説明

配線基板の製造方法

【課題】半導体素子を搭載する配線基板において、コア用の絶縁板に形成されたスルーホール直上にビルドアップ用のビアホール形成ができ、コア用の配線導体においてもその幅や間隔を20μm以下とした高密度な微細配線を有し、かつ厚みが140μm以下のコア用の絶縁板を使用可能な薄型の配線基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】スルーホール7を有するコア用の絶縁板1のスルーホール7内壁のみにスルーホール7と同軸の貫通孔を有するように第1のめっき導体層13を被着させ、次に貫通孔内および絶縁板1の上下面に、貫通孔内を充填するとともにコア用の絶縁板1の上下面において配線導体4を形成する第2のめっき導体層14を被着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板の製造方法に関し、より詳細には、例えば半導体素子をフリップチップ接続により搭載するのに好適な配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体素子である半導体集積回路素子として、多数の電極端子を、その一方の主面の略全面に亘って格子状の並びに配設した、いわゆるエリアアレイ型の半導体集積回路素子がある。
このような半導体集積回路素子を配線基板に搭載する方法として、フリップチップ接続により接続する方法が採用されている。フリップチップ接続とは、配線基板上に設けた半導体素子接続パッドの上面を半導体集積回路素子の電極端子の配置に対応した並びに露出させ、この半導体素子接続パッドの露出する上面と前記半導体集積回路素子の電極端子とを対向させ、これらの間を半田や金等からなる導電バンプを介して電気的に接続する方法である。
【0003】
図8は、半導体素子としてのエリアアレイ型の半導体集積回路素子をフリップチップ接続により搭載する従来の配線基板の一例を示す概略断面図である。
【0004】
この図8に示すように、従来の配線基板110は、コア用の絶縁板101の上下面に複数のビルドアップ用の絶縁樹脂層102が積層されて成る絶縁基体103の内部および表面にコア用の配線導体104およびビルドアップ用の配線導体105が被着されているとともに、その最表面には保護用のソルダーレジスト層106が被着されている。また、絶縁基体103の上面中央部には半導体集積回路素子Eが搭載される半導体素子搭載部103Aを有している。
【0005】
コア用の絶縁板101の上面から下面にかけては複数のスルーホール107が形成されており、スルーホール107の内面にはコア用の配線導体104が被着されている。さらに、スルーホール107の内部には埋め込み樹脂108が充填されており、この埋め込み樹脂108上を含む絶縁板101の上下面にもコア用の配線導体104が被着されている。なお、コア用の配線導体104の一部は、スルーホール107を覆ってビルドアップ用の配線導体105と接続するためのランドパターン104Aを形成している。
【0006】
また、ビルドアップ用の絶縁樹脂層102には、それぞれに複数のビアホール109が形成されており、各絶縁樹脂層102の表面およびビアホール109の内面には、ビルドアップ用の配線導体105が被着形成されている。そしてビルドアップ用の配線導体105はビアホール109を介してコア用の配線導体104におけるランドパターン104Aに接続している。さらに、このビルドアップ用の配線導体105のうち、配線基板110の上面側における最外層の絶縁樹脂層102上に被着された一部は、半導体素子搭載部103Aにおいて半導体集積回路素子Eの電極端子Tに導電バンプB1を介してフリップチップ接続により電気的に接続される円形の半導体素子接続パッド105Aを形成しており、これらの半導体素子接続パッド105Aは格子状の並びに複数並んで形成されている。そして、これらの半導体素子接続パッド105Aはその外周部がソルダーレジスト層106により覆われているとともに上面の中央部がソルダーレジスト層106から露出しており、半導体素子接続パッド105Aの露出部に半導体集積回路素子Eの電極端子Tが半田や金等から成る導電バンプB1を介して電気的に接続される。
【0007】
他方、配線基板110の下面側における最外層の絶縁樹脂層102上に被着された一部は、外部電気回路基板の配線導体に電気的に接続される円形の外部接続パッド105Bであり、この外部接続パッド105Bは格子状の並びに複数並んで形成されている。この外部接続パッド105Bはその外周部がソルダーレジスト層106により覆われているとともに、その下面中央部がソルダーレジスト層106から露出しており、外部接続パッド105Bの露出部に、図示しない外部電気回路基板の配線導体が半田ボールB2を介して電気的に接続される。なお、ソルダーレジスト層106は、最外層の配線導体105を保護するとともに、半導体素子接続パッド105Aや外部接続パッド105Bの露出部を画定する。
【0008】
このような従来の配線基板110の製造方法について図9〜図14を基にして説明する。まず、図9(a)に示すように、ガラス−エポキシ樹脂等の電気絶縁材料から成る絶縁板101の上下面に銅箔111が積層されて成る両面銅張り板112を準備する。絶縁板101の厚みは例えば50〜800μm程度であり、銅箔111の厚みは例えば2〜18μm程度である。
【0009】
次に、図9(b)に示すように、両面銅張り板112の上面から下面にかけてスルーホール107をドリル加工やレーザ加工により形成する。スルーホール107の直径は50〜300μm程度である。
【0010】
次に、図10(c)に示すように、スルーホール107の内壁および銅箔111の表面の全面にわたり、第1の無電解銅めっき層113aおよび第1の電解銅めっき層113bを順次被着させて成る第1のめっき導体層113を形成する。第1の無電解銅めっき層113aの厚みは0.1〜1.0μm程度であり、第1の電解銅めっき層113bの厚みは5〜30μm程度である。
【0011】
次に、図10(d)に示すように、第1のめっき導体層113が被着されたスルーホール107内に孔埋め樹脂108を充填する。
【0012】
次に、図11(e)に示すように、孔埋め樹脂108の上下端および第1のめっき導体層113の表面を、絶縁板101の上下面に銅箔111の層が残存するように研磨して平坦化する。このとき、絶縁板101上に残存する銅箔111の層の厚みは2〜8μm程度とする。
【0013】
次に、図11(f)に示すように、残存した銅箔111の層の表面および第1のめっき導体層113の端面および孔埋め樹脂108の端面の全面にわたり第2の無電解銅めっき層114aおよび第2の電解銅めっき層114bを順次被着させて成る第2のめっき導体層114を形成する。第2の無電解銅めっき層114aの厚みは0.1〜1.0μm程度であり、第2の電解銅めっき層114bの厚みは10〜30μm程度である。
【0014】
次に、図12(g)に示すように、第2のめっき導体層114におけるスルーホール107上およびその周囲に対応する領域を被覆するランド形成用のマスクパターンを含む所定パターンのエッチングレジスト層115を第2のめっき導体層114の表面に被着形成する。
【0015】
次に、図12(h)に示すように、エッチングレジスト層115から露出する第2のめっき導体層114およびその下の銅箔111の層をエッチング除去する。これによりエッチングレジスト層115に対応した形状の配線導体104が形成される。
【0016】
次に、図13(i)に示すように、第2のめっき導体層114上からエッチングレジスト層115を剥離除去する。これにより、スルーホール107上を覆うランドパターン104Aを含む所定パターンのコア用の配線導体104を有するコア用の絶縁板101が形成される。
【0017】
次に、図14(j)に示すように、配線導体104が形成されたコア用の絶縁板101の上下面にビルドアップ用の絶縁樹脂層102を積層する。絶縁樹脂層102は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂とシリカ等の無機絶縁フィラーを含有する樹脂系電気絶縁材料であり、20〜50μm程度の厚みである。
【0018】
次に、図14(k)に示すように、ビルドアップ用の絶縁樹脂層102にレーザ加工を施すことによりコア用の配線導体104を底面とするビアホール109を形成する。
【0019】
次に、図14(l)に示すように、ビアホール109内および絶縁樹脂層102の表面にランドパターン104Aに接続する第3のめっき導体層から成るビルドアップ用の配線導体105を形成する。第3のめっき導体層から成る配線導体105は無電解めっき層および電解銅めっき層を順次被着させて成り、公知のセミアディティブ法を用いて形成する。
【0020】
次に、図14(m)に示すように、次層の絶縁樹脂層102および配線導体105を必要に応じて所定層数形成し、最後に図14(n)に示すように、最表層の絶縁樹脂層102および配線導体105上にソルダーレジスト層106を被着形成して従来の配線基板110が完成する。
【0021】
なお近時、電子機器の小型化に伴い、半導体集積回路素子Eは、その高集積化が急激に進み、これを搭載する配線基板にも幅や間隔が20μm以下の高密度な微細配線が要求されるようになってきている。このような高密度な微細配線の要求に答えるために、半導体素子集積回路素子Eが接続されるビルドアップ用の配線導体105のみならず、コア用の配線導体104においてもその幅や間隔を30μm以下の微細なものにする要求が高まっているとともにコア用の絶縁板101に形成されたスルーホール107の直上にビルドアップ用のビアホール109を形成することによる配線の高密度化の要求が高まっており、また携帯電話などの電子機器の薄型化に伴い、厚みの薄いコア用の絶縁板101を使用することにより厚みの薄い配線基板を実現する要求も高まっている。
【0022】
ところが、上述の従来の配線基板110においては、コア用の配線導体104におけるランドパターン104Aを含む絶縁板101上のパターンは、絶縁板101上に積層された厚みが2〜18μm程度の銅箔111の層の上に厚みが10〜30μm程度の第2のめっき導体層114を被着させた後、その上に形成したエッチングレジスト層115から露出する銅箔111の層および第2のめっき導体層114をエッチング除去して形成することから、エッチングの際に、銅箔111の層および第2のめっき導体層114がその厚みに応じて横方向にも極めて大きくエッチングされるので、例えば幅や隣接間隔が20μm以下の微細な配線パターンを含むコア用の配線導体104を形成することは困難であった。
【0023】
また、コア用の絶縁板101の厚みが非常に薄い場合、例えば140μm以下の場合、研磨の際にコア用の絶縁板101が撓んで正確に研磨することができなかったり、絶縁板101が破損したりしやすく、そのためコア用の絶縁板101の厚みを140μm以下と極めて薄いものにすることによる配線基板110の薄型化が困難であった。
【特許文献1】特開平11−274730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の課題は、半導体素子を搭載する配線基板において、コア用の絶縁板に形成されたスルーホール直上にビルドアップ用のビアホール形成ができ、コア用の配線導体においてもその幅や間隔を20μm以下とした高密度な微細配線を有し、かつ厚みが140μm以下のコア用の絶縁板を使用可能な薄型の配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の配線基板の製造方法は、スルーホールを有するコア用の絶縁板のスルーホール内壁のみにスルーホールと同軸の貫通孔を有するように第1のめっき導体層を被着させ、次に貫通孔内および絶縁板の上下面に、貫通孔内を充填するとともにコア用の絶縁板の上下面において配線導体を形成する第2のめっき導体層を被着することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の配線基板の製造方法によれば、先ずコア用の絶縁板に設けられたスルーホールの内壁のみにスルーホールと同軸の貫通孔を有するように第1のめっき導体層を被着させることでスルーホール内の空間を第1のめっき導体層により狭め、次に第1のめっき導体層に残った貫通孔内およびコア用の絶縁板の上下面に第2のめっき導体層を被着することにより、第1のめっき導体層の貫通孔を充填するとともにコア用の絶縁板の上下面において配線導体を形成することから、第1および第2のめっき導体層でスルーホール内を良好に充填するとともにスルーホール直上にビアホールの接続が可能であり、かつコア用の絶縁板の上下面に第2のめっき導体層のみで微細な配線導体を形成することができる。また、スルーホール内を第1および第2のめっき導体層で充填することから、スルーホール内を樹脂で充填する必要はなく、したがって研磨工程も不要となり、例えば厚みが140μm以下の薄い絶縁板を用いることを可能とした極めて薄型の配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の製造方法により製造される配線基板を示す概略断面図である。
【図2】(a),(b),(c)は、本発明の配線基板の製造方法における実施形態の一例例を示す概略説明図である。
【図3】(d),(e)は、本発明の配線基板の製造方法における実施形態の一例を示す概略説明図である。
【図4】(f),(g)は、本発明の配線基板の製造方法における実施形態の一例を示す概略説明図である。
【図5】(h),(i)は、本発明の配線基板の製造方法における実施形態の一例を示す概略説明図である。
【図6】(j),(k)は、本発明の配線基板の製造方法における実施形態の一例を示す概略説明図である。
【図7】(l)〜(p)は、本発明の配線基板の製造方法における実施形態の一例を示す概略説明図である。
【図8】従来の製造方法により製造される配線基板を示す概略断面図である。
【図9】(a),(b)は、従来の配線基板の製造方法を示す概略説明図である。
【図10】(c),(d)は、従来の配線基板の製造方法を示す概略説明図である。
【図11】(e),(f)は、従来の配線基板の製造方法を示す概略説明図である。
【図12】(g),(h)は、従来の配線基板の製造方法を示す概略説明図である。
【図13】(i)は、従来の配線基板の製造方法を示す概略説明図である。
【図14】(j)〜(n)は、従来の配線基板の製造方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明にかかる配線基板の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明にかかる製造方法により製造される配線基板の例を示す概略断面図であり、半導体素子としてのエリアアレイ型の半導体集積回路素子をフリップチップ接続により搭載する場合を示している。
【0029】
本発明により製造される配線基板は、図1に示すように、コア用の絶縁板1の上下面に複数のビルドアップ用の絶縁樹脂層2が積層されて成る絶縁基体3の内部および表面にコア用の配線導体4とビルドアップ用の配線導体5とが被着されているとともに、その最表面にソルダーレジスト層6が被着されて成る。また、絶縁基体3の上面中央部には半導体集積回路素子Eが搭載される半導体素子搭載部3Aを有している。
【0030】
コア用の絶縁板1は、厚みが50〜400μm程度であり、例えばガラス繊維束を縦横に織ったガラスクロスにビスマレイミドトリアジン樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた電気絶縁材料から成る。絶縁板1は、絶縁基体3のコア部材として機能する。
【0031】
コア用の絶縁板1の上面から下面にかけては直径が50〜120μmの複数のスルーホール7が形成されており、スルーホール7の内部にはコア用の配線導体4が充填されている。また、スルーホール7上を含む絶縁板1の上下面にもコア用の配線導体4が被着されている。なお、コア用の配線導体4の一部は、スルーホール7を覆ってビルドアップ用の配線導体5と接続するためのランドパターン4Aを形成している。ランドパターン4Aの直径はスルーホール7の直径よりも50〜150μm程度大きい。さらに絶縁板1上下面の配線導体4の一部は幅または間隔が30μm以下の微細なパターンを有している。
【0032】
ビルドアップ用の絶縁樹脂層2は、厚みが20〜50μm程度であり、それぞれに直径が35〜100μm程度の複数のビアホール9が形成されており、各絶縁樹脂層2の表面およびビアホール9の内面には、ビルドアップ用の配線導体5が被着形成されている。そしてビルドアップ用の配線導体5は、ビアホール9の一部を介してコア用の配線導体4におけるランドパターン4Aに接続している。さらに、このビルドアップ用の配線導体5のうち、配線基板10の上面側における最外層の絶縁樹脂層2上に被着された一部は、半導体素子搭載部3Aにおいて半導体集積回路素子Eの電極端子Tに導電バンプB1を介してフリップチップ接続により電気的に接続される円形の半導体素子接続パッド5Aを形成しており、これらの半導体素子接続パッド5Aは格子状の並びに複数並んで形成されている。そして、これらの半導体素子接続パッド5Aはその外周部がソルダーレジスト層6により覆われているとともに上面の中央部がソルダーレジスト層6から露出しており、半導体素子接続パッド5Aの露出部に半導体集積回路素子Eの電極端子Tが半田や金等から成る導電バンプB1を介して電気的に接続される。
【0033】
他方、配線基板10の下面側における最外層の絶縁樹脂層2上に被着された一部は、外部電気回路基板の配線導体に電気的に接続される円形の外部接続パッド5Bであり、この外部接続パッド5Bは格子状の並びに複数並んで形成されている。この外部接続パッド5Bはその外周部がソルダーレジスト層6により覆われているとともに、その下面中央部がソルダーレジスト層6から露出しており、外部接続パッド5Bの露出部に、図示しない外部電気回路基板の配線導体が半田ボールB2を介して電気的に接続される。なお、ソルダーレジスト層6は、最外層の配線導体5を保護するとともに、半導体素子接続パッド5Aや外部接続パッド5Bの露出部を画定する。
【0034】
このような本発明による配線基板10の製造方法について図2〜図8を基にして説明する。まず、図2(a)に示すように、ガラス−エポキシ樹脂やガラス−ビスマレイミドトリアジン樹脂等の電気絶縁材料から成る絶縁板1の上下面に銅箔11が積層されて成る両面銅張り板12を準備する。絶縁板1の厚みは例えば50〜400μm程度であり、好ましくは50〜300μm程度、更に好ましくは50〜140μm程度である。また、銅箔11の厚みは例えば2〜18μm程度、好ましくは2〜10μm程度、更に好ましくは2〜5μm程度である。また銅箔11における絶縁板1と密着する面は、十点平均高さRzが0.10〜7.0μmの粗面となっている。このような両面銅張り板12はプリント配線基板用途に一般的に販売されているものを用いればよい。なお、銅箔11が5μmより厚い場合、エッチングによりその厚みを5μm以下に薄くしておくことが好ましい。エッチングには塩化第二銅や塩化第二鉄等を含有するエッチング液を用いればよい。このように両面銅張り板12における上下面の銅箔11の厚みを5μm以下としておくことによって、後述するスルーホール7を形成する工程において、スルーホール7の形成が容易となる。
【0035】
次に、図2(b)に示すように、両面銅張り板12の上面から下面にかけてスルーホール7をドリル加工やレーザ加工により形成する。スルーホール7の直径は50〜120μm程度であり、好ましくは50〜100μm程度である。
【0036】
次に、図2(c)に示すように、スルーホール7を形成した後、絶縁板1の上下面の銅箔11をエッチングにより除去する。エッチングには塩化第二銅や塩化第二鉄等を含有するエッチング液を用いればよい。銅箔11を除去した後に、スルーホール7内壁を過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウム等を含む水溶液でデスミア処理することが好ましい。
【0037】
次に、図3(d)に示すように、スルーホール7の内壁および絶縁板1の表面の全面にわたり、第1の無電解銅めっき層13aおよび第1の電解銅めっき層13bを順次被着させて成る第1のめっき導体層13を形成する。第1の無電解銅めっき層13aの厚みは0.1〜1.0μm程度であり、第1の電解銅めっき層13bの厚みは10〜40μm程度である。このとき、スルーホール7内の第1のめっき導体層13にはスルーホール7と同軸の貫通孔が残るものの、第1のめっき導体層13によりスルーホール7内の空間が狭められる。したがって、後述する第2のめっき導体層14を被着させることによりスルーホール7内を第1のめっき導体層13および第2のめっき導体層14により良好かつ確実に充填することが容易となる。これらのめっきを施すためのめっき液としては、公知のめっき液を用いればよい。なお、スルーホール7内に被着させた第1のめっき導体層13に残る貫通孔の直径は、10〜60μm程度とすることが好ましい。
【0038】
次に、図3(e)に示すように、スルーホール7内に被着させた第1のめっき導体層13における貫通孔の内壁にエッチングレジスト層8を選択的に被着させる。この場合、エッチングレジスト層8としては、ポジ型の電着レジストを用いることが好ましい。ポジ型の電着レジストは、直径が10〜60μm程度の貫通孔の内部に良好に被着するとともに、光が当らない部分が残るので、光の届きにくい貫通孔内にエッチングレジスト層8を良好に形成することができる。
【0039】
次に、図4(f)に示すように、絶縁板1の上下面に被着された第1のめっき導体層13をエッチングにより除去する。エッチングには塩化第二銅や塩化第二鉄等を含有するエッチング液を用いればよい。このとき、スルーホール7内の第1のめっき金属層13は、エッチングレジスト層8により被覆されているのでエッチングされずに残る。
【0040】
次に、図4(g)に示すように、スルーホール7の内壁の第1のめっき導体層13に被着させたエッチングレジスト層8を剥離して除去した後、絶縁板1の上下面および第1のめっき導体層13の貫通孔内に厚みが0.1〜1.0μm程度の第2の無電解めっき層14aを被着する。エッチングレジスト層8の剥離液としては、アルカリ系の剥離液が使用される。第2の電解銅めっき層14aを被着するためのめっき液としては、上述の第1の無電解銅めっき層13aの場合と同様に公知の電解めっき液を用いればよい。
【0041】
次に、図5(h)に示すように、第2の無電解銅めっき層14aにおけるスルーホール7上およびその周囲に対応する領域を露出させるランドパターン4A形成用の開口パターンを含む所定パターンのめっきレジスト層15を第2の無電解銅めっき層14aの表面に被着形成する。めっきレジスト層15は感光性樹脂から成るドライフィルムレジストを第2の無電解銅めっき層14a上に貼着するとともに上記所定のパターンに露光および現像することにより形成される。
【0042】
次に、図5(i)に示すように、めっきレジスト層15から露出する第2の無電解銅めっき層14a上に第2の電解銅めっき層14bを、第1のめっき導体層13の貫通孔を充填する厚みに被着させる。このときスルーホール7内は、予め第1のめっき導体層13によりその空間が狭められているので、第2の電解銅めっき層14bを被着させることにより、スルーホール7内を良好に充填することができる。したがって、この方法によれば、スルーホール7内を孔埋め樹脂で充填する必要がなく、従来のような研磨工程も不要となるので、例えば厚みが140μm以下の極めて薄い絶縁板1を用いて超薄型の配線基板を形成することも可能となる。なお、第2の電解銅めっき層4bは、厚みが10〜30μm程度であり、上述の第1の電解銅めっき層13bの場合と同様に公知の電解めっき液を用いることにより被着される。
【0043】
次に、図6(j)に示すように、第2の無電解銅めっき層14a上からめっきレジスト層15を剥離除去する。めっきレジスト層15の剥離にはアルカリ系の剥離液を用いればよい。
【0044】
次に、図6(k)に示すように、絶縁板1上に露出する第2の無電解銅めっき層14aをエッチング除去し、残った第2の無電解銅めっき層14aおよび第2の電解銅めっき層14bから成る第2のめっき導体層14により、スルーホール7内を充填するとともにスルーホール7上にランドパターン4Aを有するコア用の配線導体4を形成する。このような絶縁板1の上下面における第2のめっき導体層14を用いた配線導体4の形成方法は、いわゆるセミアディティブ法と呼ばれる方法であり、配線導体4を形成するためのエッチングの際に第2の無電解銅めっき層14aの厚み分だけエッチングすればよいので第2の電解銅めっき層14bが横方向に大きくエッチングされることがない。したがって、コア用の絶縁板1上に残った第2の無電解銅めっき層14aおよびその上の第2の電解銅めっき層14bから成る第2のめっき導体層14によりコア用の絶縁板1の上下面に微細なコア用の配線導体4を高密度で形成することができる。そしてこれにより、ビルドアップ用の配線導体5と接続するためのランドパターン4Aをスルーホール7上に形成してスルーホール7内の配線導体4とこれに接続されるビルドアップ用の配線導体5とをランドパターン4Aを介して最短で接続することができるとともにコア用の配線導体4における配線の幅や間隔を30μm以下とした高密度な微細配線を有する配線基板10を提供することができる。なお、無電解銅めっき層14aの厚みが0.1μm未満であると、その無電解銅めっき層14aの表面に第2の電解銅めっき層14bを良好に被着させることが困難となり、1.0μmを超えると、第2の無電解銅めっき層14aの露出部をエッチング除去する際に第2の電解銅めっき層14bが横方向にエッチングされる量が多くなり、特に幅や間隔が20μm以下の微細配線を良好に形成することが困難となる傾向にある。したがって、第2の無電解銅めっき層14aの厚みは、0.1〜1.0μmの厚みが好ましい。第2の無電解銅めっき層14aをエッチングするエッチング液としては、過酸化水素および過硫酸ナトリウム等を含有する公知のエッチング液を用いればよい。
【0045】
次に、図7(l)に示すように、配線導体4が形成されたコア用の絶縁板1の上下面にビルドアップ用の絶縁樹脂層2を積層する。絶縁樹脂層2は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂とシリカ等の無機絶縁フィラーを含有する樹脂系電気絶縁材料であり、20〜50μm程度の厚みである。このような絶縁樹脂層2は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂組成物およびシリカ等の無機絶縁フィラーを含有する未硬化の樹脂シートを、配線導体4が形成されたコア用の絶縁板1の上下面に貼着するとともに熱硬化させることにより形成される。なお、絶縁樹脂層2はガラスクロスを含有していてもよい。
【0046】
次に、図7(m)に示すように、ビルドアップ用の絶縁樹脂層2にレーザ加工を施すことによりコア用の配線導体4を底面とするビアホール9を形成する。ビアホール9の直径は35〜100μm程度である。ビアホール9のいくつかはスルーホール7上のランドパターン4Aの中央部を底面としている。
【0047】
次に、図7(n)に示すように、ビアホール9内および絶縁樹脂層2の表面にランドパターン4Aに接続する第3のめっき導体層16から成るビルドアップ用の配線導体5を形成する。第3のめっき導体層16から成る配線導体5は、厚みが0.1〜1.0μm程度の無電解銅めっき層および厚みが10〜20μm程度の電解銅めっき層を順次被着させて成り、公知のセミアディティブ法を用いて形成すればよい。
【0048】
次に、図7(o)に示すように、次層の絶縁樹脂層2および配線導体5を必要に応じて所定層数形成し、最後に図7(p)に示すように、最表層の絶縁樹脂層2および配線導体5上にソルダーレジスト層6を被着形成して本発明による配線基板10が完成する。なお、ソルダーレジスト層6は、例えばアクリル変性エポキシ樹脂等の感光性を有する熱硬化性樹脂とシリカ等の無機絶縁フィラーを含有する樹脂系電気絶縁材料であり、10〜25μm程度の厚みである。このようなソルダーレジスト層6は、例えばアクリル変性エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂組成物およびシリカ等の無機絶縁フィラーを含有する未硬化の感光性樹脂シートまたは樹脂ペーストを、最表層の絶縁樹脂層2および配線導体5上に被着させるとともに所定のパターンに露光および現像した後、熱硬化させることにより形成される。
【0049】
かくして、本発明の配線基板の製造方法によれば、コア用の絶縁板に形成されたスルーホールめっき導体層で良好に充填するとともにスルーホール直上にビアホールの接続が可能であり、かつコア用の絶縁板の上下面において高密度な微細配線を有する極めて薄型の配線基板を提供することができる。なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更は可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:コア用の絶縁板
2:ビルドアップ用の絶縁層
3:絶縁基体
4:コア用の配線導体
4A:ランドパターン
5:ビルドアップ用の配線導体
7:スルーホール
8:エッチングレジスト層
9:ビアホール
11:銅箔
12:両面銅張り板
13:第1のめっき導体層
13a:第1の無電解めっき層
13b:第1の電解めっき層
14:第2のめっき導体層
14a:第2の無電解めっき層
14b:第2の電解めっき層
15:めっきレジスト層
16:第3のめっき導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホールを有する絶縁板の前記スルーホール内壁のみに該スルーホールと同軸の貫通孔を有するように第1のめっき導体層を被着する工程と、前記貫通孔内および前記絶縁板の上下面に、前記貫通孔内を充填するとともに前記絶縁板の上下面において配線導体を形成する第2のめっき導体層を被着する工程と、を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1のめっき導体層の被着は、前記絶縁板の上下面および前記スルーホール内壁の全面に該スルーホールと同軸の貫通孔を有するように第1の無電解銅めっき層およびその上に第1の電解銅めっき層を被着させた後、該第1の無電解銅めっき層および第1の電解銅めっき層における前記上下面に被着した部分を選択的に除去することにより行なわれることを特徴とする請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記第1の無電解銅めっき層および前記第1の電解銅めっき層の選択的除去は、前記貫通孔内をエッチングレジスト層で選択的に被覆した後、該エッチングレジスト層から露出する前記上下面に被着された部分をエッチングすることにより行なわれることを特徴とする請求項2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記エッチングレジスト層がポジ型のレジスト材料により形成されることを特徴とする請求項3記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記第2のめっき導体層の形成は、前記貫通孔内壁および前記上下面に第2の無電解銅めっき層を被着させた後、前記上下面における前記第2の無電解銅めっき層上に前記配線導体に対応する開口を有するめっきレジスト層を被着し、次に該めっきレジスト層から露出する前記第2の無電解銅めっき層上に第2の電解銅めっき層を、前記貫通孔内を充填するとともに前記配線導体に対応するパターンに被着させ、しかる後、前記めっきレジスト層を剥離するとともに、前記第2の電解銅めっき層から露出する前記第2の無電解銅めっき層をエッチング除去することにより行なわれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記スルーホールを有する絶縁板は、絶縁板の両面に銅箔が積層された銅張り積層板にスルーホール用の貫通孔を形成した後、前記銅箔をエッチング除去することにより形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記第2のめっき導体層が被着された前記絶縁板の上下面に絶縁樹脂層を被着させるとともに該絶縁樹脂層に前記第2のめっき導体層を底面とするビアホールを形成し、しかる後、該ビアホール内および前記絶縁樹脂層の表面に前記配線導体と接続する上層の配線導体を形成する第3のめっき導体層を被着することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記第3のめっき導体層の形成は、前記ビアホール内および前記絶縁樹脂層の表面に第3の無電解銅めっき層を被着させた後、前記表面における前記第3の無電解銅めっき層上に前記上層の配線導体に対応する開口を有するめっきレジスト層を被着し、次に該めっきレジスト層から露出する前記第3の無電解銅めっき層上に第3の電解銅めっき層を前記上層の配線導体に対応するパターンに被着させ、しかる後、前記めっきレジスト層を剥離するとともに、前記第3の電解銅めっき層から露出する前記第3の無電解銅めっき層をエッチング除去することにより行なわれることを特徴とする請求項7に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−216519(P2011−216519A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80302(P2010−80302)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】