第2インペラ室76とは、バイパス流路74を介してつながっている。バイパス流路74は、中間弧状部73から出た気体を、第2インペラ室76の径方向外側を通って、第2インペラ室76の下部へ導く。本実施形態では、バイパス流路74と上述した中間弧状部73とが、第1インペラ室72と第2インペラ室76とをつなぐ連結流路78を、構成している。図3〜図5に示すように、本実施形態のバイパス流路74は、第1連結部材42、第2連結部材43、下カバー部材44、および底部材45によって、形成されている。
【0044】
下カバー部材44は、下流側インペラ30の外周部付近を覆う、環状の部材である。下カバー部材44は、下方へ向かうにつれて径が縮小するように、曲面状に広がっている。下カバー部材44の中央には、連結流路78から気体を吸引する第2吸気口75が、設けられている。第2吸気口75は、下流側インペラ30の中央部の下方に、配置されている。
【0045】
第2連結部材43と下カバー部材44との間には、下流側インペラ30を収容する第2インペラ室76が、設けられている。すなわち、本実施形態では、第2連結部材43の下面が、第2インペラ室76の上部界面を、構成している。また、下カバー部材44の上面が、第2インペラ室76の下部界面を、構成している。
【0046】
第2インペラ室76は、下流側インペラ30の上方において周方向に延びる第2風洞部761を、含んでいる。第2風洞部761は、第2連結部材43の下面に設けられた円弧状の溝により、形成されている。図4に示すように、本実施形態では、下流側インペラ30の径方向外側の端縁部が、第2風洞部761の径方向中央部より、やや径方向外側に位置している。
【0047】
第2風洞部761の側部には、ハウジング40の外部へ向けて気体を排出する排気口77が、設けられている。排気口77は、接線方向に向けて開口している。図3〜図5に示すように、本実施形態の排気口77は、第2連結部材43と下カバー部材44とで、形成されている。
【0048】
下流側インペラ30を回転させると、第2吸気口75から第2インペラ室76へ気体が吸引される。そして、第2インペラ室76へ吸引された気体は、下流側インペラ30の中央付近から外周部付近を経て、第2風洞部761へ送られ、排気口77を通ってハウジング40の外部へ排出される。
【0049】
このように、ハウジング40の内部には、第1インペラ室72、中間弧状部73、バイパス流路74、および第2インペラ室76を含む流路が、設けられている。モータ10を駆動させると、上流側インペラ20および下流側インペラ30が回転し、第1吸気口71からハウジング40内の流路を通って排気口77へ向かう気流が、形成される。
【0050】
この遠心ファン1では、上流側インペラ20と下流側インペラ30とが、互いに鏡面対称の形状を有する。そして、上流側インペラ20と下流側インペラ30とが、互いに上下を反転させた姿勢で、配置されている。このため、上流側インペラ20による発生圧力と、下流側インペラ30による発生圧力とが、略同等となる。これにより、ハウジング40内の気流が安定する。
【0051】
また、本実施形態では、第1風洞部721を上流側インペラ20の下方に配置し、第2風洞部761を下流側インペラ30の上方に配置している。このため、これらの風洞部721,761を各インペラ20,30の径方向外側に配置する場合と比べて、遠心ファン1の径方向の寸法が、抑制されている。
【0052】
特に、本実施形態では、第2風洞部761および排気口77が、下流側インペラ30より上側に配置されている。このため、第2風洞部761および排気口77を下流側インペラ30の下方に配置する場合より、第1吸気口71と排気口77との間の軸方向の距離が、短縮されている。したがって、遠心ファン1および遠心ファン1を含む医療機器を、小型化できる。
【0053】
また、本実施形態では、第1インペラ室72、中間弧状部73、および第2インペラ室76が、それぞれ、上下に配置された2つの部材の間に、設けられている。このため、各部材41〜45を、金型を利用した射出成型で、容易に作製できる。特に、第1連結部材42は、第1インペラ室72および中間弧状部73の双方の形成に寄与する。また、第2連結部材43は、中間弧状部73および第2インペラ室76の双方の形成に寄与する。これにより、ハウジング40を構成する部材の数が、抑制されている。
【0054】
<3−2.中間弧状部の寸法および断面積について>
図6は、中間弧状部73の付近の部分縦断面図である。図6に示すように、中間弧状部73は、モータ10の外周面に向けて開いた形状を有している。本実施形態では、中間弧状部73の内周部の軸方向寸法d1が、中間弧状部73の径方向中央部の軸方向寸法d2と同等か、寸法d2より大きい。このようにすれば、ケース51の露出面が、広く確保される。したがって、モータ10を、より効率よく冷却できる。
【0055】
また、本実施形態では、中間弧状部73の最外径d3が、第1インペラ室72および第2インペラ室76の最外径d4より、小さい。このようにすれば、第1風洞部721と第2風洞部761とを、より接近させることができる。したがって、遠心ファン1をより小型化できる。
【0056】
また、本実施形態では、中間弧状部73の周方向に直交する断面の面積が、第1風洞部721および第2風洞部761の周方向に直交する断面の面積より、小さい。このようにすれば、中間弧状部73の静圧がより高まる。したがって、中間弧状部73における気体の逆流が、さらに抑制される。
【0057】
<3−3.ラビリンス部について>
図7は、上流側インペラ20および上カバー部材41の部分縦断面図である。図7に示すように、上流側インペラ20の上面には、上方へ向けて突出する第1環状突起21が、設けられている。また、上カバー部材41の下面には、第1環状突起21に対応する第1環状溝411が、設けられている。第1環状突起21の上端部は、第1環状溝411内に配置されている。第1環状突起21と第1環状溝411との間には、周囲より隙間の狭い第1ラビリンス部722が、形成されている。
【0058】
第1吸気口71から第1インペラ室72へ吸引された気体は、第1ラビリンス部722を通って、上流側インペラ20の外周部へ送られる。第1ラビリンス部722は、流路抵抗が大きいため、一旦第1ラビリンス部722を抜けた気体は、再び第1吸気口71側へ逆流しにくい。これにより、ハウジング40内の静圧が、さらに高められる。
【0059】
図8は、下流側インペラ30および下カバー部材44の部分縦断面図である。図8に示すように、下流側インペラ30の下面には、下方へ向けて突出する第2環状突起31が、設けられている。また、下カバー部材44の上面には、第2環状突起31に対応する第2環状溝441が、設けられている。第2環状突起31の下端部は、第2環状溝441内に配置されている。第2環状突起31と第2環状溝441との間には、周囲より隙間の狭い第2ラビリンス部762が、形成されている。
【0060】
第2吸気口75から第2インペラ室76へ吸引された気体は、第2ラビリンス部762を通って、下流側インペラ30の外周部へ送られる。第2ラビリンス部762は、流路抵抗が大きいため、一旦第2ラビリンス部762を抜けた気体は、再び第2吸気口75側へ逆流しにくい。これにより、ハウジング40内の静圧が、さらに高められる。
【0061】
なお、上流側インペラ20および下流側インペラ30は、形状や材料の不均一性が影響して、重心位置が中心軸9と一致しない場合がある。そのような場合には、上流側インペラ20および下流側インペラ30に、それぞれ、重心位置を補正するためのバランス部材を取り付けてもよい。図7の例では、上流側インペラ20の上面のうち、第1環状突起21の近傍に設けられた凹部に、バランス部材22が取り付けられている。また、図8の例では、下流側インペラ30の下面のうち、第2環状突起31の近傍に設けられた凹部に、バランス部材32が取り付けられている。
【0062】
<4.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0063】
図9は、一変形例に係るモータ10C、第1連結部材42C、および第2連結部材43Cの部分縦断面図である。図9のように、モータ10Cのケース51Cの外周面に、ヒートシンク56Cが取り付けられていてもよい。ヒートシンク56Cは、例えば、アルミニウムや銅などの熱伝導率の高い材料からなる。図9のヒートシンク56Cは、径方向外側へ向けて突出する複数のフィン561Cを、有している。このため、ヒートシンク56Cは、中間弧状部73C内の気流と、広い面積で接触する。これにより、モータ10Cが、より効率よく冷却される。
【0064】
特に、図9の例では、複数のフィン561Cの間に、周方向に延びる隙間562Cが確保されている。気体は、隙間562Cを周方向に流れる。これにより、気流と複数のフィン561Cとが、より効率よく接触する。したがって、モータ10Cの冷却効率が、さらに向上する。
【0065】
ハウジングを構成する部材の数は、上記実施形態の通りでなくてもよい。また、各部の寸法関係や細部の形状についても、上記実施形態には限定されない。
【0066】
上流側インペラおよび下流側インペラは、互いに鏡面対称でない異形状であってもよい。また、遠心ファンは、上流側インペラおよび下流側インペラに加えて、他のインペラを有していてもよい。
【0067】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、例えば、医療機器、OA機器、家電製品等に搭載される遠心ファンに、利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1,1A,1B 遠心ファン
9,9A,9B 中心軸
10,10A,10B,10C モータ
11 静止部
12 回転部
20,20A,20B 上流側インペラ
21 第1環状突起
30,30A,30B 下流側インペラ
31 第2環状突起
40,40A,40B ハウジング
41 上カバー部材
42,42C 第1連結部材
43,43C 第2連結部材
44 下カバー部材
45 底部材
51,51C ケース
56C ヒートシンク
61 シャフト
71,71A,71B 第1吸気口
72 第1インペラ室
73,73B,73C 中間弧状部
74 バイパス流路
75 第2吸気口
76 第2インペラ室
77,77A,77B 排気口
78 連結流路
411 第1環状溝
441 第2環状溝
721,721A 第1風洞部
722 第1ラビリンス部
761,761A 第2風洞部
762 第2ラビリンス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる中心軸を中心として回転する上流側インペラと、
前記上流側インペラより下方において、前記中心軸を中心として回転する下流側インペラと、
前記上流側インペラおよび前記下流側インペラを回転させるモータと、
前記上流側インペラ、前記下流側インペラ、および前記モータを内部に収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
外部から気体を吸引する第1吸気口と、
外部へ気体を排出する排気口と、
前記ハウジングの内部において前記第1吸気口と前記排気口とを連通する流路と、
を有し、
前記流路は、
前記上流側インペラの下側において周方向に延び、前記上流側インペラから気流を受ける第1風洞部と、
前記下流側インペラの上側において周方向に延び、前記下流側インペラから気流を受ける第2風洞部と、
を含む遠心ファン。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心ファンにおいて、
前記流路は、
前記上流側インペラを収容する第1インペラ室と、
前記下流側インペラを収容する第2インペラ室と、
前記第1インペラ室と前記第2インペラ室とをつなぐ連結流路と、
を含み、
前記第1吸気口は、前記上流側インペラの上側に位置し、
前記連結流路と前記第2インペラ室との間に設けられた第2吸気口は、前記下流側インペラの下側に位置する遠心ファン。
【請求項3】
請求項2に記載の遠心ファンにおいて、
前記連結流路は、前記第1インペラ室の下方かつ前記第2インペラ室の上方において、周方向に延びる中間弧状部を有する遠心ファン。
【請求項4】
請求項3に記載の遠心ファンにおいて、
前記モータは、前記上流側インペラの下方かつ前記下流側インペラの上方に配置され、
前記モータの外周面の少なくとも一部分が、前記中間弧状部に露出している遠心ファン。
【請求項5】
請求項4に記載の遠心ファンにおいて、
前記モータは、前記中間弧状部に露出する金属製のモータ保持部材を有する遠心ファン。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の遠心ファンにおいて、
前記中間弧状部は、前記モータの周囲に、半周以上かつ全周未満の範囲で、設けられている遠心ファン。
【請求項7】
請求項4から請求項6までのいずれかに記載の遠心ファンにおいて、
前記中間弧状部は、前記モータの外周面に向けて開いた形状を有し、
前記中間弧状部の内周部の軸方向寸法は、前記中間弧状部の径方向中央部の軸方向寸法以上である遠心ファン。
【請求項8】
請求項3から請求項7までのいずれかに記載の遠心ファンにおいて、
前記中間弧状部の周方向に直交する断面の面積は、前記第1風洞部および前記第2風洞部の周方向に直交する断面の面積より、小さい遠心ファン。
【請求項9】
請求項3から請求項8までのいずれかに記載の遠心ファンにおいて、
前記中間弧状部の最外径は、前記第1インペラ室および前記第2インペラ室の最外径より小さい遠心ファン。
【請求項10】
請求項3から請求項9までのいずれかに記載の遠心ファンにおいて、
前記中間弧状部の上流部は、前記第1風洞部に連通し、
前記中間弧状部の下流部は、前記第2インペラ室の径方向外側を通って、前記第2吸気口に連通している遠心ファン。
【請求項11】
請求項3から請求項10までのいずれかに記載の遠心ファンにおいて、
前記第1インペラ室、前記第2インペラ室、および前記中間弧状部は、それぞれ、上下に配置された2つの部材の間に、設けられている遠心ファン。
【請求項12】
請求項11に記載の遠心ファンにおいて、
前記ハウジングは、
前記第1インペラ室の下部界面を構成する上面、および、前記中間弧状部の上部界面を構成する下面を有する第1連結部材と、
前記中間弧状部の下部界面を構成する上面、および、前記第2インペラ室の上部界面を構成する下面を有する第2連結部材と、
を有する遠心ファン。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれかに記載の遠心ファンにおいて、
前記上流側インペラおよび前記下流側インペラは、互いに鏡面対称の形状を有し、互いに上下を反転させた姿勢で、配置されている遠心ファン。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれかに記載の遠心ファンにおいて、
前記上流側インペラは、その上面から上方へ向けて突出する第1環状突起を有し、
前記下流側インペラは、その下面から下方へ向けて突出する第2環状突起を有し、
前記ハウジングは、前記第1環状突起に対応する第1環状溝および前記第2環状突起に対応する第2環状溝を有し、
前記第1環状突起と前記第1環状溝との間、および、前記第2環状突起と前記第2環状溝との間に、周囲より隙間の狭いラビリンス部が形成されている遠心ファン。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれかに記載の遠心ファンにおいて、
前記モータは、インナーロータ型のモータである遠心ファン。
【請求項16】
上下に延びる中心軸を中心として回転する上流側インペラと、
前記上流側インペラより下方において、前記中心軸を中心として回転する下流側インペラと、
前記上流側インペラおよび前記下流側インペラを回転させるモータと、
前記上流側インペラ、前記下流側インペラ、および前記モータを内部に収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
外部から気体を吸引する吸気口と、
外部へ気体を排出する排気口と、
前記ハウジングの内部において前記吸気口と前記排気口とを連通する流路と、
を有し、
前記流路は、
前記上流側インペラの下方かつ前記下流側インペラの上方において、周方向に延びる中間弧状部を有する遠心ファン。
【請求項17】
請求項16に記載の遠心ファンにおいて、
前記モータは、前記上流側インペラの下方かつ前記下流側インペラの上方に配置され、
前記モータの外周面の少なくとも一部分が、前記中間弧状部に露出している遠心ファン。
【請求項18】
請求項17に記載の遠心ファンにおいて、
前記モータは、前記中間弧状部に露出する金属製のモータ保持部材を有する遠心ファン。
【請求項19】
請求項17または請求項18に記載の遠心ファンにおいて、
前記中間弧状部は、前記モータの周囲に、半周以上かつ全周未満の範囲で、設けられている遠心ファン。
【請求項20】
請求項17から請求項19までのいずれかに記載の遠心ファンにおいて、
前記中間弧状部は、前記モータの外周面に向けて開いた形状を有し、
前記中間弧状部の内周部の軸方向寸法は、前記中間弧状部の径方向中央部の軸方向寸法以上である遠心ファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−229657(P2012−229657A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98502(P2011−98502)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】