説明

配線具及びワイヤハーネス

【課題】電線を予め定められた経路に沿って保持し、また、保護する配線具を備えるワイヤハーネスにおいて、従来よりも部品点数を低減でき、さらに、配線具を電線に取り付けるための工数及び装置を簡素化できること。
【解決手段】配線具1は、板状の部材が加工されることにより得られる部材からなり、電線が配置される配線部11、準孤立部12及び留め孔13を有する。準孤立部12は、配線部の一部である電線支持部位111の両側のうちの一方において電線支持部位111と繋がる根元部以外は一連の切り目120により他の部分から分離して形成され、曲げ変形可能な部分である。留め孔13は、準孤立部12の一部が挿入される貫通孔である。準孤立部12の一部と留め孔13の縁部とは、留め孔13からの準孤立部12の抜けを妨げる抜け止め機構を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を予め定められた経路に沿う状態で保持する配線具及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、電線に取り付けられた樹脂製の配線具を備え、電線がその配線具によって予め定められた経路に沿って保持された状態で敷設されることが多い。例えば、従来の一般的なワイヤハーネスにおいて、電線は、粘着テープ又はベルト部材などの結束材によって板状又は棒状の樹脂部材に固定される。
【0003】
また、特許文献1に示されるワイヤハーネスは、電線束を挟み込む状態で熱プレスによって固着された2つの樹脂部材からなる配線具を備える。特許文献1に示されるワイヤハーネスにおいて、電線は、配線具とは別個の結束材によって2つの樹脂部材の一方に固定され、熱プレスにより固着された2つの樹脂部材によって保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−27242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される配線具は、電線を固定する部位ごとにベルト部材又は粘着テープなどの別個の結束材を必要とし、さらに、配線具を構成する2つの樹脂部材の固着のために、熱プレスの装置及び工程を必要とする。また、従来の一般的なワイヤハーネスにおいても、多くの樹脂部材と、その樹脂部材に電線を固定するための多くの結束材及びそれを取り付けるための煩雑な作業とが必要となる。
【0006】
以上に示したように、従来の配線具及びワイヤハーネスは、電線を予め定められた経路に沿って保持しつつ保護するために、多くの部品、それらを取り扱う煩雑な作業及び比較的大がかりな装置を必要とするという問題点を有している。
【0007】
本発明は、電線を予め定められた経路に沿って保持し、また、保護する配線具を備えるワイヤハーネスにおいて、従来よりも部品点数を低減でき、さらに、配線具を電線に取り付けるための工数及び装置を簡素化できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る配線具は、板状の部材が加工されることにより得られる部材からなり、電線を予め定められた経路に沿う状態に保持する用具であり、以下に示す各構成要素を備える。第1の構成要素は、電線が配置される配線部である。第2の構成要素は、配線部の一部である電線支持部位の両側のうちの第1の側において電線支持部位と繋がる根元部以外は他の部分から分離して形成され、電線支持部位の両側のうちの第2の側へ曲げ変形可能な部分である準孤立部である。第3の構成要素は、電線支持部位の第2の側に形成され、準孤立部の一部が挿入される貫通孔である。そして、準孤立部の一部と貫通孔の縁部とが、貫通孔からの準孤立部の抜けを妨げる抜け止め機構を構成する。
【0009】
また、本発明に係る配線具において、抜け止め機構が、準孤立部の一部に形成され貫通孔の縁部に引っ掛かる掛かり部と、貫通孔の縁部とにより構成されていることが考えられる。
【0010】
また、本発明に係る配線具において、複数の前記掛かり部が、準孤立部における貫通孔への挿入方向に沿う複数の箇所に並んで形成されていることが考えられる。
【0011】
また、本発明に係る配線具において、準孤立部に、それを横断する線に沿って他の部分よりも折り曲がりやすく構成された屈曲対象部が形成されていることが考えられる。
【0012】
また、本発明に係る配線具が、真空成形により形成された部分であり、配線部の一部に沿って突出して形成されたガイド部をさらに有することが考えられる。
【0013】
また、本発明に係る配線具の一部に、当該配線具の向きを表すマークが記されていることも考えられる。
【0014】
また、本発明は、以上に示した本発明に係る配線具を備えたワイヤハーネスの発明として捉えられてもよい。即ち、本発明に係るワイヤハーネスは、電線と、板状の部材が加工されることにより得られる部材からなり、電線を予め定められた経路に沿う状態に保持する配線具とを備える。さらに、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、配線具は、以下に示す各構成要素を備える。第1の構成要素は、電線が配置された配線部である。第2の構成要素は、配線部の一部である電線支持部位の両側のうちの第1の側において電線支持部位と繋がる根元部以外は他の部分から分離して形成され、電線の周囲に沿って曲げられた部分である準孤立部である。第3の構成要素は、電線支持部位の第2の側に形成され、準孤立部の一部が挿入された貫通孔である。そして、準孤立部が、その一部において貫通孔の縁部と引っ掛かり、電線支持部位とともに電線の周囲を取り囲む状態で保持されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明において、配線具は、電線が配置される配線部と、その一部(電線支持部位)とともに電線の周囲を取り囲む状態で保持される準孤立部とが一体に形成された部材である。ここで、電線は、一つの部品の一部に形成された準孤立部及び電線支持部位によって一部が取り囲まれ、これにより、電線は、予め定められた経路に沿って保持される。また、電線は、少なくとも配線部に対向する面において保護され、さらに、準孤立部及び電線支持部位で囲まれた部分においては周面全体において保護される。即ち、本発明において、準孤立部は、従来のワイヤハーネスにおける電線の結束材として機能し、配線部及び準孤立部は、電線の保護部材として機能する。
【0016】
以上に示したように、本発明に係る配線具又はワイヤハーネスが採用されることにより、電線は、予め定められた経路に沿って保持され、また、保護される。さらに、電線の結束材及び保護部材として機能する準孤立部及び配線部が、一つの部品の一部に形成されるため、従来よりも部品点数がごく少なくなる。また、本発明に係る配線具において、準孤立部は、その一部が貫通孔に通されるだけで、抜け止め機構の作用により電線を取り囲む状態で保持される。そのため、配線具を電線に取り付けるための工数及び装置は、従来よりも大幅に簡素化される。
【0017】
例えば、準孤立部の抜け止め機構が、準孤立部の一部に形成された掛かり部と貫通孔の縁部とにより構成されれば、準孤立部が貫通孔から抜けないようにするための作業は容易である。
【0018】
また、抜け止め機構において、複数の掛かり部が、準孤立部における貫通孔への挿入方向に沿う複数の箇所に並んで形成されていれば、準孤立部におけるその根元部から貫通孔へ亘る部分の長さ、即ち、準孤立部における電線を囲う部分の長さを電線の太さに応じて調節することが可能となる。そのため、電線が、準孤立部と電線支持部位との間に挟み込まれるように準孤立部の長さを調節し、電線を電線支持部位に固定する作業が容易となる。
【0019】
ところで、準孤立部は、その幅が大きいほど柔軟性が悪くなり、曲げにくくなる。そのため、準孤立部に、それを横断する線に沿って他の部分よりも折り曲がりやすく構成された屈曲対象部が形成されていれば、電線を跨ぐように準孤立部を曲げることが容易となる。そのような屈曲対象部の効果は、例えば、電線を広い範囲に渡って保護するために準孤立部の幅が大きく形成された場合に特に顕著となる。なお、屈曲対象部は、例えば、準孤立部において、それを横断して破線状に並ぶ複数の切り目が形成された部分、或いは、準孤立部を横断する溝などである。
【0020】
また、本発明に係る配線具が、真空成形により形成されたガイド部を有していれば、電線を配線部に沿って配置する作業が容易となる。また、真空成形によってガイド部を形成する装置及び工程は、射出成形によって突起したガイド部を有する樹脂部材を成形する装置及び工程よりも簡易に実現できる点において好適である。
【0021】
また、本発明に係る配線具の一部に、当該配線具の向きを表すマークが記されていれば、当該配線具を正しい向きで取り付けることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る配線具1の3面図である。
【図2】配線具1と組み合わされるカバー部材2の3面図である。
【図3】配線具1における環状保持機構100の第1の状態の斜視図である。
【図4】配線具1における環状保持機構100の第2の状態の斜視図である。
【図5】電線を支持する環状保持機構100の断面図である。
【図6】カバー部材を繋ぎ止める環状保持機構100の断面図である。
【図7】電線を支持するとともにカバー部材を繋ぎ止める環状保持機構100の断面図である。
【図8】電線を支持する環状保持機構100の正面図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス3の3面図である。
【図10】カバー部材が除かれたワイヤハーネス3の平面図である。
【図11】配線具1において採用可能な第1の例に係る環状保持機構の平面図である。
【図12】配線具1において採用可能な第2の例に係る環状保持機構の平面図である。
【図13】配線具1において採用可能な第3の例に係る環状保持機構の平面図である。
【図14】配線具1において採用可能な第4の例に係る環状保持機構の平面図である。
【図15】配線具1において採用可能な第5の例に係る環状保持機構の平面図及び断面図である。
【図16】配線具1において採用可能な第6の例に係る環状保持機構の平面図及び断面図である。
【図17】配線具1において採用可能な第7の例に係る環状保持機構の平面図及び断面図である。
【図18】本発明の第2実施形態に係る配線具1Aの平面図である。
【図19】配線具1Aにおける環状保持機構の斜視図である。
【図20】配線具1Aにおいて採用可能な第1の例に係る環状保持機構の平面図である。
【図21】配線具1Aにおいて採用可能な第2の例に係る環状保持機構の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0024】
<第1実施形態>
<配線具及び電線保護具>
まず、図1から図8を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る配線具1及びそれと組み合わされるカバー部材2の構成について説明する。配線具1及びカバー部材2は、電線を間に挟んで連結されることによって電線保護具を構成する。
【0025】
なお、図1(a)は配線具1の平面図、図1(b)は配線具1の正面図、図1(c)は配線具1の側面図である。また、図2(a)はカバー部材2の平面図、図2(b)はカバー部材2の正面図、図2(c)はカバー部材2の側面図である。また、図1及び図2において、便宜上、貫通孔の部分には網点模様が描かれ、突出した部分には網線模様が描かれているが、実際の配線具1に網点模様及び網線模様が描かれているわけではない。
【0026】
配線具1は、板状の樹脂部材が加工されることにより得られる部材であり、電線を予め定められた経路に沿う状態に保持する部材である。配線具1は、例えば、ポリプロピレン(PP)又はポリアミド(PA)などの樹脂の部材である。なお、配線具1は、一の面に配置された電線を支持する配線部材の一例である。
【0027】
図1に示されるように、配線具1は、平坦な基部10とその基部10から突出したガイド部15とを有している。また、基部10には、電線が配置される配線部11が含まれる。なお、図1において、便宜上、配線部11が占める領域を表す破線が描かれているが、必ずしも実際の配線具1に破線が描かれているわけではない。
【0028】
配線具1において、ガイド部15は、真空成形により形成された部分であり、配線部11の一部である電線ガイド部位112に沿って突出して形成された部分である。配線具1がガイド部15を有することにより、電線9を配線部11に沿って配置する作業が容易となる。特に、ガイド部15は、電線9の分岐部が配置される電線ガイド部位112に沿って形成されていることが望ましい。真空成形によってガイド部15を形成する装置及び工程は、射出成形によって突起したガイド部を有する樹脂部材を成形する装置及び工程よりも簡易に実現できる。
【0029】
また、配線具1の基部10には、複数の環状保持機構100と、複数のクランプ用孔16とが設けられている。クランプ用孔16は、平坦な基部10の外縁部分における複数の箇所に形成された貫通孔である。これらクランプ用孔16は、配線具1を車両の金属パネル又は樹脂製のパネルなどの支持体の定位置に固定するための固定用部品であるクランプが通される貫通孔である。
【0030】
図3及び図4に示されるように、環状保持機構100は、基部10の一部(111又は14)を挟む両側に形成された準孤立部12と留め孔13とにより構成されている。
【0031】
準孤立部12は、基部10の一部(111又は14)の両側のうちの第1の側において基部10の一部(111又は14)と繋がる根元部121以外は一連の切り目120によって他の部分から分離して形成された部分である。準孤立部12を縁取る一連の切り目120は、例えば、トムソン加工などによって形成される。
【0032】
また、準孤立部12は、基部10の一部(111又は14)の両側のうちの第2の側へ曲げ変形可能な部分である。本実施形態において、準孤立部12は、比較的細いベルト状に形成され、その可撓性により曲げ変形可能な部分である。
【0033】
図3は、環状保持機構100の原形の状態を示す斜視図である。また、図4は、準孤立部12が曲げられた状態における環状保持機構100の斜視図である。図3に示されるように、環状保持機構100の原形の状態において、準孤立部12は、基部10における他の部分と同様に平坦に形成されている。そして、図4に示されるように、準孤立部12が基部10における他の部分から起立するように曲げられると、元々準孤立部12が存在した部分、即ち、一連の切り目120の内側の部分に準孤立部12と同じ形状の貫通孔124が残される。
【0034】
また、環状保持機構100を構成する留め孔13は、基部10の一部(111又は14)の両側のうちの第2の側に形成され、準孤立部12の一部がその先端122から挿入される貫通孔である。なお、第1の側及び第2の側の区分は、便宜上の区分であり、準孤立部12及び留め孔13の間に位置する基部10の一部(111又は14)に対し、準孤立部12が形成されている側が第1の側であり、留め孔13が形成されている側が第2の側である。
【0035】
また、準孤立部12の一部と留め孔13の縁部とは、留め孔13からの準孤立部12の抜けを妨げる抜け止め機構を構成している。図3に示されるように、本実施形態における抜け止め機構は、留め孔13の縁部の一部として形成された突起部131と、準孤立部12の一部に形成され留め孔13の突起部131に引っ掛かる貫通孔である抜け止め孔123とにより構成されている。なお、抜け止め孔123は、留め孔13の縁部に引っ掛かる掛かり部の一例である。
【0036】
また、本実施形態においては、複数の抜け止め孔123が、準孤立部12における留め孔13への挿入方向に沿う複数の箇所に並んで形成されている。そのため、留め孔13の縁部における突起部131と引っ掛かる抜け止め孔123を選択することにより、準孤立部12におけるその根元部121から留め孔13へ亘る部分の長さを調節することが可能である。
【0037】
本実施形態において、配線具1は、2種類の環状保持機構100を備えている。以下、2種類の環状保持機構100のうちの一方を第1環状保持機構100A、他方を第2環状保持機構100Bと称する。本実施形態において、第1環状保持機構100A及び第2環状保持機構100Bは、配置された位置及び用途が異なるが、構成は同じである。
【0038】
第1環状保持機構100Aは、配線部11の一部である電線支持部位111の両側に形成された準孤立部12A及び留め孔13Aの部分からなる。
【0039】
第1環状保持機構100Aにおける準孤立部12Aは、電線支持部位111の両側のうちの第1の側において電線支持部位111と繋がる根元部以外は一連の切り目120により他の部分から分離して形成され、電線9の周囲に沿って曲げられる部分である。
【0040】
図5は、電線9を支持する第1環状保持機構100Aの断面図である。図5に示されるように、第1環状保持機構100Aにおいて、準孤立部12Aは、留め孔13Aの縁部及び抜け止め孔123からなる抜け止め機構の作用により、電線9が配置される電線支持部位111とともに電線9の周囲を取り囲む状態で保持される。そして、第1環状保持機構100Aは、電線9の一部を電線支持部位111とともに支持する。
【0041】
図5に示されるように、第1環状保持機構100Aの準孤立部12Aは、従来のワイヤハーネスにおける電線の結束材として機能する。即ち、配線具1が取り付けられる電線9は、一つの部品の一部に形成された準孤立部12A及び電線支持部位111によって一部が取り囲まれ、これにより、電線9は、予め定められた経路に沿って保持される。
【0042】
一方、第2環状保持機構100Bは、配線具1における基部10の一部である連結部位14の両側に形成された準孤立部12B及び留め孔13Bの部分により構成されている。準孤立部12Bは、連結部位14の両側のうちの第1の側において、連結部位14に繋がる根元部以外は一連の切り目120により他の部分から分離して形成され、連結部位14の両側のうちの第2の側へ曲げ変形可能な部分である。
【0043】
第2環状保持機構100Bは、カバー部材2を配線具1と連結する機構である。ここで、図2に示される3面図を参照しつつ、カバー部材2について説明する。
【0044】
カバー部材2は、配線具1(配線部材)における電線9の支持面を覆う板状の部材である。図2に示されるように、カバー部材2の複数の箇所には、配線具1における準孤立部12Bの根元部121と留め孔13Bとに対応する位置に形成された2つで1組の連結用孔21が形成されている。連結用孔21は、配線具1における準孤立部12Bが通される貫通孔である。
【0045】
図6は、カバー部材2を配線具1に対して繋ぎ止める第2環状保持機構100Bの断面図である。第2環状保持機構100Bにおいて、配線具1の一部に形成された準孤立部12Bは、留め孔13Bの縁部及び抜け止め孔123からなる抜け止め機構の作用により、配線具1の連結部位14とともに環状に保持される。また、準孤立部12Bは、その先端側からカバー部材2における1組の連結用孔21に通され、さらに、配線具1の留め孔13Bに通されることにより、配線具1とカバー部材2とを連結する。
【0046】
図7は、電線9を支持するとともにカバー部材2を繋ぎ止める第2環状保持機構100Bの断面図である。図7に示されるように、配線具1上に配置される電線9の一部が、配線具1の電線支持部位111とカバー部材2における1組の連結用孔21の間の部分との間に挟み込まれることも考えられる。この場合、電線支持部位111は連結部位14でもある。第2環状保持機構100Bが、カバー部材2の連結と電線9の固定とに兼用されることにより、電線9は、配線具1とカバー部材2との間において固定される。この場合、第1環状保持機構100Aが設けられなくても、電線9は、配線具1上において予め定められた経路に沿って保持される。
【0047】
以上に示したように、環状保持機構100において、準孤立部12は、抜け止め機構により、その一部が留め孔13に挿入された状態で保持される。しかしながら、準孤立部12が留め孔13から抜けることをより確実に防止するために、留め孔13に通された準孤立部12の先端部分が、配線具1に対して固着されることも考えられる。
【0048】
図8は、電線9を支持する環状保持機構100の正面図である。図8に示される例では、留め孔13に通された準孤立部12の先端部分は、超音波溶接などによって配線具1に対して溶着されている。準孤立部12は、抜け止め機構によって留め孔13に挿入された状態で予め保持されているため、準孤立部12を配線具1に固着する作業は容易である。
【0049】
また、配線具1には、その一部に配線具1の向きを表すマーク17が記されている。図1に示される例では、矢印形状のマーク17が、配線具1の角部に記されている。マーク17は、例えば、インクの転写、加熱もしくは加圧による刻印などによって配線具1に形成される。
【0050】
配線具1は、電線9を保持する状態で支持体に取り付けられる際に、マーク17が表す向きが予め定められた向きと一致するように支持体に取り付けられる。
【0051】
<ワイヤハーネス>
次に、図9及び図10を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス3の構成について説明する。図9(a)は、ワイヤハーネス3の平面図、図9(b)は、ワイヤハーネス3の正面図、図9(c)は、ワイヤハーネス3の側面図である。また、図10は、カバー部材2が除かれたワイヤハーネス3の平面図である。
【0052】
なお、図9及び図10において、便宜上、貫通孔の部分には網点模様が描かれ、突出した部分には網線模様が描かれているが、実際のワイヤハーネス3に網点模様及び網線模様が描かれているわけではない。また、図10において、カバー部材2が仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0053】
図9及び図10に示されるように、ワイヤハーネス3は、電線9と、配線具1と、カバー部材2とを備えている。前述したように、配線具1及びこれに連結されたカバー部材2は、電線保護具を構成している。また、電線9の端部にはコネクタ91が設けられている。
【0054】
図10に示されるように、配線具1上において、電線9は、ガイド部15に沿って配置され、これにより、電線9は、予め定められた経路に沿う状態、即ち、図1に示された配線部11に沿う状態で配置されている。
【0055】
また、配線具1において、第1環状保持機構100Aの準孤立部12Aは、電線9の周囲に沿って曲げられている。さらに、準孤立部12Aは、抜け止め孔123の部分において留め孔13Aの縁部における突起部131と引っ掛かり、電線支持部位111とともに電線9の周囲を取り囲む状態で保持されている。
【0056】
また、図9及び図10に示されるように、第2環状保持機構100Bの準孤立部12Bは、カバー部材2における1組の連結用孔21に通されるとともに配線具1の留め孔13に挿入されている。これにより、準孤立部12Bは、抜け止め孔123の部分において留め孔13Bの縁部における突起部131と引っ掛かる状態で、配線具1とカバー部材2とを連結している。
【0057】
ワイヤハーネス3において、配線具1は、電線9を予め定められた経路に沿う状態で保持する。また、配線具1及びカバー部材2は、電線9をその両側から覆うことにより、電線9が他の部材と接触して破損することを防止する。
【0058】
また、ワイヤハーネス3において、ガイド部15は、電線9の位置を規制する機能を果たすとともに、配線具1とカバー部材2との間隔を保持するスペーサとしての機能も果たしている。
【0059】
ワイヤハーネス3は、例えば、車両における座席シートの下方のスペース、天井裏のスペース又はトランクルームなどに取り付けられる。ワイヤハーネス3において、複数の電線9は、予め定められた形状に保持された状態で、電線保護具(配線具1及びカバー部材2)によって一体にユニット化されている。そのため、ワイヤハーネス3は、クランプを用いて簡易に所定の位置に取り付けられる。
【0060】
次に、図11から図17を参照しつつ、配線具1において採用可能な環状保持機構の他の例について説明する。
【0061】
図11は、配線具1において採用可能な第1の例に係る環状保持機構の平面図である。図1、図2及び図3に示された環状保持機構100において、準孤立部12は、一連の切り目120によって根元部121以外の部分が他の部分から分離するよう形成されている。一方、図1に示される例では、準孤立部12が、配線具1の縁部に形成されることにより、根元部121以外の部分が他の部分から分離して形成されている。図11に示される環状保持機構も、配線具1において採用可能である。
【0062】
図12は、配線具1において採用可能な第2の例に係る環状保持機構の平面図である。図12に示される環状保持機構は、電線を支持する第1環状保持機構100Aの一例である。図12に示されるように、1箇所の電線支持部位111に対し、複数の第1環状保持機構100Aが、それぞれ交差する方向に沿って形成されることが考えられる。
【0063】
図12に示される例では、2組の第1環状保持機構100Aが、電線の分岐部が配置される1箇所の電線支持部位111においてほぼ直交する方向に沿って形成されている。これにより、電線が、分岐部において複数の準孤立部12Aによって強固に固定される。図12に示される環状保持機構も、配線具1において採用可能である。
【0064】
図13は、配線具1において採用可能な第3の例に係る環状保持機構の平面図である。図1、図2及び図3に示された環状保持機構100において、準孤立部12の抜け止め機構は、準孤立部12に形成された抜け止め孔123と、留め孔13の縁部の一部である突起部131とにより構成されている。
【0065】
一方、図13に示される環状保持機構における抜け止め機構は、準孤立部12における幅方向の外縁において外側に張り出した張出部123Aと、留め孔13の縁部とにより構成される。準孤立部12の張出部123Aの部分の幅は、留め孔13の幅よりも大きく形成されている。そして、準孤立部12が留め孔13に挿入されると、張出部123Aは、収縮しつつ留め孔13を通過した後、留め孔13の縁部の裏側に引っ掛かる。
【0066】
また、図13に示される例では、のこぎりの刃状に張り出した複数の張出部123Aが、準孤立部12における留め孔13への挿入方向に沿う複数の箇所に並んで形成されている。これにより、準孤立部12におけるその根元部121から留め孔13へ亘る部分の長さを調節することが可能である。図13に示される環状保持機構も、配線具1において採用可能である。
【0067】
図14は、配線具1において採用可能な第4の例に係る環状保持機構の平面図である。図14に示される環状保持機構における抜け止め機構も、図13に示される例と同様に、準孤立部12における幅方向の外縁において外側に張り出した張出部123Bと、留め孔13の縁部とにより構成される。準孤立部12の張出部123Bの部分の幅は、留め孔13の幅よりも大きく形成されている。そして、準孤立部12が留め孔13に挿入されると、張出部123Bは、収縮しつつ留め孔13を通過した後、留め孔13の縁部の裏側に引っ掛かる。
【0068】
また、図14に示される例では、矩形波状に張り出した複数の張出部123Bが、準孤立部12における留め孔13への挿入方向に沿う複数の箇所に並んで形成されている。これにより、準孤立部12におけるその根元部121から留め孔13へ亘る部分の長さを調節することが可能である。図14に示される環状保持機構も、配線具1において採用可能である。
【0069】
図15は、配線具1において採用可能な第5の例に係る環状保持機構の平面図及び断面図である。なお、図15(a)が平面図、図15(b)が、図15(a)に示されるC−C面における断面図である。
【0070】
図1、図2及び図3に示された環状保持機構100において、準孤立部12の抜け止め機構は、準孤立部12に形成された抜け止め孔123と、留め孔13の縁部の一部である突起部131とにより構成されている。
【0071】
一方、図15に示される環状保持機構における抜け止め機構は、帯状に形成された準孤立部12と複数の留め孔13の縁部とにより構成されている。この場合、図15(b)に示されるように、準孤立部12は、並んで形成された2つの留め孔13の両方に通される。これにより、準孤立部12における2つの留め孔13に跨る曲げ部123Cが、留め孔13の縁部に引っ掛かり、留め孔13からの準孤立部12の抜けが妨げられる。図15に示される環状保持機構も、配線具1において採用可能である。
【0072】
図16は、配線具1において採用可能な第6の例に係る環状保持機構の平面図及び断面図である。図16(a)が平面図であり、図16(b)が、図16(a)に示されるD−D面における断面図である。
【0073】
図16に示される環状保持機構における抜け止め機構は、準孤立部12においてその厚み方向に突出した突出部123Dと、留め孔13の縁部とにより構成される。準孤立部12における突出部123Dの部分の厚みは、留め孔13の高さよりも大きく形成されている。そして、準孤立部12が留め孔13に挿入されると、突出部123Dは、収縮しつつ留め孔13を通過した後、留め孔13の縁部の裏側に引っ掛かる。準孤立部12の突出部123Dは、例えば、真空成形によって形成される。
【0074】
また、図16に示される例では、方形波状に突出した複数の突出部123Dが、準孤立部12における留め孔13への挿入方向に沿う複数の箇所に並んで形成されている。これにより、準孤立部12におけるその根元部121から留め孔13へ亘る部分の長さを調節することが可能である。図16に示される環状保持機構も、配線具1において採用可能である。
【0075】
図17は、配線具1において採用可能な第7の例に係る環状保持機構の平面図及び断面図である。図17(a)が平面図であり、図17(b)が、図17(a)に示されるE−E面における断面図である。
【0076】
図17に示される環状保持機構における抜け止め機構も、図16に示される例と同様に、準孤立部12においてその厚み方向に突出した突出部123Eと、留め孔13の縁部とにより構成される。準孤立部12における突出部123Eの部分の厚みは、留め孔13の高さよりも大きく形成されている。そして、準孤立部12が留め孔13に挿入されると、突出部123Eは、収縮しつつ留め孔13を通過した後、留め孔13の縁部の裏側に引っ掛かる。準孤立部12の突出部123Eは、例えば、真空成形によって形成される。
【0077】
また、図17に示される例では、のこぎりの刃状に突出した複数の突出部123Eが、準孤立部12における留め孔13への挿入方向に沿う複数の箇所に並んで形成されている。これにより、準孤立部12におけるその根元部121から留め孔13へ亘る部分の長さを調節することが可能である。図17に示される環状保持機構も、配線具1において採用可能である。
【0078】
<効果>
配線具1は、電線9が配置される配線部11と、その一部である電線支持部位111とともに電線9の周囲を取り囲む状態で保持される準孤立部12Aとが一体に形成された部材である。電線9は、一つの部品の一部に形成された準孤立部12A及び電線支持部位111によって一部が取り囲まれ、これにより、電線9は、予め定められた経路に沿って保持される。また、電線9は、配線部11、カバー部材2及びガイド部15に対向する面において保護され、さらに、準孤立部12A及び電線支持部位111で囲まれた部分においては周面全体において保護される。即ち、配線具1において、準孤立部12Aは、従来のワイヤハーネスにおける電線の結束材として機能し、配線部11、カバー部材2、ガイド部15及び準孤立部12Aは、電線9の保護部材として機能する。
【0079】
従って、配線具1又はワイヤハーネス3が採用されることにより、電線9は、予め定められた経路に沿って保持され、また、保護される。さらに、電線9の結束材及び保護部材として機能する準孤立部12及び配線部11などが、一つの部品の一部に形成されるため、従来よりも部品点数がごく少なくなる。
【0080】
また、配線具1において、準孤立部12Aは、その一部が留め孔13Aに通されるだけで、抜け止め機構の作用により電線9を取り囲む状態で保持される。そのため、配線具1を電線9に取り付けるための工数及び装置は、従来よりも大幅に簡素化される。特に、準孤立部12Aの抜け止め機構が、準孤立部12Aの一部に形成された掛かり部と留め孔13の縁部とにより構成されれば、準孤立部12Aが留め孔13から抜けないようにするための作業は容易である。なお、抜け止め孔123、張出部123A,123B又は突出部123D,123Eは、掛かり部の一例である。
【0081】
また、抜け止め機構において、複数の掛かり部が、準孤立部12Aにおける留め孔13Aへの挿入方向に沿う複数の箇所に並んで形成されているため、準孤立部12Aにおけるその根元部121から留め孔13Aへ亘る部分の長さ、即ち、準孤立部12Aにおける電線9を囲う部分の長さを電線9の太さに応じて調節することが可能となる。そのため、電線9が、準孤立部12Aと電線支持部位111との間に挟み込まれるように準孤立部12Aの長さを調節し、電線9を電線支持部位111に固定する作業が容易となる。
【0082】
また、配線具1は、真空成形により形成されたガイド部15を有しているため、電線9を配線部11に沿って配置する作業が容易となる。また、真空成形によってガイド部15を形成する装置及び工程は、射出成形によって突起したガイド部を有する樹脂部材を成形する装置及び工程よりも簡易に実現できる点において好適である。
【0083】
また、配線具1の向きを表すマーク17が、配線具1の一部に記されているため、配線具1及びそれを備えたワイヤハーネス3を正しい向きで支持体に取り付けることが容易である。
【0084】
<第2実施形態>
次に、図18から図21を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る配線具1Aについて説明する。この第2実施形態に係る配線具1Aは、図1に示された配線具1と比較して、第2環状保持機構100Bに代えて第3環状保持機構100Cが形成されている点のみが異なる。図18から図21において、図1から図17に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、配線具1Aにおける配線具1と異なる点についてのみ説明する。
【0085】
なお、図18は、配線具1Aの平面図、図19は、配線具1Aにおける環状保持機構100Cの斜視図、図20は、配線具1Aにおいて採用可能な第1の例に係る環状保持機構100Cの平面図、図21は、配線具1Aにおいて採用可能な第2の例に係る環状保持機構100Cの平面図である。また、図18において、便宜上、貫通孔の部分には網点模様が描かれ、突出した部分には網線模様が描かれているが、実際の配線具1に網点模様及び網線模様が描かれているわけではない。また、図19において、電線9が仮想線(二点鎖線)で描かれている。
【0086】
配線具1Aは、カバー部材2と組み合わせられることなく単体で電線9に対して取り付けられる。そのため、カバー部材2との連結用の第2環状保持機構100Bは設けられていない。しかしながら、配線具1Aは、主に電線9の保護部として機能する第3環状保持機構100Cを備えている。第3環状保持機構100Cも、第1環状保持機構100A及び第2環状保持機構100Bと同様に、環状保持機構100の一種である。
【0087】
第3環状保持機構100Cは、第1環状保持機構100Aと同様に、配線部11の一部である電線支持部位111の両側に形成された準孤立部12C及び留め孔13Cの部分からなる。但し、第3環状保持機構100Cの準孤立部12Cは、電線9を広範囲に亘って保護するために、第1環状保持機構100Aの準孤立部12Aよりも広い幅で形成されている。
【0088】
また、図18及び図19に示されるように、第3環状保持機構100Cの準孤立部12Cには、それを横断する線に沿って他の部分よりも折り曲がりやすく構成された屈曲対象部126が形成されている。屈曲対象部126は、例えば、準孤立部12Cにおいて、それを横断して破線状に並ぶ複数の切り目が形成された部分である。また、屈曲対象部126が、準孤立部12Cを横断する溝であることも考えられる。図18に示される例では、2本の屈曲対象部126が準孤立部12Cに形成されているが、1本の屈曲対象部126又は3本以上の屈曲対象部126が形成されることも考えられる。
【0089】
図19に示されるように、準孤立部12Cは、屈曲対象部126に沿って曲げられることにより、電線9における電線支持部位111に配置された部分の周囲に沿ってその部分を跨ぐように曲げられる。
【0090】
また、第3環状保持機構100Cにおいては、複数の留め孔13Cが、電線支持部位111に沿う複数の位置に形成されている。一方、準孤立部12Cの先端部分には、複数の留め孔13C各々に挿入される複数の挿入片125が形成されている。そして、複数の挿入片125各々に、留め孔13C各々の縁部における突起部131に引っ掛かる抜け止め孔123が形成されている。
【0091】
なお、第3環状保持機構100Cの準孤立部12Cにおいて、抜け止め孔123は、留め孔13Cへの挿入方向における1箇所にのみ形成されている。そのため、第3環状保持機構100Cは、準孤立部12Cにおける電線9に跨る部分の長さを調節する機能を備えていない。
【0092】
配線具1Aが採用された場合、電線9は、一つの部品の一部に形成された準孤立部12A及び電線支持部位111によって一部が取り囲まれ、これにより、電線9は、予め定められた経路に沿って保持される。また、電線9は、配線部11及びガイド部15に対向する面において保護され、さらに、準孤立部12C及び電線支持部位111で囲まれた部分においては周面全体において保護される。即ち、配線具1Aにおいて、準孤立部12Aが、従来のワイヤハーネスにおける電線の結束材として機能し、配線部11、ガイド部15及び準孤立部12Cは、電線9の保護部材として機能する。
【0093】
次に、図20及び図21を参照しつつ、配線具1Aにおいて採用可能な環状保持機構の他の例について説明する。なお、図20は、配線具1Aにおいて採用可能な第1の例に係る環状保持機構の平面図、図21は、配線具1Aにおいて採用可能な第2の例に係る環状保持機構の平面図である。
【0094】
図18及び図19に示された環状保持機構100Cにおいて、準孤立部12Cの抜け止め機構は、準孤立部12Cに形成された抜け止め孔123と、留め孔13Cの縁部の一部である突起部131とにより構成されている。
【0095】
一方、図19に示される環状保持機構における抜け止め機構は、準孤立部12Cにおける幅方向の外縁において外側に張り出した張出部123Fと、留め孔13Cの縁部とにより構成される。準孤立部12Cの張出部123Fの部分の幅は、留め孔13Cの幅よりも大きく形成されている。そして、準孤立部12Cの先端部が留め孔13Cに挿入されると、張出部123Fは、収縮しつつ留め孔13Cを通過した後、留め孔13Cの縁部の裏側に引っ掛かる。図20に示される環状保持機構も、配線具1Aにおいて採用可能である。
【0096】
図21に示される環状保持機構における抜け止め機構は、準孤立部12Cの先端部に形成された複数の矢印形状の挿入片123Gと、各挿入片123Gが挿入される複数の留め孔13の縁部とにより構成される。各挿入片123Gの最大幅は、留め孔13の幅よりも大きく形成されている。そして、挿入片123Gが留め孔13に挿入されると、挿入片123Gは、収縮しつつ留め孔13を通過した後、最も幅の広い部分において留め孔13Cの縁部の裏側に引っ掛かる。図21に示される環状保持機構も、配線具1Aにおいて採用可能である。
【0097】
<効果>
従って、配線具1A又はそれを備えたワイヤハーネスが採用されることにより、配線具1又はそれを備えたワイヤハーネス3が採用された場合と同様の効果が得られる。さらに、配線具1Aが採用された場合、カバー部材2が省略される分だけワイヤハーネスを軽量化できる効果が得られる。
【0098】
また、第3環状保持機構100Cにおいて、準孤立部12Cは、その幅が大きいため、比較的幅の狭いベルト状の準孤立部12A,12Bよりも、その可撓性のみによっては曲がりにくい。しかしながら、準孤立部12Cに、それを横断する線に沿って他の部分よりも折り曲がりやすく構成された屈曲対象部126が形成されているため、電線9を跨ぐように準孤立部12Cを曲げることは容易である。
【0099】
<その他>
以上に示された各実施形態においては、電線9は、その一面において配線部11によって保護され、配線部11に対し反対側の面においては、カバー部材2又は第3環状保持機構100Cの準孤立部12Cによって保護される。
【0100】
しかしながら、電線9が、その一面において配線部11によって保護されれば十分な場合、配線具1Aにおいて、第3環状保持機構100Cが第1環状保持機構100Aに置き換えられることも考えられる。また、カバー部材2が設けられない場合、電線9が、コルゲートチューブなどの保護チューブで覆われた状態で、第1環状保持機構100Aによって支持されることも考えられる。
【0101】
また、配線具1,1Aが、ガイド部15を有さないことも考えられる。ガイド部15を有さない配線具1,1Aは、電線9に取り付けられる前の原形の状態において、平坦な部材である。この場合、配線具1,1Aは、その表裏のいずれの側に電線9を配置させるかにより、環状保持機構100などの位置関係が反対の2種類の配線具として利用可能である。例えば、車両の運転席の下方に配置されるワイヤハーネスと、助手席の下方に配置されるワイヤハーネスとにおいて、電線の位置関係が左右対称である場合、ガイド部15を有さない配線具1,1Aは、運転席用と助手席用とに兼用することができる。
【0102】
また、配線具1,1Aにおいて、配線部11は、平坦な部分である。しかしながら、配線部11が、真空成形などによって成形された溝であることも考えられる。
【符号の説明】
【0103】
1,1A 配線具
2 カバー部材
3 ワイヤハーネス
9 電線
10 基部
11 配線部
12,12A,12B,12C 準孤立部
13,13A,13B,13C 留め孔
14 連結部位
15 ガイド部
16 クランプ用孔
17 マーク
21 連結用孔
91 コネクタ
100 環状保持機構
100A 第1環状保持機構
100B 第2環状保持機構
100C 第3環状保持機構
111 電線支持部位(配線部の一部)
112 電線ガイド部位
120 切り目
121 準孤立部の根元部
122 準孤立部の先端
123 抜け止め孔
123A,123B 準孤立部の張出部
123C 準孤立部の曲げ部
123D,123E,123F 準孤立部の突出部
123G,125 準孤立部の挿入片
124 貫通孔
126 準孤立部の屈曲対象部
131 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の部材が加工されることにより得られる部材からなり、電線を予め定められた経路に沿う状態に保持する配線具であって、
前記電線が配置される配線部と、
前記配線部の一部である電線支持部位の両側のうちの第1の側において前記電線支持部位と繋がる根元部以外は他の部分から分離して形成され、前記電線支持部位の両側のうちの第2の側へ曲げ変形可能な部分である準孤立部と、
前記電線支持部位の前記第2の側に形成され、前記準孤立部の一部が挿入される貫通孔と、を有し、
前記準孤立部の一部と前記貫通孔の縁部とが前記貫通孔からの前記準孤立部の抜けを妨げる抜け止め機構を構成することを特徴とする配線具。
【請求項2】
前記抜け止め機構は、前記準孤立部の一部に形成され前記貫通孔の縁部に引っ掛かる掛かり部と前記貫通孔の縁部とにより構成されている、請求項1に記載の配線具。
【請求項3】
複数の前記掛かり部が、前記準孤立部における前記貫通孔への挿入方向に沿う複数の箇所に並んで形成されている、請求項2に記載の配線具。
【請求項4】
前記準孤立部に、それを横断する線に沿って他の部分よりも折り曲がりやすく構成された屈曲対象部が形成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の配線具。
【請求項5】
真空成形により形成された部分であり、前記配線部の一部に沿って突出して形成されたガイド部をさらに有する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の配線具。
【請求項6】
当該配線具の一部に当該配線具の向きを表すマークが記されている、請求項1から請求項5のいずれかに記載の配線具。
【請求項7】
電線と、
板状の部材が加工されることにより得られる部材からなり、前記電線を予め定められた経路に沿う状態に保持する配線具と、を備えたワイヤハーネスであって、
前記配線具は、
前記電線が配置された配線部と、
前記配線部の一部である電線支持部位の両側のうちの第1の側において前記電線支持部位と繋がる根元部以外は他の部分から分離して形成され、前記電線の周囲に沿って曲げられた部分である準孤立部と、
前記電線支持部位の前記第2の側に形成され、前記準孤立部の一部が挿入された貫通孔と、を有し、
前記準孤立部が、その一部において前記貫通孔の縁部と引っ掛かり、前記電線支持部位とともに前記電線の周囲を取り囲む状態で保持されていることを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−239314(P2012−239314A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106861(P2011−106861)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】