説明

部品キットを用いた生産システム

【課題】生産に必要な部品を集めた部品キットの形成の信頼性を向上させる。
【解決手段】複数の部品が収納された部品収納部と、製品を生産するために必要な複数の部品を部品収納部より取り出し集めて部品キットを形成するロボットとが配置された生産システムは、予め撮像された各種類の部品の像である部品基準画像51、および、各製品のための部品キットに含まれるべき部品の情報である部品キット構成部品情報52を記憶する記憶手段と、ロボットにより実際に形成された部品キットを撮像する撮像手段6と、それにより撮像された部品キットの画像と部品基準画像51とを比較し、部品キットに実際に含まれている部品の種類と数を特定する部品特定手段42aと、それによって特定された部品の種類および数と部品キット構成部品情報52とを比較し、必要な部品が部品キットに過不足なく含まれていることを確認する確認手段43とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品に必要な複数の部品を部品収納部から取り出して部品キットを形成し、部品キットに含まれる部品を組み立てて製品を生産する生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器などの製品は、一般に、最終的に複数の部品を組み立てることによって生産される。このような製品の組み立てでは、単一の製品を大量に生産する場合には、組立作業工程毎に作業場所が分離されたライン生産システムが効率的である。
【0003】
これに対して、近年の市場要求の多様化に伴い、単一の生産現場において多種の製品の組立を行う「多品種混流セル生産システム」が広がりを見せている。このような生産システムでは、製品を組み立てるのに必要な部品一式を部品トレイ上に集めた部品キットを形成し、組立作業を実施する作業者やロボットに供給する手法が効率的であり、一般によく用いられている。
【0004】
従来、部品キットの形成は人間が行っている例が多い。すなわち、複数種類の部品が収納された部品棚などの部品収納部から人間が製品毎に組み立てに必要な部品一式を集め、集めた部品キットに含まれる部品の種類に誤りがないか、部品の数量に過不足がないかなどを目視により確認した上で、組立作業を実施する作業者やロボットに供給している。
【0005】
また、ロボットにより部品キットの形成と供給を自動化している例もある。この場合、部品収納部に部品を整列させ、それをロボットが取り出すようにした手法がある。また、部品収納部で部品を整列させず、所謂「バラ積み」をし、CCDカメラなどを利用した画像処理によって部品の位置や姿勢を認識し、認識された位置や姿勢に応じてロボットを動作させて部品を取り出す手法が採用される場合もある。バラ積み状態の部品を取り出す場合には、一般的に、熟練した人間が作業をするよりも、ロボットを用いた方が部品キットを形成するのに時間がかかるが、ロボットを24時間稼動させることによって、高い作業能力を発揮させることが可能である。いずれにしても、ロボットを用いることによって、生産コストの低減を図ることができる。
【0006】
一方、供給された部品キットを使用した人間による組立作業においては、組立作業を実施する作業者が、組立作業工程毎に必要な部品を部品キットから取り出して組立作業を進めていく。この際、使用する部品の間違いを完全に排除することはできず、特に、電子部品の組み立てにおいてありがちなように、多数の類似部品を使用する場合には、間違いが起こりやすい。組み立ての間違いをすると、それに気付かずに先の作業工程まで組立作業を実施した後に間違いに気付き、作業工程を遡って組立作業をやり直すことになる場合もある。このため、組み立ての間違いは、生産性を大きく低下させる原因となってしまう恐れがある。また、組立作業をロボットが実施する生産システムの場合でも、ロボットが部品キットから部品を取り損ねることにより正しい組立作業が行われないまま次の作業工程に進行してしまうなどの間違いが発生することが考えられる。このため、組み立ての信頼性を向上させる上で、作業工程の要所で正しい部品が使用されているかを確認することが重要な役割を果たす。
【0007】
このように組立作業の要所で組立作業が正確に実施されていることを検査する手法としては、特許文献1,2に、画像処理を用いた手法が提案されている。これらの手法では、部品の取り付け完了後に製品または半完成品の画像を撮像し、その撮像画像と、部品が正しく取り付けられた場合の撮像画像との一致率に基づいて正確に取り付けが実施されているかどうかを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-147974号公報
【特許文献2】特開2008-170331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
人間が部品キットを形成・供給する場合、部品を集める作業や、集めた部品の目視検査における間違いを排除することはできない。また、部品キットの形成・供給にロボットを用いた場合にも、部品を把持し損なうなどの間違いを完全に排除することは困難である。したがって、生産性や製品の信頼性の向上のため、部品キットの形成・供給の信頼性を向上させることが望まれる。
【0010】
また、前述のように、特許文献1,2では、組立作業の要所で、組み立てられた製品の画像に基づいて組立作業が正確に実施されていることを検査している。この場合、ある方向から製品を撮像したとき、例えば、製品の、撮像される側とは反対側や、他の部品によって覆われる位置に取り付けられた部品を確認するのは困難である。したがって、製品に取り付けられた部品を的確に判定するのには困難を伴う。
【0011】
そこで、本発明は、上記の問題を解決すべく、生産に必要な部品を集めた部品キットの形成の信頼性を向上させることができる生産システムを提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、部品キットから組み立てを行う作業工程において、正しい部品が使用されていることを容易かつ確実に確認することができる生産システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明の生産システムは、複数の部品が収納された部品収納部と、製品を生産するために必要な複数の部品を部品収納部より取り出し集めて部品キットを形成するロボットとが配置された生産システムにおいて、予め撮像された各種類の部品の像である部品基準画像、および、各製品のための部品キットに含まれるべき部品の情報である部品キット構成部品情報を記憶する記憶手段と、ロボットにより実際に形成された部品キットを撮像する第1の撮像手段と、第1の撮像手段により撮像された部品キットの画像と記憶手段に記憶された部品基準画像とを比較し、部品キットの画像中で部品基準画像に対応する部分画像を抽出して、部品キットに実際に含まれている部品の種類と数を特定する第1の部品特定手段と、第1の部品特定手段により特定された部品の種類および数と、記憶手段に記憶された部品キット構成部品情報とを比較し、必要な部品が部品キットに過不足なく含まれていることを確認する第1の確認手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第1の確認手段によって部品キットが正確に形成されているのを確認することができる。それによって、人間の目視による部品キットの確認よりも高精度な確認が可能である。
【0014】
第1の撮像手段は、ロボットに搭載するのが好ましい。それによって、部品キットを種々の位置に配置した状態で撮影し、正確に部品が集められているかどうかを確認することが可能となり、生産システムの融通性が高まる。
【0015】
また、本発明の生産システムは、第1の確認手段により部品の過不足がないことが確認された部品キットがロボットにより供給され、当該部品キットに含まれる部品の組立作業が行われる組立作業部がさらに設けられ、記憶手段には、部品キットに含まれる部品の各組立作業工程で使用すべき部品の情報である組立順序情報が記憶されており、組立作業部に配置された部品キットに含まれる部品を撮像するための第2の撮像手段と、第2の撮像手段により撮像された部品キットの画像と記憶手段に記憶された部品基準画像とを比較し、部品キットの画像中で部品基準画像に対応する部分画像を抽出して、部品キットに実際に含まれている部品の種類と数を特定する第2の部品特定手段と、組立作業工程の開始時に、当該組立作業工程で使用する部品が取り出された後に第2の撮像手段によって撮像された部品キットの画像に基づいて第2の部品特定手段によって特定された部品の種類および数と、当該組立作業工程で使用する部品が取り出される前の部品キットに含まれる部品の種類および数とを比較して、当該組立作業工程で使用される部品を特定する差分特定手段と、差分特定手段により特定された部品が、記憶手段に記憶された組立順序情報における前記の組立作業工程で使用すべき部品と一致していることを確認する第2の確認手段と、をさらに備える構成としてもよい。これによれば、組立作業工程で使用される部品が正しいことを迅速に確認して、間違った部品を使用して、後から遡って組立作業をやりなおすことになるのを回避することができる。この際、本発明では、各部品が組み立てられていない状態で撮像した画像に基づいて部品を特定する。このため、組み立てられた製品または半完成品を撮像する場合のように、部品が他の部品に隠れてしまうといったことがなく、部品の判定を容易にし、判定の信頼性を高めることができる。
【0016】
部品キットの形成時に正確に部品が集められていることを確認するために部品キットを撮像する第1の撮像手段と、組立作業工程で使用される部品を特定するために部品キットを撮像する第2の撮像手段としては、同一の撮像手段を用いることができる。それによって、必要な撮像手段の数を減らし、設備コストを軽減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1の確認手段によって部品キットが正確に形成されているのを確認することができ、それによって、生産に必要な部品を集めた部品キットの形成の信頼性を向上させることができる。また、第2の確認手段を設ければ、部品キットから組み立てを行う作業工程において、正しい部品が使用されていることを容易かつ確実に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態の生産システムにおける生産工程管理システムのブロック図である。
【図2】図1の生産工程管理システムが付属する生産システムの部品キット形成部を説明するための斜視図である。
【図3】図2の部品キット形成部における部品収納部からのロボットによる部品の取り出し方法を示す斜視図である。
【図4】双腕式の垂直多関節型ロボットを用いた場合の部品の別の取り出し方法を示す図である。
【図5】一例の部品キットの詳細を示す図である。
【図6】部品キットの構成部品の部品基準画像と、部品キットの撮像画像の例を示す図である。
【図7】図1の生産工程管理システムが付属する生産システムの組立作業部を説明するための斜視図である。
【図8】図7の組立作業部に部品キットが供給された状態を示す斜視図である。
【図9】組立作業部における部品キットの撮像画像を示す図である。
【図10】図2の部品キット形成部において、撮像手段をロボットに搭載した変形例を示す図である。
【図11】図2の部品キット形成部および図7の組立作業部において、撮像手段をロボットに搭載した変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、複数の部品を集めた部品キットを形成し、その部品キットに含まれる部品を組立作業部で組み立てて所定の製品を製造する生産システムに関するものである。
【0020】
図1は、このような本実施形態の生産システムにおいて、部品キットが正確に形成されたかどうか、および組み立てに適切な部品が使用されているかどうかを確認するための本発明における特徴的な構成部を示すブロック図である。図1に示すように、このような構成部は、生産システムに含まれるロボットなどの機器を、必要に応じて、それを制御するロボット制御装置などと通信して統括制御し、生産の全体を監視する生産工程管理システム40に組み込むことができる。あるいは、このような構成部は、ロボット制御装置に組み込まれたものであってもよく、それによって、生産工程管理システムのような上位の制御装置がない場合には、生産システムの構成を簡素化することができる。
【0021】
図2は、本発明に係る一実施形態の生産システムの部品キット5を形成するための部品キット形成部を示す斜視図である。同図に示すように、この生産システムには、多種多数の部品を収納するための部品収納部1が設置されている。すなわち、部品収納部1には、同一の種類の複数の部品2が収納された部品コンテナ3が、少なくとも2種類以上の部品2の各種類用に少なくとも1つずつ配置されている。図に示す例では、部品収納部1は複数段の棚として構成され、その各段に数種類の部品2用の部品コンテナ3を収容している。
【0022】
部品収納部1の前には、部品収納部1から部品2を取り出して部品キット5を形成し、後述する組立作業部に供給するためのロボット4が配置されている。図には、ロボット4として、単腕式の垂直多関節型ロボットを記載している。しかし、ロボット4としては、双腕式の垂直多関節型、水平多関節型、パラレルリンク型などのロボットを用いてもよく、更には、ロボットアーム部がレール上を移動する形態や、自走式の移動機構を有する形態であってもよい。
【0023】
ロボット4の可動範囲内には、形成中の部品キット5を載せておくための支持台9aが配置されている。なお、支持台9aを省略して、床面上の所定の領域に形成中の部品キット5を配置するようにしてもよい。
【0024】
部品キット5は、部品トレイ11上に、部品収納部1から取り出された複数の部品2が載せられたものである。部品キット5は、所定の製品に必要な全ての部品2が、部品トレイ11上に載せられることによって完成する。本実施形態の生産システムでは、複数の製品についての、したがって、含まれる部品2の種類や数が互いに異なる部品キット5が形成されるものであってよいが、分かりやすくするために、図には、そのような部品キット5の1つのみを示している。
【0025】
支持台9aの周囲には、撮像手段(第1の撮像手段)6が、支持台9a上に配置された部品キット5を上方から撮影できる位置に支持部材9bによって支持されている。撮像手段6としては、対象物の画像を撮像できる任意のものを用いることができるが、例えば、CCDカメラを好適に用いることができる。
【0026】
次に、部品キット5の形成工程について説明すると、まず、支持台9a上に部品トレイ11を用意する。ロボット4は、後述するように、部品トレイ11を含めた部品キット5を組立作業部に供給し、そこで、部品トレイ11上の部品は、作業者または組み立て用のロボットによって組み立てに利用される。そこで、例えば、組み立てが完了して空になった部品トレイ11をロボット4によって支持台9a上に戻すことによって、部品トレイ11を用意することができる。あるいは、ロボット4とは別のコンベヤベルトシステムなどによって部品トレイ11を用意するようにしてもよい。また、部品トレイ11の代わりに、製品の筐体などの所定の部品2を最初に部品収納部1から取り出して、あるいは、コンベヤベルトなどによって搬送して支持台9a上に用意し、その上に他の部品2を載せるようにしてもよい。
【0027】
次に、部品キット5に必要な部品2を部品収納部1から取り出すようにロボット制御装置に動作指令が出力される。このために、生産工程管理システム40には、各製品に対応する部品キット5に必要な部品2の情報である部品キット構成部品情報52を記憶手段41に予め記憶しておき、この部品キット構成部品情報52に基づいて指令を出力することができる。
【0028】
例えば、各部品コンテナ3は、図3に示すように、部品収納部1の棚からスライドさせて引き出すことができるように構成されている。これによって、ロボット4は、取り出す部品2用の部品コンテナ3を引き出し、部品コンテナ3の上方から部品2をつかんで取り出すことができる。あるいは、図4に示すように、ロボット4を、2つのアーム4a,4bを有する双腕式の垂直多関節型ロボットとして構成し、片方のアーム4aで部品コンテナ3を引き出し、もう一方のアーム4bで部品コンテナ3から部品2を取り出すようにしてもよい。
【0029】
部品2は、部品コンテナ3において所定の位置に配置されるように整列させておき、それによって、ロボット4が所定の動作をすることによって容易に部品2を取り出すことができるようにすることができる。あるいは、部品2は部品コンテナ3内にランダムに配置され、すなわち所謂「バラ積み」されたものとしてもよい。この場合には、ロボット4またはその周辺に取り付けられた撮像手段による撮像画像の画像処理によって部品2の位置や姿勢を認識し、認識された位置や姿勢に応じてロボット4を動作させて部品2を取り出すようにすることができる。
【0030】
次に、ロボット4は、取り出した部品2を部品トレイ11上に載せる。部品トレイ11上の部品2を載せる位置は、例えば、部品キット5の各部品2について予め設定しておき、その設定情報に基づいて、ロボット4を動作させることができる。あるいは、撮像手段を利用した画像処理に基づいて、適当な位置に各部品2を配置するようにしてもよい。
【0031】
このように部品2を部品収納部1から取り出し、それを部品トレイ11上に載せる動作を繰り返すことによって、部品キット5が完成する。図5は、このようにして完成した部品キット5の一例を示しており、図5に示す例では、部品キット5は、部品トレイ11上に3種類の部品2a,2b,2cが載せられたものとなっている。
【0032】
このように部品キット5が完成すると、次に、撮像手段6によって部品キット5を撮像し、撮像画像に基づいて、部品特定手段(第1の部品特定手段)42aによって、部品キット5に含まれている部品2を特定する。このために、記憶手段41には、各部品2についての部品基準画像51を予め記憶しておく。この部品基準画像51は、例えば、図6(A)に示すように、各部品2を真上から見た輪郭像であってよい(図6(A)には、部品2a,2b,2cに対応する基準部品画像51a,51b,51cを示している)。部品基準画像51は、各部品2を部品トレイ11上に載せて撮像手段6によって撮像して取得してもよいし、他の撮像手段によって撮像して取得してもよいし、設計情報に基づいて作製してもよい。
【0033】
次に、部品特定手段42aによって、図6(B)に示すような、撮像手段6による部品キット5の撮像画像において、各部品2に対応する基準部品画像51と一致する画像部分8a,8b,8cを抽出することによって、部品キット5に含まれている部品2を特定する。部品2を特定する際は、基準部品画像51と、それに対応する撮影画像部分の輪郭形状の一致の度合いを指標とすることで確実な判定を行うことができるが、幾つかの部品2について輪郭形状の類似性が高い場合は、輪郭形状だけではなく、部品2内の特徴的な形状部分や色なども含めて判別を行うようにしてもよい。また、画像を真上ではなく、斜めの方向から撮影し、それによって、各部品2の側面の形状なども判別に利用できるようにしてもよい。
【0034】
この際、図6(A)に示す例では、基準部品画像51a,51b,51cとしては、各部品2a,2b,2cを一方の側から見た像を用いている。したがって、部品特定手段42aによる判定を適切に行うために、各部品2をロボット4によって部品トレイ11上に載せる際には、上方から見た時に、基準部品画像51として登録されている像に対応する像が得られる所定の姿勢となるようにする。あるいは、各部品2について、部品トレイ11上に載った状態で安定する複数の姿勢での基準部品画像を登録しておいて、各部品2がどのような姿勢で部品トレイ11上に載せられている時でも、あるいは、搬送中に倒れるなどした場合にも、各部品2を特定できるようにしてもよい。
【0035】
次に、部品特定手段42aによって特定された部品2の種類および数が、記憶手段41に記憶された部品キット構成部品情報52に合致しているかどうかを確認手段(第1の確認手段)43によって判定する。それによって、部品キット5が正確に形成されているかどうかを判定することができる。図6に示す例では、撮像手段6による撮像画像中の画像部分8a,8b,8cが、部品キット5を構成するものとして指定された部品2a,2b,2cに対応する部品基準画像51a,51b,51cと一致しているので、部品キット5は、正確に形成されていると判定される。
【0036】
部品キット5が正確に形成されていないことが判定された場合には、ロボット4によって、部品2の入れ替えや補充を行うようにしてもよく、および/または、警報を出してもよい。警報を出すことによって、作業員が、部品キット5の形成を適宜やり直すことができ、さらには、部品収納部1において部品2が不足していたり、部品コンテナ3に、それに対応しない部品2が入っていたりといった、生産システムの不都合がないかも確認することができる。
【0037】
以上のようにして、最終的に、確実に正確に部品2が集められた部品キット5が形成され、次に、この部品キット5が組立作業部に供給される。図7は、組立作業部の一例を模式的に示す斜視図である。同図では、部品キット5の形成のための支持台9aなどの部品キット形成部の構成の一部については図示を省略している。
【0038】
図7に示す例では、ロボット4の可動範囲内に、組立作業台13が配置され、作業者12が、組立作業台13上で部品キット5に含まれる部品2の組立作業を行うようになっている。組立作業台13には、支持部材14を介して撮像手段(第2の撮像手段)15が、組立作業台13上を撮像できるように取り付けられている。撮像手段15は、撮像手段6と同様、例えばCCDカメラであってよい。なお、組立作業台13を省略して、床面上の所定の領域で組立作業を行う構成としてもよい。
【0039】
ロボット4は、支持台9a上で完成された部品キット5を把持して搬送し、組立作業台13上の、撮像手段15による撮像範囲内に設定された所定の位置に載せる。このように部品キット5が組立作業台13上に載せられると、撮像手段15によって、部品キット5が撮像される。そして、前述したのと同様に、部品基準画像51との比較により部品特定手段(第2の部品特定手段)42bによって、初期の部品キット5に含まれる部品2が特定される。すなわち、本実施形態では、撮像手段15によって、組立作業前の初期段階では、図9(A)に示す画像が撮像され、この画像における部分画像16a,16b,16cが、部品2a,2b,2cに対応する部品基準画像51a,51b,51c(図6(A)参照)と一致しているので、これらの部品2a,2b,2cが、初期の部品キット5に含まれるものとして特定される。
【0040】
次に、作業者12が組立作業工程毎に必要な部品2を部品キット5から取り出し、製品の組立作業を行う。この際、各組立作業工程が行われる度に、撮像手段15によって部品キット5の撮像が行われる。図9(B)は、最初の組立作業工程の開始後の撮像画像の例を示している。この画像から、部品特定手段42bによって、部分画像17b,17cが部品基準画像51b,51cと一致していることが判定され、それによって、部品キット5に残されているのが部品2b,2cであると特定される。
【0041】
次に、初期に部品キット5に含まれていた部品2a,2b,2cと、最初の組立作業工程の開始後に部品キット5に含まれている部品2b,2cとの差が、部品2aであることが差分特定手段44によって特定される。このように差分特定手段44によって特定された部品2aは、最初の組立作業工程で使用されたものと判断することができる。
【0042】
次に、最初の組立作業工程で使用されたものとして特定された部品2が、最初の組立作業工程で使用されるべき部品であるかどうかが、確認手段(第2の確認手段)45によって判定される。このために、記憶手段41には、各組立作業工程で使用すべき部品2の情報を組立順序情報53として予め記憶しておき、それを確認手段45が参照するようにする。
【0043】
その後、次の組立作業工程後に、再び部品キット5の残りの部品2を特定し、前の組立作業工程の後に特定された部品キット5の残りの部品2との比較によって、使用された部品2を特定する。このようにして、各組立作業工程毎に、使用された部品2が正しいかどうかを判定することができる。
【0044】
組立作業工程毎に使用された部品2の確認を行うには、例えば、作業員12が、組立作業工程を実行する毎に所定のスイッチなどを操作するようにし、そのような操作が行われた時に確認を行うようにすることができる。あるいは、撮像手段15によって部品キット5を常時、または所定の時間間隔で撮像し、撮像画像に変化が生じた時に、部品キット5に残される部品2の確認を行うようにしてもよい。
【0045】
この際、初期の部品キット5の構成部品に関しては、上述では、部品キット5が作業台13上に配置された時の撮像手段15による撮像画像に基づいて部品特定手段42bによって特定された情報を用いるものとして説明した。しかし、初期の部品キット5の構成部品は、予め記憶手段41に記憶された部品キット構成部品情報52に基づいて特定し、初期の部品キット5の撮影およびそれに含まれる部品2の特定の処理は省略してもよい。
【0046】
各組立作業工程で、部品2が正しくないことが判定された場合には、警報を出して、組立作業の修正を促すことができ、それによって、作業者12は、直に作業をやり直すことができる。その結果、組立作業工程をさらに進めてから間違いに気付いて、遡って組立作業をすることになるのを防止し、生産性の低下を抑制することができる。
【0047】
この際、本実施形態では、各部品2が部品トレイ11上に載せられた状態で撮像した画像に基づいて部品2を特定している。このため、組み立てられた半完成品を撮像する場合のように、部品2が他の部品2に隠れてしまうといったことがなく、その結果、部品2の判定を容易にし、判定の信頼性を高めることができる。
【0048】
なお、上述の実施形態は本発明を例示するものであり、特許請求の範囲に規定する本発明の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、組立作業は、作業者12の代わりに、ロボット4とは別の組立作業用のロボットが実施する構成としてもよい。この場合、確認手段45によって、使用した部品2に誤りがあることが判定された場合には、組立作業用のロボットが組立作業をやり直すようにしてもよいが、警報を出して、作業員が組立作業をやり直すなどの調整をするようにしてもよい。
【0049】
また、部品キット5に残される部品2の確認は、必ずしも、全ての組立作業工程毎に行わなくてもよく、所定の組立作業工程時にのみ行うようにしてもよい。例えば、間違いやすい部品を使用する組立作業工程時や、組立作業工程が半分完了した時などに確認を行うようにしてもよい。
【0050】
また、図10に示すように、部品キット形成部での部品キット5の撮像は、ロボット4の手首部10に取り付けた撮像手段7によって行ってもよい。それによって、形成時に部品キット5を種々の位置に配置しても、ロボット4によって撮像手段7を部品キット5の上方に配置して部品キット5を適切に撮像することが可能となり、生産システムの融通性が高まる。その結果、部品2を集めるのに便利な位置に部品キット5を配置するなどして作業効率を向上させることができる。また、図4に示すような、双腕式のロボット4を用いた場合、一方のアーム4aで部品キット5を任意の位置に保持した状態で、他方のアーム4bに取り付けた撮像手段によって撮像を行うことができる。その結果、部品キット5の撮像は、任意の位置で行うことが可能となり、部品キット5を撮像のために移動させる必要が生じるのを回避して、部品キット5に含まれる部品を確認するのに必要な所要時間を短縮し、作業効率を向上させることができる。また、種々の製品毎に、その製品用の部品キット5を別々の位置で形成するようにし、その際、各製品用の部品キット5に対して、共通の撮像手段7を用いるという構成も可能となる。
【0051】
また、図11(B)に示すように、組立作業部での部品キット5の撮像にも、ロボット4に取り付けた撮像手段30を用いてもよい。さらには、図11(A)に示すように、部品キット形成部での撮像にも、組立作業部での撮像にも、ロボット4に取り付けた共通の撮像手段30を用いてもよい。それによって、複数の撮像手段を設ける必要がなくなり、設備のコストを低減することができる。
【0052】
また、図11に示すように、ロボット4に撮像手段30を取り付けた場合、撮像手段30の撮像画像を利用して、ロボット4によって、次の組立作業工程に必要な部品2を部品トレイ11から取り出して横に置くなどして、作業者12に、次の組立作業工程に必要な部品2がどれであるかを示すようにしてもよい。それによって、作業者12が使用する部品を間違えるのを未然に抑制することができ、また、作業者12が部品を取り出す負担を減らし、組立作業に集中できるようにすることができるという利点も得られる。
【0053】
また、上述の実施形態では、部品キット5の形成と、部品キット5に含まれる部品の組立作業とを別々の場所で行う構成を示したが、部品キット5の形成を組立作業部で行うようにしてもよい。すなわち、例えば、図7の、組立作業台13上に載せた部品トレイ11上に、ロボット4によって部品収納部1から取り出した各部品2を載せるようにしてもよい。この場合にも、部品キット5の形成時の確認と、組立作業時の使用部品の確認とに共通の撮像手段15を用いることができ、設備コストを低減することができる。
【0054】
また、上述の実施形態では、部品キット5の形成と、形成された部品キット5の組立作業部への供給とを単一のロボット4によって行う例を示した。しかし、部品キット5の組立作業部への供給は、別のロボット、またはコンベヤベルトなどの他の機構を用いて行ってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 部品収納部
4 ロボット
6,7,15,30 撮像手段
40 生産工程管理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品が収納された部品収納部と、各製品を生産するために必要な複数の部品を前記部品収納部より取り出し集めて部品キットを形成するロボットとが配置された生産システムにおいて、
予め撮像された各種類の部品の像である部品基準画像、および、各製品のための前記部品キットに含まれるべき部品の情報である部品キット構成部品情報を記憶する記憶手段と、
前記ロボットにより実際に形成された部品キットを撮像する第1の撮像手段と、
前記第1の撮像手段により撮像された前記部品キットの画像と前記記憶手段に記憶された前記部品基準画像とを比較し、前記部品キットの画像中で前記部品基準画像に対応する部分画像を抽出して、前記部品キットに実際に含まれている部品の種類と数を特定する第1の部品特定手段と、
前記第1の部品特定手段により特定された部品の種類および数と、前記記憶手段に記憶された前記部品キット構成部品情報とを比較し、必要な部品が前記部品キットに過不足なく含まれていることを確認する第1の確認手段と、
を備える生産システム。
【請求項2】
前記第1の撮像手段が前記ロボットに搭載されている、請求項1に記載の生産システム。
【請求項3】
前記第1の確認手段により部品の過不足がないことが確認された前記部品キットが前記ロボットにより供給され、当該部品キットに含まれる部品の組立作業が行われる組立作業部がさらに設けられ、
前記記憶手段には、前記部品キットに含まれる部品の各組立作業工程で使用すべき部品の情報である組立順序情報が記憶されており、
前記組立作業部に配置された前記部品キットに含まれる部品を撮像するための第2の撮像手段と、
前記第2の撮像手段により撮像された前記部品キットの画像と前記記憶手段に記憶された前記部品基準画像とを比較し、前記部品キットの画像中で前記部品基準画像に対応する部分画像を抽出して、前記部品キットに実際に含まれている部品の種類と数を特定する第2の部品特定手段と、
組立作業工程の開始時に、当該組立作業工程で使用する部品が取り出された後に前記第2の撮像手段によって撮像された前記部品キットの画像に基づいて前記第2の部品特定手段によって特定された部品の種類および数と、当該組立作業工程で使用する部品が取り出される前の前記部品キットに含まれる部品の種類および数とを比較して、当該組立作業工程で使用される部品を特定する差分特定手段と、
前記差分特定手段により特定された部品が、前記記憶手段に記憶された前記組立順序情報における前記組立作業工程で使用すべき部品と一致していることを確認する第2の確認手段と、
をさらに備える、請求項1または2に記載の生産システム。
【請求項4】
前記第1の撮像手段と前記第2の撮像手段として同一の撮像手段が用いられている、請求項3に記載の生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−188459(P2010−188459A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34142(P2009−34142)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト、人間・ロボット協調型セル生産組立システム(次世代産業用ロボット分野)、(先進工業国対応型セル生産組立システムの開発)」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】