説明

金属調加飾シート及びその製造方法

【課題】静電容量センサの動作不良の発生を防ぎかつ少量生産時における生産効率向上を図ることが可能な金属調加飾シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の金属調加飾シート30は、基礎樹脂フィルム31と、プライマー層32と、金属層33と、ホットメルト接着剤層35と、透明樹脂フィルム36とを順番に積層した構造になっている。そして、金属層33は、複数の金属体33Aが互いに分離した状態で散在する金属体散在構造になっている。これにより、金属層33全体が1枚の連続した導電体ではなくなり、金属調加飾シート30にて車両用ドアハンドル10の外面を覆っても、静電容量センサ15の動作不良の発生が防がれる。また、ホットメルト接着剤を用いたので、少量生産を行う場合には、液状の接着剤を用いる場合と比較して接着工程に要する時間を短縮することができ、生産効率の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量センサの検知電極を内蔵可能な車両用樹脂成形品の外面形状に合わせて成形される電波透過性を備えた金属調加飾シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した車両用樹脂成形品の一例として、静電容量センサの検知電極を内蔵したドアハンドルが知られている(例えば、特許文献1参照)。このドアハンドルでは、搭乗者が触れたことを静電容量センサにて検出してドアの解錠を行う。また、このようなドアハンドルの中には、外面が金属調加飾シートで装飾されたものも増えてきている。そして、従来の金属調加飾シートは、PETフィルムの表面に金属を蒸着して金属蒸着層を形成しておき、そのPETフィルムを1対の樹脂フィルムで挟むように液状の接着剤を用いてラミネートする方法により大量生産されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−221946号公報([0002])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の金属調加飾シートにて車両用樹脂成形品の外面を覆うと、静電容量センサが正常に作動しなくなることがあった。また、小型の車両用樹脂成形品の装飾に特化して金属調加飾シートを少量生産(例えば、1ロット:1m以下)する場合、上述した金属調加飾シートの製造方法では、接着剤が乾燥するまでの待ち時間が生産効率の低下を招いていた。さらに別の問題として、車両用樹脂成形品の外面形状が凹凸の段差が大きい(深絞り)形状である場合には、金属調加飾シートが層間剥離を起こすことがあった。
【0005】
上記事情に鑑みてなされた本発明の第1の目的は、静電容量センサの動作不良の発生を防ぎかつ少量生産時における生産効率向上を図ることが可能な金属調加飾シート及びその製造方法を提供することである。また、本発明の第2の目的は、深絞り形状の車両用樹脂成形品の外面を覆ったときの層間剥離を防ぐことが可能な金属調加飾シート及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る金属調加飾シート(30)の製造方法は、静電容量センサ(15)の検知電極(15D)を内蔵可能な車両用樹脂成形品(10)の外面形状に合わせて成形され、金属層(33)が、金属層(33)の外側を覆ってその金属層(33)を視認可能にする透明樹脂フィルム(36)と車両用樹脂成形品(10)に固着される基礎樹脂フィルム(31)との間に挟まれてなる金属調加飾シート(30)の製造方法であって、透明樹脂フィルム(36)及び基礎樹脂フィルム(31)のうち何れか一方の樹脂フィルム(31)を金属層(33)で覆ってなる金属被覆樹脂フィルム(37)に他方の樹脂フィルム(36)を貼り合わせる金属調加飾シート(30)の製造方法において、金属層(33)を複数の金属体(33A)が互いに分離した状態で散在する金属体散在構造としておき、金属被覆樹脂フィルム(37)と他方の樹脂フィルム(36)とをホットメルト接着剤を用いて熱ラミネートするところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の金属調加飾シート(30)の製造方法において、金属層(33)の平均厚さを10〜70nmとし、その金属層(33)を厚さ方向から見たときの複数の金属体(33A)の平均粒径を30〜150nmとし、金属体(33A)同士の間の平均隙間を5〜30nmにするところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の金属調加飾シート(30)の製造方法において、金属層(33)は、インジウム又はスズの金属蒸着層であるところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の金属調加飾シート(30)の製造方法において、一方の樹脂フィルム(31)の片面にアクリル系樹脂又はウレタン系樹脂からなるプライマー層(35)を設けておき、そのプライマー層(35)に金属を蒸着させて金属被覆樹脂フィルム(37)を得るところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項3に記載の金属調加飾シート(30)の製造方法において、金属被覆樹脂フィルム(37)は、一方の樹脂フィルム(31)に金属蒸着層(33)を直接積層してなるところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4又は5に記載の金属調加飾シート(30)の製造方法において、透明樹脂フィルム(36)をアクリル系樹脂フィルムとし、基礎樹脂フィルム(31)をABS樹脂フィルムとするところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載の金属調加飾フィルム(30)の製造方法において、ホットメルト接着剤は、ウレタン系樹脂よりなり、そのホットメルト接着剤を金属被覆樹脂フィルム(37)及び他方の樹脂フィルムの何れか一方に20μm以下の厚さに塗布するところに特徴を有する。
【0013】
請求項8の発明に係る金属調加飾シート(30)の製造方法は、静電容量センサ(15)の検知電極(15D)を内蔵可能な車両用樹脂成形品(10)の外面形状に合わせて成形され、金属層(33)が、金属層(33)の外側を覆ってその金属層(33)を視認可能にする透明樹脂フィルム(36)と車両用樹脂成形品(10)に固着される基礎樹脂フィルム(31)との間に挟まれてなる金属調加飾シート(30)であって、金属層(33)は、透明樹脂フィルム(36)及び基礎樹脂フィルム(31)のうち何れか一方の樹脂フィルム(31)に直に、或いは、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂からなるプライマー層(35)を介して積層されると共に、複数の金属体(33A)が互いに分離した状態で散在する金属体散在構造をなし、金属層(33)と他方の樹脂フィルム(36)との間にホットメルト接着剤層(35)を設けたところに特徴を有する。
【0014】
請求項9の発明は、請求項8に記載の金属調加飾シート(30)において、金属層(33)の平均厚さは、10〜70nmであり、複数の金属体(33A)は、金属層(33A)を厚さ方向からみたときに平均粒径が30〜150nmであり、金属体(33A)同士の間の平均隙間が5〜30nmであるところに特徴を有する。
【0015】
請求項10の発明は、請求項9に記載の金属調加飾シート(30)において、金属層(33)は、インジウム又はスズの金属蒸着層であるところに特徴を有する。
【0016】
請求項11の発明は、請求項8乃至10の何れか1の請求項に記載の金属調加飾シート(30)において、透明樹脂フィルム(36)は、アクリル系樹脂フィルムであって、基礎樹脂フィルム(31)は、ABS樹脂フィルムであるところに特徴を有する。
【0017】
請求項12の発明は、請求項8乃至11の何れか1の請求項に記載の金属調加飾シート(30)において、ホットメルト接着剤層(35)は、平均厚さが20μm以下であって、ウレタン系樹脂よりなるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0018】
[請求項1,8の発明]
請求項1,8の発明に係る金属調加飾シート(30)は、金属層(33)が複数の金属体(33A)で構成されかつそれら複数の金属体(33A)が互いに分離した金属体散在構造になっているので、金属層(33)全体が1枚の連続した導電体ではなくなる。これにより、この金属調加飾シート(30)にて車両用樹脂成形品(10)の外面を覆っても、静電容量センサ(15)の動作不良の発生が防がれる。また、本発明では、ホットメルト接着剤を用いたので、少量生産を行う場合には、液状の接着剤を用いる場合と比較して接着工程に要する時間を短縮することができ、生産効率の向上を図ることができる。
【0019】
[請求項2,3,9,10の発明]
請求項2及び9の発明のように、金属層(33)の平均厚さが10〜70nm、複数の金属体(33A)の平均粒径が30〜150nm、金属体(33A)同士の間の平均隙間が5〜30nmとなるように構成すれば、金属層(33)全体を連続した1つの金属部品に見せることができる。また、上記の如く、平均厚さが10〜70nm、複数の金属体(33A)の平均粒径が30〜150nm、平均隙間が5〜30nmである金属層(33)は、インジウム又はスズの金属蒸着によって容易に形成することができる(請求項3,10の発明)。
【0020】
[請求項4,5の発明]
金属被覆樹脂フィルム(37)は、請求項4の発明のように、一方の樹脂フィルム(31)に設けたプライマー層(35)に金属を蒸着した構成であってもよいし、請求項5の発明のように、一方の樹脂フィルム(31)に金属蒸着層(33)を直接積層した構成であってもよい。なお、請求項4の発明の構成によれば、一方の樹脂フィルム(31)と金属層(33)との間を強固に固定することができる。
【0021】
[請求項6,11の発明]
請求項6,11のように、透明樹脂フィルム(36)をアクリル系樹脂フィルムとし、基礎樹脂フィルム(31)をABS樹脂フィルムとすれば、金属調加飾シート(30)の成形温度における透明樹脂フィルム(36)及び基礎樹脂フィルム(31)の熱収縮率の差を小さくすることができる。これにより、成形後における金属調加飾シート(30)の層間剥離を低減し、深絞り形状の車両用樹脂成形品を覆うことが可能になる。
【0022】
[請求項7,12の発明]
ホットメルト接着剤層(35)は、平均厚さが20μm以下であることが好ましい。平均厚さが20μmより大きくなると、熱ラミネート時においてホットメルト接着剤層(35)が溶融するまでの時間がかかってしまう。また、ホットメルト接着剤はウレタン系樹脂であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用ドアハンドルの斜視図
【図2】車両用ドアハンドルの側面図
【図3】車両用ドアハンドルの側断面図
【図4】ハンドル本体を裏側から見た斜視図
【図5】ハンドル本体のA−A断面図
【図6】金属調シート成形品の斜視図
【図7】金属調シート成形品と射出成形金型の断面図
【図8】金属調シート成形品が射出成形金型にインサートされた状態の断面図
【図9】金属調加飾シートの側断面図
【図10】金属調加飾シートにおける金属層の平面の写真
【図11】金属調加飾シートにおける金属層の側断面の写真
【図12】金属被覆樹脂フィルムの側断面図
【図13】熱ラミネートする前の金属被覆樹脂フィルム及び透明樹脂フィルムの側断面図
【図14】金属調シート成形品とシート成形用金型の断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図14に基づいて説明する。図1には、本発明に係る「車両用樹脂成形品」として、車両用ドアハンドル10(以下、単に「ドアハンドル10」という)が示されている。このドアハンドル10は、水平方向に延びたアーチ構造をなし、その水平方向の両端部から車両ドア40に向かって1対の固定脚12A,12Bが突出した構造になっている。そして、これら1対の固定脚12A,12Bが、車両ドア40のドアパネル40Pに形成された貫通孔に挿入された状態に固定される(図2参照)。また、ドアハンドル10の長手方向の中間部は、車両ドア40から離間して人が把持可能なグリップ部10Gになっている。
【0025】
図3に示すように、ドアハンドル10は、ハンドル本体11と裏蓋14とから構成されている。ハンドル本体11には、車両ドア40側で開放した収容凹部17(図4参照)が設けられ、この収容凹部17の開口が裏蓋14にて閉塞されている。そして、ハンドル本体11と裏蓋14との間に形成された内部空間に静電容量センサ15が内蔵されている。また、ドアハンドル10は、外観上、全体がハンドル本体11のみで構成されているように見える(図2参照)。
【0026】
静電容量センサ15は、例えば、ドアハンドル10の長手方向に沿って延びた帯板状の検知電極15Dと、その静電容量センサ15の静電容量の変化を検出可能な静電容量検出回路15Cとを樹脂でパッケージしてなる。また、静電容量センサ15は、ドアハンドル10の長手方向の中間部に配置され、かつ、ドアハンドル10の内部では、車両ドア40側に偏在させた配置になっている。そして、ドアハンドル10のうち車両ドア40との対向面に人の指が当接すると、検知電極15Dの静電容量が所定の基準値を超えて変化する。その変化が静電容量検出回路15Cにて検出されて、ドアハンドル10に対する人の接触が検出される。
【0027】
静電容量センサ15がドアハンドル10に対する人の接触を検出すると、例えば、車両本体に備えた信号処理装置16にて、所定のRFIDが近く存在するか否を無線確認し、RFIDが近くに存在する場合に車両ドア40を解錠し、図示しないラッチ機構による車両ドア40の係止も解除する。これにより、搭乗者の乗車が可能になる。
【0028】
図5に示すように、ハンドル本体11は、ハンドル本体11の外面に合わせた形状の金属調シート成形品20(図6参照)で覆われている。詳細には、金属調シート成形品20は、ドアハンドル10の露出面のうちアーチの裏側の一部を除いた全体の形状になっている。
【0029】
次に、ドアハンドル10の製造方法について説明する。そのためには、まず、図7に示した射出成形金型64を用いてハンドル本体11を成形する。射出成形金型64は、雌雄の金型65,66からなり、雌側金型65には、金属調シート成形品20の形状に対応して窪んだ凹所67が形成されている。雄側金型66には、凹所67に向かって膨出した丘陵部68が形成されると共に、丘陵部68の一部に開放するように樹脂の射出路69が形成されている。また、雄側金型66は、雌雄の金型65,66の型開閉方向と直交する方向に移動可能なスライド型80,80を備えている。
【0030】
この射出成形金型64を用いてハンドル本体11を成形するには、まず、凹所67に金属調シート成形品20の天井部20T(図7参照)を嵌合する。そして、スライド型80,80を丘陵部68から離間させた状態で雄側金型65を閉じ、雄側金型66の丘陵部68を金属調成形シート10の内側に突入させる。次いで、スライド型80,80を閉じ、金属調シート成形品20と丘陵部68との間に成形空間を形成した状態にする。次いで、この成形空間に射出路69を介して溶融樹脂(例えば、PC−PBTアロイの溶融樹脂)を充填する(図8参照)。そして、射出成形金型64を冷却して溶融樹脂が固化したら、スライド型80,80及び雌雄の金型65,66を開く。これにより、ハンドル本体11の成形工程が完了する。なお、図示はしないが、射出成形金型64には、スライド型80,80の他に複数のスライド型が設けられ、それらスライド型によって固定脚12A,12B(図4参照)が成形される。
【0031】
次いで、ハンドル本体11の収容凹部17に静電容量センサ15を収容し、別途製造しておいた裏蓋14をハンドル本体11にビス止めして収容凹部17を閉塞する。これにより、静電容量センサ15がドアハンドル10に内蔵され、ドアハンドル10の露出面が金属調シート成形品20にて金属調に装飾される。
【0032】
ところで、金属調シート成形品20は、図9に示す金属調加飾シート30を成形して得られる。金属調加飾シート30は、全体の厚さが、例えば、340μmになっていて、基礎樹脂フィルム31と、プライマー層32と、金属層33と、ホットメルト接着剤層35と、透明樹脂フィルム36とを順番に積層した構造になっている。
【0033】
基礎樹脂フィルム31は、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)フィルムであって、厚さが、例えば、250μmになっている。そして、この基礎樹脂フィルム31の一面に、例えば、厚さが5μmのプライマー層32が積層されている。なお、プライマー層32は、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂によって構成されている。
【0034】
金属層33は、プライマー層32の基礎樹脂フィルム31と反対側の面に、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法あるいはイオンプレーティング法等の公知の物理的蒸着法を用いて、インジウムを蒸着させて形成されている。この金属層33は、図10の写真に示すように、複数の金属体33Aが隙間33Bを開けて互いに分離した状態に散在する金属体散在構造になっている。詳細には、金属層33は、平均厚さが60nm(図11参照)、複数の金属体の平均粒径が30〜150nm、金属体同士の間の平均隙間が5〜30nmになっている。これにより、金属層33全体を連続した1つの金属部品に見せることができる。
【0035】
金属層33のうちプライマー層32と反対側の面には、平均厚さが、例えば、10μmのホットメルト接着剤層35が形成されている。ホットメルト接着剤層35は、ウレタン系樹脂よりなっていて、溶融開始温度が、110〜120℃になっている。そして、ホットメルト接着剤層35に厚さ75μmのアクリル系樹脂で構成された透明樹脂フィルム36が密着している。これにより、金属層33が基礎樹脂フィルム31及び透明樹脂フィルム36に挟まれた積層構造になっている。
【0036】
この金属調加飾シート30は以下のようにして製造される。まず、基礎樹脂フィルム31の一面にアクリル系樹脂又はウレタン系樹脂を塗布することによりプライマー層32を形成する。そして、プライマー層32にインジウムを蒸着して金属層33を形成する。これにより金属層33で基礎樹脂フィルム31が覆われた金属被覆樹脂フィルム37が得られる(図12参照)。
【0037】
次いで、ホットメルト接着剤を透明樹脂フィルム36に塗布し、ホットメルト接着剤層35を透明樹脂フィルム36の積層する(図13参照)。なお、ホットメルト接着剤を塗布する方法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷等を用いる。
【0038】
次いで、透明樹脂フィルム36と金属被覆樹脂フィルム37とを一辺が30cm程度の正方形状にカットしておき、ホットメルト接着剤層36が両者の間に配置されるように重ね、公知の熱ラミネート成形機を用いて貼り合わせる。具体的には、熱ラミネート成形機の設定温度を120度、線圧を50N/cm、フィルムの送り速度を0.5m/分とし、重ねた2枚の樹脂フィルムを熱ラミネート成形機に2回通過させる。これにより、透明樹脂フィルム36が金属被覆樹脂フィルム37に積層され、金属調加飾シート30(図9参照)が得られる。
【0039】
ここで、本実施形態における金属調加飾シート30の製造方法を、従来の金属調加飾シートの製造方法(本明細書の段落[0002]参照)と比較すると、本実施形態では、ホットメルト接着剤が冷却固化すれば、金属被覆樹脂フィルム37と透明樹脂フィルム36とが接着されるので、従来の製造方法のように、液状の接着剤が乾燥するまで待つ場合と比べて、接着剤の固化に要する時間が短くなる。
【0040】
また、従来の製造方法では、PETフィルムに金属層33を形成するため、PETフィルムと基礎樹脂フィルム31とをラミネートしてから、そのラミネート成形品と透明樹脂フィルム36とをラミネートする、即ち、ラミネートを2回する必要があった。これに対し、本実施形態では、PETフィルムを無くしたので、金属被覆樹脂フィルム37と透明樹脂フィルム36とのラミネート1回だけで済み、製造工程を簡略化することができる。
【0041】
次に、金属調加飾シート30を用いた金属調シート成形品20の製造方法について説明する。まず、金属調加飾シート30を図示しないクランプで把持して、ヒーター(図示せず)でその金属調加飾シート30の両面を、例えば、150℃に加熱して軟化させる。そして、その金属調加飾シート30を、図14に示すように、金属調シート成形品20の内面形状に対応した成形突部51Tを有するシート成形用金型50内にセットする。
【0042】
シート成形用金型50は、雄側金型51と雌側金型52から構成され、金属調加飾シート30の基礎樹脂フィルム31(図9参照)側を雄側金型51の成形突部51Tに宛がう。次いで、吸引孔51Aを通して金属調加飾シート30と雄側金型51との間の空気を吸引すると同時に、雌側金型52の通気孔52Aから送り出される圧縮空気にて金属調加飾シート30を雄側金型51側に押しつけて、金属調加飾シート30を雄側金型51の上面に密着させる。そして、金属調加飾シート30が形状を維持可能な程度に硬化したら金属調加飾シート30をシート成形用金型50から取り外す。ここで、成形突部51の側面は、金属調シート成形品20の内面形状に対応して下端部より上部が側方に張り出した所謂アンダーカット形状になっているが、金属調加飾シート30を弾性変形させながら雄側金型51から離脱させればよい。これにより、金属調加飾シート30は、金属調シート成形品20に対応したドーム部30Dを平坦部30Mから隆起させた形状に成形される。次いで、例えば、レーザーガンを用いて金属調加飾シート30全体からドーム部30Dを切り離すことにより、金属調シート成形品20が得られる。
【0043】
次に、本実施形態に係る金属調加飾シート30の作用効果について説明する。本実施形態の金属調加飾シート30によれば、金属層33が複数の金属体33Aで構成されかつそれら複数の金属体33Aが互いに分離した金属体散在構造になっているので、金属層33全体が1枚の連続した導電体ではなくなる。これにより、この金属調加飾シート30にてドアハンドル10の外面を覆っても、静電容量センサ15の動作不良の発生が防がれる。また、金属層33を構成する金属体33A同士の間の平均隙間が5〜30nmであるので、金属層33全体を連続した1つの金属部品に見せることができる。
【0044】
また、本実施形態では、ホットメルト接着剤を用いたので、金属調加飾シート30の少量生産を行う場合には、液状の接着剤を用いる場合と比較して接着工程に要する時間を短縮することができ、生産効率の向上を図ることができる。さらに、透明樹脂フィルム36をアクリル系樹脂フィルムとし、基礎樹脂フィルム31をABS樹脂フィルムとしたので、金属調加飾シート30の成形温度における透明樹脂フィルム36及び基礎樹脂フィルム31の熱収縮率の差を小さくすることができる。これにより、成形後における金属調加飾シート30の層間剥離を低減し、深絞り形状のドアハンドル10の外面を覆うことが可能になる。
【0045】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0046】
(1)前記実施形態の金属調加飾シート30には、プライマー層32が備えられていたが、プライマー層32を備えない構成にしてもよい。なお、前記実施形態の構成によれば、金属層33と基礎樹脂フィルム31との間を強固に固定することができる。
【0047】
(2)前記実施形態では、金属樹脂フィルム31に金属層33を積層した金属被覆樹脂フィルム37に透明樹脂フィルム35をラミネートしていたが、透明樹脂フィルム35に金属層33を積層した金属被覆樹脂フィルムに基礎樹脂フィルム31をラミネートしてもよい。
【0048】
(3)前記実施形態では、ホットメルト接着剤を透明樹脂フィルム35のみに塗布していたが、金属被覆樹脂フィルム37のみに塗布してもよいし、透明樹脂フィルム35及び金属被覆樹脂フィルム37の両方に塗布してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 車両用ドアハンドル
15 静電容量センサ
15D 検知電極
20 金属調シート成形品
30 金属調加飾シート
31 基礎樹脂フィルム
32 プライマー層
33 金属層
33A 金属体
35 ホットメルト接着剤層
36 透明樹脂フィルム
37 金属被覆樹脂フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量センサ(15)の検知電極(15D)を内蔵可能な車両用樹脂成形品(10)の外面形状に合わせて成形され、金属層(33)が、前記金属層(33)の外側を覆ってその金属層(33)を視認可能にする透明樹脂フィルム(36)と前記車両用樹脂成形品(10)に固着される基礎樹脂フィルム(31)との間に挟まれてなる金属調加飾シート(30)の製造方法であって、
前記透明樹脂フィルム(36)及び前記基礎樹脂フィルム(31)のうち何れか一方の樹脂フィルムを前記金属層(33)で覆ってなる金属被覆樹脂フィルム(37)に他方の樹脂フィルムを貼り合わせる金属調加飾シート(30)の製造方法において、
前記金属層(33)を複数の金属体(33A)が互いに分離した状態で散在する金属体散在構造としておき、
前記金属被覆樹脂フィルム(37)と前記他方の樹脂フィルムとをホットメルト接着剤を用いて熱ラミネートすることを特徴とする金属調加飾シート(30)の製造方法。
【請求項2】
前記金属層(30)の平均厚さを10〜70nmとし、その金属層(30)を厚さ方向から見たときの前記複数の金属体(33A)の平均粒径を30〜150nmとし、前記金属体(33A)同士の間の平均隙間を5〜30nmにすることを特徴とする請求項1に記載の金属調加飾シート(30)の製造方法。
【請求項3】
前記金属層(33)は、インジウム又はスズの金属蒸着層であることを特徴とする請求項2に記載の金属調加飾シート(30)の製造方法。
【請求項4】
前記一方の樹脂フィルム(31)の片面にアクリル系樹脂又はウレタン系樹脂からなるプライマー層(35)を設けておき、そのプライマー層(35)に金属を蒸着させて前記金属被覆樹脂フィルム(37)を得ることを特徴とする請求項3に記載の金属調加飾シート(30)の製造方法。
【請求項5】
前記金属被覆樹脂フィルム(37)は、前記一方の樹脂フィルム(31)に前記金属蒸着層(33)を直接積層してなることを特徴とする請求項3に記載の金属調加飾シート(30)の製造方法。
【請求項6】
前記透明樹脂フィルム(36)をアクリル系樹脂フィルムとし、前記基礎樹脂フィルム(31)をABS樹脂フィルムとすることを特徴とする請求項4又は5に記載の金属調加飾フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ホットメルト接着剤は、ウレタン系樹脂よりなり、そのホットメルト接着剤を前記金属被覆樹脂フィルム(37)及び前記他方の樹脂フィルムの何れか一方に20μm以下の厚さに塗布することを特徴とする請求項1乃至6何れか1の請求項に記載の金属調加飾シート(30)の製造方法。
【請求項8】
静電容量センサ(15)の検知電極(15D)を内蔵可能な車両用樹脂成形品(10)の外面形状に合わせて成形され、金属層(33)が、前記金属層(33)の外側を覆ってその金属層(33)を視認可能にする透明樹脂フィルム(36)と前記車両用樹脂成形品(10)に固着される基礎樹脂フィルム(31)との間に挟まれてなる金属調加飾シート(30)であって、
前記金属層(33)は、前記透明樹脂フィルム(36)及び前記基礎樹脂フィルム(31)のうち何れか一方の樹脂フィルムに直に、或いは、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂からなるプライマー層(35)を介して積層されると共に、複数の金属体(33A)が互いに分離した状態で散在する金属体散在構造をなし、
前記金属層(33)と他方の樹脂フィルムとの間にホットメルト接着剤層(35)を設けたことを特徴とする金属調加飾シート(30)。
【請求項9】
前記金属層(33)の平均厚さは、10〜70nmであり、前記複数の金属体(33A)は、前記金属層(33)を厚さ方向からみたときに平均粒径が30〜150nmであり、前記金属体(33A)同士の間の平均隙間が5〜30nmであることを特徴とする請求項8に記載の金属調加飾シート(30)。
【請求項10】
前記金属層(33)は、インジウム又はスズの金属蒸着層であることを特徴とする請求項9に記載の金属調加飾シート(30)。
【請求項11】
前記透明樹脂フィルム(36)は、アクリル系樹脂フィルムであって、前記基礎樹脂フィルム(31)は、ABS樹脂フィルムであることを特徴とする請求項8乃至10の何れか1の請求項に記載の金属調加飾シート(30)。
【請求項12】
前記ホットメルト接着剤層(35)は、平均厚さが20μm以下であって、ウレタン系樹脂よりなることを特徴とする請求項8乃至11の何れか1の請求項に記載の金属調加飾シート(30)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−116219(P2012−116219A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265125(P2010−265125)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】