説明

配線回路基板およびその製造方法

【課題】絶縁層と導体パターンとの間の十分な密着力を得ることができるとともに、高周波特性の劣化を防止することができる配線回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】所定の厚みを有する金属補強板10を用意する。その金属補強板10上に所定の厚みでベース絶縁層1を形成する。ベース絶縁層1としては、例えば感光性ポリイミド樹脂を用いる。次に、部分的に透過率の異なるフォトマスクPMを用いてベース絶縁層1を所定のパターンで露光する。これにより、ベース絶縁層1の上面における2本の導体パターンの形成領域に溝部D1,D2が形成される。溝部D1,D2は後の工程で形成される2本の導体パターンの下面の形状に沿うように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化および多機能化に伴い、配線回路基板の配線の高密度化が要求されている。このような要求に対応すべく、ファインピッチの導体パターンを備える配線回路基板の開発が進められている。
【0003】
配線回路基板において、導体パターンは絶縁層上に形成される。ファインピッチの導体パターンはその配線幅を小さく設定する必要があるため、絶縁層との接触面積が小さい。したがって、絶縁層と導体パターンとの間の密着力が弱いと導体パターンが絶縁層から剥離され易く、短絡等の要因となる。
【0004】
絶縁層と導体パターンとの密着力を強化するために、導体パターンが形成される絶縁層の表面に微細な凹凸を形成する方法がある(例えば、特許文献1参照)。この場合、その絶縁層上に導体パターンを形成すると、絶縁層と導体パターンとの間で強力なアンカー効果を得ることができる。その結果、絶縁層と導体パターンとの間の十分な密着力を得ることができる。
【特許文献1】特開平5−167248
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、配線回路基板に実装される電子部品に高周波信号が用いられると、導体パターンに流れる電流がその表面に集中する表皮効果が発生する。
【0006】
上記のように粗面化された絶縁層上に導体パターンが形成されると、導体パターンの絶縁層との接合面も粗面化される。それにより、導体パターンの接合面では、電流の進行方向における凹凸形状が導体パターンの実効的な抵抗値の増大を招く。その結果、高周波信号が大きく減衰してしまい、高周波特性が劣化する。
【0007】
本発明の目的は、絶縁層と導体パターンとの間の十分な密着力を得ることができるとともに、高周波特性の劣化を防止することができる配線回路基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の発明に係る配線回路基板は、絶縁層と、絶縁層の一面上に形成された配線用の導体パターンとを備え、絶縁層と導体パターンとの接触領域において絶縁層および導体パターンの一方に導体パターンに沿って延びる溝部が形成され、絶縁層および導体パターンの他方に溝部に嵌合する突条部が形成されたものである。
【0009】
この発明に係る配線回路基板においては、絶縁層および導体パターンの一方に導体パターンに沿って延びるように形成される溝部と、絶縁層および導体パターンの他方に形成される突条部とが、絶縁層と導体パターンとの接触領域で嵌合する。
【0010】
これにより、絶縁層および導体パターンの一方に形成された溝部により、絶縁層および導体パターンの他方が係止される。その結果、絶縁層と導体パターンとの間で十分な密着力を得ることができる。
【0011】
特に、溝部および突条部により、絶縁層と導体パターンとの接触面積が大きくなるので、絶縁層と導体パターンとの間でより十分な密着力を得ることができる。
【0012】
また、溝部および突条部が導体パターンに沿って延びるように形成されることにより、導体パターンにおける電流の進行方向に凹凸形状が存在しない。
【0013】
したがって、配線回路基板に実装される電子部品に高周波信号が用いられたときに、導体パターンに流れる電流がそれらの表面に集中する表皮効果が発生する場合でも、導体パターンの実効的な抵抗値の増大が防止される。その結果、配線回路基板の高周波特性の劣化を防止することができる。
【0014】
(2)溝部および突条部は、複数形成されてもよい。この場合、絶縁層と導体パターンとの接触面積がさらに大きくなるので、絶縁層と導体パターンとの間でさらに十分な密着力を得ることができる。
【0015】
(3)溝部は、絶縁層に形成され、突条部は、導体パターンに形成されてもよい。この場合、絶縁層に形成された溝部に導体パターンの突条部が係止される。それにより、絶縁層と導体パターンとの間で十分な密着力を得ることができる。
【0016】
(4)溝部は、導体パターンに形成され、突条部は、絶縁層に形成されてもよい。この場合、導体パターンに形成された溝部に絶縁層の突条部が係止される。それにより、絶縁層と導体パターンとの間で十分な密着力を得ることができる。
【0017】
(5)絶縁層の他面に金属補強板が形成されてもよい。この場合、配線回路基板の強度および保形性が向上する。
【0018】
(6)絶縁層の一面上でかつ絶縁層および導体パターンの露出部に、絶縁性のカバー膜が形成されてもよい。この場合、絶縁層の一面上に形成される導体パターンがカバー膜により覆われ、導体パターンの腐食が防止される。
【0019】
(7)第2の発明に係る配線回路基板の製造方法は、絶縁層を形成するステップと、絶縁層の一面上に配線用の導体パターンを形成するステップとを備え、絶縁層を形成するステップは、導体パターンとの接触領域に導体パターンに沿って延びる溝部または突条部を形成するステップを含み、導体パターンを形成するステップは、絶縁層の溝部または突条部と嵌合する溝部または突条部を形成するステップを含むものである。
【0020】
この発明に係る配線回路基板の製造方法においては、絶縁層が形成され、絶縁層の一面上に配線用の導体パターンが形成される。特に、絶縁層が形成される際には、導体パターンとの接触領域に導体パターンに沿って延びる溝部または突条部が形成される。また、導体パターンが形成される際には、絶縁層の溝部または突条部と嵌合する溝部または突条部が形成される。
【0021】
これにより、絶縁層および導体パターンの一方に形成された溝部により、絶縁層および導体パターンの他方が係止される。その結果、絶縁層と導体パターンとの間で十分な密着力を得ることができる。
【0022】
特に、溝部および突条部により、絶縁層と導体パターンとの接触面積が大きくなるので、絶縁層と導体パターンとの間でより十分な密着力を得ることができる。
【0023】
また、溝部および突条部が導体パターンに沿って延びるように形成されることにより、導体パターンにおける電流の進行方向に凹凸形状が存在しない。
【0024】
したがって、配線回路基板に実装される電子部品に高周波信号が用いられたときに、導体パターンに流れる電流がそれらの表面に集中する表皮効果が発生する場合でも、導体パターンの実効的な抵抗値の増大が防止される。その結果、配線回路基板の高周波特性の劣化を防止することができる。
【0025】
(8)絶縁層を形成するステップは、感光性材料からなる絶縁層を形成するステップをさらに含み、溝部または突条部を形成するステップは、絶縁層を異なる複数の光量で露光し、露光後の絶縁層を現像および硬化することにより導体パターンとの接触領域に導体パターンに沿って延びる溝部または突条部を形成するステップを含んでもよい。
【0026】
この場合、絶縁層を形成する際に、感光性材料からなる絶縁層が形成され、溝部または突条部を形成する際に、絶縁層が異なる複数の光量で露光される。また、露光後の絶縁層が現像および硬化されることにより導体パターンとの接触領域に導体パターンに沿って延びる溝部または突条部が形成される。このように、絶縁層に対して露光、現像および硬化処理を行うことにより、溝部または突条部を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る配線回路基板においては、絶縁層および導体パターンの一方に導体パターンに沿って延びるように形成される溝部と、絶縁層および導体パターンの他方に形成される突条部とが、絶縁層と導体パターンとの接触領域で嵌合する。
【0028】
これにより、絶縁層および導体パターンの一方に形成された溝部により、絶縁層および導体パターンの他方が係止される。その結果、絶縁層と導体パターンとの間で十分な密着力を得ることができる。
【0029】
特に、溝部および突条部により、絶縁層と導体パターンとの接触面積が大きくなるので、絶縁層と導体パターンとの間でより十分な密着力を得ることができる。
【0030】
また、溝部および突条部が導体パターンに沿って延びるように形成されることにより、導体パターンにおける電流の進行方向に凹凸形状が存在しない。
【0031】
したがって、配線回路基板に実装される電子部品に高周波信号が用いられたときに、導体パターンに流れる電流がそれらの表面に集中する表皮効果が発生する場合でも、導体パターンの実効的な抵抗値の増大が防止される。その結果、配線回路基板の高周波特性の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板およびその製造方法について説明する。
【0033】
(配線回路基板の製造方法)
図1〜図3は、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板の製造方法を説明するための製造工程図である。図1〜図3においては、金属補強板上に形成される配線用の導体パターンの長手方向に垂直な方向の断面が示されている。
【0034】
図1(a)に示すように、所定の厚みを有する金属補強板10を用意する。金属補強板10としては、例えば厚み25μmのステンレス基板を用いる。
【0035】
次に、図1(b)に示すように、金属補強板10上に所定の厚みでベース絶縁層1を形成する。このベース絶縁層1の厚みは、7〜35μmであることが好ましく、7〜10μmであることがより好ましい。
【0036】
ベース絶縁層1を構成する絶縁材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂またはポリ塩化ビニル樹脂等の合成樹脂を用いることができる。
【0037】
これらの合成樹脂のうち、感光性樹脂を用いることが好ましく、感光性ポリイミド樹脂を用いることがより好ましい。本実施の形態では、ベース絶縁層1として感光性樹脂であるポジ型の感光性ポリイミド樹脂を用いる。
【0038】
ここで、図1(c)に示すように、フォトマスクPMを用いてベース絶縁層1を所定のパターンで露光する。
【0039】
本実施の形態において、ベース絶縁層1のパターニングに用いられるフォトマスクPMは、第1の透過率を有する第1の領域T1と、第2の透過率を有する第2の領域T2と、第3の透過率を有する第3の領域T3とを備える。このフォトマスクPMは、例えば、第1〜第3の領域T1〜T3毎に粗面化等の表面処理を施したり、照射光を吸収するフィルムを貼着したり、金属薄膜を蒸着法を用いて形成することにより作製することができる。
【0040】
図1(c)の例では、フォトマスクPMの両端部に第1の領域T1が配置され、その内側に第2および第3の領域T2,T3が交互に並んでいる。
【0041】
第1〜第3の領域T1〜T3における第1〜第3の透過率は、例えば300〜450nmの波長を有する照射光に対して、それぞれ0%、100%および約50%である。
【0042】
ベース絶縁層1が感光性ポリイミド樹脂である場合、露光のための照射光は、300〜450nmの波長を有することが好ましく、350〜420nmの波長を有することがより好ましい。
【0043】
また、その露光時の積算光量は、100〜1000mJ/cmであることが好ましく、200〜700mJ/cmであることがより好ましい。
【0044】
ベース絶縁層1にポジ型の感光性ポリイミド樹脂を用いる場合、露光後のベース絶縁層1を130℃以上150℃未満の温度範囲で加熱する。その後、現像処理することにより、ベース絶縁層1の露光部分が可溶化される。
【0045】
ここで、ベース絶縁層1の可溶化領域の深さは照射光の受光量に応じて変化する。したがって、本実施の形態では、例えばフォトマスクPMの第1の領域T1に対応するベース絶縁層1の部分が全て可溶化され、第2の領域T2に対応するベース絶縁層1の部分が可溶化されず、第3の領域T3に対応するベース絶縁層1の部分が約半分の深さまで可溶化される。
【0046】
その後、現像処理後のベース絶縁層1を例えば275℃以上の温度で加熱することにより硬化処理を行う。それにより、ベース絶縁層1の可溶化されていない部分が硬化され、所定のパターンが形成される。
【0047】
なお、本実施の形態ではベース絶縁層1としてポジ型の感光性ポリイミド樹脂を用いるが、ネガ型の感光性ポリイミド樹脂を用いてもよい。この場合、フォトマスクPMの第1〜第3の透過率をそれぞれ100%、0%および約50%に設定する。また、露光後のベース絶縁層1を150℃以上180℃以下の温度範囲で加熱する。その後、現像処理することにより、ベース絶縁層1の露光部分が不溶化される。さらに、275℃以上の温度で加熱することにより、所定のパターンが形成される。
【0048】
図1(d)にパターニングされたベース絶縁層1が示されている。上述のように、第3の領域T3に対応するベース絶縁層1の部分は、約半分の深さまで可溶化され、硬化処理される。それにより、図1(d)に示すようにベース絶縁層1の上面には溝部D1,D2が形成される。本実施の形態では、溝部D1,D2は矩形の断面形状を有する。これらの溝部D1,D2の幅は、3〜5μmであることが好ましい。また、溝部D1,D2の深さは、3〜6μmであることが好ましい。
【0049】
次に、図2(e)に示すように、露出した金属補強板10の上面、ベース絶縁層1の上面、ベース絶縁層1の側面および溝部D1,D2の内表面を覆うように金属薄膜層2を形成する。この金属薄膜層2の形成は、例えば蒸着法、スパッタリング法または無電解めっき等により行う。
【0050】
そして、金属薄膜層2の上面に、例えば感光性樹脂等からなるめっきレジスト層3を形成する。そして、めっきレジスト層3を所定のパターンに露光処理および現像処理する。これにより、図2(f)に示すように、所定のパターンを有するめっきレジスト層3が金属薄膜層2上に形成される。それにより、後の工程で形成される配線用の導体パターンの部分で金属薄膜層2が露出する。なお、めっきレジスト層3は、感光性樹脂以外の他の材料により形成されてもよい。
【0051】
続いて、図2(g)に示すように、電解めっき法により、露出した金属薄膜層2上に金属めっき層4を形成する。金属めっき層4としては、例えば、ニッケル、銅、金またははんだが用いられる。
【0052】
図3(h)に示すように、めっきレジスト層3を除去する。また、図3(i)に示すように、めっきレジスト層3の形成領域における金属薄膜層2を除去する。これにより、金属薄膜層2および金属めっき層4からなる導体パターン20a,20bが形成される。これらの導体パターン20a,20bの厚みは、3〜20μmであることが好ましく、3〜17μmであることがより好ましい。
【0053】
また、導体パターン20a,20bの幅は10〜100μmであることが好ましく、20〜40μmであることがより好ましい。
【0054】
なお、これら導体パターン20a,20bは、ともに溝部D1,D2上に形成されるので、それぞれの溝部D1,D2と嵌合する突条部を有する。
【0055】
最後に、図3(j)に示すように、ベース絶縁層1および導体パターン20a,20bの上面にカバー絶縁層5を形成する。カバー絶縁層5の厚みは1〜40μmであることが好ましく、1〜7μmであることがより好ましい。
【0056】
これにより、本実施の形態に係る配線回路基板100が完成する。
【0057】
上記の配線回路基板100において、ベース絶縁層1ならびに導体パターン20a,20b間および導体パターン20a,20bならびにカバー絶縁層5間には、必要に応じて接着剤層が存在してもよい。
【0058】
また、配線回路基板100の導体パターン20a,20bは金属薄膜層2および金属めっき層4の二層構造を有するが、導体パターン20a,20bは一層構造を有してもよいし、二層以上の多層構造を有してもよい。
【0059】
上記では、セミアディティブ法による導体パターン20a,20bの形成について説明したが、これに限らず、導体パターン20a,20bはアディティブ法またはサブトラクティブ法により形成されてもよい。
【0060】
(ベース絶縁層の溝部について)
ここで、ベース絶縁層1に形成される溝部D1,D2について説明する。
【0061】
本実施の形態において、溝部D1,D2は所定の方向に延びる導体パターン20a,20bの下面の形状に沿うように形成する。特に、溝部D1,D2は導体パターン20a,20bと平行となるように形成されることが好ましい。
【0062】
したがって、導体パターン20a,20bが曲線状に形成される場合には、溝部D1,D2も導体パターン20a,20bの形状に沿って曲線状に形成される。このように溝部D1,D2を形成することにより、配線回路基板100は以下の効果を得ることができる。
【0063】
(効果)
本実施の形態に係る配線回路基板100においては、導体パターン20a,20bが形成されるベース絶縁層1の一面に、それら導体パターン20a,20bの下面の形状に沿うようにそれぞれ溝部D1,D2が形成される。
【0064】
これにより、ベース絶縁層1上の導体パターン20a,20bが、溝部D1,D2により係止される。その結果、ファインピッチの導体パターン20a,20bとベース絶縁層1との間の十分な密着力を得ることができる。
【0065】
また、溝部D1,D2がそれぞれ導体パターン20a,20bの下面の形状に沿うように形成されることにより、導体パターン20a,20bにおける電流の進行方向に凹凸形状が存在しない。
【0066】
したがって、配線回路基板100に実装される電子部品に高周波信号が用いられたときに、導体パターン20a,20bに流れる電流がそれらの表面に集中する表皮効果が発生する場合でも、導体パターン20a,20bの実効的な抵抗値の増大が防止される。その結果、配線回路基板100の高周波特性の劣化を防止することができる。
【0067】
上述のように、溝部D1,D2は矩形の断面形状を有するが、溝部D1,D2の断面形状はこれに限定されず、三角形の断面形状を有してもよいし、半円形の断面形状を有してもよい。
【0068】
配線回路基板100では、ベース絶縁層1における導体パターン20a,20bの形成領域に、それぞれ溝部D1,D2が1本ずつ形成されているが、各導体パターン20a,20bの形成領域に形成される溝部の本数は1本に限らず、複数本であってもよい。この場合、導体パターン20a,20bとベース絶縁層1との間のより十分な密着力を得ることができる。
【0069】
また、ベース絶縁層1における導体パターン20a,20bの形成領域に、それぞれ溝部D1,D2に代えて、連続的に延びる突条部を形成してもよい。この場合、突条部は矩形の断面形状を有してもよいし、三角形の断面形状を有してもよいし、半円形の断面形状を有してもよい。これらの場合にも、上記と同様の効果を得ることができる。
【0070】
本実施の形態では、ベース絶縁層1として感光性樹脂を用いる例を説明したが、ベース絶縁層1が感光性樹脂以外の絶縁材料により形成される場合には、ウェットエッチング等により、溝部D1,D2が形成されるようにベース絶縁層1のパターニングを行う。
【0071】
本実施の形態に係る配線回路基板100においては、溝部D1,D2に嵌合するように形成される導体パターン20a,20bの突条部が突条部に相当する。
【実施例】
【0072】
上記の配線回路基板およびその製造方法に基づいて実施例1、実施例2および比較例1の回路付サスペンション基板を作製した。実施例1、実施例2および比較例1の回路付サスペンション基板はともに同様の外観を有する。
【0073】
図4は、実施例1、実施例2および比較例1の回路付サスペンション基板100a,100b,200の外観斜視図である。なお、これらの回路付サスペンション基板100a,100b,200には、ハードディスクドライブの磁気ヘッド(図示せず)が実装される。
【0074】
回路付サスペンション基板100a,100b,200は、磁気ヘッドと相対的に回転される磁気ディスク(図示せず)の表面との間に微少な間隔を形成し、その間隔を維持するように当該磁気ヘッドを支持するものである。
【0075】
図4に示すように、回路付サスペンション基板100a,100b,200においては、略L字形状を有する金属補強板10上にベース絶縁層1が形成されている。
【0076】
回路付サスペンション基板100a,100b,200の先端部には磁気ヘッドを実装するためのジンバル15が形成されている。また、後端部には複数の端子部30が形成されている。
【0077】
ベース絶縁層1上には、先端部に形成されるジンバル15から後端部に形成される端子部30へと延びるように導体パターン20が形成されている。図4では、配線として4本の導体パターン20a,20b,20c,20dが示されている。
【0078】
図5には、図4の回路付サスペンション基板100a,100b,200のZ部の拡大断面図が示されている。
【0079】
図5(a)に実施例1の回路付サスペンション基板100aが示され、図5(b)に実施例2の回路付サスペンション基板100bが示され、図5(c)に比較例1の回路付サスペンション基板200が示されている。
【0080】
[実施例1]
実施例1の回路付サスペンション基板100aの作製時においては、上記実施の形態と同様にベース絶縁層1のパターニングを行い、セミアディティブ法により導体パターン20a、20bを形成した。以下、詳細を説明する。
【0081】
初めに、金属補強板10として厚み25μmのステンレス基板を用意した。そして、ベース絶縁層1として厚み10μmのポジ型の感光性ポリイミド樹脂を金属補強板10上に形成した。
【0082】
そこで、導体パターン20a,20bの形成領域における略中央部(幅方向)に、それぞれ1つの溝部D1,D2が形成されるように、ベース絶縁層1の露光、現像および硬化処理を行った。なお、ここで用いたフォトマスクは、図1(c)のフォトマスクPMと同じである。
【0083】
すなわち、本例で用いたフォトマスクPMは、ベース絶縁層1の非形成領域に対応する第1の領域T1と、ベース絶縁層1の形成領域に対応する第2の領域T2と、溝部D1,D2に対応する第3の領域T3を備える。
【0084】
フォトマスクPMの第1〜第3の領域T1〜T3の透過率はそれぞれ0%、100%および約50%に設定した。
【0085】
これにより、ベース絶縁層1上に幅da,dbが4μm、深さが4μmの溝部D1,D2が形成された。
【0086】
次に、ベース絶縁層1の上面側に連続スパッタリングによりクロムおよび銅からなる金属薄膜層2を形成した。ここで、金属薄膜層2の厚みは100nmであった。
【0087】
続いて、金属薄膜層2の上面側に、感光性樹脂からなるめっきレジスト層3を形成した。そこで、めっきレジスト層3を所定のパターンで露光処理および現像処理する。これにより、所定のパターンを有するめっきレジスト層3が金属薄膜層2上に形成された。
【0088】
次に、露出した金属薄膜層2上に厚み10μmの銅からなる金属めっき層4を形成した。そして、めっきレジスト層3を除去するとともに、めっきレジスト層3の形成領域における金属薄膜層2を除去した。
【0089】
これにより、ベース絶縁層1上に金属薄膜層2および金属めっき層4からなる導体パターン20a,20bが形成された。
【0090】
これらの導体パターン20a,20bは、厚みha,hbがともに10μmで、幅wa,wbがともに20μmであった。また、互いの間隔cl1が20μmであった。
【0091】
最後に、ベース絶縁層1および導体パターン20a,20bの上面側に、感光性ポリイミドを用いて、厚み4μmのカバー絶縁層5を形成した。これにより、実施例1の配線回路基板10が完成した。
【0092】
[実施例2]
実施例2の回路付サスペンション基板100bは、以下の点で実施例1の回路付サスペンション基板100aと異なる。図5(b)に示すように、実施例2の回路付サスペンション基板100bにおいては、ベース絶縁層1に4本の溝部D1a,D1b,D2a,D2bを形成した。
【0093】
すなわち、ベース絶縁層1上の一方の導体パターン20aの形成領域に2本の溝部D1a,D1bを形成し、他方の導体パターン20bの形成領域に2本の溝部D2a,D2bを形成した。4本の溝部D1a,D1b,D2a,D2bの幅da1,da2,db1,db2は4μm、深さを4μmとした。
【0094】
また、互いに隣接する2つの溝部D1a,D1b間の間隔claは4μmとし、2つの溝部D2a,D2b間の間隔clbも4μmとした。
【0095】
[比較例1]
比較例1の回路付サスペンション基板200は、以下の点で実施例1の回路付サスペンション基板100aと異なる。図5(c)に示すように、比較例1の回路付サスペンション基板200においては、ベース絶縁層1に溝部D1,D2が形成されていない。
【0096】
(評価)
実施例1、実施例2および比較例1の回路付サスペンション基板100a,100b,200について、それぞれベース絶縁層1に対する導体パターン20a,20bのピール強度を「JIS(日本工業規格)C5016」に準拠する方法で測定した。
【0097】
その結果、実施例1および実施例2の回路付サスペンション基板100a,100bでは、比較例1の回路付サスペンション基板200に対してそれぞれ1.34倍および1.54倍の強さのピール強度が測定された。
【0098】
このような結果から、ベース絶縁層1上の導体パターン20a,20bの形成領域に溝部D1,D2を形成することにより、ベース絶縁層1と導体パターン20a,20bとの間で十分な密着力が得られることが明らかとなった。
【0099】
また、ベース絶縁層1上の導体パターン20a,20bの形成領域にそれぞれ複数の溝部D1a,D1bおよび溝部D2a,D2bを形成することにより、ベース絶縁層1と導体パターン20a,20bとの間でさらに十分な密着力が得られることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、絶縁層および導体層を備える配線回路基板の製造に有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の一実施の形態に係る配線回路基板の製造方法を説明するための製造工程図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る配線回路基板の製造方法を説明するための製造工程図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る配線回路基板の製造方法を説明するための製造工程図である。
【図4】実施例1、実施例2および比較例1の回路付サスペンション基板の外観斜視図である。
【図5】図4の回路付サスペンション基板のZ部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0102】
1 ベース絶縁層
2 金属薄膜層
3 めっきレジスト層
4 金属めっき層
5 カバー絶縁層
10 金属補強板
20a,20b 導体パターン
100 配線回路基板
100a,100b,200 回路付サスペンション基板
D1,D2,D1a,D1b,D2a,D2b 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層の一面上に形成された配線用の導体パターンとを備え、
前記絶縁層と前記導体パターンとの接触領域において前記絶縁層および前記導体パターンの一方に前記導体パターンに沿って延びる溝部が形成され、前記絶縁層および前記導体パターンの他方に前記溝部に嵌合する突条部が形成されたことを特徴とする配線回路基板。
【請求項2】
前記溝部および突条部は、複数形成されたことを特徴とする請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記溝部は、前記絶縁層に形成され、
前記突条部は、前記導体パターンに形成されたことを特徴とする請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記溝部は、前記導体パターンに形成され、
前記突条部は、前記絶縁層に形成されたことを特徴とする請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記絶縁層の他面に金属補強板が形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記絶縁層の前記一面上でかつ前記絶縁層および前記導体パターンの露出部に、絶縁性のカバー膜が形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項7】
絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層の一面上に配線用の導体パターンを形成するステップとを備え、
前記絶縁層を形成するステップは、前記導体パターンとの接触領域に前記導体パターンに沿って延びる溝部または突条部を形成するステップを含み、
前記導体パターンを形成するステップは、前記絶縁層の前記溝部または突条部と嵌合する溝部または突条部を形成するステップを含むことを特徴とする配線回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁層を形成するステップは、感光性材料からなる前記絶縁層を形成するステップをさらに含み、
前記溝部または突条部を形成するステップは、前記絶縁層を異なる複数の光量で露光し、露光後の絶縁層を現像および硬化することにより前記導体パターンとの接触領域に前記導体パターンに沿って延びる溝部または突条部を形成するステップを含むことを特徴とする請求項7記載の配線回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−109755(P2007−109755A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297187(P2005−297187)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】