説明

金属帯の塗布方法、連続塗布装置

【課題】本発明は、カスレやオーバーコートなどの塗装欠陥が抑制された金属帯の塗布方法、および、該方法に使用される連続塗布装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ノズル開口部を有するプレコートノズルを用いて、走行する金属帯に塗料を噴射して予備塗装を行い、予備塗装された金属帯にロールにより塗料を塗布して本塗装を行う金属帯の塗装方法において、ノズル開口部の両端近傍に配置し、金属帯の耳伸び形状に基づいてエッジマスクをスライド移動させて、ノズル開口部とエッジマスクとで決定される塗料の噴射口の位置および金属帯の幅方向における開口幅を調整し、塗装欠陥の抑制された金属帯を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯の塗布方法、および、連続塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に、走行する金属帯の表面に表面被覆物質、塗料、化学反応剤等をコーティングする手段として、金属帯を浴中に浸漬したり、金属帯表面にスプレー噴射したり、ロールコータやブラシ等を用いてコーティング液を塗布するなど各種の手段がある。
【0003】
これらの各種の手段のうち、ロールコータを用いる技術では、金属帯へのロールコーティングの際、低粘度のコーティング液を使用すると、金属帯の濡れ性不足のため一様なコーティング層を形成することが難しく、コーティングむらが発生し易いという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、ロールコータのアプリケータロールの直前にプレコートノズルを配置して金属帯を濡らすことにより、金属帯の濡れ性を向上させる技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−246313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが、特許文献1に記載の塗布方法について検討を行ったところ、金属帯の種類や表面状態によっては、塗料の不足に起因したカスレや、塗料の過多に起因したオーバーコートなどによる外観不良が生じる場合があることを見出した。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、カスレやオーバーコートなどの塗装欠陥が抑制された金属帯の塗布方法、および、該方法に使用される連続塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来技術の問題点について鋭意検討した結果、塗装される金属帯の帯幅端部で生じる耳伸び形状に起因して、カスレやオーバーコートなどの塗装欠陥が生じることを見出した。本発明者らは、該知見に基づいてさらに検討を行ったところ、該耳伸び形状に基づいて予備塗装の際に使用されるプレコートノズルの塗料の噴射口の位置および開口幅を制御して、塗料の吹き付けを調整することにより、上記課題が解決できることを見出した。
つまり、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0009】
(1) ノズル開口部を有するプレコートノズルを用いて、走行する金属帯に塗料を噴射して予備塗装を行い、予備塗装された前記金属帯にロールにより塗料を塗布して本塗装を行う金属帯の塗装方法であって、
前記金属帯の幅方向にスライド移動し、前記ノズル開口部を部分的に塞ぐエッジマスクを前記ノズル開口部の両端近傍に配置し、
前記金属帯の耳伸び形状に基づいて、前記エッジマスクをスライド移動させ、前記ノズル開口部と前記エッジマスクとで決定される塗料の噴射口の位置および金属帯の幅方向における開口幅を調整する、金属帯の塗布方法。
【0010】
(2) 前記金属帯の走行方向に対して前記プレコートノズルの上流側で、金属帯の前記耳伸び形状を検出する、(1)に記載の金属帯の塗布方法。
【0011】
(3) 前記金属帯の走行方向に対して前記プレコートノズルの上流側で、走行する金属帯の帯幅端部の位置情報を取得して、前記帯幅端部の位置情報に基づいて、エッジマスクをスライド移動させ、前記ノズル開口部と前記エッジマスクとで決定される塗料の噴射口の位置および金属帯の幅方向における開口幅をさらに微調整する、(1)または(2)に記載の金属帯の塗布方法。
【0012】
(4) ノズル開口部を有するプレコートノズルを用いて、前記金属帯に塗料を噴射して予備塗装を行う予備塗装装置と、
予備塗装された前記金属帯にロールにより塗料を塗布して本塗装を行う本塗装装置とを備える連続塗装装置であって、
前記ノズル開口部の両端近傍に配置され、前記金属帯の幅方向にスライド移動し、前記ノズル開口部を部分的に塞ぐエッジマスクと、
前記エッジマスクをスライド移動させる駆動部と、
前記金属帯の耳伸び形状に基づいて、前記駆動部を制御して、前記ノズル開口部と前記エッジマスクとで決定される塗料の噴射口の位置および金属帯の幅方向における開口幅を調整する制御部とをさらに備える、連続塗装装置。
【0013】
(5) 前記金属帯の走行方向に対して前記予備塗装装置の上流側に配置され、走行する金属帯の前記耳伸び形状を検出する耳伸び検出装置をさらに備える、(4)に記載の連続塗装装置。
【0014】
(6) 前記金属帯の走行方向に対して前記予備塗装装置の上流側に配置され、走行する金属帯の帯幅端部の位置情報を検出する帯端検出装置をさらに備え、
前記端部検出装置で検出された前記帯幅端部の位置情報に基づいて、前記制御部が前記駆動部を制御して、前記ノズル開口部と前記エッジマスクとで決定される塗料の噴射口の位置および金属帯の幅方向における開口幅をさらに微調整する、(4)または(5)に記載の連続塗装装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カスレやオーバーコートなどの塗装欠陥が抑制された金属帯の塗布方法、および、該方法に使用される連続塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の連続塗装装置の第1の実施形態の概略構成図である。
【図2】金属帯に耳伸びを生じた例を模式的に示す斜視図(A)および上面図(B)である。
【図3】プレコートノズルの構成を正面から見た断面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】金属帯の幅とプレコートノズルの形状との関係を示す平面図である。
【図6】エッジマスク装入量と耳伸び形状との相関図である。
【図7】本発明の連続塗装装置の第2の実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の金属帯の塗布方法、および該方法で使用される連続塗装装置について、図面を参照して説明する。
【0018】
<連続塗装装置(第1の実施形態)>
まず、以下に、本発明の連続塗装装置の第1の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の金属帯の連続塗装装置10の概略構成図である。
連続塗装装置10は、金属帯12の走行ラインに沿って、走行ライン上流側から下流側に向かう方向に順次設けられた、耳伸び検出装置14と、予備塗装装置16と、本塗装装置18とを備える。さらに、連続塗布装置10は、制御部20を備える。
【0019】
(金属帯)
金属帯12は、長尺状の鋼板であり、その種類は特に制限されない。例えば、冷延鋼板、各種めっき鋼板、アルミニウム板などが挙げられる。
金属帯12の搬送方法は特に制限されないが、例えば、搬送ラインによって連続的に搬送される。搬送ラインは、一定間隔の搬送ロールにより構成され、ロールの回転により搬送ライン上の金属帯12を搬送する。
【0020】
(耳伸び検出装置)
耳伸び検出装置14は、走行する金属帯12の耳伸び形状を検出し、これらの耳伸び形状に関する形状情報を出力する装置である。取得された形状情報は、後述する制御部20に出力される。
なお、金属帯12は、その製造過程で局部的に波状の伸び(耳伸び)を生じる。このような耳伸びは、金属帯12の圧延工程で使用する圧延ロールの弾性変形(たとえば熱膨張,たわみ等)に起因して発生するものである。
耳伸び形状とは、耳伸び高さ、耳伸び急峻度、または耳伸び深さを意味する。耳伸び高さとは、図2(A)に示すように、金属帯12の波状の端部の走行位置からの高さ(dに該当)を意味し、耳伸び急峻度とは帯厚方向の波の周期をL、耳伸び山高さをdとした場合に、λ(耳伸び急峻度)=d÷L×100(%)と表される値を意味する。さらに、耳伸び深さとは、図2(B)に示すように、金属帯12幅方向の耳伸びが発生している部分の端部からの長さ(Wに該当)を意味する。
【0021】
耳伸び検出装置14としては、公知の装置を使用することができる。例えば、レーザー距離計を用いる装置が挙げられる(特開2010−243248号公報参照)。また、レーザー光を投光する投光装置とレーザー光を受光する受光装置とを備え、レーザー光をストリップの一方向(幅方向)の端部から他方向の端部まで照射し、CCDカメラによってレーザー光の遮断形状を検出する形状不良検出装置も挙げられる(特開平6−273133号公報参照)。
なお、耳伸び検出装置14は、耳伸び発生場所である圧延の下流側からコーティング設備の上流側の間であれば、設置場所は問わない。圧延ラインの出側に設置して、その情報をコーティングラインに反映させてもよい。
【0022】
(予備塗装装置)
予備塗装装置16は、金属帯12の表面への本塗装に先立って、金属帯12の表面に対して塗料Pを噴射することにより予備塗装を行う装置である。
予備塗装装置16は、金属帯12の表面に対して均一に塗料Pを吹き付けるプレコートノズル22を有する。図3および図4は、プレコートノズル22の構成を示す。図3は、プレコートノズル22の構成を正面から見た断面図であり、図4は図3中の矢印A−A線から見た断面図である。
【0023】
図3および図4に示すように、プレコートノズル22は、塗料タンクから塗料Pを導く導入管が連通した均圧室40と、走行する金属帯12の幅方向に延び、均圧室40内の塗料Pを噴出するスリット状のノズル開口部42と、ノズル開口部42を挟み、ノズル開口部42の長辺縁に沿って設けられた一対の立体壁44a、44bと、立体壁44a、44bの頂部に設けられたブラシ46a、46bとを備える。なお、塗料タンクおよび導入管は、図示していない。
【0024】
ノズル開口部42の形状は特に制限されないが、図3〜図5で示すように、走行する金属帯12の幅方向に延びるスリット状であることが好ましい。言い換えると、スリット状のノズル開口部42の長手方向が、走行する金属帯12の幅方向と略平行になるように配置されることが好ましい。ノズル開口部42がスリット状であれば、金属帯12の幅方向において塗料Pの噴射量を一定に制御しやすい。
スリット状のノズル開口部42の長手方向および短手方向の長さは、塗料Pが噴射される金属帯12の種類によって適宜選択されるが、通常、長手方向の長さは使用される金属帯12の幅方向の長さよりも長い。
【0025】
立体壁44a、44bは、ノズル開口部42の両長辺縁近傍に設けられ、金属帯12の幅方向(スリット状のノズル開口部42の長手方向)に延びる壁である。該立体壁44a、44bが設けられる場合、プレコートノズル22から出た塗料Pはこの立体壁44a、44bに案内されて、金属帯12の幅方向と平行な流れを形成しやすく、好ましい。結果として、塗料ムラなどがより抑制され、より均一に塗料Pを金属帯12に噴射することができる。
【0026】
ブラシ46a、46bは、立体壁44a、44bの頂部に設けられる。該ブラシ46a、46bが設けられる場合、プレコートノズル22から噴射された塗料Pは、ブラシ46a、46bの間を通って上昇し、このブラシに当接する金属帯12表面へ満遍なく供給され、好ましい。
なお、このブラシは他の材料であってもよく、例えば、スポンジ等の塗料Pが滲み込む材料のものでも使用することができる。
【0027】
(エッジマスク)
エッジマスク24a、24bは、スリット状のノズル開口部42の両端近傍(短辺縁近傍)に配置され、ノズル開口部42を部分的に塞ぐように、スライドして動く部材である。
図5は、金属帯12を上方からみた図である。2枚のエッジマスク24a、24bが互いに近付くようにスライド移動した際には、ノズル開口部42とエッジマスク24a、24bとで決定される塗料の噴射口(以後、塗料噴射口26とも称する)の幅が狭まる。一方、2枚のエッジマスク24a、24bが互いに遠ざかるようにスライド移動した際には、塗料噴射口26の幅が拡がる。
エッジマスクの形状は、ノズル開口部42を閉じる(蓋する)ことができる形状であれば特に制限されないが、図5に示すように、通常、長尺状の形状である。
【0028】
(駆動部)
駆動部28は、エッジマスク24a、24bをスライド移動させる装置である。
駆動部28としては公知の駆動装置を使用することができ、例えば、ロボシリンダ(電動シリンダ)とサーボモータとを組み合わせた駆動装置や、エアシリンダとエアポンプとを組み合わせた駆動装置、油圧シリンダと油圧ポンプとを組み合わせた駆動装置などが挙げられる。
【0029】
(本塗装装置)
本塗装装置18は、予備塗装装置16により予備塗装された金属帯12に対して、ロールにより塗料Pを塗布して本塗装を行う装置である。
図1に示す本塗装装置では、ピックアップコール30、ミタリングロール32、およびアプリケータロール36が、ロールコータを構成している。
各ロールのロール径およびロール胴長は、使用される金属帯12に応じて適宜最適な径および胴長が選択される。
【0030】
ピックアップロール30の表面は、塗料性状に応じて適宜選択すればよいが、クロムメッキ等された金属ロールであることが好ましく、ピックアップロール30の表面とアプリケータロール36の表面とは、接触位置Xaにおいて互いに接触している。ピックアップロール30と、アプリケータロール36の回転方向は、接触部分で逆向きの回転となるように構成されているが、同じ回転方向としてもよい。
【0031】
ミタリングロール32の表面も、塗料性状に応じて適宜選択すればよいが、クロムメッキ等された金属ロールであることが好ましく、ミタリングロール32の表面とピックアップロール30の表面とは、所定の間隙をあけて近接している。ミタリングロール32はその位置を調整可能であり、ミタリングロール32とピックアップロール30との間隙の大きさを調整できる。該間隙を調整することにより、ピックアップロール30上の塗料Pの厚みを調整できる。図1において、ミタリングロール32と、ピックアップロール30の回転方向は、近接部分で逆向きの回転となるように構成されているが、同じ回転方向としてもよい。
【0032】
アプリケータロール36の表面も、塗料性状に応じて適宜選択すればよいが、金属帯12に傷をつけないために表面をゴム被覆されたゴムロールであることが好ましい。アプリケータロール36は金属帯12の進行方向に対して同じ向きでも逆向きでもよいが、図1では、逆向きにリバース回転可能に構成されている。すなわち、アプリケータロール36の表面と金属帯12の表面とが互いに接触しているとき、その接触位置において、アプリケータロール36の表面の進行方向が金属帯12の進行方向と逆向きとなる方向へアプリケータロール36は回転可能に構成されている。
【0033】
上記実施形態は3ロール方式によるコーティング方式について述べているが、本発明では、3ロール方式に限定されず、2ロール方式、3ロール以上の方式であってもよい。
【0034】
(制御部)
制御部20は、走行する金属帯12の耳伸び形状に基づいて、上記駆動手段24を制御して、塗料噴射口26の位置および金属帯12の幅方向における開口幅を調整する。
【0035】
<金属帯の塗装方法(第1の実施態様)>
次に、上記した連続塗布装置10を用いた、本発明の金属帯の塗装方法の第1の実施態様について詳述する。
まず、図1で示すように、金属帯12が搬送されると、走行する金属帯12の耳伸び形状に関する形状情報が耳伸び検出装置14により取得される。耳伸び検出装置14で取得された形状情報は、必要に応じてメモリ(図示しない)に一時的に格納された後、制御部20に出力される。
制御部20が、金属帯12の搬送速度および耳伸び検出装置14と予備塗装装置16との間の距離とから、形状情報が取得された金属帯12の所定の部分が予備塗装装置16を通過するタイミングを算出する。このタイミングで制御部20が駆動部28を作動させ、エッジマスク24a、24bが所定の位置にスライド移動され、予備塗装装置16を通過する金属帯12の耳伸び形状に最適な塗料の噴射が実施できるように、塗料噴射口26の位置および金属帯12の幅方向における開口幅が調整される。
【0036】
エッジマスク24a、24bをスライド移動させる挿入量は、金属帯12の耳伸び形状に合わせて選択される。より具体的には、金属帯12の耳伸び高さ、耳伸び急峻度、または耳伸び深さの少なくとも一つの耳伸び形状に基づいて、挿入量が選択される。
挿入量の選択に際しては、金属帯12の耳伸び高さ・耳伸び急峻度・耳伸び深さを数段階に分類し、各ケースにおける挿入量の最適値を用意し、金属帯12の形状に応じて制御部20が自動的に挿入量の最適値を選択する。
一例として、図6に示すように、耳伸び急峻度が1.0%以上の場合と、1.0%未満の場合とに段階分けし、この場合の耳伸び急峻度の大きさによって、エッジマスク24a、24bの装入量を決定する。図6では、縦軸がエッジマスク24a、24bの装入量を表し、横軸が耳伸び高さを表す。図6に示すように、耳伸び高さが大きくなるにつれて、エッジマスク24a、24bを互いに近付けるようにスライド移動させ、その装入量が大きくなる。なお、図6で使用している金属帯12の幅は1500mmであり、厚みは0.5mmである。
なお、金属帯12の耳伸び高さ・耳伸び急峻度・耳伸び深さと、エッジマスク24a、24bの挿入量との相関関係の情報は、予めデータ化されて、制御部20の記憶部(図示せず)に保持されていることが好ましい。
【0037】
金属帯12が予備塗装装置16を通過する際には、塗料噴射口26から塗料Pが金属帯12に噴射され、予備塗装が施される。
より具体的には、予備塗装装置22においては、図示しない塗料タンクからポンプ100によって導入管を介して均圧室40に塗料Pが供給されており、均圧室40に供給された塗料Pは、塗料噴射口26から金属帯12表面に噴射される。このとき、金属帯12の耳伸び形状に応じた塗料噴射口26の位置および金属帯12の幅方向における開口幅が選択され、金属帯12表面に塗料Pをより均一に塗布することができる。
なお、液受けパン102をプレコートノズル22の下方に設置する。該液受けパン102を設けることにより、プレコートノズル22から落下した塗料Pを受け止めることができる。また、液受けパン102に入った塗料は、戻りライン104を通って塗料パン106へ流れる。
【0038】
一定量の塗料Pを塗装されて予備塗装を終えた金属帯12は、下流側に設置された本塗装装置18へ連続搬送され、ロールにより塗料Pが塗布され、本塗装が行われる。
図1においては、本塗装装置18では、アプリケータロール36の表面が金属帯12の予備塗装された表面に接触しており、アプリケータロール36は金属帯12の進行方向と逆向きにリバース回転している。
【0039】
本塗装装置18のピックアップロール30の下端は、塗料パン106の堰の上端よりも下方の高さ位置にあるので、塗料パン106内の塗料Pに浸かっており、塗料Pがピックアップロール30の表面に付着する。ピックアップロール30が回転し、ピックアップロール30の表面に付着した塗料Pは、ミタリングロール32とピックアップロール30との間の間隙を通過し、所定の厚さとなるように計量される。なお、ミタリングロール32の表面に計量後に付着している塗料Pは、スクレーパ34により除去される。
【0040】
所定の厚さとなった塗料Pは、ピックアップロール30とともに回転し、ピックアップロール30とアプリケータロール36とが接触している接触位置Xaへ運ばれ、該接触位置Xaにおいて、アプリケータロール36の表面に転写される。アプリケータロール36の表面に転写された所定厚さの塗料Pは、アプリケータロール36とともに回転し、アプリケータロール36の表面と金属帯12の表面との接触位置に達する。該接触位置において、アプリケータロール36の表面に付着している所定厚さの塗料Pが、金属帯12の表面の予備塗装の上に転写され、本塗装を終える。
【0041】
本塗装を終えた金属帯12は、連続塗装装置の下流側の次の工程へ搬送される。例えば、本塗装された金属帯12が、図示しない焼き付け炉内を通過することによって、塗料の焼付けが行われる。
【0042】
なお、事前に走行する金属帯12の耳伸び形状に関する形状情報を取得している場合は、制御部20が、金属帯12の搬送速度から形状情報が取得された金属帯12の所定の部分が予備塗装装置16を通過するタイミングを算出し、該タイミングで上記のように制御部20が駆動部28を作動させる。
【0043】
<連続塗装装置(第2の実施形態)>
以下に、本発明の連続塗装装置の第2の実施形態を図面を参照して説明する。
図7は、本発明の金属帯の連続塗装装置200の概略構成図である。
図7に示すように、連続塗装装置200は、金属帯12の走行ラインに沿って、走行ライン上流側から下流側に向かう方向に順次設けられた、耳伸び検出装置14と、端部検出装置50と、予備塗装装置16と、本塗装装置18とを備える。
図7に示す連続塗装装置200は、端部検出装置50を備える点を除いて、図1に示す連続塗装装置10と同様の構成を有するものであるので、同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明を省略し、主として端部検出装置50について説明する。
【0044】
(端部検出装置)
端部検出装置50は、金属帯12の走行方向に対して予備塗装装置16の上流側に配置され、走行する金属帯12の金属帯幅端部の位置情報を検出する装置である。該装置を使用することにより、予備塗装前の走行する金属帯12の蛇行の発生状況や、金属帯12の幅の変動を把握することができる。端部検出装置50で取得された位置情報は、制御部20へ出力される。
なお、図7において、端部検出装置50は、金属帯12の走行方向に対して耳伸び検出装置14の下流側に配置されているが、上流側に配置されていてもよい。
【0045】
端部検出装置50としては、公知の装置を使用することができる。例えば、公知の発光受光素子や、静電容量式の端部検出装置などを使用することができる。
【0046】
<金属帯の塗装方法(第2の実施態様)>
次に、上記した連続塗布装置200を用いた、本発明の金属帯の塗装方法の第2の実施態様について詳述する。
図7に示すように金属帯12が搬送されると、走行する金属帯12の帯幅端部の位置情報が端部検出装置50により取得される。端部検出装置50で取得された位置情報は、必要に応じてメモリ(図示しない)に一時的に格納された後、制御部20へと出力される。
制御部20が、金属帯12の搬送速度および端部検出装置50と予備塗装装置16との間の距離とから、位置情報が取得された金属帯12が予備塗装装置16を通過するタイミングを算出する。このタイミングで制御部20が駆動部28を制御して、予備塗装装置16を通過する金属帯12の帯幅端部の位置に合わせて、上記耳伸び形状に基づいてすでに位置決めされたエッジマスク24a、24bをさらにスライド移動させ、塗料噴射口26の位置や金属帯12の幅方向における開口幅をさらに微調整する。
なお、上記態様以外にも、端部検出装置50で取得された位置情報に基づいて一旦エッジマスク24a、24bを位置決めし、さらに上述した耳伸び形状に基づいてすでに位置決めされたエッジマスク24a、24bをさらにスライド移動させ、塗料噴射口26の位置や金属帯12の幅方向における開口幅をさらに微調整してもよい。
【0047】
より詳細には、金属帯12の蛇行が発生した場合、塗料噴射口26の長手方向における中心位置が金属帯12の幅方向における中心位置と一致するように、制御部20が駆動部28を制御して、エッジマスク24a、24bをスライド移動させる。該態様によって、金属帯12の蛇行時においても、塗料噴射口26の開口位置を金属帯12の位置に合わせて追従させることができ、結果として、金属帯12の表面に対して過不足なく塗料をプレコートノズル22から噴射することができる。
また、金属帯12の幅の変動が発生した場合は、変動した金属帯12の幅に合わせて、塗料噴射口26の金属帯12の幅方向における開口幅が調整される。
上記態様をとることにより、金属帯12の蛇行や、金属帯12の幅の変動が生じた場合であっても、すでに耳伸び形状に基づいて位置決めされたエッジマスク24a、24bをさらにスライド移動させ、塗装欠陥が抑制された塗装を行うことができる。
【実施例】
【0048】
無方向性電磁鋼板の連続焼鈍ラインに、図7の連続塗布装置を適用した。
ライン速度を50〜400mpmで、本塗装後の塗膜の厚みが2〜40μmになるように調整した。なお、端部検出装置および耳伸び検出装置は、静電容量式の装置を使用した。
【0049】
本発明の連続塗布装置を使用した結果と、エッジマスクを使用しない従来連続塗装装置を用いた結果とを比較すると、カスレおよびオーバーコートによる電磁鋼板の歩留りロスが1/5になった。
【符号の説明】
【0050】
10、200 連続塗布装置
12 金属帯
14 耳伸び検出装置
16 予備塗装装置
18 本塗装装置
20 制御部
22 プレコートノズル
24a、24b エッジマスク
26 塗料噴射口
28 駆動部
30 ピックアップロール
32 ミタリングロール
34 スクレーパ
36 アプリケータロール
40 均圧室
42 ノズル開口部
44a、44b 立体壁
46a、46b ブラシ
50 端部検出装置
100 ポンプ
102 液受けパン
104 戻りライン
106 塗料パン
P 塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口部を有するプレコートノズルを用いて、走行する金属帯に塗料を噴射して予備塗装を行い、予備塗装された前記金属帯にロールにより塗料を塗布して本塗装を行う金属帯の塗装方法であって、
前記金属帯の幅方向にスライド移動し、前記ノズル開口部を部分的に塞ぐエッジマスクを前記ノズル開口部の両端近傍に配置し、
前記金属帯の耳伸び形状に基づいて、前記エッジマスクをスライド移動させ、前記ノズル開口部と前記エッジマスクとで決定される塗料の噴射口の位置および金属帯の幅方向における開口幅を調整する、金属帯の塗布方法。
【請求項2】
前記金属帯の走行方向に対して前記プレコートノズルの上流側で、金属帯の前記耳伸び形状を検出する、請求項1に記載の金属帯の塗布方法。
【請求項3】
前記金属帯の走行方向に対して前記プレコートノズルの上流側で、走行する金属帯の帯幅端部の位置情報を取得して、前記帯幅端部の位置情報に基づいて、エッジマスクをスライド移動させ、前記ノズル開口部と前記エッジマスクとで決定される塗料の噴射口の位置および金属帯の幅方向における開口幅をさらに微調整する、請求項1または2に記載の金属帯の塗布方法。
【請求項4】
ノズル開口部を有するプレコートノズルを用いて、前記金属帯に塗料を噴射して予備塗装を行う予備塗装装置と、
予備塗装された前記金属帯にロールにより塗料を塗布して本塗装を行う本塗装装置とを備える連続塗装装置であって、
前記ノズル開口部の両端近傍に配置され、前記金属帯の幅方向にスライド移動し、前記ノズル開口部を部分的に塞ぐエッジマスクと、
前記エッジマスクをスライド移動させる駆動部と、
前記金属帯の耳伸び形状に基づいて、前記駆動部を制御して、前記ノズル開口部と前記エッジマスクとで決定される塗料の噴射口の位置および金属帯の幅方向における開口幅を調整する制御部とをさらに備える、連続塗装装置。
【請求項5】
前記金属帯の走行方向に対して前記予備塗装装置の上流側に配置され、走行する金属帯の前記耳伸び形状を検出する耳伸び検出装置をさらに備える、請求項4に記載の連続塗装装置。
【請求項6】
前記金属帯の走行方向に対して前記予備塗装装置の上流側に配置され、走行する金属帯の帯幅端部の位置情報を検出する端部検出装置をさらに備え、
前記端部検出装置で検出された前記帯幅端部の位置情報に基づいて、前記制御部が前記駆動部を制御して、前記ノズル開口部と前記エッジマスクとで決定される塗料の噴射口の位置および金属帯の幅方向における開口幅をさらに微調整する、請求項4または5に記載の連続塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−217982(P2012−217982A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90094(P2011−90094)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】