説明

配管接続方法及びマイクロチップデバイス

【課題】
板状部材と配管の接続のデッドスペースを少なくする。
【解決手段】
接続部としてのパッキン1は、内部の貫通孔が段差によって大径部3と小径部7に分かれて形成されている。パッキン1の大径部3は配管5と接続するために断面積が広く形成され、小径部7は板状部材9の開口11と接続するために断面積が大径部3よりも小さく形成されている。また、パッキン1の外側にはパッキン1の一部が入る凹部及び配管5を通す穴があけられ、パッキン1を板状部材9に対して固定する支持部13が設けられている。配管5を接続するときは、配管5をパッキン1に圧入し、支持部13を用いてパッキン1を板状部材9側に押し付けて変形させて密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部材に形成されている開口に配管を接続する配管接続方法とそれを用いたマイクロチップデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水、環境水、水道水、下水、純水、各種用水などの試料水に含まれる有機物は、水の管理を目的として、TOC(全有機体炭素量)測定が行なわれている。
TOCの測定の一般的な方法は、試料水中の有機体を酸化反応器で二酸化炭素へ転化する工程と、二酸化炭素を通過させるガス透過膜により、導電率測定機構を有する二酸化炭素検出機構の測定水へ二酸化炭素を抽出する工程と、二酸化炭素検出機構で測定水の導電率を測定する工程とを含んでいる(特許文献1参照。)。
【0003】
測定水へ二酸化炭素を抽出する二酸化炭素抽出装置として、2枚の基板がガス透過膜を間に挟んで接合され、各基板にはガス透過膜を介して対向する流路が形成されているとともに、それぞれの流路の両端が基板の貫通孔によって基板表面に開口しており、それぞれの開口に配管が接続されているマイクロチップデバイスが知られている。
【0004】
そのようなマイクロチップデバイスでは、マイクロ加工を用いて装置構成を小さくすることにより、試料水や測定水の消費量を低減することは可能であるが、液体の流量は極端に少なくなってしまう。
例えば、図4は板状部材9と継ぎ手35をパッキン1によって接続し、継ぎ手35に配管5を接続する図である。このような微小ユニットに配管5を接続する場合は、継ぎ手35の大きさが相対的に肥大化し、大きなデッドボリュームが生じる。
【特許文献1】特許第2510368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パッキンによって継ぎ手と板状部材間を接続し、継ぎ手に配管を接続する方法では、配管から板状部材までに大きなデットボリュームが生じる。
本発明は、マイクロチップデバイスなどの板状部材と配管との接続を小さいデッドボリュームで行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の配管接続方法は、表面に開口を備えた板状部材と配管とを接続する配管接続方法において、弾性変形可能な材質にてなり、貫通孔が段差によって大径部と小径部に分かれているパッキンを用い、配管をパッキンの大径部に圧入すると共に、パッキンの小径部側を板状部材の開口上に押し付け、密着させることを特徴とする。
【0007】
本発明のマイクロチップデバイスは、内部に流路をもち、表面にその流路につながる開口を備えた板状部材と、配管と、板状部材の開口及び配管を接続する接続部とを備えたものであり、接続部は段差によって大径部と小径部に分かれているパッキンと支持部材を備え、配管がパッキンの大径部に圧入された状態で、支持部材によりパッキンの小径部側が板状部材の開口上に押しつけられていることを特徴とする。
【0008】
マイクロチップデバイスの一例はTOC測定装置で使用される二酸化炭素抽出装置であり、そこでは、板状部材は2枚の基板がガス透過膜を間に挟んで接合され、各基板にはガス透過膜を介して対向する流路が形成されているとともに、それぞれの流路の両端が基板の貫通孔によって基板表面に開口しており、それぞれの開口にパッキンを介してそれぞれの配管が接続されている。
パッキン及び接続部はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)樹脂などのフッ素樹脂製であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の配管接続方法は、上記のパッキンのみを介して配管を板状部材に接続するので、試料のパッキンからの漏れを防ぐことはもちろん、継ぎ手を用いた場合に生じる余分なデッドボリュームがなくなる。
【0010】
本発明のマイクロチップデバイスは、本発明の配管接続方法により、パッキンのみを介して配管をマイクロチップデバイスに接続するので、配管接続部でのデッドボリュームの少ないマイクロチップデバイスを提供することができる。
【0011】
パッキンにフッ素ゴム等のゴム質の接続材を用いる場合、ゴム材に含まれる成分の試料への溶出が心配されるが、パッキンにフッ素樹脂を用いる場合は溶出の心配はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は板状部材に接続部を介し、配管接続方法によって配管を接続したときの一実施例を示す断面図である。図2はパッキンの断面図を示す。
接続部としてのパッキン1は、内部の貫通孔が段差によって大径部3と小径部7に分かれて形成されている。パッキン1の大径部3は配管5と接続するために断面積が広く形成され、小径部7は板状部材9の開口11と接続するために断面積が大径部3よりも小さく形成されている。パッキン1の小径部7側の端面は平坦面である。また、パッキン1の外側にはパッキン1の一部が入る凹部及び配管5を通す穴があけられ、パッキン1を板状部材9に対して固定する支持部13が設けられている。
【0013】
パッキン1としては、貫通孔の長さに対するつぶし代15の相対長さが30〜70%程度であることが好ましい。本実施例では、約50%のものとする。
パッキン1の素材としてはPTFE製、配管5にはSUS(ステンレス)製、板状部材9にはガラス製のものを用いる。
【0014】
配管5を接続するときは、配管5を支持部13の穴に通した状態でパッキン1に圧入し、次に支持部13を用いてパッキン1を板状部材9側に押し付けて固定する。これにより、つぶし代15を介してパッキン1を板状部材9及び配管5と密着させることができるとともに、パッキン1からの試料の漏れを防ぐことができる。
【0015】
次にマイクロチップデバイスの一実施例を図3に示す断面図を参照して詳細に説明する。
このマイクロチップデバイスは、ガス透過膜21と、ガス透過膜21との間に試料水流路23を形成し、試料水流路23の両端に位置する貫通孔31a,31bをもつ板状部材25と、ガス透過膜21を介して試料水流路23と対向する測定水流路27を形成し、測定水流路27の両端に位置する貫通孔31c,31dをもつ板状部材29とが積層され、それぞれの貫通孔31a〜31dの開口にパッキン1a〜1dを介して配管5a〜5dが接続されたものである。
【0016】
試料水流路23は、板状部材25の一方の面に微小な溝(幅0.01〜10mm、深さ0.01〜0.5mm、長さ数mm〜数百mm)を形成することで作製でき、例えば幅1mm、深さ0.2mm、長さ200mmに形成されたものを用いる。
測定水流路27は、板状部材29の一方の面に微小な溝(幅0.01〜10mm、深さ0.01〜0.5mm、長さ数mm〜数百mm)を形成することで作製でき、例えば幅1mm、深さ0.2mm、長さ200mmに形成されたものを用いる。
流路23,27はウェットエッチング技術やドライエッチング技術により形成することができ、貫通孔31a〜31dは、サンドブラスト加工を用いた微細加工技術により形成できる。
ガス透過膜21としては、疎水性多孔質膜が好ましく、例えば、多孔質フッ素樹脂膜(住友電工社製のポアフロン(登録商標))などを用いることができる。
【0017】
パッキン1a〜1dは図2に示されたものであり、配管5a〜5dはパッキン1a〜1dと支持部13a,13bによって図1に示されたように板状部材25,29上に押しつけられて接続されている。
支持部13a及び13bは両端部において固定部33a及び33bによって、板状部材25,29に押しつけられて固定されている。
実施例に示したマイクロチップデバイスは、溶出等の問題がほとんど無い材料であるガラス、PTFE,SUS及び多孔質フッ素樹脂を用いて構成されている。
【0018】
次に本発明のマイクロチップデバイスを用いて有機物濃度を測定するときの一実施例を図3を参照しながら説明する。
試料水として、例えば、フタル酸水素カリウム水溶液を用いる。測定水としては、有機物を含まないものとして、例えば、イオン交換水を用いる。
試料中の有機物は、紫外線を0.1〜5分間、例えば3分間照射されることにより酸化し、二酸化炭素として試料水中に溶存させた後、試料水を配管5aから0.1mL/min程度の流量でパッキン1a及び貫通孔31aを介して試料水流路23に供給する。
イオン交換水はイオン交換水精製器などにより、配管5dから0.05〜10mL/minの流量、例えば2mL/minの流量で、パッキン1d及び貫通孔31dを介して測定水流路27に供給する。
【0019】
試料水中の二酸化炭素はガス透過膜21によって、測定水流路27側のイオン交換水へ透過する。ガス透過膜21でガス透過を終えた試料水は、貫通孔31b及びパッキン1bを介して配管5bから排出される。二酸化炭素を吸収した測定水は、貫通孔31c、パッキン1c及び配管5cを介して導電率測定セルなどに送られ、測定電極によって導電率が測定される。TOC測定にあたっては、試料水に有機物及び二酸化炭素を全く含まないものを用いてバックグラウンドを測定し、試料水から得られた結果からバックグラウンドを差し引くことで、導電率から二酸化炭素の濃度を定量し、TOCに換算する。
【0020】
本発明のマイクロチップデバイスは、2枚の板状部材25,29による構成に限定されるものではなく、多層構成の場合でも実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
マイクロチップデバイスに形成されている開口に配管を接続する配管接続方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】板状部材に接続部を介し、配管接続方法によって配管を接続したときの断面図を示す図である。
【図2】パッキンの断面図を示す図である。
【図3】マイクロチップデバイスの断面図を示す図である。
【図4】板状部材と継ぎ手をパッキンによって接続し、継ぎ手に配管を接続したときの断面図を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1、1a〜1d パッキン
3 大径部
5、5a〜5d 配管
7 小径部
9、25,29 板状部材
11 開口
13,13a,13b 支持部
21 ガス透過膜
23 試料水流路
27 測定水流路
31a〜31d 貫通孔
33 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に開口を備えた板状部材と配管とを接続する配管接続方法において、
弾性変形可能な材質にてなり、貫通孔が段差によって大径部と小径部に分かれているパッキンを用い、
前記配管を前記パッキンの大径部に圧入すると共に、前記パッキンの小径部側を前記板状部材の開口上に押し付け、密着させることを特徴とする配管接続方法。
【請求項2】
前記パッキンはフッ素樹脂製である請求項1に記載の配管接続方法。
【請求項3】
内部に流路をもち、表面にその流路につながる開口を備えた板状部材と、
配管と、
前記板状部材の開口及び前記配管を接続した接続部と、を備えたマイクロチップデバイスにおいて、
前記接続部は段差によって大径部と小径部に分かれているパッキンと支持部材を備え、
前記配管が前記パッキンの大径部に圧入された状態で、前記支持部材により前記パッキンの小径部側が前記板状部材の前記開口上に押しつけられていることを特徴とするマイクロチップデバイス。
【請求項4】
前記板状部材は2枚の基板がガス透過膜を間に挟んで接合され、各基板には前記ガス透過膜を介して対向する流路が形成されているとともに、それぞれの流路の両端が基板の貫通孔によって基板表面に開口しており、それぞれの開口に前記パッキンを介してそれぞれの配管が接続されている請求項3に記載のマイクロチップデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−337032(P2006−337032A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158551(P2005−158551)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】