説明

金属と樹脂との接着方法、及びそれを用いた回路形成部品の製法、並びに回路形成部品

【課題】筒形等の立体形状の絶縁基材の内周に、容易に且つ信頼性良く回路形成する方法を提供する。
【解決手段】インサート材としてポリグリコール酸系樹脂成形品を用い、該成形品の表面に金属被覆を行い回路形成し、金属回路表面に接着剤として特定のエポキシ樹脂組成物を塗布してBステージ化させた後、液晶性ポリマーにてインサート成形して該金属回路を液晶性ポリマーに転写させた後、ポリグリコール酸系樹脂を除去し回路形成部品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属と樹脂との接着方法、及びそれを用いた回路形成部品の製法、並びに回路部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筒形や球形等立体形状の絶縁基材の内周に回路形成をして立体回路板を製造する方法が検討されている。例えば、錫やハンダ等の低融点金属で球状に成形される成形体の表面に導電回路を形成し、この成形体を成形型の内周に空間を保った状態で装填した後に、この空間内に熱硬化性樹脂を充填して硬化させ、そして成形体とその外周の熱硬化性樹脂製硬化体とからなる熱硬化性樹脂成形体を成形型から取り出し、低融点金属の成形体を溶融除去することによって、球形の熱硬化性樹脂硬化体の内周に導電回路が転写して形成された立体回路板を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1において、球状の成形体の表面に導電回路を形成するにあたっては、成形体の表面にレジスト膜を設け、フォトマスクを用いて露光すると共に現像して回路パターンに対応する部分のレジスト膜を除去した後、レジスト膜の除去部分に導電材を付着させることによって行なわれている。しかし、このようなフォトマスクを用いたパターニングの工程を経て導電回路の形成を行なう場合、工数が多くなって生産性に問題があると共に、筒型や球形等の三次元立体形状の表面に精度高く露光してパターニングすることは困難であり、精度高く導電回路を形成することが難しいという問題があった。
【0004】
一方、特許文献1のこのような課題を解決するために、筒形等の立体形状の絶縁基材の内面にレーザ等の電磁波を用いたパターニング方法で回路形成することが提案されている(特許文献2参照)。この方法は、転写用成形体の表面に導電層を形成し、レーザ等の電磁波を照射して回路を形成し、回路形成した外側に絶縁基材を成形した後、転写用基材を除去するものであり、絶縁基材に回路を残した状態で転写用基材を除去することによって、筒形等の立体形状の絶縁基材の内周に回路形成することを可能としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−148712号公報
【特許文献2】特開2006−49574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、耐熱性が高く、樹脂の流れ性が良い液晶性ポリマーを絶縁基材に使用すると、液晶性ポリマーは固化速度が速いため、導電性回路との密着力が低くなり、転写できずに回路が剥離してしまう等の問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、絶縁基材(樹脂)と導電性回路(金属)との接着性を良好とする方法を提供し、それを用いた回路形成方法と得られ回路形成部品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、エポキシ樹脂組成物を介して金属と樹脂とを接着する方法において、該エポキシ樹脂組成物として(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂、(b)リン酸変性エポキシ樹脂及び(c)ポリアミドアミンを含有するエポキシ樹脂組成物を使用し、該エポキシ樹脂組成物を該金属表面又は該樹脂基材表面に塗布し、塗布された該エポキシ樹脂組成物をB−ステージ化した後、B−ステージ化された該エポキシ樹脂組成物を介して、該金属と該樹脂基材とを貼り合わせた後に、該エポキシ樹脂組成物を硬化させることを特徴とする金属と樹脂との接着方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、熱溶融性或いはアルカリ溶解性の成形品の表面に金属被覆を行い回路形成した後、金属回路表面に、接着剤として、(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂、(b)リン酸変性エポキシ樹脂及び(c)ポリアミドアミンを含有するエポキシ樹脂組成物を塗布し、塗布された該エポキシ樹脂組成物をBステージ化した後、液晶性ポリマーにてインサート成形して金属回路を液晶性ポリマーに転写させた後、熱溶融性或いはアルカリ溶解性の成形品を除去することを特徴とする回路形成部品の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は上記方法で製造された回路形成部品を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、筒形等の立体形状の絶縁基材に、容易に且つ信頼性良く回路を形成することが可能である。本発明の回路形成部品は、マイクロアクチュエータ、マイクロ静電エンコーダ、マイクロ静電モータ、マイクロポンプ等の部品として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の一例の各工程を示すものであり、(a)乃至(g)はそれぞれ側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の金属と樹脂との接着方法について、詳細に説明する。
【0014】
本発明に使用される金属としては、例えば、銅、リン青銅等の銅合金、金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス、スズ、スズ合金等の金属が挙げられ、その厚みは、必要に応じ適宜設定され特に制限されないが通常0.1μm〜5mm程度である。
【0015】
本発明に使用される樹脂としては、液晶性ポリマー、ポリフェノレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、これらの中でも、寸法安定性、成形流動性の観点から、液晶性ポリマーが好ましい。以下の説明では、樹脂として液晶性ポリマーを使用する場合について説明するがこれに制限されるものではない。
【0016】
本発明において液晶性ポリマーとは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明に適用できる液晶性ポリマーは直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示すものである。
【0017】
上記のような液晶性ポリマーとしては特に制限されないが、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましく、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルもその範囲にある。これらは60℃でペンタフルオロフェノールに濃度0.1重量%で溶解したときに、好ましくは2.0dl/g以上、より好ましくは2.0〜10.0dl/gの対数粘度(I.V.)を有するものが使用される。
【0018】
本発明に適用できる液晶性ポリマーとしての芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドとして特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンの群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を構成成分として有する芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルアミドが挙げられる。
【0019】
より具体的には、
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル;
(2)主として(A)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(B)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(C)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール及びその誘導体の少なくとも1種又は2種以上、とからなるポリエステル;
(3)主として(A)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(B)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及びその誘導体の1種又は2種以上と、(C)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド;
(4)主として(A)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(B)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及びその誘導体の1種又は2種以上と、(C)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(D)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール及びその誘導体の少なくとも1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド等が挙げられる。さらに上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
【0020】
本発明に適用できる上記液晶性ポリマーを構成する具体的化合物の好ましい例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(I)及び下記一般式(II)で表される化合物等の芳香族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び下記一般式(III)で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸;p−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン類が挙げられる。
【0021】
【化1】

(式中、Xは、炭素原子数1〜4のアルキレン基若しくはアルキリデン基、−O−、−SO−、−SO2−、−S−、又は−CO−を表し、Yは−(CH2n−(n=1〜4)、又は−O(CH2nO−(n=1〜4)を表す。)
【0022】
本発明が適用される特に好ましい液晶性ポリマーは、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を主構成単位成分とする芳香族ポリエステルである。
【0023】
また、液晶性ポリマーとしては、融点が330℃以下のものを使用するのが好ましい。融点が330℃を超える液晶性ポリマーを用いると、成形時の樹脂温度を340℃以上にする必要が生じ、添加したエポキシ樹脂が分解を起こし、成形時にガス発生が急激に多くなり、金属膜との密着を阻害する場合がある。融点が330℃以下の液晶性ポリマーを用いると、液晶性ポリマーと金属膜との安定した密着力を得ることができる。尚、融点の測定は、示差走査熱量分析装置(パーキンエルマー社製DSC7)にて、20℃/分の昇温条件で測定する。
【0024】
上記液晶性ポリマーには、エポキシ樹脂が添加されていることが好ましく、液晶性ポリマーに添加されるエポキシ樹脂としては、下記一般式(1)又は(2)で表されるものが好ましい。
【0025】
【化2】

(式中、Rは炭素原子数1〜3のアルキリデン基を表し、R1及びR2は、炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。Xは水素原子又はグリシジル基を表し(但し、Xのうちグリシジル基の占める割合は、20〜100%である)、nは0.1〜30の実数を表し、pは0〜
4の整数を表し、qは0〜4の整数を表し、rは0〜3の整数を表し、sは0〜3の整数を表す。)
【0026】
このようなエポキシ樹脂は液晶性ポリマーとの分散性が良く、金属膜との安定した密着力を得ることができる。上記一般式(1)及び(2)中、Rで表される炭素原子数1〜3のアルキリデン基としては、メチレン、エチリデン、2,2’−プロピリデン等の基が挙げられ、R1及びR2で表される炭素原子数1〜5のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等の基が挙げられる。
【0027】
上記一般式(1)及び(2)中、nは0.1〜30、好ましくは1〜15の実数である。Xは水素原子又はグリシジル基を示すが、Xの20〜100%がグリシジル基でなければならず、特に25〜100%がグリシジル基であることが好ましい。ここで、nで表される実数及びXに占めるグリシジル基の比率(以下、再エポキシ化率という)は、何れも平均値を表すものである。nが0.1未満である場合或いはXのグリシジル基比率が20%未満の場合には、三官能以上の多官能エポキシ化合物の含有量が少なくなるため好ましくない。nが30を超えると高粘度となり、作業性が悪くなり好ましくない。
【0028】
上記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂の中でも、製造の容易さの観点から、Rがメチレン基又は2,2’−プロピリデン基であり、p及びqが共に0であり、nが1〜15の実数のものが好ましい。
【0029】
上記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂の中でも、製造の容易さの観点から、r及びsが共に0であり、nが1〜15の実数のものが好ましい。
【0030】
本発明に用いられる上記一般式(1)又は(2)で表されるエポキシ樹脂は、その製造方法により制限されるものではないが、例えば、下記一般式(3)又は(4)で表される汎用のビスフェノール系エポキシ樹脂とエピクロルヒドリンとを重合して製造することができる。
【0031】
【化3】

(式中、n、R、R1、R2、p、q、r及びsは、上記一般式(1)又は(2)中のn、R、R1、R2、p、q、r及びsと同じである。)
【0032】
本発明において、上記エポキシ樹脂の添加量は、上記液晶性ポリマー100重量部に対して好ましくは1〜10重量部、より好ましくは2〜8重量部である。上記エポキシ樹脂の添加量が1重量部より少ないと液晶性ポリマーと金属回路との十分な密着が得られず、ポリグリコール酸系樹脂を除去する際に、液晶性ポリマーから金属回路が剥離してしまう問題が発生する。また、10重量部より多いと成形時のガス発生が多くなり、液晶性ポリマーと金属回路との密着を阻害してしまう問題が発生する。
【0033】
また、上記液晶性ポリマーには、使用目的に応じて各種の公知の繊維状、粉粒状、板状の無機充填剤を添加することができる。繊維状充填剤としてはガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、チタン酸カリウム繊維等の無機質繊維状物質が挙げられ、粉粒状充填剤としてはカーボンブラック、フラーレン、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、タルク、ウォラストナイトの如き硅酸塩、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩等が挙げられ、板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。
【0034】
上記無機充填剤の添加量は、上記液晶性ポリマー100重量部に対して好ましくは
10〜300重量部、より好ましくは20〜200重量部である。これらの無機充填剤は一種又は二種以上併用することが出来る。
【0035】
本発明に使用されるエポキシ樹脂組成物は、(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂、(b)リン酸変性エポキシ樹脂及び(c)ポリアミドアミンを含有する。
【0036】
上記(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂(NBR)は、通常、従来公知の条件でカルボキシル基含有のアクリルニトリルブタジエンゴムとエポキシ樹脂とを反応させて得られるものである。
【0037】
上記カルボキシル基含有のアクリルニトリルブタジエンゴムと上記エポキシ樹脂との好ましい反応比率は、エポキシ樹脂100重量部に対して、アクリルニトリルブタジエンゴムを1〜100重量部、特に10〜50重量部である。
【0038】
上記カルボキシル基含有のアクリルニトリルブタジエンゴムとしては、分子末端又は分子鎖中にカルボキシル基を含有していればよく、分子量、組成等に特に制限なく使用することができる。また該アクリロニトリルブタジエンゴムは、結合アクリロニトリル含有量が、1〜60重量%であることが好ましく、10〜40重量%であることがより好ましい。
【0039】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物等が挙げられ、これらの中でも、入手の容易さと作業性の観点から、ビスフェノールA又はビスフェノールFのジグリシジルエーテルが好ましい。
【0040】
上記(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂の含有量は、上記エポキシ樹脂組成物中、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは30〜70重量%である。(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂の含有量が10重量%未満であると、金属と樹脂への十分な密着性が得られず、90重量%超えると、金属と樹脂への十分な密着性が得られない。
【0041】
上記(b)リン酸変性エポキシ樹脂は、通常、従来公知の条件でオルトリン酸とエポキシ樹脂とを反応させて得られるものである。
【0042】
上記オルトリン酸と上記エポキシ樹脂との好ましい反応比率は、エポキシ樹脂100重量部に対して、オルトリン酸1〜30重量部、特に1〜30重量部である。
【0043】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物等が挙げられ、これらの中でも、入手の容易さと作業性の観点から、ビスフェノールA又はビスフェノールFのジグリシジルエーテルが好ましい。
【0044】
上記(b)リン酸変性エポキシ樹脂の含有量は、上記エポキシ樹脂組成物中、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは30〜70重量%である。(b)リン酸変性エポキシ樹脂の含有量が10重量%未満であると、金属と樹脂への十分な密着性が得られず、90重量%超えると、金属と樹脂への十分な密着性が得られない。
【0045】
上記(c)成分であるポリアミドアミンは、通常、従来公知の条件でポリアミンとダイマー酸とを反応して得られるものである。
【0046】
上記ポリアミンと上記ダイマー酸との好ましい反応比率は、ポリアミン100重量部に対して、ダイマー酸50〜300重量部、特に100〜200重量部である。
【0047】
上記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン等のアルキレンジアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミン類;1,3−ジアミノメチルシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−3,6−ジエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン類;m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−アミノプロピルイミダゾール等のイミダゾール類;アジピン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類等が挙げられ、これらの中でも、金属と樹脂との密着性の観点から、ポリエチレンポリアミン類、m−キシリレンジアミン、1,3−ジアミノメチルシクロヘキサンが好ましい。
【0048】
上記(c)ポリアミドアミンの含有量は、上記(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂及び(b)リン酸変性エポキシ樹脂の合計100重量部に対し、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは10〜20重量部である。(c)ポリアミドアミンの含有量が5重量部未満であると金属と樹脂との十分な密着性が得られず、30重量部超えると、金属と樹脂との十分な密着性が得られない。
【0049】
本発明では、上記エポキシ樹脂組成物中に、更に軟化点80〜120℃の潜在性エポキシ硬化剤を配合することが好ましい。
【0050】
上記潜在性エポキシ硬化剤としては、例えば、上記に例示したポリアミンのエポキシアダクト、尿素化合物等が挙げられ、これらの中でも、金属と樹脂への密着性の観点から、ポリアミンの尿素化合物が好ましい。
【0051】
上記潜在性エポキシ硬化剤の含有量は、上記(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂及び(b)リン酸変性エポキシ樹脂の合計100重量部に対し、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは10〜20重量部である。上記潜在性エポキシ硬化剤の含有量が5重量部未満であると金属と樹脂との十分な密着性が得られず、30重量部超えると、金属と樹脂との十分な密着性が得られない。
【0052】
上記エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、各種溶剤、充填剤等の任意成分を配合してもよく、これら任意成分の添加量は、上記エポキシ樹脂組成物中、好ましくは合計で1〜100重量%とする。
【0053】
本発明の接着方法では、上述したような金属、樹脂基材及びエポキシ樹脂組成物を用意し、用意された該エポキシ樹脂組成物を該金属表面又は該樹脂基材表面に塗布する。次に塗布された該エポキシ樹脂組成物をB−ステージ化する。B−ステージ化は、室温に10〜200時間放置して行う。この場合、B−ステージ化率は、好ましくは30〜70%の範囲とする。尚、B−ステージ化率は残存エポキシ基の割合より算出される。
【0054】
次に、B−ステージ化されたエポキシ樹脂組成物を介して、上記金属と上記樹脂基材とを貼り合わせる。続いて該エポキシ樹脂組成物を100℃以上で15分以上加熱して完全に硬化させることで、上記金属と上記樹脂基材を接着させる。
【0055】
以上説明した本発明の金属と樹脂との接着方法は、以下で詳細に説明する「本発明の回路形成部品の製法」のような射出成形回路の製造過程において好ましく使用される。
【0056】
次に、本発明の回路形成部品の製法及び回路形成部品について図面を参照しながら詳述する。ここで、図1は、本発明の実施の形態の一例の各工程を示す図であり、(a)乃至(g)は、その側面断面図である。尚、以下の説明ではこれらの図に基づいて、円筒形等の筒状の立体回路板を製造する場合について説明する。
【0057】
先ず、図1(a)に示すような、三次元立体表面を外面に有する円柱状成形品1(インサート材)を用意する。この成形品1は、熱溶融性或いはアルカリ溶解性の樹脂から射出成形機を用いて成形される。
【0058】
この熱溶融性或いはアルカリ溶解性の成形品1を形成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、アルカリ水溶液で溶解することが容易であるポリグリコール酸系樹脂が好適に使用される。
【0059】
本発明に使用されるポリグリコール酸系樹脂は、下記一般式(5)で表されるグリコール酸繰り返し単位のみからなるグリコール酸の単独重合体、即ちポリグリコール酸(グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリド(GL)の開環重合物を含む)に加えて、上記グリコール酸繰り返し単位を60重量%以上含むグリコール酸共重合体を含むものである。
【0060】
【化4】

【0061】
上記グリコリド等のグリコール酸モノマーと共にグリコール酸共重合体を与えるコモノマーとしては、例えば、シュウ酸エチレン(即ち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド類、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−ピパロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、カーボネート類(例えば、トリメチレンカーボネート等)、エーテル類(例えば、1,3−ジオキサン等)、エーテルエステル類(例えば、ジオキサノン等)、アミド類(例えば、ε−カプロラクタム等)等の環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸又はそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類又はそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;又はこれらの2種以上を挙げることができる。これらコモノマーは、その重合体を、上記グリコリド等のグリコール酸モノマーと共に、グリコール酸共重合体を与えるための出発原料として用いることもできる。
【0062】
上記ポリグリコール酸系樹脂は、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒を用いるGPC測定における分子量(ポリメチルメタクリレート換算のMw(重量平均分子量))が1,000〜500,000の範囲であることが好ましい。分子量が高すぎると、本発明における回路形成部品の製造の際に除去が困難になり、分子量が低すぎると、成形が困難になるため適切な分子量を選ぶ必要がある。
【0063】
本発明におけるポリグリコール酸系樹脂には、成形性や分解性、結晶性、強度等を改善する目的で、無機系及び有機系の添加剤や他の分解性樹脂、水溶性樹脂等の任意成分を加えることもできる。この場合、これら任意成分の添加量は、ポリグリコール酸系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜50重量部とする。
【0064】
本発明に用いるポリグリコール酸系樹脂成形品は、表面の結晶化度が5%以上であることが好ましい。ポリグリコール酸系樹脂は成形条件によって、結晶にも非晶にもなる樹脂であり、ポリグリコール酸系樹脂成形品の表面が非晶であると、その上に形成する金属膜にクラック(ひび)が入ることがある。ポリグリコール酸系樹脂成形品の表面の結晶化度が5%以上であると、クラック(ひび)が入らない安定した良好な金属膜を得ることができる。尚、表面の結晶化度は以下のようにして測定される。
【0065】
<表面の結晶化度の測定方法>
ポリグリコール酸系樹脂成形品の表面を切削し試験片とする。四塩化炭素及び1,2−ジクロロエタンを用いて比重液を調製し、密度勾配管法によって23℃における上記試験片の密度Dを測定する。得られた密度D、ポリグリコール酸の結晶密度D1=1.69g/cm3、非晶密度D2=1.51g/cm3から次式によって結晶化度(%)が算出できる。
結晶化度(%)=(D−D2)/(D1−D2)×100
【0066】
上記ポリグリコール酸系樹脂成形品の表面の結晶化度を5%以上とするには、射出成形時に金型内で結晶化させる方法を用いることができる。例えば、ポリグリコール酸系樹脂成形品の射出成形条件を、比較的高温条件、例えば樹脂温度230〜270℃、金型温度80〜130℃とすることで可能となる。
【0067】
また、上記射出成形条件よりも低い金型温度で射出成形した成形品であっても、成形後、100〜130℃で20秒以上1時間以下の熱処理を施すことにより、表面の結晶化度を5%以上にすることができる。このような熱処理の手法としては、オーブン、熱風炉等を用いることができる。勿論、上記射出成形条件で射出成形した成形品に対して上記熱処理を施してもかまわない。
【0068】
次に、図1(b)に示すように、成形品1の外周表面に金属被覆を行い金属皮膜2を形成する。金属被覆方法としては、常法の電気メッキ、化学メッキ、イオンプレーティング、スパッタ及び蒸着より選ばれる1又は2以上の方法を組み合わせることができる。金属皮膜2を形成する金属としては、上記金属と樹脂との接着方法の説明において、使用される金属として例示したものが挙げられる。また金属皮膜2の厚みは必要に応じ適宜設定されるが通常0.1μm〜100μm程度である。
【0069】
次に、成形品1の表面に形成された金属皮膜2に対し、露光、電磁波(レーザー)、切削加工等の適当な方法で金属回路を形成する。例えば、電磁波を用いる場合、金属皮膜2に電磁波を照射することで、図1(c)に示すように、電磁波が照射された部分の金属を除去し、回路パターンを形成することができる。尚、図1(c)において11はレーザ等の電磁波を集光するためのレンズである。電磁波としては、波長532nmのYAG−SHGや波長355nmのYAG−THG等のレーザを用いることができる。電磁波は回路パターンを形成する端の外形に沿って走査して、回路部と非回路部を電気的に縁切りし、電気めっきで回路部に通電して金属皮膜を厚く形成してもよい(図1(d)参照)。
【0070】
次に、図1(e)に示すように、回路パターンを形成した金属皮膜2の表面に、接着剤として、(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂、(b)リン酸変性エポキシ樹脂及び(c)ポリアミドアミンを含有するエポキシ樹脂組成物3を塗布し、塗布された該エポキシ樹脂組成物3をBステージ化する。Bステージ化の方法及びBステージ化率は、上記金属と樹脂との接着方法における説明が随時適用される。
【0071】
上記エポキシ樹脂組成物を構成する(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂、(b)リン酸変性エポキシ樹脂、(c)ポリアミドアミン、及び必要に応じ配合される軟化点80〜120℃の潜在性エポキシ硬化剤については、上記金属と樹脂との接着方法における説明が随時適用される。
【0072】
このように成形品1の外面に回路パターンによって回路を形成した後、図1(f)に示すように、成形品1の外面に全周に亘って液晶性ポリマー、好ましくはエポキシ樹脂を添加した液晶性ポリマー4(樹脂基材)を成形して積層する。樹脂基材の成形は、成形品1をインサート材として金型内にセットし、該金型の内周と成形品1の外周の隙間に液晶性ポリマー5を充填するインサート成形を行う。液晶性ポリマー4が成形されることにより金属回路が液晶性ポリマー4に転写される。
【0073】
上記液晶性ポリマー及び上記エポキシ樹脂としては、上記金属と樹脂との接着方法における説明が随時適用される。また該液晶性ポリマーには、使用目的に応じて各種の無機充填剤を添加してもよいが、これについても、上記金属と樹脂との接着方法における説明が随時適用される。
【0074】
インサート成形後、成形品1を除去することにより、図1(g)に示すように、液晶性ポリマー4の内周に転写されて回路が形成された回路形成部品5が出来上がる。
【0075】
成形品1は総てを除去してしまうようにしても、或いは一部を残して除去するようにしても何れでもよい。成形品1を除去する方法は特に限定されるものではないが、アルカリや酸等の処理液中に浸漬することによって、成形品1を処理液に溶解させることによって行なうことができる。例えば成形品1をポリ乳酸系樹脂で形成した場合、濃度2〜15質量%、温度25〜75℃の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムからなる苛性アルカリ水溶液を処理液として用い、この処理液に1〜120分程度浸漬することによって、成形品1を除去することができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
〔実施例1及び比較例1〕
以下の実施例及び比較例で使用した材料・成形方法等は以下の通りである。
【0078】
・アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂〔EP−1〕の製造
4つ口の1Lフラスコにカルボキシル基含有の結合アクリロニトリル量25〜31%の アクリロニトリルブタジエンゴムを350g、BPADG型でEEW=190のエポキシ樹脂を 650g仕込み、ジメチルベンジルアミンを0.1g仕込んだ後、攪拌を開始し、 150℃で2時間反応させ、高粘度の茶褐色液状のアクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂を得た。EEWは400g/eqであった。
【0079】
・リン酸変性エポキシ樹脂〔EP−2〕の製造
4つ口の1LフラスコにBPADG型でEEW=190のエポキシ樹脂を990g仕込み、80℃以下で85%オルトリン酸を10g滴下し、100℃で2時間反応させた。50torrの減圧下にて100℃で2時間脱水し、淡黄色液状のリン酸変性エポキシ樹脂を得た。EEWは225g/eqであった。
【0080】
・ポリアミドアミン〔PA−1〕の製造
4つ口の1Lフラスコにトリエチレンテトラミンを292g、ダイマー酸〔築野食品製:ツノダイム216〕を295g、モノマー酸シルファットFA−2を295g仕込み、徐々に昇温しながら脱水反応を行い、190℃に到達した後2時間反応を行った。さらに190℃で50torrまで徐々に減圧し脱水反応を行い褐色液状のポリアミドアミンを得た。アミン価は425mgKOH/gであった。
【0081】
・エポキシ樹脂の製造
還流装置、攪拌装置、減圧装置及び滴下装置を備えたフラスコ中に、ビスフェノール系A系エポキシ樹脂(上記一般式(3)において、n=2.1、p=q=0、Rが2,2’−プロピリデン基のもの)47.5重量部、エピクロルヒドリン95重量部及びテトラメチルアンモニウムクロライド0.2重量部を仕込み、上記滴下装置中に水酸化ナトリウム9.5重量部を48重量%水溶液として入れておく。この水酸化ナトリウム水溶液を還流下50〜60℃の内部温度で80torrで2時間かけて滴下し、同時に水を共沸蒸留により除去した。その後、更に2時間反応させ、冷却、濾過し、溶媒を蒸発除去して、目的のエポキシ樹脂(再エポキシ化率=87%、軟化点40℃)を得た。
【0082】
・液晶ポリマーシートの製造
液晶性ポリマー(ポリプラスチックス(株)製:ベクトラC950;融点325℃)100重量部に上記エポキシ樹脂5重量部及びガラスファイバー25重量部を添加し、二軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX30α型)を用いて330℃にて混練しペレット化し、320℃で射出成形して液晶ポリマーシートを作成した。
【0083】
下記の〔表1〕に示した如き配合にてエポキシ樹脂組成物を製造し、以下の評価方法にて銅箔密着性、樹脂密着性及びLCP成型時の銅箔との密着性を評価した。
【0084】
(銅箔密着性)
エポキシ樹脂組成物を銅箔に塗布し、(B−ステージ化した後)、室温で1日乾燥後150℃で30分硬化させた後テープ剥離試験を実施した。
尚、評価基準は、○:はがれなし、△:一部はがれ、×:全面はがれ
とした。
【0085】
(樹脂基材密着性)
エポキシ樹脂組成物を下記のエポキシ樹脂を添加した液晶ポリマーシートに塗布し、(B−ステージ化した後)、室温で1日乾燥後150℃で30分硬化させた後テープ剥離試験を実施した。
尚、評価基準は、○:はがれなし、△:一部はがれ、×:全面はがれ
とした。
【0086】
(LCP成形時の銅箔との密着性)
エポキシ樹脂組成物を銅箔に1μmの厚さで塗布し、室温で1日乾燥後ポリイミドフィルム仮装したものを金型温度80℃にした射出成型機にセットし、エポキシを添加したLCPを注入し成形物を得た。得られた成形物について、ポリイミドフィルムを剥がして、銅箔の一部をつかんでプッシュプルゲージで引き上げ、ピール強度の測定を実施した。
尚、評価基準は、○:0.7N/mm以上、△:0.2以上0.7N/mm未満、×:0.2N/mm未満とした。
【0087】
【表1】

【0088】
〔実施例2〕
以下の実施例で使用した材料・成形方法等は以下の通りである。
【0089】
・ポリグリコール酸系樹脂の製造
ジャケット構造を有し、密閉可能な容器内に、グリコリド((株)クレハ製、不純物含量:グリコール酸30ppm、グリコール酸二量体230ppm、水分42ppm)を355kg加え、容器を密閉し、攪拌しながらジャケットにスチームを循環させ、100℃になるまで加熱して内容物を溶融し、均一な溶液とした。この溶液内に、攪拌しながら二塩化スズ二水和物10.7g及び1−ドデシルアルコール1220gを加えた。
内容物の温度を100℃に保持したまま、内径24mmの金属(SUS304)製管を複数有する重合装置に移した。この装置は、管が設置してある本体部と上板からなり、本体部と上板のいずれもジャケット構造を備えてなり、このジャケット部に熱媒体油を循環する構造になっている。内容物を各管内に移送したら、直ちに上板を取り付けた。
この本体部及び上板のジャケット部に170℃熱媒体油を循環させ、7時間保持した。7時間後、熱媒体油を室温まで冷却した後、上板を取り外し、本体部を縦方向に回転させることによって、生成ポリグリコール酸の塊状物を取り出した。この塊状物を、粉砕機により粉砕し、120℃で一晩乾燥し、ポリグリコール酸粉砕品を得た。
このポリグリコール酸粉砕品に熱安定剤として、モノ−及びジ−ステアリルアシッドホスフェートのほぼ等モル混合物((株)ADEKA製「アデカスタブAX−71」)をポリグリコール酸粉砕品に対して300ppmの割合で添加し混合したものを、二軸押出機を用いて押出し、ポリグリコール酸樹脂ペレットを得た。得られたポリグリコール酸樹脂ペレットを窒素雰囲気の乾燥機内で、200℃で9時間熱処理した。
このようにして得られたポリグリコール酸樹脂を以下の実施例で用いた。
【0090】
・エポキシ樹脂の製造
還流装置、攪拌装置、減圧装置及び滴下装置を備えたフラスコ中に、ビスフェノール系A系エポキシ樹脂(前記一般式(4)において、n=2.1、p=q=0、Rが2,2’−プロピリデン基のもの)47.5重量部、エピクロルヒドリン95重量部及びテトラメチルアンモニウムクロライド0.2重量部を仕込み、上記滴下装置中に水酸化ナトリウム9.5重量部を48重量%水溶液として入れておく。この水酸化ナトリウム水溶液を還流下50〜60℃の内部温度で80torrで2時間かけて滴下し、同時に水を共沸蒸留により除去した。その後、更に2時間反応させ、冷却、濾過し、溶媒を蒸発除去して、目的のエポキシ樹脂(再エポキシ化率=87%、軟化点40℃)を得た。
【0091】
・エポキシ樹脂を添加した液晶性ポリマーの製造
液晶性ポリマー(ポリプラスチックス(株)製:ベクトラC950;融点325℃)100重量部に上記エポキシ樹脂5重量部及びガラスファイバー25重量部を添加し、二軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX30α型)を用いて330℃にて混練しペレット化したものを用いた。
【0092】
・エポキシ樹脂組成物の製造
上記実施例1で得られたアクリロニトリルブタジエンゴム変性ビスフェノール型エポキシ樹脂50重量部、上記実施例1で得られたリン酸変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂50重量部、上記実施例1で得られたポリアミドアミン14重量部、アデカハードナーEH−4339S(軟化点80℃の粉末アミン型潜在性硬化剤)14重量部及びポリグリコールモノメチルエーテル64重量部を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0093】
[回路形成部品の製造]
以下、図1の手順により回路形成部品5を製造した。
先ず、図1(a)に示すような、三次元立体表面を外面に有する円柱状成形品1をポリグリコール酸系樹脂から、射出成形機を用いて、樹脂温260℃、金型温度120℃で成形した。得られたポリグリコール酸系樹脂成形品表面の結晶化度は5%以上(約15%)であった。
尚、結晶化度は以下のようにして測定した。
【0094】
(結晶化度測定法)
ポリグリコール酸系樹脂成形品の表面を切削し試験片とした。四塩化炭素及び1,2−ジクロロエタンを用いて比重液を調製し、密度勾配管法によって23℃における上記試験片の密度Dを測定した。得られた密度D、ポリグリコール酸の結晶密度D1=1.69g/cm3、非晶密度D2=1.51g/cm3から次式によって結晶化度(%)を算出した。
結晶化度(%)=(D−D2)/(D1−D2)×100
【0095】
次いで、図1(b)に示すように、ポリグリコール酸系樹脂成形品1の外周表面に金属皮膜2を形成した。金属皮膜2の形成はスパッタリング法で行った。金属として銅をサブミクロンの厚みに形成した。
【0096】
上記のようにポリグリコール酸系樹脂成形品1の外周表面に金属皮膜2を形成した後、外側から金属皮膜2に電磁波を照射した。電磁波としては、波長532nmのYAGの第2高調波のレーザを用いた。このように金属皮膜2に電磁波を照射することによって、図1(c)に示すように、電磁波が照射された部分の金属を除去し、回路パターンを形成した。
【0097】
電磁波は回路パターンを形成する端の外形に沿って走査して、回路部と非回路部を電気的に縁切りし、電気めっきで回路部に通電して金属皮膜を厚く形成し(図1(d)参照)。その後に全体にサブミクロンの厚みの金属皮膜を除去(ライトエッチング)し、回路形成を行った。
【0098】
回路パターンを形成したポリグリコール酸系樹脂成形品1を、図1(e)に示すように、表1に示されるエポキシ樹脂組成物3で1μmの厚さで塗布し、室温で1日乾燥させBステージ化率50%の被塗物を得た。
【0099】
このようにポリグリコール酸系樹脂成形品1の外面に回路パターンによって回路を形成した後、図1(f)に示すように、ポリグリコール酸系樹脂成形品1の外面に全周に亘ってエポキシ樹脂を添加した液晶性ポリマー4を成形して積層した。
【0100】
エポキシ樹脂を添加した液晶性ポリマー4の成形は、ポリグリコール酸系樹脂成形品1をインサート材として金型内にセットし、金型の内周とポリグリコール酸系樹脂成形品1の外周の隙間に樹脂を充填するインサート成形することによって行った。
【0101】
上記のように、エポキシ樹脂を添加した液晶性ポリマー4を成形することにより、回路を液晶性ポリマー4に転写させた。
【0102】
この後、液晶性ポリマー4の内側からポリグリコール酸系樹脂成形品1を除去することによって、図1(g)に示すように、ポリグリコール酸系樹脂成形品1から液晶性ポリマー4の内周に転写されて回路が形成された回路形成部品5を得ることができた。
【0103】
ポリグリコール酸系樹脂成形品1の除去は、80℃の5%水酸化ナトリウム水溶液に回路形成部品5を浸漬し、溶解除去することにより行った。この場合、60分でポリグリコール酸系樹脂成形品1が完全に除去できた。
【0104】
因みに、ポリグリコール酸系樹脂の変わりにポリ乳酸樹脂を用いた以外は上記実施例と全く同様にして、回路形成部品5を得た場合は、80℃の5%水酸化ナトリウム水溶液に5時間浸漬してもポリ乳酸樹脂は溶解除去できなかった。
【0105】
エポキシ樹脂組成物3をB−ステージ化した工程を省いた場合には、銅箔とLCPとの密着性は不十分であったが、エポキシ樹脂組成物3をB−ステージ化することにより銅箔とLCPの密着性に優れた回路成型物を得ることが出来た。
【符号の説明】
【0106】
1 成形品
2 金属皮膜
3 エポキシ樹脂組成物
4 液晶性ポリマー
5 回路形成部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂組成物を介して金属と樹脂とを接着する方法において、該エポキシ樹脂組成物として(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂、(b)リン酸変性エポキシ樹脂及び(c)ポリアミドアミンを含有するエポキシ樹脂組成物を使用し、該エポキシ樹脂組成物を該金属表面又は該樹脂基材表面に塗布し、塗布された該エポキシ樹脂組成物をB−ステージ化した後、B−ステージ化された該エポキシ樹脂組成物を介して、該金属と該樹脂基材とを貼り合わせた後に、該エポキシ樹脂組成物を硬化させることを特徴とする金属と樹脂との接着方法。
【請求項2】
上記エポキシ樹脂組成物の組成が、(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂10〜90重量%、(b)リン酸変性エポキシ樹脂10〜90重量%、並びに(c)ポリアミドアミンが、(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対し、5〜30重量であることを特徴とする請求項1記載の金属と樹脂との接着方法。
【請求項3】
上記エポキシ樹脂組成物中に、アミノ基含有の軟化点80〜120℃の潜在性エポキシ硬化剤を配合することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属と樹脂との接着方法。
【請求項4】
上記樹脂基材が液晶性ポリマーであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の金属と樹脂との接着方法。
【請求項5】
上記液晶性ポリマーが、エポキシ樹脂を添加してなる液晶性ポリマーであることを特徴とする請求項4に記載の金属と樹脂との接着方法。
【請求項6】
射出成形回路の製造過程において使用されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の金属と樹脂との接着方法。
【請求項7】
熱溶融性或いはアルカリ溶解性の成形品の表面に金属被覆を行い回路形成した後、金属回路表面に、接着剤として、(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂、(b)リン酸変性エポキシ樹脂及び(c)ポリアミドアミンを含有するエポキシ樹脂組成物を塗布し、塗布された該エポキシ樹脂組成物をBステージ化した後、液晶性ポリマーにてインサート成形して金属回路を液晶性ポリマーに転写させた後、熱溶融性或いはアルカリ溶解性の成形品を除去することを特徴とする回路形成部品の製造方法。
【請求項8】
上記エポキシ樹脂組成物の組成が、(a)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂10〜90重量%、(b)リン酸変性エポキシ樹脂10〜90重量%、並びに(c)ポリアミドアミンが、(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対し、5〜30重量部であることを特徴とする請求項7記載の回路形成部品の製造方法。
【請求項9】
上記エポキシ樹脂組成物中に、アミノ基含有の軟化点80〜120℃の潜在性エポキシ硬化剤を配合することを特徴とする請求項7又は8に記載の回路形成部品の製造方法。
【請求項10】
上記液晶性ポリマーが、エポキシ樹脂を添加してなる液晶性ポリマーであることを特徴とする請求項7〜9の何れかに記載の回路形成部品の製造方法。
【請求項11】
上記熱溶融性或いはアルカリ溶解性の成形品がポリグリコール酸系樹脂成形品であることを特徴とする請求項7〜10の何れかに記載の回路形成部品の製造方法。
【請求項12】
請求項7〜11の何れかに記載の方法で製造された回路形成部品。

【図1】
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【公開番号】特開2010−199174(P2010−199174A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40293(P2009−40293)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(801000049)財団法人生産技術研究奨励会 (72)
【Fターム(参考)】