説明

金属含有組成物、電子部品上に電気接点構造を製造する方法、および電子部品

本発明は、金属含有組成物に、電子部品上に電気接点構造を製造する方法に、またそのような接点を備える電子部品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属含有組成物に、電子部品上に電気接点構造を製造する方法に、またそのような接点を備える電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン太陽電池は通常、表側にも裏側にも金属接点を有する。正確には、表側の接点には果たすべき役割がいくつかあるため、接触方法に、また接点材料系に高い要求が課せられている。表側の接点は、
・半導体に対する電気接点をもたらし、可能な限り損失を少なくして確実に電流を輸送することができるようにしなければならず、
・十分に優れた機械的密着性も有していなければならず、また
・一方では、モジュールへの配線において、たとえば、電池コネクタに対して接触可能でなければならない。
【0003】
1つの材料系においてこれらの役割すべてを組み合わせることは、妥協することを意味し、導電性のために優れた電気接点を省くか、または優れた電気的金属−半導体接合を実現するために電気伝導度の損失を受け入れることを意味する。表側の接点は、効率向上に関して太陽電池を最適化する過程で、常に幅が狭くなる。これにより、シェーディングが最小限に抑えられる結果となるが、一方では大きな電流が生じ、低損失で電池からこの電流を輸送するために、接触指(contact fingers)において高い導電性が必要とされる。現在入手可能な材料系は、実際には、細いストリップ導体の形で、対応する技術を用いて太陽電池上に印刷することができ、これは電池のシェーディングが少ないことを意味するが、これらは電気接触抵抗および機械的密着性に関して最適化されず、その結果、低シェーディングに基づく利益が、接触抵抗の損失によって過度に相殺されてしまう。さらに、機械的密着性が、接触幅50μm未満ではもはやもたらされないという事態が頻繁に生じる。高抵抗エミッタ(>70Ω/□)を有する太陽電池の場合、既存の材料系を用いた接点形成は、困難を伴ってのみ可能である。
【0004】
高い電気伝導度、優れた電気接点、高い機械的密着性および優れたはんだむれ性などのすべての要望を、1つの材料系において、または1つの印刷ステップにおいて実現するという課題を回避するために、2段階接触の可能性が存在する(国際公開第2007/085448号)。したがって、薄層、いわゆるシード層は第1の印刷ステップにおいて塗布され、この層は、特に電気接点に、また機械的密着性に関与する。この層は、たとえば、インクジェット印刷、エアロゾル印刷、タンポ印刷または細線スクリーン印刷によって製造することができる。さらなる加工ステップにおいて、非常に優れた電気伝導性をもたらすよう、また一方で容易に接触可能となるよう最適化されている金属層が塗布される。
【0005】
実際の接点は、インク/ペーストを塗布した後、温度ステップ、接点焼成において形成される。約500℃の温度では、それによりガラスフリットが溶融し、反射防止層をぬらす。750℃前後の温度ではガラスが溶融し、この溶融したガラスにはこの温度で銀が溶解し、反射防止層に浸透し、さらにはシリコンに浸透し、この溶解した銀は、冷却時に融解物から分離され、小さい銀結晶子の形でシリコン表面上で直接結晶化する。冷却されたガラスは、フィンガー(finger)の大量の銀と銀結晶子との間に絶縁バリアを形成する。この絶縁バリアは、電池から接点へと電流が流れることができるようにいくつかの箇所では十分に薄い。
【0006】
この第2の金属層は、たとえば、第1の層のガルバニック補強(galvanic reinforcement)によって、またはさらに、第1の接触層上への、特に容易に導電性となる金属層の印刷によって製造することができる。
【0007】
言及したすべての印刷システムを用いると、50μm未満の線幅が実現可能であるが、優れた電気接点はこれまで、真空蒸着した金属接点で実現することができるにすぎなかった。この技術は、マイクロエレクトロニクスから公知であるが、PV産業で使用するにはコストが大きすぎる。シード層を塗布し太陽電池を接触させるための金属インク/ペーストの直接印刷用には、これまで特別なペースト/インクは存在しない。使用するそれらインク/ペーストは、組成がスクリーン印刷用表側ペーストに対応する。そのようなペースト/インクは、最大約60〜80重量%の容易に導電性となる金属、たとえば銀と、最大約2〜5重量%のガラスフリットと、インク/ペーストのレオロジーを実質的に調整する最大20〜40重量%有機ビヒクル系から構成される。接点は、単一の印刷ステップ、たとえば、スクリーン印刷において製造される限りは、塗布高さが約15μm、幅が120μmである。これは、この場合、はるかに大きい接触表面が利用可能で、したがって、ペーストの接触特性に課せられる要求が少なくなることを意味する。加えて、特定の接触特性が金属層高さの減少とともに損なわれることが知られている。
【0008】
焼成によって接点を製造するための組成物が、様々な文献、たとえば、米国特許第6,036,889号、米国特許出願公開第2004/0151893号、米国特許出願公開第2006/0102228号、米国特許第4,153,907号、また米国特許第6,814,795号から公知である。接触抵抗の増大は、低ドープエミッタ上の細い接点構造を使用した時点で、公知のすべての調合物に共通となる。
【0009】
太陽電池による効率増進を実現するためには、金属と半導体との間(金属接点と太陽電池との間)に接合抵抗が低い高抵抗エミッタ上の細い接点を製造することが可能である接触インク/ペーストを開発することが特に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2007/085448号
【特許文献2】米国特許第6,036,889号
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0151893号
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0102228号
【特許文献5】米国特許第4,153,907号
【特許文献6】米国特許第6,814,795号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、金属と半導体との間に可能な限り抵抗が低い接合抵抗を、基板に対する機械的密着性が強い細い接点と共に同時に実現することができる組成物を提供することであった。さらに、本発明の目的は、電子部品上に電気接点構造を製造するための方法を示し、また本発明により製造することができる電子部品を示すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、金属含有組成物に関しては特許請求の範囲の請求項1の特徴によって、電子接点構造を製造するための方法に関しては請求項13の特徴によって、また電子部品に関しては請求項18によって実現される。その結果、それぞれの従属請求項により有利な改善が示される。
【0013】
線幅が細く(50μm未満)、とりわけ塗布高さが2μm未満と低い電気接点を改善するために、特に半導体に対する金属の接合抵抗を改善し、同時に密着性が高い本発明による材料系が提供される。本発明による組成物は、
a)組成物100重量%に対して20〜80重量%の量の、少なくとも1つの導電性金属粉末および/または金属合金の粉末および/または導電性金属の少なくとも1つの金属有機化合物と、
b)1000℃未満の融点を有するガラス、セラミックス、金属酸化物および/または先に述べたガラス、セラミックスおよび/または金属酸化物に含有される金属から得られる金属有機化合物および/またはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第1の酸化物材料と、および
c)融点が少なくとも1100℃であるセラミックスおよび/または金属酸化物および/または先に述べたセラミックスおよび/または金属酸化物に含有される金属から得られる金属有機化合物および/またはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第2の酸化物材料とを含む。
【0014】
本発明による組成物は、たとえば、銀と、ガラスまたは低融点酸化物と、「純粋な」高融点酸化物との組合せ、したがって銀と酸化物との組合せに関し、この酸化物の比率は比較的高く、銀の比率は比較的低い。したがって、酸化物および銀の源は、当該技術分野においても公知であるMOD(金属有機分解材料)であってもよい。
【0015】
これによって、銀の比率を低減させた材料系が製造コストの削減も示唆することは特に有利である。さらに、太陽電池を高抵抗エミッタと、したがって高効率電位と、幅が狭い低抵抗接点を用いて接触させることが本発明を用いて初めて可能となる。これまで、エミッタを層抵抗>100Ω/□と低抵抗、ρс<10mΩcmで接触させるためには、少なくとも80μmの接触幅が必要とされている。本発明による組成物を用いると、エミッタ>100Ω/□を、比接触抵抗がρс<2mΩcmである接点<20μmと接触させることができる。したがって、削減されたコストで太陽電池を高効率電位と接触させることが初めて可能となる。たとえば、現在、2×2cmの電池上の層抵抗110Ω/□で、20.3%を実現することができる。
【0016】
本発明によれば、加えて、下記aa)〜cc)からなる群から選択される少なくとも1つの有機化合物d)が、組成物中に含有される。
aa)溶媒、好ましくは沸点>100℃である溶媒、特に、テルピネオール、エチレングリコールエーテル、グリコールエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、N−メチルピロリドン、エチレングリコールおよび/またはこれらの混合物からなる群から選択される溶媒、
bb)結合剤、特にエチルセルロースおよび/または
cc)顔料−結合(pigment-affine)基を有するヒドロキシ官能性カルボン酸エステル、酸性基を有する共重合体、酸性基を有するブロック共重合体のアルキロール(alkylol)アンモニウム塩、および/またはこれらの混合物もしくは溶液からなる群から選択される分散剤。
【発明を実施するための形態】
【0017】
さらに、請求項1の特徴a)に記載の導電性金属が、電気伝導度が少なくとも40×10S/m、好ましくは少なくとも55×10S/mである金属からなる群から選択され、特に銀であり、および/または導電性金属の少なくとも1つの金属有機化合物が、金属有機分解材料(MOD)、好ましくは脂肪酸の金属塩、特に樹脂酸金属塩、特に好ましくは樹脂酸銀、ネオデカン酸銀および/または銀(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(1,5−シクロオクタジエン)、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されれば有利である。
【0018】
第1の酸化物材料b)は好ましくは、ガラスフリット、好ましくは鉛ガラスフリットおよび/またはビスマスガラスフリット、酸化亜鉛(II)、三酸化ビスマスからなる群から選択され、および/または第1の酸化物材料に含有される金属から得られる金属有機化合物が、金属有機分解材料(MOD)、好ましくは脂肪酸の金属塩、特に樹脂酸金属塩、特に好ましくは樹脂酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、2-エチルヘキサン酸ビスマスおよびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0019】
第2の酸化物材料c)が、ZnO、ZnO:Al、SnO、TiO、TiO、MgOからなる群から選択され、および/または第2の酸化物材料に含有される金属から得られる金属有機化合物が、金属有機分解材料(MOD)、好ましくは脂肪酸の金属塩、特に樹脂酸金属塩、特に好ましくは樹脂酸亜鉛および/またはネオデカン酸亜鉛、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されれば、さらに好ましい。
【0020】
したがって、専門用語の金属有機分解(MOD)で一般に知られている金属有機化合物または金属塩もまた、先に述べた酸化物または導電性金属の源となる。ネオデカン酸銀、Ag(hfa)(COD)、2-エチルヘキサン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ネオデカン酸亜鉛など、樹脂酸塩と呼ばれることも多い脂肪酸の金属塩が特に好適である。
【0021】
樹脂酸亜鉛、たとえば、ネオデカン酸亜鉛など、燃焼して融点が1000℃を超える金属酸化物を形成するさらなる樹脂酸塩との組合せは、したがって特に有利である。
正確には、酸化物粉末として、または樹脂酸亜鉛としての酸化亜鉛の添加により、太陽電池上の接点形成における電気接点に関与する銀結晶子の形成が促進される。
接点の質の指標である結晶密度は、接点材料系中のZnOの存在下で著しく増加する。
したがって、これは明確にガラス系に関するものである必要はなく、先の公報とはさらに大きく異なる点である。これまでは常に、酸化物をガラスの形で接点金属と混合してきた。
【0022】
低融点または高融点酸化物a)またはb)がガラスとして、すなわち、酸化物混合物として、またはそれぞれ銀粒子の周りのコーティングとしての微細酸化物として存在し得る可能性が、さらに考えられる。
【0023】
すべての組合せにおいて樹脂酸塩と粉末との混合物が考えられる。接点インクまたはペーストを製造するための、銀粉末と樹脂酸塩(樹脂酸ビスマス、樹脂酸亜鉛)との組合せが特に有望である。
【0024】
それぞれ組成物100重量%に対する量の比率に関して、互いに独立した個々の成分a)〜d)に対して、次に示すそれぞれの範囲データが好ましい。
・成分a):25〜75重量%、好ましくは30〜70重量%、特に好ましくは30〜68重量%の量。
・成分b):0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、特に好ましくは1.5〜7.5重量%の量。
・成分c):1〜80重量%、好ましくは3〜70重量%の量。
・成分d):0〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは20〜30重量%の量。
【0025】
本発明による組成物は、様々なすぐに使用できる(ready-to-use)形で存在することができる。好ましい一実施形態として、粘度η<1000mPas、好ましくはη<100mPasによって区別されるインクジェットインクまたはエアロゾルインクの形で組成物を設計する。さらに一方で、たとえば、スクリーン印刷によって塗布しようとする、粘度10Pas<η<300Pasによって区別されるペーストの形で組成物を設計する場合が可能で、かつ有利である。したがって、たとえば、材料の選択もしくはその量または材料の混合物に関して当業者に公知である一般原理に従って、たとえば、好適な有機材料d)を添加することによって、粘度を変化させる、または調整することができ、したがってそれぞれの使用目的に適合させることができる。
【0026】
組成物のコンシステンシー(consistency)とは独立に、また使用する粒子とは独立に、少なくとも1つの導電性金属a)、少なくとも1つの酸化物材料b)および/または少なくとも1つの酸化物材料c)が、同様にそれぞれ互い独立して、粒子または粉末として存在し、その平均粒径d50は、それぞれ互いに独立して、1nm〜10μmである。
【0027】
印刷技法も、ここでは互いに区別しなければならない。たとえば、インクジェットインクの場合、d50<200nmが、好ましくは<100nmが必要であるが、エアロゾル塗布では、d50<1μmが特に好適であり、スクリーン印刷、特に細線スクリーン印刷では、d50<10μm、特にd50<5μmが好ましい。
【0028】
好ましい代替実施形態においては、本発明による組成物は粒子を含まない。これは、成分a)〜c)が単に上述のMOD(金属有機分解材料)のみを含む場合に特に当てはまる。本実施形態は、低粘性組成物に特に好適であり、非常に微細な、すなわち、幅が狭い接点構造を構造的に製造しようとする場合に特に利点がある。
もちろん、本発明による組成物が、粒子を含まない成分a)〜c)も、粒子を含有する成分a)〜c)も共に互いに組み合わせて含む場合も同様に有利である。
【0029】
本発明によれば、電子部品上に電気接点構造を製造するための方法もさらに示される。この方法においては、
a)先に説明したような組成物を、製造しようとする接点構造を再生する形で電子部品上に塗布し、
b)この組成物を備える部品を、接点焼成ステップにおいて400〜900℃の温度まで加熱する。
【0030】
したがって、本発明によれば、組成物を、あらかじめ最終的な接点構造を再生する形で、すなわち、たとえばストリップ導体の形で、部品上に塗布することが条件となる。しかしながら、より大きい導電性表面において準備を行おうとする場合、組成物をそれに合わせて平面的に塗布することも同様に可能である。したがって好ましくは、あらかじめ、後に望まれる導体構造の寸法の形における長さ、幅および高さについての比率で、塗布を行う。本発明による組成物の特性により、組成物の部品に対する優れた密着性が可能となり、その結果可能な限り幅が狭く、また機械的には非常に安定なストリップ導体を確実に製造することができ、さらに組成物の種類によって、最終の加熱ステップの後、製造した導電性構造の部品への最適な接続が確実となる。
【0031】
好ましくは、本発明による組成物は、スクリーン印刷、エアロゾル印刷、インクジェット印刷、タンポン印刷、テンプレート印刷、分配および/またはこれらの組合せによって塗布される。
【0032】
加熱ステップb)の有利な温度範囲は、700〜850℃である。
【0033】
幅が50μm未満、好ましくは40μm未満、特に好ましくは35μm未満であるストリップ導体の形態で塗布が行われた場合、同様に好ましい。
【0034】
本発明によれば、電気接点構造を有する電子部品、特に太陽電池が同様に提供され、電気接点構造を有するこの電子部品は、本発明による方法に従って製造することができる。
【0035】
本発明を次に示す特定のパラメータに限定することなしに、以下の実施形態および実施例に関して、また添付の図面に関して本発明をより詳細に説明する。
【0036】
本発明により提供される組成物、特に、ペースト/インクは、以下から構成される。
・導電性金属、とりわけ銀、
・容易に湿潤性となる金属酸化物、酸化鉛(PbO)または酸化ビスマス(Bi)に置き換えることもできるガラス系、好ましくは鉛ガラスまたはビスマスガラス。
・上記金属と、ガラスフリット/湿潤性酸化物とに加え、約750℃の接点焼成温度よりも融点がはるかに高いさらなる金属酸化物を使用する。例として、ZnO(融点mp:1800℃)、ZnO:Al(mp:1800℃)、SnO(mp:1127℃)、TiO(mp:1830℃)、MgO(mp:2800℃)、を言及することができ、好ましくはZnO、ZnO:Al、またCaOである。
【0037】
これらの酸化物を1つまたは組み合わせて使用すると、実際には接点の電気伝導度が低減されるが、これらの酸化物により、機械的安定性も電気的金属−半導体接合も共に大幅に改善される。湿潤性酸化物またはガラスフリットと、接点材料、銀との組み合わせにおいて、そのような材料系がシード層として非常に適している。
【0038】
高い融点には、酸化物が接点焼成中完全には溶融せず接点構造中に固体粒子として存在し、互いに良好に「かみ合う」層に寄与し、したがって密着性が増大する効果がある。さらに、接点焼成中に放出されるガス(表側反射防止層(SiN層)からのN、H、または印刷した接点インクからの有機燃焼生成物、HO、CO)が接点から良好に脱出し、したがって接点構造がよりコンパクトに、また多孔性が低くなることが考えられる。共に、機械的密着性および電気接触に良い影響を及ぼす。
【0039】
さらに、とりわけZnOまたはZnO:Alを使用した場合、電気接触が大幅に改善される。430℃よりも高くまで加熱したZnOも、アルミニウムをドープした酸化亜鉛も共に、電気伝導度が高く、それにより電流がガラス層中をより良く流れることができる。さらに考えられる電流路は、銀結晶子から導電性酸化物粒子を通って接点銀へと延在する。ZnOがn型半導体であるという特性により、高抵抗エミッタ(>70Ω/□)を、この酸化物を含有する接点インク/ペーストと低抵抗で接触させることも可能である。使用する酸化物、特にZnOにより、接点形成に不可欠である銀結晶子の成長、したがってその密度も促進される。したがって、はるかに優れた接触特性を有するペーストまたはインクが初めて製造され、シリコン太陽電池上でテストされる。非常に細い接触線(30μm)を用いることで、高抵抗エミッタを備える太陽電池について非常に優れた電気的パラメータ(接触抵抗、充てん率、電池の効率)を実現することができた。
【0040】
新たに開発したこの印刷用インクは、たとえば、エアロゾル印刷法、インクジェット法、細線スクリーン印刷法、またはタンポン印刷法において、シード層として太陽電池上に塗布することができる。
【0041】
どの印刷法を使用するかによって、ペースト/インクのレオロジーを適応させることが必要である。細線スクリーン印刷ペーストの場合、粘度がη>1Pasとなり、エアロゾルインクでは粘度はη<1Pasとなるべきであり、インクジェットインクでは、粘度をη<100mPasまで低減させることが必要である。これらの接点ペースト/インクでは、優れた電気的および機械的接点が特に重要であるため、追加の金属酸化物、たとえば、ZnOの比率を大きく変化させることができ、3重量%から最大70重量%までの範囲で変化させることができる。金属酸化物の比率が高くなればなるほど、金属−半導体接合の低抵抗化が進み、接点の横電気伝導度がますます小さくなる。湿潤性ガラスフリット、鉛ガラスフリットもしくはビスマスガラスフリット、または湿潤性金属酸化物、PbO、Biの比率は、1重量%〜10重量%の間で変化させることができ、この比率は、好ましくは2〜3重量%である。金属酸化物の比率の変化と同程度に、導電性金属(銀)の比率は変更され、30重量%〜70重量%の間で変動する。
【実施例1】
【0042】
銀含有量が高く鉛ガラスフリットを有するシード層インク/ペースト:
・60重量%の銀
・2重量%の鉛ガラスフリット
・10重量%のZnO
・28重量%のN−メチルピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、Disperbyk 180/182
【実施例2】
【0043】
銀含有量が高くビスマスガラスフリットを有するシード層インク/ペースト:
・60重量%の銀
・2重量%のビスマスガラスフリット
・10重量%のZnO
・28重量%のN−メチルピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、Disperbyk 180/182
【実施例3】
【0044】
酸化物比率が高いシード層インク/ペースト:
・35重量%の銀
・2重量%の鉛ガラスフリット
・35重量%のZnO
・28重量%のN−メチルピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、Disperbyk 180/182
【実施例4】
【0045】
鉛ガラスフリットを有さず、代わりに湿潤性酸化物を有するシード層インク/ペースト:
・60重量%の銀(Ag)
・5重量%の酸化ビスマス(Bi
・10重量%の酸化亜鉛(ZnO)
・28重量%のN−メチルピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、Disperbyk 180/182
【実施例5】
【0046】
樹脂酸塩として酸化物が存在し、銀のみが粒子の形で存在するシード層インクペースト:
・60重量%の銀(Ag)
・10重量%の樹脂酸亜鉛(ネオデカン酸亜鉛)
・5重量%の樹脂酸ビスマス(ネオデカン酸ビスマス)
・25重量%のN−メチルピロリドン、ジエチレングリコールブチルエーテル、Disperbyk 182、キシレン
【実施例6】
【0047】
シード層インク/ペースト−粒子なし:
・40重量%の樹脂酸銀
・10重量%の樹脂酸亜鉛
・5重量%の樹脂酸ビスマス
・45重量%のキシレン、NMP、トルエン
【0048】
酸化ビスマスなど容易に湿潤性となる低融点酸化物または鉛ガラスフリットやビスマスガラスフリットなど容易に湿潤性となるガラスフリットと組み合わせて、酸化亜鉛などの導電性のある高融点酸化物を用いることによって、高抵抗エミッタ(Rsh>70Ω/□)を接触させ、同時に優れた密着性を実現することが可能である。その結果、酸化亜鉛の比率を最大35重量%まで増大させることができ、銀の比率を大幅に減少させることができる。
【0049】
被覆太陽電池の今回の場合と同様に、本発明による組成物を用いて本発明による方法によって製造することができる電子部品の構造を図1に示す。
【0050】
図1では、たとえばシリコン製の半導体部品1を示す。メタライゼーションへ適応させた表面上に、銀結晶子2が堆積されている。表面のこれらの領域に、ガラス層3が堆積され、銀結晶子のない領域にある反射防止層4で遮られている。この表面上に、銀層5にもガラス層3にも埋め込むことができる導電性酸化物粒子6が加えて示してある。最後に、たとえば、銀または銅製の導電性金属層7が塗布されている。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品上に接点構造を製造するための金属含有組成物であって、
a)前記組成物100重量%に対して20〜80重量%の量の、少なくとも1つの導電性金属粉末および/または金属合金の粉末および/または前記導電性金属の少なくとも1つの金属有機化合物、
b)1000℃未満の融点を有するガラス、セラミックス、金属酸化物および/または先に述べたガラス、セラミックスおよび/または金属酸化物に含有される金属から得られる金属有機化合物および/またはこれらの混合物、からなる群から選択される少なくとも第1の酸化物材料、および
c)融点が少なくとも1100℃であるセラミックスおよび/または金属酸化物および/または先に述べたセラミックスおよび/または金属酸化物に含有される金属から得られる金属有機化合物および/またはこれらの混合物、からなる群から選択される少なくとも第2の酸化物材料、および
d)以下からなる群から選択される少なくとも1つの有機成分、
aa)溶媒、好ましくは沸点>100℃である溶媒、特に、テルピネオール、エチレングリコールエーテル、グリコールエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、N−メチルピロリドンおよび/またはこれらの混合物からなる群から選択される溶媒、
bb)結合剤、特にエチルセルロースおよび/または
cc)顔料−結合基を有するヒドロキシ官能性カルボン酸エステル、酸性基を有する共重合体、酸性基を有するブロック共重合体のアルキロールアンモニウム塩、および/またはこれらの混合物もしくは溶液からなる群から選択される分散剤、
を含む、電子部品上に接点構造を製造するための金属含有組成物。
【請求項2】
前記導電性金属が、電気伝導度が少なくとも40×10S/m、好ましくは少なくとも55×10S/mである金属からなる群から選択され、特に銀であり、および/または前記導電性金属の前記少なくとも1つの金属有機化合物が、金属有機分解材料(MOD)、好ましくは脂肪酸の金属塩、特に樹脂酸金属塩、特に好ましくは樹脂酸銀、ネオデカン酸銀および/または銀(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(1,5−シクロオクタジエン)、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の酸化物材料b)が、ガラスフリット、好ましくは鉛ガラスフリットおよび/またはビスマスガラスフリット、酸化亜鉛(II)、三酸化ビスマスからなる群から選択され、および/または前記第1の酸化物材料に含有される金属から得られる前記金属有機化合物が、金属有機分解材料(MOD)、好ましくは脂肪酸の金属塩、特に樹脂酸金属塩、特に好ましくは樹脂酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、2-エチルヘキサン酸ビスマスおよびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2の酸化物材料c)が、ZnO、ZnO:Al、SnO、TiO、TiO、CaO、MgOからなる群から選択され、および/または前記第2の酸化物材料に含有される金属から得られる前記金属有機化合物が、金属有機分解材料(MOD)、好ましくは脂肪酸の金属塩、特に樹脂酸金属塩、特に好ましくは樹脂酸亜鉛および/またはネオデカン酸亜鉛、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物100重量%に対し、前記少なくとも1つの成分a)が、25〜75重量%、好ましくは30〜70重量%、特に好ましくは30〜68重量%の量で含まれることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物100重量%に対し、前記少なくとも1つの成分b)が、0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、特に好ましくは1.5〜7.5重量%の量で含まれることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物100重量%に対し、前記少なくとも1つの成分c)が、1〜80重量%、好ましくは3〜70重量%の量で含まれることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物100重量%に対し、前記少なくとも1つの有機成分d)が、0〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは20〜30重量%の量で含まれることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
η<1000mPas、好ましくはη<100mPasの粘度を特徴とするインクジェットインクまたはエアロゾルインクの形である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
10Pas<η<300Pasの粘度を特徴とするスクリーン印刷ペーストの形である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの導電性金属a)、前記少なくとも1つの酸化物材料b)および/または前記少なくとも1つの酸化物材料c)が粒子として含まれ、その平均粒径d50が、それぞれ互いに独立して、1nm〜10μmであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
粒子を含まないことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
電子部品上に電気接点構造を製造するための方法であって、
aa)請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物を、製造しようとする前記接点構造を再生する形で前記電子部品上に塗布し、
bb)前記組成物を備える前記部品を、接点焼成ステップにおいて400〜900℃の温度まで加熱する方法。
【請求項14】
前記組成物の塗布は、スクリーン印刷、エアロゾル印刷、インクジェット印刷、タンポン印刷、テンプレート印刷、分配および/またはこれらの組合せによって行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記部品が、ステップb)において700〜850℃の温度まで加熱されることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記塗布は、幅が<50μm、好ましくは<40μm、特に好ましくは<35μmであるストリップ導体の形に行われることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法により製造可能な電気接点構造を有する電子部品、特に太陽電池。

【公表番号】特表2011−527490(P2011−527490A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517016(P2011−517016)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004877
【国際公開番号】WO2010/003619
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(503306168)フラウンホーファー・ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デア・アンゲヴァンテン・フォルシュング・エー・ファウ (38)
【Fターム(参考)】