説明

部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマー

本発明は、アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル25〜95質量%と、アニオン性基を有する(メタ)アクリラートモノマー5〜75質量%のラジカル重合された単位からなる、含まれるアニオン性基の0.1〜25%が塩基で中和されている、部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーにおいて、前記塩基が(150)を超える分子量を有するカチオン性の有機塩基であることを特徴とする部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーに関する。本発明は、さらに部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーを有する医薬剤形ならびに所定のpH値で作用物質を迅速に放出する医薬剤形の製造のための部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマーの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマー、それにより被覆された医薬剤形、医薬剤形の製造方法及び作用物質を所定のpH値で急速に放出する医薬剤形を製造するための部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマーの使用に関する。
【0002】
先行技術
EP 0 088 951 A2は、水中に分散された被覆材料を用いて医薬剤形を被覆する方法を記載している。カルボキシル基を含有する(メタ)アクリラートコポリマーを粉末から分散液に再分散させるために、カルボキシル基の部分的な中和が推奨される。酸基の塩形成は、塩基を用いた反応により行われる。塩基としては、アルカリ、例えば苛性ソーダ、苛性カリ、ソーダ、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム又はアンモニア又は生理学的に認容性のアミン、例えばトリエタノールアミン又はトリス−(ヒドロキシメチル)−アミノメタンが挙げられる。この再分散に関して、コポリマー中に含まれるカルボキシル基の0.1〜10質量%の中和度が有利である。
【0003】
WO 2004/096185は、医薬剤形及びその製造方法を記載している。この医薬剤形は、アニオン性(メタ)アクリラートコポリマーで被覆されていて、前記コポリマーは必要な場合に部分的に中和されていてもよい。アニオン性コポリマーの溶液を製造するために、一般に酸基の部分的又は完全な中和が必要である。
【0004】
このアニオン性コポリマーは、例えば徐々に水中に1〜40質量%の最終濃度で撹拌混合することができ、その際、塩基性物質、例えばNaOH、KOH、水酸化アンモニウム又は有機塩基例えばトリエタノールアミンの添加により部分的に又は完全に中和させることができる。既にその製造の際に(部分)中和の目的で塩基、例えばNaOHが添加されて、粉末が既に(部分)中和されたポリマーであるコポリマーの粉末を使用することも可能である。溶液のpH値は、一般に4を超え、例えば4〜約7の範囲内にある。
【0005】
課題及び解決手段
例えばEUDRAGIT(R) L, EUDRAGIT(R) L100-55, EUDRAGIT(R) S又はEUDRAGIT(R) FSのタイプのアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーは、医薬剤形用の腸液可溶性の被覆として公知である。モノマー組成物に依存して、特にアニオン性基の含有量に依存して、このアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーは、腸液又は人工腸液中での特異的な溶解pH値により特徴付けられる。ポリマーのタイプに応じて、特異的な溶解pH値もしくは特異的に溶解し始めるpH値は例えばpH5.5〜7.5の範囲内にある。それぞれのアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーに対して特異的な溶解pH値からそれ以上は、従って被覆された医薬剤形は含有する作用物質を放出する。この特異的な溶解pH値は、従って作用物質の放出開始を特徴付けている。
【0006】
アニオン性(メタ)アクリラートコポリマーは部分的に中和された形で使用されることは公知である。それにより、水中での前記ポリマーの可溶性の改善及びポリマー分散液の安定化が達成される。部分的な中和のための塩基として、一般に、NaOH、KOH、水酸化アンモニウム又は有機塩基、例えばトリエタノールアミンのような物質が推奨される。
【0007】
例えばNaOHで部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートからなるフィルムと、部分的に中和されていないフィルムとを比較した場合に、部分的に中和されたフィルムは、部分的に中和されていないフィルムよりもその特異的な溶解pH値の際に緩衝系中でより急速に溶解することが確認される。
【0008】
同様のことが、部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーを医薬剤形の被覆材料としての使用についても該当し、前記医薬剤形は含まれる作用物質をUSP28による放出試験において作用物質放出開始の特異的なpH値で、部分的に中和されていない同じポリマー被覆を有する比較可能な医薬剤形よりもより急速に放出する。
【0009】
一連の治療のために、使用された(メタ)アクリラートコポリマーに対して特異的なpH値で生じるこのような促進された作用物質放出挙動を示す医薬剤形が望ましい。発明者は、しかしながら、先行技術により公知の塩基が部分的な中和のために使用されかつ前記フィルム又は医薬剤形がまずpH1.2で2時間曝され、その後で作用物質放出を開始する特異的pH値に再緩衝された場合に、部分的に中和されたフィルムの及び部分的に中和されたフィルムで被覆された医薬剤形の上記の挙動は生じないか又は弱まって生じることを確認した。この条件はまさに、医薬剤形がまず胃に達し、次いで初めて腸管に運ばれる場合に、生体内で生じる。アニオン性(メタ)アクリラートコポリマーの公知の部分的な中和は、従って、促進された作用物質放出挙動を達成するために適していない。
【0010】
従って、本発明の課題は、被覆された医薬剤形が含まれる作用物質を特異的な溶解pH値から促進して放出するアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーを調製することであった。
【0011】
前記課題は、アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル25〜95質量%と、アニオン性基を有する(メタ)アクリラートモノマー5〜75質量%のラジカル重合された単位からなる、含まれるアニオン性基の0.1〜25%が塩基で中和されている、部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーにおいて、前記塩基が150を超える分子量を有するカチオン性の有機塩基であることを特徴とする部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーにより解決される。
【0012】
発明の実施
アニオン性(メタ)アクリラートコポリマー
本発明は、部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーに関する。
【0013】
このアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーは、25〜95、有利に40〜95、特に60〜40質量%までアクリル酸又はメタクリル酸のラジカル重合したC1〜C4−アルキルエステルからなり、75〜5、有利に60〜5、特に40〜60質量%までアニオン性基を有する(メタ)アクリラート−モノマーからなる。
【0014】
一般に、前記の割合は合計して100質量%になる。しかしながら、付加的に、本質的な特性に悪影響を及ぼさないか又は本質的な特性を変化させずに、少量の、0〜10、例えば1〜5質量%の範囲内で他のビニル系の共重合可能なモノマー、例えばヒドロキシエチルメタクリラート又はヒドロキシエチルアクリラートを含有していてもよい。他のビニル系の共重合可能なモノマーは含有されていないのが有利である。
【0015】
アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステルは、特にメチルメタクリラート、エチルメタクリラート、ブチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート及びブチルアクリラートである。
【0016】
アニオン性基を有する(メタ)アクリラートモノマーは、例えばアクリル酸、有利にメタクリル酸である。
【0017】
メタクリル酸40〜60質量%とメチルメタクリラート60〜40質量%又はエチルアクリラート60〜40質量%からなるアニオン性(メタ)アクリラートコポリマー(EUDRAGIT(R) L又はEUDRAGIT(R) L100-55タイプ)が適している。
【0018】
EUDRAGIT(R) Lは、メチルメタクリラート50質量%とメタクリル酸50質量%とからなるコポリマーである。腸液又は人工腸液中で特異的な作用物質放出を開始するpH値は、pH6.0である。
【0019】
EUDRAGIT(R) L100-55は、エチルアクリラート50質量%とメタクリル酸50質量%とからなるコポリマーである。EUDRAGIT(R) L 30 D-5は、EUDRAGIT(R) L 100-55を30質量%含有する分散液である。腸液又は人工腸液中で特異的な作用物質放出を開始するpH値は、pH5.5である。
【0020】
同様に、メタクリル酸20〜40質量%と、メチルメタクリラート80〜60質量%とからなるアニオン性(メタ)アクリラートコポリマー(EUDRAGIT(R) Sタイプ)が適している。腸液又は人工腸液中で特異的な作用物質放出を開始するpH値は、pH7.0である。
【0021】
メチルメタクリラート10〜30質量%と、メチルアクリラート50〜70質量%と、メタクリル酸5〜15質量%とからなる(メタ)アクリル酸コポリマー(EUDRAGIT(R) FSタイプ)が適している。腸液又は人工腸液中で特異的な作用物質放出を開始するpH値は、pH7.0である。
【0022】
EUDRAGIT(R) FSはメチルメタクリラート25質量%、メチルアクリラート65質量%及びメタクリル酸10質量%からなるコポリマーである。EUDRAGIT(R) FS 30 Dは、EUDRAGIT(R) FSを30質量%含有する分散液である。
【0023】
更に、
メタクリル酸及び/又はアクリル酸20〜34質量%と、
メチルアクリラート20〜69質量%と、
エチルアクリラート0〜40質量%と、及び/又は場合により
他のビニル系の共重合可能なモノマー0〜10質量%とから構成されたコポリマー(ただし、前記コポリマーのISO 11357-2,ポイント3.3.3によるガラス転移温度は高くても60℃である)が適している。この(メタ)アクリラートコポリマーは、その良好な破断点伸び特性により、特にペレットからタブレットへの圧縮成形のために適している。
【0024】
更に、
メタクリル酸及び/又はアクリル酸20〜33質量%と、
メチルアクリラート5〜30質量%と、
エチルアクリラート20〜40質量%と、
ブチルメタクリラート10より多く〜30質量%と、
場合により
他のビニル系の共重合可能なモノマー0〜10質量%(その際、前記モノマーの割合は合計で100%となる)とから構成されたコポリマー(ただし、前記ポリマーのISO 11357-2,ポイント3.3.3によるガラス転移温度(glass transition temperature)(中心点温度Tmg)は55〜70℃である)が適している。このタイプのコポリマーは、その良好な機械的特性により、特にペレットからタブレットへの圧縮成形のために適している。
【0025】
上記コポリマーは、特に次のラジカル重合した単位から構成されている:
メタクリル酸又はアクリル酸、有利にメタクリル酸20〜33、有利に25〜32、特に有利に28〜31質量%、
メチルアクリラート5〜30、有利に10〜28、特に有利に15〜25質量%、
エチルアクリラート20〜40、有利に25〜35、特に有利に18〜22質量%ならびに
ブチルメタクリラート10より多く〜30、有利に15〜25、特に有利に18〜22質量%、
その際、前記モノマー組成は、コポリマーのガラス転移温度が55〜70℃、有利に59〜66、特に有利に60〜65℃であるように選択される。
【0026】
ガラス転移温度とは、この場合、特にISO 11357-2,ポイント3.3.3による中心点温度Tmgであると解釈される。この測定は、可塑剤の添加なしで、100ppmより低い残留モノマー含有量(REMO)で、10℃/minの加熱速度でかつ窒素雰囲気下で行われる。
【0027】
このコポリマーは、有利に、主に乃至もっぱら、上記の量の範囲で、90、95又は99〜100質量%までモノマーのメタクリル酸、メチルアクリラート、エチルアクリラート及びブチルメタクリラートからなる。
【0028】
しかしながら、付加的に、本質的な特性に悪影響を及ぼさせずに、少量の、0〜10、例えば1〜5質量%の範囲内で他のビニル系の共重合可能なモノマー、例えばメチルメタクリラート、ブチルアクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ビニルピロリドン、ビニルマロン酸、スチレン、ビニルアルコール、酢酸ビニル及び/又はそれらの誘導体を含有していてもよい。
【0029】
アニオン性(メタ)アクリラートコポリマーの製造
アニオン性(メタ)アクリラートコポリマーの製造は、自体公知のようにモノマーのラジカル重合により行うことができる(例えばEP 0 704 207 A2及びEP 0 704 208 A2参照)。この本発明によるコポリマーは、自体公知のように、例えばDE-C 2 135 073に記載の方法によりラジカル乳化重合により水相中で有利にアニオン性乳化剤の存在で製造することができる。
【0030】
この共重合体はラジカル重合の慣用の方法により連続的に又は不連続的(バッチ法)にラジカル生成する開始剤及び場合により分子量を調節するために調節剤の存在で、塊状で、溶液中で、パール重合により又はエマルション中で製造することができる。この平均分子量Mw(重量平均、例えば溶液粘度の測定により決定)は、例えば80000〜1000000(g/mol)の範囲内にあることができる。水相中で、水溶性開始剤及び(有利にアニオン性の)乳化剤の存在での乳化重合が有利である。
【0031】
塊状重合の場合には、このコポリマーは固体の形で、破砕、押出、造粒又はホットカットにより得ることができる。
【0032】
この(メタ)アクリラートコポリマーは、自体公知のように、ラジカルによる塊状重合、溶液重合、パール重合、乳化重合によって得られる。このコポリマーは、加工の前に、適当な粉砕、乾燥又は噴霧プロセスにより、本発明による粒度範囲にしなければならない。これは、押し出されかつ冷却された顆粒ストランドの簡単な破砕又はホットカットによって行うことができる。
【0033】
特に、他の粉末又は液体との混合の際に、粉末の使用が有利である。粉末の製造のための適当な装置は当業者には周知であり、例えばエアジェットミル、ピン付きディスクミル、扇形ミルである。場合により、相応する篩別工程を行ってもよい。工業的な大容量の適当なミルは、例えば約6barの加圧で運転されるリバースジェットミル(Multi No. 4200)である。
【0034】
部分的な中和
Mw>150、有利に>155、特に有利に>160、例えば>150〜20000を有する適当なカチオン性の有機塩基は次のものである:
カチオン性の塩基性アミノ酸、ヒスチジン、アルギニン及び/又はリシン。アミノ酸のグルタミン及びアスパラギンは適していない、それというのもこれらはプロトン化されていない酸アミド官能基を有し、従ってカチオン性塩基に分類することができないためである。
【0035】
例えばヒスチジン、アルギニン又はリシンの3〜100、有利に5〜25個の単位からなる天然又は合成のオリゴマー又はポリマー、ポリ−ヒスチジン、ポリアルギニン、ポリリシン、
カチオン性もしくは両性イオン性のリン脂質、例えばホスファチジルコリン。
【0036】
リボヌクレオシド:リボースの炭素原子1のヒドロキシル官能基と塩基のアデニン、グアニン、シトシン、チミン又はウラシルの複素環式実の官能基との縮合生成物、RNA中で存在するものに相当。
【0037】
デオキシリボヌクレオシド:デオキシリボースの炭素原子1のヒドロキシル官能基と塩基のアデニン、グアニン、シトシン、チミン又はウラシルの複素環式実の官能基との縮合生成物、DNA中で存在するものに相当。
【0038】
カチオン性の表面活性助剤又は乳化剤からなる塩基、例えばベンザルコニウム(CAS RN: 8001-54-5)、ベンゼトニウム(CAS 121-54-0)、セタルコニウム(CAS 122-18-9)、セトリミド(CAS 8044-71-1)、セトリモニウム(CAS 57-09-0)、セチルピリジニウム(CAS 123-03-5)、ステアラルコニウム(CAS 122-19-0)、ジアリルジメチルアンモニウム(CAS 230-993-8)。
【0039】
EP 0 088 951 A2又はWO 2004/096185に明確に挙げられているか又はこれから誘導することができる塩基は本発明の目的に適していない。特に次のものは除外される:苛性ソーダ液、苛性カリ液(KOH)、水酸化アンモニウム又は、トリエタノールアミンのような有機塩基、ソーダ、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム又はアンモニア又はトリエタノールアミン又はトリス−(ヒドロキシメチル)アミノメタンのような生理学的に認容性のアミン。
【0040】
この塩基は、高くても150のMwを有する(トリエタノールアミン)。トリエタノールアミンは、その分子量についてアミノ酸のヒスチジン、アルギニン、リシンの場合と近いにもかかわらず、本発明による効果は、前記物質を用いた場合に生じないかもしくは不十分である。リン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウムは、カチオン性の性質を示さず、相応する酸の塩である。水酸化アンモニウム、苛性ソーダ、苛性カリ(KOH)、ソーダ、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムは低い分子量を有するだけで、無機塩基に分類される。
【0041】
前記物質の分子量は公知であるか、分子中に存在する原子に基づき原子量により計算することができる。
【0042】
混合物による部分的な中和度の調節
部分的な中和度を調節する場合の方法技術的利点は、混合物によっても生じることができる。本発明は、アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル25〜95質量%と、アニオン性基を有する(メタ)アクリラートモノマー5〜75質量%のラジカル重合された単位からなる、異なる部分的な中和度を有するアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーの混合物において、前記混合物の計算された平均値において含まれるアニオン性基の0.1〜25%が塩基で中和されていて、前記塩基は150を超える分子量を有するカチオン性有機塩基であることを特徴とする、異なる部分的な中和度を有するアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーの混合物に関する。例えば、アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル25〜95質量%と、アニオン性基を有する(メタ)アクリラート−モノマー5〜75質量%のラジカル重合された単位からなる、部分的に中和されていないアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーを、同じモノマー組成の部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマーと、前記の量的な範囲内で混合することで、混合物の計算された平均値において得られたアニオン性基の0.1〜25%が中和されていることも可能である。この混合物は、例えば、部分的に中和されていないアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーの分散液中に、部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーの分散液から、噴霧乾燥又は凍結乾燥により得られた粉末を混入することによって製造することもできる。
【0043】
150を超える分子量を有するカチオン性の有機塩基は本発明の原則に従って、例えばヒスチジン、アルギニン、リシン、ポリヒスチジン、ポリアルギニン、ポリリシン、リン脂質、例えばホスファチジルコリン、リボヌクレオシド又はデオキシリボヌクレオシド、カチオン性の表面活性助剤又は乳化剤からなる塩基である。
【0044】
混合物
本発明による部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマーは、さらに他の調剤学的に利用されるコポリマーとの混合して、この特性を変性するために適している。これは、特別に変性された放出プロフィールを調節する場合の当業者の製造の自由度を高める。本発明は、従って、メチルメタクリラート及び/又はエチルアクリラート及び場合により5質量%より少ないメタクリル酸からなるコポリマー、メチルメタクリラート、ブチルメタクリラート及びジメチルエチルメタクリラートからなるコポリマー、メチルメタクリラート、エチルアクリラート及びトリメチルアンモニウムメチルメタクリラートからなるコポリマー、メチルメタクリラート及びエチルアクリラートからなるコポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコール−グラフト−コポリマー(Kollicoat(R))、デンプン及びその誘導体、ポリビニルアセタートフタラート(PVAP、Coateric(R))、ポリビニルアセタート(PVAc、Kollicoat)、ビニルアセタート−ビニルピロリドン−コポリマー(Kollidon(R) VA64)、ビニルアセタート:クロトン酸コポリマー9:1(VAC : CRA, Kollicoat(R) VAC)、1000(g/mol)を超える分子量を有するポリエチレングリコール、キトサン、架橋した及び/又は架橋していないポリアクリル酸、アルギン酸Na、及び/又はペクチンとの混合物の形で存在することを特徴とする部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマーに関する。
【0045】
分散液
部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマーは、例えば10〜50%の固体割合を有する水性分散液の形で存在することができる。
【0046】
この部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマーは、分散液から例えば噴霧乾燥によって得られた分散可能な粉末の形で存在することができる。
【0047】
分散液/部分的な中和
この乳化重合体は、有利に10〜50質量%、特に20〜40質量%の水性分散液の形で製造されかつ使用される。市販形態として、30質量%の固体含有量が有利である。加工のために、メタクリル酸単位の部分的中和は不必要であるが、しかしながら、例えば被覆剤分散液の安定化又は増粘が望ましい場合には、これは5〜10Mol%までの範囲内で可能である。ラテックス−粒子サイズ(半径)の重量平均値は、一般に40〜100nm、有利に50〜70nmであり、これは加工技術的に望ましい1000mPa・sより低い粘度を保証する。この粒子サイズは、例えばマスターサイザー2000(Malvern社)を用いてレーザー回折によって決定することができる。
【0048】
例えば10〜50Mol%までの高い中和度又は完全な中和の場合に、前記コポリマーは溶解した状態に移行することができる。
【0049】
アニオン性コポリマーの溶液を製造するために、一般に酸基の部分的又は完全な中和が必要である。このアニオン性コポリマーは、例えば徐々に水中に1〜40質量%の最終濃度で撹拌混合することができ、その際、本発明による塩基性物質、例えばリシン又はアルギニンの添加により部分的に又は完全に中和させることができる。既にその製造の際に(部分的な)中和の目的で塩基、例えばリシンが添加されて、粉末が既に(部分的に)中和されたポリマーであるコポリマーの粉末を使用することも可能である。溶液のpH値は、一般に4を超え、例えば4〜約7の範囲内にある。この場合、例えば完全に又は部分的に中和された分散液のバッチを、中和されていない分散液と混合し、前記したようにさらに加工する、つまり被覆のための混合物を使用するか又はまず粉末に凍結乾燥又は噴霧乾燥することができる。
【0050】
この分散液は、例えば公知のように噴霧乾燥又は凍結乾燥されていてもよく、再分散可能な粉末の形で提供することができる(例えばEP-A 0 262 326参照)。他の方法は、凍結乾燥又は凝固及び押出機中での水の絞り出しに引き続き造粒である(例えばEP-A 0 683 028参照)。
【0051】
噴霧乾燥又は凍結乾燥されかつ再分散された粉末からなるコポリマー分散液は高い剪断安定性を有することができる。これは特にスプレー塗布の場合に有利である。この利点は、特に、分散液中に含まれるコポリマーが2〜10Mol%まで、有利に5〜7Mol%まで部分中和された形で存在する場合に強化される(コポリマー中に含まれる酸基に対して)。この目的のためにリシン又はアルギニンの添加による部分的な中和が有利である。アニオン性乳化剤は0.1〜2質量%の量で含まれるのが有利である。乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウムが特に有利である。
【0052】
部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマーの使用
この部分中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーは、USP28による放出試験においてpH1.2で2時間及び引き続き作用物質放出を開始するpH値に再緩衝させることで、含まれる作用物質の90%、有利に95%又は100%を、部分的に中和されていないか又は他の本発明によらない塩基で部分的に中和されている同じポリマー被覆を有する比較可能な医薬剤形の場合にこのために経過する時間の多くても90%、有利に多くても75%、特に多くても50%で放出する医薬剤形用の被覆材料として使用することができる。
【0053】
本発明によらない医薬剤形をUSP28による放出試験においてpH1.2で2時間及び引き続き作用物質放出を開始するpH値、例えばpH5.5に再緩衝させることで、例えば120minで90%まで作用物質が放出される場合に、比較可能な本発明による医薬剤形は、このために長くても108min(前記時間の90%)、長くても90min(75%)又は長くても60min(50%)を必要とする。
【0054】
当業者には、USP28による、特にUSP28<711>パドル法(=装置2)による放出試験は十分に公知である。
【0055】
典型的な試験手順は次のように行われる:
1. 放出装置の容器を、それぞれ0.1M−HCl(pH1.2)360mLで満たし、水浴の温度を37±0.5℃に設定する。
2. ブレード撹拌機を100rpmの回転速度で始動させる。
3. 装置のそれぞれの容器中にペレット1gを添加する。ペレット表面に気泡が存在しないことに留意する。
4. 120min後にリン酸塩緩衝溶液140mL(37℃に熱処理)を添加することで、500mLの最終容量中で所望のpH値を生じさせた。pH5.5;5.6;5.7;5.8又は7.0。
5. 作用物質に応じた100%の作用物質放出の時点の決定を、例えばテオフィリンの場合に、循環法において、271nmでの測光により決定した。
【0056】
医薬剤形
本発明は、製剤学的作用物質を有するコアと、部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマーからなるポリマー被覆とを有する医薬剤形に関する。
【0057】
この医薬剤形は、有利に中和剤としてリシン又はアルギニンを有するポリマー被覆を可塑剤5〜25質量%と組み合わせて含有することができる。
【0058】
この相応する医薬剤形は、例えば、多粒子型の医薬剤形、ペレット含有錠剤、ミニタブレット、カプセル剤、サシェ、発泡錠剤又はドライシロップの形で存在することができる。
【0059】
分離層
この医薬剤形は、有利に作用物質含有コアとポリマー被覆との間に、場合により結合剤及び150を超える分子量を有するカチオン性の有機塩基を含有する層を有することができる。この層は、個々の場合に、医薬剤形の表面を通して作用物質を放出する塩基は内側からも供給されるという利点を有する。この構造によって作用物質放出をさらに促進することができる。
【0060】
この医薬剤形は、製剤学的作用物質を有するコアとポリマー被覆との間に分離層を有することができる。この分離層は、有利にコアの成分とポリマー被覆の成分との接触を抑制する目的で用いることができる。この分離層は、不活性な皮膜形成剤(例えばHPMC、HPC又は(メタ)アクリル酸−コポリマー)又は例えばタルク又は他の適当な製剤学的物質からなることができる。同様に、皮膜形成剤及びタルク又は同様の物質からなる組合せを使用することもできる。
【0061】
医薬剤形の製造方法
本発明は、さらに、自体公知のように製剤学的に通常の方法を用いて、例えば直接圧縮成形、乾燥顆粒、湿潤顆粒又は焼結顆粒の圧縮成形、押出及び引き続く面取り加工、湿式造粒又は乾式造粒、又は直接的なペレット化を用いて又は、作用物質を有しない球又は中性のコア(ノンパレル)又は作用物質含有粒子上へ粉末の結合(粉末積層)及び吹き付け法又は流動層造粒でのポリマー被覆の塗布による本発明による医薬剤形の製造方法に関する。
【0062】
多粒子型の医薬剤形の製造
本発明は、特に多粒子型の医薬剤形の製造のために適している、それというのも本発明によるコポリマーはペレットを充填剤と共に圧縮成形する際の高圧に耐えるためである。
【0063】
製剤学的に通常の結合剤と作用物質含有粒子との圧縮成形による多粒子型の医薬剤形の製造は、例えばBeckert et al.著、"Compression of enteric-coated pellets to disintegrating tablets", International Journal of Pharmaceutics 143, 第13〜23頁及びWO 96/01624に明確に記載されている。
【0064】
作用物質含有のペレットは、積層プロセスを用いて作用物質を適用することにより製造することができる。このために、作用物質は他の助剤(離型剤、場合により可塑剤)と一緒に均質化され、かつ結合剤中に溶解又は懸濁されせる。流動層法を用いて、液体をプラセボペレット又はその他の適当な支持材料上に塗布し、その際、溶剤又は懸濁剤を蒸発させることができる(文献:International Journal of Pharmaceutics 143, p. 13 - 23)。この製造方法の後に乾燥工程を続けることができる。この作用物質は複数の層中に適用することができる。
【0065】
いくつかの作用物質、例えばアセチルサリチル酸は、作用物質結晶の形で市販されており、作用物質含有ペレットの代わりにこの形で使用することができる。
【0066】
作用物質含有ペレット上のフィルム被覆は、通常では流動層装置中で塗布される。配合例は本願明細書中に記載されている。皮膜形成剤は、通常では可塑剤と離型剤とを適当な方法により混合する。この場合、前記皮膜形成剤は溶液又は懸濁液として存在してもよい。この皮膜形成剤用の助剤は、同様に溶解又は懸濁されていてもよい。有機又は水性の溶剤又は分散剤を使用することができる。この分散液の安定化のために、更に安定剤を使用することができる(例えば:Tween 80又は他の適当な乳化剤もしくは安定剤)。
【0067】
離型剤の例は、グリセロモノステアラート又は他の適当な脂肪酸誘導体、シリカ誘導体又はタルクである。可塑剤の例は、プロピレングリコール、フタラート、ポリエチレングリコール、セバカート又はシトラート、並びに文献に記載された他の物質である。
【0068】
作用物質含有層と腸溶性コポリマー層との間に、分離層が設けられていてもよく、この分離層は相互作用を抑制する目的で作用物質と被覆剤とを分離するために用いられる。この層は、不活性な皮膜形成剤(例えばHPMC、HPC又は(メタ)アクリル酸−コポリマー)又は例えばタルク又は他の適当な製剤学的物質からなることができる。同様に、皮膜形成剤及びタルク又は同様の物質からなる組合せを使用することもできる。
【0069】
部分的に又は完全に中和されたコポリマー分散液からなる分離層を塗布することもできる。
【0070】
被覆された粒子からなるタブレットを製造するための混合物は、ペレットを、タブレット化のための適当な結合剤と混合し、必要な場合に崩壊促進物質を添加し、必要な場合に潤滑剤を添加することにより調製される。この混合は、適当な装置中で行うことができる。被覆された粒子の損傷を引き起こすミキサー、例えば鋤刃型ミキサーは適していない。適当な短い崩壊時間を達成するために、被覆粒子に助剤を添加する場合に特別な順序が必要なこともある。被覆された粒子に潤滑剤又は離型剤のステアリン酸マグネシウムと予備混合することにより、この表面を疎水化し、それにより粘着を回避することができる。
【0071】
タブレット化のために適した混合物は、通常では崩壊助剤、例えばKollidon CL 3〜15質量%及び例えば潤滑剤及び離型剤、例えばステアリン酸マグネシウム0.1〜1質量%を含有する。結合剤の割合は、被覆された粒子の必要な割合によって決定される。
【0072】
典型的な結合剤は、例えば、Cellactose(R)、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、Ludipress(R)、ラクトース又は他の適当な糖、硫酸カルシウム又はデンプン誘導体である。嵩密度が低い物質が有利である。
【0073】
典型的な崩壊助剤(崩壊剤)は、架橋デンプン誘導体又はセルロース誘導体、並びに架橋ポリビニルピロリドンである。同様にセルロース誘導体が適している。適当な結合剤の選択により崩壊剤の使用を省略できる。
【0074】
典型的な潤滑剤及び離型剤は、ステアリン酸マグネシウム又は他の適当な脂肪酸の塩又は文献中にこの目的のために記載された物質(例えば、ラウリン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク等)である。適当な装置(例えば、外部潤滑を備えたタブレット成形装置)又は適当な調製物の使用の際に、混合物中での潤滑剤及び離型剤の使用は省略できる。
【0075】
この混合物は、場合により流動性を改善するための助剤が添加されていてもよい(例えば高分散性シリカ誘導体、タルク等)。
【0076】
このタブレットは、通常のタブレット成形装置、偏心−又は回転タブレット成形装置で行うことができ、圧縮圧力は5〜40kN、有利に10〜20kNの範囲内にある。このタブレット成形装置は、外部潤滑のためのシステムを備えていてもよい。場合により、マトリックス充填のために特別なシステムを使用し、撹拌羽根を用いたマトリックス充填は避けられる。
【0077】
本発明による医薬剤形のための他の製造方法
塗布方法は、有機溶剤、又は有利に水性分散剤のスプレー塗布を用いて、溶融により又は直接粉末塗布により行う。この実施のために、この場合に均質でかつ無孔性の被覆を得ることが重要である。
【0078】
先行技術による塗布方法は、例えばBauer, Lehmann, Osterwald, Rothgang著、「Ueberzogene Arzneiformen」、Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH Stuttgart, 第7章、第165〜196頁参照。
【0079】
この適用のために、関連のある特性、必要な試験及び仕様は薬局方に記載されている。
【0080】
詳細は、一般的な教書、例えば次の教書に記載されている:
− Voigt, R.著(1984):Lehrbuch der pharmazeutischen Technologie;Verlag Chemie Weinheim - Beerfield Beach/Florida - Basel.
− Sucker, H., Fuchs, P., Speiser, P.著:Pharmazeutische Technologie, Georg Thieme Verlag Stuttgart (1991),特に第15章及び第16章、第626頁〜第642頁.
− Gennaro, A.,R. (編者), Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton Pennsylvania (1985), 第88章、第1567頁〜第1573頁.
− List, P. H.(1982)著: Arzneiformenlehre, Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH, Stuttgart。
【0081】
実施例
テオフィリン−ペレットのUSP28<711>パドル法(=装置2)による放出試験
手順:
1. 放出装置の容器を、それぞれ0.1M−HCl(pH1.2)360mLで満たし、水浴の温度を37±0.5℃に設定した。
2. ブレード撹拌機を100rpmの回転速度で始動させた。
3. 装置のそれぞれの容器中にペレット1gを添加した。ペレット表面に気泡が存在しないことに留意する。
4. 120min後にリン酸塩緩衝溶液140mL(37℃に熱処理)を添加することで、500mLの最終容量中で所望のpH値を生じさせた。pH5.5;5.6;5.7;5.8又は7.0。
5. 100%の作用物質放出の時点の決定(271nmでの測光、循環法で)。結果は表1に記載。
【0082】
【表1】

【0083】
実施例1 リシンを用いた配合
リシンを用いて部分的に中和されたEUDRAGIT L 30 D 55を用いたペレット被覆。
【0084】
0.7〜1.0mmの粒子サイズを有するKlinge Pharma社のテオフィリン−ペレット100gに、次の配合を有するポリマー分散液(メタクリル酸50質量%及びエチルアクリラート50質量%からなるメタクリラートコポリマー)の30%乾燥物質で被覆した。塗布の総乾燥含有量は、バッチ量に対して35.7質量%であった。
【0085】
作用物質の90質量%の放出試験は表1参照。
【0086】
【表2】

【0087】
ヒュットリンマイクロラブ(Huettlin Mycrolab)中でのスプレーパラメータ:
スプレーノズル 0.6mm
スプレー速度 26g/min/kg
スプレー圧力 1.0bar
微小気候(Microklima) 0.6bar
給気 エアフロー 20m3
給気温度 33〜39℃
生成物温度 26〜29℃
装置中での乾燥時間 40℃で10min
スプレー時間 1.5〜2h
室温(RT)で一晩中乾燥
【0088】
実施例2 NaOHを用いた配合
NaOHを用いて部分的に中和されたEUDRAGIT L 30 D 55を用いたペレット被覆。
【0089】
0.7〜1.0mmの粒子サイズを有するKlinge Pharma社のテオフィリン−ペレット100gに、次の配合を有するポリマー分散液(メタクリル酸50質量%及びエチルアクリラート50質量%からなるメタクリラートコポリマー)の30%乾燥物質で被覆した。塗布の総乾燥含有量は、バッチ量に対して33.11質量%であった。
【0090】
作用物質の90質量%の放出試験は表1参照。
【0091】
【表3】

【0092】
ヒュットリンマイクロラブ(Huettlin Mycrolab)中での吹き付けパラメータ:
スプレーノズル 0.6mm
スプレー速度 27g/min/kg
スプレー圧力 1.0bar
微小気候(Microklima) 0.6bar
給気 エアフロー 20m3
給気温度 33〜40℃
生成物温度 26〜30℃
装置中での乾燥時間 40℃で10min
スプレー時間 1〜1.5h
RTで一晩中乾燥
【0093】
実施例3 部分的な中和なしの配合
部分的な中和なしでのEUDRAGIT L 30 D 55を用いたペレット被覆。
【0094】
0.7〜1.0mmの粒子サイズを有するKlinge Pharma社のテオフィリン−ペレット100gに、次の配合を有するポリマー分散液(メタクリル酸50質量%及びエチルアクリラート50質量%からなるメタクリラートコポリマー)の30%乾燥物質で被覆した。塗布の総乾燥含有量は、バッチ量に対して32.111質量%であった。作用物質の90質量%の放出試験は表1参照。
【0095】
【表4】

【0096】
ミニグラット(MiniGlatt)中でのスプレーパラメータ
スプレーノズル 0.5mm
スプレー速度 1〜2g/min
スプレー圧力 0.8bar
給気 0.7bar
給気温度 35〜37℃
生成物温度:32〜33℃
装置中での乾燥時間 40℃で10min
スプレー時間 約2〜3h
RTで一晩中乾燥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル25〜95質量%と、アニオン性基を有する(メタ)アクリラートモノマー5〜75質量%のラジカル重合された単位からなる、含まれるアニオン性基の0.1〜25%が塩基で中和されている、部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーにおいて、前記塩基が150を超える分子量を有するカチオン性の有機塩基であることを特徴とする部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマー。
【請求項2】
150を超える分子量を有するカチオン性の有機塩基は、ヒスチジン、アルギニン、リシン、ポリヒスチジン、ポリアルギニン、ポリリシン、リン脂質、例えばホスファチジルコリン、リボヌクレオシド又はデオキシリボヌクレオシド、カチオン性の表面活性助剤又は乳化剤からなる塩基であることを特徴とする、請求項1記載の部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマー。
【請求項3】
アニオン性(メタ)アクリラートコポリマーは、メタクリル酸40〜60質量%及びメチルメタクリラート60〜40質量%又はエチルアクリラート60〜40質量%のラジカル重合された単位からなることを特徴とする、請求項1又は2記載の部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマー。
【請求項4】
10〜50%の固体割合を有する水性分散液の形で存在することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマー。
【請求項5】
請求項4記載の分散液から得られた再分散可能な粉末の形で存在することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマー。
【請求項6】
メチルメタクリラート及び/又はエチルアクリラート及び場合により5質量%より少ないメタクリル酸からなるコポリマー、メチルメタクリラート、ブチルメタクリラート及びジメチルエチルメタクリラートからなるコポリマー、メチルメタクリラート、エチルアクリラート及びトリメチルアンモニウムメチルメタクリラートからなるコポリマー、メチルメタクリラート及びエチルアクリラートからなるコポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコール−グラフト−コポリマー(Kollicoat(R))、デンプン及びその誘導体、ポリビニルアセタートフタラート(PVAP、Coateric(R))、ポリビニルアセタート(PVAc、Kollicoat)、ビニルアセタート−ビニルピロリドン−コポリマー(Kollidon(R) VA64)、ビニルアセタート:クロトン酸コポリマー9:1(VAC : CRA, Kollicoat(R) VAC)、1000(g/mol)を超える分子量を有するポリエチレングリコール、キトサン、架橋した及び/又は架橋していないポリアクリル酸、アルギン酸Na、及び/又はペクチンとの混合物の形で存在することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマー。
【請求項7】
アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル25〜95質量%と、アニオン性基を有する(メタ)アクリラートモノマー5〜75質量%のラジカル重合された単位からなる、異なる部分的な中和度を有するアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーの混合物において、前記混合物の計算された平均値において含まれるアニオン性基の0.1〜25%が、請求項2記載の塩基で中和されていることを特徴とする、異なる部分的な中和度を有するアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーの混合物。
【請求項8】
製剤学的作用物質を有するコアと、請求項1から6までのいずれか1項記載の部分的に中和された(メタ)アクリラートコポリマーとからなるポリマー被覆とを有する医薬剤形。
【請求項9】
ポリマー被覆が、部分的な中和剤としてリシン又はアルギニンを有することを特徴とする、請求項8記載の医薬剤形。
【請求項10】
ポリマー被覆は中和剤としてリシン又はアルギニンを可塑剤5〜25質量%と組み合わせて含有することを特徴とする、請求項9記載の医薬剤形。
【請求項11】
作用物質を含有するコアとポリマー被覆との間に、場合により結合剤及び150を超える分子量を有するカチオン性の有機塩基とを含有する層が存在することを特徴とする、請求項8から10までのいずれか1項記載の医薬剤形。
【請求項12】
製剤学的作用物質を有するコアとポリマー被覆との間に分離層が設けられていることを特徴とする、請求項8から10までのいずれか1項記載の医薬剤形。
【請求項13】
公知のような製剤学的に通常の方法、例えば直接圧縮成形、乾燥顆粒、湿潤顆粒、又は焼結顆粒の圧縮成形、押出、及び引き続く面取り加工、湿式造粒又は乾式造粒、又は直接的なペレット化を用いて、又は作用物質を含まない球体又は中性のコア(ノンパレル)又は作用物質含有粒子上への粉体の結合(粉末積層)及び吹付け方法又は流動層造粒でのポリマー被覆の適用による、請求項8から12までのいずれか1項記載の医薬剤形の製造方法。
【請求項14】
USP28による放出試験においてpH1.2で2時間及び引き続き作用物質放出を開始するpH値に再緩衝させることで、含まれる作用物質の90%を、部分的に中和されていないか又は他の塩基で部分的に中和されている同じポリマー被覆を有する比較可能な医薬剤形の場合に経過するこのための時間の多くても90%で放出する医薬剤形用の被覆材料としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の部分的に中和されたアニオン性(メタ)アクリラートコポリマーの使用。
【請求項15】
医薬剤形は、多粒子型の医薬剤形、ペレット含有錠剤、ミニタブレット、カプセル剤、サシェ、発泡錠剤又はドライシロップの形で存在することを特徴とする、請求項14記載の使用。

【公表番号】特表2008−530319(P2008−530319A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555461(P2007−555461)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013513
【国際公開番号】WO2006/087027
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】