説明

配膳用トレイおよびその製造方法

【課題】 保管時等にトレイの載置部分に荷重がかかった場合であっても、表面が反り曲がって変形しにくく耐久性や耐衝撃性に優れ、形態安定性も良好な配膳用トレイ、およびそれを合理的に製造する方法を提供すること。
【解決手段】 射出成形金型内のキャビティ内の各平面部分において、フラット形態を保持する一対の前記フラットフィルム2・2をそれぞれ接合させて略平行に配置し、溶融状態の樹脂材料Pを前記一対のフラットフィルム2・2間に射出して、この溶融した樹脂材料Pを各フラットフィルム2の表面に圧接かつ熱融着せしめ、当該樹脂材料Pを硬化せしめることにより、これら両部材を接合一体化せしめてトレイ本体1を作製し、このトレイ本体1の載置板部11を両フラットフィルム2・2により両面から挟み込むことによって、当該載置板部11の反り曲がりを防止するという技術的手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配膳用のトレイの改良、更に詳しくは、保管時等にトレイの載置部分に荷重がかかった場合であっても、表面が反り曲がって変形しにくく耐久性や耐衝撃性に優れたトレイを簡単に製造することができる配膳用トレイおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、幼稚園や学校、病院、老人養護施設などの食事においては、配膳したおかずなどを入れた複数の食器を一つのトレイに載置して運搬しており、かかる配膳用のトレイとしては、プラスチック製の平板部材が広く用いられている。
【0003】
従来、かかるトレイの材料としては、成形性に優れていることから、熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene-Terephthalate)が採用されることが多い。
【0004】
しかしながら、このようなPET製品にあっては、殺菌保管庫において乾燥するなどの目的で、トレイをバケットなどに収容しておく際には、重ね合わせたトレイの上から別の食器類を次々と載せていくことが多く、このような荷重がかかった状態にしておくと、比較的肉薄な平板状の載置部分が反り曲がって変形し易く、耐久性に乏しいという問題があった。
【0005】
また、トレイの片面に保護用のインサートフィルムを接着した食器類も開示されているが(例えば、特許文献1参照)、延伸したフィルムを食器類の曲面や隅角などの複雑な外郭形状に合致させるためには、フィルムの加工が困難で製造コストがかかるとともに屈曲部分が破損し易く、更に、片面のみの接着では、食器躯体が薄手のフィルムごと反り曲がってしまい、反り曲がりを効果的に防止することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−248041号公報(第3−8頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の配膳用トレイに上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、保管時等にトレイの載置部分に荷重がかかった場合であっても、表面が反り曲がって変形しにくく耐久性や耐衝撃性に優れ、形態安定性も良好な配膳用トレイ、およびそれを合理的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、食器等を載置して運搬するためのプラスチック製の配膳用トレイを製造するにあたり、トレイ本体1の材料として少なくともポリエチレンテレフタレートを含有する熱可塑性の樹脂材料Pを用いるとともに、ポリエチレンテレフタレートを使用材料とする平板状のフィルム基材を、互いに直交する二軸方向に延伸してフラットフィルム2を作製する一方、射出成形金型内のキャビティには、前記トレイ本体1の載置板部11に該当するフラットな平面部分が形成されており、このキャビティ内の各平面部分において、フラット形態を保持する一対の前記フラットフィルム2・2をそれぞれ接合させて略平行に配置し、金型内の温度をフラットフィルム2の融点未満にした状態で、溶融状態の樹脂材料Pを前記一対のフラットフィルム2・2間に射出して、この溶融した樹脂材料Pを各フラットフィルム2の表面に圧接かつ熱融着せしめ、
然る後、当該樹脂材料Pを硬化せしめることにより、これら両部材を接合一体化せしめてトレイ本体1を作製し、このトレイ本体1の載置板部11を両フラットフィルム2・2により両面から挟み込むことによって、当該載置板部11の反り曲がりを防止するという技術的手段を採用したことによって、配膳用トレイの製造方法を完成させた。
【0010】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、金型内部における平面部分が鉛直方向に亙り形成されている金型を用いるという技術的手段を採用した。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、トレイ本体1の載置板部11の周縁に立壁部12を形成するという技術的手段を採用した。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、トレイ本体1の樹脂材料Pに、ポリブチレンテレフタレートを混合することにより耐衝撃性を向上せしめるという技術的手段を採用した。
【0013】
また、本発明は、食器等を載置して運搬するためのプラスチック製の配膳用トレイであって、
トレイ本体1は少なくともポリエチレンテレフタレートが含有した熱可塑性の樹脂材料により形成され、かつ、ポリエチレンテレフタレートを使用材料とする平板状のフィルム基材を、互いに直交する二軸方向に延伸された一対の略平行なフラットフィルム2・2をフラット形態を保持した状態で前記トレイ本体1の載置板部11に接合一体化して、
この載置板部11が両フラットフィルム2・2により両面から挟み込むことにより、当該載置板部11の反り曲がりを防止するという技術的手段を採用したことによって、配膳用トレイを完成させた。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、トレイ本体の材料として少なくともポリエチレンテレフタレートを含有する熱可塑性の樹脂材料を用いるとともに、ポリエチレンテレフタレートを使用材料とする平板状のフィルム基材を、互いに直交する二軸方向に延伸してフラットフィルムを作製する一方、射出成形金型内のキャビティには、前記トレイ本体の載置板部に該当するフラットな平面部分が形成されており、このキャビティ内の各平面部分において、フラット形態を保持する一対の前記フラットフィルムをそれぞれ接合させて略平行に配置し、金型内の温度をフラットフィルムの融点未満にした状態で、溶融状態の樹脂材料を前記一対のフラットフィルム間に射出して、この溶融した樹脂材料を各フラットフィルムの表面に圧接かつ熱融着せしめ、然る後、当該樹脂材料を硬化せしめることにより、これら両部材を接合一体化せしめてトレイ本体を作製することによって、
このトレイ本体の載置板部を両フラットフィルムにより両面から挟み込んで、当該載置板部の反り曲がりを防止することができる。
【0015】
したがって、本発明の配膳用トレイによれば、保管時等にトレイの載置部分に荷重がかかった場合であっても、表面が反り曲がって変形しにくく耐久性や耐衝撃性に優れているので、幼稚園や学校、病院、老人養護施設などでも安心して使用することができる。
【0016】
また、本発明の製造方法によれば、上記の如き配膳用トレイを非常に合理的かつ低コストで製造することができることから、実用的利用価値は頗る高いものがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の配膳トレイの構造を表わす斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の配膳トレイを表わす断面図である。
【図3】本発明の実施形態のフラットフィルムの製造工程を表わす斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の配膳トレイの製造工程を表わす断面図である。
【図5】本発明の実施形態の配膳トレイの製造工程を表わす断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0019】
本発明の実施形態を図1から図5に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものはトレイ本体であり、このトレイ本体1は、少なくともポリエチレンテレフタレートを含有する熱可塑性の樹脂材料Pを用いて作製され、本実施形態では、トレイ本体1の載置板部11の周縁の全体に亙る立壁部12を形成する(図1および図2参照)。
【0020】
また、符号2で指示するものはフラットフィルムであり、このフラットフィルム2は、ポリエチレンテレフタレートを使用材料とする平板状のフィルム基材20を、互いに直交する二軸方向に延伸して作製する(図3参照)。
【0021】
しかして、本発明は、椀や皿などの食器を載置して運搬するためのプラスチック製の配膳用トレイであり、具体的な製造方法を以下に説明する。まず、トレイ本体1の材料として少なくともポリエチレンテレフタレートを含有する熱可塑性の樹脂材料Pを用いる。
【0022】
本実施形態では、トレイ本体1の樹脂材料Pに、ポリエチレンテレフタレートに加え、ポリブチレンテレフタレート(PBT:Polybuthylene-Terephthalate)を混合する。こうすることにより、耐衝撃性を向上させることができる。ちなみに、ポリエチレンテレフタレートの融点は約254℃であり、ポリブチレンテレフタレートの融点は約219℃であるが、これらの材料が混合してアロイ化することにより、融点は250℃付近になる。
【0023】
また、ポリエチレンテレフタレートを使用材料とする平板状のフィルム基材20を、互いに直交する二軸方向に延伸してフラットフィルム2を作製する(図3参照)。本実施形態では、フラットフィルム2の厚さを約150〜250μmにするとともに、およそA4サイズ(210mm×297mm)の大きさに成形する。なお、このように二軸延伸させたフィルムは、延伸工程により分子配向が引き揃えられるので、耐熱性や耐衝撃性などの強度が向上するとともに、フィルム融点をポリエチレンテレフタレートの通常の融点(約254℃)よりも約5℃上昇させることができる。
【0024】
次いで、図4に示すように、射出成形金型M内のキャビティには、前記トレイ本体1の載置板部11に該当するフラットな平面部分が形成されている。
【0025】
そして、このキャビティ内の各平面部分において、フラット形態を保持する一対の前記フラットフィルム2・2をそれぞれ接合させて略平行に配置する。本実施形態では、金型内部における平面部分が鉛直方向に亙り形成されている金型を用いる。この際、金型内面に吸気孔を形成して、フラットフィルム2の背面側を吸引することによって金型壁面に付着させて配置することができる。
【0026】
そして、金型内の温度をフラットフィルム2の融点未満にした状態(本実施形態では、約110℃)で、溶融状態の樹脂材料Pを前記一対のフラットフィルム2・2間に射出して、この溶融した樹脂材料Pを各フラットフィルム2の表面に圧接かつ熱融着せしめる(図5参照)。
【0027】
然る後、冷却して当該樹脂材料Pを硬化せしめることにより、これら両部材を接合一体化せしめてトレイ本体1を作製することができる。
【0028】
本実施形態では、トレイ本体1の載置板部11の厚みは約2mmであるが、このように、このトレイ本体1の載置板部11を両フラットフィルム2・2により両面から挟み込むことによって、当該載置板部11の反り曲がりを確実に防止することができる。
【0029】
本発明は概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、トレイ本体1の樹脂材料Pに、ポリエチレンテレフタレートに加え、ポリブチレンナフタレート(PBN:Polybuthylene-Naphthalate)を混合することもできるし、適宜、タルクや炭酸カルシウム、シリカなどの無機フィラを混合することもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0030】
1 トレイ本体
11 載置板部
P 樹脂材料
2 フラットフィルム
20 フィルム基材
M 成形金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器等を載置して運搬するためのプラスチック製の配膳用トレイを製造するにあたり、
トレイ本体1の材料として少なくともポリエチレンテレフタレートを含有する熱可塑性の樹脂材料Pを用いるとともに、
ポリエチレンテレフタレートを使用材料とする平板状のフィルム基材を、互いに直交する二軸方向に延伸してフラットフィルム2を作製する一方、
射出成形金型内のキャビティには、前記トレイ本体1の載置板部11に該当するフラットな平面部分が形成されており、
このキャビティ内の各平面部分において、フラット形態を保持する一対の前記フラットフィルム2・2をそれぞれ接合させて略平行に配置し、
金型内の温度をフラットフィルム2の融点未満にした状態で、溶融状態の樹脂材料Pを前記一対のフラットフィルム2・2間に射出して、この溶融した樹脂材料Pを各フラットフィルム2の表面に圧接かつ熱融着せしめ、
然る後、当該樹脂材料Pを硬化せしめることにより、これら両部材を接合一体化せしめてトレイ本体1を作製し、
このトレイ本体1の載置板部11を両フラットフィルム2・2により両面から挟み込むことによって、当該載置板部11の反り曲がりを防止したことを特徴とする配膳用トレイの製造方法。
【請求項2】
金型内部における平面部分が鉛直方向に亙り形成されている金型を用いることを特徴とする請求項1記載の配膳用トレイの製造方法。
【請求項3】
トレイ本体1の載置板部11の周縁に立壁部12を形成することを特徴とする請求項1または2記載の配膳用トレイの製造方法。
【請求項4】
トレイ本体1の樹脂材料Pに、ポリブチレンテレフタレートを混合することにより耐衝撃性を向上せしめることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の配膳用トレイの製造方法。
【請求項5】
食器等を載置して運搬するためのプラスチック製の配膳用トレイであって、
トレイ本体1は少なくともポリエチレンテレフタレートが含有した熱可塑性の樹脂材料により形成され、かつ、ポリエチレンテレフタレートを使用材料とする平板状のフィルム基材を、互いに直交する二軸方向に延伸された一対の略平行なフラットフィルム2・2をフラット形態を保持した状態で前記トレイ本体1の載置板部11に接合一体化して、
この載置板部11が両フラットフィルム2・2により両面から挟み込まれることにより、当該載置板部11の反り曲がりを防止したことを特徴とする配膳用トレイ。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−201772(P2010−201772A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49411(P2009−49411)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(390014029)株式会社八木熊 (31)
【Fターム(参考)】