説明

配送車の運行管理システム及びそれに用いる携帯端末

【構成】 配送センターの端末と運転手の携帯電話とをデータ通信で接続し、携帯電話での常駐ソフトウェアで実現される運行管理部に、入門許可時間や配送先等のデータを送信し、運転手が携帯電話の画面で確認できるようにする。配送センターの端末は携帯電話との通信時にその位置を求めて到着時間を予測して荷揃えし、入門ゲートを通過したことをカメラでナンバープレートを撮像して確認し、バースへ誘導する。
【効果】 配送センターなどから運転手の携帯電話に、データ通信で直接に運行の指示を与えることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は配送車の運行管理に関し、特に荷積み側や荷下ろし側の固定端末と配送車側の携帯端末との間のデータ通信で、運行の指示や管理が出来るようにしたシステムと、それに用いる携帯端末とに関する。
【背景技術】
【0002】
配送センターなどからトラックなどの配送車への運行指示は、運送会社の固定端末を経由して、運送会社の固定電話から運転手の携帯電話への通話で行われる例が多い。しかしながらこれでは配送センターなどから運転手への直接の指示が出来ず、また運転しながら携帯電話で通話することができないため、緊急連絡などを行うことが出来なかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、配送元の固定端末と配送車の携帯端末との間での、データ通信により的確な運行指示を行えるようにすることにある。
請求項2の発明での追加の課題は、配送車の到着時刻を配送元で予測し、到着後速やかに荷積みできるようにすることにある。
請求項3の発明での追加の課題は、配送元に予定時刻よりも早い時間帯に運送車が集中することを防止することにある。
請求項4の発明での追加の課題は、上記の課題を達成するのに適した携帯端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の配送車の運行管理システムは、少なくとも配送元の固定端末と配送車内の携帯端末とを含むシステムであって、前記各端末にデータ通信手段を設けると共に、前記携帯端末には、前記固定端末からのデータ通信に対して常時応答可能で、かつ固定端末から送出された運行指示を携帯端末の表示手段に表示自在な運行管理手段を設けたことを特徴とする。
【0005】
好ましくは、前記固定端末に、携帯端末の位置を求めるための手段と、求めた位置に応じて出荷物品の荷揃えを指示するための手段とを設ける。
特に好ましくは、配送元の固定端末から前記携帯端末の運行管理手段に入門時間を指示するようにすると共に、配送元の入門ゲートに配送車を識別するための手段を設けて、配送車の到着が入門時間から所定時間以上早い場合、入門ゲートを開けないようにする。
【0006】
またこの発明の配送車の運行管理用の携帯端末は、配送元の固定端末のデータ通信手段とデータ通信するための携帯端末であって、データ通信手段と、前記固定端末からのデータ通信に対して常時応答可能で、かつ固定端末から送出された運行指示を携帯端末の表示手段に表示自在な運行管理手段、とを設けたことを特徴とする。
【0007】
携帯端末は例えば携帯電話や自動車電話とし、入門時間を指示するとは文字通りに時刻を指定することや入門すべき時間帯を指示することをいう。配送車を識別することは、配送車内の携帯端末を識別することも含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
この発明の配送車の運行管理システムや携帯端末では、配送元の固定端末と配送車内の携帯端末とのデータ通信で、配送元から配送車に直接に運行の指示が出来る。この指示はデータ通信なので、運転手が電話を取り上げて通話する必要がない。また携帯端末側は固定端末からのデータ送信に常時応答可能なので、固定端末は運行指示の変更などを任意の時点で送信して、直ちに表示させることが出来る。そして固定端末からの運行指示は、携帯端末の表示部に表示されるので、運転手は停車中の手の空いた時に運行指示を読むことができる。
【0009】
固定端末は携帯端末の位置を求めることが出来るので、これから配送車の到着までの時間を予測できる。そこで配送車の位置に応じて出荷物品の荷揃えなどの準備作業を行うと、配送車が到着すると速やかに荷積みを行うことができる。
また好ましくは、配送車に入門時間を指示して、これに対して所定時間以上早く配送車が到着した場合に入門ゲートを開けないようにする。そしてこの一方で、配送車が入門時間に到着すると予め荷揃え済みの物品を速やかに荷積みできるようにする。すると配送車には所定の時間に配送元に到着するようにとの強いインセティブが働き、配送車が早過ぎる時間に配送元に集中して、過大な駐車スペースが必要になる、あるいは周囲に渋滞するなどの問題を少なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0011】
図1〜図5に、実施例の配送車の運行管理システム2を示す。各図において、4は配送センターで、配送元の例である。6は配送センターの端末で、地上側の固定端末であり、7は位置データ取得部で、携帯電話14の位置を、例えば通信に介在した地上局の位置から取得する。8は荷揃え指示部で、配送車12の位置に基づいて、自動倉庫16やピッキングエリア18に対して、出荷物品の荷揃えを指示する。9は運送会社の端末で、10は配送先の端末であり、配送センターの固定端末6と同様に構成されている。以下この明細書では、固定端末6,9,10を固定端末と呼ぶ。
【0012】
配送車12は例えばトラックであり、運転手は携帯電話14を備えて、固定端末6,10との間でデータ通信を行うと共に、端末9との間で音声通信やデータ通信を行う。配送先の端末10と携帯電話14間のデータ通信は、配送センターの固定端末6とのデータ通信とほぼ同様で、以下では配送センターの固定端末6とのデータ通信を例に説明する。20はバースで、22は入門ゲートであり、カメラ24を備えて配送車12のナンバープレートを読み取り、固定端末6にナンバープレートを報告して、その指示によりゲートを開閉する。
【0013】
携帯電話14には音声通信部26とデータ通信部28とがあり、運送会社の端末9とは例えば音声通信部26により音声通信し、固定端末6,10とはデータ通信部28によりデータ通信する。データ通信部28には、例えば常駐ソフトウエアや専用のハードウェアや専用のハードウェア資源により構成される運行管理部30を設ける。ここで常駐とは、運転手が特に運行管理部30を呼び出さなくても、固定端末6,10との間のデータ通信が行え、これによって得られたデータを記憶できることを言う。そして運行管理部30は、例えば運転手が携帯電話14を操作し運行管理部30を呼び出すと、固定端末6,10等から受けた運行指示が、スケジュールやメッセージあるいはバース20への誘導画面として、携帯端末の表示画面に表示される。
【0014】
図2に示すように、運行管理部30にはスケジュール管理部32を設けて、固定端末6などから指示された入門の時刻や届け先,品目,数量などのデータを記憶する。メッセージ管理部34は固定端末6からデータ通信されたメッセージを管理する。このメッセージは例えばスケジュールを変更したり補足したりする場合に用いる。車両番号記憶部36は、運転手の手入力などにより、その日運転している配送車12の車両番号などを記憶する。誘導画面表示部38は、入門ゲート22を通過した際に、固定端末6からのデータにより着床すべきバースへの誘導画面を表示する。
【0015】
図3〜図5に、携帯電話14と配送センターの固定端末6との通信を示す。配送センター側で、どの方面のどの届け先に物品を配送するかが定まると、これに応じて依頼する運送会社を決定する。なお運送会社を選択する基準は任意である。配送センターの固定端末6から運送会社の端末9へデータ通信し、入出荷日や方面,届け先,入門時間帯,品目,数量などのデータを通知する。また入門時間帯は届け先が定まると所要走行時間から逆算して決定できる。運送会社の端末9では、運転手の携帯電話14との音声通信などにより空車か実車かなどの状況を確認し、それに基づいて配送センターの固定端末6に対して、どのトラックに依頼された配送作業を割り付けるかを登録し、ここで車両番号と運転手の携帯電話番号とを登録する。またこの一方で音声通信により配送車の運転手に配送作業を指示する。
【0016】
次いで、運転手が携帯電話14の休眠していた運行管理部30を呼び出し活性化すると、運行管理部30はデータ通信により配送センターの固定端末6にログインし、携帯電話の番号や車両番号並びにパスワードなどを通知する。なお車両番号はこの段階で通知しなくても良く、パスワードは運転手が手入力しても良く、あるいは運行管理部30に予め記憶させておいても良い。しかしながら配送センターの固定端末6に第3者の運送会社の運転手がアクセスすることを制限するため、パスワードは日替わりや週替わりなどにして時間と共に変更することが好ましい。
【0017】
携帯電話14の運行管理部30からのログインが完了すると、配送センター4の固定端末6は入門許可時間などを送信する。送信された届け先や入門時間帯,品目,数量などのデータは、運行管理部のスケジュール管理部32に記憶され、例えば運転手が他の画面を呼び出さない限り、携帯電話14の表示画面に表示されている。そして運転手は指定された入門許可時間に合わせて運行する。さらに運送指示の変更などが必要になった場合、配送センターの固定端末6からはデータ通信により連絡情報を送信する。送信された連絡情報はメッセージ管理部34に記憶されて、スケジュール管理部32のデータと共に携帯電話14の画面に表示され、特に緊急連絡の場合、携帯電話14から音声で報知して緊急連絡があることを知らせる。この音声は、携帯電話のいわゆる着信メロディーとは別のものにすることが好ましい。運行管理部30は常駐型なので、これらの過程で固定端末6は任意の時点でデータ送信して、リアルタイムに携帯電話の表示部に運行指示を表示させることが出来る。
【0018】
携帯電話14の位置、従って配送車12の位置は、データ通信を経由する地上局の位置などから、位置データ取得部7で取得することができる。そこで携帯電話14の位置、もしくはこれから求めた到着までの見込み時間から、荷揃え指示部8は自動倉庫やピッキングエリアなどに、所定の荷揃えを行うように指示する。ただし指示済みの入門時間よりも早過ぎる場合には、荷揃えを指示しない。この結果、配送車12が所定の入門時間頃に配送センター4に入門すると、ほとんど待つことなく物品を積み込むことができる。
【0019】
配送センター4に到着した配送車12は、入門ゲート22で例えばカメラ24によりナンバープレートを撮像される。配送車12が所定の入門時間帯に到着した場合、入門ゲート22が開き、それ以外の場合注意を喚起し、所定時間以上早過ぎるとゲートが開かないようにする。また入門ゲート22で、固定端末6は携帯電話14に対して携帯電話番号を問い合わせ、またパスワードの送信を要求し、運転手を確認する。なお入門ゲート22で配送車12を特定する場合、ナンバープレートではなく携帯電話14の電話番号などで特定しても良い。
【0020】
配送車12が入門ゲートを通過すると、配送センターの固定端末6から携帯電話14にバースへの着床を誘導する。例えば誘導画面にバースの配置と指定されたバース番号とを表示する、あるいは正しいバースの手前で音を鳴らすなどである。これによって配送車12は正しいバースに着床して、荷積みを行う。
【0021】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 配送センターの固定端末6と携帯電話14との間で音声通信せずに運行の指示や緊急連絡などを行うことができる。
(2) 運行管理部30は配送センターの固定端末6からのデータ通信に対し常時応答可能で、電子メールを運行指示の送信に用いる場合などのように、メールサーバにアクセスするまで運行指示が読み出されないということがない。また送信された運行指示はリアルタイムに携帯電話の表示画面に表示される。
(3) パスワードの入力により、運転手側が不正に配送センターの固定端末6にアクセスすることを防止できる。
(4) 入門時間を指定し、かつ配送車12が配送センターに接近したことを検出して予め荷揃えを行うので、入門時間頃に到着した配送車12に対しては速やかに荷積みを行うことができる。また指定された入門時間よりも早すぎる時間帯に、配送車12が到着することを防止できる。このため配送センター4に広い駐車場を設ける必要はなく、また配送センター4の周囲で配送車などが渋滞することも防止できる。
(5) 入門から着床すべきバースまで、運転手を誘導することができる。

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例の配送車の運行管理システムでの、端末間の関係を模式的に示す図
【図2】実施例で用いる携帯電話の運行管理部のブロック図
【図3】配送センターの端末に携帯端末側がログインするまでの処理を示す図
【図4】配送センターの端末から携帯端末側への入門許可時間や連絡情報の通知を示す図
【図5】配送センターへの配送車の入門からバースへの着床までの処理を示す図
【符号の説明】
【0023】
2 配送車の運行管理システム
4 配送センター
6 配送センターの端末
7 位置データ取得部
8 荷揃え指示部
9 運送会社の端末
10 配送先の端末
12 配送車
14 携帯電話
16 自動倉庫
18 ピッキングエリア
20 バース
22 入門ゲート
24 カメラ
26 音声通信部
28 データ通信部
30 運行管理部
32 スケジュール管理部
34 メッセージ管理部
36 車両番号記憶部
38 誘導画面表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも配送元の固定端末と配送車内の携帯端末とを含むシステムであって、前記各端末にデータ通信手段を設けると共に、前記携帯端末には、前記固定端末からのデータ通信に対して常時応答可能で、かつ固定端末から送出された運行指示を携帯端末の表示手段に表示自在な運行管理手段を設けたことを特徴とする、配送車の運行管理システム。
【請求項2】
前記固定端末に、携帯端末の位置を求めるための手段と、求めた位置に応じて出荷物品の荷揃えを指示するための手段とを設けたことを特徴とする、請求項1の配送車の運行管理システム。
【請求項3】
配送元の固定端末から前記携帯端末の運行管理手段に入門時間を指示するようにすると共に、配送元の入門ゲートに配送車を識別するための手段を設けて、配送車の到着が入門時間から所定時間以上早い場合、入門ゲートを開けないようにしたことを特徴とする、請求項2の配送車の運行管理システム。
【請求項4】
配送元の固定端末のデータ通信手段とデータ通信するための携帯端末であって、データ通信手段と、前記固定端末からのデータ通信に対して常時応答可能で、かつ固定端末から送出された運行指示を携帯端末の表示手段に表示自在な運行管理手段、とを設けたことを特徴とする、配送車の運行管理用の携帯端末。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−34566(P2007−34566A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215380(P2005−215380)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】