説明

酒粕加工品の製造方法及び酒粕加工品

【課題】 酒粕を微細な粒子に分解処理し、各種の食品、入浴剤、医薬・化粧品原料関係等の多方面に利用することが出来る酒粕加工品を目的とする。
【解決手段】 液状化された酒粕液の中に繊維分解酵素セルラーゼを添加して撹拌機と摩砕機を通過させてエマルダー処理して酒粕繊維を摩砕する。さらに酒粕液を高圧力下で特殊フィルターを通してホモゲナイザー処理を施して、微細粒子の均質化処理をして約30ミクロン以下の均質化された微粒子を有する酒粕加工品を製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒粕加工品の製造方法及びその製造方法で製造された酒粕加工品に係り、特に酒粕を繊維分解すると共に高速回転で酒粕繊維を微細化処理を施すことを特徴とした酒粕加工品の製造方法と、この製造方法で製造された微細な粒子を有する酒粕加工品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酒粕は、酵母菌体、麹菌体、エチルアルコールを始めとするアルコール類、酢酸イソアミル、カブロン酸エチル等の各種エステル類、乳酸、コハク酸、酢酸等の有機酸、ビタミンB群、グリシン、グルタミン酸等のアミノ酸、生活活性物質であるグルタチオン等を多量に含有する栄養価の高い代謝産物であるので、最近になって健康食品として、或は入浴剤または化粧品原料として注目されるようになり、各分野に於いて広範に使用されるようになって来ている。
【0003】
また、酒粕を加工する技術としては、例えば、特開平7−213258号公報(特許文献1)、特開2003−235537号公報(特許文献2)、特開2004−346045号公報(特許文献3)、特開2004−261119号公報(特許文献4)等が知られている。
【特許文献1】特開平7−213258号公報
【特許文献2】特開2003−235537号公報
【特許文献3】特開2004−346045号公報
【特許文献4】特開2004−261119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然るに、前述の特許文献1,2,3,4に係る技術を含めて従来の酒粕の加工方法を用いて製造された酒粕の加工食品、化粧料、入浴剤等の原料は、比較的に粒子が大きいので、食品としては食感が悪く、また化粧料、入浴剤の原料としては、他の材料と混合した際にスムーズに混ぜ合せが出来ない等の問題があった。
【0005】
本発明に係る酒粕の製造方法及び酒粕加工品は、前述の従来の問題点に鑑み開発された全く新しい技術であって、特に酒粕液の中に繊維分解酵素を添加して酒粕繊維を分解すると共に、その後に高速回転で酒粕繊維を摩砕して微細化処理して製造する酒粕加工品の製造方法及びその酒粕加工品に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る酒粕加工品の製造方法は、前述の従来の問題点を根本的に改善した全く新しい技術であって、その製造方法の第1発明の要旨は、酒粕液の中に繊維分解酵素を添加して高速回転で酒粕繊維を分解かつ摩砕して微細化処理した後で、該微細化された酒粕液を高圧力下で超微細粒子化と均質化処理を施すことを特徴とした酒粕加工品の製造方法である。
【0007】
本発明の製造方法の第2発明の要旨は、前記酒粕繊維を分解する繊維分解酵素がセルラーゼであることを特徴とした第1発明の酒粕加工品の製造方法である。
【0008】
本発明の製造方法の第3発明の要旨は、前記酒粕繊維を摩砕して微細化処理を施す工程が、容器内に充填された酒粕液と繊維分解酵素との混合液を約3,600rpmの高速回転で酒粕繊維を摩砕することを特徴とした第1発明或は第2発明の酒粕加工品の製造方法である。
【0009】
本発明の製造方法の第4発明の要旨は、前記微細化された酒粕液を高圧力下で約30ミクロン以下の粒子とし、かつその均質化処理を施す工程が、微細化された酒粕液を徐々に加圧しながら高圧力下でフィルターを通して容器壁に噴射することを特徴とした第1発明乃至第3発明の酒粕加工品の製造方法である。
【0010】
本発明に係る酒粕加工品の第1発明の要旨は、繊維分解酵素で酒粕繊維が分解されると共に高速回転で該酒粕繊維が摩砕され、更に高圧力下での噴射処理を経て約30ミクロン以下の微粒子化と均質化処理が施されて構成されることを特徴とした酒粕加工品である。
【0011】
本発明に係る酒粕加工品の第2発明の要旨は、前記酒粕加工品が約30ミクロン以下の酒粕繊維よりなる粒子を持った液状或は粉状を有し、かつ粕汁、調味料、スープ、アイスクリーム、パン、菓子、健康食品等の食品、肥満抑制、血圧降下等の医薬補助品、或は浴用剤または化粧品の補助品等に使用することが出来る第1発明の酒粕加工品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る酒粕加工品の製造方法の第1発明に於いては、酒粕液の中に繊維分解酵素を添加するので、酒粕繊維を細かに分解することが出来る。かつ細かに分解された酒粕繊維を高速回転によって摩砕処理するので、酒粕繊維を著しく微細化することが出来る。
【0013】
さらに、第1発明に於いては、前述のように酒粕繊維が微細化された酒粕液を高圧力下で微細粒子の均質化処理が施されるので、極めて均一で微細粒子よりなるクリーミィな酒粕加工品を製造することが出来る。
【0014】
本発明に係る酒粕加工品の製造方法の第2発明に於いては、前述のように酒粕繊維を分解する繊維分解酵素として、セルラーゼを使用したので、比較的短時間で酒粕繊維を細かに分解することが出来る。また、本発明に使用されるセルラーゼはマセレイテイングエンザイム等の繊維崩壊酵素とも併用して使用することが出来る。
【0015】
本発明に係る酒粕加工品の製造方法の第3発明に於いては、前記繊維分解酵素が混入されて繊維分解された酒粕の混合液を、約3,600rpmの高速で回転させて酒粕繊維を摩砕するので、酒粕繊維を細かに摩砕することが出来る。
【0016】
本発明に係る酒粕加工品の製造方法の第4発明に於いては、前述のように高速回転によって微細化された酒粕液を徐々に加圧しながら高圧力下でフィルターを通して容器に噴射するので、酒粕液内の微細粒子を均質化し、極めてクリーミィな酒粕加工品を製造することが出来る。
【0017】
本発明に係る酒粕加工品の第1発明に於いては、前述のように酒粕繊維が繊維分解酵素によって分解されると共に、高速回転によって酒粕繊維が摩砕され更に高圧力下での噴射処理を経て約30ミクロン以下の微粒子化と均質化処理が施されて構成されるので、この酒粕加工品を食品として使用する場合には極めて食感が良く、また医薬補助品、浴用剤または化粧品の補助品等に使用した場合には、他の材料との混ぜ合わせが容易である等の効果を有する。
【0018】
本発明に係る酒粕加工品の第2発明に於いては、約30ミクロン以下の酒粕繊維よりなる粒子を持った液状或は粉状の酒粕加工品であるので、食品、医薬補助品、浴用剤または化粧品の補助品として極めて有効に使用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る酒粕加工品の製造方法及び酒粕加工品の一実施例を具体的に説明すると次の通りである。図1は本発明に係る酒粕加工品の製造工程を示す簡略ブロック図である。
【0020】
図1に於いて、本発明の酒粕加工品の製造方法を説明すると、本実施例に於いては、先ず板状の酒粕(板粕)を使用し、板粕に対して約3倍の水を加えて加水処理し酒粕をどろどろ状に液状化した。板粕に加水される水は、60℃以下であれば温水でも良い。また、既に液状になっている酒粕は、そのまま使用することが出来る。酒粕液はその後で摩砕処理が施される。
【0021】
次に、約40℃〜50℃に保温することが出来る加温装置付の撹拌機のホールドタンクに、前述のような摩砕処理を施した酒粕液を充填し、さらに繊維分解酵素を、この酒粕液に添加した後で撹拌処理をする。繊維分解酵素としては、セルラーゼY2NC:0.01%、セルラーゼオノズカ12S:0.01%を使用した。
【0022】
前述のように酵素添加と撹拌処理が施された酒粕液を約3,600rpm以上の高速回転で撹拌しながら通過させてエマルダー処理(予備処理)をする。これ等のホールドタンクでの撹拌及びエマルダー処理は、約1.5〜2時間に亘って、高速回転で撹拌摩砕したものをホールドタンクに戻し、所定処理後にさらにエマルダー処理を図1の一点鎖線で示すように3回繰り返して、酒粕繊維を摩砕する。
【0023】
前述のようにエマルダー処理によって酒粕繊維が摩砕された酒粕液を高性能プランジャーポンプと均質バルブとの組合せ機構により、高圧力下で特殊フィルターを通してホモゲナイザー処理(仕上乳化処理)をして、流体分子間に剪断・激突・キャビテーション等の相乗効果を瞬間的に得ることが出来る。このようなホモゲナイザー処理によって約30ミクロン以下の微細粒子の均質な乳化状態をつくり、液体が浮遊或は沈殿することを防止する。このホモゲナイザー処理に使用されるホモゲナイザーのレベルは、加圧25(MP)〜35(MP)の能力を有するものが有効である。
【0024】
前述のようにホモゲナイザー処理されて約30ミクロン以下の均質な微細粒子として乳化した酒粕液は、ホールドタンクに充填され、このホールドタンク内で約90℃で加熱殺菌して酒粕液内に添加された繊維分解酵素を失活させる。その後で酒粕液は、さらに計量充填されて約5℃以下に冷却して酒粕加工品として保存される。
【0025】
また、冷却された酒粕液の酒粕加工品は、金属探知機にかけて、酒粕液内に金属粒子が混入されている場合には除去される。酒粕加工品は液状のまま使用されることも、或は乾燥してパウダー化されて使用されることもある。
【0026】
前記実施例に於いて、液状酒粕の中にセルラーゼを添加する際に、繊維崩壊酵素であるマセレイテイングエンザイムを併用して添加することも可能である。また、前記実施例に於いては、撹拌機及び摩砕機を使用し、これ等に3回通すことによって、処理時間を約2時間以下に短縮したが、これ等の機械を使用せずに、時間を掛けて(約7〜8時間)、繊維分解酵素で液状酒粕を微細化処理することも出来る。
【0027】
前述のような工程を経過して製造された本発明の酒粕加工品は、酒粕繊維が非常に微粒子に分解されており、アイスクリーム基準の30ミクロンをパスしたクリーム状となっているので、加工後に放置しておいても、固形分と水分とが分離する心配がない。
【0028】
前述のような製造方法で製造された酒粕加工品は、パン、洋菓子等の小麦粉を使った製菓関係、甘酒、ジュース、健康食品関係、各種スープ、調味料関係、アイスクリーム関係、水産・蓄肉練製品関係、漬物関係、入浴剤または医薬・化粧品原料関係等に極めて幅広く使用することが出来る。
【0029】
本発明の製造方法で製造した酒粕加工品は、前述のように従来の酒粕の利用とは異なった分野にも幅広く使用することが出来、酒粕を付加価値を有する画期的な材料として使用することが出来る。また、酒粕を発酵加工品の一種として使用することが出来、資源を大切に極めて広範に利用することが出来る特徴を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る酒粕加工品の製造方法は、酒粕のみならず、酵素で分解することが出来る繊維を有する他の食品等にも応用して利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る酒粕加工品の製造工程を示す簡略ブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒粕液の中に繊維分解酵素を添加して高速回転で酒粕繊維を分解かつ摩砕して微細化処理した後で、該微細化された酒粕液を高圧力下で超微細粒子化と均質化処理を施すことを特徴とした酒粕加工品の製造方法。
【請求項2】
前記酒粕繊維を分解する繊維分解酵素がセルラーゼであることを特徴とした請求項1の酒粕加工品の製造方法。
【請求項3】
前記酒粕繊維を摩砕して微細化処理を施す工程が、容器内に充填された酒粕液と繊維分解酵素との混合液を約3,600rpmの高速回転で酒粕繊維を摩砕することを特徴とした請求項1或は請求項2の酒粕加工品の製造方法。
【請求項4】
前記微細化された酒粕液を高圧力下で約30ミクロン以下の粒子とし、かつその均質化処理を施す工程が、微細化された酒粕液を徐々に加圧しながら高圧力下でフィルターを通して容器壁に噴射することを特徴とした請求項1乃至請求項3の酒粕加工品の製造方法。
【請求項5】
繊維分解酵素で酒粕繊維が分解されると共に高速回転で該酒粕繊維が摩砕され、更に高圧力下での噴射処理を経て約30ミクロン以下の微粒子化と均質化処理が施されて構成されることを特徴とした酒粕加工品。
【請求項6】
前記酒粕加工品が約30ミクロン以下の酒粕繊維よりなる粒子を持った液状或は粉状を有し、かつ粕汁、調味料、スープ、アイスクリーム、パン、菓子、健康食品等の食品、肥満抑制、血圧降下等の医薬補助品、或は浴用剤または化粧品の補助品等に使用することが出来る請求項5の酒粕加工品。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−68488(P2007−68488A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261035(P2005−261035)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(399112506)橘倉酒造株式会社 (2)
【Fターム(参考)】