説明

遮熱屋根構造

【課題】少ない柱で屋根を支えている工場等の屋根の上に軽くて遮熱効果の高い遮熱構造を新たに形成可能とする。
【解決手段】第1の屋根16と、第1の屋根16の上に略平行に設けられた複数本の梁状部材18と、梁状部材18の上に取り付けられた第2の屋根32と、第1の屋根16と第2の屋根32の間に設けられた熱反射シート34とを備え、熱反射シートは、多孔質樹脂シート36と、多孔質樹脂シート36の表裏面に一体的に形成された一対の金属反射層38,38とからなり、熱反射シート34の少なくとも表裏いずれかの面側には静止空気を保持する空間40,42が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱反射シートを用いて冷房効果及び暖房効果を高めた遮熱屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷房効果及び暖房効果を高める従来の屋根構造の一例として、屋根材の上に断熱材を載せ、断熱材を屋根材にボルト・ナットで固定したものが知られている。
【0003】
工場の場合、屋根材を広いエリアで柱無しで支えているので、屋根材を支えている梁の強度が小さく、この構造のものは、厚い断熱材を載せることができず、従って、十分な断熱効果を得ることができない。
【0004】
また、この構造のものは、断熱材に雨風が直接当たるので、断熱材が雨風によって劣化し、年月の経過とともに断熱性能が低下し、所望の断熱効果が得られなくなるという問題も有った。
【0005】
この場合、断熱材を別の屋根材で被覆することも考えられるが、別の屋根材で被覆すると梁にかかる荷重が重くなり過ぎ、梁が耐えられなくなるので、断熱材を軽くしなければならず、そのようにした場合は十分な断熱効果が得られない。
【0006】
また、従来の遮熱屋根構造の他の例として、熱反射シートを貼り付けた屋根材で屋根を形成したものが知られている。
【0007】
この構造のものは、熱反射シートに雨風が直接当たるので、熱反射シートが雨風によって破損し、短期間に所望の遮熱効果が得られなくなる。
【0008】
また、この構造のものは、熱反射シートが屋根材に直接接しているので、熱反射シートと屋根材との間に熱伝導があり、遮熱(断熱)効果が小さい。
【特許文献1】特開2003−90088号公報
【特許文献2】特開2004−100428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、工場のように少ない柱で屋根を支えている建物の場合、その屋根を断熱効果の高い厚い断熱材で被覆すると、屋根が重くなり過ぎて屋根を支えることができなくなるので、屋根の上に断熱効果の高い断熱構造を新たに形成し難い点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、工場のように少ない柱で屋根を支えている建物の場合、その建物の屋根の断熱(遮熱)性能を高めるため、既設屋根と新設屋根の間に熱反射シートを設けたことを最も主要な特徴とする。
【0011】
本発明は、更に詳しくは、第1の屋根と、該第1の屋根の上に略平行に設けられた複数本の梁状部材と、該梁状部材の上に取り付けられた第2の屋根と、該第1の屋根と該第2の屋根の間に設けられた熱反射シートとを備え、該熱反射シートは、多孔質樹脂シートと、該多孔質樹脂シートの表裏面に一体的に形成された一対の金属反射層とからなり、該熱反射シートの少なくとも表裏いずれかの面側には静止空気を保持する空間が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
ここで、前記第1の屋根が既設の屋根であり、前記第2の屋根が新設の屋根であってもよい。また、前記第1の屋根が折板屋根からなり、前記梁状金具は連結金具を介して前記第1の屋根の峰部に連結され、前記熱反射シートは前記第2の屋根と前記梁状金具に挟まれて保持されていてもよい。また、前記第1の屋根が波スレート屋根からなり、前記梁状金具は連結金具を介して前記第1の屋根のフックボルトに連結され、前記熱反射シートは前記梁状金具の上面に支持されていてもよい。また、前記第1の屋根が瓦棒葺き屋根からなり、前記梁状金具は連結金具を介して前記第1の屋根のリブ部に連結され、前記熱反射シートは前記第2の屋根と前記梁状金具に挟まれて保持されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の屋根構造は、第2の屋根の内側に熱反射シートを備えているので、屋外が暑くなっている場合でも、第2の屋根を介して屋内側に入ってきた外部の熱は熱反射シートによって屋外側に反射され、従って、屋外の熱によって屋内が暑くなり難く、また屋内を冷房した場合は冷房費が少なくて済むという利点がある。
【0014】
また、本発明の屋根構造は、第2の屋根の内側に熱反射シートを備えているので、屋外が寒くなっている場合でも、寒気が熱反射シートによって屋外に向けて反射したり、屋内から屋外に逃げようとする熱が熱反射シートによって屋内側に反射されるので、屋内の熱の屋外側への逃散が阻止され、屋内が寒くなり難く、また、屋内を暖房した場合は暖房費が少なくて済むという利点がある。
【0015】
また、本発明の屋根構造は、熱反射シートの少なくとも表裏いずれかの面側に静止空気を保持する空間が形成されているので、屋内と屋外で温度差が有る場合であっても、空気の対流による熱伝導が少なく、屋内と屋外との間の熱の移動が抑制され、屋内が暑くなり過ぎたり、寒くなり過ぎることがなく、また、冷暖房をした場合に冷暖房効率も良好であるという利点がある。。
【0016】
また、本発明の屋根構造は、熱反射シートの上方に第2の屋根が設けられているので、熱反射シートが風雨から保護され、破損が防止され、表面の熱反射能力が維持され、長期の使用に耐えるという利点がある。
【0017】
また、本発明の屋根構造は、熱反射シートの下方に第1の屋根が有るので、熱反射シートが屋内側の空気に含まれる汚れ物質から保護され、表面の熱反射能力が長期に亘って維持され、長期に亘って遮熱(断熱)効果が保たれるという利点がある。
【0018】
また、本発明の屋根構造は、熱反射シートが梁状金具によって支持されているので、熱反射シートが垂れ下がることなく保持されるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
既設屋根の断熱効果を高めるという目的を、熱反射シートという軽量な材料を使用して、遮熱(断熱)構造の耐久性を長期に亘って損なうことなく実現した。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の一実施例に係る遮熱屋根構造の断面図、図2は図1のA−A断面図、図3は熱反射シートの断面図である。これらの図において、10は断面略H字状の鉄骨小梁であり、鉄骨小梁10は水平に設けられている。鉄骨小梁10は複数本が略平行に且つ所定間隔をおいて設けられている。鉄骨小梁10は屋根の峰位置から屋根の軒先位置に向かって低くなるように設けられている。
【0021】
鉄骨小梁10の天端には複数の折板取付金具12が所定間隔をおいて溶接により取り付けられている。鉄骨小梁10に取り付けられた折板取付金具12は他の鉄骨小梁10に取り付けられた折板取付金具12とともに列状に並んでいる。
【0022】
折板取付金具12には折板14が取り付けられている。折板14は断面略逆台形をした長尺の板金材からなる。取り付けられた折板14は縁部が相互に嵌合して連続し、連続した折板14は第1の屋根16を形成している。
【0023】
第1の屋根16の上には梁状の取付け用金属18が水平に取り付けられている。取付け用金属18は断面略L字状の長尺部材からなる。取付け用金属18は複数本が略並行に所定間隔をおいて階段状に取り付けられている。取付け用金属18は折板14に対して略直角に取り付けられている。取付け用金属18は連結金具である取付け用金属固定金具20の凹部22に嵌合し、取付専用ボルト23によって取付け用金属固定金具20に固定された状態で第1の屋根16のリブ24に連結されている。
【0024】
取付け用金属18の上には小型の折板である小型金属屋根材26が取付専用ビス28によって取り付けられている。隣り合う小型金属屋根材26は専用ビス30によって端部近傍で連結されて連続し、連続した小型金属屋根材26は第2の屋根32を形成している。
【0025】
取付け用金属18と第2の屋根32との間には熱反射シート34が挟まれた状態で設置されている。熱反射シート34は、多孔質樹脂シート36と、多孔質樹脂シート36の表裏面に一体的に形成された一対の金属反射層38,38とにより構成されている。金属反射層38はアルミニウムからなる。熱反射シート34の端部はジョイントアルミテープ(図示せず)により連結され、2次元方向に広がっている。
【0026】
熱反射シート34と第1の屋根16との間には静止空気空間40が形成され、熱反射シート34と第2の屋根32との間には静止空気空間42が形成されている。
【実施例2】
【0027】
図4は本発明の他の実施例に係る遮熱屋根構造の断面図、図5は図4のB−B断面図である。これらの図において、44は断面略C字状の母屋であり、母屋44は複数本が略平行に且つ所定間隔をおいて設けられている。母屋44は水平に、且つ屋根の峰位置から屋根の軒先位置に向かって低くなるように設けられている。
【0028】
母屋44の上には大波スレート46が載置されている。大波スレート46はフックボルト48によって母屋44に固定されている。フックボルト48は一方の端部に折れ曲がったフック部50を有し、他方の端部にボルト部52を有する棒状体からなる。フックボルト48はフック部50が母屋44に係合し、ボルト部52が大波スレート46を貫通して突出し、突出したボルト部52にナット54が螺合して大波スレート46を外から固定している。隣り合う大波スレート46の縁部は重なり合い、縁部が重なり合った複数枚の大波スレート46は第1の屋根56を形成している。
【0029】
第1の屋根56の上には複数本の取付け用金属18が取付け用金属固定金具58を介して第1の屋根56に取り付けられている。取付け用金属18は断面略L字状の長尺部材からなる。取付け用金属18は複数本が略並行に所定間隔をおいて階段状に取り付けられている。取付け用金属18は大波スレート46のリブに対して略直角に取り付けられている。
【0030】
取付け用金属固定金具58はフックボルト48が取り付けられている部位に取り付けられている。取付け用金属固定金具58はフックボルト48のボルト部52が貫通した状態で取り付けられている。取付け用金属固定金具58はボルト部52に螺合された専用ナット60により大波スレート46に押し付けられた状態で固定されている。
【0031】
取付け用金属18の上には小型の折板である小型金属屋根材26が専用ビス28によって取り付けられている。隣り合う小型金属屋根材26は専用ビス30によって端部近傍で連結されて連続し、連続した小型金属屋根材26は第2の屋根32を形成している。
【0032】
取付け用金属18と第2の屋根32との間には熱反射シート34が挟まれた状態で設置されている。熱反射シート34は、多孔質樹脂シート36と、多孔質樹脂シート36の表裏面に一体的に形成された一対の金属反射層38,38とにより構成されている(図3参照)。金属反射層38はアルミニウムからなる。熱反射シート34の端部はジョイントアルミテープ(図示せず)により連結され、2次元方向に広がっている。
【0033】
熱反射シート34と第1の屋根56との間には静止空気空間40が形成され、熱反射シート34と第2の屋根32との間には静止空気空間42が形成されている。
【実施例3】
【0034】
図6は本発明の他の実施例に係る遮熱屋根構造の断面図、図7は図6のC−C断面図である。これらの図において、44は断面略C字状の母屋であり、母屋44は複数本が略平行に且つ所定間隔をおいて設けられている。母屋44は水平に、且つ屋根の峰位置から屋根の軒先位置に向かって低くなるように設けられている。
【0035】
母屋44の上には瓦棒葺き62が下地材64を介して載置されている。瓦棒葺き62及び下地材64は母屋44にボルト66で固定されている。瓦棒葺き屋根には略平行な複数条のリブが峰から軒先に向けて形成されている。瓦棒葺き62及び下地材64によって第1の屋根68が形成されている。
【0036】
第1の屋根68の上には複数本の取付け用金属18が取付け用金属固定金具70を介して第1の屋根68に取り付けられている。取付け用金属18は断面略コ字状の長尺部材からなる。取付け用金属18は複数本が略並行に所定間隔をおいて階段状に取り付けられている。取付け用金属18は凹部22に嵌合し、取付専用ボルト23によって取付け用金属固定金具70に固定された状態で第1の屋根のリブ72に対して略直角に取り付けられている。取付け用金属固定金具70は第1の屋根68のリブ72に取り付けられている。
【0037】
取付け用金属18の上には小型の折板である小型金属屋根材26が専用ビス28によって取り付けられている。隣り合う小型金属屋根材26は専用ビス30によって端部近傍で連結されて連続し、連続した小型金属屋根材26は第2の屋根32を形成している。
【0038】
取付け用金属18と第2の屋根16との間には熱反射シート34が挟まれた状態で設置されている。熱反射シート34は、多孔質樹脂シート36と、多孔質樹脂シート36の表裏面に一体的に形成された一対の金属反射層38,38とにより構成されている(図3参照)。金属反射層38はアルミニウムからなる。熱反射シート34の端部はジョイントアルミテープ(図示せず)により連結され、2次元方向に広がっている。
【0039】
熱反射シート34と第1の屋根68との間には静止空気空間40が形成され、熱反射シート34と第2の屋根32との間には静止空気空間42が形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は屋根を遮熱して冷房効率及び暖房効率を高めるために使用するものであるが、壁や床に適用して冷房効率及び暖房効率を高めることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第一実施例に係る遮熱屋根構造の断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】熱反射シートの断面図である。
【図4】本発明の第二実施例に係る遮熱屋根構造の断面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】本発明の第三実施例に係る遮熱屋根構造の断面図である。
【図7】図6のC−C断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 鉄骨小梁
12 折板取付金具
14 折板
16 第1の屋根
18 取付け用金属
20 取付け用金属固定金具
22 凹部
24 リブ
26 小型金属屋根材
28 専用ボルト
30 専用ビス
32 第2の屋根
34 熱反射シート
36 多孔質樹脂シート
38 金属反射層
40 静止空気空間
42 静止空気空間
44 母屋
46 大波スレート
48 フックボルト
50 フック部
52 ボルト部
54 ナット
56 第1の屋根
58 取付け用金属固定金具
60 専用ナット
62 瓦棒葺き
64 下地材
66 ボルト
68 第1の屋根
70 取付け用金属固定金具
72 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の屋根と、該第1の屋根の上に略平行に設けられた複数本の梁状部材と、該梁状部材の上に取り付けられた第2の屋根と、該第1の屋根と該第2の屋根の間に設けられた熱反射シートとを備え、該熱反射シートは、多孔質樹脂シートと、該多孔質樹脂シートの表裏面に一体的に形成された一対の金属反射層とからなり、該熱反射シートの少なくとも表裏いずれかの面側には静止空気を保持する空間が形成されていることを特徴とする遮熱屋根構造。
【請求項2】
前記第1の屋根が既設の屋根であり、前記第2の屋根が新設の屋根であることを特徴とする請求項1に記載の遮熱屋根構造。
【請求項3】
前記第1の屋根が折板屋根からなり、前記梁状部材は連結金具を介して前記第1の屋根に連結され、前記熱反射シートは前記第2の屋根と前記梁状部材に挟まれて保持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮熱屋根構造。
【請求項4】
前記第1の屋根が波スレート屋根からなり、前記梁状部材は連結金具を介して前記第1の屋根のフックボルトに連結され、前記熱反射シートは前記梁状部材の上側に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮熱屋根構造。
【請求項5】
前記第1の屋根が瓦棒葺き屋根からなり、前記梁状部材は連結金具を介して前記第1の屋根のリブ部に連結され、前記熱反射シートは前記第2の屋根と前記梁状部材に挟まれて保持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮熱屋根構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−111260(P2008−111260A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294209(P2006−294209)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(301066051)株式会社 桑本賢一設計事務所 (5)
【Fターム(参考)】