説明

金属連続体のデスケーリング及び/又はクリーニング方法及び装置

この発明は、金属連続体(1)、特に普通鋼又はステンレス鋼から成る熱間圧延された鋼帯のデスケーリング及び/又はクリーニングを行う方法及び装置に関する。その方法としては、移送方向(R)に向かって装置(2)を通して金属連続体(1)を移送し、装置内で、金属連続体にプラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニングを施すものである。この発明では、金属連続体のデスケーリング又はクリーニングの結果を改善するために、金属連続体(1)は、移送方向(R)に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)の前に、金属連続体(1)に高い度合いの平坦性を付与する処理を施されるものと規定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属連続体、特に普通鋼又はステンレス鋼から成る熱間圧延された鋼帯のデスケーリング及び/又はクリーニング方法に関し、その際金属連続体は、移送方向に向かって、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニングを施す装置を通して移送される。更に、この発明は、このような金属連続体のデスケーリング及び/又はクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この分野に属する種類の方法は、特許文献1により周知である。
【0003】
更なる処理(例えば、冷間圧延、金属のコーティング又は最終製品への直接的な処理)のためには、熱間圧延された鋼帯は、スケールの無い表面を持たなければならない。従って、熱間圧延の際並びにその後の冷却の間に生じるスケールは、完全に除去されなければならない。このことは、既に周知の方法では、酸洗プロセスによって行われ、その際様々な酸化鉄(FeO、Fe3 4 、Fe2 3 )、或いはステンレス鋼の場合にはクロムを多く含んだ酸化鉄からも構成されるスケールは、鋼の品質に応じて、様々な酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸や混酸)を用いた、高い温度での酸の化学反応によって取り除かれる。普通鋼では、スケールに割れ目を入れて、それにより酸がスケール層内に速く浸入することができるように、酸洗の前に、更に引張り平面矯正による追加の機械的な処理が必要である。基本的に酸洗が難しいステンレス鋼、オーステナイト鋼及びフェライト鋼では、出来る限り良好な酸洗可能な鋼帯表面を得るために、酸洗プロセスの前に、鋼帯の焼きなまし及び機械的な事前デスケーリングを実施している。酸洗後には、酸化を防止するために、鋼帯をすすいで、乾燥させ、必要に応じて油を塗らなければならない。
【0004】
鋼帯の酸洗は、連続的なラインで実施され、そのプロセス部分は、鋼帯の速度に応じて、非常に大きな長さを有する場合がある。従って、このような設備は、非常に大きな投資を必要とする。更に、酸洗プロセスは、非常に多くのエネルギーと廃液の処理及び普通鋼の場合に大抵使用される塩酸の再生に対する大きな負担を必要とする。
【0005】
以上のことから、従来技術には、酸を用いることなく、金属連続体のデスケーリングを実行するための多種多様なアプローチが存在する。この場合、従来から周知の開発方法は、大抵スケールの機械的な除去(例えば、砥石クリーニング法、APO法)をベースとしている。しかしながら、そのような方法は、その経済性とデスケーリングを行う表面の品質に関して、幅の広い鋼帯の工業的なデスケーリングには適さない。従って、そのような鋼帯のデスケーリングには、依然として酸の使用に頼っている。
【0006】
従って、これまでは、このような経済性と環境汚染に関する欠点を甘受しなければならなかった。
【0007】
金属連続体のデスケーリングのための新しいアプローチは、プラズマ技術をベースとしている。この方法は、既に最初に挙げた特許文献1、並びに特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5に記載されている。そこに開示されているプラズマ・デスケーリング技術では、デスケーリングを行う鋼材は、真空室内に有る特殊な電極の間を進んで行く。デスケーリングは、鋼帯と電極との間に発生するプラズマによって行われ、その際残渣の無い金属の滑らかな表面が作り出される。そのため、このプラズマ技術は、経済的で、品質的に非の打ち所の無い、環境に優しい、鋼表面のデスケーリング及びクリーニング手段である。この技術は、普通鋼とともに、ステンレス鋼、オーステナイト鋼及びフェライト鋼に使用することができる。特別な事前の処理は、不要である。
【0008】
この場合、前述した従来技術は、主として線及び管のデスケーリングを目的としている。これに関しては、デスケーリングを行う鋼材の寸法のために、電極の比較的簡単な取り扱いが可能であり、その結果効率的にデスケーリングを実行することができるという利点が生じるものである。
【0009】
しかし、鋼帯のデスケーリングでは、前述した文献に開示された方法は、有用な結果をもたらしていない、即ち相応に処理された鋼帯は、少なくとも一定の幅を有する場合、必要な品質でデスケーリングを行うことができないことが明らかとなっている。
【特許文献1】特開平3−207518号公報
【特許文献2】国際特許出願公開第00/56949号公報
【特許文献3】国際特許出願公開第01/00337号公報
【特許文献4】ロシア特許登録公開第2153025号公報
【特許文献5】ロシア特許登録公開第2139151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のことから、この発明の課題は、幅の広い金属連続体に関しても、その幅の広がり全体に渡って、プラズマ技術を用いて、変わらない品質で、効率的かつ効果的にデスケーリングを行うことができる、金属連続体のデスケーリング及び/又はクリーニングを行うための方法及びそのための装置を提供することであり、その際この方法の経済的な利点も、環境保護に関する利点も利用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、方法に関して、この発明にもとづき、移送方向に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置の前に、金属連続体に高い度合いの平坦性を付与するプロセスを、金属連続体に施すことによって解決される。
【0012】
このプロセスに関しては、特に引張り平面矯正プロセス又は引張り曲げ平面矯正プロセスを想定している。このプロセスにより、即ちプラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置に導入される金属連続体の平坦性が、この連続体が平坦な板としてこの装置を通り抜けて行くほどの高い度合いとなるような強さの引張力を、金属連続体に加えることができる。これによって、デスケーリング又はクリーニングの結果が、大幅に改善されて、完成した金属連続体が高い品質を持つこととなる。
【0013】
金属連続体の材料の弾性限界の少なくとも10%に相当する引張応力が金属連続体に加わるように、平面矯正プロセスの際の引張力を選定するのが有利であることが判明している。
【0014】
この方法は、連続して通過する金属連続体に対して動作させることができるが、全く同様に金属連続体を、不連続的に、即ち一定でない速度で、デスケーリング又はクリーニング設備を通して移送させることも可能である。後に挙げたケースは、特に小規模な設備に対して有利である。
【0015】
プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置の後に、金属連続体の表面検査を実施する場合、完成した金属連続体の特に高い品質を達成することができ、この場合、検査装置と接続された制御回路において、所望のデスケーリング品質又はクリーニング品質が達成されるように、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置を通して金属連続体を移送する速度を、この検査に応じて設定するものと規定する。これは、即ちデスケーリング品質又はクリーニング品質が未だ不十分な場合、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置を通り抜ける金属連続体の通過速度を低減して、その結果プラズマが、金属連続体に対して、より長い作用時間を持つようにすることを意味する。こうすることによって、デスケーリング又はクリーニングプロセスの品質を特別な要求に適合させることができる。
【0016】
特に有利には、金属連続体のデスケーリング及び/又はクリーニング後直ぐに、金属連続体への溶解した金属のコーティング、特に溶融亜鉛めっきを続けることができる。これには、周知のコーティング方法が用いられる。一つの可能性は、溶解したコーティング用金属で満たされた炉を通して、金属連続体を移送し、その際炉内で金属連続体の方向転換を行うことである。しかし、これに代わって、CVGL(連続垂直亜鉛めっきライン)法を採用することもでき、この場合、金属連続体は、溶解した金属で満たされた炉を下方から通り抜け、その際コーティング用金属は、電磁気的な閉鎖機構によって炉内に引き留められている。有利には、デスケーリング及び/又はクリーニングの後で、かつ溶解した金属のコーティングの前に、特に誘導加熱により、金属連続体の加熱が行われる。
【0017】
有利には、金属連続体のデスケーリング及び/又はクリーニングに続いて直ぐに、金属連続体の冷間圧延を行うことができる。
【0018】
この金属連続体のデスケーリング及び/又はクリーニング装置は、移送方向に向けて金属連続体を移送して、金属連続体にプラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニングを施す構成を有する。この発明において、この装置は、移送方向に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニングのための構成の前に、金属連続体に高い度合いの平坦性を付与することができる手段によって特徴付けられる。これらの手段は、少なくとも一つの引張り又は引張り曲げ平面矯正機から構成される。更に、有利には、この手段の前及び後に、金属連続体に引張力を加えるために、少なくとも一つの伸展装置を配置し、伸展装置としては、S圧延機が有用であることが実証されている。
【0019】
金属連続体に引張力を加えるための伸展装置を、移送方向に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置の後に配置し、その際有利には、この場合にもS圧延機を想定した場合、金属連続体の特に良好なプラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置を通した移送を実現することができる。そうすることによって、このプラズマ装置を通過する際に、金属連続体は、非常に平坦に保持され、そのことは、デスケーリング又はクリーニング品質を向上させるものである。
【0020】
プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置は、真空状態に有る処理室を持つことができ、その中には、金属連続体の移送方向に対して、一定数のモジュール形式で構成された電極が配置されている。この場合、個々の電極は、金属連続体の表面のスケールの程度及び/又は汚れの程度に応じて、並びに金属連続体がプラズマ装置を通過する速度に応じて、互いに独立して電源をオン/オフされるものと規定することができる。即ち、デスケーリング又はクリーニングの際に、ちょうど所望の結果が得られる数の電極に、電源を投入することができる。
【0021】
移送方向に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置の後に、金属連続体の表面を検査するための検査手段を配置した場合、デスケーリング又はクリーニングの更なる品質改善を達成することができ、この場合、この手段は、制御手段と接続されており、その際この制御手段は、この金属連続体の所望のデスケーリング品質又はクリーニング品質が達成されるように、金属連続体がこの装置を通過する速度を、この検査に応じて設定するものである。
【0022】
既に詳しく述べたとおり、有利には、この発明にもとづくデスケーリング又はクリーニング設備は、金属連続体に対する別の処理装置と組み合わせて用いられる。この場合、移送方向に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置の後に、金属連続体に溶解した金属をコーティング、特に溶融亜鉛めっきを施す手段を配置することができる。この手段は、溶解した金属用の炉及びこの炉内に組み込まれた少なくとも一つの偏向ロールを持つことができる。これに代わって、このコーティング手段は、溶解した金属用の炉及びこの炉の下に有って、溶解した金属を炉内に引き留める電磁気的な手段を持つことができる。移送方向に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置の後で、かつ移送方向に対して、金属連続体のコーティング手段の前に、金属連続体を加熱する手段、特に誘導加熱手段を配置することができる。
【0023】
このコーティング手段に代わって、又はこの手段に加えて、移送方向に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置の後に、金属連続体を圧延する手段を配置することができ、この手段は、多段構成の冷間圧延・タンデム製造ラインとすることができる。
【0024】
設備全体の連続的な運転は、移送方向に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置の前に、金属連続体の貯留装置を配置することによって促進される。
【0025】
更に、移送方向に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置の後に、金属連続体のサイドカット手段(サイドカット・シャー)を配置するのが、設備の高い生産性に関して有利である。
【0026】
更に、この設備の生産性は、移送方向に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置の後に、金属連続体に油を塗る手段を配置することによっても改善される。
【0027】
全体として、金属連続体の経済的かつ環境に優しいデスケーリング及び/又はクリーニングを保証することができるとともに、特に後続の処理装置と組み合わせると有用であると実証されている、有利には普通鋼又はステンレス鋼から成る熱間圧延された鋼帯に対する、高い生産性を持つ金属連続体の処理設備が得られる。
【0028】
前述した技術は、特に酸洗と比べて、環境保護、エネルギー消費及び品質に関して大きな利点を提供する。更に、相応の設備に対する投資費用は、周知のデスケーリング及び/又はクリーニング設備よりも大幅に少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
この発明の実施例を図面に描いている。
【0030】
図1には、金属連続体1に対して、先ずデスケーリングを行い、次に溶融亜鉛めっきを施すことができる装置が模式的に描かれている。金属連続体1は、所定の移送速度vで移送方向Rに向かって設備内に入り、先ず金属連続体1に引張力Fを加える、二つのS圧延機5と6の間を移送される。二つのS圧延機5,6の間には、金属連続体1を平面矯正する手段4が配置されている。この手段4は、引張曲げ平面矯正機である。引張曲げ平面矯正機4内において、金属連続体1は、引張力Fの高い張力のもとで、調整可能な圧延機によって曲げられ、或いは平面矯正されて、金属連続体1は、引張曲げ平面矯正機4を出た後では高い度合いの平坦性を有するようになることが、模式的に示されている。
【0031】
引張曲げ平面矯正機4に続いて、金属連続体1は、プラズマ・デスケーリング又はクリーニング装置2に導入される。この装置2は、真空に保持された処理室8を有する。金属連続体1の処理室8への入口と処理室からの出口には、それぞれ調整室19又は20が配備されている。
【0032】
同様に、移送方向に対して、この装置2の後には、S圧延機7が配置されており、従って、S圧延機6と協働して、装置2を通過する際に、金属連続体1を引っ張られている状態(引張力F)に保持することができ、その結果引張曲げ平面矯正機4と協働して、金属連続体1が極度に高い度合いの平坦性を持って、この装置2を通り抜けることを保証するものである。このことは、デスケーリング又はクリーニングの良好な結果を達成するために必要である。
【0033】
図1で分かるとおり、処理室8には、金属連続体1の表面に対してデスケーリング又はクリーニングを施すプラズマを生成するのに必要な一定数の電極9が配置されている。これに関する詳細は、前述した文献に記載されている。
【0034】
図1から分かるとおり、移送方向Rに対して、順番に複数の電極9が配置されている。これらは、デスケーリング又はクリーニングのために、すべて同時に動作させる、即ち電気エネルギーを供給することができる。しかし、個々のモジュラー形式に構成された電極9を、選択的に切り換えて、所望のデスケーリング又はクリーニングの結果を達成するのに必要な数の電極だけを動作させることも可能である。
【0035】
移送方向Rに対して、プラズマ・デスケーリング又はプラズマ・クリーニング装置2の後には、金属連続体1の表面を検査して、その検査結果を制御手段11に送る形態の検査手段10が配置されている。所望のデスケーリング又はクリーニング品質に応じて、制御手段11は、この装置全体の図示されていない駆動部に作用して、デスケーリング又はクリーニングの結果が所望の基準に合致するように、金属連続体1の移送速度vを調整するものと規定することができる。
【0036】
デスケーリング又はクリーニング品質が十分でない場合、制御手段11は、移送速度vを低減して、それによって金属連続体1の表面を、より長い時間プラズマの作用に曝し、そのようにしてデスケーリング又はクリーニングの結果を改善することができる。それに対して、もはや過度に高い品質を必要としない場合、制御手段11は、移送速度vを増加させることができ、その結果確かにデスケーリング又はクリーニング品質は低減するが、設備全体の生産性は向上する。
【0037】
更に図1から分かるとおり、移送方向Rに対して、プラズマ・デスケーリング又はクリーニング装置2の後には、金属連続体1を加熱することができる誘導加熱手段14が有る。この場合、特に誘導加熱する、保護雰囲気を持つ焼きなまし炉とすることができ、この炉を用いて、非常に短時間で金属連続体1を約500°Cの温度に加熱することが可能である。次に、金属連続体1は、保護雰囲気のもとで、図示されていない管路を通って、溶解したコーティング用金属の入った炉3内に導入される。炉3内には、金属連続体1を溶解したコーティング用金属でコーティングした後、垂直に上方に偏向させる偏向ロール13が配置されている。誘導手段14、炉3及び偏向ロール13は、金属連続体1をコーティングするための模式的に図示した手段12を構成する。
【0038】
これに代わる設備の実施形態が、図2に見える。図1との違いは、図2では、デスケーリング又はクリーニングを施された金属連続体1を圧延するための手段15が、プラズマ・デスケーリング又はクリーニング装置2に後続されていることである。この手段は、金属連続体1を所望の最終的な厚さに圧延する、多段構成の冷間圧延・タンデム製造ラインである。
【0039】
図3には、金属連続体1のデスケーリングだけを行うが、図1と2で示した解決形態の形式にもとづき、後続の装置と組み合わせることもできる装置が図示されている。
【0040】
金属連続体1は、解かれる形で送りリール21から溶接装置22に供給され、そこで金属連続体1は、先行する金属連続体と溶接される。欠陥の無い溶接を可能とするために、溶接の前に、シャー23を用いて、金属連続体を剪断している。
【0041】
そして、金属連続体1は、引張り平面矯正機又は引張り曲げ平面矯正機4に供給され、そこで、金属連続体1は、プラズマ・デスケーリング又はプラズマ・クリーニング装置2に導入する前に、曲げと引張力による引張りで平面を矯正して、最適な平坦性を持つようにすることができる。金属連続体1は、先ず調整室19を通り抜けると直ぐに、真空に保たれた処理室8に入る。この真空は、真空ポンプ24によって作られている。処理室8では、電極9と金属連続体1との間に起こるプラズマによって、デスケーリング又はクリーニングが行われる。この場合、金属連続体1のプラズマ内における所要の滞留時間を保証するために、電極9の数は、金属連続体の速度vに依存する。
【0042】
完全なデスケーリング又は十分なクリーニングの後、金属連続体1は、真空調整室20を通って、既に述べたとおり、S圧延機8と協働して、金属連続体を出来る限り水平に進めるために必要な大きさの引張力を、金属連続体に加えるためのS圧延機7に導入される。処理室8が長い場合、及び金属連続体の速い速度vに対応して、電極9の間には、金属連続体1の弛みを防止する支持ロール25が配置されている。
【0043】
サイドカット・シャー17により、正確な幅の金属連続体1が実現される。必要な場合、その次に金属連続体1の表面を腐食から保護するために、塗油装置18を用いて、金属連続体1に静電気により油を塗る。完成した金属連続体の束を取り出す前に、シャー26を用いて、金属連続体1を剪断する。金属連続体の束を出来る限り短時間で交換することができるように、ラインの入口と出口に、それぞれ二つのリール21と27を置いて動作させることもできる。
【0044】
金属連続体貯留装置16と金属連続体貯留装置28により、設備のプロセス部分における連続的な金属連続体の進行が可能となる。小さい処理能力の設備に対しては、金属連続体貯留装置を持たない不連続的な運転が可能であり、その際金属連続体の束を交換する間、設備は停止される。酸洗とは異なり、プラズマ・デスケーリングの場合、繰り出す際の損失無しに、このことが可能である。
【0045】
これまでの記述では、常に金属連続体のデスケーリングについても、クリーニングについても述べてきた。即ち、このプラズマ技術は、デスケーリングに対してだけでなく、金属表面の有機物質又は無機物質(例えば油)のクリーニングに対しても非常に良く適していることが判明している。
【0046】
冷間圧延され、油を塗られた鋼帯は、例えば金属コーティングの前に、所要の滑らかな金属表面を得るために、特別なアルカリ電解液のクリーニングタンクに通して、その後すすいで、部分的にブラシをもかけなければならない。既に周知の設備は、このために最初に述べた環境問題を伴う化学的な手段をも用いている。金属連続体のクリーニングに対してプラズマ技術を採用することは、ここでも大きな利点をもたらすものである。
【0047】
図3に図示した設備を図1と2にもとづく後続の処理装置と結合した場合、既に述べたとおり、大きな経済的利点が生じる。デスケーリング又はクリーニングする金属連続体を中間貯蔵することが無くなり、その結果生産性の改善も、品質の改善も達成することができる。この場合、プラズマ・デスケーリング又はクリーニング装置2の後の金属連続体貯留装置28(図3を参照)には、特別な意味が有る。そして、デスケーリングを施され、有利には既にサイドカットされた金属連続体を、中間貯蔵すること無く、金属連続体に均一な引張力を加えて、後続の装置(溶融亜鉛めっき設備、冷間圧延・タンデム製造ライン)に連続的に導入することができる。この場合、完成した金属連続体は、後続の装置の後、特に冷間圧延・タンデム製造ラインの後で、二つのリールに交互に巻き取って、シャーで剪断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】金属連続体のデスケーリングとそれに続いて溶融亜鉛めっきを行う装置の模式図
【図2】金属連続体のデスケーリングとそれに続いて圧延を行う装置の模式図
【図3】金属連続体のデスケーリングを行う装置の模式図
【符号の説明】
【0049】
1 金属連続体
2 プラズマ・デスケーリング/クリーニング装置
3 溶解したコーティング用金属の炉
4 金属連続体の平面矯正手段(引張り平面矯正機、引張り曲げ平面矯正機)
5 伸展装置(S圧延機)
6 伸展装置(S圧延機)
7 伸展装置(S圧延機)
8 処理室
9 電極
10 検査手段
11 制御手段
12 金属連続体のコーティング手段
13 偏向ロール
14 金属連続体の加熱手段(誘導加熱手段)
15 金属連続体の圧延手段
16 金属連続体貯留装置
17 金属連続体のサイドカット手段(サイドカット・シャー)
18 金属連続体に油を塗る手段(塗油装置)
19 真空調整室
20 真空調整室
21 送りリール
22 溶接装置
23 シャー
24 真空ポンプ
25 支持ロール
26 シャー
27 巻取りリール
28 金属連続体貯留装置
R 移送方向
v 移送速度
F 引張力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属連続体(1)が移送方向(R)に向かって装置(2)を通して移送され、この装置内で、金属連続体は、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニングを施される、金属連続体(1)、特に普通鋼又はステンレス鋼から成る熱間圧延された鋼帯のデスケーリング及び/又はクリーニング方法において、
金属連続体(1)は、移送方向(R)に対して、このプラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)の前に、この金属連続体(1)に高い度合いの平坦性を付与するプロセスを施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
金属連続体(1)が、引張り平面矯正プロセスを施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属連続体(1)が、引張り曲げ平面矯正プロセスを施されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
金属連続体(1)に、金属連続体(1)の材料の弾性限界の少なくとも10%に相当する引張応力が発生するような引張力(F)を加えることを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
金属連続体(1)が、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)を通して連続的に移送されることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
金属連続体(1)が、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)を通して不連続的に移送されることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)の後に、金属連続体(1)の表面検査を行い、その際検査装置と接続された制御回路において、所望のデスケーリング又はクリーニング品質が達成されるように、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)を通して金属連続体(1)を移送する速度(v)を、この検査に応じて設定していることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
金属連続体(1)は、デスケーリング及び/又はクリーニングに続いて、溶解した金属をコーティングされる、特に溶融亜鉛めっきを施されることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
金属連続体(1)は、デスケーリング及び/又はクリーニングの後で、かつ溶解した金属のコーティングの前に、加熱される、特に誘導加熱されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
金属連続体(1)は、デスケーリング及び/又はクリーニングに続いて、冷間圧延されることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
その装置を通して金属連続体(1)を移送方向(R)に移送し、その装置内で、金属連続体(1)にプラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニングを施す装置(2)を有する、金属連続体(1)、特に普通鋼又はステンレス鋼から成る熱間圧延された鋼帯のデスケーリング及び/又はクリーニングを行う、特に請求項1から10までのいずれか一つに記載の方法を実施する装置において、
移送方向(R)に対して、このプラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)の前に配置された、この金属連続体(1)に高い度合いの平坦性を付与する手段(4)を特徴とする装置。
【請求項12】
金属連続体(1)に引張力(F)を加えるために、当該の手段(4)の前及び/又は後に、少なくとも一つの伸展装置(5,6)を配置していることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)が、真空状態に有る処理室(8)を有し、その処理室には、金属連続体(1)の移送方向(R)に対して、一定数のモジュラー形式に構成された電極(9)が配置されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
個々の電極(9)は、金属連続体(1)の表面のスケールの度合い及び/又は汚れの度合いに応じて、並びに金属連続体(1)がプラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)を通り抜ける速度(v)に応じて、互いに独立して電源をオン/オフすることが可能であることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
移送方向(R)に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)の後に、制御手段(11)と接続された、金属連続体(1)の表面を検査する検査手段(10)が配置されており、その際この制御手段(11)は、金属連続体(1)の所望のデスケーリング品質又はクリーニング品質を達成するために、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)を通して金属連続体(1)を移送する速度(v)を、この検査に応じて設定していることを特徴とする請求項11から14までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項16】
移送方向(R)に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)の後に、金属連続体(1)に溶解した金属をコーティングする、特に溶融亜鉛めっきを施す手段(12)が配置されていることを特徴とする請求項11から15までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項17】
移送方向(R)に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)の後に、金属連続体(1)を冷間圧延する手段(15)が配置されていることを特徴とする請求項11から16までのいずれか一つに記載の装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属連続体(1)が移送方向(R)に向かって装置(2)を通して移送され、この装置内で、金属連続体は、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニングを施される、金属連続体(1)、特に普通鋼又はステンレス鋼から成る熱間圧延された鋼帯のデスケーリング及び/又はクリーニング方法において、
金属連続体(1)は、移送方向(R)に対して、このプラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)の前に、この金属連続体(1)に高い度合いの平坦性を付与する引張り平面矯正プロセス又は引張り曲げ平面矯正プロセスを施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
金属連続体(1)に、金属連続体(1)の材料の弾性限界の少なくとも10%に相当する引張応力が発生するような引張力(F)を加えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属連続体(1)が、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)を通して連続的に移送されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
金属連続体(1)が、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)を通して不連続的に移送されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)の後に、金属連続体(1)の表面検査を行い、その際検査装置と接続された制御回路において、所望のデスケーリング又はクリーニング品質が達成されるように、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)を通して金属連続体(1)を移送する速度(v)を、この検査に応じて設定していることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
金属連続体(1)は、デスケーリング及び/又はクリーニングに続いて、溶解した金属をコーティングされる、特に溶融亜鉛めっきを施されることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
金属連続体(1)は、デスケーリング及び/又はクリーニングの後で、かつ溶解した金属のコーティングの前に、加熱される、特に誘導加熱されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
金属連続体(1)は、デスケーリング及び/又はクリーニングに続いて、冷間圧延されることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
その装置を通して金属連続体(1)を移送方向(R)に移送し、その装置内で、金属連続体(1)にプラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニングを施す装置(2)を有する、金属連続体(1)、特に普通鋼又はステンレス鋼から成る熱間圧延された鋼帯のデスケーリング及び/又はクリーニングを行う、特に請求項1から8までのいずれか一つに記載の方法を実施する装置において、
移送方向(R)に対して、このプラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)の前に配置された、この金属連続体(1)に高い度合いの平坦性を付与する手段(4)を有し、その際金属連続体(1)に引張力(F)を加えるために、この手段(4)の前及び/又は後に、少なくとも一つの伸展装置(5,6)を配置していることを特徴とする装置。
【請求項10】
プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)が、真空状態に有る処理室(8)を有し、その処理室には、金属連続体(1)の移送方向(R)に対して、一定数のモジュラー形式に構成された電極(9)が配置されていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
個々の電極(9)は、金属連続体(1)の表面のスケールの度合い及び/又は汚れの度合いに応じて、並びに金属連続体(1)がプラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)を通り抜ける速度(v)に応じて、互いに独立して電源をオン/オフすることが可能であることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
移送方向(R)に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)の後に、制御手段(11)と接続された、金属連続体(1)の表面を検査する検査手段(10)が配置されており、その際この制御手段(11)は、金属連続体(1)の所望のデスケーリング品質又はクリーニング品質を達成するために、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)を通して金属連続体(1)を移送する速度(v)を、この検査に応じて設定していることを特徴とする請求項9から11までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項13】
移送方向(R)に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)の後に、金属連続体(1)に溶解した金属をコーティングする、特に溶融亜鉛めっきを施す手段(12)が配置されていることを特徴とする請求項9から12までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項14】
移送方向(R)に対して、プラズマ・デスケーリング及び/又はプラズマ・クリーニング装置(2)の後に、金属連続体(1)を冷間圧延する手段(15)が配置されていることを特徴とする請求項9から13までのいずれか一つに記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2006−505411(P2006−505411A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550693(P2004−550693)
【出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010852
【国際公開番号】WO2004/044257
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】