説明

重合性化合物、高分子化合物、それらを用いた組成物及び画像形成方法並びに画像形成装置

【課題】インク組成物やトナー組成物において色材や固形物の分散性を良好にする高分子化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物。


(式中、X‘はポリアルケニル繰り返し単位を表す。Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。Bはアルキレン基を表す。Dは芳香族環構造を表す。nは0から10までの整数を表す。Rはアルキルシリル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機能材料として有用な新規な高分子化合物、それを製造するための重合性化合物、それらを用いた組成物及び画像形成方法並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、色材を溶解したり、分散したりしてインク組成物やトナー組成物が調整されている。これには各種高分子材料が好ましく用いられており、例えばスチリル、アクリル、メタクリル系の高分子化合物が用いられている。溶剤や水を基材とする色材組成物においては、好ましくはイオン性官能基を有する高分子材料を利用することで顔料等の色材の分散性を向上するという試みも一般的に行なわれている。
【0003】
また、一方でポリビニルエーテル主鎖を有する高分子化合物も柔軟性高分子鎖をもつ高分子材料として知られているが、該高分子化合物の繰り返し単位中にイオン性官能基を導入することはほとんど行なわれていない。わずかに非特許文献1等に記載されているカルボン酸及びそのエステルが、その可能性のあるものとして記載されているのみであり、またその化合物の安定性もより安定なものが求められているのが現状である。
【0004】
また、ポリビニルエーテルの側鎖にメタクリル酸などの重合性基とカルボン酸を導入したい場合、カルボン酸の保護にアルキルエステルを用いると、アルキルエステルを脱保護しようとするとメタクリル酸エステルも切れてしまう。これに比べ、カルボン酸の保護にシリルエステルを用いる場合には、メタクリル酸エステルを切ることのないマイルドな条件で脱保護できる。また、カルボン酸の保護にアルキルエステルを用いた場合、ポリマーの構造によっては加水分解が進行しにくい場合がある。シリルエステルの場合、マイルドな条件で加水分解することができる。
【非特許文献1】“J.M.S.−PURE APPL.CHEM.”,A36(3)、p.449〜460、1999年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、インク組成物やトナー組成物において色材や固形物の分散性を良好にする為に好適な高分子化合物及びその製造方法を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、上記の高分子化合物を製造する新規な重合性化合物を提供するものである。
また、本発明は、上記の高分子化合物を用いた液体組成物、トナー組成物等の記録材料を使用した画像記録方法および画像記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の発明は、下記一般式(1)で表される重合性化合物である。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Xはアルケニル基を表す。Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが複数のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは置換されていてもよい芳香族環構造を表す。nは0から10までの整数を表す。nが複数のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Rはアルキルシリル基を表し、該アルキル基は芳香族基に置換されていてもよい。)
本発明の第二の発明は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物である。
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、X‘はポリアルケニル繰り返し単位を表す。Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが複数のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは置換されていてもよい芳香族環構造を表す。nは0から10までの整数を表す。nが複数のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Rはアルキルシリル基を表し、該アルキル基は芳香族基に置換されていてもよい。)
前記高分子化合物がブロックポリマー化合物であるのが好ましい。
【0012】
本発明の第三の発明は、上記の一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物をアルカリまたは酸で処理することを特徴とする下記一般式(3)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物の製造方法である。
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、X‘はポリアルケニル繰り返し単位を表す。Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが複数のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは置換されていてもよい芳香族環構造を表す。nは0から10までの整数を表す。nが複数のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Yは一価または多価の金属カチオンあるいは水素を表す。)
【0015】
前記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物のシリルエステル基を選択的に加水分解して前記一般式(3)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物を得ることが好ましい。
【0016】
前記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物のシリルエステル基を脱保護しやすい保護基として用いることが好ましい。
本発明の第四の発明は上記の高分子化合物、溶媒または分散媒、及び機能性物質を含有することを特徴とする組成物である。
【0017】
本発明の第五の発明は上記の高分子化合物、溶媒または分散媒、及び色材を含有することを特徴とする記録材料である。
本発明の第六の発明は、上記の記録材料を用意する工程と、前記記録材料を用いて媒体に画像を記録する工程とを有することを特徴とする画像記録方法である。
【0018】
本発明の第六の発明は、上記の記録材料を用いて、媒体に画像を記録させるための手段を有することを特徴とする画像記録装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、色材や固形物の分散性が良好な高分子化合物を提供することができる。
また、本発明は、上記の高分子化合物を製造するための新規な重合性化合物を提供することができる。
【0020】
また、本発明の高分子化合物は、溶媒または分散媒、色材とともに配合することにより、インク組成物、トナー組成物等の組成物および記録材料を提供することができる。
また、本発明の高分子化合物を用いたインク組成物、トナー組成物等の記録材料を使用した画像記録方法および画像記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一の発明の重合性化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0022】
【化4】

【0023】
一般式(1)において、Xはアルケニル基を表す。
Aは炭素原子数1〜15、好ましくは1〜4までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。
【0024】
mは0から30まで、好ましくは1から10までの整数を表す。また、mが複数のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。
Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表し、アルキレン基としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基等が例として挙げられる。
【0025】
Dは置換されていてもよい芳香族環構造を表し、例えば、フェニレン、ピリジレン、ピリミジレン、ナフタレン、アントラニレン、フェナントラニレン、チオフェニレン、フラニレン等を表す。
【0026】
nは0から10まで、好ましくは1か3までの整数を表す。nが複数のときそれぞれのDは異なっていてもよい。
Rは、アルキルシリル基を表し、該アルキル基は芳香族基に置換されていてもよい。アルキルシリル基はシリル基3置換で、トリアルキル基であることが好ましい。そのアルキル基は炭素原子数1から10までのアルキル基が好ましく分岐されていてもよい。また、アルキル基は芳香族基に置換されてもよく、芳香族環構造としては、例えばフェニル基、ピリジル基、ビフェニル基等が挙げられる。芳香族環構造は置換されていてもよく、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0027】
一般式(1)で表される重合性化合物は、好ましくは以下の一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【化5】

【0029】
(式中、Aはエチレン基、プロピレン基を表し、mは0から3を表す。mが複数のときそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または炭素数1から5までのアルキレン基を表し、Dはフェニレン基、ナフタレン基を表す。nは1から5までの整数を表し、nが複数のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Rはトリアルキルシリル基を表す。)
【0030】
本発明の一般式(1)で表される重合性化合物においては、末端がカルボン酸誘導体であることが特徴である。この中で特に末端芳香族カルボン酸誘導体は結晶性が高く、重合反応に用いるための純度向上が比較的好適に行ない得るという点で優れる。また、芳香族カルボン酸の酸性度は脂肪族カルボン酸の酸性度と異なるため、ビニルエーテル繰り返し単位構造を有する高分子化合物として酸性度の異なる、様々な機能性高分子材料を提供できる。また、芳香族構造による特異な分子間相互作用による高分子高次構造体を作成可能な点など極めて有用である。
【0031】
一般式(1)で表される重合性化合物の具体的例としては、以下に示す化合物が挙げられる。
【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
(Phは、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンまたはフェニルを表す。Pyは2,5−ピリミジル、2,5−Pyrはピリジルを表す。Npは、2,6−ナフチルまたは1,4−ナフチルまたは1,5−ナフチルを表す。)
一般式(1)で表される重合性化合物の合成方法の例としては、代表的には下記の反応式(1)に示す様なエーテル化法によるものが挙げられる。
【0035】
【化8】

【0036】
(Xはハロゲンを表す。)
本発明の一般式(1)で表される重合性化合物は各種条件に対する安定性に優れるため、各種重合を行い高分子化合物を得る上で極めて有用である。
【0037】
本発明の第二の発明は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物である。
【0038】
【化9】

【0039】
(式中、X‘はポリアルケニル繰り返し単位を表す。Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが複数のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは置換されていてもよい芳香族環構造を表す。nは0から10までの整数を表す。nが複数のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Rはアルキルシリル基を表し、該アルキル基は芳香族基に置換されていてもよい。)
なお、A,m、B、D、n、Rの好ましい範囲及び具体例は、前記一般式(1)と同じである。
【0040】
一般式(2)で表される繰り返し単位構造は、好ましくは以下の一般式(5)で表される単位構造をあげることができる。
【0041】
【化10】

【0042】
(式中の記号は、一般式(4)で示したものと同じものを表す。)
一般式(2)で表される繰り返し単位構造の具体的例としては、以下に示す単位構造が挙げられる。
【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
【化14】

【0047】
【化15】

【0048】
【化16】

【0049】
本発明の高分子化合物は簡便な条件でシリル基を脱保護することが出来るため、次に述べるカルボン酸あるいはカルボン酸アニオン高分子化合物を製造するために非常に有用である。
【0050】
なお、本発明において、前記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物のシリルエステル基を脱保護しやすい保護基として用いるが、保護基とは、ある反応系内では反応して欲しくないヒドロキシル基などの活性な官能基を、エステルやエーテルなどの不活性な官能基に一時的に変換することを表し、脱保護とはその保護基を外すことを表す。
【0051】
上記の一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物は、好ましく、前記一般式(1)で表される重合性化合物を重合することにより得ることができる。重合は主にカチオン重合で行なわれることが多い。開始剤としては、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、過塩素酸等のプロトン酸や、BF3、AlCl3、TiCl4、SnCl4、FeCl3、RAlCl2、R1.5AlCl1.5(Rはアルキルを示す)等のルイス酸とカチオン源の組み合わせ(カチオン源としてはプロトン酸や水、アルコール、ビニルエーテルとカルボン酸の付加体などがあげられる。)が例として挙げられる。これらの開始剤を一般式(1)で表される重合性化合物(モノマー)と共存させることにより重合反応が進行し、高分子化合物を合成することができる。
【0052】
本発明に好ましく用いられるポリアルケニルエーテル構造を含むポリマーの合成法は多数報告されているが(例えば特開平11−080221号公報)、青島らによるカチオンリビング重合による方法(ポリマーブレタン誌 15巻、1986年 417頁、特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)が代表的である。カチオンリビング重合で共重合体合成を行うことにより、ホモ重合体や2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロック共重合体、グラフト共重合体、グラジュエーション共重合体等の様々な共重合体を、長さ(分子量)を正確に揃えて合成することができる。また、ポリアルケニルエーテルは、その側鎖に様々な官能基を導入することができる。カチオン重合法は、他にHI/I2系、HCl/SnCl4系等で行うこともできる。
【0053】
本発明の一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物の数平均分子量は、200以上10000000以下であり、好ましく用いられる範囲としては1000以上1000000以下である。10000000を越えると高分子鎖内、高分子鎖間の絡まりあいが多くなりすぎ、溶剤に分散しにくかったりする。200未満である場合、分子量が小さく高分子としての立体効果が出にくかったりする場合がある。また、本発明の高分子化合物は単一の繰り返し単位構造からなるホモポリマーであってもよいし、複数の繰り返し単位構造からなる共重合ポリマーであってもよい。
【0054】
本発明の第三の発明は、下記一般式(3)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物を一般式(2)で表される高分子化合物から製造する方法である。
【0055】
【化17】

【0056】
(式中、X‘はポリアルケニル繰り返し単位を表す。Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが複数のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは置換されていてもよい芳香族環構造を表す。nは0から10までの整数を表す。nが複数のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Yは一価または多価の金属カチオンあるいは水素を表す。)
なお、A,m,B、D、n、Rの好ましい範囲および具体例は前記一般式(1)と同じである。
【0057】
Yは一価または多価の金属カチオンまたは水素原子を表す。Yのカチオンの具体例としては、例えば一価の金属カチオンとしてはナトリウム、カリウム、リチウム等が、多価の金属カチオンとしてはマグネシウム、カルシウム、ニッケル、鉄等が挙げられる。多価の金属カチオンの場合には、MはアニオンのCOO-の2個以上と対イオンを形成している。
【0058】
一般式(3)で表される繰り返し単位構造は、好ましくは以下の一般式(6)で表される単位構造をあげることができる。
【0059】
【化18】

【0060】
(式中の記号は一般式(4)で示したものと同じものを表す。)
本発明の一般式(3)の繰り返し単位構造を有する高分子化合物は、相当する前記一般式(2)の繰り返し単位構造を有する高分子化合物の末端エステル部分をアルカリ加水分解することにより得ることができる。また、酸またはアルカリ処理をすることによって得ることができる。
【0061】
一般式(3)で表される繰り返し単位構造の具体的例としては、一般式(2)で表される繰り返し単位構造の具体例で示した単位構造のシリルエステルを脱保護し、カルボン酸、カルボン酸塩とした構造が挙げられる。
【0062】
本発明の製造方法によって得られる高分子化合物は、該高分子化合物と色材や有用な所定の機能を奏する機能物質を含有し、該高分子化合物は色材や機能物質等を良好に分散するのに好適に用いることができ、各種記録材料、インク組成物に好適に用いられる。
【0063】
その色材や機能物質は粒状固体である場合が好ましい。粒状固体には、顔料、金属、除草剤、殺虫剤、または生体材料、例えば薬等を用いることができる。
次に、本発明の第4の発明は、前記高分子化合物、溶媒または分散媒、及び機能性物質を含有することを特徴とする組成物である。
【0064】
本発明の組成物に用いられる機能性物質は、本発明の組成物の重量に対して、0.1〜50質量%が好ましい。また、溶解性の物質であってもよく、染料や分子性触媒等も用いることができる。
【0065】
また、本発明の組成中に含有される前記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物は、本発明の組成物の重量に対して、0.5〜98質量%が好ましい。
【0066】
本発明において、機能性物質が前記高分子化合物に内包し分散した場合、より安定して分散させることが可能となるため、より好ましい。前記機能性物質が高分子化合物に内包されているとは、機能性物質が当該高分子化合物に被覆され分散されている状態である。
【0067】
さらに、本発明の組成物の例として、溶媒または分散媒、色材および前記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物を含有する記録材料が挙げられる。
記録材料としては、具体的には、バインダー樹脂等の分散媒、色材および前記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物を含有するトナー組成物が挙げられる。
【0068】
また、溶媒、色材および一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物を含有するインク組成物が挙げられる。
以下、本発明の好ましい一形態であるインク組成物について説明する。
【0069】
本発明のインク組成物に含有される一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物の含有量は、0.1質量%以上90質量%以下の範囲で用いられる。好ましくは1質量%以上80質量%以下である。インクジェットプリンター用としては、好ましくは1質量%以上30質量%以下で用いられる。
【0070】
次に、本発明のインク組成物に含有さる高分子化合物以外の他の成分について詳しく説明する。他の成分には、有機溶剤、水、水性溶媒、色材、添加剤等が含まれる。
[有機溶剤]
有機溶剤としては、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤等が挙げられる。
【0071】
[水]
水としては、金属イオン等を除去したイオン交換水、純水、超純水が好ましい。
[水性溶媒]
水性溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロビレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒等を用いることができる。また、水性分散物の記録媒体上での乾燥を速めることを目的として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類を用いることもできる。
【0072】
本発明のインク組成物において、上記有機溶剤、水および水性溶媒の含有量は、インク組成物の全重量に対して、20〜95質量%の範囲で用いるのが好ましい。さらに好ましくは30〜90質量%の範囲である。
【0073】
[色材]
本発明のインク組成物には、顔料および染料等の色材が含有され、好ましくは顔料が用いられる。
【0074】
以下にインク組成物に使用する顔料および染料の具体例を示す。
顔料は、有機顔料および無機顔料のいずれでもよく、インクに用いられる顔料は、好ましくは黒色顔料と、シアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料を用いることができる。なお、上記に記した以外の色顔料や、無色または淡色の顔料、金属光沢顔料等を使用してもよい。また、本発明のために、新規に合成した顔料を用いてもよい。
【0075】
以下に、黒、シアン、マゼンタ、イエローにおいて、市販されている顔料を例示する。
黒色の顔料としては、Raven1060、(コロンビアン・カーボン社製)、MOGUL−L、(キャボット社製)、Color Black FW1(デグッサ社製)、MA100(三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0076】
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
イエローの顔料としては、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
また、本発明の組成物では、水に自己分散可能な顔料も使用できる。水分散可能な顔料としては、顔料表面にポリマーを吸着させた立体障害効果を利用したものと、静電気的反発力を利用したものとがあり、市販品としては、CAB−0−JET200、CAB−0−JET300(以上キャボット社製)、Microjet Black CW−1(オリエント化学社製)等が挙げられる。
【0080】
本発明のインク組成物に用いられる顔料は、インク組成物の重量に対して、0.1〜50質量%が好ましい。顔料の量が、0.1質量%以上であれば、好ましい画像濃度が得られ、50質量%以下であれば、好ましい定着性が得られる。さらに好ましい範囲としては0.5質量%から30質量%の範囲である。
【0081】
また、本発明のインク組成物では染料も使用することができる。以下に述べるような直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食品用色素の水溶性染料、又は分散染料の不溶性色素を用いることができる。
【0082】
例えば、水溶性染料としては、C.I.ダイレクトブラック,−17,−62,−154;C.I.ダイレクトイエロー,−12,−87,−142;C.I.ダイレクトレッド,−1,−62,−243;C.I.ダイレクトブルー,−6,−78,−199;C.I.ダイレクトオレンジ,−34,−60;C.I.ダイレクトバイオレット,−47,−48;C.I.ダイレクトブラウン,−109;C.I.ダイレクトグリーン,−59等の直接染料、
C.I.アシッドブラック,−2,−52,−208;C.I.アシッドイエロー,−11,−29,−71;C.I.アシッドレッド,−1,−52,−317;C.I.アシッドブルー,−9,−93,−254;C.I.アシッドオレンジ,−7,−19;C.I.アシッドバイオレット,−49等の酸性染料、 C.I.リアクティブブラック,−1,−23,−39;C.I.リアクティブイエロー,−2,−77,−163;C.I.リアクティブレッド,−3,−111,−221;C.I.リアクティブブルー,−2,−101,−217;C.I.リアクティブオレンジ,−5,−74,−99;C.I.リアクティブバイオレット,−1,−24,−38;C.I.リアクティブグリーン,−5,−15,−23;C.I.リアクティブブラウン,−2,−18,−33等の反応染料;
C.I.ベーシックブラック,−2;C.I.ベーシックレッド,−1,−12,−27;C.I.ベーシックブルー,−1,−24,;C.I.ベーシックバイオレット,−7,−14,−27;C.I.フードブラック,−1,−2等が挙げられる。
【0083】
また、油溶性染料として、以下に、各色の市販品を例示する。
黒色の油溶性染料としては、C.I.Solvent Black−3,−22:1,−50等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
イエローの油溶性染料としては、C.I.Solvent Yellow−1,−25:1,−172等が挙げられるが、これらに限定されない。
オレンジの油溶性染料としては、C.I.Solvent Orange−1,−40:1,−99等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
レッドの油溶性染料としては、C.I.Solvent Red−1,−111,−229等が挙げられるが、これらに限定されない。
バイオレットの油溶性染料としては、C.I.Solvent Violet−2,−11,−47等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
ブルーの油溶性染料としては、C.I.Solvent Blue−2,−43,−134等が挙げられるが、これらに限定されない。
グリーンの油溶性染料としては、C.I.Solvent Green−1,−20,−33等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
ブラウンの油溶性染料としては、C.I.Solvent Brown−1,−12,−58等が挙げられるが、これらに限定されない。
なお、これら上記の色材の例は、本発明のインクに対して好ましいものであるが、本発明のインク組成物に使用する色材は上記色材に特に限定されるものではない。本発明のインク組成物に用いられる染料は、インクの重量に対して、0.1〜50質量%が好ましい。
【0088】
[添加剤]
本発明の組成物には、必要に応じて、種々の添加剤、助剤等を添加することができる。添加剤の一つとして、顔料を溶媒中で安定に分散させる分散安定剤がある。本発明の組成物は、ポリビニルエーテル構造を含むポリマーにより、顔料のような粒状固体を分散させる機能を有しているが、分散が不十分である場合には、他の分散安定剤を添加してもよい。
【0089】
他の分散安定剤として、親水性疎水性両部を持つ樹脂あるいは界面活性剤を使用することが可能である。親水性疎水性両部を持つ樹脂としては、例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーの共重合体が挙げられる。
【0090】
親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、または前記カルボン酸モノエステル類、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート等、疎水性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類等が挙げられる。共重合体は、ランダム、ブロック、およびグラフト共重合体等の様々な構成のものが使用できる。もちろん、親水性、疎水性モノマーとも、前記に示したものに限定されない。
【0091】
界面活性剤としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性活性剤を用いることができる。アニオン性活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等が挙げられる。非イオン性活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等が挙げられる。カチオン性活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が挙げられる。両イオン性活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等が挙げられる。なお、界面活性剤についても同様、前記に限定されるものではない。
【0092】
さらに、本発明の組成物には、必要に応じて水性溶剤を添加することができる。特にインクジェット用インクに用いる場合、水性溶剤は、インクのノズル部分での乾燥、インクの固化を防止するために用いられ、単独または混合して用いることができる。水性溶剤は、上述のものを用いることができる。その含有量としては、インクの場合、インクの全重量の0.1〜60質量%、好ましくは1〜40質量%の範囲である。
【0093】
その他の添加剤としては、例えばインクとしての用途の場合、インクの安定化と記録装置中のインクの配管との安定性を得るためのpH調整剤、記録媒体へのインクの浸透を早め、見掛けの乾燥を早くする浸透剤、インク内での黴の発生を防止する防黴剤、インク中の金属イオンを封鎖し、ノズル部での金属の析出やインク中で不溶解性物の析出等を防止するキレート化剤、記録液の循環、移動、あるいは記録液製造時の泡の発生を防止する消泡剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤等も添加することができる。
【0094】
本発明のインク組成物を調製するには、上記構成成分を混合し、均一に溶解又は分散することにより調製することができる。たとえば、構成成分の複数を混合し、サンドミルやボールミル、ホモジナイザー、ナノマイザー等により破砕、分散しインク母液を作成し、これに溶媒や添加剤を加え物性を調整することにより調整することができる。
【0095】
次に、本発明のトナー組成物について説明する。トナー組成物は、具体的には、バインダー樹脂等の分散媒、色材および前記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物を含有する。
【0096】
本発明のトナー組成物に含有される一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物の含有量は、0.1質量%以上90質量%以下の範囲で用いられる。好ましくは0.5質量%以上80質量%以下である。
【0097】
また、本発明の高分子化合物はバインダー樹脂そのものとしても使用可能であるし、スチレンアクリル樹脂やポリエステル樹脂等のバインダー樹脂とともに用いることも可能である。
【0098】
次に、本発明のトナー組成物に含有さる高分子化合物以外の他の成分について詳しく説明する。他の成分には、バインダー樹脂、色材(顔料、染料)、帯電制御剤、離型剤、外添剤、磁性粒子等が含まれる。
【0099】
バインダー樹脂としては、スチレンアクリル共重合体、ポリエステル、ポリカーボネート等が例として挙げられる。バインダー樹脂の含有量は、好ましくは10質量%以上99質量%以下で用いられる。
【0100】
色材としては前記インク組成物の説明で記載した、顔料や染料が使用可能である。色材の含有量は、0.1質量%以上50質量%以下で用いられる。帯電制御剤としては、金属−アゾ錯体、トリフェニルメタン系染料、ニグロシン、アンモニウム塩等が例として挙げられる。
【0101】
帯電制御剤の含有量は0.1質量%以上30質量%以下で用いられる。他に離型剤としては、合成ワックス、天然ワックスが例として挙げられる。
外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア等の無機微粒子、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂微粒子が例として挙げられる。
【0102】
磁性粒子としては例えばマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等が挙げられる。トナー組成物としては以上の成分を必ずしも全て含まなくても機能し得るし、また以上に記載されていない成分を含んでもよい。
【0103】
本発明のトナー組成物を調製する方法としては、例えば、以上に述べた構成成分を混合、溶融混煉し均一に混合した後、スピードミルやジェットミルで破砕して作製し、分球して所望のサイズのトナーを得る。このトナーに外添剤を加えミキサーで混合することにより調製することができる。
【0104】
次に、本発明の組成物を用いる画像記録方法、液体付与方法および画像記録装置について説明する。
[画像記録方法、液体付与方法および装置]
本発明のインク組成物は、各種印刷法、インクジェット法、電子写真法等の様々な画像記録方法および装置に使用でき、この装置を用いた画像記録方法により描画することができる。また、液体組成物を用いる場合、インクジェット法等では微細パターンを形成したり、薬物の投与を行なったりするための液体付与方法に使用することができる。
【0105】
本発明の画像記録方法は、本発明の組成物により優れた画像形成を行なう方法である。本発明の画像記録方法は、好ましくは、インク吐出部から本発明のインク組成物を吐出して被記録媒体上に付与することで記録を行う画像記録方法である。画像形成はインクに熱エネルギーを作用させてインクを吐出するインクジェット法を用いる方法が好ましく用いられる。
【0106】
本発明のインクジェット用インク組成物を用いるインクジェットプリンタとしては、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行うバブルジェット(登録商標)方式等、様々なインクジェット記録装置に適用できる。
【0107】
以下このインクジェット記録装置について図1を参照して概略を説明する。但し、図1はあくまでも構成の一例であり、本願発明を限定するものではない。
図1は、インクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
【0108】
図1は、ヘッドを移動させて被記録媒体に記録をする場合を示した。図1において、製造装置の全体動作を制御するCPU50には、ヘッド70をXY方向に駆動するためのX方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58がXモータ駆動回路52およびYモータ駆動回路54を介して接続されている。CPUの指示に従い、Xモータ駆動回路52およびYモータ駆動回路54を経て、このX方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58が駆動され、ヘッド70の被記録媒体に対する位置が決定される。
【0109】
図1に示されるように、ヘッド70には、X方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58に加え、ヘッド駆動回路60が接続されており、CPU50がヘッド駆動回路60を制御し、ヘッド70の駆動、即ちインクジェット用インクの吐出等を行う。さらに、CPU50には、ヘッドの位置を検出するためのXエンコーダ62およびYエンコーダ64が接続されており、ヘッド70の位置情報が入力される。また、プログラムメモリ66内に制御プログラムも入力される。CPU50は、この制御プログラムとXエンコーダ62およびYエンコーダ64の位置情報に基づいて、ヘッド70を移動させ、被記録媒体上の所望の位置にヘッドを配置してインクジェット用インクを吐出する。このようにして被記録媒体上に所望の描画を行うことができる。また、複数のインクジェット用インクを装填可能な画像記録装置の場合、各インクジェット用インクに対して上記のような操作を所定回数行うことにより、被記録媒体上に所望の描画を行うことができる。
【0110】
また、インクジェット用インクを吐出した後、必要に応じて、ヘッド70を、ヘッドに付着した余剰のインクを除去するための除去手段(図示せず)の配置された位置に移動し、ヘッド70をワイピング等して清浄化することも可能である。清浄化の具体的方法は、従来の方法をそのまま使用することができる。
【0111】
描画が終了したら、図示しない被記録媒体の搬送機構により、描画済みの被記録媒体を新たな被記録媒体に置き換える。
なお、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態を修正または変形することが可能である。例えば、上記説明ではヘッド70をXY軸方向に移動させる例を示したが、ヘッド70は、X軸方向(またはY軸方向)のみに移動するようにし、被記録媒体をY軸方向(またはX軸方向)に移動させ、これらを連動させながら描画を行うものであってもよい。
【0112】
本発明は、インクジェット用インクの吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、上記熱エネルギーによりインクジェット用インクを吐出させるヘッドが優れた効果をもたらす。かかる方式によれば描画の高精細化が達成できる。本発明のインクジェット用インク組成物を使用することにより、更に優れた描画を行うことができる。
【0113】
上記の熱エネルギーを発生する手段を備えた装置の代表的な構成や原理については、米国特許第4723129号明細書,同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型,コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体が保持され、流路に対応して配置されている電気熱変換体に、吐出情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長および収縮により吐出用開口を介して液体を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書,同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた吐出を行うことができる。
【0114】
ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組合せ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書,米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基いた構成としても本発明の効果は有効である。すなわち、ヘッドの形態がどのようなものであっても、本発明によればインクジェット用インクの吐出を確実に効率よく行うことができる。
【0115】
さらに、本発明の画像記録装置で被記録媒体の最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプのヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのようなヘッドとしては、複数のヘッドの組合せによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個のヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0116】
加えて、シリアルタイプのものでも、装置本体に固定されたヘッド、または、装置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプのヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0117】
さらに、本発明の装置は、液滴除去手段を更に有していてもよい。このような手段を付与した場合、更に優れた吐出効果を実現できる。
また、本発明の装置の構成として、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定化できるので好ましい。これらを具体的に挙げれば、ヘッドに対してのキャッピング手段、加圧または吸引手段、電気熱変換体またはこれとは別の加熱素子、または、これらの組み合わせを用いて加熱を行う予備加熱手段、インクの吐出とは別の、吐出を行なうための予備吐出手段などを挙げることができる。
【0118】
本発明に対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
本発明の装置では、インクジェット用インクの吐出ヘッドの各吐出口から吐出されるインクの量が、0.1ピコリットルから100ピコリットルの範囲であることが好ましい。
【0119】
また、本発明のインク組成物は、中間転写体にインクを印字した後、紙等の記録媒体に転写する記録方式等を用いた間接記録装置にも用いることができる。また、直接記録方式による中間転写体を利用した装置にも適用することができる。
【実施例】
【0120】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1
<CH2=CHOCH2CH2OPhCOOSi(CH32t−Buの合成>
アルゴン気流下、4‐ヒドロキシ安息香酸メチル3.29mol(モル)に無水ジメチルホルムアミド1.64Lを加え、60%水素化ナトリウム3.30molを徐々に加え、1時間撹拌した。テトラブチルアンモニウムブロミド28.4molを添加し、30分間撹拌した後、2−クロロエチルビニルエーテル6.34molを添加し、徐々に加熱した。100℃で9時間撹拌した後、室温まで冷却し、氷水10Lに反応液を注入し、有機溶媒で抽出し、濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、CH2=CHOCH2CH2OPhCOOCH3(化合物A)を収率71%で得た。
【0121】
上記化合物A 2.31molにエタノール5.14Lを加え、2NNaOH3.5L(7.0mol)を徐々に添加し、加熱還流下で9時間撹拌した。室温まで冷却後、冷1N塩酸7.35Lに反応液を注ぎ、生じた結晶をろ過し、冷水で洗浄した。結晶を乾燥し、CH2=CHOCH2CH2OPhCOOH(化合物B)を収率94.2%で得た。
【0122】
アルゴン気流下、t−Bu(CH32SiCl 2.33molにイミダゾール2.49molを加え、外温110℃にて加熱溶解させた。撹拌下で冷却しながら、トルエン2.1Lを加え、室温まで冷却した。上記で得られた化合物B 1.66molを添加し、1.5時間撹拌した。生じた結晶をろ過し、トルエンで洗浄した。シリカゲルクロマトグラフィーにより精製した後、再結晶し、目的物のCH2=CHOCH2CH2OPhCOOSi(CH32t−Buを収率74.6%で得た。
同様に、CH2=CHOCH2CH2OPhCOOSi(C253、CH2=CHOCH2CH2OPhCOOSi(iPr)3も合成することができる。
【0123】
実施例2
実施例1で得られた重合性化合物CH2=CHOCH2CH2OPhCOOSi(CH32t−Buを用いて高分子化合物を合成した。三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃に加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、上記重合性化合物8mmol(ミリモル)、酢酸エチル16mmol、1−イソブトキシエチルアセテート0.05mmol、及びトルエン11mlを加え、反応系を冷却した。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)を0.2mmol加え重合を開始した。10時間後重合反応を停止した。重合反応の停止は、系内に0.3質量%のアンモニア/メタノール水溶液を加えて行った。
【0124】
反応混合物溶液を0.6M塩酸20mlと共に30時間攪拌し、シリルエステルの脱保護反応を行った。この反応液にジクロロメタンを加え、有機層を分離し、蒸留水で3回洗浄した。得られた有機相をエバポレーターで濃縮・乾固したものを真空乾燥させ、下記の構造式(1)で表されるカルボン酸型の高分子化合物を得た。
【0125】
【化19】

【0126】
NMRを測定し、開始剤である1−イソブトキシエチルアセテートとの面積比から重合度は8であった。この高分子化合物5重量部とキャボット社製黒色顔料モーグルL2重量部を純水中超音波ホモジナーザーで分散し、粗大粒子を2ミクロンのメンブランフィルターで除去し、顔料分散組成物を調整した。
【0127】
実施例3
<ブロック共重体の重合>
<2−ビニロキシエチルメタクリレート(MCVE:Aブロック)と、4−(2−ビニロキシエトキシ)安息香酸(t−ブチルジメチルシリル)エステル(SiBAVE:Bブロック)のABジブロック共重合体(MCVE−b−SiBAVE)の重合(ここでbはブロックポリマーを表す)>
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素雰囲気下250℃に加熱し吸着水を除去する。系を室温に戻した後、MCVE160mmol(ミリモル)、酢酸エチル500mmol、1−イソブトキシエチルアセテート4mmol、及びトルエン350mlを加え、反応系を冷却する。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)を10mmol加え重合を開始する。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、Aブロックが60量体のときに、SiBAVE 116mmolのトルエン溶液を添加し、重合を続行する。GPCを用いるモニタリングによって、Bブロックが15量体程度の時に重合反応を停止する。重合反応の停止は、系内に0.3質量%のアンモニア/メタノール水溶液を加えて行う。
【0128】
反応混合物溶液を濃縮し、ジクロロメタンにて希釈し、0.6M塩酸水溶液で3回、アルカリ水溶液で1回、次いで蒸留水で3回洗浄する。得られた有機相をエバポレーターで濃縮し、得られた濃縮物をテトラヒドロフランに溶解し、セルロースの半透膜を用いてメタノール溶媒中で透析を繰り返し行ってモノマーを除去し、目的物であるジブロックポリマーを得る。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行う。
【0129】
Mn=11000、Mw/Mn=1.26である。重合比はA:B=62:15である。
さらにここで得られたジブロックポリマーをジメチルホルムアミドと炭酸カリウム水溶液の混合溶液中で室温にて撹拌し、Bブロック中のシリルエステルを加水分解する。
【0130】
反応液濃縮後、水分散液中で0.1Nの塩酸で中和し、Bブロックがカルボン酸になったジブロックポリマーを得る。Aブロックのメタクリル酸末端構造の存在をNMRにより確認できる。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行う。
【0131】
実施例4
<ジブロック共重体の重合>
<2−(2−ビニロキシエトキシ)ナフタレン((2−Np)VE:Aブロック)、ジエチレングリコールメチルビニルエーテル(MEVE:Bブロック)、4−(2−ビニロキシエトキシ)安息香酸(t−ブチルジメチルシリル)エステル(SiBAVE:Bブロック)のABジブロック共重合体[(2−Np)VE−b−(MEVE−r−SiBAVE)]の重合(ここで、bはブロックポリマー、rはランダムポリマーであることを示す記号である)>
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素雰囲気下250℃に加熱し吸着水を除去する。系を室温に戻した後、(2−Np)VE160mmol(ミリモル)、酢酸エチル500mmol、1−イソブトキシエチルアセテート4mmol、及びトルエン350mlを加え、反応系を冷却する。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)を10mmol加え重合を開始する。
【0132】
分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、Aブロックが32量体のときに、MEVE 25mmolとSiBAVE 116mmolのトルエン溶液を添加し、重合を続行する。GPCを用いるモニタリングによって、Bブロックが15量体程度の時に重合反応を停止する。重合反応の停止は、系内に0.3質量%のアンモニア/メタノール水溶液を加えて行う。
【0133】
反応混合物溶液を濃縮し、ジクロロメタンにて希釈し、0.1M塩酸水溶液で3回、アルカリ水溶液で1回、次いで蒸留水で3回洗浄する。得られた有機相をエバポレーターで濃縮し、得られた濃縮物をテトラヒドロフランに溶かし、セルロースの半透膜を用いてメタノール溶媒中透析を繰り返し行ってモノマーを除去し、下記の構造式(2)で表されるジブロックポリマーを得る。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行う。
【0134】
【化20】

【0135】
Mn=6000、Mw/Mn=1.24である。重合比はA:B=32:15である。
BブロックはMEVEとSiBAVEのランダム重合体であり、組成比は、MEVE:SiBAVE=6:9である。
【0136】
実施例5
実施例4で得られたジブロックポリマーを、ジメチルホルムアミドと炭酸カリウム水溶液の混合溶液中で室温にて24時間撹拌し、Bブロック中のシリルエステルを加水分解する。
【0137】
反応液濃縮後、水分散液中で0.1Nの塩酸で中和し、Bブロックがカルボン酸になったジブロックポリマーを得る。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行う。NMRにより、加水分解が定量的に進行していることを確認する。
【0138】
比較例1
<エチルエステルの場合の加水分解率>
<2−(2−ビニロキシエトキシ)ナフタレン((2−Np)VE:Aブロック)、ジエチレングリコールメチルビニルエーテル(MEVE:Bブロック)及び4−(2−ビニロキシエトキシ)安息香酸エチル(BAVE:Bブロック)のABジブロック共重合体[(2−Np)VE32−b−(MEVE6−r−BAVE9)]の加水分解(ここで、bはブロックポリマー、rはランダムポリマーであることを示す記号である)>
実施例4と同様に重合した(2−Np)VE32−b−(MEVE6−r−BAVE9)を、ジメチルホルムアミドと炭酸カリウム水溶液の混合溶液中で室温にて24時間撹拌し、Bブロック中のエチルエステルを加水分解すると、加水分解率は20%である。
【0139】
実施例6
<インク組成物の調製>
カーボンブラック MOGUL−L(キャボット社製)4質量部と、実施例4で得られた高分子化合物[(2−Np)VE32−b−(MOEO6−r−SiBAVE9)]4質量部、2−ピロリドン5質量部、及びジエチレングリコール5質量部をイオン交換水82質量部中に加え、超音波ホモジナイザーを用いて分散する。分散液を遠心分離機で処理し(10,000rpm×20分)、粗大粒子を除去して、インク組成物を調製する。インク組成物は、均一に分散する。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の高分子化合物は、分散剤として良好に使用できるカルボン酸型あるいはカルボン酸塩型の高分子化合物を製造することができる。また一方で色材や固形物の分散性が良好なために、溶媒または分散媒、色材とともに配合することにより、インク組成物、トナー組成物等の組成物および記録材料を調整することも可能であり、該記録材料を使用した画像記録方法および画像記録装置に利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】インクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0142】
20 インクジェット装置
50 CPU
52 Xモータ駆動回路
54 Yモータ駆動回路
56 X方向駆動モータ
58 Y方向駆動モータ
60 ヘッド駆動回路
62 Xエンコーダ
64 Yエンコーダ
66 プログラムメモリ
70 ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される重合性化合物。
【化1】

(式中、Xはアルケニル基を表す。Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが複数のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは置換されていてもよい芳香族環構造を表す。nは0から10までの整数を表す。nが複数のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Rはアルキルシリル基を表し、該アルキル基は芳香族基に置換されていてもよい。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物。
【化2】

(式中、X‘はポリアルケニル繰り返し単位を表す。Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが複数のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレンを表す。Dは置換されていてもよい芳香族環構造を表す。nは0から10までの整数を表す。nが複数のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Rはアルキルシリル基を表し、該アルキル基は芳香族基に置換されていてもよい。)
【請求項3】
前記高分子化合物がブロックポリマー化合物である請求項2に記載の高分子化合物。
【請求項4】
請求項2記載の一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物をアルカリまたは酸で処理することを特徴とする下記一般式(3)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物の製造方法。
【化3】

(式中、X‘はポリアルケニル繰り返し単位を表す。Aは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていてもよいアルキレン基を表す。mは0から30までの整数を表す。mが複数のときはそれぞれのAは異なっていてもよい。Bは単結合または置換されていてもよいアルキレン基を表す。Dは置換されていてもよい芳香族環構造を表す。nは0から10までの整数を表す。nが複数のときそれぞれのDは異なっていてもよい。Yは一価または多価の金属カチオンあるいは水素原子を表す。)
【請求項5】
前記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物のシリルエステル基を選択的に加水分解して前記一般式(3)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物を得ることを特徴とする請求項4に記載の高分子化合物の製造方法
【請求項6】
前記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する高分子化合物のシリルエステル基を脱保護しやすい保護基として用いることを特徴とする請求項4または5に記載の高分子化合物の製造方法
【請求項7】
請求項2記載の高分子化合物、溶媒または分散媒、及び機能性物質を含有することを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項2記載の高分子化合物、溶媒または分散媒、及び色材を含有することを特徴とする記録材料。
【請求項9】
請求項8記載の記録材料を用意する工程と、前記記録材料を用いて媒体に画像を記録する工程とを有することを特徴とする画像記録方法。
【請求項10】
請求項8記載の記録材料を用いて、媒体に画像を記録させるための手段を有することを特徴とする画像記録装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−39625(P2007−39625A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295660(P2005−295660)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】