説明

配線基板及びその製造方法

【課題】樹脂による補強を行う場合に、製造工程を簡易化でき、特に端子部材にソケット等の接続部材を装着する場合には、接続部材の装着を確実に行うことができる配線基板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】PGA用端子パッド21上に端子ピン15の基台63を配置するとともに、PGA用端子パッド21上に半田と樹脂製の電気絶縁材とを含む接合材ペースト85を配置し、その接合材ペースト85を加熱することによって、半田を溶融させるとともに電気絶縁材を軟化させる。そして、その後冷却することによって、半田を固化させて基台63とPGA用端子パッド21を接合するとともに、基台63に接合した半田接合部70の露出面に電気絶縁表面層72を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体層と樹脂絶縁層とが交互に積層されたコアレス基板等の積層基板の端子パッドに、ピン部材等の端子部材を備えた配線基板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板に接続端子となる端子部材としてピン部材(端子ピン)が取り付けられた構造の半導体パッケージがある。そのような半導体パッケージでは、配線基板の端子ピン側と反対面に半導体チップ(ICチップ)が実装され、端子ピンが実装基板のソケットなどに挿入されて接続される。
【0003】
この種の端子ピンとしては、例えば円盤状の基台から棒状のピンが突出する形状のものが知られている。また、端子ピンは、通常、配線基板の端子パッド(例えばPGA用端子パッド)上に、半田等を用いて接合されるが、近年では、半田だけなく樹脂を用いて接合する技術が提案されている。
【0004】
例えば下記特許文献1には、半田によって端子ピンの基台を配線基板の端子パッドに接合した後に、配線基板の表面と端子ピンの基台の表面を樹脂で覆うことにより、接続強度を高めるとともに、電気絶縁性を向上させる技術が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、半導体チップの表面に形成された半田バンプの根元部分を囲むように、補強用の樹脂を形成して、半田接合部の信頼性を向上する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−80457号公報
【特許文献2】特開平9−232373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、端子ピンを半田で接合した後に、配線基板の表面や端子ピンの基台の表面(即ち端子ピンのピンの部分が突出する側)などを樹脂で覆うので、製造工程が複雑で手間がかかるという問題があった。
【0008】
しかも、この従来の製造方法で製造された配線基板では、端子ピンの基台の表面側が樹脂で覆われているので、その表面側が不規則に盛り上がっており、そのため、端子ピンにソケットをはめ込む場合には、ソケットを確実にはめ込むことができないことがあるという問題もあった。
【0009】
また、特許文献2の技術においても、半田バンプを形成してから、その周囲に樹脂を形成するので、製造工程が複雑で手間がかかるという問題があった。
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂による補強を行う場合に、製造工程を簡易化でき、特に端子部材にソケット等の接続部材を装着する場合には、該接続部材の装着を確実に行うことができる配線基板及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、第1態様として、導体層と樹脂絶縁層とが交互に積層されてなる積層基板上の端子パッドに、端子部材を接合する配線基板の製造方法において、前記端子部材として、半田を介して前記端子パッドに底面が接合される基台と、該基台の表面に立設されたピンとを備えたピン部材を用い、前記端子パッド上に前記ピン部材の基台を配置するとともに、該端子パッドの近傍に前記半田と樹脂製の電気絶縁材とを含む接合材を配置し、該接合材を加熱することによって、前記半田を溶融させるとともに前記電気絶縁材を軟化させ、その後冷却することによって、前記半田を固化させて前記基台と前記端子パッドを接合するとともに、前記基台に接合した前記半田の露出面には、前記電気絶縁材からなる電気絶縁表面層を形成することを特徴とする。
【0011】
本態様では、端子パッド上に(端子部材である)ピン部材の基台を配置するとともに、端子パッドの近傍に半田と樹脂製の電気絶縁材とを含む接合材を配置し、その接合材を加熱することによって、半田を溶融させるとともに電気絶縁材を軟化させる。そして、その後冷却することによって、半田を固化させて基台と端子パッドを接合するとともに、基台に接合した半田の露出面に、電気絶縁材からなる電気絶縁表面層を形成する。
【0012】
つまり、本態様では、端子パッドの近傍に例えばペースト状の接合材を配置し、加熱することによって、接合材中の半田が溶融し、半田によって端子パッドとピン部材の基台とを接合できるとともに、接合材中の電気絶縁材が軟化し、電気絶縁材によって半田の表面を覆うことができる。従って、本態様は、従来の製造方法に比べて、製造工程を簡易化できるという顕著な効果を奏する。
【0013】
また、本態様では、使用する接合材の量などを調節することにより、ピン部材の基台のどの程度まで半田で覆うか(従って電気絶縁材で覆う範囲)を容易に調節することができる。よって、基台の(配線基板と反対側の)表面を電気絶縁材で覆わないように調節することにより、(本態様によって製造された)配線基板では、基台の表面が外部に露出しており、ソケット等の接続部材の装着を確実にすることができる。
【0014】
更に、本態様の製造方法によって製造された配線基板は、(固化した)半田の表面が電気絶縁材で覆われているので、端子パッドとピン部材とが強固に接合されており、外からの応力に対して破損しにくいという効果がある。それとともに、電気絶縁性が高く、しかも、半田の酸化を効果的に防止できるという利点がある。
【0015】
ここで、前記積層基板としては、(コア基板を取り除いた)コアレス基板を採用できる。
前記ピン部材は、端子パッドに接続される基台とその基台に立設されたピンとを備えており、基台としては、底面及び側面を備えた平板状(例えば円盤状)の構成、底面が球状等の様に外側に凸に湾曲した構成を採用できる。
【0016】
前記導体層及び前記端子パッドの形成材料としては、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、スズ、スズ合金などを採用できる。この導体層及び端子パッドは、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、フルアディティブ法などといった公知の手法によって形成することができる。例えば、銅箔のエッチング、無電解銅メッキあるいは電解銅メッキなどの手法が適用される。なお、スパッタリングやCVD等の手法により薄膜を形成した後にエッチングを行うことで導体層や端子パッドを形成したり、導電性ペースト等の印刷により導体層や端子パッドを形成することもできる。
【0017】
前記樹脂絶縁層は、絶縁性、耐熱性、耐湿性等を考慮して適宜選択することができる。この樹脂絶縁層を形成するための高分子材料の好適例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂等が挙げられる。そのほか、これらの樹脂とガラス繊維(ガラス織布やガラス不織布)やポリアミド繊維等の有機繊維との複合材料、あるいは、連続多孔質PTFE等の三次元網目状フッ素系樹脂基材にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂−樹脂複合材料等を使用してもよい。
【0018】
前記接合材中の半田の材料としては、90Pb−10Sn、95Pb−5Sn、40P
b−60SnなどのPb−Sn系半田、Sn−Bi系半田、Sn−Sb系半田、Sn−Ag系半田、Sn−Ag−Cu系半田、Au−Ge系半田、Au−Sn系半田などの半田が挙げられる。
【0019】
前記接合材中の電気絶縁材としては、熱硬化性樹脂が挙げられる。この熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好適に使用でき、エポキシ樹脂の種類としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、多官能型、脂環式型、ビフェニル型などを採用できる。なお、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂以外にも、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、ポリイミド樹脂、イソシアネート樹脂などを用いてもよい。
【0020】
(2)本発明では、第2態様として、前記接合材はペースト状であり、該接合材のうち、前記加熱後の冷却によって固体となる成分は、前記半田が50〜95重量%、前記電気絶縁材が5〜50重量%である構成を採用でき、さらに好ましくは、前記半田が80〜90重量%、前記電気絶縁材が10〜20重量%の構成を採用できる。
【0021】
この構成により、容易に半田の表面を電気絶縁材で覆う構造とすることができる。
ここで、前記接合材としては、熱硬化性樹脂等の樹脂に半田(半田粒子等)を含有させたペースト状のものを採用できる。また、この接合材中には、樹脂や半田以外に、各種の成分を含んでいてもよい。例えば、樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合には、熱硬化性樹脂及び半田以外に、熱硬化性樹脂の硬化剤、半田の酸化膜を除去する活性作用付与する活性剤、ペーストのチクソ性を調整するチクソ剤、その他の添加剤が添加されているものを採用できる。これらの配合量は、接合材に含有される半田の含有量、半田の粒径および接合対象の酸化の進行度合いなどに応じて適宜調整される。
【0022】
前記熱硬化性樹脂としては、上述の様に、エポキシ樹脂が好適に使用され、エポキシ樹脂の種類としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、多官能型、脂環式型、ビフェニル型などを採用できる。
【0023】
前記硬化剤は、使用される熱硬化性樹脂に対応した種類のものが選定され、エポキシ樹脂の場合には、イミダゾール類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジド類、マイクロカプセル型硬化剤などが選定される。前記活性剤としては、無機ハライド、アミン、有機酸など、一般的なクリーム半田に使用されるものを採用できる。前記チクソ剤としては、一般的に電子材料用の接着剤に使用される無機系微粉末が配合される。
【0024】
さらに、添加剤として、シランカップリング剤、有機溶剤、可撓材、顔料、触媒などが、必要に応じて配合される。シランカップリング剤は密着性を向上させる目的で配合され、有機溶剤は接合材の粘度を調整するために用いられる。
【0025】
(3)本発明では、第3態様として、電気絶縁材として、熱硬化性樹脂からなり、そのガラス転移温度が半田の融点以下の材料を採用できる。
これにより、加熱によって半田が溶融する前に、熱硬化性樹脂を軟化させることができる。よって、軟化した熱硬化性樹脂中で半田を溶融させて半田バンプを形成するとともに、その周囲に電気絶縁表面層を好適に形成することができる。
【0026】
前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好適であり、それ以外に、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、ポリイミド樹脂、イソシアネート樹脂等を採用できる。
前記ガラス転移点としては、80〜220℃の範囲が挙げられ、半田の融点としては、120〜230℃の範囲が挙げられる。
【0027】
(4)本発明では、第4態様として、導体層と樹脂絶縁層とが交互に積層されてなる積層基板上の端子パッドに、端子部材を接合する配線基板の製造方法において、前記端子パッド上に半田と樹脂製の電気絶縁材とを含む接合材を配置し、該接合材を加熱することによって、前記半田を溶融させるとともに、前記電気絶縁材を軟化させ、その後冷却することによって、前記半田を固化させて、前記半田で構成される端子部材を形成するとともに、前記端子部材の露出面には、前記電気絶縁材からなる電気絶縁表面層を形成することを特徴とする。
【0028】
本態様では、端子パッド上に半田と樹脂製の電気絶縁材とを含む接合材を配置し、その接合材を加熱することによって、半田を溶融させるとともに電気絶縁材を軟化させる。そして、その後冷却することによって、半田を固化させて端子部材を形成するとともに、端子部材の露出面に、電気絶縁材からなる電気絶縁表面層を形成する。
【0029】
つまり、本態様では、端子パッド上に例えばペースト状の接合材を配置し、加熱することによって、接合材中の半田が溶融し、接合材中の電気絶縁材が軟化し、その後半田が固化することによって端子部材を形成でき、しかも、電気絶縁材によって端子部材の表面を覆うことができる。従って、本態様は、従来の製造方法に比べて、製造工程を簡易化できるという顕著な効果を奏する。
【0030】
また、本態様では、使用する接合材の量などを調節することにより、端子部材の露出面をどの程度まで半田で覆うか(従って電気絶縁材で覆う範囲)を容易に調節することができる。よって、端子部材の(配線基板と反対側の)表面を電気絶縁材で覆わないように調節できるので、(本態様によって製造された)配線基板では、各種の導通部材の電気的接続が容易である。
【0031】
更に、本態様の製造方法によって製造された配線基板は、(固化した)端子部材の表面が電気絶縁材で覆われているので、端子パッドと端子部材とが強固に接合されており、外からの応力に対して破損しにくいという効果がある。それとともに、端子部材の電気絶縁材で覆われている部分は、電気絶縁性が高く、しかも、酸化を効果的に防止できるという利点がある。
【0032】
なお、本態様においても、前記第1態様にて例示した様な、各種の積層基板、導体層及び端子パッドの形成材料や形成方法、樹脂絶縁層の材料、(端子部材の)半田の材料、電気絶縁材の材料を採用できる。
【0033】
(5)本発明では、第5態様として、導体層と樹脂絶縁層とが交互に積層されてなる積層基板の端子パッド上に、端子部材を備えた配線基板において、前記端子部材は、前記端子パッドに半田を介して底面が接合された基台と、該基台の表面に立設されたピンとを備えたピン部材であり、前記基台の底面に前記半田が接合するとともに、前記基台の表面には前記半田が接合していない構成を有し、且つ、前記基台に接合した前記半田の露出面には、前記電気絶縁材からなる電気絶縁表面層が形成されていることを特徴とする。
【0034】
本態様の配線基板では、(端子部材である)ピン部材の基台の底面に半田が接合されているが、基台の表面には半田が接合されておらず、しかも、半田の露出面には、電気絶縁材からなる電気絶縁表面層が形成されている。
【0035】
従って、ピン部材に対して確実にソケット等の接続部材を装着することができる。また、半田の露出面は電気絶縁表面層に覆われている構造であるので、接合強度が大きく、しかも、電気絶縁性に優れているとともに、半田の酸化を防止できるという利点がある。
【0036】
ここで、半田と基台とが接合する範囲は、基台の表面が半田や電気絶縁表面層で覆われていなければよく、基台の側面に半田や電気絶縁表面層が接合されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1の電子部品実装用配線基板を厚み方向に破断した概略構成を示す断面図である。
【図2】(a)は電子部品実装用配線基板の第1主面側を示す平面図、(b)は電子部品実装用配線基板の第2主面側を示す平面図である。
【図3】電子部品実装用配線基板の中央部分を厚み方向に破断して示す断面図である。
【図4】積層基板の縦断面(主面に垂直な断面)の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、電子部品実装用配線基板の製造方法の手順を各部材を厚み方向に破断して示す説明図である。
【図6】(a)、(b)、(c)は、電子部品実装用配線基板の製造方法の手順を各部材を厚み方向に破断して示す説明図である。
【図7】(a)、(b)は、電子部品実装用配線基板の製造方法の手順を各部材を厚み方向に破断して示す説明図である。
【図8】(a)、(b)、(c)は、電子部品実装用配線基板の製造方法の手順を各部材を厚み方向に破断して示す説明図である。
【図9】(a)、(b)、(c)、(d)は、端子ピンを接合する際の手順を電子部品実装用配線基板を厚み方向に破断して示す説明図である。
【図10】実施例2の電子部品実装用配線基板における端子ピンの接合状態について、配線基板を厚みの方向に破断して示す説明図である。
【図11】(a)は実施例3の電子部品実装用配線基板を(ICチップ側を上にして)厚み方向に破断した概略構成を示す断面図、(b)はその要部である端子部材近傍を(母基板側を上にして)厚み方向に破断した概略構成を示す断面図である。
【図12】他の電子部品実装用配線基板における端子ピンの接合状態について、配線基板を厚みの方向に破断して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明が適用される実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0039】
ここでは、コアレス基板の一方の主面にICチップ等を実装するための電子部品実装用配線基板(以下単に配線基板と記す)を例に挙げて説明する。
a)まず、本実施例の配線基板(PGA基板)の構成について、図1〜図4に基づいて説明する。
【0040】
図1に示す様に、本実施例の配線基板1は、ICチップ3を実装するための半導体パッケージであり、この配線基板1は、主として、コア基板を含まずに形成されたコアレス基板(積層基板)5を備えている。
【0041】
この積層基板5の一方の主面側(第1主面:図1上側)、即ちICチップ3が実装される側には、ICチップ3の実装領域7(図2(a)参照)内に、多数の半田バンプ9が形成され、更に実装領域7の周囲には、多数のチップコンデンサ(CP)11が実装されるとともに、補強板(スティフナ)13が接合されている。
【0042】
また、積層基板5の他方の主面側(第2主面:図1下側)には、多数の端子ピン15が立設されている。なお、この端子ピン15が本発明の端子部材(ピン部材)に該当する。
以下、各構成について詳しく説明する。
【0043】
図2(a)に示す様に、積層基板5の第1主面側には、その中央に、略正方形の実装領域7が設けられており、この実装領域7には、ICチップ3を積層基板5に接合するための半田バンプ9が形成されるチップ実装用端子パッド17がアレイ状に複数形成されている。なお、図2(a)では、半田バンプ9を省略してある。
【0044】
また、同第1主面側には、実装領域7の周囲(四方)に、各辺に沿って多数のチップコンデンサ11が実装されている。
更に、同第1主面側には、ICチップ3の実装領域7及びチップコンデンサ11の長方形状の実装領域19以外を覆うように、スティフナ13が接合されている。
【0045】
一方、図2(b)に示す様に、積層基板5の裏側(第2主面側)には、PGA(ピングリッドアレイ)用端子パッド21がアレイ状に複数配置され、PGA用端子パッド21上に、例えば母基板(マザーボード;実装基板)のソケットなどを装着するために、前記端子ピン15が接合されている。
【0046】
また、図3に配線基板1の中央部分の断面を示す様に、積層基板5の内部には、導体層23やビア導体24などが各層に形成されており、この導体層23やビア導体24によって、積層基板5の第1主面側の半田バンプ9と第2主面側の端子ピン15とが電気的に接続されている。
【0047】
詳しくは、図4に配線基板1の一部を拡大して示す様に、前記積層基板5は、同じ樹脂絶縁材料(電気絶縁材)を主体とした複数層(ここでは4層を示す)の樹脂絶縁層25、27、29、31と銅からなる導体層23とを交互に積層した配線積層部35を有している。
【0048】
前記樹脂絶縁層25〜31は、光硬化性を付与していない樹脂絶縁材料、具体的には、熱硬化性エポキシ樹脂の硬化体を主体としたビルドアップ材を用いて形成されている。
この樹脂絶縁層25〜31には、それぞれビア穴37及びビア導体24が設けられている。ビア導体24は、第1主面側が拡径するテーパー形状を有し、導体層23、チップ実装用端子パッド17、PGA用端子パッド21を、相互に電気的に接続している。
【0049】
配線積層部35の第1主面側において、最外層の樹脂絶縁層31には、複数の表面開口部41が形成されるとともに、表面開口部41内には、樹脂絶縁層31の外側表面よりも低くなるようにチップ実装用端子パッド17が形成されている。なお、チップ実装用端子パッド17は、主体の銅層の上面のみを銅以外のメッキ層(ニッケル−金メッキ)43で覆った構造を有している。
【0050】
そして、このチップ実装用端子パッド17上に、表面開口部41を埋めて(同図の)上方に突出する略球状の半田バンプ9が形成されている。
また、前記積層基板5の第1主面側には、チップコンデンサ11が接合されるコンデンサ用端子パッド47が形成されており、このコンデンサ用端子パッド47は、銅層を主体に構成されている。なお、コンデンサ用端子パッド47は、主体の銅層の上面及び側面を銅以外のメッキ層(ニッケル−金メッキ)49で覆った構造を有している。
【0051】
一方、前記配線積層部35の裏側(第2主面側)において、最外層の樹脂絶縁層25には、複数の裏側開口部51が形成されるとともに、それらの裏側開口部51に対応してPGA用端子パッド21が配置されている。具体的には、PGA用端子パッド21は、裏側開口部51内に位置する下段金属導体部53と、下段金属導体部53及びその周囲を覆う上段金属導体部55との2段構造を有している。なお、PGA用端子パッド21は、主体の銅層の上面及び側面を銅以外のメッキ層(ニッケル−金メッキ)57で覆った構造を有している。
【0052】
特に本実施例では、配線積層部35の裏側表面(第2主面側)を覆う様に、例えば光硬化性のエポキシ樹脂からなるソルダーレジスト層59が形成されている。このソルダーレジスト層59には、PGA用端子パッド21上の中央部分に、同図下方に向かって広がる円形の端子用開口部60が形成されている。そして、この端子用開口部60に、前記端子ピン15が(積層基板5に対して立設するように)接合されている。
【0053】
前記端子ピン15は、例えばCuからなる金属製部材の表面にAuメッキを施してなり、円盤状の基台63と基台63の中央から垂直に立設された円柱状のピン64とから構成されている。なお、基台63は、円盤状の平板からなる底部61と(底部61より径の小さな)円盤状の平板からなる上部62とが重なりあった2段構造を有しており、ピン64は、上部62から垂直に伸びている。
【0054】
そして、前記端子ピン15は、前記端子用開口部60内にて、半田からなる半田接合部70にてPGA用端子パッド21と接合されている。詳しくは、半田接合部70は、基台63の底部61の底面(同図上側)と側面とを覆うようにして端子ピン15と接合している。
【0055】
更に、半田接合部70の露出する表面(図3の下側の表面)は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる電気絶縁表面層72により覆われている。詳しくは、この電気絶縁表面層72によって、半田接合部70の表面が外部に露出しない様に隙間無く覆われているが、基台63の(図4の下方の)表面は覆われていない。
【0056】
なお、熱硬化性樹脂として、そのガラス転移温度が半田の融点以下の材料を用いている。例えばガラス転移点としては、80〜220℃の範囲の例えば95℃のものを用い、半田の融点としては、120〜230℃の範囲の例えば139℃のSn−Bi系半田を用いている。
【0057】
b)次に、本実施例の配線基板1の製造方法について、図5〜図8に基づいて説明する。
<積層基板製造工程>
まず、十分な強度を有する支持基板(ガラスエポキシ基板など)を準備し、その支持基板65上に、樹脂絶縁層25〜31及び導体層23をビルドアップして、配線積層部35を形成する。
【0058】
詳しくは、図5(a)に示す様に、支持基板65上に、エポキシ樹脂からなるシート状の絶縁樹脂基材を貼り付けて下地樹脂絶縁層67を形成することにより、基材69を作製
する。
次に、図5(b)に示す様に、基材69の上面に、積層金属シート体71を配置する。この積層金属シート体71は、2枚の銅箔73、75を剥離可能に密着させたものである。
次に、図5(c)に示す様に、積層金属シート体71の上面に、下段金属導体部53を形成するために、下段金属導体部53の形状に対応したメッキレジスト77を形成する。
【0059】
具体的には、積層金属シート体71の上面に、メッキレジスト77形成用のドライフィルムをラミネートし、このドライフィルムの露光及び現像を行って、メッキレジスト77を形成する。
【0060】
次に、図5(d)に示す様に、メッキレジスト77を形成した状態で、選択的に電解銅メッキを行って、積層金属シート体71上に下段金属導体部53を形成した後、メッキレジスト77を剥離する。
【0061】
次に、図5(e)に示す様に、下段金属導体部53が形成された積層金属シート体71を包むようにシート状の樹脂絶縁層25を配置し、樹脂絶縁層25を下段金属導体部53及び積層金属シート体71に密着させる。
【0062】
次に、図6(a)に示す様に、例えばエキシマレーザやUVレーザやCO2レーザなどを用いたレーザ加工によって、樹脂絶縁層25の所定の位置(下段金属導体部53の上部)にビア穴37を形成する。次いで、過マンガン酸カリウム溶液などのエッチング溶液やO2プラズマを用いて、ビア穴37内のスミアを除去する。
【0063】
次に、図6(b)に示す様に、従来公知の手法に従って、無電解銅メッキ及び電解銅メッキを行うことにより、各ビア穴37内にビア導体24を形成する。更に、従来公知の手法(例えばセミアディティブ法)によってエッチングを行うことにより、樹脂絶縁層25の上に導体層23をパターン形成する。
【0064】
次に、図6(c)に示す様に、他の樹脂絶縁層27〜31及び導体層23についても、上述した樹脂絶縁層25及び導体層23と同様な手法によって順次形成する。そして、最外層の樹脂絶縁層31に対して、レーザ加工によって複数の表面開口部41を形成する。 次いで、過マンガン酸カリウム溶液やO2プラズマを用いて、各表面開口部41内のスミアを除去する。
【0065】
次に、樹脂絶縁層31の上面に無電解銅メッキを行い、樹脂絶縁層31の表面開口部41内及び樹脂絶縁層31の表面を覆う全面メッキ層(図示せず)を形成する。そして、配線積層部35の上面に、コンデンサ用端子パッド47の対応箇所に開口部を有する前記と同様なメッキレジスト(図示せず)を形成する。
【0066】
その後、メッキレジストを形成した基板表面に、選択的にパターンメッキを行うことで、図7(a)に示す様に、複数の表面開口部41の一部の内部に、ビア導体24を形成するとともに、ビア導体24の上部にコンデンサ用端子パッド47を形成する。その後、セミアディティブ法でパターニングすることによって、ビア導体24及びコンデンサ用端子パッド47を残しつつ、前記全面メッキ層を除去する。
【0067】
次に、配線積層部35をダイシング装置(図示せず)により、矢印部分で切断し、配線積層部35の周囲部分を除去する。
次に、図7(b)に示す様に、積層金属シート体71の一対の銅箔73、75を、その
界面にて剥離することで、配線積層部35から基材69を除去して、銅箔73を露出させる。
【0068】
次に、図8(a)に示す様に、配線積層部35の下面側(第2主面側)において、下段金属導体部53を残しつつ銅箔73を部分的にエッチング除去することによって、上段金属導体部55を形成する。
【0069】
次に、図8(b)に示す様に、チップ実装用端子パッド17、コンデンサ用端子パッド47、PGA用端子パッド21の表面に対し、無電解ニッケルメッキ、無電解金メッキを順次施すことにより、ニッケル−金メッキ層43、49、57を形成する。
【0070】
次に、図8(c)に示す様に、配線積層部35の下面側(第2主面側)に、感光性エポキシ樹脂を塗布して硬化させることにより、表面全体を覆うソルダーレジスト層59を形成する。
【0071】
次に、ソルダーレジスト層59上に所定のマスクを配置し、露光及び現像を行い、PGA用端子パッド21に対応した箇所に端子用開口部60を形成するようにパターニングする。
【0072】
<半田バンプ形成工程>
ここでは、チップ実装用端子パッド17上に半田バンプ9を形成する通常の形成方法について簡単に説明する。
【0073】
図示しないが、上述した製造方法によって製造した積層基板5の第1主面側の表面に、半田印刷用マスクを配置する。この半田印刷用マスクには、チップ実装用端子パッド17に対応する位置に、チップ実装用端子パッド17の平面形状と同様な形状の印刷用開口部が形成してある。
【0074】
次に、半田印刷用マスクと印刷用の材料である周知の半田ペーストとを用いて印刷を行って、半田ペーストを半田印刷用マスクの印刷用開口部に充填する。
次に、半田印刷用マスクを積層基板5から剥がす。これにより、チップ実装用端子パッド17上に、半田ペーストが層状に配置された状態となる。
【0075】
次に、半田ペーストを加熱し、その後冷却することにより、半田バンプ9を形成する。
<端子ピン接合工程>
ここでは、PGA用端子パッド21上に、端子ピン15を接合する方法について説明する。
【0076】
図9(a)に示す様に、上述した製造方法によって製造した積層基板5の第2主面側を上にして、その表面に、半田印刷用マスク81を配置する。この半田印刷用マスク81には、PGA用端子パッド21に対応する位置に、PGA用端子パッド21の平面形状と同様な形状(円盤形状)の印刷用開口部83が形成してある。
【0077】
次に、図9(b)に示す様に、半田印刷用マスク81と印刷用の材料である接合材(接合材ペースト)85を用いて印刷を行う。つまり、接合材ペースト85を半田印刷用マスク81の印刷用開口部83に充填し、その後、半田印刷用マスク81を剥がすことにより、PGA用端子パッド21上に円盤形状の接合材ペースト85の層を形成する。
【0078】
本実施例で用いる接合用ペースト85には、半田及び熱硬化性樹脂以外にペースト化するための成分など各種の成分(例えば有機溶剤、添加剤)が含まれている。ここでは、接合用ペーストの組成として、例えばSn−Bi系半田85重量%、熱硬化性樹脂である例えばエポキシ樹脂10重量%、その他の成分5重量%を採用できる。
【0079】
このうち、接合後の固体成分(即ち半田と熱硬化性樹脂)において、半田と熱硬化性樹脂との割合は、半田が50〜95重量%の範囲の内の例えば85重量%、熱硬化性樹脂が5〜50重量%の範囲内の例えば15重量%である。
【0080】
次に、図9(c)に示す様に、接合材ペースト85上に、端子ピン15を載置する。詳しくは、端子ピン15の基台63の底部61を接合材ペースト85に載置し僅かに押し込む。
【0081】
次に、図9(d)に示す様に、接合用ペースト85を加熱し、その後冷却することにより、半田接合部70及び電気絶縁表面層72を形成する。
詳しくは、例えば140〜230℃の範囲の加熱温度、5〜300秒の範囲の加熱時間に基づき設定された加熱プロファイルが適用される。ここでは、例えば180℃の加熱温度、180秒の加熱時間が設定される。なお、この加熱温度は、前述の半田の溶融温度及び熱硬化性樹脂のガラス転移温度よりも高くなるように設定されている。
【0082】
従って、本実施例では、接合用ペースト85中のエポキシ樹脂は、そのガラス転移点以上の温度(例えば120℃)に加熱されると軟化する。
その後、更に半田が溶融する温度(例えば140℃)に加熱されると、軟化したエポキシ樹脂中で半田が溶融して一体化する。それとともに、半田の露出する(第2主面側の)表面がエポキシ樹脂で覆われる。そして、更に温度が上昇すると、その状態でエポキシ樹脂が硬化して電気絶縁表面層72となる。
【0083】
その後、温度が常温に下げられると、半田が固化して半田接合部70となり、その半田接合部70の表面が電気絶縁表面層72で覆われた接合構造が得られる。
特に、本実施例では、半田及び電気絶縁材は、端子ピン15の基台63の表面(図9上方)を覆わないが、これは、PGA用端子パッド21上の端子用開口部60の大きさや端子ピン15の基台63の大きさを考慮し、接合材ペースト85の量を調節することにより実現することができる。
【0084】
なお、チップコンデンサ11の実装や、スティフナ13の接合は、ソルダーレジスト層形成工程の後に行うことができる。
c)この様に、本実施例では、PGA用端子パッド21上に端子ピン15の基台63を配置するとともに、PGA用端子パッド21上に半田と樹脂製の電気絶縁材とを含む接合材ペースト85を配置し、その接合材ペースト85を加熱することによって、半田を溶融させるとともに電気絶縁材を軟化させる。そして、その後冷却することによって、半田を固化させて基台63とPGA用端子パッド21を接合するとともに、基台63に接合した半田接合部70の露出面に電気絶縁表面層72を形成する。これにより、従来の製造方法に比べて、製造工程を簡易化できるという顕著な効果を奏する。
【0085】
また、本実施例では、使用する接合材ペースト85の量などを調節することにより、端子ピン15の基台63のどの程度まで半田で覆うか(従って電気絶縁材で覆う範囲)を容易に調節することができる。よって、本実施例の様に、基台63の表面側が電気絶縁材で覆われていない配線基板1では、ソケット等の接続部材の装着を確実にすることができる。
【0086】
更に、本実施例の配線基板1は、(固化した)半田の表面が電気絶縁材で覆われているので、PGA用端子パッド21と端子ピン15とが強固に接合されており、外からの応力に対して破損しにくいという効果がある。それとともに、電気絶縁性が高く、しかも、半田の酸化を効果的に防止できるという利点がある。
【0087】
しかも、本実施例では、接合材ペースト85として、その固体となる成分として、半田が50〜95重量%、電気絶縁材が5〜50重量%である構成を採用するので、容易に半田接合部70の表面を電気絶縁材で覆う構造とすることができる。
【実施例2】
【0088】
次に、実施例2の配線基板について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
図10に示す様に、本実施例の配線基板90では、使用する端子ピン91の形状が前記実施例1と異なる。
【0089】
具体的には、本実施例で使用する端子ピン91は、基台93及び基台93に立設されたピン95からなり、基台93は、底部97及び上部99からなる。特に、底部94は、同図下側の底面全体が球状に凸となった円盤形状である。
【0090】
また、本実施例では、前記実施例1と同様に、積層基板101の表面に形成されたソルダーレジスト層103には、PGA用端子パッド105上に端子用開口部107が形成されており、この端子用開口部107に端子ピン91の基台93が接合されている。
【0091】
詳しくは、端子用開口部107内において、基台93の底部93の湾曲した底面全体に接するように半田からなる半田接合部109が形成されており、この半田接合部19によって、端子ピン91がPGA用端子パッド105に接合している。
【0092】
更に、半田接合部109の表面(露出面)の全体を覆う様に電気絶縁材からなる電気絶縁表面層111が形成されている。
これらの半田接合部109及び電気絶縁表面層111は、前記実施例1と同様に、基台93の表面(同図上方)を覆わないように形成されている。
【0093】
従って、本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例3】
【0094】
次に、実施例3の配線基板及びその製造方法について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略又は簡略化する。
図11に示す様に、本実施例の配線基板(BGA基板)及びその製造方法では、前記実施例1で使用する端子ピンではなく、半田により端子部材を形成している。
【0095】
a)まず、本実施例の配線基板の構成について説明する。
図11(a)に示す様に、本実施例の配線基板121は、前記実施例1とほぼ同様な構造の積層基板123を備えている。
【0096】
この積層基板123の一方の主面側(第1主面:図11(a)上側)、即ちICチップ125が実装される側には、多数の半田バンプ127が形成されるとともに、他方の主面側(第2主面:図11(a)下側)には、多数の端子部材129が設けられている。
【0097】
詳しくは、積層基板123は、配線積層部131とソルダーレジスト層133とが積層されたものであり、このうち配線積層部131は、複数の樹脂絶縁層135が積層されるとともに、その内部に導体層137やビア導体139などが各層に形成されている。また、この導体層137やビア導体139によって、積層基板123の第1主面側の半田バンプ127と第2主面側の端子部材129とが電気的に接続されている。
【0098】
特に本実施例では、図11(b)に要部を上下反転して示す様に、第2主面側(図11(b)上側)を覆うソルダーレジスト層133には、端子パッド141上の中央部分に、同図上方に向かって広がる円形の端子用開口部143が形成されている。そして、この端子用開口部143に、(端子用開口部143を満たすようにして)端子部材129が接合されて配置されている。
【0099】
この端子部材129は、全体が半田からなり、その先端は端子用開口部143より外側(積層基板表面より外側)に略半球状(ドーム状)に突出している。
更に、この端子部材129の基板表面からの突出部129aのうち、その積層基板123側(同図下方)は、前記実施例1と同様な電気絶縁表面層145により覆われている。詳しくは、突出部129aは、電気絶縁表面層145によって、(同図上方の先端部分を除いて)根元部分の表面が外部に露出しない様に隙間無く覆われている。
【0100】
b)次に、本実施例の配線基板121の製造方法について説明する。
なお、<積層基板製造工程>と<半田バンプ形成工程>については、前記第1実施例と同様であるので、その説明は省略し、以下では、本実施例の要部である端子部材形成工程について説明する。
【0101】
<端子部材形成工程>
図11(a)に示す様に、前記実施例1と同様な製造方法によって製造した積層基板123の第2主面側を上にして、その表面に、半田印刷用マスク(図示せず)を配置する。この半田印刷用マスクには、BGA用端子パッド141に対応する位置に、BGA用端子パッド141の平面形状と同様な形状(円盤形状)の印刷用開口部が形成してある。
【0102】
次に、半田印刷用マスクと印刷用の材料である接合材(前記実施例1と同様な組成の接合材ペースト;図示せず)を用いて印刷を行う。この印刷によって、端子部材129を形成するのに十分な量の接合材ペーストを、端子用開口部143を埋めて更に基板表面より盛り上がるように配置する。
【0103】
次に、接合用ペーストを加熱し、その後冷却することにより、半田のみを固化させて端子部材129を形成するとともに、電気絶縁表面層145を形成する。
詳しくは、接合用ペースト中のエポキシ樹脂は、そのガラス転移点以上の温度に加熱されると軟化し、更に加熱されると半田が溶融する。そして、溶融した半田は、表面張力によって基板表面よりドーム状に突出し、それとともに、ドーム状に突出した半田の表面の一部(根元部分の外周)が軟化したエポキシ樹脂で覆われる。
【0104】
その後、更に温度が上昇すると、その状態でエポキシ樹脂が硬化して電気絶縁表面層145となる。そして、温度が常温に下げられると、半田はその先端側がドーム状に突出した状態で固化して端子部材129となる。
【0105】
これにより、端子部材129の突出部129aの(先端を除いた)表面が電気絶縁表面層145で覆われた接合構造が得られる。
なお、本実施例では、突出部129aの先端を電気絶縁表面層145で覆わないが、これは、BGA用端子パッド141上の端子用開口部143の大きさや端子部材129の大きさを考慮し、接合材ペーストの量及び半田とエポキシ樹脂との割合を調節することにより実現することができる。
【0106】
c)本実施例では、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、端子ピンではなく、半田を溶融後固化させて端子部材129を形成するので、端子ピンを立設して接合する作業が不要になり、一層製造方法が容易になるという利点がある。
【0107】
なお、ここでは、端子部材129の突出部129aの先端部分を電気絶縁表面層145で覆わないようにしたが、それとは別に、端子部材129の突出部129aの全表面を電気絶縁表面層145で覆い、その後、例えば研磨等により、先端部分から電気絶縁表面層145を除去するようにしてもよい。
【0108】
なお、本発明は、前記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
(1)例えば配線基板の表面に、ソルダーレジストがある場合でも無い場合でも、本発明を採用できる。
【0109】
(2)また、前記実施例1〜3では、半田バンプやCPやスティフナを備えた配線基板について説明したが、本発明は、半田バンプやCPやスティフナを備えない配線基板にも適用できる。
【0110】
(3)更に、前記実施例1、2では、半田接合部の表面全体を電気絶縁表面層で覆っていたが、図12に示す様に、半田接合部151の表面の一部を電気絶縁表面層153で覆ってもよい。具体的には、端子ピン155の底部157の外周近傍における半田接合部151の表面以外を、電気絶縁表面層153で覆ってもよい。これによっても、前記実施例1、2ほどではないが、電気絶縁表面層153の広さに応じて、電気絶縁性等の同様な効果を得ることができる。
【0111】
(4)なお、本発明者らの研究によれば、前記接合材の成分の数値範囲の半田の下限値(半田が50重量%、電気絶縁材が50重量%)及び上限値(半田が95重量%、電気絶縁材が5重量%)の場合でも、前記実施例と同様な効果があった。
【符号の説明】
【0112】
1、90、121…電子部品実装用配線基板
3、125…ICチップ
5、101、123…積層基板
9、127…半田バンプ
15、91、155…端子ピン
17…チップ実装用端子パッド
21、105…PGA用端子パッド
63、93…基台
64、95…ピン
61、97、157…底部
70、109、151…半田接合部
72、111、145、153…電気絶縁表面層
85…接合用ペースト
129…端子部材
141…BGA用端子パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体層と樹脂絶縁層とが交互に積層されてなる積層基板上の端子パッドに、端子部材を接合する配線基板の製造方法において、
前記端子部材として、半田を介して前記端子パッドに底面が接合される基台と、該基台の表面に立設されたピンとを備えたピン部材を用い、
前記端子パッド上に前記ピン部材の基台を配置するとともに、該端子パッドの近傍に前記半田と樹脂製の電気絶縁材とを含む接合材を配置し、該接合材を加熱することによって、前記半田を溶融させるとともに前記電気絶縁材を軟化させ、
その後冷却することによって、前記半田を固化させて前記基台と前記端子パッドを接合するとともに、前記基台に接合した前記半田の露出面には、前記電気絶縁材からなる電気絶縁表面層を形成することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記接合材はペースト状であり、該接合材のうち、前記加熱後の冷却によって固体となる成分は、前記半田が50〜95重量%、前記電気絶縁材が5〜50重量%であることを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記電気絶縁材は、熱硬化性樹脂からなり、そのガラス転移温度が前記半田の融点以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
導体層と樹脂絶縁層とが交互に積層されてなる積層基板上の端子パッドに、端子部材を接合する配線基板の製造方法において、
前記端子パッド上に半田と樹脂製の電気絶縁材とを含む接合材を配置し、該接合材を加熱することによって、前記半田を溶融させるとともに、前記電気絶縁材を軟化させ、
その後冷却することによって、前記半田を固化させて、前記半田で構成される端子部材を形成するとともに、前記端子部材の露出面には、前記電気絶縁材からなる電気絶縁表面層を形成することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
導体層と樹脂絶縁層とが交互に積層されてなる積層基板の端子パッド上に、端子部材を備えた配線基板において、
前記端子部材は、
前記端子パッドに半田を介して底面が接合された基台と、該基台の表面に立設されたピンとを備えたピン部材であり、
前記基台の底面に前記半田が接合するとともに、前記基台の表面には前記半田が接合していない構成を有し、
且つ、前記基台に接合した前記半田の露出面には、前記電気絶縁材からなる電気絶縁表面層が形成されていることを特徴とする配線基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−164965(P2012−164965A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268119(P2011−268119)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】