説明

金属表面上に変形可能な防食層を生成するための方法

本発明は、金属表面上に変形可能な防食層を製造するための方法、およびこの方法の使用に関する。幅広い範囲の用途に向けた金属のカソード防食のための経済的なプロセスを創出するために、本発明は、金属表面上に変形可能な防食層を製造するための方法であって、以下の工程:a)5〜95重量%の顔料、粉末、ペースト(フレーク)またはペレットの形態にある金属マグネシウム、亜鉛、アルミニウムもしくはチタン粒子、またはこれらの金属のうちの少なくとも1つを含有する混合物もしくは合金を、5〜95重量%の少なくとも1つの金属化合物と混合する工程であって、当該金属粒子と金属化合物との間の反応は表面改質された金属粒子をもたらす工程と;b)得られた表面改質された金属粒子を金属表面に付与する工程と;c)この表面改質された金属粒子から生成された層を、室温〜500℃の間の温度で硬化する工程と、からなる方法を提案する。本発明の構成の範囲内で、本発明の方法に従って被覆された金属基材は、変形させること、上塗りすること、溶接すること、被覆および着色すること、ならびに熱を反射することができるということが示された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面上に変形可能な防食層を製造するための方法およびその方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食に対する鋼鉄の活性保護のための亜鉛被覆は先行技術から公知である。亜鉛は415℃で溶融し、907℃で沸騰する。これは、亜鉛が使用できる温度範囲は約300℃に制限されるということを意味する。高温への長期の曝露の下では、亜鉛は非常に早く腐食し、その防食効果を失う。
【0003】
亜鉛のさらなる制限は−0.76Vという亜鉛の通常の標準電位である。−0.4Vの標準電位を有する鉄に対しては、亜鉛は、十分なカソード防食をもたらすことができる。しかしながら、鋼鉄およびアルミニウム(アルミニウムの通常の標準電位=−1.66V)という成分が一緒に合わさると、接触腐食が後に続いて起こり、アルミニウムが犠牲になる。この理由のため、特に自動車産業では、アルミニウム合金またはマグネシウム合金でできた部品は、かなりの費用をかけて、鋼鉄および亜鉛めっき鋼でできた部品と直接接触することを防止されている。
【0004】
亜鉛フレーク被覆も、先行技術から公知である。これらは、例として、有機結合剤またはシロキサンを含有するマトリクスの中にある亜鉛顔料(フレーク)からなり、250℃を超える温度で熱的に硬化される。種々の製造業者によって提供される系は、クロムVIを含有しているかまたはクロムVIを含まないかにおいて、および種々のコバルト結合剤、可撓性向上成分、ワックスなどの二次成分において、様々である。とりわけ中性塩霧試験などの腐食試験において、これらの亜鉛フレーク被覆は、同等の厚さの亜鉛金属被覆よりも明らかに良好な防食を与える。しかしながら、亜鉛フレーク被覆は、冷間成形および熱間成形などの成形プロセス、曲げまたはフランジ成形には適していない。
【0005】
長期の高温安定性、ならびに例えば鋼鉄およびアルミニウムまたは鋼鉄およびマグネシウムの複合材料に対する使用に関する上記の欠点は、ここでも同様に当てはまる。
【0006】
先行技術では、マグネシウム含有被覆の低い標準電位によって鋼鉄を腐食から保護するマグネシウム含有被覆が開示されている。これらは、例えば特許文献1に記載されるようにして電解で堆積され、そして50重量%までのマグネシウムを含有する。アルミニウムとマグネシウムの成分の間の直接接触があるところでは、この種の被覆は、マグネシウムのアルカリ腐食生成物によって、攻撃からアルミニウムを保護する働きをする。しかしながら、「従来の」亜鉛ベースの防食被覆の高温安定性と比べて改善された高温安定性はこの文献には記載されていない。これらの被覆は、用いることが技術的に困難であり、個々の部品に適しているだけである。その結果、それらの被覆は幅広い工業規模では使用されない。特許文献2によれば、さらに、当該被覆は基材に対する密着が非常に低い。それゆえこの種の被覆は、金属薄板の冷間成形および熱間成形などの成形プロセスのために使用することはできない。
【0007】
一般的に言えば、環境の影響に対して耐性があるマグネシウム含有被覆の調製は、かなり大きい割合のさらなる合金成分(例えば、50%までのマグネシウムを伴うアルミニウム)が含まれている場合にのみようやく可能である。なぜなら、純粋なマグネシウム自体の被覆は孔があく程度にまでも腐食するという強い傾向を示し、そして例えば中性塩霧試験ではわずか1日後に激しく腐食するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1 141 447(B1)号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/035835(A1)号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、幅広い範囲の用途のための金属のカソード防食のための経済的なプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明によれば、金属表面上に変形可能な防食層を製造するための方法であって、以下の工程:
a)5〜95重量%の、顔料、粉末、ペースト(フレーク)またはペレットの形態にある金属マグネシウム、亜鉛、アルミニウムもしくはチタン粒子、またはこれらの金属のうちの少なくとも1つを含有する混合物もしくは合金を、5〜95重量%の少なくとも1つの金属化合物と混合する工程であって、当該金属粒子と金属化合物との間の反応は表面改質された金属粒子をもたらす工程と;
b)得られた表面改質された金属粒子をこの金属表面に付与する工程と;
c)この表面改質された金属粒子から生成された層を、室温〜500℃の間の温度で硬化する工程と
からなる方法によって成し遂げられる。
【0011】
本発明の構成の範囲内で、従来の亜鉛フレーク被覆とは異なり、本発明に係る被覆は成形(または変形)することができるということが見出された。本発明の方法に従って被覆された金属基材は、変形させること、上塗りすること、溶接すること、被覆および着色すること、ならびに熱を反射することができるということも見出された。驚くべきことに、加えて、亜鉛/アルミニウム上の二酸化チタンによる被覆はカソード防食を有する鋼鉄およびアルミニウムの複合材料を与えるということも見出された。
【0012】
亜鉛顔料に勝るマグネシウム顔料の明らかな長所は、その実質的により高い融点および沸点である。純粋なマグネシウムについては、これらはそれぞれ650および1,107℃である。これらのパラメータは、それ自体で、亜鉛(融点=415℃、沸点=907℃)を用いて可能である温度よりもはるかに高い温度でマグネシウムを使用することを可能にする。マグネシウムは、酸化還元対Mg/Mg2+について−2.36Vの標準電位を有する、高価ではない元素であり、それゆえ、例えば鋼鉄のための防食系において犠牲アノードとして使用される。マグネシウムまたはマグネシウム/アルミニウムが金属顔料として使用されるところでは、本発明に従って生成される被覆は、−50〜650℃、好ましくは室温〜600℃の間、より好ましくは室温〜500℃の間の温度での永続的な利用に適している。1200℃までの温度への短時間の曝露(例えば中実の鋼鉄部品の熱間成形のための)、好ましくは1,000℃までの温度への短時間の曝露(例えば薄鋼板の熱間成形、熱処理および硬化のため、または中実の鋼鉄部品の半熱間成形(Halbwarmumformung)のため)も可能である。本願明細書で使用する用語「短時間の」は、20分未満の、好ましくは10分未満、とりわけ7分未満の期間を意味する。
【0013】
驚くべきことに、マグネシウム含有層または亜鉛含有層の中のマグネシウム粒子または亜鉛粒子の腐食傾向は、各個々の粒子の表面を、電気伝導性または半導性の構成要素を含有する薄層で被覆することにより効果的に妨げることができ、それ自体まったく高価ではない金属であるマグネシウムまたは亜鉛の活性防食効果を妨げることはないということが見出された。この金属粒子はこの金属化合物によって「その場で」不動態化され、室温で硬化可能な従来の亜鉛被覆に典型的な白錆の形成を妨げる。
【0014】
マグネシウムが顔料として使用されるところでは、本発明に係る層は、600℃までの温度で連続使用した後でさえも、依然として活性カソード防食を与える。これは、例えば、数日の熱処理にかけられ、次いで基材金属(軟鋼)にまで貫通する損傷を受けた(引っかき傷をつけた)本発明に係る層は、その後の200時間続く腐食試験(ISO 9227(DIN 50021)に従う中性塩霧試験)の間、損傷を受けた部位でまたはその表面上での赤錆の形成を依然として防止したという事実によって実証された。1,000℃までの温度で10分間の短時間の加熱の後でさえも、本発明の被覆によってもたらされる活性防食は、100時間を超える塩霧試験後にも赤錆がまったく現れないほどに、なお良好である。この種の短時間の高温負荷は、例えば鋼鉄の成形、硬化、鍛造および熱処理の間に起こりうる。
【0015】
当該被覆剤が2〜25μmの層の厚みで、好ましくは2〜15μmの層の厚みで、より好ましくは2〜10μmの層の厚みで付与されることは本発明の範囲内である。
【0016】
非常に良好な防食をもたらすために、先行技術におけるよりも明らかに薄い層で十分であるということが、本発明の範囲内で明らかになった。
【0017】
本発明は、10〜80重量%、より好ましくは25〜75重量%および最も好ましくは40〜60重量%の、顔料、粉末、ペースト(フレーク)またはペレットの形態の金属マグネシウム、亜鉛、アルミニウムもしくはチタン粒子の使用を提供する。
【0018】
20〜90重量%、より好ましくは25〜75重量%および最も好ましくは40〜60重量%の金属化合物を使用することは本発明の範囲内である。
【0019】
この粒子、顔料、粉末、ペースト(フレーク)またはペレットが個々に100nm〜100μm、より好ましくは1μm〜30μmの粒径を有することが好ましい。
【0020】
本発明の好ましい実施形態は、当該金属化合物が金属アルコキシド、金属塩、または金属アルコキシドおよび/もしくは金属塩の混合物であるということにある。
【0021】
これに関して、この金属アルコキシドが、チタンアルコキシド、とりわけチタンブチレート、チタンプロピレートまたはチタンイソプロピレート、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシドおよびスズアルコキシドからなる群から選択されることが好ましい。
【0022】
本発明によれば、上記金属塩は、鉄、マンガン、マグネシウム、ケイ素、コバルト、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、スズ、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、バナジウム、モリブデン、タングステン、銀の炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、亜リン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、水酸化物、酸化物、ホウ酸塩、塩化物、塩素酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、オレイン酸塩およびステアリン酸塩、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0023】
本発明の実施形態は、当該金属化合物が溶媒に溶解され、この溶媒が、好ましくは水、アルコール、プロトン性溶媒もしくは非プロトン性溶媒を含有するかまたは水、アルコール、プロトン性溶媒もしくは非プロトン性溶媒であり、この溶媒は、より好ましくはトルエン、ブチルグリコール、キシレンもしくはイソプロパノールであるかまたはトルエン、ブチルグリコール、キシレンもしくはイソプロパノールを含有するということにある。
【0024】
工程a)において、0〜20重量%の潤滑剤、特に窒化ホウ素(BN)、二硫化モリブデン(MoS)、二硫化タングステン(WS)、ポリテトラフルオロエチレン粒子(PTFE)またはシリコーン、ワックス、油または石鹸、疎水化添加剤または疎油化添加剤(Oleophobierungsadditive)または親水化添加剤、グラファイト、有機リン酸化合物、カーボンブラック、沈降防止剤(アエロジルなど)、着色料、特に無機顔料(酸化鉄(FeOx)など)が添加されることは本発明の範囲内である。
【0025】
本発明はさらに、工程a)における、0〜30重量%の鉄、銅、スズ、クロム、ニッケル、ステンレス鋼またはこれらの混合物の他の金属粒子の添加を提供する。
【0026】
工程a)において、0〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは5〜10重量%のアミノシラン、ブロック化ホスフェート(blockierte Phosphate)、ルイス酸、ルイス塩基、酸または塩基が架橋触媒として加えられることは本発明の範囲内である。
【0027】
工程b)において、得られた表面改質された金属粒子を金属表面上に付与することは、湿式化学プロセス、特に水中のエマルションでの吹き付け塗装、ディップコーティング、流し出し(Fluten)、ローラー塗布、ロールコーティング、刷毛塗り、プリンティング、スピニングによって、ドクターブレードにより、真空エバポレーションにより、無電流塗布、電気めっきまたは粉末形態で行われるということは本発明の範囲内である。
【0028】
この金属表面は、金属、金属合金、コイルまたは被覆された金属、特に個々の構成要素の形態または同じかもしくは異なる金属の結合体の形態の、鋼鉄、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−アルミニウム、亜鉛、鉄、ステンレス鋼、銅、スズ、鉛、黄銅、青銅、ニッケル、クロム、チタン、バナジウム、マンガンまたはこれらの組合せであることが有利である。
【0029】
工程c)において、硬化は、室温〜500℃、好ましくは室温〜350℃の間、より好ましくは250℃〜350℃の間の範囲の温度で、30秒〜1日の間、好ましくは30秒〜1時間の間、より好ましくは30秒〜5分の間行われることは本発明の範囲内である。
【0030】
本発明の改良点は、硬化の後に、250℃〜約700℃の範囲の温度で実施され数秒〜数時間続く焼き戻し工程が続くことにある。
【0031】
最後に、本発明の範囲は、建物、道路、空気、水、水中、農場、建造物、宇宙船および鉄道車両、特に自動車および自動車付属品、モーター/エンジンおよびモーター/エンジン付属品、農業機械、建設機械、橋梁、クレーン、シャフト、ケーブルカー、工業プラント、技術的設備、発電所、照明器具、アンテナ塔、筐体、カバーまたは保護装置のための構成要素の上に、または締め具、特にねじの上に、本発明の変形可能な防食層を生成するための方法の使用をも包含する。
【0032】
本発明の範囲はさらに、同様に溶接可能である、鋼鉄または亜鉛めっき鋼用の活性溶接プライマーを生成するための本発明の方法の使用を包含する。
【0033】
本発明は、実施形態を参照することによって詳細に後述される。
【実施例】
【0034】
実施例1:
100gのブチルグリコールを、100gの微細な、フレーク状の亜鉛粉末および15gの同じくフレーク状のアルミニウム顔料ペーストの混合物の上へと注ぎ込む。この混合物を密閉容器の中で24時間放置し、次いでゆっくりとした撹拌機を用いて2時間均質化する。
【0035】
50gのテトラ−n−ブチル−オルトジルコネートを、乾燥窒素雰囲気下でこの反応混合物の中へと混ぜ入れ、ゆっくりとした撹拌機を用いてこの混合物を1時間均質化し、次いで12時間還流させる(テトラ−n−ブチル−オルトジルコネートの沸点=117℃)。このプロセスの間に、亜鉛およびアルミニウム粒子はこの有機金属成分で表面改質される。この反応混合物を室温まで再び冷却した後、さらに100gのテトラ−n−ブチル−オルトジルコネートを乾燥窒素雰囲気下で混ぜ入れ、さらに5時間撹拌を続ける。
【0036】
付与の間、この液体被覆材料を連続的に撹拌し、固体成分が沈降するのを防ぐ。
【0037】
この被覆材料を、ロールアプリケーターによって、40〜50μmの乾燥前膜厚で、脱脂し清浄した鋼板の両側に付与し、250℃で5分間加熱処理する。
【0038】
この被覆した鋼板を、適切な電気加熱炉の中で、300℃で30分間焼き戻す。これにより、被覆を有する薄板が被覆の欠け落ちなしに部品へと成形できるほどに、被覆が鋼鉄表面に強く密着するようになる。
【0039】
実施例2:
100gの、20μmよりも小さい粒径を有する微細なマグネシウム粉末(Eckaより入手)を100gのブチルジグリコール酢酸エステルに分散させる。100gのブチルグリコール中の20gの硝酸クロム(III)九水和物の溶液を、一定の撹拌をしながら、この分散液にゆっくり加える。この反応混合物を、添加の間、加温する。添加の速度は、この反応混合物の温度が50℃よりも高く上がらないように、選択する。
【0040】
ロータリーエバポレーターを用いて、50℃の浴温度でブチルグリコールを真空下で留去する。
【0041】
この反応混合物を室温まで再び冷却した後、120gのテトラ−イソプロピルオルトチタネートを加え、改質されたマグネシウム粉末とともに、均一な、塗料のような分散液が得られるまで撹拌する。この混合物を乾燥窒素雰囲気下で12時間還流させる(テトラ−イソプロピルオルトチタネートの沸点=232℃、ブチルジグリコール酢酸エステルの沸点範囲=238〜248℃)。
【0042】
この反応混合物を室温まで冷却した後、50gのブロック化ホスフェート触媒(例えば、King Industries(キング・インダストリーズ)からNacureの名称で入手できる)を加え、均一に30分間撹拌する。
【0043】
ブチルグリコールを加えることにより、粘度を20s(4mm DIN フローカップからの流下時間)に調整する。
【0044】
この被覆材料を、一定速度で撹拌されたディップコーティング浴の中へと導入する。
【0045】
例えば溶接によって組み立てられた部品、または2つの金属が互いに直接接触している鋼鉄/アルミニウム薄板をこの浴の中へと軽く浸け、溶接部もこの被覆材料によって完全に濡れ、そして溶接された接合部の金属薄板間の空間の中へ数ミリメートルの深さまでこの被覆材料が浸透することができるようにする。この被覆された部品を取り出した後、これを熱風加熱炉に移し、そこでこの被覆を250℃で30分間加熱処理する。この被覆のおかげで、腐食から完全に活性に(カソード側に)保護された金属薄板または部品が得られる。すなわち、より高価ではないアルミニウムも接触点で腐食から保護される。
【0046】
実施例3:
100gのブチルグリコールを、100gの微細な、フレーク状の亜鉛粉末および15gの同じくフレーク状のアルミニウム顔料ペーストの混合物の上へと注ぎ込む。この反応混合物を密閉容器の中で24時間放置し、次いでゆっくりとした撹拌機を用いて2時間均質化する。
【0047】
50gのテトラ−n−ブチル−オルトチタネートを、乾燥窒素雰囲気下でこの反応混合物の中へと混ぜ入れ、ゆっくりとした撹拌機を用いてこの混合物を1時間均質化し、次いで12時間還流させる。このプロセスの間に、亜鉛およびアルミニウム粒子はこの有機金属成分で表面改質される。この反応混合物を室温まで再び冷却した後、さらに100gのテトラ−n−ブチル−オルトチタネートを乾燥窒素雰囲気下で混ぜ入れ、さらに5時間撹拌を続けた。
【0048】
付与の間、当該液体被覆材料を連続的に撹拌し、固体成分が沈降するのを防ぐ。
【0049】
この被覆材料を、ロールアプリケーターによって、40〜50μmの乾燥前膜厚で、脱脂し清浄した鋼板の両側に付与し、250℃で5分間加熱処理する。
【0050】
この被覆した鋼板を、適切な電気加熱炉の中で、300℃で30分間焼き戻す。これにより、被覆を有する薄板が被覆の欠け落ちなしに部品へと成形できるほどに、被覆が鋼鉄表面に強く密着するようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面上に変形可能な防食層を製造するための方法であって、以下の工程:
a)5〜95重量%の、顔料、粉末、ペースト(フレーク)またはペレットの形態にある金属マグネシウム、亜鉛、アルミニウムもしくはチタン粒子、またはこれらの金属のうちの少なくとも1つを含有する混合物もしくは合金を、5〜95重量%の少なくとも1つの金属化合物と混合する工程であって、前記金属粒子と金属化合物との間の反応は表面改質された金属粒子をもたらす工程と;
b)得られた表面改質された金属粒子を前記金属表面に付与する工程と;
c)前記表面改質された金属粒子から生成された層を、室温〜500℃の間の温度で硬化する工程と
からなる方法。
【請求項2】
前記被覆剤は2〜25μmの層の厚み、好ましくは2〜15μmの層の厚みで、より好ましくは2〜10μmの層の厚みで付与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
10〜80重量%、より好ましくは25〜75重量%、最も好ましくは40〜60重量%の、顔料、粉末、ペースト(フレーク)またはペレットの形態の金属マグネシウム、亜鉛、アルミニウムもしくはチタン粒子が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
20〜90重量%、より好ましくは25〜75重量%、最も好ましくは40〜60重量%の金属化合物が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子、顔料、粉末、ペースト(フレーク)またはペレットは個々に100nm〜100μm、より好ましくは1μm〜30μmの粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記金属化合物は金属アルコキシド、金属塩または金属アルコキシドおよび/もしくは金属塩の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属アルコキシドは、チタンアルコキシド、とりわけチタンブチレート、チタンプロピレートまたはチタンイソプロピレート、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシドおよびスズアルコキシドからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属塩は、鉄、マンガン、マグネシウム、ケイ素、コバルト、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、スズ、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、バナジウム、モリブデン、タングステン、銀の炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、亜リン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、水酸化物、酸化物、ホウ酸塩、塩化物、塩素酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、オレイン酸塩およびステアリン酸塩、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記金属化合物は溶媒に溶解され、前記溶媒は、好ましくは水、アルコール、プロトン性溶媒もしくは非プロトン性溶媒を含有するかまたは水、アルコール、プロトン性溶媒もしくは非プロトン性溶媒であり、前記溶媒はより好ましくはトルエン、ブチルグリコール、キシレンもしくはイソプロパノールであるかまたはトルエン、ブチルグリコール、キシレンもしくはイソプロパノールを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程a)において、0〜20重量%の潤滑剤、特に窒化ホウ素(BN)、二硫化モリブデン(MoS)、二硫化タングステン(WS)、ポリテトラフルオロエチレン粒子(PTFE)またはシリコーン、ワックス、油または石鹸、疎水化添加剤または疎油化添加剤または親水化添加剤、グラファイト、有機リン酸化合物、カーボンブラック、アエロジルなどの沈降防止剤、着色料、特に酸化鉄(FeOx)などの無機顔料が添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程a)において、0〜30重量%の鉄、銅、スズ、クロム、ニッケル、ステンレス鋼またはこれらの混合物の他の金属粒子が添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程a)において、0〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは5〜10重量%のアミノシラン、ブロック化ホスフェート、ルイス酸、ルイス塩基、酸または塩基が架橋触媒として添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程b)において、得られた表面改質された金属粒子を前記金属表面上に付与することは、湿式化学プロセス、特に水中のエマルションでの吹き付け塗装、ディップコーティング、流し出し、ローラー塗布、ロールコーティング、刷毛塗り、プリンティング、スピニングによって、ドクターブレードにより、真空エバポレーションにより、無電流塗布、電気めっきまたは粉末形態で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記金属表面は、金属、金属合金、コイルまたは被覆された金属、特に個々の構成要素の形態または同じかもしくは異なる金属の結合体の形態の、鋼鉄、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−アルミニウム、亜鉛、鉄、ステンレス鋼、銅、スズ、鉛、黄銅、青銅、ニッケル、クロム、チタン、バナジウム、マンガンまたはこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程c)において、硬化は、室温〜500℃、好ましくは室温〜350℃の間、より好ましくは250℃〜350℃の間の範囲の温度で、30秒〜1日の間、好ましくは30秒〜1時間の間、より好ましくは30秒〜5分の間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
硬化の後に、250℃〜約700℃の範囲の温度で実施され数秒〜数時間続く焼き戻し工程が続く、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
建物、道路、空気、水、水中、農場、建造物、宇宙船および鉄道車両、特に自動車および自動車付属品、モーター/エンジンおよびモーター/エンジン付属品、農業機械、建設機械、橋梁、クレーン、シャフト、ケーブルカー、工業プラント、技術的設備、発電所、照明器具、アンテナ塔、筐体、カバーまたは保護装置のための構成要素の上に、または締め具、特にねじの上に、変形可能な防食層を生成するための、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の方法の使用。

【公表番号】特表2012−505963(P2012−505963A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531353(P2011−531353)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際出願番号】PCT/DE2009/075049
【国際公開番号】WO2010/043220
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(507408187)ナノ−エックス ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】