説明

重量部品の組付構造およびその組付方法

【課題】車体への組付性を向上させた重量部品の組付構造およびその組付方法を提供する。
【解決手段】ヒータ装置29と、ヒータ装置29に固定された取付プレート31と、車体側に設けられて互いに離間して配置された一対の前側支持フランジ19および後側支持フランジ27と、を備え、取付プレート31は、前側支持フランジ19および後側支持フランジ27に載置可能に形成されている。取付プレート31を固定したヒータ装置29を上昇させて、取付プレート31の前端部を前側支持フランジ19に載置したのち、ヒータ装置29を車両後方に向けて移動させて、取付プレート31の後端部を後側支持フランジ27に載置することにより、ヒータ装置29を車体側の前側支持フランジ19および後側支持フランジ27に仮保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両部品の一つである重量部品の組付構造およびその組付方法に関する。さらに詳しくは、PTCヒータ等の重量部品を車体に組み付ける際の車体構造、重量部品の構造および重量部品の組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の空調装置に、PTCヒータ等の電気ヒータを配設する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。前記PTCヒータは、Positive Temperature Coefficientの略であり、温度が上昇すると電気抵抗値も上がって電流が流れにくくなるため、局部的な温度上昇を抑制する効果を有する。
【0003】
また、例えば電気自動車においても、空調装置の構成部品としてPTCヒータを採用する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−151199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したPTCヒータは重量が大きい重量部品であるため、電気自動車に組み付ける場合は、作業者がPTCヒータを持ち上げたまま、車体の取付部分に取り付ける必要があり、車体への組付作業の作業効率が低く重労働であった。
【0006】
そこで、本発明は、車体への組付作業性を向上させた重量部品の組付構造およびその組付方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、取付プレートを固定した重量部品を車体側に配置された一対の支持フランジに保持する重量部品の組付構造であって、前記取付プレートは、前記支持フランジに係止可能に形成されたことを主要な特徴としている。
【0008】
また、本発明は、取付プレートを固定した重量部品を上昇させて、取付プレートの一端を一方の前記支持フランジに載置したのち、重量部品を横方向に移動させて、取付プレートの他端を他方の支持フランジに載置することにより、重量部品を車体側の支持フランジに仮保持するように構成したことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者の作業負担が低減されて、かつ簡単な工程で、重量部品を車体に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態にかかる車体前部を示す斜視図である。
【図2】図1の要部を拡大した斜視図である。
【図3】図2の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態によるヒータ装置の組付工程における第1段階を示す側面図であり、取付プレートの前側取付フランジを前側支持フランジに載置させた状態を示す。
【図5】本発明の実施形態によるヒータ装置の組付工程における第2段階を示す側面図であり、取付プレートの前側取付フランジを前側支持フランジに載置させたままヒータ装置の後端側を上昇させた状態を示す。
【図6】本発明の実施形態によるヒータ装置の組付工程における第3段階を示す側面図であり、取付プレートの前側取付フランジを前側支持フランジに載置させたままヒータ装置の後端側を後方移動させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態にかかる車体前部を示す斜視図であり、具体的には、電気自動車のモータールームを示している。また、図2は図1の要部を拡大した斜視図である。
【0013】
図1に示すように、車幅方向両側には、車両前後方向に沿って左右一対のサイドメンバ1,1が延設されており、該サイドメンバ1,1の上方には、フードリッジ3,3が配設されている。また、フードリッジ3,3とサイドメンバ1,1にはストラットタワー5,5が配設されている。モータールーム7の後端には、車幅方向に沿ってダッシュパネル9が配設されており、該ダッシュパネル9を介してモータールーム7と車室内とが分離されている。また、左右のサイドメンバ1,1は、車幅方向に延びる前側クロスメンバ11および後側クロスメンバ13を介して連結されている。これらの前側クロスメンバ11と後側クロスメンバ13とは、前後に延びる連結ブラケット15を介して橋渡しされている。
【0014】
また、図2に示すように、前側クロスメンバ11および後側クロスメンバ13はともに側面視略コ字状に形成されて、開口部が下側に配置されている。前側クロスメンバ11は、図1に示すように、車幅方向中央部が上部側に配置されて、車幅方向中央部から左側に向かうにつれて徐々に斜め下方に延びており、左端部11aが屈曲して水平に延び、最も低い部位に設定されている。そして、図2から明らかなように、連結ブラケット15は、側方から見ると、前後中央部が最も高い位置に配置されたへの字状に屈曲形成されている。
【0015】
さらに、図3は図2の分解斜視図である。
【0016】
前側クロスメンバ11を構成する後壁面17の下端部から前側支持フランジ19(支持フランジ)が車両後方に向けて延びている。この前側支持フランジ19の車幅方向中央部には、下方に凹んだ凹部21(ビード)が形成されており、前側支持フランジ19の車幅方向両側には、上方に突出する支持ボルト23,23(突状部材)が一対に設けられている。また、同様に、後側クロスメンバ23の左端部23aについても、前壁面25の下端部から後側支持フランジ27(支持フランジ)が車両前方に向けて延びている。この後側支持フランジ27の車幅方向中央部には、下方に凹んだ凹部21(ビード)が形成されており、後側支持フランジ27の車幅方向両側には、上方に突出する支持ボルト23(突状部材)が一対に設けられている。前記前側支持フランジ19と後側支持フランジ27とは、前後方向に所定間隔をおいて離れて一対に配置されている。
【0017】
また、ヒータ装置29(重量部品)は車両前後方向に長く形成されており、その上面には、取付プレート31が固定されている。このヒータ装置29としては、例えばPTCヒータが挙げられる。該取付プレート31は、平面視略矩形状に形成されており、四隅部分が支持面33に形成されており、該支持面33がヒータ装置29の固定部35にボルト37およびナット39を介して締結されている。このように、取付プレート31はヒータ装置29の上面に着脱可能に取り付けられている。また、取付プレート31の一端側(前側)には前側取付フランジ41が配設され、他端側(後側)には後側取付フランジ43が配設されている。前側取付フランジ41は、ヒータ装置29の上面29aから上方に離間して配置されており、前側取付フランジ41とヒータ装置29の上面29aとの間には、隙間が画成されている。また、前側取付フランジ41には、前端から後方に延びる2箇所の前側切欠部45が形成されている。
【0018】
また、後側取付フランジ43は、ヒータ装置29の上面29aから上方に離間して配置されており、後側取付フランジ43とヒータ装置29の上面29aとの間には、隙間が画成されている。また、後側取付フランジ43には、後端から前方に延びる2箇所の後側切欠部47が形成されている。ここで、前記前側切欠部45は後側切欠部47よりも前後長さが長く形成されており、これらの前側切欠部45および後側切欠部47は、前側支持フランジ19および後側支持フランジ27の支持ボルト23に係合可能に構成されている。なお、ヒータ装置29の後端には水などの熱媒体が流入する流入管49が設けられ、前端には熱媒体が流出する流出管51が設けられている。さらに、後述する図4に示すように、ヒータ装置29の後端部の下端には、後方に向けてコネクタ接続口(接続口)53が設けられている。このコネクタ接続口53には、図外のコネクタが挿入および嵌合されて、ヒータ装置29に電力供給装置からの電力を供給されるように構成されている。
【0019】
次いで、図4〜図6を用いて、本実施形態によるヒータ装置29を車体に組み付ける手順を簡単に説明する。
【0020】
図4は本発明の実施形態によるヒータ装置29の組付工程における第1段階を示す側面図であり、取付プレート31の前側取付フランジ41を前側支持フランジ19に載置させた状態を示す。図5は本発明の実施形態によるヒータ装置29の組付工程における第2段階を示す側面図であり、取付プレート31の前側取付フランジ41を前側支持フランジ19に載置させたままヒータ装置29の後端側を上昇させた状態を示す。図6は本発明の実施形態によるヒータ装置29の組付工程における第3段階を示す側面図であり、取付プレート31の前側取付フランジ41を前側支持フランジ19に載置させたままヒータ装置29の後端側を後方移動させた状態を示す。
【0021】
まず、図4に示すように、ヒータ装置29の取付工程における第1段階では、ヒータ装置29に設けられた取付プレート31の前側取付フランジ41を前側支持フランジ19に載置させる。具体的には、ヒータ装置29の前端部を持ち上げ、図3に示す前側取付フランジ41の前側切欠部45に前側支持フランジ19に固定した支持ボルト23を対応させ、図4の矢印に示すように、この状態でヒータ装置29を車両前方に向けて移動させる。これにより、ヒータ装置29の取付プレート31の前側切欠部45に前側支持フランジ19の支持ボルト23を挿入させると共に、前側取付フランジ41を前側支持フランジ19の上に載置することができる。
【0022】
次に、図5の矢印に示すように、ヒータ装置29の後端部を持ち上げて、取付プレート31の後側切欠部47を後側支持フランジ27に固定した支持ボルト23に対応配置する。
【0023】
そして、図6の矢印に示すように、ヒータ装置29を車両後方に向けて略水平状に移動させることにより、ヒータ装置29の取付プレート31の後側切欠部47に後側支持フランジ27の支持ボルト23を挿入させると共に、後側取付フランジ43を後側支持フランジ27の上に載置することができる。これにより、ヒータ装置29を、取付プレート31と前側支持フランジ19および後側支持フランジ27を介して車体部材である前側クロスメンバおよび後側クロスメンバ23に仮保持することができる。
【0024】
こののち、図6に示すように、支持ボルト23にナットを螺合させて取付プレート31を前側支持フランジ19および後側支持フランジ27に締結することにより、ヒータ装置29を車体側に確実に保持することができる。なお、この後、ヒータ装置29のコネクタ接続口53に図外のコネクタを挿入して接続させる。
【0025】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0026】
(1)ヒータ装置29(重量部品)と、該ヒータ装置29に固定された取付プレート31と、車体側に設けられて互いに離間して配置された一対の前側支持フランジ19および後側支持フランジ27(支持フランジ)と、を備え、前記取付プレート31は、前記前側支持フランジ19および後側支持フランジ27に載置可能に形成されている。また、前記取付プレート31を固定したヒータ装置29を上昇させて、取付プレート31の前端部(一端)を前記前側支持フランジ19に載置したのち、ヒータ装置29を車両後方に向けて移動させて、取付プレート31の後端部(他端)を後側支持フランジ27に載置することにより、ヒータ装置29を車体側の前側支持フランジ19および後側支持フランジ27に仮保持するように構成している。
【0027】
従って、作業者の作業負担が低減されて、かつ簡単な工程で、重量部品であるPTCヒータ等のヒータ装置29を車体に組み付けることができる。また、車両の整備時等にヒータ装置29を車体から取り外す場合においても、ボルト締結を弛ませてナットを取り外し、ヒータ装置29を車両前後方向に水平移動させれば良いため、ヒータ装置29の取り外し作業も容易になる。
【0028】
(2)前記取付プレート31をヒータ装置29の上面に着脱可能に取り付けているため、取付プレート31を前側支持フランジ19および後側支持フランジ27の双方に固定した状態のまま、取付プレート31の四隅の支持面33に締結したナット39を弛めてヒータ装置29のみを取り外すことができる。このナット39を弛める作業は、車両の下側から行うことができるため、作業性が良好となる。
【0029】
(3)前記取付プレート31の前後両端部にヒータ装置29の前記移動方向に沿って延びる前側切欠部45および後側切欠部47を設けると共に、前記車体側の支持プレートにこれらの切欠部45,47に係合可能な支持ボルト23(突状部材)を設け、前記ヒータ装置29の後端部(他端側)に、このヒータ装置29を電力供給装置(車両部品)のコネクタに接続するコネクタ接続口53(接続口)を設けると共に、取付プレート31の前端部(一端側)に設けた前側切欠部45を後端部(他端側)の後側切欠部47よりも移動方向に沿って長く形成している。
【0030】
従って、電力供給装置のコネクタとヒータ装置29のコネクタ接続口53とを接続する接続作業が容易になる。即ち、電力供給装置のコネクタとヒータ装置29のコネクタ接続口53とを接続する際には、最初に、ヒータ装置29のコネクタ接続口53を電力供給装置のコネクタから離して配置する方が好ましい。この点、取付プレート31の前側取付フランジ41に形成した前側切欠部45を後側切欠部47よりも前後長さを長く設定することにより、図4で説明したように、取付工程における第1段階でヒータ装置29を車両前方側に移動でき、ヒータ装置29のコネクタ接続口53を電力供給装置のコネクタから離して配置することができる。これにより、電力供給装置のコネクタが前後位置を変えることが困難な場合でも、電力供給装置のコネクタとヒータ装置29のコネクタ接続口53とを接続する接続作業が容易になる。
【符号の説明】
【0031】
19…前側支持フランジ(支持フランジ)
27…後側支持フランジ(支持フランジ)
29…ヒータ装置(重量部品)
29a…上面
31…取付プレート
37…支持ボルト(突状部材)
45…前側切欠部(切欠部)
47…後側切欠部(切欠部)
53…コネクタ接続口(接続口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量部品と、該重量部品に固定された取付プレートと、車体側に設けられて互いに離間して配置された一対の支持フランジと、を備え、
前記取付プレートは、前記支持フランジに係止可能に形成されたことを特徴とする重量部品の組付構造。
【請求項2】
前記取付プレートを重量部品の上面に着脱可能に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の重量部品の組付構造。
【請求項3】
前記取付プレートの両端部に重量部品の前記移動方向に沿って延びる切欠部を設けると共に、前記車体側の支持プレートにこれらの切欠部に係合可能な突状部材を設け、
前記重量部品の他端側に、この重量部品を車両部品に接続する接続口を設けると共に、取付プレートの一端側に設けた切欠部を他端側の切欠部よりも移動方向に沿って長く形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の重量部品の組付構造。
【請求項4】
前記重量部品は、ヒータ装置であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の重量部品の組付構造。
【請求項5】
取付プレートが固定された重量部品を、車体側に設けられて互いに離間して配置された一対の支持フランジに係止する重量部品の組付方法であって、
前記取付プレートを固定した重量部品を上昇させて、取付プレートの一端を一方の前記支持フランジに載置したのち、重量部品を横方向に移動させて、取付プレートの他端を他方の支持フランジに載置することにより、重量部品を車体側の支持フランジに仮保持するように構成したことを特徴とする重量部品の組付方法。
【請求項6】
前記重量部品は、ヒータ装置であることを特徴とする請求項5に記載の重量部品の組付方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−228633(P2010−228633A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79280(P2009−79280)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】