金型、射出成形による熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法、及び熱可塑性樹脂封止電子基板
【課題】熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板を封止する際の、電子基板の変形、及び充填不良の発生を抑制できる金型、当該金型を用いる電子基板の封止方法、及び当該金型を用いる電子基板の封止方法により製造される熱可塑性樹脂封止電子基板を提供すること。
【解決手段】a)電子基板の前面側に設けられたゲート、b)電子基板の背面に誘導部を形成するための凹部I、c)ゲートと凹部Iとを連通する供給路、電子基板の表面において供給路及び凹部Iと連通される、電子基板の表面に誘導部よりも薄肉の被覆部を形成するための凹部II、及び、e)電子基板の背面側に設けられ、電子基板の背面に当接及び離間可能であり、電子基板の背面に当接して電子基板を支持する支持体を備える金型を用いて、電子基板を、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により封止する。
【解決手段】a)電子基板の前面側に設けられたゲート、b)電子基板の背面に誘導部を形成するための凹部I、c)ゲートと凹部Iとを連通する供給路、電子基板の表面において供給路及び凹部Iと連通される、電子基板の表面に誘導部よりも薄肉の被覆部を形成するための凹部II、及び、e)電子基板の背面側に設けられ、電子基板の背面に当接及び離間可能であり、電子基板の背面に当接して電子基板を支持する支持体を備える金型を用いて、電子基板を、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により封止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板を封止するための金型、熱可塑性樹脂を用いる射出成形による熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法、及び熱可塑性樹脂封止電子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の電子基板等の種々の電子基板が、その保護のために、熱可塑性樹脂を封止材料として用いて全体を包み込むように封止された封止電子基板として使用されている。
【0003】
かかる封止電子基板の製造方法としては、溶融熱可塑性樹脂による封止時の電子基板へのダメージを考慮して、低粘度の溶融熱可塑性樹脂を低圧で金型内に注入するホットメルトモールディングと呼ばれる方法が採用されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、ホットメルトモールディング法では、溶融粘度の低い熱可塑性樹脂を使用する必要があり、封止材料の選択肢が大きく制限されることや、金型内への溶融熱可塑性樹脂の注入を低圧で行うために、成形サイクルが長く、封止電子基板の製造コストが高い等の問題がある。このため、封止材料の選択肢が広く、生産効率の高い射出成形法による電子基板の封止方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−131966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、射出成形により電子基板を封止する場合、溶融熱可塑性樹脂が高圧で瞬時に金型内に注入されるため、電子基板がダメージを受け変形しやすい問題がある。また、電子基板の表面を完全に封止するためには、金型内で電子基板を支持する支持体を、金型内にある程度熱可塑性樹脂が充填された段階で電子基板から離間させる必要がある。しかし、射出成形では、金型内に瞬時に熱可塑性樹脂が注入されるため、支持体の離間のタイミングの制御が難しい。このため、熱可塑性樹脂が支持体の周囲に充填された後に支持体が離間された場合には、支持体が電子基板に当接していた箇所に熱可塑性樹脂が充填されず、充填不良が発生する場合がある。
【0007】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板を封止する際の、電子基板の変形、及び充填不良の発生を抑制できる金型、当該金型を用いる電子基板の封止方法、及び当該金型を用いる電子基板の封止方法により製造される熱可塑性樹脂封止電子基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、
a)電子基板の前面側に設けられたゲート、
b)電子基板の背面に誘導部を形成する凹部I、
c)ゲートと凹部Iとを連通する供給路、電子基板の表面において供給路及び凹部Iと連通される、電子基板の表面に誘導部よりも薄肉の被覆部を形成する凹部II、及び、
e)電子基板の背面側に設けられ、電子基板の背面に当接及び離間可能であり、電子基板の背面に当接して電子基板を支持する支持体を備える金型を用いて、電子基板を、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により封止することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) 以下のa)からe)を備える、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板を封止するための金型:
a)前記電子基板の前面側に設けられたゲート、
b)前記電子基板の背面に誘導部を形成するための凹部I、
c)前記ゲートと前記凹部Iとを連通する供給路、
d)前記電子基板の表面において前記供給路及び前記凹部Iと連通される、前記電子基板の表面に前記誘導部よりも薄肉の被覆部を形成するための凹部II、及び、
e)前記電子基板の背面側に設けられ、前記電子基板の背面に当接及び離間可能であり、前記電子基板の背面に当接して前記電子基板を支持する支持体。
【0010】
(2) 前記供給路が、前記電子基板の前面から側面を経由して前記凹部Iに連通し、且つ、前記電子基板の表面に接して形成されており、前記供給路の深さが前記凹部IIの深さよりも大きい、(1)記載の金型。
【0011】
(3) 前記電子基板が、前面と背面とを連通する孔部を備え、前記供給路が、前記孔部を通じて前記ゲートと前記凹部Iとを連通して形成されている、(1)記載の金型。
【0012】
(4) 前記供給路、及び前記凹部Iの深さが、前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記供給路、及び前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、(2)記載の金型。
【0013】
(5) 前記凹部Iの深さが、前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、(3)記載の金型。
【0014】
(6) 前記ゲートは、前記電子基板の側面を含む平面よりも金型側面側に、少なくとも1箇所設けられている(2)又は(4)に記載の金型。
【0015】
(7) 前記支持体が前記電子基板と当接する面に凹部IIIを有し、前記凹部IIIは、前記電子基板と前記支持体とが当接している状態で前記凹部Iの一部を形成し、前記支持体の前記電子基板と当接する面は、前記支持体が前記電子基板から離間している状態で前記凹部IIの一部を形成する、(1)から(6)何れか記載の金型。
【0016】
(8) 下記、1)から5)の工程を含む、熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法:
1)金型内に設けられた、電子基板の背面に当接及び離間可能な支持体上に前記電子基板を載置した後、金型を型締めする工程、
2)前記金型の電子基板の前面側に設けられたゲートから、射出成形機により溶融熱可塑性樹脂を金型内に注入する工程、
3)前記ゲートと前記電子基板の背面に誘導部を形成するための金型の凹部Iとを連通する供給路を通じて、前記凹部Iに前記溶融熱可塑性樹脂を供給し、前記凹部Iに前記溶融熱可塑性樹脂を充填する工程、
4)前記凹部Iに優先的に前記溶融熱可塑性樹脂を供給しつつ、前記電子基板の表面において前記供給路及び前記凹部Iと連通される、前記電子基板表面に前記誘導部よりも薄肉の被覆部を形成するための金型の凹部IIに、前記溶融熱可塑性樹脂を充填する工程、
5)前記凹部IIに前記溶融熱可塑性樹脂を充填する際に、前記支持体を電子基板から離間させる工程、及び、
6)前記溶融熱可塑性樹脂が固化した後、熱可塑性樹脂封止電子基板を前記金型より離型する工程。
【0017】
(9) 前記供給路が、前記電子基板の前面から側面を経由して前記凹部Iに連通し、且つ、前記電子基板の表面に接して形成されており、前記供給路の深さが前記凹部IIの深さよりも大きい、(8)記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0018】
(10) 前記電子基板が、前面と背面とを連通する孔部を備え、前記供給路が、前記孔部を通じて前記ゲートと前記凹部Iとを連通して形成されている、(8)記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0019】
(11) 前記供給路、及び前記凹部Iの深さが前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記供給路、及び前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、(9)記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0020】
(12) 前記凹部Iの深さが前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの肉厚が1.0mm以上1.5mm以下である、(10)記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0021】
(13) 前記ゲートは、前記電子基板の側面を含む平面よりも金型側面側に、少なくとも1箇所設けられている(9)又は(11)に記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0022】
(14) 前記支持体が前記電子基板と当接する面に凹部IIIを有し、前記凹部IIIは、前記電子基板と前記支持体とが当接している状態で前記凹部Iの一部を形成し、前記支持体の前記電子基板と当接する面は、前記支持体が前記電子基板から離間している状態で前記凹部IIの一部を形成する、(8)から(13)何れか記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0023】
(15) 前記熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂、又は、ポリフェニレンサルファイド樹脂である、(8)から(14)何れか記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0024】
(16) (8)から(15)何れか記載の方法により製造された、熱可塑性樹脂封止電子基板。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板を封止する際の、電子基板の変形、及び充填不良の発生を抑制できる金型、当該金型を用いる電子基板の封止方法、及び当該金型を用いる電子基板の封止方法により製造される熱可塑性樹脂封止電子基板を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる背面側の型をキャビティから見た図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる前面側の型をキャビティから見た図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる背面側の型の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる前面側の型の断面図である。
【図5】背面側の型と前面側の型とを合わせて型締された本発明の第1実施形態の金型の、内部に電子基板が載置された状態での断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる金型を用いて製造される、熱可塑性樹脂封止電子基板の斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる背面側の型をキャビティから見た図である。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる前面側の型をキャビティから見た図である。
【図9】背面側の型と前面側の型とを合わせて型締された本発明の第2実施形態の金型の、内部に電子基板が載置された状態での断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態にかかる金型を用いて製造される、熱可塑性樹脂封止電子基板の斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態にかかる金型において封止される電子基板の例を示す図である。
【図12】本発明の第3実施形態にかかる前面側の型をキャビティから見た図である。
【図13】背面側の型と前面側の型とを合わせて型締された本発明の第3実施形態の金型の、内部に電子基板が載置された状態での断面図である。
【図14】背面側の型と前面側の型とを合わせて型締された本発明の第3実施形態の、図13とは異なる例の金型の、内部に電子基板が載置された状態での断面図である。
【図15】本発明の第4実施形態にかかる金型に備えられる支持体の例を示す斜視図である。
【図16】本発明の第4実施形態にかかる背面側の型をキャビティから見た図である。
【図17】本発明の第4実施形態にかかる背面側の型をキャビティから見た図である。
【図18】背面側の型と前面側の型とを合わせて型締された本発明の第4実施形態の金型の、内部に電子基板が載置された状態での断面図である。
【図19】本発明の第4実施形態にかかる背面側の型の、電子基板に当接している時の支持体の状態を示す斜視図である。
【図20】本発明の第4実施形態にかかる背面側の型の、電子基板から離間している時の支持体の状態を示す斜視図である。
【図21】可動部と板状部とから構成される支持体の例を示す斜視図である。
【図22】実施例1で使用した金型の、内部に電子基板が載置された状態の断面図である。
【図23】実施例2で使用した金型の、内部に電子基板が載置された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲は、これに限定されるものではない。
【0028】
なお、本願の発明の詳細な説明、及び特許請求の範囲において、電子基板の「前面」とは、金型内に電子基板が載置された場合に、金型に設けられたゲートに対向する面を意味する。また電子基板の「背面」は、電子基板の前面の裏側の面を意味する。
【0029】
[1]第1実施形態
<全体構造>
まず、本発明の第1実施形態である、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板1を封止するための金型10について、図1から図6を参照して説明する。
【0030】
図1は背面側の型11をキャビティ側から見た図であり、図2は前面側の型12をキャビティ側から見た図である。また、図3は、図1に記載のA−A’断面における背面側の型11の断面図であり、図4は、図2に記載のA−A’断面における前面側の型12の断面図である。図5は、背面側の型11の支持体13上に電子基板1が載置された後に、背面側の型11と前面側の型12とが型締めされて形成された金型10のA−A’断面における断面図である。図6は第1の実施形態にかかる金型10を用いて製造された、熱可塑性樹脂封止電子基板2の斜視図である。
【0031】
図5に示されるように、第1実施形態の金型10は、以下のa)からe)を備える。
a)電子基板1の前面側に設けられたゲート16、
b)電子基板1の背面に誘導部21を形成するための凹部I14、
c)ゲート16と凹部I14とを連通する供給路17、
d)電子基板1の表面において供給路17及び凹部I14と連通される、電子基板1の表面に誘導部21よりも薄肉の被覆部23を形成するための凹部II15、及び、
e)背面側の型11内の凹部II15に設けられ、電子基板1の背面に当接及び離間可能であり、電子基板1の背面に当接して電子基板1を支持する支持体13。
以下、a)からe)について順に説明する。
【0032】
〔a)ゲート16〕
図2、図4及び図5に示されるように、ゲート16は前面側の型12に形成された供給路17上に形成される。供給路17は、ゲート16と後述する凹部I14とを連通する。ゲート16を通じて、射出成形機(図示せず)によって金型10内に溶融熱可塑性樹脂が供給される。ゲート16の個数は、封止される電子基板1の形状に応じて適宜選択でき、1個でも複数個であってもよい。ゲート16の形状についても、射出成形用の金型に通常採用されるゲートの形状から適宜選択できる。
【0033】
〔b)凹部I14〕
図1、図3、及び図5に示されるように、凹部I14は、電子基板1の背面に誘導部21を形成する目的で、背面側の型11上に電子基板1に接して形成される。凹部I14に充填された熱可塑性樹脂は、図6に示されるように、熱可塑性樹脂封止電子基板2における誘導部21となる。凹部I14の断面形状は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、正方形、長方形、半円等の任意の形状から適宜選択される。
【0034】
凹部I14は、後述する凹部II15と電子基板1の表面で接しており、凹部I14の深さL1は、凹部II15の深さL2よりも大きい。このため、後述する供給路17を通じて供給された溶融熱可塑性樹脂は、流動抵抗の大きな凹部II15よりも、流動抵抗の小さな凹部I14に先に充填される。従って、第1実施形態にかかる金型を用いる場合、電子基板1の背面に誘導部21を形成した後に、凹部II15に溶融熱可塑性樹脂を供給して被覆部23を形成できる。このため、電子基板1の背面が誘導部21により補強され、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板1を封止する際の電子基板1の変形を抑制できる。
【0035】
L1、及びL2の値は、L1がL2より大である限り、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、L1はL2の2倍以上4倍以下が好ましく、2.5倍以上4倍以下がより好ましい。また、凹部I14の幅は、L2の2倍以上4倍以下が好ましく、3倍以上4倍以下がより好ましい。さらに、L2は、1.0mm以上2.0mm以下が好ましく、1.0mm以上1.5mm以下がより好ましい。L1が過大である場合、凹部I14の容積が多くなることから、電子基板1の封止に必要な樹脂量が増加し、熱可塑性樹脂封止電子基板2の製造コストが増加する場合がある。L2が過大である場合、凹部I14と凹部II15との流動抵抗の差がほとんど無くなる場合がある。かかる場合、電子基板1の背面に誘導部21を形成した後に被覆部23を形成し難く、封止による電子基板1変形が発生しやすい傾向がある。L2が過小である場合、凹部II15の流動抵抗が高すぎるため、凹部II15に熱可塑性樹脂が完全に充填されない場合がある。
【0036】
L1とL2との差が過小である場合、凹部I14と凹部II15とへ、ほぼ同時に溶融熱可塑性樹脂が供給されるため、電子基板1に変形が生じやすい。L1とL2との差が過大である場合、凹部I14の容積が多くなることから、電子基板1の封止に必要な樹脂量が増加し、熱可塑性樹脂封止電子基板2の製造コストが増加する場合がある。
【0037】
なお、L1は電子基板1の表面と凹部I14の表面との間の距離であって、電子基板1の表面から垂直方向に測定した最大の距離である。また、L2は、電子基板1の表面と凹部II15の表面との間の距離であって、電子基板1の表面から垂直方向に測定した距離である。
【0038】
〔c)供給路17〕
図1、図3、及び図5に示される通り、供給路17は、電子基板の前面から側面に沿って溶融熱可塑性樹脂をゲートから凹部I14へ供給できるように、ゲート16と凹部I14とを連通する。供給路17に充填された熱可塑性樹脂は、図6に示されるように、熱可塑性樹脂封止電子基板2における供給部22となる。供給路17の断面形状は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、正方形、長方形、半円等の任意の形状から適宜選択される。
【0039】
また、供給路17は、後述する凹部II15と電子基板1の表面において接しており、供給路17の深さL3は、凹部II15の深さL2よりも大きい。L3、及びL2の値は、L3がL2より大である限り、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、L3はL2の2倍以上4倍以下が好ましく、2.5倍以上4倍以下がより好ましい。また、凹部I14の幅は、L2の2倍以上4倍以下が好ましく、3倍以上4倍以下がより好ましい。さらに、L2は、1.0mm以上2.0mm以下が好ましく、1.0mm以上1.5mm以下がより好ましい。L3が過大である場合、供給路17の容積が多くなることから、電子基板1の封止に必要な樹脂量が増加し、熱可塑性樹脂封止電子基板2の製造コストが増加する場合がある。L2が過大である場合、供給路17と凹部II15との流動抵抗の差がほとんど無くなる場合がある。かかる場合、電子基板1の背面に誘導部21を形成した後に被覆部23を形成し難く、封止による電子基板1の変形が発生しやすい傾向がある。
【0040】
また、L3とL2との差が過小である場合、供給路17と凹部II15と、ほぼ同時に溶融熱可塑性樹脂が供給されるため、電子基板の背面に溶融熱可塑性樹脂が先行して充分供給されないため、電子基板の上面に樹脂圧力が大きくかかり、電子基板1に変形が生じやすい。L3とL2との差が過大である場合、供給路17の容積が多くなることから、電子基板1の封止に必要な樹脂量が増加し、熱可塑性樹脂封止電子基板2の製造コストが増加する場合がある。
【0041】
供給路17と凹部II15とを、かかる深さで構成することにより、ゲートから供給される溶融熱可塑性樹脂が流動抵抗の少ない供給路17を優先的に流れて、背面側の型11に形成された凹部I14に溶融熱可塑性樹脂が優先的に供給される。
【0042】
このため、電子基板1の背面に誘導部21を形成した後に、凹部II15に溶融熱可塑性樹脂を充填して被覆部23を形成することが出来る。第1の実施形態の金型10を用いる場合、溶融熱可塑性樹脂のかかる流動挙動によって、電子基板1を変形させることなく、熱可塑性樹脂を用いる射出成形によって電子基板1を封止できる。
【0043】
〔d)凹部II15〕
図1から図5に示される通り、凹部II15は、背面側の型11では、凹部I14に隣接して形成され、前面側の型12では供給路17に隣接して形成される。凹部II15に充填された熱可塑性樹脂は、図6に示されるように、熱可塑性樹脂封止電子基板2における被覆部23となる。
【0044】
〔e)支持体13〕
支持体13は、背面側の型11に設けられ、電子基板1の背面に当接及び離間可能であり、電子基板1の背面に当接して電子基板1を支持する。背面側の型11における支持体13の位置は、電子基板1を支持できる限り特に限定されないが、典型的には、図1及び図5に示されるように、背面側の型11内の凹部II15に支持体13は設けられる。支持体13は、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂が半分程度充填された時から、支持体13に溶融熱可塑性樹脂が到達する時の間に、電子基板1の背面から離間される。支持体13を、かかるタイミングで電子基板1から離間させることにより、凹部II15に完全に樹脂を充填することができる。
【0045】
電子基板1の封止に、凹部I14を備えない金型を用いる場合、電子基板1の背面に一気に溶融熱可塑性樹脂が充填されるため、支持体13を電子基板1の背面から離間させるタイミングの制御が困難である。このため、かかる金型を用いる場合、支持体13の離間の遅れにより、背面に支持体13の痕跡である孔が形成された、熱可塑性樹脂封止電子基板2が得られる場合がある。
【0046】
一方、第1実施形態にかかる金型によれば、凹部I14の深さL1と凹部II15の深さL2との差によって、凹部I14と凹部II15との間に、溶融熱可塑性樹脂の流動抵抗に差が生じ、凹部II15に遅れて溶融熱可塑性樹脂が充填される。このため、第1実施形態にかかる金型を用いて電子基板1を封止する場合、支持体13に溶融熱可塑瀬樹脂が到達するまでの時間が長く、支持体13を電子基板1の背面から離間させるタイミングの制御が非常に容易である。
【0047】
支持体13の形状は、電子基板1を支持できる限り特に限定されないが、電子基板1に支持体13を当接又は離間させる際にスムーズに動作させやすいため、円柱状であるのが好ましい。
【0048】
以上説明した第1実施形態によれば、熱可塑性樹脂を用いる射出成形によって電子基板1を封止する際の電子基板1の変形を抑制することができ、支持体13を電子基板1の背面から離間させるタイミングの制御が容易となり、充填不良の発生を抑制できる。
【0049】
[2]第2実施形態
以下、第2実施形態にかかる金型について、図7から図10を参照して説明する。図7は背面側の型11をキャビティ側から見た図であり、図8は前面側の型12をキャビティ側から見た図である。また、図3は、図1に記載のA−A’断面における背面側の型11の断面図であり、図4は、図2に記載のA−A’断面における前面側の型12の断面図である。図9は、背面側の型11の支持体13上に電子基板1が載置された後に、背面側の型11と前面側の型12とが型締めされて形成された金型10の、図7及び図8に記載のA−A’断面における断面図である。図10は第2の実施形態にかかる金型10を用いて製造された、熱可塑性樹脂封止電子基板2の斜視図である。
【0050】
図7から図9に示されるように、第2実施形態にかかる金型は、前面と背面とを連通する孔部18を備える電子基板1の封止に使用される点と、供給路17が孔部18を通じて、ゲート16と凹部I14とを連通して形成されている点を除いて第1実施形態にかかる金型と同様である。
【0051】
図9に示されるように、ゲート16は電子基板1に形成された孔部18の近傍に位置する。ゲート16と凹部I14とは、電子基板1の孔部18の内部の空間である供給路17によって連通される。図9には、ゲート16の直下である電子基板1の中央に、1つの孔部18が設けられている態様を示したが、電子基板1に設けられる孔部18の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂封止電子基板2において、電子基板1の背面に、背面の中心にて交差する十字形状の誘導部21が形成される場合、図11に示されるように、電子基板1における誘導部21が形成される位置に対応する箇所に、孔部18を複数形成することも好ましい。かかる電子基板1を用いる場合、速やかに電子基板1の背面の凹部I14に溶融熱可塑性樹脂を供給できるため、封止時の電子基板1の変形を抑制しやすくなる。
【0052】
第2実施形態の金型を用いる場合、電子基板1の背面側の凹部II15は、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂が充填された後に、溶融熱可塑性樹脂が充填される。また、電子基板1の前面側の凹部II15は、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂が充填された後に、電子基板1の外周の空間、及び/又は、ゲート16と電子基板1との間の空間を経由して、溶融熱可塑性樹脂が充填される。
【0053】
第2実施形態によれば、金型に容積の大きな供給路17を設ける必要がないため、電子基板1を封止するための樹脂量を低減できる。このため、第2実施形態によれば、封止時の電子基板1の変形を抑制しつつ、熱可塑性樹脂封止電子基板2の製造コストの低減が期待できる。
【0054】
[3]第3実施形態
以下、第3実施形態にかかる金型について、図12、図13を参照して説明する。図12は本発明の第3実施形態にかかる前面側の型をキャビティから見た図である。図13は背面側の型と前面側の型とを合わせて型締された本発明の第3実施形態の金型の、内部に電子基板が載置された状態での断面図である。
【0055】
図12、図13に示されるように、第3実施形態にかかる金型は、ゲート16が、上記電子基板1の側面よりも外側に設けられる点を除いて第1実施形態にかかる金型と同様である。
【0056】
図12、図13に示されるように、ゲート16は電子基板1の側面を含む平面よりも金型側面側に位置する。図12、図13には、ゲート16から供給される溶融熱可塑性樹脂の流れる方向が、電子基板1の側面を含む平面に対して平行になる位置にゲート16が設けられる態様を示したが、図14に示すように、電子基板1の側面にゲート16を設けてもよい。かかる位置にゲート16を設けることで、ゲート16から供給される溶融熱可塑性樹脂が電子基板1の表面に直接衝突することを抑えられるため、封止時の電子基板1の変形を抑制しやすくなる。また、このような場合、ゲート数はキャビティへの樹脂の供給バランスを考慮して複数設けることが好ましい。
【0057】
また、第3実施形態にかかる金型においても、複数の位置にゲート16が設けられていてもよい。例えば、電子基板1の表面と対向する位置(例えば、図2に示す位置)と、第3実施形態におけるゲート16の位置との両方に設けられていれば、電子基板1の表面と電子基板1の背面とにバランスよく溶融熱可塑性樹脂が共有されて、封止時の電子基板1の変形を抑制しやすくなる。
【0058】
[4]第4実施形態
以下、第4実施形態にかかる金型について、図15から図20を参照して説明する。図15は、第4実施形態にかかる金型が備える支持体13の具体例に関する斜視図である。図16は、電子基板1と当接する面に十字型の溝を有する支持体13を備える背面側の型11をキャビティ側から見た図である。図17は、電子基板1と当接する面に直線状の溝を有する支持体13を備える背面側の型11をキャビティ側から見た図である。図18は、図16に記載の背面側の型11に電子基板1を載置し、図4に記載の前面側の型12と図16に記載の背面側の型11とをあわせた状態の、図16に記載のA−A’断面における断面図である。図19は、図16に記載の背面側の型11における、支持体13と電子基板1とが当接する際の支持体13の状態を示す斜視図である。図20は、図16に記載の背面側の型11における、支持体13が電子基板1から離間している際の支持体13の状態を示す斜視図である。
【0059】
第4実施形態に係る金型は、電子基板1と当接する面に凹部III19を有する支持体13を備え、凹部III19は、電子基板1と支持体13とが当接している状態で凹部I14の一部を形成し、支持体13の電子基板1と当接する面は、支持体13が電子基板1から離間している状態で凹部II15の一部を形成する。例えば、熱可塑性樹脂封止電子基板2の形状が、図6に示されるように電子基板1の背面側に十字型の誘導部21を有する形状である場合には、例えば、図15に示されるように、電子基板1と当接する面に、直線状の溝や、十字型の溝を設けて凹部III19を形成された支持体13を用いることができる。
【0060】
支持体13における凹部III19の形状は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、図16、及び図17に示されるように、凹部I14の側面と凹部III19の側面とが、背面側の型11において連続した面となるように形成されるのが好ましい。
【0061】
また、凹部I14と凹部III19とは連続する面であっても、不連続な面であってもよい。典型的には、図18、及び図19に示されるように、支持体13は、凹部III19の内面と、凹部I14の内面とが連続した面を形成して凹部III19が凹部I14の一部を構成するように、背面側の型11から突出して、電子基板1を支持するのが好ましい。かかる態様で、支持体13が電子基板1を支持することにより、凹部I14に優先的に溶融状態の熱可塑性樹脂を供給して誘導部21を形成しつつ、凹部Iと凹部IIとに熱可塑性樹脂を供給できる。このため、封止時の電子基板1の変形の発生が抑制される。
【0062】
さらに、図20に示されるように、支持体13は、電子基板1から、支持体13の電子基板1と当接する面が凹部IIの一部を形成するように、凹部Iに熱可塑性樹脂が充填された後に、電子基板1から離間する。このため、第4実施形態にかかる金型によれば、支持体13付近に充填された熱可塑性樹脂が固化する前に、支持体13を電子基板1から離間させることにより、充填不良を起すことなく凹部IIに熱可塑性樹脂を充填して被覆部23を形成できる。
【0063】
第4実施形態にかかる金型では、少数の支持体13によって、金型内で電子基板1を支持できるため、支持体13の動作不良等による成形不良の発生を抑制できる。
【0064】
[5]第5実施形態
以下、第5実施形態にかかる、熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法について説明する。第5実施形態では、第1実施形態にかかる金型を用いて、射出成形により、熱可塑性樹脂によって電子基板を封止する。まず、封止される電子基板、及び封止に用いる熱可塑性樹脂について説明し、次いで、熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法に含まれる各工程について説明する。
【0065】
〔電子基板〕
第5実施形態において封止される電子基板は、従来から電気・電子部品の製造に使用される電子基板であれば特に限定されず、単層基板であっても、多層基板であってもよい。また、電子基板はその表面に電子部品が実装されたものであっても、実装されていないものであってもよい。
【0066】
電子基板の材料は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来電子基板の材料として使用されてきた、有機材料、無機材料、又はこれらの複合材料から適宜選択できる。電子基板の好適な材料の具体例としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶性ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、又はこれらの組合せ等の樹脂が挙げられる。電子基板の材料が樹脂である場合、これらの樹脂は、ガラス繊維、高弾性樹脂繊維、炭素繊維、又は金属繊維等の繊維を含むのが好ましい。かかる場合、繊維材料は織布、又は不織布の形態であるのが好ましい。
【0067】
電子基板の形状は、金型のゲート側に相当する前面と、金型内で支持体と当接する背面とが区別できる限り特に限定されず、平面状、曲面状、又はこれらの形状の組合せであってもよい。
【0068】
本発明において封止される電子基板の厚さは、使用目的に応じて適宜決められる。基板が薄い場合には、封止時の変形を十分に抑制できない場合がある。
【0069】
〔熱可塑性樹脂〕
第5実施形態において用いる熱可塑性樹脂は、射出成形可能であれば特に限定されず、封止される電子基板の用途と使用環境とに応じて、適宜選択できる。電子基板の封止に用いる熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂及び非結晶性樹脂の何れも使用できる。具体例としては、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ4−メチル−ペンテン−1、ポリ環状オレフィン等)、ポリスチレン(PS)、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、(メタ)アクリル樹脂、セルロース系樹脂、エラストマー等の汎用熱可塑性樹脂;脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、ナイロン6,12等)、芳香族ポリアミド(MXDナイロン等)、芳香族ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリアリーレンサルファイド(PAS)(ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等)、ポリスルフォン(PSu)、ポリイミド(PI)、液晶性ポリマー(LCP)(液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミド、液晶ポリアミド等)のエンジニアリングプラスチック;脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、及び、脂肪族ヒドロキシカルボン酸若しくはその環状化合物からなる群から選択される単量体を重縮合して得られる脂肪族ポリエステル、ジイソシアネート等により高分子量化された脂肪族ポリエステル等の生分解性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0070】
上記の熱可塑性樹脂の中では、ポリブチレンテレフタレート樹脂、又はポリフェニレンサルファイド樹脂が特に好ましい。ポリフェニレンサルファイド樹脂は、高い耐熱性、機械的物性、耐薬品性、寸法安定性、及び難燃性等に優れ、ポリブチレンテレフタレート樹脂は高い機械的物性、電気的物性、耐薬品性等に優れることから、電子基板封止に好適に用いられる。
【0071】
熱可塑性樹脂は、成形品の機械的特性の改良の目的等で充填材を配合できる。熱可塑性樹脂に配合される充填材の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来から高分子材料の充填材として使用される種々の充填材を使用することができ、無機充填材及び有機充填材の何れも使用できる。また、充填材の形状は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されず、繊維状充填材、粉粒状充填材、及び板状充填材の何れも好適に使用できる。
【0072】
好適な繊維状充填材として、例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物等の無機質繊維状物質が挙げられる。
【0073】
好適な粉粒状充填材としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如き珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。また、好適な板状充填材としては、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。
【0074】
これらの充填材の中では、コストと得られる第一成形品の物性とのバランスに優れることからガラス繊維を用いるのが特に好ましい。
【0075】
ガラス繊維としては、公知のガラス繊維が何れも好ましく用いられ、ガラス繊維径や、円筒、繭形断面、長円断面等の断面形状、あるいはチョップドストランドやロービング等の製造に用いる際の長さやガラスカットの方法にはよらない。本発明において、ガラス繊維の原料となるガラスの種類は特に限定されないが、品質上、Eガラスや、組成中にジルコニウム元素を含む耐腐食ガラスが好ましく用いられる。
【0076】
また、熱可塑性樹脂のマトリックスと充填材との界面特性を向上させる目的で、シラン化合物やエポキシ化合物等の有機処理剤で表面処理された充填材が好ましく用いられる。かかる充填材に用いられるシラン化合物やエポキシ化合物としては公知のものが何れも好ましく用いることができ、本発明で充填材の表面処理に用いられるシラン化合物、エポキシ化合物の種類には依存しない。
【0077】
充填材の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、典型的には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、5質量部以上120質量部以下が好ましく、10質量部以上100質量部以下がより好ましく、15質量部以上80質量部以下が特に好ましい。
【0078】
また、熱可塑性樹脂は、必要に応じて、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、染料、顔料、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等をさらに添加して使用できる。
【0079】
〔熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法〕
第5実施形態にかかる熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法は、下記の第1から第6の工程を含む。
1)金型10内に設けられた、電子基板1の背面に当接及び離間可能な支持体13上に電子基板1を載置した後、金型10を型締めする工程、
2)金型10の電子基板1の前面側に設けられたゲート16から、射出成形機により溶融熱可塑性樹脂を金型10内に注入する工程、
3)ゲート16と電子基板1の背面に誘導部21を形成するための金型の凹部I14とを連通する供給路17を通じて、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂を供給し、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂を充填する工程、
4)凹部I14に溶融熱可塑性樹脂が充填された後に、電子基板1の表面において供給路17及び凹部I14と連通される、電子基板1の表面に誘導部21よりも薄肉の被覆部23を形成するための金型の凹部II15に、溶融熱可塑性樹脂を充填する工程、
5)凹部II15に溶融熱可塑性樹脂を充填する際に、支持体13を電子基板1から離間させる工程、及び、
6)溶融熱可塑性樹脂が固化した後、熱可塑性樹脂封止電子基板2を金型10より離型する工程。
【0080】
以下、第1工程から第6工程について、図5及び図6を参照して説明する。
【0081】
<第1工程>
第1工程は、金型10内に設けられた電子基板1の背面に当接及び離間可能な支持体13上に電子基板1を載置した後、金型10を型締めする工程である。
【0082】
図5に示されるように、支持体13は、支持体13上に電子基板1を載置した際に、金型10内において、凹部I14の深さL1、凹部II15の深さL2、供給路17の深さL3が所定の値となる様に、背面側の型11の凹部II15から突出して電子基板1の背面に当接する。背面側の型11の所定の位置に電子基板1が載置された後に、電子基板1の背面側の型11と前面側の型12とが合わせられ、型締めされる。
【0083】
<第2工程>
第2工程は、電子基板1の前面側の型12に設けられたゲート16から、射出成形機(図示せず)により、背面側の型11と前面側の型12とが合わせられた金型10内に、溶融熱可塑性樹脂を注入する工程である。
【0084】
第2工程における射出成形条件は特に限定されず、使用する熱可塑性樹脂の種類に応じて、適宜決定することが出来る。
〔第3工程〕
第3工程は、ゲート16と電子基板1の凹部I14とを連通する供給路17を通じて、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂を供給し、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂を充填する工程である。凹部I14に溶融熱可塑性樹脂が充填され、図6に示されるように電子基板1の背面に誘導部21が形成される。また、供給路17内の熱可塑性溶融樹脂は、図6に示されるように電子基板1の前面の供給部22となる。供給部22も誘導部21と同様に、封止時の電子基板1の変形を抑制する。
【0085】
第1実施形態にかかる金型について説明したように、金型10内において、凹部I14の深さL1、凹部II15の深さL2、及び供給路17の深さL3が所定の関係を満たすことにより、供給路17を通じて、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂を優先的に供給することができる。このため、電子基板1の背面に誘導部21を形成した後に、被覆部23を形成することができるため、封止時の電子基板1の変形を抑制できる。
【0086】
〔第4工程〕
第4工程は、第3工程において凹部I14への溶融熱可塑性樹脂の充填が開始された後に、凹部I14に優先的に溶融熱可塑性樹脂を供給しつつ、電子基板1の表面において供給路17及び凹部I14と連通される凹部II15に熱可塑性樹脂を充填する工程である。凹部II15に溶融熱可塑性樹脂が充填され、図6に示されるように、誘導部21、及び供給部22よりも薄肉の被覆部23が電子基板1の前面、及び背面に形成される。
【0087】
電子基板1の背面を、熱可塑性樹脂により完全に封止するためには、射出成形時に、電子基板1の背面にある程度溶融熱可塑性樹脂が供給されたタイミングで、電子基板1の背面を支持する支持体13を、電子基板1の背面から離間させる必要がある。
【0088】
第5実施形態にかかる方法によれば、第1実施形態にかかる金型について説明した通り、凹部I14の深さL1と凹部II15の深さL2との差によって、凹部I14と凹部II15との間に、溶融熱可塑性樹脂の流動抵抗に差が生じ、凹部II15に遅れて溶融熱可塑性樹脂が充填される。このため、第5実施形態にかかる方法によれば、支持体13に溶融熱可塑瀬樹脂が到達するまでの時間が長く、支持体13を電子基板1の背面から離間させるタイミングの制御が非常に容易である。
【0089】
以上説明した第5実施形態によれば、第1実施形態と同様に、熱可塑性樹脂を用いる射出成形によって電子基板1を封止する際の電子基板1の変形を抑制することができ、支持体13を電子基板1の背面から離間させるタイミングの制御が容易となり、充填不良の発生を抑制できる。
【0090】
〔第5工程〕
第5工程は、凹部II15に溶融熱可塑性樹脂を充填する際に、支持体13を電子基板1から離間させる工程である。凹部II15に熱可塑性樹脂を充填して電子基板1の表面に被覆部23を形成する際に、支持体13を電子基板1から離間させることによって、支持体13と電子基板1との接触面も熱可塑性樹脂により被覆することが可能となる。
【0091】
〔第6工程〕
第6工程は、金型10のキャビティ内で熱可塑性樹脂が固化した後、熱可塑性樹脂封止電子基板2を金型10より離型する工程である。熱可塑性樹脂封止電子基板2の金型10からの離型方法は特に限定されない。例えば、常法に従い、金型10を背面側の型11と前面側の型12とに分割した後、イジェクタピンを用いて熱可塑性樹脂封止電子基板2を離型することができる。
【0092】
[6]第6実施形態
第6実施形態にかかる熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法は、第2実施形態にかかる金型を用いる他は、第5実施形態にかかる熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法と同様である。
【0093】
第6実施形態によれば、第2実施形態と同様に、金型に容積の大きな供給路17を設ける必要がないため、電子基板1を封止するための樹脂量を低減できる。このため、第6実施形態によれば、封止時の電子基板1の変形を抑制しつつ、熱可塑性樹脂封止電子基板2の製造コストの低減が期待できる。
【0094】
[7]第7実施形態
第7実施形態にかかる熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法は、第4の実施形態にかかる金型を用いる他は、第5実施形態にかかる熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法と同様である。
【0095】
第7実施形態によれば、少数の支持体13によって、金型内で電子基板1を支持できるため、第4実施形態と同様に、支持体13の動作不良等による成形不良の発生を抑制できる。
【0096】
[変形例]
本発明は上述の第1から第7実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0097】
〔変形例1〕
第1及び第5実施形態では、凹部I14、及び供給路17の形状を十字型とし、第2及び第5実施形態では、凹部I14の形状を十字型としたが、凹部I14、及び/又は供給路17の形状を格子型やハニカム型とすることもできる。凹部I14、及び/又は供給路17の形状をかかる形状とすることで、十字型よりも高い補強効果が期待でき、封止時の電子基板の変形をより抑制できる。
【0098】
〔変形例2〕
第1から第7実施形態では、金型10を、背面側の型11と前面側の型12とに2分割される金型としたが、背面側の型11と前面側の型12とは、さらに所望の数に分割することができる。背面側の型11と前面側の型12とを、かかる構造とすることにより、複雑な形状の電子基板1であっても封止できる。
【0099】
〔変形例3〕
第1から第7実施形態では、円柱状の支持体13について説明したが、第1から第7実施形態では、図21に示されるように、柱状の可動部13aと、可動部の先端に設けられ、電子基板1の背面に当接する板状部13bとから構成される支持体13を用いてもよい。柱状の可動部13aの形状は、支持体13が電子基板1に当接及び離間可能であれば特に限定されず、例えば、円柱状や、四角柱状であってよい。板状部13bの形状は特に限定されず、例えば、円形や、四角形であってよい。支持体13をかかる構成とする場合、面積の広い板状部13bにより電子基板1が支持されるため、金型内で電子基板1の位置を安定させやすい。このため、表面に形成される被覆部23等の熱可塑性樹脂層の厚さが安定した熱可塑性樹脂封止電子基板の製造が容易である。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0101】
〔実施例1〕
電子基板として、縦45mm、横45mm、厚さ1.6mmのガラスエポキシ基板を用いた。図22に、実施例1で用いた金型について、金型に電子基板を載置した状態の、電子基板の対向する辺をそれぞれ中点で結んだ線における断面図を示す。前面側の型には、キャビティの中心で交差する十字型の供給路を設け、背面側の型には、キャビティの中心で交差する十字型の凹部Iを設けた。
【0102】
背面側の型に設けられた凹部Iは、電子基板表面からの深さが5mmであり、幅が4mmである。背面側の型、及び前面側の型において、電子基板の前面、背面、及び側面に被覆部を形成するように設けられた凹部IIは、電子基板表面からの深さが2mmである。前面側の型、及び背面側の型において、電子基板の前面から側面にかけて設けられた供給路は、電子基板表面からの深さが5mmであり、幅4mmである。背面側の金型は、凹部IIにおいて、円柱状の支持体を4つ備える。
【0103】
上記の電子基板を、上記形状の金型を用いて、射出成形機により各樹脂の標準的な成形条件により封止したところ、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ジュラネックス303RA、ウィンテックポリマー株式会社製)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(フォートロン6165A61、ポリプラスチックス株式会社製)何れによっても、電子基板の変形、及び被覆部における支持体の痕跡の形成を生じることなく、安定して熱可塑性樹脂封止電子基板を製造できた。
【0104】
〔実施例2〕
電子基板として、縦45mm、横45mm、厚さ1.6mmのガラスエポキシ基板を用いた。電子基板には、電子基板背面に熱可塑性樹脂を供給する供給路として、図11に示される配置で、貫通孔の外周間の間隔が5mmとなるように、直径3.5mmの貫通孔を設けた。なお、基板中央の貫通孔は、基板の対角線の交点を中心として形成した。
【0105】
図23に、実施例2で用いた金型について、金型に電子基板を載置した状態の、電子基板の対向する辺をそれぞれ中点で結んだ線における断面図を示す。電子基板の孔部を供給路としたため、前面側の型には供給路を設けなかった。また、背面側の型には、キャビティの中心で交差する十字型の凹部Iを設けた。
【0106】
背面側の型に設けられた凹部Iは、電子基板表面からの深さが5mmであり、幅が4mmである。背面側の型、及び前面側の型において、電子基板の前面、背面、及び側面に被覆部を形成するように設けられた凹部IIは、電子基板表面からの深さが2mmである。背面側の金型は、凹部IIにおいて、円柱状の支持体を4つ備える。
【0107】
上記の電子基板を、上記形状の金型を用いて、実施例1と同条件で封止したところ、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂何れによっても、電子基板の変形、及び被覆部における支持体の痕跡の形成を生じることなく、安定して熱可塑性樹脂封止電子基板を製造できた。
【0108】
〔比較例1〕
実施例1で用いた金型の、供給路、及び凹部Iが塞がれた金型を用いて、実施例1で用いた電子基板を、実施例1と同条件で封止したところ、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂何れによっても、電子基板が変形し、基板背面側に樹脂を完全に充填させることが出来なかった。
【符号の説明】
【0109】
1 電子基板
10 金型
11 背面側の型
12 前面側の型
13 支持体
14 凹部I
15 凹部II
16 ゲート
17 供給路
18 孔部
19 凹部III
2 熱可塑性樹脂封止電子基板
21 誘導部
22 供給部
23 被覆部
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板を封止するための金型、熱可塑性樹脂を用いる射出成形による熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法、及び熱可塑性樹脂封止電子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の電子基板等の種々の電子基板が、その保護のために、熱可塑性樹脂を封止材料として用いて全体を包み込むように封止された封止電子基板として使用されている。
【0003】
かかる封止電子基板の製造方法としては、溶融熱可塑性樹脂による封止時の電子基板へのダメージを考慮して、低粘度の溶融熱可塑性樹脂を低圧で金型内に注入するホットメルトモールディングと呼ばれる方法が採用されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、ホットメルトモールディング法では、溶融粘度の低い熱可塑性樹脂を使用する必要があり、封止材料の選択肢が大きく制限されることや、金型内への溶融熱可塑性樹脂の注入を低圧で行うために、成形サイクルが長く、封止電子基板の製造コストが高い等の問題がある。このため、封止材料の選択肢が広く、生産効率の高い射出成形法による電子基板の封止方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−131966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、射出成形により電子基板を封止する場合、溶融熱可塑性樹脂が高圧で瞬時に金型内に注入されるため、電子基板がダメージを受け変形しやすい問題がある。また、電子基板の表面を完全に封止するためには、金型内で電子基板を支持する支持体を、金型内にある程度熱可塑性樹脂が充填された段階で電子基板から離間させる必要がある。しかし、射出成形では、金型内に瞬時に熱可塑性樹脂が注入されるため、支持体の離間のタイミングの制御が難しい。このため、熱可塑性樹脂が支持体の周囲に充填された後に支持体が離間された場合には、支持体が電子基板に当接していた箇所に熱可塑性樹脂が充填されず、充填不良が発生する場合がある。
【0007】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板を封止する際の、電子基板の変形、及び充填不良の発生を抑制できる金型、当該金型を用いる電子基板の封止方法、及び当該金型を用いる電子基板の封止方法により製造される熱可塑性樹脂封止電子基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、
a)電子基板の前面側に設けられたゲート、
b)電子基板の背面に誘導部を形成する凹部I、
c)ゲートと凹部Iとを連通する供給路、電子基板の表面において供給路及び凹部Iと連通される、電子基板の表面に誘導部よりも薄肉の被覆部を形成する凹部II、及び、
e)電子基板の背面側に設けられ、電子基板の背面に当接及び離間可能であり、電子基板の背面に当接して電子基板を支持する支持体を備える金型を用いて、電子基板を、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により封止することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) 以下のa)からe)を備える、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板を封止するための金型:
a)前記電子基板の前面側に設けられたゲート、
b)前記電子基板の背面に誘導部を形成するための凹部I、
c)前記ゲートと前記凹部Iとを連通する供給路、
d)前記電子基板の表面において前記供給路及び前記凹部Iと連通される、前記電子基板の表面に前記誘導部よりも薄肉の被覆部を形成するための凹部II、及び、
e)前記電子基板の背面側に設けられ、前記電子基板の背面に当接及び離間可能であり、前記電子基板の背面に当接して前記電子基板を支持する支持体。
【0010】
(2) 前記供給路が、前記電子基板の前面から側面を経由して前記凹部Iに連通し、且つ、前記電子基板の表面に接して形成されており、前記供給路の深さが前記凹部IIの深さよりも大きい、(1)記載の金型。
【0011】
(3) 前記電子基板が、前面と背面とを連通する孔部を備え、前記供給路が、前記孔部を通じて前記ゲートと前記凹部Iとを連通して形成されている、(1)記載の金型。
【0012】
(4) 前記供給路、及び前記凹部Iの深さが、前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記供給路、及び前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、(2)記載の金型。
【0013】
(5) 前記凹部Iの深さが、前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、(3)記載の金型。
【0014】
(6) 前記ゲートは、前記電子基板の側面を含む平面よりも金型側面側に、少なくとも1箇所設けられている(2)又は(4)に記載の金型。
【0015】
(7) 前記支持体が前記電子基板と当接する面に凹部IIIを有し、前記凹部IIIは、前記電子基板と前記支持体とが当接している状態で前記凹部Iの一部を形成し、前記支持体の前記電子基板と当接する面は、前記支持体が前記電子基板から離間している状態で前記凹部IIの一部を形成する、(1)から(6)何れか記載の金型。
【0016】
(8) 下記、1)から5)の工程を含む、熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法:
1)金型内に設けられた、電子基板の背面に当接及び離間可能な支持体上に前記電子基板を載置した後、金型を型締めする工程、
2)前記金型の電子基板の前面側に設けられたゲートから、射出成形機により溶融熱可塑性樹脂を金型内に注入する工程、
3)前記ゲートと前記電子基板の背面に誘導部を形成するための金型の凹部Iとを連通する供給路を通じて、前記凹部Iに前記溶融熱可塑性樹脂を供給し、前記凹部Iに前記溶融熱可塑性樹脂を充填する工程、
4)前記凹部Iに優先的に前記溶融熱可塑性樹脂を供給しつつ、前記電子基板の表面において前記供給路及び前記凹部Iと連通される、前記電子基板表面に前記誘導部よりも薄肉の被覆部を形成するための金型の凹部IIに、前記溶融熱可塑性樹脂を充填する工程、
5)前記凹部IIに前記溶融熱可塑性樹脂を充填する際に、前記支持体を電子基板から離間させる工程、及び、
6)前記溶融熱可塑性樹脂が固化した後、熱可塑性樹脂封止電子基板を前記金型より離型する工程。
【0017】
(9) 前記供給路が、前記電子基板の前面から側面を経由して前記凹部Iに連通し、且つ、前記電子基板の表面に接して形成されており、前記供給路の深さが前記凹部IIの深さよりも大きい、(8)記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0018】
(10) 前記電子基板が、前面と背面とを連通する孔部を備え、前記供給路が、前記孔部を通じて前記ゲートと前記凹部Iとを連通して形成されている、(8)記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0019】
(11) 前記供給路、及び前記凹部Iの深さが前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記供給路、及び前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、(9)記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0020】
(12) 前記凹部Iの深さが前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの肉厚が1.0mm以上1.5mm以下である、(10)記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0021】
(13) 前記ゲートは、前記電子基板の側面を含む平面よりも金型側面側に、少なくとも1箇所設けられている(9)又は(11)に記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0022】
(14) 前記支持体が前記電子基板と当接する面に凹部IIIを有し、前記凹部IIIは、前記電子基板と前記支持体とが当接している状態で前記凹部Iの一部を形成し、前記支持体の前記電子基板と当接する面は、前記支持体が前記電子基板から離間している状態で前記凹部IIの一部を形成する、(8)から(13)何れか記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0023】
(15) 前記熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂、又は、ポリフェニレンサルファイド樹脂である、(8)から(14)何れか記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【0024】
(16) (8)から(15)何れか記載の方法により製造された、熱可塑性樹脂封止電子基板。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板を封止する際の、電子基板の変形、及び充填不良の発生を抑制できる金型、当該金型を用いる電子基板の封止方法、及び当該金型を用いる電子基板の封止方法により製造される熱可塑性樹脂封止電子基板を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる背面側の型をキャビティから見た図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる前面側の型をキャビティから見た図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる背面側の型の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる前面側の型の断面図である。
【図5】背面側の型と前面側の型とを合わせて型締された本発明の第1実施形態の金型の、内部に電子基板が載置された状態での断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる金型を用いて製造される、熱可塑性樹脂封止電子基板の斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる背面側の型をキャビティから見た図である。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる前面側の型をキャビティから見た図である。
【図9】背面側の型と前面側の型とを合わせて型締された本発明の第2実施形態の金型の、内部に電子基板が載置された状態での断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態にかかる金型を用いて製造される、熱可塑性樹脂封止電子基板の斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態にかかる金型において封止される電子基板の例を示す図である。
【図12】本発明の第3実施形態にかかる前面側の型をキャビティから見た図である。
【図13】背面側の型と前面側の型とを合わせて型締された本発明の第3実施形態の金型の、内部に電子基板が載置された状態での断面図である。
【図14】背面側の型と前面側の型とを合わせて型締された本発明の第3実施形態の、図13とは異なる例の金型の、内部に電子基板が載置された状態での断面図である。
【図15】本発明の第4実施形態にかかる金型に備えられる支持体の例を示す斜視図である。
【図16】本発明の第4実施形態にかかる背面側の型をキャビティから見た図である。
【図17】本発明の第4実施形態にかかる背面側の型をキャビティから見た図である。
【図18】背面側の型と前面側の型とを合わせて型締された本発明の第4実施形態の金型の、内部に電子基板が載置された状態での断面図である。
【図19】本発明の第4実施形態にかかる背面側の型の、電子基板に当接している時の支持体の状態を示す斜視図である。
【図20】本発明の第4実施形態にかかる背面側の型の、電子基板から離間している時の支持体の状態を示す斜視図である。
【図21】可動部と板状部とから構成される支持体の例を示す斜視図である。
【図22】実施例1で使用した金型の、内部に電子基板が載置された状態の断面図である。
【図23】実施例2で使用した金型の、内部に電子基板が載置された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲は、これに限定されるものではない。
【0028】
なお、本願の発明の詳細な説明、及び特許請求の範囲において、電子基板の「前面」とは、金型内に電子基板が載置された場合に、金型に設けられたゲートに対向する面を意味する。また電子基板の「背面」は、電子基板の前面の裏側の面を意味する。
【0029】
[1]第1実施形態
<全体構造>
まず、本発明の第1実施形態である、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板1を封止するための金型10について、図1から図6を参照して説明する。
【0030】
図1は背面側の型11をキャビティ側から見た図であり、図2は前面側の型12をキャビティ側から見た図である。また、図3は、図1に記載のA−A’断面における背面側の型11の断面図であり、図4は、図2に記載のA−A’断面における前面側の型12の断面図である。図5は、背面側の型11の支持体13上に電子基板1が載置された後に、背面側の型11と前面側の型12とが型締めされて形成された金型10のA−A’断面における断面図である。図6は第1の実施形態にかかる金型10を用いて製造された、熱可塑性樹脂封止電子基板2の斜視図である。
【0031】
図5に示されるように、第1実施形態の金型10は、以下のa)からe)を備える。
a)電子基板1の前面側に設けられたゲート16、
b)電子基板1の背面に誘導部21を形成するための凹部I14、
c)ゲート16と凹部I14とを連通する供給路17、
d)電子基板1の表面において供給路17及び凹部I14と連通される、電子基板1の表面に誘導部21よりも薄肉の被覆部23を形成するための凹部II15、及び、
e)背面側の型11内の凹部II15に設けられ、電子基板1の背面に当接及び離間可能であり、電子基板1の背面に当接して電子基板1を支持する支持体13。
以下、a)からe)について順に説明する。
【0032】
〔a)ゲート16〕
図2、図4及び図5に示されるように、ゲート16は前面側の型12に形成された供給路17上に形成される。供給路17は、ゲート16と後述する凹部I14とを連通する。ゲート16を通じて、射出成形機(図示せず)によって金型10内に溶融熱可塑性樹脂が供給される。ゲート16の個数は、封止される電子基板1の形状に応じて適宜選択でき、1個でも複数個であってもよい。ゲート16の形状についても、射出成形用の金型に通常採用されるゲートの形状から適宜選択できる。
【0033】
〔b)凹部I14〕
図1、図3、及び図5に示されるように、凹部I14は、電子基板1の背面に誘導部21を形成する目的で、背面側の型11上に電子基板1に接して形成される。凹部I14に充填された熱可塑性樹脂は、図6に示されるように、熱可塑性樹脂封止電子基板2における誘導部21となる。凹部I14の断面形状は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、正方形、長方形、半円等の任意の形状から適宜選択される。
【0034】
凹部I14は、後述する凹部II15と電子基板1の表面で接しており、凹部I14の深さL1は、凹部II15の深さL2よりも大きい。このため、後述する供給路17を通じて供給された溶融熱可塑性樹脂は、流動抵抗の大きな凹部II15よりも、流動抵抗の小さな凹部I14に先に充填される。従って、第1実施形態にかかる金型を用いる場合、電子基板1の背面に誘導部21を形成した後に、凹部II15に溶融熱可塑性樹脂を供給して被覆部23を形成できる。このため、電子基板1の背面が誘導部21により補強され、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板1を封止する際の電子基板1の変形を抑制できる。
【0035】
L1、及びL2の値は、L1がL2より大である限り、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、L1はL2の2倍以上4倍以下が好ましく、2.5倍以上4倍以下がより好ましい。また、凹部I14の幅は、L2の2倍以上4倍以下が好ましく、3倍以上4倍以下がより好ましい。さらに、L2は、1.0mm以上2.0mm以下が好ましく、1.0mm以上1.5mm以下がより好ましい。L1が過大である場合、凹部I14の容積が多くなることから、電子基板1の封止に必要な樹脂量が増加し、熱可塑性樹脂封止電子基板2の製造コストが増加する場合がある。L2が過大である場合、凹部I14と凹部II15との流動抵抗の差がほとんど無くなる場合がある。かかる場合、電子基板1の背面に誘導部21を形成した後に被覆部23を形成し難く、封止による電子基板1変形が発生しやすい傾向がある。L2が過小である場合、凹部II15の流動抵抗が高すぎるため、凹部II15に熱可塑性樹脂が完全に充填されない場合がある。
【0036】
L1とL2との差が過小である場合、凹部I14と凹部II15とへ、ほぼ同時に溶融熱可塑性樹脂が供給されるため、電子基板1に変形が生じやすい。L1とL2との差が過大である場合、凹部I14の容積が多くなることから、電子基板1の封止に必要な樹脂量が増加し、熱可塑性樹脂封止電子基板2の製造コストが増加する場合がある。
【0037】
なお、L1は電子基板1の表面と凹部I14の表面との間の距離であって、電子基板1の表面から垂直方向に測定した最大の距離である。また、L2は、電子基板1の表面と凹部II15の表面との間の距離であって、電子基板1の表面から垂直方向に測定した距離である。
【0038】
〔c)供給路17〕
図1、図3、及び図5に示される通り、供給路17は、電子基板の前面から側面に沿って溶融熱可塑性樹脂をゲートから凹部I14へ供給できるように、ゲート16と凹部I14とを連通する。供給路17に充填された熱可塑性樹脂は、図6に示されるように、熱可塑性樹脂封止電子基板2における供給部22となる。供給路17の断面形状は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、正方形、長方形、半円等の任意の形状から適宜選択される。
【0039】
また、供給路17は、後述する凹部II15と電子基板1の表面において接しており、供給路17の深さL3は、凹部II15の深さL2よりも大きい。L3、及びL2の値は、L3がL2より大である限り、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、L3はL2の2倍以上4倍以下が好ましく、2.5倍以上4倍以下がより好ましい。また、凹部I14の幅は、L2の2倍以上4倍以下が好ましく、3倍以上4倍以下がより好ましい。さらに、L2は、1.0mm以上2.0mm以下が好ましく、1.0mm以上1.5mm以下がより好ましい。L3が過大である場合、供給路17の容積が多くなることから、電子基板1の封止に必要な樹脂量が増加し、熱可塑性樹脂封止電子基板2の製造コストが増加する場合がある。L2が過大である場合、供給路17と凹部II15との流動抵抗の差がほとんど無くなる場合がある。かかる場合、電子基板1の背面に誘導部21を形成した後に被覆部23を形成し難く、封止による電子基板1の変形が発生しやすい傾向がある。
【0040】
また、L3とL2との差が過小である場合、供給路17と凹部II15と、ほぼ同時に溶融熱可塑性樹脂が供給されるため、電子基板の背面に溶融熱可塑性樹脂が先行して充分供給されないため、電子基板の上面に樹脂圧力が大きくかかり、電子基板1に変形が生じやすい。L3とL2との差が過大である場合、供給路17の容積が多くなることから、電子基板1の封止に必要な樹脂量が増加し、熱可塑性樹脂封止電子基板2の製造コストが増加する場合がある。
【0041】
供給路17と凹部II15とを、かかる深さで構成することにより、ゲートから供給される溶融熱可塑性樹脂が流動抵抗の少ない供給路17を優先的に流れて、背面側の型11に形成された凹部I14に溶融熱可塑性樹脂が優先的に供給される。
【0042】
このため、電子基板1の背面に誘導部21を形成した後に、凹部II15に溶融熱可塑性樹脂を充填して被覆部23を形成することが出来る。第1の実施形態の金型10を用いる場合、溶融熱可塑性樹脂のかかる流動挙動によって、電子基板1を変形させることなく、熱可塑性樹脂を用いる射出成形によって電子基板1を封止できる。
【0043】
〔d)凹部II15〕
図1から図5に示される通り、凹部II15は、背面側の型11では、凹部I14に隣接して形成され、前面側の型12では供給路17に隣接して形成される。凹部II15に充填された熱可塑性樹脂は、図6に示されるように、熱可塑性樹脂封止電子基板2における被覆部23となる。
【0044】
〔e)支持体13〕
支持体13は、背面側の型11に設けられ、電子基板1の背面に当接及び離間可能であり、電子基板1の背面に当接して電子基板1を支持する。背面側の型11における支持体13の位置は、電子基板1を支持できる限り特に限定されないが、典型的には、図1及び図5に示されるように、背面側の型11内の凹部II15に支持体13は設けられる。支持体13は、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂が半分程度充填された時から、支持体13に溶融熱可塑性樹脂が到達する時の間に、電子基板1の背面から離間される。支持体13を、かかるタイミングで電子基板1から離間させることにより、凹部II15に完全に樹脂を充填することができる。
【0045】
電子基板1の封止に、凹部I14を備えない金型を用いる場合、電子基板1の背面に一気に溶融熱可塑性樹脂が充填されるため、支持体13を電子基板1の背面から離間させるタイミングの制御が困難である。このため、かかる金型を用いる場合、支持体13の離間の遅れにより、背面に支持体13の痕跡である孔が形成された、熱可塑性樹脂封止電子基板2が得られる場合がある。
【0046】
一方、第1実施形態にかかる金型によれば、凹部I14の深さL1と凹部II15の深さL2との差によって、凹部I14と凹部II15との間に、溶融熱可塑性樹脂の流動抵抗に差が生じ、凹部II15に遅れて溶融熱可塑性樹脂が充填される。このため、第1実施形態にかかる金型を用いて電子基板1を封止する場合、支持体13に溶融熱可塑瀬樹脂が到達するまでの時間が長く、支持体13を電子基板1の背面から離間させるタイミングの制御が非常に容易である。
【0047】
支持体13の形状は、電子基板1を支持できる限り特に限定されないが、電子基板1に支持体13を当接又は離間させる際にスムーズに動作させやすいため、円柱状であるのが好ましい。
【0048】
以上説明した第1実施形態によれば、熱可塑性樹脂を用いる射出成形によって電子基板1を封止する際の電子基板1の変形を抑制することができ、支持体13を電子基板1の背面から離間させるタイミングの制御が容易となり、充填不良の発生を抑制できる。
【0049】
[2]第2実施形態
以下、第2実施形態にかかる金型について、図7から図10を参照して説明する。図7は背面側の型11をキャビティ側から見た図であり、図8は前面側の型12をキャビティ側から見た図である。また、図3は、図1に記載のA−A’断面における背面側の型11の断面図であり、図4は、図2に記載のA−A’断面における前面側の型12の断面図である。図9は、背面側の型11の支持体13上に電子基板1が載置された後に、背面側の型11と前面側の型12とが型締めされて形成された金型10の、図7及び図8に記載のA−A’断面における断面図である。図10は第2の実施形態にかかる金型10を用いて製造された、熱可塑性樹脂封止電子基板2の斜視図である。
【0050】
図7から図9に示されるように、第2実施形態にかかる金型は、前面と背面とを連通する孔部18を備える電子基板1の封止に使用される点と、供給路17が孔部18を通じて、ゲート16と凹部I14とを連通して形成されている点を除いて第1実施形態にかかる金型と同様である。
【0051】
図9に示されるように、ゲート16は電子基板1に形成された孔部18の近傍に位置する。ゲート16と凹部I14とは、電子基板1の孔部18の内部の空間である供給路17によって連通される。図9には、ゲート16の直下である電子基板1の中央に、1つの孔部18が設けられている態様を示したが、電子基板1に設けられる孔部18の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂封止電子基板2において、電子基板1の背面に、背面の中心にて交差する十字形状の誘導部21が形成される場合、図11に示されるように、電子基板1における誘導部21が形成される位置に対応する箇所に、孔部18を複数形成することも好ましい。かかる電子基板1を用いる場合、速やかに電子基板1の背面の凹部I14に溶融熱可塑性樹脂を供給できるため、封止時の電子基板1の変形を抑制しやすくなる。
【0052】
第2実施形態の金型を用いる場合、電子基板1の背面側の凹部II15は、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂が充填された後に、溶融熱可塑性樹脂が充填される。また、電子基板1の前面側の凹部II15は、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂が充填された後に、電子基板1の外周の空間、及び/又は、ゲート16と電子基板1との間の空間を経由して、溶融熱可塑性樹脂が充填される。
【0053】
第2実施形態によれば、金型に容積の大きな供給路17を設ける必要がないため、電子基板1を封止するための樹脂量を低減できる。このため、第2実施形態によれば、封止時の電子基板1の変形を抑制しつつ、熱可塑性樹脂封止電子基板2の製造コストの低減が期待できる。
【0054】
[3]第3実施形態
以下、第3実施形態にかかる金型について、図12、図13を参照して説明する。図12は本発明の第3実施形態にかかる前面側の型をキャビティから見た図である。図13は背面側の型と前面側の型とを合わせて型締された本発明の第3実施形態の金型の、内部に電子基板が載置された状態での断面図である。
【0055】
図12、図13に示されるように、第3実施形態にかかる金型は、ゲート16が、上記電子基板1の側面よりも外側に設けられる点を除いて第1実施形態にかかる金型と同様である。
【0056】
図12、図13に示されるように、ゲート16は電子基板1の側面を含む平面よりも金型側面側に位置する。図12、図13には、ゲート16から供給される溶融熱可塑性樹脂の流れる方向が、電子基板1の側面を含む平面に対して平行になる位置にゲート16が設けられる態様を示したが、図14に示すように、電子基板1の側面にゲート16を設けてもよい。かかる位置にゲート16を設けることで、ゲート16から供給される溶融熱可塑性樹脂が電子基板1の表面に直接衝突することを抑えられるため、封止時の電子基板1の変形を抑制しやすくなる。また、このような場合、ゲート数はキャビティへの樹脂の供給バランスを考慮して複数設けることが好ましい。
【0057】
また、第3実施形態にかかる金型においても、複数の位置にゲート16が設けられていてもよい。例えば、電子基板1の表面と対向する位置(例えば、図2に示す位置)と、第3実施形態におけるゲート16の位置との両方に設けられていれば、電子基板1の表面と電子基板1の背面とにバランスよく溶融熱可塑性樹脂が共有されて、封止時の電子基板1の変形を抑制しやすくなる。
【0058】
[4]第4実施形態
以下、第4実施形態にかかる金型について、図15から図20を参照して説明する。図15は、第4実施形態にかかる金型が備える支持体13の具体例に関する斜視図である。図16は、電子基板1と当接する面に十字型の溝を有する支持体13を備える背面側の型11をキャビティ側から見た図である。図17は、電子基板1と当接する面に直線状の溝を有する支持体13を備える背面側の型11をキャビティ側から見た図である。図18は、図16に記載の背面側の型11に電子基板1を載置し、図4に記載の前面側の型12と図16に記載の背面側の型11とをあわせた状態の、図16に記載のA−A’断面における断面図である。図19は、図16に記載の背面側の型11における、支持体13と電子基板1とが当接する際の支持体13の状態を示す斜視図である。図20は、図16に記載の背面側の型11における、支持体13が電子基板1から離間している際の支持体13の状態を示す斜視図である。
【0059】
第4実施形態に係る金型は、電子基板1と当接する面に凹部III19を有する支持体13を備え、凹部III19は、電子基板1と支持体13とが当接している状態で凹部I14の一部を形成し、支持体13の電子基板1と当接する面は、支持体13が電子基板1から離間している状態で凹部II15の一部を形成する。例えば、熱可塑性樹脂封止電子基板2の形状が、図6に示されるように電子基板1の背面側に十字型の誘導部21を有する形状である場合には、例えば、図15に示されるように、電子基板1と当接する面に、直線状の溝や、十字型の溝を設けて凹部III19を形成された支持体13を用いることができる。
【0060】
支持体13における凹部III19の形状は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、図16、及び図17に示されるように、凹部I14の側面と凹部III19の側面とが、背面側の型11において連続した面となるように形成されるのが好ましい。
【0061】
また、凹部I14と凹部III19とは連続する面であっても、不連続な面であってもよい。典型的には、図18、及び図19に示されるように、支持体13は、凹部III19の内面と、凹部I14の内面とが連続した面を形成して凹部III19が凹部I14の一部を構成するように、背面側の型11から突出して、電子基板1を支持するのが好ましい。かかる態様で、支持体13が電子基板1を支持することにより、凹部I14に優先的に溶融状態の熱可塑性樹脂を供給して誘導部21を形成しつつ、凹部Iと凹部IIとに熱可塑性樹脂を供給できる。このため、封止時の電子基板1の変形の発生が抑制される。
【0062】
さらに、図20に示されるように、支持体13は、電子基板1から、支持体13の電子基板1と当接する面が凹部IIの一部を形成するように、凹部Iに熱可塑性樹脂が充填された後に、電子基板1から離間する。このため、第4実施形態にかかる金型によれば、支持体13付近に充填された熱可塑性樹脂が固化する前に、支持体13を電子基板1から離間させることにより、充填不良を起すことなく凹部IIに熱可塑性樹脂を充填して被覆部23を形成できる。
【0063】
第4実施形態にかかる金型では、少数の支持体13によって、金型内で電子基板1を支持できるため、支持体13の動作不良等による成形不良の発生を抑制できる。
【0064】
[5]第5実施形態
以下、第5実施形態にかかる、熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法について説明する。第5実施形態では、第1実施形態にかかる金型を用いて、射出成形により、熱可塑性樹脂によって電子基板を封止する。まず、封止される電子基板、及び封止に用いる熱可塑性樹脂について説明し、次いで、熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法に含まれる各工程について説明する。
【0065】
〔電子基板〕
第5実施形態において封止される電子基板は、従来から電気・電子部品の製造に使用される電子基板であれば特に限定されず、単層基板であっても、多層基板であってもよい。また、電子基板はその表面に電子部品が実装されたものであっても、実装されていないものであってもよい。
【0066】
電子基板の材料は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来電子基板の材料として使用されてきた、有機材料、無機材料、又はこれらの複合材料から適宜選択できる。電子基板の好適な材料の具体例としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶性ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、又はこれらの組合せ等の樹脂が挙げられる。電子基板の材料が樹脂である場合、これらの樹脂は、ガラス繊維、高弾性樹脂繊維、炭素繊維、又は金属繊維等の繊維を含むのが好ましい。かかる場合、繊維材料は織布、又は不織布の形態であるのが好ましい。
【0067】
電子基板の形状は、金型のゲート側に相当する前面と、金型内で支持体と当接する背面とが区別できる限り特に限定されず、平面状、曲面状、又はこれらの形状の組合せであってもよい。
【0068】
本発明において封止される電子基板の厚さは、使用目的に応じて適宜決められる。基板が薄い場合には、封止時の変形を十分に抑制できない場合がある。
【0069】
〔熱可塑性樹脂〕
第5実施形態において用いる熱可塑性樹脂は、射出成形可能であれば特に限定されず、封止される電子基板の用途と使用環境とに応じて、適宜選択できる。電子基板の封止に用いる熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂及び非結晶性樹脂の何れも使用できる。具体例としては、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ4−メチル−ペンテン−1、ポリ環状オレフィン等)、ポリスチレン(PS)、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、(メタ)アクリル樹脂、セルロース系樹脂、エラストマー等の汎用熱可塑性樹脂;脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、ナイロン6,12等)、芳香族ポリアミド(MXDナイロン等)、芳香族ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリアリーレンサルファイド(PAS)(ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等)、ポリスルフォン(PSu)、ポリイミド(PI)、液晶性ポリマー(LCP)(液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミド、液晶ポリアミド等)のエンジニアリングプラスチック;脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、及び、脂肪族ヒドロキシカルボン酸若しくはその環状化合物からなる群から選択される単量体を重縮合して得られる脂肪族ポリエステル、ジイソシアネート等により高分子量化された脂肪族ポリエステル等の生分解性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0070】
上記の熱可塑性樹脂の中では、ポリブチレンテレフタレート樹脂、又はポリフェニレンサルファイド樹脂が特に好ましい。ポリフェニレンサルファイド樹脂は、高い耐熱性、機械的物性、耐薬品性、寸法安定性、及び難燃性等に優れ、ポリブチレンテレフタレート樹脂は高い機械的物性、電気的物性、耐薬品性等に優れることから、電子基板封止に好適に用いられる。
【0071】
熱可塑性樹脂は、成形品の機械的特性の改良の目的等で充填材を配合できる。熱可塑性樹脂に配合される充填材の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来から高分子材料の充填材として使用される種々の充填材を使用することができ、無機充填材及び有機充填材の何れも使用できる。また、充填材の形状は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されず、繊維状充填材、粉粒状充填材、及び板状充填材の何れも好適に使用できる。
【0072】
好適な繊維状充填材として、例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物等の無機質繊維状物質が挙げられる。
【0073】
好適な粉粒状充填材としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如き珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。また、好適な板状充填材としては、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。
【0074】
これらの充填材の中では、コストと得られる第一成形品の物性とのバランスに優れることからガラス繊維を用いるのが特に好ましい。
【0075】
ガラス繊維としては、公知のガラス繊維が何れも好ましく用いられ、ガラス繊維径や、円筒、繭形断面、長円断面等の断面形状、あるいはチョップドストランドやロービング等の製造に用いる際の長さやガラスカットの方法にはよらない。本発明において、ガラス繊維の原料となるガラスの種類は特に限定されないが、品質上、Eガラスや、組成中にジルコニウム元素を含む耐腐食ガラスが好ましく用いられる。
【0076】
また、熱可塑性樹脂のマトリックスと充填材との界面特性を向上させる目的で、シラン化合物やエポキシ化合物等の有機処理剤で表面処理された充填材が好ましく用いられる。かかる充填材に用いられるシラン化合物やエポキシ化合物としては公知のものが何れも好ましく用いることができ、本発明で充填材の表面処理に用いられるシラン化合物、エポキシ化合物の種類には依存しない。
【0077】
充填材の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、典型的には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、5質量部以上120質量部以下が好ましく、10質量部以上100質量部以下がより好ましく、15質量部以上80質量部以下が特に好ましい。
【0078】
また、熱可塑性樹脂は、必要に応じて、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、染料、顔料、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等をさらに添加して使用できる。
【0079】
〔熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法〕
第5実施形態にかかる熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法は、下記の第1から第6の工程を含む。
1)金型10内に設けられた、電子基板1の背面に当接及び離間可能な支持体13上に電子基板1を載置した後、金型10を型締めする工程、
2)金型10の電子基板1の前面側に設けられたゲート16から、射出成形機により溶融熱可塑性樹脂を金型10内に注入する工程、
3)ゲート16と電子基板1の背面に誘導部21を形成するための金型の凹部I14とを連通する供給路17を通じて、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂を供給し、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂を充填する工程、
4)凹部I14に溶融熱可塑性樹脂が充填された後に、電子基板1の表面において供給路17及び凹部I14と連通される、電子基板1の表面に誘導部21よりも薄肉の被覆部23を形成するための金型の凹部II15に、溶融熱可塑性樹脂を充填する工程、
5)凹部II15に溶融熱可塑性樹脂を充填する際に、支持体13を電子基板1から離間させる工程、及び、
6)溶融熱可塑性樹脂が固化した後、熱可塑性樹脂封止電子基板2を金型10より離型する工程。
【0080】
以下、第1工程から第6工程について、図5及び図6を参照して説明する。
【0081】
<第1工程>
第1工程は、金型10内に設けられた電子基板1の背面に当接及び離間可能な支持体13上に電子基板1を載置した後、金型10を型締めする工程である。
【0082】
図5に示されるように、支持体13は、支持体13上に電子基板1を載置した際に、金型10内において、凹部I14の深さL1、凹部II15の深さL2、供給路17の深さL3が所定の値となる様に、背面側の型11の凹部II15から突出して電子基板1の背面に当接する。背面側の型11の所定の位置に電子基板1が載置された後に、電子基板1の背面側の型11と前面側の型12とが合わせられ、型締めされる。
【0083】
<第2工程>
第2工程は、電子基板1の前面側の型12に設けられたゲート16から、射出成形機(図示せず)により、背面側の型11と前面側の型12とが合わせられた金型10内に、溶融熱可塑性樹脂を注入する工程である。
【0084】
第2工程における射出成形条件は特に限定されず、使用する熱可塑性樹脂の種類に応じて、適宜決定することが出来る。
〔第3工程〕
第3工程は、ゲート16と電子基板1の凹部I14とを連通する供給路17を通じて、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂を供給し、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂を充填する工程である。凹部I14に溶融熱可塑性樹脂が充填され、図6に示されるように電子基板1の背面に誘導部21が形成される。また、供給路17内の熱可塑性溶融樹脂は、図6に示されるように電子基板1の前面の供給部22となる。供給部22も誘導部21と同様に、封止時の電子基板1の変形を抑制する。
【0085】
第1実施形態にかかる金型について説明したように、金型10内において、凹部I14の深さL1、凹部II15の深さL2、及び供給路17の深さL3が所定の関係を満たすことにより、供給路17を通じて、凹部I14に溶融熱可塑性樹脂を優先的に供給することができる。このため、電子基板1の背面に誘導部21を形成した後に、被覆部23を形成することができるため、封止時の電子基板1の変形を抑制できる。
【0086】
〔第4工程〕
第4工程は、第3工程において凹部I14への溶融熱可塑性樹脂の充填が開始された後に、凹部I14に優先的に溶融熱可塑性樹脂を供給しつつ、電子基板1の表面において供給路17及び凹部I14と連通される凹部II15に熱可塑性樹脂を充填する工程である。凹部II15に溶融熱可塑性樹脂が充填され、図6に示されるように、誘導部21、及び供給部22よりも薄肉の被覆部23が電子基板1の前面、及び背面に形成される。
【0087】
電子基板1の背面を、熱可塑性樹脂により完全に封止するためには、射出成形時に、電子基板1の背面にある程度溶融熱可塑性樹脂が供給されたタイミングで、電子基板1の背面を支持する支持体13を、電子基板1の背面から離間させる必要がある。
【0088】
第5実施形態にかかる方法によれば、第1実施形態にかかる金型について説明した通り、凹部I14の深さL1と凹部II15の深さL2との差によって、凹部I14と凹部II15との間に、溶融熱可塑性樹脂の流動抵抗に差が生じ、凹部II15に遅れて溶融熱可塑性樹脂が充填される。このため、第5実施形態にかかる方法によれば、支持体13に溶融熱可塑瀬樹脂が到達するまでの時間が長く、支持体13を電子基板1の背面から離間させるタイミングの制御が非常に容易である。
【0089】
以上説明した第5実施形態によれば、第1実施形態と同様に、熱可塑性樹脂を用いる射出成形によって電子基板1を封止する際の電子基板1の変形を抑制することができ、支持体13を電子基板1の背面から離間させるタイミングの制御が容易となり、充填不良の発生を抑制できる。
【0090】
〔第5工程〕
第5工程は、凹部II15に溶融熱可塑性樹脂を充填する際に、支持体13を電子基板1から離間させる工程である。凹部II15に熱可塑性樹脂を充填して電子基板1の表面に被覆部23を形成する際に、支持体13を電子基板1から離間させることによって、支持体13と電子基板1との接触面も熱可塑性樹脂により被覆することが可能となる。
【0091】
〔第6工程〕
第6工程は、金型10のキャビティ内で熱可塑性樹脂が固化した後、熱可塑性樹脂封止電子基板2を金型10より離型する工程である。熱可塑性樹脂封止電子基板2の金型10からの離型方法は特に限定されない。例えば、常法に従い、金型10を背面側の型11と前面側の型12とに分割した後、イジェクタピンを用いて熱可塑性樹脂封止電子基板2を離型することができる。
【0092】
[6]第6実施形態
第6実施形態にかかる熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法は、第2実施形態にかかる金型を用いる他は、第5実施形態にかかる熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法と同様である。
【0093】
第6実施形態によれば、第2実施形態と同様に、金型に容積の大きな供給路17を設ける必要がないため、電子基板1を封止するための樹脂量を低減できる。このため、第6実施形態によれば、封止時の電子基板1の変形を抑制しつつ、熱可塑性樹脂封止電子基板2の製造コストの低減が期待できる。
【0094】
[7]第7実施形態
第7実施形態にかかる熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法は、第4の実施形態にかかる金型を用いる他は、第5実施形態にかかる熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法と同様である。
【0095】
第7実施形態によれば、少数の支持体13によって、金型内で電子基板1を支持できるため、第4実施形態と同様に、支持体13の動作不良等による成形不良の発生を抑制できる。
【0096】
[変形例]
本発明は上述の第1から第7実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0097】
〔変形例1〕
第1及び第5実施形態では、凹部I14、及び供給路17の形状を十字型とし、第2及び第5実施形態では、凹部I14の形状を十字型としたが、凹部I14、及び/又は供給路17の形状を格子型やハニカム型とすることもできる。凹部I14、及び/又は供給路17の形状をかかる形状とすることで、十字型よりも高い補強効果が期待でき、封止時の電子基板の変形をより抑制できる。
【0098】
〔変形例2〕
第1から第7実施形態では、金型10を、背面側の型11と前面側の型12とに2分割される金型としたが、背面側の型11と前面側の型12とは、さらに所望の数に分割することができる。背面側の型11と前面側の型12とを、かかる構造とすることにより、複雑な形状の電子基板1であっても封止できる。
【0099】
〔変形例3〕
第1から第7実施形態では、円柱状の支持体13について説明したが、第1から第7実施形態では、図21に示されるように、柱状の可動部13aと、可動部の先端に設けられ、電子基板1の背面に当接する板状部13bとから構成される支持体13を用いてもよい。柱状の可動部13aの形状は、支持体13が電子基板1に当接及び離間可能であれば特に限定されず、例えば、円柱状や、四角柱状であってよい。板状部13bの形状は特に限定されず、例えば、円形や、四角形であってよい。支持体13をかかる構成とする場合、面積の広い板状部13bにより電子基板1が支持されるため、金型内で電子基板1の位置を安定させやすい。このため、表面に形成される被覆部23等の熱可塑性樹脂層の厚さが安定した熱可塑性樹脂封止電子基板の製造が容易である。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0101】
〔実施例1〕
電子基板として、縦45mm、横45mm、厚さ1.6mmのガラスエポキシ基板を用いた。図22に、実施例1で用いた金型について、金型に電子基板を載置した状態の、電子基板の対向する辺をそれぞれ中点で結んだ線における断面図を示す。前面側の型には、キャビティの中心で交差する十字型の供給路を設け、背面側の型には、キャビティの中心で交差する十字型の凹部Iを設けた。
【0102】
背面側の型に設けられた凹部Iは、電子基板表面からの深さが5mmであり、幅が4mmである。背面側の型、及び前面側の型において、電子基板の前面、背面、及び側面に被覆部を形成するように設けられた凹部IIは、電子基板表面からの深さが2mmである。前面側の型、及び背面側の型において、電子基板の前面から側面にかけて設けられた供給路は、電子基板表面からの深さが5mmであり、幅4mmである。背面側の金型は、凹部IIにおいて、円柱状の支持体を4つ備える。
【0103】
上記の電子基板を、上記形状の金型を用いて、射出成形機により各樹脂の標準的な成形条件により封止したところ、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ジュラネックス303RA、ウィンテックポリマー株式会社製)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(フォートロン6165A61、ポリプラスチックス株式会社製)何れによっても、電子基板の変形、及び被覆部における支持体の痕跡の形成を生じることなく、安定して熱可塑性樹脂封止電子基板を製造できた。
【0104】
〔実施例2〕
電子基板として、縦45mm、横45mm、厚さ1.6mmのガラスエポキシ基板を用いた。電子基板には、電子基板背面に熱可塑性樹脂を供給する供給路として、図11に示される配置で、貫通孔の外周間の間隔が5mmとなるように、直径3.5mmの貫通孔を設けた。なお、基板中央の貫通孔は、基板の対角線の交点を中心として形成した。
【0105】
図23に、実施例2で用いた金型について、金型に電子基板を載置した状態の、電子基板の対向する辺をそれぞれ中点で結んだ線における断面図を示す。電子基板の孔部を供給路としたため、前面側の型には供給路を設けなかった。また、背面側の型には、キャビティの中心で交差する十字型の凹部Iを設けた。
【0106】
背面側の型に設けられた凹部Iは、電子基板表面からの深さが5mmであり、幅が4mmである。背面側の型、及び前面側の型において、電子基板の前面、背面、及び側面に被覆部を形成するように設けられた凹部IIは、電子基板表面からの深さが2mmである。背面側の金型は、凹部IIにおいて、円柱状の支持体を4つ備える。
【0107】
上記の電子基板を、上記形状の金型を用いて、実施例1と同条件で封止したところ、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂何れによっても、電子基板の変形、及び被覆部における支持体の痕跡の形成を生じることなく、安定して熱可塑性樹脂封止電子基板を製造できた。
【0108】
〔比較例1〕
実施例1で用いた金型の、供給路、及び凹部Iが塞がれた金型を用いて、実施例1で用いた電子基板を、実施例1と同条件で封止したところ、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂何れによっても、電子基板が変形し、基板背面側に樹脂を完全に充填させることが出来なかった。
【符号の説明】
【0109】
1 電子基板
10 金型
11 背面側の型
12 前面側の型
13 支持体
14 凹部I
15 凹部II
16 ゲート
17 供給路
18 孔部
19 凹部III
2 熱可塑性樹脂封止電子基板
21 誘導部
22 供給部
23 被覆部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のa)からe)を備える、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板を封止するための金型:
a)前記電子基板の前面側に設けられたゲート、
b)前記電子基板の背面に誘導部を形成するための凹部I、
c)前記ゲートと前記凹部Iとを連通する供給路、
d)前記電子基板の表面において前記供給路及び前記凹部Iと連通される、前記電子基板の表面に前記誘導部よりも薄肉の被覆部を形成するための凹部II、及び、
e)前記電子基板の背面側に設けられ、前記電子基板の背面に当接及び離間可能であり、前記電子基板の背面に当接して前記電子基板を支持する支持体。
【請求項2】
前記供給路が、前記電子基板の前面から側面を経由して前記凹部Iに連通し、且つ、前記電子基板の表面に接して形成されており、前記供給路の深さが前記凹部IIの深さよりも大きい、請求項1記載の金型。
【請求項3】
前記電子基板が、前面と背面とを連通する孔部を備え、前記供給路が、前記孔部を通じて前記ゲートと前記凹部Iとを連通して形成されている、請求項1記載の金型。
【請求項4】
前記供給路、及び前記凹部Iの深さが、前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記供給路、及び前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、請求項2記載の金型。
【請求項5】
前記凹部Iの深さが、前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、請求項3記載の金型。
【請求項6】
前記ゲートは、前記電子基板の側面を含む平面よりも金型側面側に、少なくとも1箇所設けられている請求項2又は4に記載の金型。
【請求項7】
前記支持体が前記電子基板と当接する面に凹部IIIを有し、前記凹部IIIは、前記電子基板と前記支持体とが当接している状態で前記凹部Iの一部を形成し、前記支持体の前記電子基板と当接する面は、前記支持体が前記電子基板から離間している状態で前記凹部IIの一部を形成する、請求項1から6何れか記載の金型。
【請求項8】
下記、1)から5)の工程を含む、熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法:
1)金型内に設けられた、電子基板の背面に当接及び離間可能な支持体上に前記電子基板を載置した後、金型を型締めする工程、
2)前記金型の電子基板の前面側に設けられたゲートから、射出成形機により溶融熱可塑性樹脂を金型内に注入する工程、
3)前記ゲートと前記電子基板の背面に誘導部を形成するための金型の凹部Iとを連通する供給路を通じて、前記凹部Iに前記溶融熱可塑性樹脂を供給し、前記凹部Iに前記溶融熱可塑性樹脂を充填する工程、
4)前記凹部Iに優先的に前記溶融熱可塑性樹脂を供給しつつ、前記凹部Iと、前記電子基板の表面において前記供給路及び前記凹部Iと連通される、前記電子基板表面に前記誘導部よりも薄肉の被覆部を形成するための金型の凹部IIとに、前記溶融熱可塑性樹脂を充填する工程、
5)前記凹部IIに前記溶融熱可塑性樹脂を充填する際に、前記支持体を前記電子基板から離間させる工程、及び、
6)前記溶融熱可塑性樹脂が固化した後、熱可塑性樹脂封止電子基板を前記金型より離型する工程。
【請求項9】
前記供給路が、前記電子基板の前面から側面を経由して前記凹部Iに連通し、且つ、前記電子基板の表面に接して形成されており、前記供給路の深さが前記凹部IIの深さよりも大きい、請求項8記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項10】
前記電子基板が、前面と背面とを連通する孔部を備え、前記供給路が、前記孔部を通じて前記ゲートと前記凹部Iとを連通して形成されている、請求項8記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項11】
前記供給路、及び前記凹部Iの深さが前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記供給路、及び前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、請求項9記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項12】
前記凹部Iの深さが前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、請求項10記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項13】
前記ゲートは、前記電子基板の側面を含む平面よりも金型側面側に、少なくとも1箇所設けられている請求項9又は11に記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項14】
前記支持体が前記電子基板と当接する面に凹部IIIを有し、前記凹部IIIは、前記電子基板と前記支持体とが当接している状態で前記凹部Iの一部を形成し、前記支持体の前記電子基板と当接する面は、前記支持体が前記電子基板から離間している状態で前記凹部IIの一部を形成する、請求項8から13何れか記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂、又は、ポリフェニレンサルファイド樹脂である、請求項8から14何れか記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項16】
請求項8から15何れか記載の方法により製造された、熱可塑性樹脂封止電子基板。
【請求項1】
以下のa)からe)を備える、熱可塑性樹脂を用いる射出成形により電子基板を封止するための金型:
a)前記電子基板の前面側に設けられたゲート、
b)前記電子基板の背面に誘導部を形成するための凹部I、
c)前記ゲートと前記凹部Iとを連通する供給路、
d)前記電子基板の表面において前記供給路及び前記凹部Iと連通される、前記電子基板の表面に前記誘導部よりも薄肉の被覆部を形成するための凹部II、及び、
e)前記電子基板の背面側に設けられ、前記電子基板の背面に当接及び離間可能であり、前記電子基板の背面に当接して前記電子基板を支持する支持体。
【請求項2】
前記供給路が、前記電子基板の前面から側面を経由して前記凹部Iに連通し、且つ、前記電子基板の表面に接して形成されており、前記供給路の深さが前記凹部IIの深さよりも大きい、請求項1記載の金型。
【請求項3】
前記電子基板が、前面と背面とを連通する孔部を備え、前記供給路が、前記孔部を通じて前記ゲートと前記凹部Iとを連通して形成されている、請求項1記載の金型。
【請求項4】
前記供給路、及び前記凹部Iの深さが、前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記供給路、及び前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、請求項2記載の金型。
【請求項5】
前記凹部Iの深さが、前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、請求項3記載の金型。
【請求項6】
前記ゲートは、前記電子基板の側面を含む平面よりも金型側面側に、少なくとも1箇所設けられている請求項2又は4に記載の金型。
【請求項7】
前記支持体が前記電子基板と当接する面に凹部IIIを有し、前記凹部IIIは、前記電子基板と前記支持体とが当接している状態で前記凹部Iの一部を形成し、前記支持体の前記電子基板と当接する面は、前記支持体が前記電子基板から離間している状態で前記凹部IIの一部を形成する、請求項1から6何れか記載の金型。
【請求項8】
下記、1)から5)の工程を含む、熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法:
1)金型内に設けられた、電子基板の背面に当接及び離間可能な支持体上に前記電子基板を載置した後、金型を型締めする工程、
2)前記金型の電子基板の前面側に設けられたゲートから、射出成形機により溶融熱可塑性樹脂を金型内に注入する工程、
3)前記ゲートと前記電子基板の背面に誘導部を形成するための金型の凹部Iとを連通する供給路を通じて、前記凹部Iに前記溶融熱可塑性樹脂を供給し、前記凹部Iに前記溶融熱可塑性樹脂を充填する工程、
4)前記凹部Iに優先的に前記溶融熱可塑性樹脂を供給しつつ、前記凹部Iと、前記電子基板の表面において前記供給路及び前記凹部Iと連通される、前記電子基板表面に前記誘導部よりも薄肉の被覆部を形成するための金型の凹部IIとに、前記溶融熱可塑性樹脂を充填する工程、
5)前記凹部IIに前記溶融熱可塑性樹脂を充填する際に、前記支持体を前記電子基板から離間させる工程、及び、
6)前記溶融熱可塑性樹脂が固化した後、熱可塑性樹脂封止電子基板を前記金型より離型する工程。
【請求項9】
前記供給路が、前記電子基板の前面から側面を経由して前記凹部Iに連通し、且つ、前記電子基板の表面に接して形成されており、前記供給路の深さが前記凹部IIの深さよりも大きい、請求項8記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項10】
前記電子基板が、前面と背面とを連通する孔部を備え、前記供給路が、前記孔部を通じて前記ゲートと前記凹部Iとを連通して形成されている、請求項8記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項11】
前記供給路、及び前記凹部Iの深さが前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記供給路、及び前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、請求項9記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項12】
前記凹部Iの深さが前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部Iの幅が前記凹部IIの深さの2倍以上4倍以下であり、前記凹部IIの深さが1.0mm以上1.5mm以下である、請求項10記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項13】
前記ゲートは、前記電子基板の側面を含む平面よりも金型側面側に、少なくとも1箇所設けられている請求項9又は11に記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項14】
前記支持体が前記電子基板と当接する面に凹部IIIを有し、前記凹部IIIは、前記電子基板と前記支持体とが当接している状態で前記凹部Iの一部を形成し、前記支持体の前記電子基板と当接する面は、前記支持体が前記電子基板から離間している状態で前記凹部IIの一部を形成する、請求項8から13何れか記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂、又は、ポリフェニレンサルファイド樹脂である、請求項8から14何れか記載の熱可塑性樹脂封止電子基板の製造方法。
【請求項16】
請求項8から15何れか記載の方法により製造された、熱可塑性樹脂封止電子基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−176601(P2012−176601A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199556(P2011−199556)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】
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