説明

部品内蔵配線板、部品内蔵配線板の製造方法

【課題】内蔵部品接続用の部材が再溶融して配線板としての信頼性が低下することのない部品内蔵配線板およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】第1の絶縁層と、第1の絶縁層に対して積層状に位置する第2の絶縁層と、第2の絶縁層に埋め込まれた電気/電子部品と、第1の絶縁層と第2の絶縁層とに挟まれて設けられた、電気/電子部品の実装用ランドを含む配線パターンと、電気/電子部品の端子と実装用ランドとを接続し、かつ、硬化された樹脂部と、該樹脂部に含有された融点が240℃以下の金属と、該金属の組成金属のひとつである第1の金属が該第1の金属と異なる第2の金属を含む複数元素系相に変化することで融点が260℃以上となる性質の前記第1の金属の該複数元素系相により表面が覆われた上記第2の金属の粒子を含有しかつ上記樹脂部中で該複数元素系相が連接し導電性の骨格構造を形成している導電部とを有する接続部材とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁板中に電気/電子部品を埋設して有する部品内蔵配線板およびその製造方法に係り、特に、部品内蔵によって配線板としての信頼性が低下することを防止するのに好適な部品内蔵配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品内蔵配線板の従来技術として下記特許文献1に開示されたものがある。同文献図1に示されるその構造によると、電気部品の配線層への電気的接続にははんだ(または導電性接着剤)が用いられている。その製造方法は、あらかじめ、コアとなる配線板にはんだ(または導電性接着剤)を用いて電気部品を電気的・機械的に接続する。またこれとは別の絶縁樹脂層に穴あけを行いこの穴に導電性組成物を充填し、先に部品実装したコア板と位置合わせ配置して積層・一体化する。
【0003】
部品内蔵配線板では、この配線板上に別の部品が外部実装されるときや部品内蔵配線板自体が別の配線板に実装されるとき(両者、2次実装ともいう)に、内蔵部品の接続信頼性が損なわれないことが重要である。具体的には、例えば、内蔵部品の接続材料としてはんだが使用される場合、そのはんだの再溶融による接続不良や短絡が発生しないようにする必要がある。
【0004】
同文献には、このような再溶融を防ぐため融点の高い高温はんだを用いることの記述がある(同文献段落0034)。ただしはんだの具体的成分は明らかではない。一般的には、高温はんだとして、Sn−Pb系のPbリッチ材が知られており、Pb−5Sn(融点314℃から310℃)、Pb−10Sn(融点302℃から275℃)のはんだがあるが、はんだ付け温度として300℃以上の高温を必要とする。このような高温では、配線板の絶縁板材料として一般的なエポキシ系の樹脂では耐熱性が不足し適用が困難である。
【0005】
また、電気部品の配線層への電気的接続に導電性接着剤を用いる場合には、導電性接着剤の微視的な構造として微細金属粒どうしの接触で導電性が保たれているため、はんだ接続に比べると電気抵抗が高くなりがちである。さらに、配線層に用いられる銅箔の表面は酸化しやすく導電性接着剤を銅箔上に適用すると銅の酸化はより促進される。したがって、なお電気抵抗の高い接続になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−197849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、絶縁板中に電気/電子部品を埋設して有する部品内蔵配線板およびその製造方法において、内蔵部品接続用の部材が再溶融して配線板としての信頼性が低下することのない部品内蔵配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様である部品内蔵配線板は、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層に対して積層状に位置する第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層に埋め込まれた電気/電子部品と、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに挟まれて設けられた、前記電気/電子部品の実装用ランドを含む配線パターンと、前記電気/電子部品の端子と前記実装用ランドとを接続し、かつ、硬化された樹脂部と、該樹脂部に含有された融点が240℃以下の金属と、該金属の組成金属のひとつである第1の金属が該第1の金属と異なる第2の金属を含む複数元素系相に変化することで融点が260℃以上となる性質の前記第1の金属の該複数元素系相により表面が覆われた前記第2の金属の粒子を含有しかつ前記樹脂部中で該複数元素系相が連接し導電性の骨格構造を形成している導電部とを有する接続部材とを具備することを特徴とする。
【0009】
すなわち、この部品内蔵配線板では、内蔵の電気/電子部品を配線パターンに接続する接続部材が、硬化された樹脂部と、該樹脂部に含有された融点が240℃以下の金属と、該金属の組成金属のひとつである第1の金属が該第1の金属と異なる第2の金属を含む複数元素系相に変化することで融点が260℃以上となる性質の上記第1の金属の該複数元素系相により表面が覆われた上記第2の金属の粒子を含有しかつ樹脂部中で該複数元素系相が連接し導電性の骨格構造を形成している導電部とを有する構成になっている。
【0010】
このような構成の接続部材では、とりわけ、上記導電部中において複数元素系相が連接して形成された骨格構造がその導電性を担っており、この複数元素系相は、上記第1の金属と第2の金属とを含む相であり、融点が260℃以上になるようなものとして選択されている。260℃以上として選択することで2次実装時加熱(例えば高くとも250℃)での溶融を回避でき、再溶融による接続不良や短絡を防止できる。また、この導電性の骨格構造は硬化された樹脂部中に形成されており、骨格構造の隙間は樹脂により埋められ得る。したがって、接続部材中にボイドが発生し信頼性が損なわれることもない。以上により、部品内蔵配線板としての信頼性が保たれる。さらに、接続部材の導電性が導電体による骨格構造によっているので、低抵抗の接続部にすることができる。
【0011】
また、本発明の別の態様である部品内蔵配線板の製造方法は、配線パターンを少なくとも片面に備えた第1の絶縁板の前記配線パターン上であって電気/電子部品が実装されるべき位置に、融点が240℃以下の金属の粒子と該金属の組成金属のひとつを含む相となることで融点が260℃以上になる性質を有する金属の粒子とが分散された硬化前の導電性接着性樹脂を適用する工程と、前記適用された硬化前の導電性接着性樹脂を介して前記配線パターン上に前記電気/電子部品を載置する工程と、前記電気/電子部品を前記配線パターンに固定するように、第1の所定温度に加熱して融点が240℃以下の前記金属の粒子を溶融し融点が260℃以上である前記相を発現させ続いて前記第1の所定の温度より高い第2の所定温度に加熱して前記硬化前の導電性接着性樹脂を硬化させる工程と、前記第1の絶縁板とは異なる第2の絶縁板中に、前記配線パターンに固定された前記電気/電子部品を埋め込むように、前記第1の絶縁板に積層状に前記第2の絶縁板を一体化する工程とを具備することを特徴とする。
【0012】
この製造方法は、上記の部品内蔵配線板を製造するひとつの方法である。電気/電子部品を配線パターンに接続するための導電性接着性樹脂に特徴があり、硬化前の導電性接着性樹脂には、融点が240℃以下の金属の粒子と該金属の組成金属のひとつを含む相となることで融点が260℃以上になる性質を有する金属の粒子とが分散されている。第1の所定温度に加熱することで融点が240℃以下の金属の粒子が溶融する。これ自体ははんだ付けでの現象と類似の現象である。このとき、溶融された金属が別の金属(組成相の変化で融点が260℃以上に上昇する性質を有する金属)と反応して複数元素系相(=融点が260℃以上である相)が発現する。続いて第1の所定温度より高い第2の所定温度に加熱して導電性接着性樹脂中の樹脂を熱硬化させる。
【0013】
上記複数元素系相は、融点が260℃以上の相なので、2次実装時加熱(例えば高くとも250℃)での溶融を回避でき、再溶融による接続不良や短絡を防止できる。また、このような相が発現した状態は、その後硬化された樹脂中に留まることになり、導電部としての構造が樹脂中に固定する。以上により、部品内蔵配線板としての信頼性が保たれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、絶縁板中に電気/電子部品を埋設して有する部品内蔵配線板およびその製造方法において、内蔵部品接続用の部材が再溶融して配線板としての信頼性が低下することのない部品内蔵配線板およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図。
【図2】図1に示した部品内蔵配線板に使用の接続部材51、52の微細な構造を示す説明図。
【図3】図2に示した接続部材中の導電部を得るための材料の例を示す表。
【図4】図2に示した接続部材を構成する複数元素系相の材料例を示す表。
【図5】図1に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図。
【図6】図1に示した部品内蔵配線板の製造過程の別の一部を模式的断面で示す工程図。
【図7】図1に示した部品内蔵配線板の製造過程のさらに別の一部を模式的断面で示す工程図。
【図8】図5(f)に示す実装工程における温度プロファイルの例を示すグラフ。
【図9】図1に示した部品内蔵配線板に使用の半導体素子42を模式的に、やや詳細に示す下面図および断面図。
【図10】図1に示した部品内蔵配線板に使用の半導体素子42についてその製造過程例を模式的断面で示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施態様として、前記接続部材が、前記樹脂部として、該接続部材の前記金属の前記融点より高い熱硬化温度を有する熱硬化性樹脂を有する、とすることができる。この樹脂部は、上記で述べた製造方法によって得られる結果物が有する樹脂部である。すなわち、この場合、樹脂部が熱硬化するより前にこれに含有された金属を溶融することができる。先に熱硬化してしまうと、金属が溶融しても樹脂中でその移動が円滑にはいかず融点が260℃以上となる複数元素系相の形成が減じられる。これを回避して融点が260℃以上となる複数元素系相を意図通り形成させることができる。
【0017】
また、本発明の実施態様として、前記接続部材の前記樹脂部が、その材料としてエポキシ変性ポリイミド樹脂である、とすることができる。エポキシ変性ポリイミド樹脂を使用することでその熱硬化温度を例えば240℃を少し超える程度とすることができる。これにより、この樹脂部が熱硬化するより前にこれに含有された融点が240℃以下の金属を溶融することができる。先に熱硬化してしまうと、融点が240℃以下の金属が溶融しても樹脂中でその移動が円滑にはいかず融点が260℃以上となる複数元素系相の形成が減じられる。これを回避して融点が260℃以上となる複数元素系相を意図通り形成させることができる。
【0018】
また、実施態様として、融点が240℃以下である前記金属が、Sn−In組成系、Sn−Bi組成系、Sn−Zn−Bi組成系、Sn−Ag−In組成系、Sn−Ag組成系、Sn−Cu組成系、およびSn−Sb組成系、ならびにSnからなる群より選択された1種の組成系または金属であり、前記第2の金属が、Ag、Au、Cu、Ni、およびFe、ならびにCu−Ni組成系、Cu−Sn組成系、Ag−Sn組成系、Cu−Zn組成系、およびCo−Sb組成系からなる群より選択された1種以上の金属または組成系である、とすることができる。
【0019】
これによれば、複数元素系相を、CuSn(融点:640.4℃)、CoSn(同:525℃)、CuZn(同:598.8℃)、CuSb(同:586℃)、CoSb(同:770℃)、NiBi(同:469℃)、AgSn(同:480℃)、FeSn(同:496.6℃)、AgCuSn(同:515℃)、またはAuSn(同:278℃)とすることができる。したがって、融点が260℃以上の複数元素系相を実現できる。
【0020】
また、実施態様として、前記接続部材の前記導電部の前記複数元素系相が、CuSn、CoSn、CuZn、CuSb、CoSb、NiBi、AgSn、FeSn、AgCuSn、およびAuSnからなる群から選択された1種以上による相である、とすることができる。これらは上記のように、融点が260℃以上である相の例示である。
【0021】
また、実施態様として、融点が240℃以下である前記金属が、Snと、Ag、Bi、Cu、In、およびZnからなる群より選択された1種以上とを含む第1の合金と、Snと、Agと、Bi、Cu、In、およびZnからなる群より選択された1種以上とを含む第2の合金とを有し、前記第2の金属が、Cuと、Ag、Bi、In、およびSnからなる群より選択された1種以上とを含む合金である、とすることができる。これは、融点が240℃以下である金属として、2種の合金を用いている態様である。融点としてより低温化できる、つまりより低い温度での接続工程を実現できる可能性がある。
【0022】
また、製造方法としての実施態様として、前記硬化前の導電性接着性樹脂が、該導電性接着性樹脂中に分散された融点が240℃以下の前記金属を加熱溶融させたときに該金属を活性化させる性質を有するものである、とすることができる。これは、硬化前における導電性接着性樹脂中の樹脂にフラックスとしての機能を兼ね備えさせたものである。すなわち、240℃以下の金属が加熱溶融する現象自体は、はんだ付けでの現象と類似の現象だからである。
【0023】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、この部品内蔵配線板は、絶縁層11(第1の絶縁板を由来とする)、同12、同13、同14、同15(絶縁層12、13、14、15は第2の絶縁板を由来とする)、配線層(配線パターン)21、同22、同23、同24、同25、同26(=合計6層)、層間接続体31、同32、同34、同35、スルーホール導電体33、チップ部品41、半導体素子(ウエハレベル・チップスケールパッケージによる)42、接続部材51、52、はんだレジスト61、62を有する。
【0024】
この配線板は、内蔵部品として、チップ部品41と半導体素子42とを有する。チップ部品41は、表面実装用のチップ部品であり、ここでは例えばチップコンデンサである。その平面的な大きさは例えば0.6mm×0.3mmであり、両端に端子41aを有し、その下側が配線層22による実装用ランドに対向位置している。チップ部品41の端子41aと実装用ランドとは接続部材51により電気的・機械的に接続されている。
【0025】
半導体素子42は、ウエハレベル・チップスケールパッケージによる半導体素子であり、半導体チップと、該半導体チップ上に形成されたグリッド状配列の表面実装用端子42aとを少なくとも備えている。その構造例および製造工程例については参考例を後述する(図9、図10)。表面実装用端子42aは、概略として、半導体チップがもともと有する端子パッドから再配線層を介して電気的に導通しつつその位置を再配置して設けられた端子である。このような再配置により、端子としての配置密度が半導体チップ上の端子パッドのそれより粗くなっている。これにより、半導体素子42は、チップ部品41と同様の表面実装技術により、配線層22による実装用ランドに、接続部材51と同様の材料である接続部材52を介して実装することができる。
【0026】
ここで、上記言及の接続部材51、52の微細な構造について図2を参照して説明する。図2は、図1に示した部品内蔵配線板に使用の接続部材51、52の微細な構造を示す説明図である。接続部材51、52は、図2(a)右側に示すように、微細な構造として、硬化されている樹脂部503A中に導電部505の骨格構造が形成された構成になっている。この骨格構造はその抜けた部位に樹脂部503Aが満たされ、空隙をもたせないようにしている。
【0027】
導電部505は、さらに詳細には、図2(b)に示す拡大断面図に描かれるように、粒子状の金属の種部502Aとこの表面を覆う複数元素系相512とを有し、種部502Aを覆う複数元素系相512が互いに連接することによって骨格構造になっている。なお、接続部材51、52中には、種部502A、複数元素系相512のほかに、残留はんだ501Aも多少存在する。複数元素系相512は、はんだ粒子501(図2(a)左側を参照)中の金属と種部502A中の金属とによる複数元素系相であり、はんだ粒子501の融点が240℃以下、複数元素系相512の融点が260℃以上となるように、はんだ粒子501および種部502A(種粒子502)の材料が選ばれている。
【0028】
接続部材51、52の上記微細構造には、それらの形成過程が関連している。概略的には、図2(a)左側に示すように、接続部材51、52は、硬化される前の状態として、ペースト状の熱硬化性樹脂503中にはんだ粒子501と種粒子502とが分散された構成を有している(硬化前の接続部材51A、52A[=導電性接着性樹脂])。
【0029】
このような導電性接着性樹脂を加熱してはんだ粒子501を溶解させると、その成分金属と種粒子502が含有する金属とが反応して種粒子502表面が複数元素系相512に変化し、はんだ粒子501の溶解に由来して複数元素系相512は互いに連接する。複数元素系相512が発現するとその融点ははんだ粒子501より高いので、上記加熱の温度程度では固相となって骨格構造になる。種粒子502のうちの未反応部(中心に近い部位)は、複数元素系相512の中に種となって残り種部502Aになる。はんだ粒子501のうち複数元素系相512への変化に残留した分は凝固して残留はんだ501Aになる。
【0030】
上記で、はんだ粒子501を溶解させる温度では、熱硬化性樹脂503は硬化しないようにその材料が選択されている。これにより、はんだ粒子501が溶解したときのその移動を妨げずに溶解金属と種粒子502との反応が円滑になされるようになっている。このような溶解、反応を生じさせた後に、加熱温度を上げて熱硬化性樹脂503を熱硬化させる。この熱硬化により、上記形成された骨格構造を固定化するように骨格構造の隙間に樹脂部503Aが満たされた構造ができあがる。
【0031】
このような構成の接続部材51、52では、とりわけ、上記導電部505中において複数元素系相512が連接して形成された骨格構造がその導電性を担っており、この複数元素系相512は、上記のように、融点が260℃以上になっている。260℃以上とすることで2次実装時加熱(例えば高くとも250℃)での溶融を回避でき、再溶融による接続不良や短絡を防止できる。
【0032】
また、この導電性の骨格構造は硬化された樹脂部503A中に形成されており、骨格構造の隙間はこれにより埋められている。したがって、接続部材51、52中にボイドが発生し信頼性が損なわれることがない。さらに、接続部材51、52の導電性が導電体による骨格構造によっているので、低抵抗の接続部にすることができる。なお、残留はんだ501Aが2次実装時に再溶融することはあり得るが、複数元素系相512へ変化せずに残留した分なのでその量はわずかでありかつ樹脂部503A中に閉じ込められているので、信頼性に対する影響は最小限に抑制できる。
【0033】
図3は、図2に示した接続部材51、52中の導電部505を得るための材料の例を示す表であり、図3(a)は、硬化前の接続部材51A、52A中に含まれるはんだ粒子501の材料例、図3(b)は、同じく種粒子502の材料例である。図3(a)に示すように、これらのはんだ粒子501では、その融点が240℃以下である。はんだ粒子501としてこのような融点の金属材料を用いることで、絶縁層11〜15が有機材料であってもそれに対する加熱温度としてその耐熱温度までには余裕を持たせることができる。図3(b)に示す組成系または金属は、はんだ粒子501の組成金属のひとつと反応してできる複数元素系相が融点として260℃以上を有する組成系または金属として選択されている。
【0034】
図4は、図2に示した接続部材51、52を構成する複数元素系相512の材料例を示す表であり、図3に示した材料のはんだ粒子501と種粒子502とから形成され得る複数元素系相を示している。図4に示すように、これらの複数元素系相512は、その融点が260℃以上となっている。このような複数元素系相512により、2次実装時加熱(例えば高くとも250℃)で溶融は起こらず、再溶融での接続不良や短絡の発生を効果的に防止できる。
【0035】
なお、図4に示す複数元素系相におけるx、y(、z)の比は、単純な整数比になる場合(=化学量論的組成;金属間化合物)のみならず、これからはずれて例えばxの値を固定したときにy(、z)が幅をもった値で存在できる場合もある。例えば、合金(固溶体)相の場合や、組成比の異なる2種以上の金属間化合物が混晶している相の場合である。
【0036】
図4に示す複数元素系相における金属間化合物としては、例えば、CuSn、CuZn、CuSb、AgSn、FeSn、AuSnが知られている。CuSnは、これと組成元素が同じで組成比が異なる異種の金属間化合物であるCuSnと混在して形成される場合があり、この混在比に応じて全体としてx、yの比は単純な整数比ではなくなる。CuSnは、CuSnと比較してもろい性質があるが、その融点が260℃以上であることに変わりはなく、また、導電部505の構造が樹脂部503Aにより補強される構造により、その悪影響を小さく留めることができる。
【0037】
図1に戻り、部品内蔵配線板としてのほかの構造について述べると、配線層21、26は、配線板としての両主面上の配線層であり、その上に各種の部品(不図示)が実装され得る。実装ではんだ(不図示)が載るべき配線層21、26のランド部分を除いて両主面上には、はんだ接続時に溶融したはんだをランド部分に留めかつその後は保護層として機能するはんだレジスト61、62が形成されている(厚さはそれぞれ例えば20μm程度)。ランド部分の表層には、耐腐食性の高いNi/Auのめっき層(不図示)を形成するようにしてもよい。
【0038】
また、配線層22、23、24、25は、それぞれ、内層の配線層であり、順に、配線層21と配線層22の間に絶縁層11が、配線層22と配線層23の間に絶縁層12が、配線層23と配線層24との間に絶縁層13が、配線層24と配線層25との間に絶縁層14が、配線層25と配線層26との間に絶縁層15が、それぞれ位置しこれらの配線層21〜26を隔てている。各配線層21〜26は、例えばそれぞれ厚さ18μmの金属(銅)箔からなっている。
【0039】
各絶縁層11〜15は、絶縁層13を除き例えばそれぞれ厚さ100μm、絶縁層13のみ例えば厚さ300μmで、それぞれ例えばガラスエポキシ樹脂からなるリジッドな素材である。特に絶縁層13は、内蔵されたチップ部品41および半導体素子42に相当する位置部分が開口部となっており、チップ部品41および半導体素子42を埋設するための空間を提供する。絶縁層12、14は、内蔵されたチップ部品41および半導体素子42のための絶縁層13の上記開口部および絶縁層13のスルーホール導電体33内部の空間を埋めるように変形進入しており内部に空隙となる空間は存在しない。
【0040】
配線層21と配線層22とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層11を貫通する層間接続体31により導通し得る。同様に、配線層22と配線層23とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層12を貫通する層間接続体32により導通し得る。配線層23と配線層24とは、絶縁層13を貫通して設けられたスルーホール導電体33により導通し得る。配線層24と配線層25とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層14を貫通する層間接続体34により導通し得る。配線層25と配線層26とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層15を貫通する層間接続体35により導通し得る。
【0041】
層間接続体31、32、34、35は、それぞれ、導電性組成物のスクリーン印刷により形成される導電性バンプを由来とするものであり、その製造工程に依拠して軸方向(図1の図示で上下の積層方向)に径が変化している。その直径は、太い側で例えば200μmである。
【0042】
以上、本実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を説明した。この部品内蔵配線板では、内蔵のチップ部品41、半導体素子42を配線層22に接続する接続部材51、52が、硬化された樹脂部503Aと、この樹脂部503A中に含まれた融点が240℃以下の残留はんだ501Aとを有し、さらに次のような導電部505を有している。すなわち、導電部505は、残留はんだ501Aの組成金属のひとつである金属が別の金属(種部502Aの金属)と反応してできた融点が260℃以上の複数元素系相512と、この複数元素系相512により表面が覆われた上記別の金属の粒子(種部502A)とを含有している。さらに、導電部505は、樹脂部503A中で複数元素系相512が連接し導電性の骨格構造になっている。
【0043】
このような構成の接続部材51、52では、とりわけ、上記導電部505中の、複数元素系相512が連接して形成された骨格構造がその導電性を担っており、この複数元素系相512は、融点が260℃以上になるようなものとして選択されている。260℃以上として選択することで2次実装時加熱(例えば高くとも250℃)での溶融を回避でき、再溶融による接続不良や短絡を防止できる。
【0044】
また、この導電性の骨格構造は硬化された樹脂部503A中に形成されており、骨格構造の隙間は樹脂部503Aにより埋められている。したがって、接続部材51、52中にボイドが発生し信頼性が損なわれることもない。以上により、部品内蔵配線板としての信頼性が保たれる。さらに、接続部材51、52の導電性が導電体による骨格構造によっているので、低抵抗の接続部にすることができる。
【0045】
次に、図1に示した部品内蔵配線板の製造工程を図5ないし図7を参照して説明する。図5ないし図7は、それぞれ、図1に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図である。これらの図において図1中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0046】
図5から説明する。図5は、図1中に示した各構成のうち絶縁層11を中心とした部分の製造工程を示している。まず、図5(a)に示すように、厚さ例えば18μmの金属箔(電解銅箔)22A上に例えばスクリーン印刷により、層間接続体31となるペースト状の導電性組成物をほぼ円錐形のバンプ状(底面径例えば200μm、高さ例えば160μm)に形成する。この導電性組成物は、ペースト状の樹脂中に銀、金、銅などの金属微細粒または炭素微細粒を分散させたものである。説明の都合で金属箔22Aの下面に印刷しているが上面でもよい(以下の各図も同じである)。層間接続体31の印刷後これを乾燥させて硬化させる。
【0047】
次に、図5(b)に示すように、金属箔22A上に厚さ例えば公称100μmのFR−4のプリプレグ11Aを積層して層間接続体31を貫通させ、その頭部が露出するようにする。露出に際してあるいはその後その先端を塑性変形でつぶしてもよい(いずれにしても層間接続体31の形状は、積層方向に一致する軸を有しその軸方向に径が変化している。)。続いて、図5(c)に示すように、プリプレグ11A上に金属箔(電解銅箔)21Aを積層配置して加圧・加熱し全体を一体化する。このとき、金属箔21Aは層間接続体31と電気的導通状態となり、プリプレグ11Aは完全に硬化して絶縁層11になる。
【0048】
次に、図5(d)に示すように、片側の金属箔22Aに例えば周知のフォトリソグラフィによるパターニングを施し、これを、実装用ランドを含む配線パターン22に加工する。そして、加工により得られた実装用ランド上に、図5(e)に示すように、例えばスクリーン印刷により、硬化前の接続部材51A、52Aを印刷・適用する。この接続部材51A、52Aは、スクリーン印刷を用いれば容易に所定パターンに印刷できる。スクリーン印刷に代えてディスペンサを使用することもできる。そして、チップ部品41および半導体素子42を硬化前の接続部材51A、52Aを介して実装用ランド上にそれぞれ例えばマウンタで載置する。
【0049】
硬化前の接続部材51A、52Aとして、ここでは、例えば硬化温度240℃の例えばエポキシ変性ポリイミド樹脂たる熱硬化性樹脂503(図2を参照)中に、例えば、はんだ粒子501(図2を参照)たるSn−3Ag−0.5Cu(融点217℃)の組成の粒子、および種粒子502(図2を参照)たるCu粒子が分散されたものを用いる。その組成比としては、例えば、CuをSn−3Ag−0.5Cuとの全体に対して30wt%、CuおよびSn−3Ag−0.5Cuを熱硬化性樹脂503との全体に対して75wt%とすることができる。なお、組成がSn−3Ag−0.5Cuのはんだ粒子501は、その粒径として例えば10μmないし20μm、Cuの種粒子502は、その粒径として例えば3μmないし40μmとすることができる。
【0050】
硬化前の接続部材51A、52Aには、はんだ粒子501を加熱、溶解させたときにこれを活性化させる性質を有するフラックス成分を含ませておくことができる。このような接続部材51A、52Aによれば、フラックスを適用する工程を別途行う必要がなくなり、生産性を向上させる上で好ましい。
【0051】
チップ部品41、半導体素子42が接続部材51A、52Aを介して実装用ランド上に載置されたら、次に、接続部材51A、52A中に分散されたはんだ粒子501を溶融させるべく加熱(例えば225℃程度)を行う。この加熱では、接続部材51A、52A中の熱硬化性樹脂503を硬化させることなく、はんだ粒子501が有する金属と種粒子502が有する金属との反応により複数元素系相512(図2を参照)を生成させる。この反応時には熱硬化性樹脂503が硬化していないので、樹脂503中で金属の移動は妨げられず反応は円滑に進む。複数元素系相512は225℃程度の温度で固相として発現する。この固相は、互いに連接して骨格構造を形成する。
【0052】
複数元素系相512を生成させる加熱に続いて、次に多少加熱温度を上昇させ(例えば250℃)、熱硬化性樹脂503を熱硬化させる。これにより、上記骨格構造による導電部505(図2を参照)の隙間を埋めるような硬化された樹脂部503A(図2を参照)が形成され、結果、接続部材51、52になる(図5(f)中に示す)。
【0053】
以上説明の、2段階の加熱工程での温度プロファイルは例えば図8に示すように設定することができる。図8は、図5(f)に示す実装工程における温度プロファイルの例を示すグラフである。図8に示すように、徐々に加熱して225℃程度に達したときに一旦この温度を数十秒間保つ。その後温度を250℃に上げてこの温度状態を数十秒間保つ。このように2段階の温度保持を要する点は、はんだ粒子を溶融させる加熱工程のみを有する一般のクリームはんだのリフロー工程と異なる点である。
【0054】
以上により、図5(f)に示すように、接続部材51、52を介してチップ部品41および半導体素子42が配線層22の実装用ランド上に接続された状態の配線板素材1が得られる。この配線板素材1を用いる後の工程については図7で述べる。
【0055】
次に、図6を参照して説明する。図6は、図1中に示した各構成のうち絶縁層13および同12を中心とした部分の製造工程を示している。まず、図6(a)に示すように、両面に例えば厚さ18μmの金属箔(電解銅箔)23A、24Aが積層された例えば厚さ300μmのFR−4の絶縁層13を用意し、その所定位置にスルーホール導電体を形成するための貫通孔73をあけ、かつ内蔵するチップ部品41および半導体素子42に相当する部分に部品用開口部71、72を形成する。
【0056】
次に、無電解めっきおよび電解めっきを行い、図6(b)に示すように、貫通孔73の内壁にスルーホール導電体33を形成する。このとき開口部71、72の内壁にも導電体が形成される。さらに、図6(c)に示すように、金属箔23A、24Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングして配線層23、24を形成する。配線層23、24のパターニング形成により、開口部71、72の内壁に形成された導電体も除去される。
【0057】
次に、図6(d)に示すように、配線層23上の所定の位置に層間接続体32となる導電性バンプ(底面径例えば200μm、高さ例えば160μm)をペースト状導電性組成物のスクリーン印刷により形成する。続いて、図6(e)に示すように、絶縁層12とすべきFR−4のプリプレグ12A(公称厚さ例えば100μm)を配線層23側にプレス機を用い積層する。プリプレグ12Aには、絶縁層13と同様の、内蔵するチップ部品41および半導体素子42に相当する部分の開口部をあらかじめ設けておく。
【0058】
図6(e)の積層工程では、層間接続体32の頭部をプリプレグ12Aに貫通させる。なお、図6(e)における層間接続体32の頭部の破線は、この段階でその頭部を塑性変形させてつぶしておく場合と塑性変形させない場合の両者あり得ることを示す。以上により得られた配線板素材を配線板素材2とする。
【0059】
以上の図6に示した工程は、以下のような手順とすることも可能である。図6(a)の段階では、貫通孔73のみ形成し内蔵部品用の開口部71、72を形成せずに続く図6(b)から図6(d)までの工程を行う。次に、図6(e)に相当する工程として、プリプレグ12A(開口のないもの)の積層を行う。そして、絶縁層13およびプリプレグ12Aに部品内蔵用の開口部を同時に形成する、という工程である。
【0060】
次に、図7を参照して説明する。図7は、上記で得られた配線板素材1、2などを積層する配置関係を示す図である。ここで、図示上側の配線板素材3は、下側の配線板素材1と同様な工程を適用し、かつそのあと層間接続体34およびプリプレグ14Aを、図示中間の配線板素材2における層間接続体32およびプリプレグ12Aと同様にして形成し得られたものである。
【0061】
ただし、配線板素材3は、部品(チップ部品41および半導体素子42)およびこれを接続するための部位(実装用ランド)のない構成であり、さらにプリプレグ14Aにはチップ部品41用の開口部、半導体素子42用の開口部を設けない。そのほかは、金属箔(電解銅箔)26A、絶縁層15、層間接続体35、配線層25、プリプレグ14A、層間接続体34とも、それぞれ配線板素材1の金属箔21A、絶縁層11、層間接続体31、配線層22、配線板素材2のプリプレグ12A、層間接続体32と同じである。
【0062】
図7に示すような配置で各配線板素材1、2、3を積層配置してプレス機で加圧・加熱する。これにより、プリプレグ12A、14Aが完全に硬化し全体が積層・一体化する。このとき、加熱により得られるプリプレグ12A、14Aの流動性により、チップ部品41および半導体素子42の周りの空間およびスルーホール導電体33内部の空間にはプリプレグ12A、14Aが変形進入し空隙は発生しない。また、配線層22、24は、層間接続体32、34にそれぞれ電気的に接続される。
【0063】
このプレス工程において、半導体素子42に加わるプレス力を緩和しその破壊などの不良発生を低減するには、チップ部品41の高さに比べて半導体素子42の高さをやや低くしておくようにすると好ましい。多くのアプリケーションで半導体素子42の数は少なく(例えば1個)、これを取り巻くようにチップ部品41が配置されることが多いのでこれを利用できる。このように取り囲んで配置されたチップ部品41がよりプレス力を負担して半導体素子42に加わるプレス力を小さくすることができる。
【0064】
図7に示す積層工程の後、上下両面の金属箔26A、21Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングし、さらにはんだレジスト61、62の層を形成することにより、図1に示したような部品内蔵配線板を得ることができる。
【0065】
変形例として、中間の絶縁層13に設けられたスルーホール導電体33については、層間接続体31や同32と同様なものとする構成も当然ながらあり得る。また、層間接続体31、32、34、35について、説明した導電性組成物印刷による導電性バンプを由来とするもの以外に、例えば、金属板エッチングにより形成された金属バンプ、導電性組成物充填による接続体、めっきにより形成された導体バンプなどを由来とするものなどのうちから適宜選択、採用することもできる。また、外側の配線層21、26は、最後の積層工程のあとにパターニングして得る以外に、各配線板素材1、3の段階で(例えば図5(d)の段階で)形成するようにしてもよい。
【0066】
また、図7に示した積層工程において、配線板素材1、2については、プリプレグ12Aおよび層間接続体32の部分を配線板素材2の側ではなく配線板素材1の側に設けておくようにしてもよい。すなわち、層間接続体32の形成およびプリプレグ12Aの積層を、配線板素材1の配線層22上(絶縁層11上)であらかじめ行うようにする。この場合、実装されたチップ部品41および半導体素子42が、一見、層間接続体32をスクリーン印刷で形成するときに干渉要因となるように見えるが、チップ部品41および半導体素子42として十分薄い部品の場合は実際上干渉要因とはならない。プリプレグ12Aの積層工程のときには、チップ部品41および半導体素子42の厚さを吸収できるクッション材を介在させて加圧・加熱すれば面内方向均一にプリプレグ12Aを積層できる。
【0067】
以上、本実施形態に係る部品内蔵配線板についてひと通り説明した。上記説明した製造工程では、接続部材51A、52Aとして、硬化温度240℃の例えばエポキシ変性ポリイミド樹脂たる熱硬化性樹脂503中に、はんだ粒子501たるSn−3Ag−0.5Cu(融点217℃)の組成の粒子、および種粒子502たるCu粒子が分散されたものを用いた。ここで、部品41、42の実装工程における温度プロファイルの設定をよりラフ(非高精度)にするには、はんだ粒子501の融点と熱硬化性樹脂503の硬化温度とをより離すように、接続部材51A、52Aの材料として次のようなものを採用することができる。
【0068】
すなわち、接続部材51A、52Aのはんだ粒子501として、Snと、Ag、Bi、Cu、In、およびZnからなる群より選択された1種以上とを含む第1の合金の粒子と、Snと、Agと、Bi、Cu、In、およびZnからなる群より選択された1種以上とを含む第2の合金の粒子とが備えられたものを用いる。種粒子502としては、Cuと、Ag、Bi、In、およびSnからなる群より選択された1種以上とを含む合金の粒子とする。熱硬化性樹脂503には、上記説明の製造工程と同じ硬化温度240℃のエポキシ変性ポリイミド樹脂を用いる。上記3種の合金は、熱硬化性樹脂503との全体に対して80wt%の含有率とする。
【0069】
以上の、合金の粒子と熱硬化性樹脂との混合体についてDSC(示差走査熱量測定)による融点観察を行うと、100℃ないし200℃の間に複数の融点があり、さらに、300℃ないし500℃の間にも複数の融点があることがわかる。よって、この合金粒子分散の熱硬化性樹脂を用いれば、100℃ないし200℃の間に存在する融点により、一般的に言われるはんだづけが可能である。
【0070】
また、100℃ないし200℃に存在する融点での融解を生じしめたあとに生じる凝固組成物について同様にDSCによる融点観察を行うと、100℃ないし200℃の間に存在する融点はほとんど消失し(∵融点の高い複数元素系相に変化している)、300℃以上に融点が残るのみとなることがわかる。この性質から、2次実装での加熱(例えば250℃)においてはこの組成物はほぼ溶融はしないことになるので、上記の合金粒子分散の熱硬化性樹脂は、図5に示した接続部材51A、52Aと同様に利用できることがわかる。ここで、第1、第2の合金粒子の融点と熱硬化性樹脂503の硬化温度とは、図5での説明の場合より離れているので、部品41、42の実装工程における温度プロファイルの設定はよりラフで済む。
【0071】
次に、部品41、42の実装工程の温度をより低温化するには、はんだ粒子501の融点をより低下させ、かつ、熱硬化性樹脂503の硬化温度もより低下させるように、接続部材51A、52Aの材料として次のようなものを採用することができる。
【0072】
すなわち、接続部材51A、52Aとして、はんだ粒子501がSn−58Bi(融点138℃)の粒子であり、種粒子502がSnのめっきされたCu粒子およびNi粒子であり、熱硬化性樹脂503が硬化温度180℃のエポキシ樹脂であるような、金属粒子分散の熱硬化性樹脂を用いる。これによれば、第1段階の加熱を例えば150℃で行い、次に第2段階の加熱としてこれを例えば185℃で行うことができる。
【0073】
実際にこのような加熱を行って部品41、42を実装した後、2次実装を想定して260℃の加熱を3回行って信頼性試験を実施したところ、再溶融による問題は生じないことがわかった。この場合の接続部材51、52を観察したところ、CuSn合金(融点約630℃)およびNiBi合金(融点約469℃)が生じていることがわかった。
【0074】
次に、参考までに、図1中に示したウエハレベル・チップスケールパッケージの半導体素子42についてその構成および製造工程の例を図9、図10を参照して説明する。図9は、図1に示した部品内蔵配線板に使用の半導体素子42を模式的に、やや詳細に示す下面図(図9(a))および断面図(図9(b))である。図9(a)におけるA−Aa位置における矢視方向断面が、図9(b)である。図10は、図1に示した部品内蔵配線板に使用の半導体素子42についてその製造過程例を模式的断面で示す工程図である。図9、図10においてすでに説明した図中に示したものと同一相当のものには同一符号を付してある。
【0075】
図9(a)に示すように、この半導体素子42は、表面実装用端子42aがグリッド状に配置されている。端子42aの配置ピッチは、例えば0.2mmないし1.0mmである。端子42aが配置された面の中央付近は、半導体素子42として必要な端子数が少ない場合は、端子42aが配置されない態様とすることもできる。
【0076】
この半導体素子42は、配線板中に内蔵のため実装される前の形態として、端子42a上にはんだボールのない、いわゆるLGA(land grid array)の形態である。このようなはんだボールのない構成とすることで高さ方向の実装サイズを抑制し、より内蔵への適性を向上させている。内蔵される配線板の厚さが許せば、端子42a上にはんだボールが搭載されたいわゆるBGA(ball grid array)も利用できる。
【0077】
半導体素子42の断面方向には、図9(b)に示すように、表面実装用端子42aが、絶縁層42e上に、かつ、絶縁層42eを貫通する部分を介して再配線層42bに接触するように形成されている。さらに、再配線層42bは、絶縁層42eと半導体チップとの間に設けられた絶縁層42d上に、かつ、絶縁層42dを貫通する部分を介して半導体チップ上の端子パッド42cに接触するように形成されている。
【0078】
端子パッド42cは、通常、半導体チップの各辺に沿って一列に列設されているので、その配置ピッチは比較上狭い。すなわち、その配置ピッチと、グリッド状に配置され、配置ピッチが比較上広くなっている表面実装用端子42aの配置ピッチとの導通を仲介するために、再配線層42bが設けられる。このような構成により、この半導体素子42は表面実装可能な形態であるにもかかわらず、平面的には半導体チップと同じ面積であり、厚さ方向にも半導体チップそのものよりわずかに厚い程度の大きさとなっている。なお、半導体素子42としてより薄くするために、半導体チップの裏面を、研削工程を設けて研削しておくようにしてもよい。例えば、総厚を0.3mm程度以下としておくことができる。
【0079】
次に、このような半導体素子42の製造工程例を図10を参照して説明する。まず、図10(a)に示すように、半導体ウエハ42wであってその面上に複数の半導体デバイスがすでに形成されたものを用意する。半導体ウエハ42wの面上には、それぞれの半導体デバイスの外部接続部として端子パッド42cが形成されている。端子パッド42cは、通常、ワイヤボンディングを行なうのに必要な面積を有しており、かつワイヤボンディングを行うのに支障のない程度の配置ピッチを有して各半導体デバイスの四辺に沿って設けられている。この配置ピッチは、一般的な表面実装を行う端子の配置ピッチより狭い。
【0080】
次に、図10(b)に示すように、パッド42cを覆うように半導体ウエハ42w上全面に絶縁層42dを形成する。形成方法は、周知の方法を用いてよいが、例えば、半導体ウエハ42w上に絶縁材料であるポリイミドを滴下してスピンコートし厚さ例えば1μm程度に形成することができる。
【0081】
次に、図10(c)に示すように、パッド42c上の絶縁層42dを選択的にエッチング除去し絶縁層42dに、パッド42cに通じる開口部81を形成する。選択的にエッチングするには、フォトリソグラフィなどの周知の方法を適用することができる。なお、図10(b)および図10(c)に示す方法に代えて、パッド42c上を除き選択的に絶縁層42dを形成する方法を用いてもよい。選択的に絶縁層42dを形成するのも同様に周知の方法により行なうことができる。
【0082】
開口部81を形成したら、次に、図10(d)に示すように、開口部81内を充填しかつ必要なパターンを有するように導電材料で再配線層42bを絶縁層42d上に形成する。再配線層42bは、材料として例えばAlやAu、Cuなどを用いることができる。形成方法としては、スパッタ、蒸着、めっきなどの中から使用する材料を考慮して適当なものを選択することができる。パターン化のためには、使用する材料を考慮の上、絶縁層42d上に全面的に形成したあと不要部分をエッチング除去するか、または絶縁層42d上に所定パターンのレジストマスクを形成しさらに再配線層42bとなる層を形成するかして行うことができる。再配線層42bの厚さは例えば1μm程度とすることができる。
【0083】
再配線層42bを形成したら、次に、図10(e)に示すように、再配線層42b上を覆って絶縁層42eを形成し、さらに絶縁層42eを選択的にエッチング除去して絶縁層42eに再配線層42bに通じる開口部82を形成する。この図10(e)に示す工程は、絶縁層42dの形成およびその加工の工程である図10(b)、図10(c)と同様の要領により行うことができる。絶縁層42eを選択的に形成する方法を選択した場合も同様である。
【0084】
開口部82を形成したら、次に、図10(f)に示すように、開口部82内を充填しかつ絶縁層42e上の所定の配置位置を占めるように表面実装用端子42aを導電材料で形成する。この導電材料には、例えばAlやAu、Cuなどを用いることができる。形成方法としては、スパッタ、蒸着、めっきなどの中から使用する材料を考慮して適当なものを選択することができる。選択的に形成するには、使用する材料を考慮の上、絶縁層42e上に全面的に形成したあと不要部分をエッチング除去するか、または絶縁層42d上に所定パターンのレジストマスクを形成しさらに表面実装用端子42aとなる層を形成するかして行なうことができる。表面実装用端子42aの層は、その厚さを例えば1μm程度とすることができる。
【0085】
表面実装用端子42aは、さらに、その導電材料がCuやAlであればその表層をNi/Auのめっき層、またはSn(すず)のめっき層で覆うように処理を加えてもよい。このようなめっきを施すには例えば無電解めっき工程を用いることができる。所定材料のめっき層を有することにより、配線板内への内蔵のための表面実装において良好なはんだ付けとその接続信頼性を得ることができる。
【0086】
表面実装用端子42aが形成されたら、最後に、図10(g)に示すように、半導体ウエハ42wをダイシングし個々の半導体素子42を得る。このようにして得られた半導体素子42は、表面実装用端子42aにより、すでに述べたようにチップ部品と同様に表面実装工程に供することができる。
【0087】
なお、図10においては、ダイシングする前のウエハ42wを用いて表面実装用端子42aを形成する方法を説明したが、これは、より生産性を上げて形成する例を示したものであり、当然ながらダイシングしたあとの個々の半導体チップに対して同様の方法で表面実装用端子42aを形成することもできる。
【0088】
図10に示したような半導体素子42の変形例としては、再配線層42bと表面実装用端子42aとを同一層として形成する例を挙げることができる。この場合には、再配線として必要なパターンを有するように、かつこのパターンに連絡して表面実装用端子42aのパターンを有するように導電材料の層を絶縁層42d上に形成する。この導電材料の層は、絶縁層42dに形成された開口部81内を充填している。そして、この導電材料の層のうちの表面実装用端子42aの部分を除いて全面を絶縁層42eで覆うように形成する。これによっても、半導体デバイスの端子パッド42cを再配置した表面実装用端子42aを有する半導体素子を得ることができる。
【符号の説明】
【0089】
1…配線板素材、2…配線板素材、3…配線板素材、11…絶縁層、11A…プリプレグ、12…絶縁層、12A…プリプレグ、13…絶縁層、14…絶縁層、14A…プリプレグ、15…絶縁層、21…配線層(配線パターン)、21A…金属箔(銅箔)、22…配線層(配線パターン)、22A…金属箔(銅箔)、23…配線層(配線パターン)、23A…金属箔(銅箔)、24…配線層(配線パターン)、24A…金属箔(銅箔)、25…配線層(配線パターン)、26…配線層(配線パターン)、26A…金属箔(銅箔)、31、32、34、35…層間接続体(導電性組成物印刷による導電性バンプ)、33…スルーホール導電体、41…チップ部品、41a…端子、42…半導体素子(ウエハレベル・チップスケールパッケージによる)、42a…表面実装用端子、42b…再配線層、42c…端子パッド、42d、42e…絶縁層、42w…半導体ウエハ、51、52…接続部材、51A、51B…硬化前の接続部材、61、62…はんだレジスト、71、72…部品用開口部、73…貫通孔、81、82…開口部、501…はんだ粒子、501A…残留はんだ、502…種粒子、502A…種部、503…熱硬化性樹脂、503A…樹脂部(硬化後熱硬化性樹脂)、505…導電部、512…複数元素系相。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層に対して積層状に位置する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層に埋め込まれた電気/電子部品と、
前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに挟まれて設けられた、前記電気/電子部品の実装用ランドを含む配線パターンと、
前記電気/電子部品の端子と前記実装用ランドとを接続し、かつ、硬化された樹脂部と、該樹脂部に含有された融点が240℃以下の金属と、該金属の組成金属のひとつである第1の金属が該第1の金属と異なる第2の金属を含む複数元素系相に変化することで融点が260℃以上となる性質の前記第1の金属の該複数元素系相により表面が覆われた前記第2の金属の粒子を含有しかつ前記樹脂部中で該複数元素系相が連接し導電性の骨格構造を形成している導電部とを有する接続部材と
を具備することを特徴とする部品内蔵配線板。
【請求項2】
前記接続部材が、前記樹脂部として、該接続部材の前記金属の前記融点より高い熱硬化温度を有する熱硬化性樹脂を有することを特徴とする請求項1記載の部品内蔵配線板。
【請求項3】
前記接続部材の前記樹脂部が、その材料としてエポキシ変性ポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1記載の部品内蔵配線板。
【請求項4】
融点が240℃以下である前記金属が、Sn−In組成系、Sn−Bi組成系、Sn−Zn−Bi組成系、Sn−Ag−In組成系、Sn−Ag組成系、Sn−Cu組成系、およびSn−Sb組成系、ならびにSnからなる群より選択された1種の組成系または金属であり、
前記第2の金属が、Ag、Au、Cu、Ni、およびFe、ならびにCu−Ni組成系、Cu−Sn組成系、Ag−Sn組成系、Cu−Zn組成系、およびCo−Sb組成系からなる群より選択された1種以上の金属または組成系であること
を特徴とする請求項1記載の部品内蔵配線板。
【請求項5】
前記接続部材の前記導電部の前記複数元素系相が、CuSn、CoSn、CuZn、CuSb、CoSb、NiBi、AgSn、FeSn、AgCuSn、およびAuSnからなる群から選択された1種以上による相であることを特徴とする請求項1記載の部品内蔵配線板。
【請求項6】
融点が240℃以下である前記金属が、Snと、Ag、Bi、Cu、In、およびZnからなる群より選択された1種以上とを含む第1の合金と、Snと、Agと、Bi、Cu、In、およびZnからなる群より選択された1種以上とを含む第2の合金とを有し、
前記第2の金属が、Cuと、Ag、Bi、In、およびSnからなる群より選択された1種以上とを含む合金であること
を特徴とする請求項1記載の部品内蔵配線板。
【請求項7】
配線パターンを少なくとも片面に備えた第1の絶縁板の前記配線パターン上であって電気/電子部品が実装されるべき位置に、融点が240℃以下の金属の粒子と該金属の組成金属のひとつを含む相となることで融点が260℃以上になる性質を有する金属の粒子とが分散された硬化前の導電性接着性樹脂を適用する工程と、
前記適用された硬化前の導電性接着性樹脂を介して前記配線パターン上に前記電気/電子部品を載置する工程と、
前記電気/電子部品を前記配線パターンに固定するように、第1の所定温度に加熱して融点が240℃以下の前記金属の粒子を溶融し融点が260℃以上である前記相を発現させ続いて前記第1の所定の温度より高い第2の所定温度に加熱して前記硬化前の導電性接着性樹脂を硬化させる工程と、
前記第1の絶縁板とは異なる第2の絶縁板中に、前記配線パターンに固定された前記電気/電子部品を埋め込むように、前記第1の絶縁板に積層状に前記第2の絶縁板を一体化する工程と
を具備することを特徴とする部品内蔵配線板の製造方法。
【請求項8】
前記硬化前の導電性接着性樹脂が、該導電性接着性樹脂中に分散された融点が240℃以下の前記金属を加熱溶融させたときに該金属を活性化させる性質を有するものであることを特徴とする請求項7記載の部品内蔵配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−10671(P2010−10671A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128716(P2009−128716)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】