説明

配線パターン、及びその製造方法

【課題】 高周波における配線パターンの抵抗値が小さく、性能の良好な配線パターン、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の配線パターンは、配線パターン2が設けられた絶縁基板1を備え、配線パターン2は、絶縁基板1上に設けられた帯状の導電パターン3と、この導電パターン3に沿って導電パターン3上に設けられた上部に丸み部4aを有する絶縁体4と、この絶縁体4の表面を覆うように形成され、両側部が導電パターン3に接続された導電体5とで形成されたため、配線パターン2の断面形状がドーム型をなし、従って、高周波においては表皮効果により、その上部の丸み部4aで抵抗値が小さくなって、性能の良好なものが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は種々の高周波の電子回路ユニット等に使用して好適な配線パターン、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は従来の配線パターンに係る要部の拡大断面図であり、従来の配線パターンの構成を図12に基づいて説明すると、絶縁基板51の上面には、断面四角形の帯状の第1の配線パターン52と、この第1の配線パターン52上を含む絶縁基板51の上面を覆う絶縁膜53と、この絶縁膜53上に設けられた断面四角形の帯状の第2の配線パターン54が設けられて、従来の配線パターンが形成されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
しかし、従来の配線パターンは、第1,第2の配線パターン52,54が断面四角形をなしているため、高周波においては表皮効果により、その角部で抵抗値が上がって、性能が悪くなる。
【0004】
また、従来の配線パターンの製造方法は、導電膜がエッチング加工されて、第1,第2の配線パター52,54が形成されている。(例えば、特許文献1参照)
従って、従来の配線パターンの製造方法によって形成された第1,第2の配線パターン52,54においても、断面四角形をなしているため、高周波においては表皮効果により、その角部で抵抗値が上がって、性能が悪くなる。
【0005】
【特許文献1】特開平5−21607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の配線パターン、及びその製造方法によって製造された配線パターンは、第1,第2の配線パターン52,54が断面四角形をなしているため、高周波においては表皮効果により、その角部で抵抗値が上がって、性能が悪くなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は高周波における配線パターンの抵抗値が小さく、性能の良好な配線パターン、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の解決手段として、配線パターンが設けられた絶縁基板を備え、前記配線パターンは、前記絶縁基板上に設けられた帯状の導電パターンと、この導電パターンに沿って前記導電パターン上に設けられた上部に丸み部を有する絶縁体と、この絶縁体の表面を覆うように形成され、両側部が前記導電パターンに接続された導電体とで形成された構成とした。
また、第2の解決手段として、前記絶縁体が硬化された絶縁レジストによって形成された構成とした。
【0009】
また、第3の解決手段として、前記配線パターンが渦巻き状に形成されて、インダクタが形成された構成とした。
また、第4の解決手段として、前記絶縁基板の両面には、互いに対向する位置に渦巻き状の前記配線パターンが設けられて前記インダクタを形成した構成とした。
【0010】
また、第5の解決手段として、前記配線パターンを形成する前記導電パターンは、中間部にスリットが設けられて、互いに平行に配置された第1,第2の分離パターンと、この第1,第2の分離パターンの端部を繋ぐ接続パターンを有し、前記インダクタは、前記第1,第2の分離パターンと、この第1,第2の分離パターン上に設けられた前記絶縁体の表面を覆うように形成され、両側部がそれぞれの前記第1,第2の分離パターンに接続された前記導電体とで形成された構成とした。
【0011】
また、第6の解決手段として、請求項1,又は2の何れかに記載の配線パターンを備え、前記導電パターンが前記絶縁基板に形成された後、粘性のある前記絶縁体が前記導電パターン上に設けられ、前記絶縁体を加熱して硬化させることによって、前記絶縁体の上部に丸み部を形成し、前記絶縁体の表面を覆うように前記導電体を形成すると共に、前記導電体の両側部を前記導電パターンに接続した製造方法とした。
また、第7の解決手段として、前記絶縁体が絶縁レジストによって形成されると共に、前記絶縁体が前記導電パターン上に印刷によって形成された製造方法とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の配線パターンは、配線パターンが設けられた絶縁基板を備え、配線パターンは、絶縁基板上に設けられた帯状の導電パターンと、この導電パターンに沿って導電パターン上に設けられた上部に丸み部を有する絶縁体と、この絶縁体の表面を覆うように形成され、両側部が導電パターンに接続された導電体とで形成されたため、配線パターンの断面形状がドーム型をなし、従って、高周波においては表皮効果により、その上部の丸み部で抵抗値が小さくなって、性能の良好なものが得られる。
【0013】
また、絶縁体が硬化された絶縁レジストによって形成されたため、材料費が安価で、且つ、上部の丸み部を確実に形成できる。
【0014】
また、配線パターンが渦巻き状に形成されて、インダクタが形成されたため、断面形状がドーム型をなした配線パターンによって、高周波における表皮効果により電流密度が高くなって、抵抗値が低くなるので、インダクタのQを高くすることが出来る。
【0015】
また、絶縁基板の両面には、互いに対向する位置に渦巻き状の配線パターンが設けられてインダクタを形成したため、インダクタの断面が絶縁基板を挟んで円形状となり、従って、電流密度が一層高くなって、インダクタのQを一層高くすることが出来る。
【0016】
また、配線パターンを形成する導電パターンは、中間部にスリットが設けられて、互いに平行に配置された第1,第2の分離パターンと、この第1,第2の分離パターンの端部を繋ぐ接続パターンを有し、インダクタは、第1,第2の分離パターンと、この第1,第2の分離パターン上に設けられた絶縁体の表面を覆うように形成され、両側部がそれぞれの第1,第2の分離パターンに接続された導電体とで形成されたため、スリットによって、漏洩磁束による大きな過電流の経路を分断し、大きな過電流の発生を防止すると共に、断面形状がドーム型をなした配線パターンによって、高周波における表皮効果により電流密度が高くなって、抵抗値が低くなるので、インダクタのQを高くすることが出来る。
【0017】
また、配線パターンを備え、導電パターンが絶縁基板に形成された後、粘性のある絶縁体が導電パターン上に設けられ、絶縁体を加熱して硬化させることによって、絶縁体の上部に丸み部を形成し、絶縁体の表面を覆うように導電体を形成すると共に、導電体の両側部を導電パターンに接続したため、上部の丸みを確実に形成できると共に、表皮効果による抵抗値が小さくなって、性能の良好なものが得られる。
【0018】
また、絶縁体が絶縁レジストによって形成されると共に、絶縁体が導電パターン上に印刷によって形成されたため、安価で、製造の容易なものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の配線パターン、及びその製造方法の図面を説明すると、図1は本発明の配線パターンの第1実施例に係る要部の拡大平面図、図2は図1の2−2線における断面図、図3は本発明の配線パターンの製造方法に係る第1工程を示す説明図、図4は本発明の配線パターンの製造方法に係る第2工程を示す説明図、図5は本発明の配線パターンの製造方法に係る第3工程を示す説明図、図6は本発明の配線パターンの製造方法に係る第4工程を示す説明図である。
【0020】
また、図7は本発明の配線パターンの第2実施例に係る要部の拡大平面図、図8は図7の8−8線のける拡大断面図、図9は本発明の配線パターンの第3実施例に係る要部の拡大平面図、図10は図9の10−10線のける拡大断面図、図11は本発明の配線パターンの第4実施例に係る要部の拡大断面図である。
【0021】
次に、本発明の配線パターンの第1実施例に係る構成を図1,図2に基づいて説明すると、絶縁基板1の上面には、断面がドーム型をなした配線パターン2が形成されており、この配線パターン2は、絶縁基板1上に設けられた帯状の導電パターン3と、この導電パターン3に沿って導電パターン3上に設けられた上部に丸み部4aを有する絶縁体4と、この絶縁体4の表面を覆うように形成され、両側部が導電パターン3に接続された導電体5とで形成されて、本発明の配線パターンが構成されている。
【0022】
そして、導電パターン3は、印刷、メッキ、或いは蒸着等によって形成されると共に、絶縁体4は、硬化された絶縁レジストで形成されており、絶縁体4上に設けられる導電体5の形成が容易となっている。
【0023】
次に、本発明の配線パターンの製造方法を図3〜図6に基づいて説明すると、先ず、図3に示すように、導電パターン3が絶縁基板1に形成された後、粘性のある絶縁レジストからなる絶縁体4が印刷によって導電パターン3上に設けられる。
そして、粘性のある絶縁体4を加熱して硬化すると、絶縁体4の体積が小さくなるため、絶縁体4の上部に丸み部4aが形成される。
【0024】
次に、絶縁体4を硬化した後、絶縁体4の表面を覆うように導電体5を形成すると、導電体5の両側部が導電パターン3に接続され、ドーム型をなした配線パターン2が形成されて、本発明の配線パターンの製造が完了する。
【0025】
また、図7,図8は本発明の配線パターンの第2実施例を示し、この第2実施例について説明すると、配線パターン2が渦巻き状に形成されて、インダクタLが形成されたもので、この実施例では、約1巻きのもので説明したが、1巻き以上のものでも良い。
即ち、インダクタLは、渦巻き状に形成された導電パターン3と、この導電パターン3上に設けられた絶縁体4の表面を覆うように形成され、両側部が導電パターン3に接続された導電体5とで形成されている。
そして、この実施例では、導電パターン3の幅S1と高さ(絶縁基板1から導電体5の頂部までの距離)T1との比率、幅S1:高さT1は、約2:1となって、断面が半円形となっている。
【0026】
また、図9,図10は本発明の配線パターンの第3実施例を示し、この第3実施例について説明すると、配線パターン2を形成する導電パターン3は、中間部にスリット3aが設けられて、互いに平行に配置された第1,第2の分離パターン3b、3cと、この第1,第2の分離パターン3b、3cの端部を繋ぐ接続パターン3dを有し、インダクタLは、第1,第2の分離パターン3b、3cと、この第1,第2の分離パターン3b、3c上に設けられた絶縁体4の表面を覆うように形成され、両側部がそれぞれの第1,第2の分離パターン3b、3cに接続された導電体5とで形成されたものである。
そして、この実施例では、第1,第2の分離パターン3b、3cの幅S2と高さ(絶縁基板1から導電体5の頂部までの距離)T2との比率、幅S2:高さT2は、約2:1となって、断面が半円形となっている。
【0027】
また、図11は本発明の配線パターンの第4実施例を示し、この第4実施例について説明すると、絶縁基板1の両面には、互いに対向する位置に上記第3実施例のインダクタLが設けられ、インダクタLの断面が絶縁基板1を挟んで円形状になったものである。
なお、その他の構成は、上記第3実施例と同様の構成を有し、同一部品に同一番号を付し、ここではその説明を省略する。
また、この第4実施例は、図7,図8に示す第2実施例にも適用できること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の配線パターンの第1実施例に係る要部の拡大平面図。
【図2】図1の2−2線における断面図。
【図3】本発明の配線パターンの製造方法に係る第1工程を示す説明図。
【図4】本発明の配線パターンの製造方法に係る第2工程を示す説明図。
【図5】本発明の配線パターンの製造方法に係る第3工程を示す説明図。
【図6】本発明の配線パターンの製造方法に係る第4工程を示す説明図。
【図7】本発明の配線パターンの第2実施例に係る要部の拡大平面図。
【図8】図7の8−8線のける拡大断面図。
【図9】本発明の配線パターンの第3実施例に係る要部の拡大平面図。
【図10】図9の10−10線のける拡大断面図。
【図11】本発明の配線パターンの第4実施例に係る要部の拡大断面図。
【図12】従来の配線パターンに係る要部の拡大断面図。
【符号の説明】
【0029】
1:絶縁基板
2:配線パターン
3:導電パターン
3a:スリット
3b:第1の分離パターン
3c:第2の分離パターン
3d:接続パターン
4:絶縁体
4a:丸み部
5:導電体
L:インダクタ
S1,S2:幅
T1,T2:高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンが設けられた絶縁基板を備え、前記配線パターンは、前記絶縁基板上に設けられた帯状の導電パターンと、この導電パターンに沿って前記導電パターン上に設けられた上部に丸み部を有する絶縁体と、この絶縁体の表面を覆うように形成され、両側部が前記導電パターンに接続された導電体とで形成されたことを特徴とする配線パターン。
【請求項2】
前記絶縁体が硬化された絶縁レジストによって形成されたことを特徴とする請求項1記載の配線パターン。
【請求項3】
前記配線パターンが渦巻き状に形成されて、インダクタが形成されたことを特徴とする請求項1,又は2記載の配線パターン。
【請求項4】
前記絶縁基板の両面には、互いに対向する位置に渦巻き状の前記配線パターンが設けられて前記インダクタを形成したことを特徴とする請求項3記載の配線パターン。
【請求項5】
前記配線パターンを形成する前記導電パターンは、中間部にスリットが設けられて、互いに平行に配置された第1,第2の分離パターンと、この第1,第2の分離パターンの端部を繋ぐ接続パターンを有し、前記インダクタは、前記第1,第2の分離パターンと、この第1,第2の分離パターン上に設けられた前記絶縁体の表面を覆うように形成され、両側部がそれぞれの前記第1,第2の分離パターンに接続された前記導電体とで形成されたことを特徴とする請求項3、又は4記載の配線パターン。
【請求項6】
請求項1,又は2の何れかに記載の配線パターンを備え、前記導電パターンが前記絶縁基板に形成された後、粘性のある前記絶縁体が前記導電パターン上に設けられ、前記絶縁体を加熱して硬化させることによって、前記絶縁体の上部に丸み部に形成し、前記絶縁体の表面を覆うように前記導電体を形成すると共に、前記導電体の両側部を前記導電パターンに接続したことを特徴とする配線パターンの製造方法。
【請求項7】
前記絶縁体が絶縁レジストによって形成されると共に、前記絶縁体が前記導電パターン上に印刷によって形成されたことを特徴とする請求項6記載の配線パターンの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−140431(P2006−140431A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144198(P2005−144198)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】