説明

配線基板

【課題】ペア伝送路を伝播する信号が例えば35GHzを超えるような高周波であったとしても、信号の反射損や挿入損が小さいとともに共振が発生しにくく、信号を正常に伝播させることが可能な配線基板を提供すること。
【解決手段】帯状配線導体のペア80a,80bと外部接続パッドのペア60a,60bとが、ビア導体のペアおよびスルーホール導体のペア41a,41b〜45a,45bを介して接続されているとともにビアホール導体またはスルーホール導体のペア41a,41b〜45a,45bを取り囲む長円形の開口部91a〜96aを有する接地または電源導体層91〜96とを具備して成る配線基板であって、スルーホール導体のペア43a,43bのピッチが外部接続パッドのペア60a,60bのピッチより狭く開口部91a〜96aが絶縁板13の下面より上面側で小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路素子等の半導体素子を搭載するための配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を搭載するための小型の配線基板は、図4に示すように、スルーホール123を有する絶縁板113の上下面にビアホール121,122,124,125を有する複数の絶縁層111、112,114,115が積層されて成る絶縁基板110の表面および内部に配線導体用の複数の導体層131,132,133,134,135,136が配置されているとともにスルーホール123内に被着されたスルーホール導体143およびビアホール121,122,124,125内に被着されたビアホール導体141,142,144,145により上下の配線導体同士が接続された多層配線構造をしている。絶縁基板110の上面中央部には半導体素子Sの電極が半田バンプB1を介して電気的に接続される複数の半導体素子接続パッド150が形成されており、絶縁基板110の下面には外部電気回路基板の配線導体に半田ボールB2を介して電気的に接続される外部接続パッド160が形成されている。これらの半導体素子接続パッド150と外部接続パッド160とは、所定のもの同士が導体層131,132,133,134,135,136およびスルーホール導体123およびビアホール導体121,122,124,125により互いに電気的に接続されている。さらに、最上層の絶縁層111および導体層131の表面には半導体素子接続パッド150の中央部を露出させる開口部を有するソルダーレジスト層171が被着されており、最下層の絶縁層115および導体層136の表面には外部接続パッド160の中央部を露出させる開口部を有するソルダーレジスト層172が被着されている。
【0003】
この従来の配線基板においては、2本の帯状配線導体が対になって互いに差動線路として機能するペア伝送路を備えている。ペア伝送路は、高周波伝送における電気的ロスの少ない形態であり、高周波信号を伝送する伝送路として有用である。
【0004】
ここで、図4に示した従来の配線基板におけるペア伝送路の例を図5に示す。図5は、導体層131,132,133,134,135,136およびスルーホール導体143およびビアホール導体141,142,144,145の一部のみを抜き出したものを示した要部斜視図である。なお、ペア伝送路は通常、その周囲を接地または電源導体層により所定間隔で取り囲まれているが、この図5では、ペア伝送路を構成する信号配線のみを示しており、その周囲の接地または電源導体層は省略している。
【0005】
ペア伝送路は絶縁基板110の上面中央部に互いに隣接して配置された半導体素子接続パッドのペア150a,150bを有している。そしてこの半導体素子接続パッドのペア150a,150bからは細い帯状配線導体のペア180a,180bが絶縁基板110の外周部に向けて所定の間隔で延びている。帯状配線導体180a,180bは、その特性インピーダンスが概ね100Ωとなるように配置されている。そして帯状配線導体のペア180a,180bは、絶縁基板110の外周部において、その間隔がスルーホール導体のペア143a,143bに向けて広がっている。この間隔が広がった部分では、帯状配線導体のペア180a,180bの特性インピーダンスは100Ωよりも大きくなる。そして、帯状配線導体180a,180bの広がった端部がビアホール導体のペア141a,141bおよび142a,142bを介してスルーホール導体のペア143a,143bに接続されている。また、絶縁基板110の下面には、スルーホール導体のペア143a,143bに対応する位置に、スルーホール導体143a,143bのピッチと同じピッチで外部接続パッドのペア160a,160bが配置されている。そしてスルーホール導体143a,143bはビアホール導体のペア144a,144bおよび145a,145bを介して外部接続パッドのペア160a,160bに接続されている。
【0006】
また上述したように、ペア伝送路はその周囲を接地または電源導体層により所定間隔で取り囲まれている。図6(a),(b)はペア伝送路およびそれを取り囲む接地または電源導体層の従来の例を示す要部上面図および要部断面図である。この例では、導体層131,132,133,134,135,136にペア伝送路を取り囲む接地または電源導体層191,192,193,194,195,196を備えている。これらの接地または電源導体層191,192,193,194,195,196には、ペア伝送路におけるビアホール導体のペア141a,141b、142a,142b、144a,144b、145a,145b、スルーホール導体のペア143a,143bおよび外部接続パッドのペア160a,160bを上面視で取り囲む大きさの長円形の開口部191a,192a,193a,194a,195a,196aが形成されている。このような開口部191a,192a,193a,194a,195a,196aを設けることにより、接地または電源導体層191,192,193,194,195,196とペア伝送路の外部接続パッドのペア160a,160bとの間の静電容量が低減され、それにより外部接続用パッドのペア160a,160bにおける信号の反射が抑制されて高周波信号を効率よく外部に伝送することが可能となる。
【0007】
このような従来の配線基板においては、ペア伝送路は、絶縁基板110の上面側をその中央部から外周部に向けて所定間隔で延びるとともに、絶縁基板110の外周部においてスルーホール導体のペア143a,143bに対応する間隔に広がり、そのピッチのままで外部接続パッドのペア160a,160bに接続されていた。すなわち、スルーホール導体143a,143bは外部接続パッドのペア160a,160bと同じピッチであり、そのピッチに対応する間隔まで帯状配線導体のペア180a,180bの間隔を広げる必要があった。そのため、帯状配線導体のペア180a,180bの間隔が広がる部分の長さが長くなるとともに、その端部における間隔が大きくなる。この間隔が大きいと特性インピーダンスの値が大きくなりやすい。
【0008】
ところが上述したように、帯状配線導体のペア180a,180bの間隔が広がる部分では、特性インピーダンスが大きくなるため、この部分の長さが長かったり特性インピーダンスの増大が大きかったりすると、ペア伝送路を伝播する信号の反射損や挿入損が大きくなったり、特定の周波数で共振が発生しやすくなる。したがって、従来の配線基板おいては、ペア伝送路を伝播する信号が例えば10GHzを超えるような高周波となると、信号を正常に伝播させることが困難となる。
【0009】
そこで本願出願人は、先に特願2010−173079において、ペア伝送路におけるスルーホール導体のピッチを外部接続パッドのピッチよりも狭いものとすることにより、スルーホール導体に接続される帯状配線導体の間隔がスルーホール導体のピッチに対応して広がる部分の長さを短くするとともに広がる間隔も小さくし、この部分での特性インピーダンスの増大を小さくした配線基板を提案した。この配線基板によると、ペア伝送路を伝播する信号が例えば10GHzを超えるような高周波であったとしても、信号の反射損や挿入損が小さいとともに共振が発生しにくく、信号を正常に伝播させることが可能となった。
【0010】
しかしながら、特願2010−173079で提案した配線基板においても、ペア伝送路を伝播する信号の周波数が35GHzを超える領域では信号の反射損や挿入損が増加して例えばペア伝送路に40GHzや50GHzの信号を伝播させると、信号を良好に伝播させることが困難であることが分かった。これは、ペア伝送路を伝播する信号の周波数が35GHzを超えると、ペア伝送路におけるビアホール導体やスルーホール導体のインダクタンス成分が増大し、そのため信号の反射損や挿入損が増化するためと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−289094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、ペア伝送路を伝播する信号が例えば35GHzを超えるような高周波であったとしても、信号の反射損や挿入損が小さいとともに共振が発生しにくく、信号を正常に伝播させることが可能な配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の配線基板は、スルーホールを有する絶縁板の上下面にビアホールを有する複数の絶縁層が積層されて成る絶縁基板と、前記絶縁基板の上面側の前記絶縁層の上面を前記絶縁基板の中央部から外周部にかけて互いに隣接して延在し、前記外周部において互いの間隔が広がる帯状配線導体のペアと、該帯状配線導体のペアの前記外周部側の端部に対応して設けられた互いに隣接する前記スルーホール内に被着されており、前記帯状配線導体のペアと前記絶縁基板の上面側のビアホール内に被着されたビアホール導体のペアを介して電気的に接続されたスルーホール導体のペアと、前記絶縁基板の下面の前記スルーホール導体のペアに対応する位置に互いに隣接して被着されており、前記スルーホール導体のペアに前記絶縁基板の下面側のビアホール内に被着されたビアホール導体のペアを介して電気的に接続された外部接続パッドのペアと、前記絶縁板の上下面および前記帯状配線導体のペアと前記絶縁板との間および前記外部接続パッドのペアと前記絶縁板との間に配設されており、前記スルーホール導体のペアまたは前記ビアホール導体のペアを取り囲む長円形の開口部を有する接地または電源導体層とを具備して成る配線基板であって、前記スルーホール導体のペアのピッチが前記外部接続パッドのペアのピッチよりも狭いとともに、前記開口部の大きさが前記絶縁板の下面側より上面側で小さいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の配線基板によれば、前記スルーホール導体のペアのピッチが前記外部接続パッドのペアのピッチよりも狭いことから、これに接続される帯状配線導体の間隔がスルーホール導体のピッチに対応して広がる部分の長さが短くなるとともに広がる間隔も小さくなり、この部分での特性インピーダンスの増大を小さくできる。さらにビアホール導体のペアまたはスルーホール導体のペアを取り囲むように接地または電源導体層に設けられた長円形の開口部の大きさを絶縁板の下面側よりも上面側で小さいものとすることにより、外部接続パッドと絶縁板との間に存在する接地または電源導体層との間の静電容量を低減して外部接続パッドのペアにおける信号の反射を抑制するとともに、絶縁板の上面側ではビアホール導体のペアやスルーホール導体のペアと接地または電源導体層との間の静電容量を増加させることにより35GHzを超える周波数におけるビアホール導体のペアおよびスルーホール導体のペアのインダクタンスの増大を相殺することができる。したがって、ペア伝送路を伝播する信号が例えば35GHzを超えるような高周波であったとしても、信号の反射損や挿入損が小さいとともに共振が発生しにくく、信号を正常に伝播させることが可能な配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の配線基板の実施形態の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示す配線基板のペア伝送路を構成する導体層ならびにビアホール導体およびスルーホール導体のみを部分的に抜き出して示した要部斜視図である。
【図3】図3(a),(b)は、図2に示すペア伝送路およびそれを取り囲む接地または電源導体層を示す要部平面図およびその断面図である。
【図4】図4は、従来の配線基板を示す概略断面図である。
【図5】図5は、図4に示す配線基板のペア伝送路を構成する導体層ならびにビアホール導体およびスルーホール導体のみを部分的に抜き出して示した要部斜視図である。
【図6】図6(a),(b)は、図6に示すペア伝送路およびそれを取り囲む接地または電源導体層を示す要部平面図およびその断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の配線基板における実施形態の一例を説明する。本例の配線基板は、図1に示すように、スルーホール23を有する絶縁板13の上下面にビアホール21,22,24,25を有する複数の絶縁層11、12,14,15が積層されて成る絶縁基板10の表面および内部に配線導体用の複数の導体層31,32,33,34,35,36が配置されているとともにスルーホール23内に被着されたスルーホール導体43およびビアホール21,22,24,25内に被着されたビアホール導体41,42,44,45により上下の配線導体同士が接続された多層配線構造をしている。絶縁基板10の上面中央部には半導体素子Sの電極が半田バンプB1を介して電気的に接続される複数の半導体素子接続パッド50が形成されており、絶縁基板10の下面には外部電気回路基板の配線導体に半田ボールB2を介して電気的に接続される外部接続パッド60が形成されている。これらの半導体素子接続パッド50と外部接続パッド60とは、所定のもの同士が導体層31,32,33,34,35,36およびスルーホール導体23およびビアホール導体21,22,24,25により互いに電気的に接続されている。さらに、最上層の絶縁層11および導体層31の表面には半導体素子接続パッド50の中央部を露出させる開口部を有するソルダーレジスト層71が被着されており、最下層の絶縁層15および導体層36の表面には外部接続パッド60の中央部を露出させる開口部を有するソルダーレジスト層72が被着されている。
【0017】
絶縁板13は、配線基板のコア基板となる部材であり、例えばガラス繊維束を縦横に織り込んだガラス織物にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させて成り、厚みが0.3〜1.5mm程度であり、その上面から下面にかけて直径が0.1〜0.3mm程度の複数のスルーホール23を有している。そして、その上下面には導体層33,34が被着されており、スルーホール23の内面にはスルーホール導体43が被着されている。なお、スルーホール導体43が被着されたスルーホール23内は樹脂により充填されている。
【0018】
このような絶縁板13は、ガラス織物に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させた絶縁シートを熱硬化させた後、これに上面から下面にかけてスルーホール23をドリル加工することにより製作される。なお、絶縁板13上下面の導体層33,34は、絶縁板13用の絶縁シートの上下全面に厚みが3〜50μm程度の銅箔を貼着しておくとともに、この銅箔をシートの硬化後にエッチング加工することにより所定のパターンに形成される。また、スルーホール23内面のスルーホール導体43は、スルーホール23内面に無電解めっき法および電解めっき法により厚みが3〜50μm程度の銅めっき膜を析出させることにより形成される。なお、スルーホール23内を樹脂により充填するには、スルーホール導体43が形成されたスルーホール23内に未硬化のペースト状の熱硬化性樹脂をスクリーン印刷法により充填し、その後、充填された樹脂を熱硬化させる方法が採用される。
【0019】
絶縁板13の上下面に積層された各絶縁層11,12,14,15は、ビルドアップ絶縁層であり、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に酸化珪素粉末等の無機絶縁物フィラーを30〜70質量%程度分散させた絶縁材料から成る。絶縁層11,12,14,15は、それぞれの厚みが20〜60μm程度であり、各層の上面から下面にかけて直径が30〜100μm程度の複数のビアホール21,22,24,25を有している。ビアホール21,22,24,25内には、ビアホール導体41,42,44,45がそれぞれ充填されており、これらのビアホール導体41,42,44,45を介して導体層31,32,33,34,35,36の所定の配線パターン同士を電気的に接続することにより高密度配線が立体的に形成可能となっている。このような各絶縁層11,12,14,15は、厚みが20〜60μm程度の未硬化の熱硬化性樹脂から成る絶縁フィルムを絶縁板13の上下面に貼着し、これを熱硬化させるとともにレーザ加工によりビアホール22,24を穿孔し、さらにその上に同様にして次の絶縁層11,15を順次積み重ねることによって形成される。なお、各絶縁層11,12,14,15の表面に被着された導体層31,32,35,36およびビアホール21,22,24,25内に充填されたビアホール導体41,42,44,45は、各絶縁層11,12,14,15を形成する毎に各絶縁層11,12,14,15の表面およびビアホール21,22,24,25内に5〜50μm程度の厚みの銅めっき膜を公知のセミアディティブ法等のパターン形成法により所定のパターンに被着させることによって形成される。
【0020】
また、ソルダーレジスト層71,72は、例えばアクリル変性エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂にシリカやタルク等のフィラーを含有させて成り、上面側のソルダーレジスト層71であれば、半導体素子接続パッド50の中央部を露出させる開口部を有しているとともに、下面側のソルダーレジスト層72であれば、外部接続パッド60の中央部を露出させる開口部を有している。このようなソルダーレジスト層71,72は、その厚みが10〜50μm程度であり、感光性を有するソルダーレジスト層71,72用の未硬化樹脂ペーストをロールコーター法やスクリーン印刷法を採用して絶縁層11,15の上に塗布し、これを乾燥させた後、露光および現像処理を行なって半導体素子接続パッド50や外部接続パッド60の中央部を露出させる開口部を形成した後、これを熱硬化させることによって形成される。
【0021】
ここで、図1に示した本例の配線基板におけるペア伝送路の例を図2に示す。図2は、導体層31,32,33,34,35,36およびスルーホール導体43およびビアホール導体41,42,44,45の一部のみを抜き出したものを示した要部斜視図である。なお、ペア伝送路は通常、その周囲を接地または電源導体層により所定間隔で取り囲まれているが、この図2では、ペア伝送路を構成する信号配線のみを示しており、その周囲の接地または電源導体層は省略している。
【0022】
本例のペア伝送路は、絶縁基板10の上面中央部に互いに隣接して配置された半導体素子接続パッドのペア50a,50bと、絶縁基板10の下面外周部に互いに隣接して配置された外部接続パッドのペア60a,60bとを有している。そしてこれらの半導体素子接続パッドのペア50a,50bと外部接続パッドのペア60a,60bとの間が、帯状配線導体のペア80a,80b、ビアホール導体のペア41a,41b、42a,42b、44a,44b、45a,45b、スルーホール導体のペア43a,43b、接続ランドのペア91a,91b、92a,92bを介して互いに電気的に接続されている。なお、本例のペア伝送路においては、外部接続パッドのペア60a,60bのピッチよりもスルーホール導体のペア43a,43bのピッチが狭いものとなっており、そのことが重要である。
【0023】
半導体素子接続パッドのペア50a,50bは、その直径が100〜200μm程度の概ね円形であり、互いに110〜250μm程度のピッチで隣接している。そしてこの半導体素子接続パッドのペア50a,50bからは細い帯状配線導体のペア80a,80bが絶縁基板10の外周部に向けて所定の間隔で延びている。帯状配線導体80a,80bは、その厚みが10〜20μm、幅が20〜30μm、互いの間隔が30〜75μm程度であり、その特性インピーダンスが概ね100Ωとなるように配置されている。そして帯状配線導体のペア80a,80bは、絶縁基板10の外周部において、その間隔がスルーホール導体のペア43a,43bに向けて250〜500μm程度となるように広がっている。この間隔が広がった部分では、帯状配線導体のペア80a,80bの特性インピーダンスは100Ωよりも大きくなる。しかしながら、広がる間隔が250〜500μmであり、あまり広くないことから、従来と比較して特性インピーダンスの増大はそれほど大きなものとはならない。また、広がる部分の長さもそれほど長いものとはならない。
【0024】
帯状配線導体80a,80bの広がった端部の下面は、ビアホール導体のペア41a,41bおよび42a,42bを介してスルーホール導体のペア43a,43bに接続されている。スルーホール導体のペア43a,43bは、その直径が100〜150μm程度であり、互いの間隔が350〜600μm程度である。この直径と互いの間隔はスルーホール導体のペア43a,43bの特性インピーダンスが概ね100Ωとなるように設定されているが、直径は従来のものより小さく、間隔は従来のものよりも狭くなっている。なお、スルーホール導体のペア43a,43bが形成されるスルーホール23の直径のみを、その他のスルーホール23の直径よりも小さいものとすることが好ましい。
【0025】
スルーホール導体のペア43a,43bの下端には、ビアホール導体のペア44a,44bが接続されており、このビアホール導体のペア44a,44bの下端には導体層35により形成された接続ランドのペア49a,49bが接続されている。接続ランドのペア49a,49bは、スルーホール導体のペア43a,43bの下方から外部接続パッド60a,60bへ向かう方向に互いの間隔が500〜1000μm程度となるように延びており、その外側端部がビアホール導体のペア45a,45bを介して外部接続パッドのペア60a,60bに接続されている。外部接続パッドのペア60a,60bのペアはその直径が300〜500μm程度の概ね円形であり、互いに500〜1000μmのピッチで隣接している。
【0026】
本発明においては、上述したように、外部接続パッドのペア60a,60bのピッチよりもスルーホール導体のペア43a,43bのピッチが狭いものとなっている。それにより、帯状配線導体のペア80a,80bが絶縁基板10の外周部でスルーホール導体のペア43a,43bに向けて広がる部分の長さが短くなるとともに広がる間隔も小さくなり、この部分での特性インピーダンスの増大も小さくできる。
【0027】
次に、図3(a),(b)に上述したペア伝送路およびそれを取り囲む接地または電源導体層を要部上面図および要部断面図で示す。図3に示すように、導体層31,32,33,34,35,36にはペア伝送路を取り囲むようにして接地または電源導体層91,92,93,94,95,96が配設されている。これらの接地または電源導体層91,92,93,94,95,96には、ペア伝送路におけるビアホール導体のペア41a,41b、42a,42b、44a,44b、45a,45b、スルーホール導体のペア43a,43bおよび外部接続パッドのペア60a,60bを取り囲む長円形の開口部91a,92a,93a,94a,95a,96aが形成されている。
【0028】
そして本例の配線基板においては、これらの開口部91a,92a,93a,94a,95a,96aのうち、絶縁板13の上面側の開口部92a,93aが下面側の開口部94a,95aに比べて小さくなっている。具体的には、例えば下面側の開口部94a,95aは外部接続パッドのペア60a,60bをつないだ長円形の領域よりも100μm程度ずつ大きな長円形であり、上面側の開口部92a,93aはこれらが取り囲むビアホール導体のペア42a,42bまたはスルーホール導体のペア43a,43bをつないだ長円形の領域よりも50μm程度ずつ大きな長円形である。なお、ここでいうビアホール導体42a,42bやスルーホール導体43a,43bには、これらに接続されたランドを含むものとする。
【0029】
このように、外部接続パッド60a,60bと絶縁板13との間の接地または電源導体層94,95に、外部接続パッドのペア60a,60bをつないだ長円形の領域よりも100μm程度ずつ大きな長円形の開口部94a,95aを設けることにより、外部接続パッドのペア60a,60bと接地または電源導体層94,95との間の静電容量を低減して外部接続パッドのペア60a,60bにおける信号の反射を抑制することができる。また、絶縁板13の上面側の開口部92a,93aを小さいものとすることにより、絶縁板13の上面側におけるビアホール導体のペア42a,42bおよびスルーホール導体のペア43a,43bと接地または電源導体層92,93との間の間隔が狭まるので両者間の静電容量が増加する。この部分の静電容量が増加することにより、ペア伝送路を伝播する信号が35GHzを超える周波数の場合に増大するビアホール導体のペア42a,42bおよびスルーホール導体のペア43a,43bのインダクタンスの増大を相殺することができる。したがって、ペア伝送路を伝播する信号が例えば35GHzを超えるような高周波であったとしても、信号の反射損や挿入損が小さいとともに共振が発生しにくく、信号を正常に伝播させることが可能な配線基板を提供することができる。
【符号の説明】
【0030】
10・・・絶縁基板
11,12,14,15・・・絶縁層
13・・・絶縁板
21,22,24,25・・・ビアホール
23・・・スルーホール
41a,41b、42a,42b、44a,44b、45a,45b・・・ビアホール導体のペア
43a,43b・・・スルーホール導体のペア
60a,60b・・・外部接続パッドのペア
80a,80b・・・帯状配線導体のペア
91,92,93,94,95,96・・・接地または電源導体層
91a,92a,93a,94a,95a,96a・・・開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホールを有する絶縁板の上下面にビアホールを有する複数の絶縁層が積層されて成る絶縁基板と、前記絶縁基板の上面側の前記絶縁層の上面を前記絶縁基板の中央部から外周部にかけて互いに隣接して延在し、前記外周部において互いの間隔が広がる帯状配線導体のペアと、該帯状配線導体のペアの前記外周部側の端部に対応して設けられた互いに隣接する前記スルーホール内に被着されており、前記帯状配線導体のペアと前記絶縁基板の上面側のビアホール内に被着されたビアホール導体のペアを介して電気的に接続されたスルーホール導体のペアと、前記絶縁基板の下面の前記スルーホール導体のペアに対応する位置に互いに隣接して被着されており、前記スルーホール導体のペアに前記絶縁基板の下面側のビアホール内に被着されたビアホール導体のペアを介して電気的に接続された外部接続パッドのペアと、前記絶縁板の上下面および前記帯状配線導体のペアと前記絶縁板との間および前記外部接続パッドのペアと前記絶縁板との間に配設されており、前記スルーホール導体のペアまたは前記ビアホール導体のペアを取り囲む長円形の開口部を有する接地また電源導体層とを具備して成る配線基板であって、前記スルーホール導体のペアのピッチが前記外部接続パッドのペアのピッチよりも狭いとともに、前記開口部の大きさが前記絶縁板の下面側より上面側で小さいことを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−99587(P2012−99587A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244852(P2010−244852)
【出願日】平成22年10月30日(2010.10.30)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】