説明

配線基板用積層体、配線基板、配線基板用積層体の製造方法、及び配線基板の製造方法

【課題】基板上に形成された金属配線の厚さが、ナノレベルであり、小デバイス化が可能であるとともに、導電性に優れ、かつその製造も簡便である、配線基板用積層体、及び配線基板を提供する。
【解決手段】基板14の表面に、無電解めっきの触媒核を1μm以下の間隔で配置し、前記触媒核から金属を析出させることにより、基板14と、前記基板14上に形成された40〜800nmの厚さの金属層12とを含む配線基板用積層体10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板用積層体、配線基板、電磁波制御基板、透明導電体及び集電電極、並びに配線基板用積層体の製造方法及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に金属配線を備えた配線基板は、導電性を有する基板として、各種電気製品の回路基板、電磁波制御材、その他の各種部品等として使用されている。その中でも、透明な基板を用いた透明導電体の需要が、ディスプレイ産業等を中心に近年高まってきている。
【0003】
透明導電体は、導電性を有するだけでなく透明性も有するため、ノートパソコンや携帯電話等の表示素子用電極、太陽電池用電極、液晶(LCD)等のプラズマディスプレイパネル用電極等に使用され、今後さらなる需要の増加が期待されている。このような透明導電体の金属配線の材料としては、酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等が使用されている。
【0004】
上記した配線基板の製造においては、電解めっき法、無電解めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法、ゾル・ゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD法等が用いられている。
【0005】
例えば、特許文献1には、湿式めっき法により酸化亜鉛を基板上に製膜することで、透明導電性の酸化亜鉛皮膜を形成する技術が開示されている。特許文献2には、ポリイミド樹脂フィルムからなるプリント配線基板の片面又は両面に、乾式製膜法で形成された第1の金属層と、その金属層上に電気めっき又は無電解めっきで形成された導電性を有する第2の金属層と、を有する金属皮膜ポリイミド樹脂フィルムからなるプリント配線に、エッチングパターンを施す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−011642号公報
【特許文献2】特開2006−310401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記配線基板の金属配線をナノレベルの厚さにすることは困難である。金属配線を部分的にナノレベルの厚さにすることができたとしても、金属配線の厚さが均一でなかったり、充分な導電性を得ることができなかったりするという問題がある。金属配線をナノレベルの厚さにすることができれば、基板上の金属配線の表面積を大面積化できるため、集電効率等の電気的性能を向上できるとともに、小デバイス化も可能となる。
【0008】
さらに、配線基板の製造工程等についても改善の余地がある。例えば、特許文献1に開示されている技術では、得られる皮膜は透明であるが、湿式めっき工程に数時間という長時間を要し、かつ製膜工程での作業効率が悪いという問題がある。さらに、めっき法による製膜方法では、ナノレベルの金属配線を形成することは困難である。めっき法のなかでも電解めっき法による製膜方法では、電解を行うため基板の材料が導電性を有するものに制限されてしまう。
【0009】
特許文献2に開示されている技術では、湿式めっき方法と乾式めっき方式を併用しており、乾式方法としてスパッタリング法や真空蒸着法を用いて金属層を製膜する。スパッタリングや真空蒸着等による方法では真空環境で作業を行う。この真空環境を作製し維持する必要があるため作業工程が煩雑となる。大きな配線基板を作製する場合には、より大きな真空環境が必要となるが、その大きな真空環境を安定して高真空条件を維持するのは非常に困難である。この問題は、透明な基板上に金属線を供える透明導電体を製造する場合に顕著である。透明導電体の金属線としては、バンドギャップ半導体が通常用いられている。このバンドギャップ半導体を基板上に形成する方法として、スパッタリングや真空蒸着等が通常用いられているからである。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基板上に形成された金属配線の厚さがナノレベルであり、小デバイス化が可能であるとともに、導電性に優れ、かつその製造も簡便である、配線基板用積層体及び配線基板を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、無電解めっき法を用いることによって、基板と、前記基板上に形成された薄膜の金属層と、を含む配線基板用積層体とすることにより、基板上に形成された金属配線の厚さがナノレベルであり、小デバイス化が可能であるとともに、導電性に優れ、かつその製造も簡便である、配線基板が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕
基板と、
前記基板上に形成された40〜800nmの厚さの金属層と、
を含む配線基板用積層体。
〔2〕
前記金属層は、前記基板の表面に、無電解めっきの触媒核を1μm以下の間隔で配置し、前記触媒核から金属を析出させることにより形成させる上記〔1〕の配線基盤用積層体。
〔3〕
前記基板が、ガラス、プラスチック及びシリコンウェハからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む上記〔1〕又は〔2〕の配線基板用積層体。
〔4〕
前記金属層が、金、銀、白金、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、スズ、パラジウム及びクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一つの配線基板用積層体。
〔5〕
前記基板が、透明である上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一つの配線基板用積層体。
〔6〕
金属層の表面抵抗が、0.001〜1000Ω/□である上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一つの配線基板用積層体。
〔7〕
基板と、
前記基板上に形成された40〜800nmの厚さの金属配線と、
を含む配線基板。
〔8〕
上記〔7〕の配線基板を含む電磁波制御基板。
〔9〕
上記〔7〕の配線基板を含む透明導電体。
〔10〕
上記〔7〕の配線基板を含む集電電極。
〔11〕
太陽電池の集電電極である上記〔10〕の集電電極。
〔12〕
基板の表面に、無電解めっきの触媒核を1μm以下の間隔で配置する工程と、
前記触媒核から金属を析出させることにより、前記基板の表面に40〜800nmの厚さの金属層を形成する工程と、
を含む、配線基板用積層体の製造方法。
〔13〕
基板の表面に、無電解めっきの触媒核を1μm以下の間隔で配置する工程と、
前記触媒核から金属を析出させることにより、前記基板の表面に40〜800nmの厚さの金属層を形成する工程と、
前記金属層の表面の少なくとも一部を被覆層で被覆する工程と、
前記被覆層により被覆されていない前記金属層の部分をエッチングにより除去することにより、前記基板上に金属配線を形成する工程と、
を含む、配線基板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板上に形成された金属配線の厚さがナノレベルであり、小デバイス化が可能であるとともに、導電性に優れ、かつその製造も簡便である、配線基板用積層体及び配線基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る配線基板用積層体の一実施形態の概略側面図である。
【図2】本実施形態に係る配線基板の一実施形態の概略側面図である。
【図3】本実施形態に係る配線基板の製造方法の一例を説明する概念図である。
【図4】実施例1の配線基板用積層体のめっき表面の原子間力顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。図面の寸法比率は、図示の比率に限られるものではない。
【0016】
<配線基板用積層体>
図1は、本実施形態に係る配線基板用積層体の一実施形態の概略側面図である。配線基板用積層体10は、基板14と、前記基板14上に形成された40〜800nmの厚さLの金属層12と、を含む。本実施形態でいう配線基板用積層体とは、金属配線を描画するための金属層が基板の表面に形成されたものをいう。配線基板用積層体10は、金属層12をパターニングして金属配線とすることで、後述する配線基板とすることができる。
【0017】
<基板>
本実施形態の配線基板用積層体の基板は、基板上に金属層が形成可能な材料であればよく、その種類は特に限定されない。例えば、ガラス、プラスチック、シリコンウェハやこれらの複合材が挙げられる。
【0018】
ガラスは、主成分となる二酸化珪素と副成分となる種々の金属化合物を粉末として混合し、高温で溶融して液体状態としたものを急冷することにより得ることができる。ガラスとしては、その種類は特に限定されず、例えば、白板ガラス、青板ガラス、耐熱ガラス等が挙げられる。
【0019】
プラスチックとしては、その種類は特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂;高密度、中密度、低密度等のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、環状ポリオレフィン(COP)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0020】
シリコンウェハとしては、例えば、高純度な珪素の薄円盤であるシリコンウェハ等が挙げられる。
【0021】
基板は、透明であることが好ましい。透明とは、ASTM D−1003に準拠した全光透過率が50%以上であることをいい、好ましくは60%以上、より好ましくは70%である。透明性に優れた基板を用いることで、導電性だけでなく、透明性にも優れた配線基板用積層体及び配線基板とすることができる。透明性に優れた配線基板は、透明導電体として好適に使用できる。
【0022】
通常、導電性材料として用いられる金属は、導電性は良好であるが、光(可視光)を反射するため十分な透明性が得られない。黒鉛は、導電性は良好であるが、可視光を吸収するため十分な透明性が得られない。そこで、透明性を有し、かつ導電性が良好である膜を作製するためには、ITO(酸化インジウム・スズ)等のワイドギャップ半導体が、透明導電体の金属層や金属配線として使用されている。ワイドギャップ半導体は、そのエネルギーギャップが紫外域に対応するため、可視光を吸収しない。ワイドギャップ半導体の導電機構はキャリア電子の移動によるものであり、キャリア電子の密度は金属よりもかなり低い。そのため、ワイドギャップ半導体は可視光を反射せず、ワイドギャップ半導体からなる膜は可視光をよく透過する。しかし、キャリア電子の密度が高い膜は、キャリア電子が赤外光を反射するため、赤外領域の透過率が減少するという問題がある。
【0023】
本実施形態の配線基板用積層体及び配線基板は、光透過性を示すことができる基板部分と、導電性を示す配線部分とが別々に存在するため、透過光の波長分布の影響を受けない。そのため、ワイドギャップ半導体等を用いた従来の透明導電膜では、透過性を得ることが困難であった近赤外領域等であっても、高い透過率を有する。
【0024】
上記に加えて、本実施形態の配線基板用積層体及び配線基板は、製造工程上の利点も有する。例えば、ワイドギャップ半導体として用いられるITO膜は、スパッタリングや真空蒸着等の方法によって製膜する。これらの方法は、装置が大掛かりとなるだけでなく、真空下で作業を行うため、簡便な方法とはいえない。これに対して、本実施形態は無電解めっき法により製膜するため、大掛かりな装置が不要であり製造コストを抑えることができるとともに、少ない工程数で簡便に製膜できる。
【0025】
<金属層>
金属層は、基板の一方の表面のみに形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。金属層は基板の表面の一部に形成されるものであってもよいが、金属配線を任意の形状に描画可能とする観点から、金属層は基板の表面の略全面に形成されていることが好ましい。
【0026】
金属層の厚さは、40〜800nmであるが、厚さの上限値は、700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、下限値は、45nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。配線基板用積層体から配線基板を得る場合、配線基板用積層体の導電層を部分的に除去する作業を行う観点から、金属層の厚さが800nmを超えると、除去時の作業性が悪くなるとともに、金属配線のパターニングの精度等も悪くなる。金属層の厚さが40nm未満であると、十分な導電性が得られない恐れがある。本実施形態によれば、上記範囲のような微細な厚さの金属層であっても簡便にかつ高精度に形成することができ、かつ十分な導電性も発揮することができる。
【0027】
金属層は、後述する無電解めっき法により基板上に形成することができる。本実施形態では、金属層として幅広い種類の金属を用いることができるため、配線基板用積層体や配線基板に所望する物性に応じて、金属を選択できる。金属層を形成する金属種は、使用した触媒核から成長可能な金属であればよく、その種類は特に限定されない。金属層を形成する金属種としては、幅広い物性を発現でき、幅広い用途に用いることができる観点から、金、銀、白金、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、スズ、パラジウム、ロジウム、及びクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。これらの金属種の複合又はタングステン等の他金属との複合でもよい。
【0028】
金属種の種類は、所望する導電性や他の物性の程度や、基板上に形成される金属の体積等を考慮して選択できる。また、金属種によっては、酸やアルカリや酸素等に対する反応性が異なるため、耐久性やエッチングの繊細さ等を考慮して選択することもできる。例えば、金属種によってその導電率が異なるため、高導電率・低抵抗性を配線基板に付与したいときは、金、銀、銅等が特に好ましい。さらに、耐久性を配線基板に付与したいときは、白金、クロム等が特に好ましい。さらにまた、偏光フィルムや電磁波シールド等として配線基板を付与したい場合は、銀、アルミニウム等が特に好ましく、赤外線を反射する性質を有する銀が一層好ましい。このような銀を用いる配線基板は、窓等の反射板等に好適に用いることができる。さらにまた、金属種によってその色が異なるため、配線基板に所望する色彩に応じて金属種を選択することができる。例えば、黒色系の配線基板としたい場合は、銅やその酸化物等が好ましい。
【0029】
本実施形態の配線基板用積層体の好ましい態様としては、表面抵抗が0.001〜1000Ω/□の配線基板用積層体とすることができ、より好ましくは0.001〜500Ω/□、さらに好ましくは0.001〜350Ω/□とすることができる。上記範囲の表面抵抗を有する配線基板用積層体は、導電性に優れた配線基板として好適に用いることができる。
【0030】
<配線基板用積層体の製造方法>
本実施形態の配線基板用積層体は、基板の表面に、無電解めっきの触媒核を1μm以下の間隔で配置する工程と、前記触媒核から金属を析出させることにより、前記基板の表面に40〜800nmの厚さの金属層を形成する工程と、を含む製造方法により得ることができる。
【0031】
<無電解めっき法>
本実施形態では、基板に金属層を形成させる方法として無電解めっき法を用いる。無電解めっき法は、電気化学的酸化還元反応により金属を還元析出させる方法である。この無電解めっき法には、金属と還元剤を含んだ溶液内で酸化還元反応を行うことで金属を析出させる化学めっき、異種金属のイオン化傾向の差(電位差)を利用する浸漬めっきや置換めっき等が包含される。無電解めっき法としては、例えば、無電解ニッケルめっき、無電解ニッケル−タングステン合金、無電解銅めっき、無電解スズめっき、無電解金めっき等が挙げられる。
【0032】
本実施形態では、従来の無電解めっき法では困難であった薄膜の金属層を基板上に形成できる。具体的には、無電解めっきの際に触媒核を1μm以下の間隔で基板上に配置することにより、厚さ40〜800nmの金属層を基板上に形成できる。本実施形態では電解を必須としないため、導電性を有さないガラス、プラスチック、シリコンウェハ等の基板に対しても、金属層を直接形成できる。触媒核を1μm以下の間隔で基板上に配置する方法は、特に限定されず、例えば、コンディショナーで基板表面に電位を持たせ、パラジウム等の金属イオンを密に吸着させることで緻密な核を形成する方法等が挙げられる。
【0033】
無電解めっきの際に用いる触媒核は、特に限定されず、通常用いられる核を使用できる。例えば、パラジウム、スズ、銅、銀、金等を使用できるが、他の金属を使用してもよい。触媒核は、1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、種々の金属錯体や金属酸化物等として使用してもよい。例えば、触媒核としてパラジウムを用いる場合、パラジウムを基板の表面に定着させて核付けし、その核から各種金属を成長させることで金属層を形成することができる。
【0034】
従来、無電解めっき法では、このような薄膜の金属層を基板上に形成することは困難であったが、本発明者らは、触媒核を1μm以下の間隔で基板の表面に配置することにより、かかる薄膜の金属層を形成できることを見出した。触媒核の大きさは特に限定されないが、触媒核を密に配置することにより、金属を析出させる際に隣接する結晶が接触しやすい状態を作りだすことができる。その結果、薄膜の金属層を形成できるものと考えられる(但し、作用及び機構はこれに限定されない。)。触媒核の配置間隔は1μm以下であれば上記した薄膜の金属層を形成できるが、上限値としては、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは100nm以下であり、下限値としては、好ましくは50nm以上であり、より好ましくは75nm以上である。
【0035】
<配線基板>
図2は、本実施形態の配線基板の一実施形態の簡略断面図である。配線基板20は、基板24と、前記基板24上に形成された40〜800nmの厚さLの金属配線22と、を含む。本実施形態の配線基板とは、本実施形態の配線基板用積層体から部分的に金属層を除去することにより形成された金属配線を備える基板をいう。
【0036】
<配線基板の製造方法>
本実施形態の配線基板の製造方法は、基板の表面に、無電解めっきの触媒核を1μm以下の間隔で配置する工程と、前記触媒核から金属を析出させることにより、前記基板の表面に40〜800nmの厚さの金属層を形成する工程と、前記金属層の表面の少なくとも一部を被覆層で被覆する工程と、前記被覆層により被覆されていない前記金属層の部分をエッチングにより除去することにより、前記基板上に金属配線を形成する工程と、を含む。一例として、本実施形態の配線基板用積層体から配線基板を製造する場合について図3を用いて説明する。
【0037】
図3は、本実施形態の配線基板の製造方法の一例を説明するための概念図である。まず、基板34の表面に、金属層32の表面の少なくとも一部を被覆層36で被覆する(図3の(A),(B)参照)。本実施形態において、金属層32の表面の一部を被覆層36で保護する方法は特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。例えば、樹脂を溶媒に溶解させて溶融状態とし、溶融状態の樹脂を金属層に塗布する方法等が挙げられる。塗布は、スピンコート、ディップコート、スプレーコート、バーコート等の公知の方法によって塗布できる。そして、公知のパターニング方法によって、所望のパターン形状に被覆層を形成できる。
【0038】
被覆層36の厚さは、特に限定されないが、金属層32の保護能力の観点及び被覆層36の除去し易さの観点から、0.1〜5μmが好ましい。
【0039】
被覆層は、エッチング処理時に金属層を保護できる機能があればよく、その材料は限定されない。例えば、樹脂を用いる場合であれば、溶剤耐性や熱による樹脂の流動性の観点から、好ましくは、ポリメチルメタクリレート、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0040】
次に、被覆層36により被覆されていない金属層32の部分をエッチングにより除去する。このエッチングによって金属配線32aを形成できる。形成された金属配線32aの厚さは、金属層32の厚さと対応している。
【0041】
エッチングの方法は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。例えば、酸やアルカリによる化学的エッチングやレーザーやメカニカル手法による物理的エッチング等が挙げられる。
【0042】
金属配線32aの配線形状は特に限定されず、基板34の表面上に所望の形状にパターニングすることができる。金属配線32aは、導電体として電気的配線や電磁気的配線として利用できる。
【0043】
本実施形態では、金属配線32aを被覆する被覆層36は除去してもよいし(図3の(C)参照)、除去しなくてもよい(図3の(D)参照)。本実施形態の配線基板を、電気的配線として使用する場合は、部分的又は全面的に被覆層36を除去し、他の部品や配線と結線してもよい。あるいは、被覆層36を残し、そのまま配線被覆層として使用してもよい。
【0044】
<電磁波制御基板>
本実施形態の配線基板は、電磁波制御基板として好適に使用できる。電磁波制御基板は、帯電防止膜、電磁波シールド材、磁界シールド材等として用いることができる。電磁波制御基板の形状や大きさ等は、特に限定されず、例えば、シート(フィルム等と呼ばれる場合もある。)等の形状であってもよい。特に、基板をシート状のものとすることにより、電磁波シールドシートとして好適に用いることができる。このような電磁波シールドシートは、電子機器等の枠体等に貼り付けて用いることができる。
【0045】
また、本実施形態に係る製造方法によれば、金属配線を微細な金属細線とし、金属配線のピッチ幅を極小にできる。そのため、電磁波制御基板として用いることができる。例えば、金属配線をグリッド状に配置することにより、電磁波制御基板をワイヤーグリッド型の偏光材(例えば、偏光板、偏光フィルム)等として用いることができる。本実施形態では基板は材料の制限を受けないこと等から、幅広い光波長域において高い偏光分離能を発揮することができる。さらにまた、本実施形態に係る製造方法によれば、金属配線を微細なアンテナパターンとすることもできるため、配線基板をアンテナとして用いることもできる。
【0046】
電磁波制御基板とした場合であっても、後述するように透明な基板を採用することができるため、電磁波制御機能を有するとともに、光透過性を備える配線基板とすることもできる。このような配線基板は透明電磁波シールド、透明アンテナ等として用いることもできる。
【0047】
<透明導電体>
本実施形態の配線基板は、透明導電体として好適に使用できる。本実施形態では、透明な基板上に、直接、金属層又は金属配線を形成することができる。そのため、本実施形態の配線基板は、導電性だけでなく透明性も優れた透明導電体とすることができる。透明導電体は、太陽電池の透明電極やタッチパネルの透明電極として好適に使用できる。太陽電池の透明電極として用いる場合、光透過性と導電性に優れるため、太陽光から電気エネルギーを効率よく取り出すことができる。
【0048】
<集電電極>
また、本実施形態の配線基板は、集電電極として好適に使用できる。本実施形態の配線基板は、基板上に高密度で金属配線を形成できるため、面積が大きい集電電極とすることができる。その結果、集電効率が高い集電電極とすることができ、装置としての省デバイス化も可能となる。特に、透明な基板を用いた場合、本実施形態の配線基板は、上述した太陽電池の集電電極として一層好適に用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
<実施例1>
(配線基板用積層体の作製)
基板としてポリエチレンナフタレート(PEN)を用いて、無電解銀めっきにより配線基板用積層体を作製し、その表面形状を確認した。
まず、脱脂液を用いて、基板の脱脂を行った後水洗した。続いて、水酸化カリウム水溶液及び中和剤(塩酸水溶液)にて基板の表面を洗浄した。その後、コンディショナー工程、センシタイジング工程を行った。センシタイジング工程では、基板表面をパラジウム(Pd)触媒液を浸漬させることで、基板上にPd触媒を付けた。その後、Pd触媒を核として無電解金属めっきを行った。無電解金属めっきでは、硝酸銀水溶液を用いて銀めっきを行った。めっき後、水洗を2回行い、最後に変色防止を行い、配線基板用積層体を得た。
得られた配線基板用積層体のめっき表面を原子間力顕微鏡(AFM)によって撮像し、めっきの状態を確認した。図1に、配線基板用積層体のめっき表面の原子間力顕微鏡(AFM)写真を示す。図1のAFM写真で確認できる山の部分は結晶成長した銀めっき粒界であり、それぞれの山の中心にはめっき核(触媒核)が存在している。従って、図1のAFM写真からめっき核(触媒核)の配置間隔が1μm以下であることが確認された。そして、基板上に形成された銀めっきの厚さ(金属層の厚さ)は60nmであり、ナノレベルの金属層が形成されていることが確認された。
【0051】
<実施例2〜24>
表1〜4に示す条件で配線基板用積層体及び配線基板を製造した点以外は、実施例1と同様にして配線基板用積層体を製造した。なお、金属層を形成する金属種として、銀以外の金属種を用いた場合は、めっき液として当該金属種の水溶液を用いた。各実施例で用いた基板の材料を以下に示す。
(基板)
ガラス:マツナミガラス社製、スライドガラス
ポリエチレンナフタレート(PEN):帝人デュポン社製
ポリイミド(PI):東レ社製、商品名「カプトン」
ポリメタクリル酸メチル(PMMA):旭化成ケミカルズ社製、商品名「デルペット980N」
ポリエチレンテレフタレート(PET):帝人デュポン社製、O3グレード
シリコンウェハ(Si):市販品
【0052】
(配線基板の作製)
各実施例で作製した配線基板用積層体の金属層の表面に、1mm角の窓を切り取ったメッシュ状のフッ素樹脂テープを貼付して、マスキングした。この配線基板用積層体を30質量%塩酸水溶液中に浸漬して、マスキングしていない金属層部分を除去した。その後、配線基板用積層体を水洗しマスキングテープを剥して、格子状の金属配線を備えた配線基板を得た。得られた配線基板のL/S比を表1〜4に示す。
【0053】
表1〜4に示すように、実施例2〜24の配線基板用積層体についても、ナノレベルの厚さの金属層が基板上に形成できていることが確認された。さらに、以下に示す方法により、各実施例の配線基板用背基礎体及び配線基板の物性を評価した。
【0054】
<配線基板用積層体の導電性評価(表面抵抗)>
各実施例の配線基板用積層体の導電性評価を行った。導電性評価はシート抵抗を測定した。シート抵抗は、四端子四探針方式「ロレスタ-GP」(ダイヤインストロメンツ社製)を用いて、JIS K 7194に準拠して測定した。その結果を表1〜4に示す。
【0055】
<配線基板の透明性評価>
各実施例の配線基板の透明性評価を行った。透明性評価は、全光線透過率をASTM D−1003に準拠して測定した。その結果を表1〜4に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
表1〜4に示すように、各実施例の配線基板用積層体は、金属層の厚さがナノレベルの薄さであり、導電性に優れていることが確認された。さらに、各実施例の配線基板は、ナノレベルの厚さの金属配線であり、基板上における金属配線のライン/スペース(L/S)は正確にパターン形成されていることが確認された。さらに、各実施例の配線基板は、導電性に優れていることが確認された。特に実施例2〜23の金属配線基板は、導電性に優れているだけでなく高い透明性も有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る配線基板用積層体及び配線基板は、各種電気製品の帯電防止材、電磁波シールド材、磁界シールド材等の電磁波制御基板;太陽電池、LCD等のプラズマディスプレイパネル、ノートパソコンやタッチパネル等の各種表示素子等の電極;各種電気製品の回路基板等をはじめとする幅広い分野で利用できる。
【符号の説明】
【0062】
10 配線基板用積層体
12,32 金属層
14,24,34 基板
20 配線基板
22,32a 金属配線
36 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された40〜800nmの厚さの金属層と、
を含む、配線基板用積層体。
【請求項2】
前記金属層は、前記基板の表面に、無電解めっきの触媒核を1μm以下の間隔で配置し、前記触媒核から金属を析出させることにより形成される請求項1記載の配線基板用積層体。
【請求項3】
前記基板が、ガラス、プラスチック、及びシリコンウェハからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の配線基板用積層体。
【請求項4】
前記金属層が、金、銀、白金、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、スズ、パラジウム、ロジウム、及びクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の配線基板用積層体。
【請求項5】
前記基板が、透明である請求項1〜4のいずれか一項に記載の配線基板用積層体。
【請求項6】
前記金属層の表面抵抗が、0.001〜1000Ω/□である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の配線基板用積層体。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に形成された40〜800nmの厚さの金属配線と、
を含む配線基板。
【請求項8】
請求項7に記載の配線基板を含む電磁波制御基板。
【請求項9】
請求項7に記載の配線基板を含む透明導電体。
【請求項10】
請求項7に記載の配線基板を含む集電電極。
【請求項11】
太陽電池の集電電極である請求項10に記載の集電電極。
【請求項12】
基板の表面に、無電解めっきの触媒核を1μm以下の間隔で配置する工程と、
前記触媒核から金属を析出させることにより、前記基板の表面に40〜800nmの厚さの金属層を形成する工程と、
を含む、配線基板用積層体の製造方法。
【請求項13】
基板の表面に、無電解めっきの触媒核を1μm以下の間隔で配置する工程と、
前記触媒核から金属を析出させることにより、前記基板の表面に40〜800nmの厚さの金属層を形成する工程と
前記金属層の表面の少なくとも一部を被覆層で被覆する工程と、
前記被覆層により被覆されていない前記金属層の部分をエッチングにより除去することにより、前記基板上に金属配線を形成する工程と、
を含む、配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−54687(P2011−54687A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200752(P2009−200752)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(390036364)清川メッキ工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】