説明

金属酵素阻害化合物

本発明は、金属酵素調整活性を有する化合物ならびにそのような金属酵素によって調整される疾患、障害またはその症状の治療方法について記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年12月31日に出願された米国仮特許出願第61/291,491号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生体は、特異的に金属を取り込み、それらを細胞内貯蔵部位に輸送し、最終的にそれらを使用部位に輸送する厳重に規制されたプロセスを発達させた。生体系での亜鉛および鉄などの金属の最も重要な機能の1つは、金属酵素の活性を可能にすることである。金属酵素は、金属イオンを酵素活性部位に取り込み、触媒プロセスの一部として金属を利用する酵素である。特性が明らかな全ての酵素の1/3以上は金属酵素である。
【0003】
金属酵素の機能は、酵素の活性部位に金属イオンが存在するか否かに大きく依存している。活性部位の金属イオンに結合して不活性化させる物質によって酵素の活性が著しく減少することは十分に認識されている。体の自然機能は、酵素活性が望まれていない期間に特定の金属酵素の活性を減少させるためにこの同じ戦略を用いている。例えば、タンパク質TIMP(メタロプロテアーゼ組織阻害物質)は、様々なマトリックスメタロプロテアーゼ酵素の活性部位の亜鉛イオンに結合し、それにより、酵素活性を停止させる。医薬品業界は、治療薬の設計に同じ戦略を使用している。例えば、前立腺抗癌剤ケトコナゾールは、標的酵素CYP17(17−α−ヒドロキシラーゼ、17,20−リアーゼ)の活性部位に存在するヘム鉄に結合し、それにより酵素を不活性化させる1−イミダゾール基を含む。別の例としては、最も多く公開されているマトリックスメタロプロテイナーゼおよびヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の中に取り込まれた亜鉛結合ヒドロキサム酸基が挙げられる。別の例は、最も多く公開されているアンジオテンシン変換酵素阻害剤の中に取り込まれた亜鉛結合カルボン酸基である。
【0004】
臨床的に安全かつ有効な金属酵素阻害剤の設計では、特定の標的および臨床適応に最適な金属結合基の使用が必須である。弱く結合する金属結合基を利用する場合、効力は最適以下になり得る。他方、非常に強固に結合する金属結合基を利用する場合、関連する金属酵素に対する標的酵素の選択性は最適以下になり得る。最適な選択性の欠如は、これらの標的外の金属酵素の予期せぬ阻害による臨床毒性の原因になり得る。そのような臨床毒性の1つの例は、現在利用可能な前立腺抗癌剤ケトコナゾールによるCYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4などのヒトの薬物代謝酵素の予期せぬ阻害である。この標的外の阻害は、主に、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4の活性部位において、現在利用されている1−イミダゾールが無差別に鉄に結合することによって生じると考えられている。この別の例は、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤の多くの臨床試験で観察されている関節痛である。この毒性は、標的外の活性部位においてヒドロキサム酸基が無差別に亜鉛に結合することによる標的外の金属酵素の阻害に関連していると考えられている。
【0005】
従って、効力と選択性とのより良好なバランスを達成することができる金属結合基の探求は、なお重要な目標であり、疾患、障害およびその症状の治療および予防において、現在満たされていない必要性に対処するための治療薬および方法の実現において重要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、化合物(例えば、本明細書に詳述されているいずれかの化合物)、金属酵素活性の調節方法ならびに疾患、障害またはその症状の治療方法に関する。本方法は、本明細書中の化合物を含むことができる。
【0007】
式(I)もしくは(II)の化合物またはその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグ:
【化1】

(式中、
およびRはそれぞれ独立して、任意に置換されたアリール、任意に置換されたナフチル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたヘテロアリールアルキルまたは任意に置換されたヘテロアリール−(ジ)フルオロアルキルであり、
は独立して、任意にH、置換されたアルキルまたは置換されたシクロアルキルである)。
【0008】
別の態様では、本化合物は、式(I)もしくは(II)の化合物またはその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグであり、
式中、(I)もしくは(II)は、以下の化合物:
【化2】





およびその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物ではない。
【0009】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、RがHである化合物である。
【0010】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、Rが任意に置換されたアルキルであり、RがHである化合物である。
【0011】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、Rが任意に置換されたアリールであり、Rがアルキルであり、RがHである化合物である。
【0012】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、Rが任意に置換されたヘテロアリールであり、Rがアルキルであり、RがHである化合物である。
【0013】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、Rが置換されたアリールであり、Rがアルキルであり、RがHである化合物である。
【0014】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、Rが任意に置換されたナフチルであり、Rがアルキルであり、RがHである化合物である。
【0015】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、Rが置換されたナフチルであり、Rがアルキルであり、RはHである化合物である。
【0016】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、Rが、アルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ハロ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはヘテロアリールから独立して選択された1、2、3または4つの置換基で置換されたナフチルである化合物である。
【0017】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、Rが、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、ヒドロキシルアルキル、オキソ(すなわち、カルボニル)、カルボキシル、ホルミル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールオキシカルボニル、チオ、メルカプト、メルカプトアルキル、アリールスルホニル、アミノ、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルカルボニルもしくはアリールアミノ置換されたアリール、アリールアルキルアミノ、アラルキルアミノカルボニル、アミド、アルキルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、イミノ、カルバミド、カルバミル、チオウレイド、チオシアナト、スルホアミド、スルホニルアルキル、スルホニルアリール、メルカプトアルコキシ、N−ヒドロキシアミジニルまたはN’−アリール,N”−ヒドロキシアミジニルから選択された1、2、3または4つの独立した置換基で任意に置換されたアリールである化合物である。
【0018】
一態様では、式Iの化合物は、式(III)の構造:
【化3】

(式中、RおよびRは、上に定義されているとおりであり、Xは、CHまたはNであり、YはCHまたはNであり、RおよびRは独立して、H、ハロゲン、アルコキシ、1〜5つのフッ素を含むフルオロアルコキシ、シアノ、カルボキサミド、任意に置換されたアリールまたは任意に置換されたヘテロアリールである)を有する化合物である。
【0019】
一態様では、式Iの化合物(例えば、式(III))は、X=CHである化合物である。
【0020】
一態様では、式Iの化合物(例えば、式(III))は、X=Nである化合物である。
【0021】
一態様では、式Iの化合物(例えば、式(III))は、Y=CHである化合物である。
【0022】
一態様では、式Iの化合物(例えば、式(III))は、Y=Nである化合物である。
【0023】
一態様では、式Iの化合物(例えば、式(III))は、X=CHおよびY=Nである化合物である。
【0024】
一態様では、式Iの化合物(例えば、式(III))は、X=NおよびY=CHである化合物である。
【0025】
一態様では、式Iの化合物(例えば、式(III))は、X=Y=CHである化合物である。
【0026】
一態様では、式Iの化合物(例えば、式(III))は、X=Y=Nである化合物である。
【0027】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、金属に対する1つ以上の以下の種類の化学相互作用もしくは結合:シグマ結合、共有結合、配位共有結合、イオン結合、π結合、δ結合または逆結合相互作用の形成によって金属酵素との親和性を達成する化合物である。
【0028】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、金属に結合する化合物である。
【0029】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、鉄、亜鉛、ヘム鉄、マンガン、マグネシウム、硫化鉄クラスタ、ニッケル、モリブデンまたは銅に結合する化合物である。
【0030】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、チトクロームP450ファミリ、ヒストン脱アセチル化酵素、マトリックスメタロプロテイナーゼ、ホスホジエステラーゼ、シクロオキシゲナーゼ、炭酸脱水酵素および一酸化窒素合成酵素から選択される酵素クラスを阻害する化合物である。
【0031】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ、5−リポキシゲナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アルコール脱水素酵素、アミノペプチダーゼN、アンギオテンシン変換酵素、アロマターゼ(CYP19)、カルシニューリン、カルバモイルリン酸合成酵素、炭酸脱水酵素ファミリ、カテコール−O−メチル転移酵素、シクロオキシゲナーゼファミリ、ジヒドロピリミジン脱水素酵素−1、DNAポリメラーゼ、ファルネシル二リン酸合成酵素、ファルネシル転移酵素、フマル酸還元酵素、GABAアミノ基転移酵素、HIF−プロリルヒドロキシラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素ファミリ、HIVインテグラーゼ、HIV−1逆転写酵素、イソロイシンtRNAリガーゼ、ラノステロールデメチラーゼ(CYP51)、マトリックスメタロプロテアーゼファミリ、メチオニンアミノペプチダーゼ、中性エンドペプチダーゼ、一酸化窒素合成酵素ファミリ、ホスホジエステラーゼIII、ホスホジエステラーゼIV、ホスホジエステラーゼV、ピルビン酸フェレドキシン酸化還元酵素、腎臓ペプチダーゼ、リボヌクレオシド二リン酸還元酵素、トロンボキサン合成酵素(CYP5a)、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ウレアーゼおよびキサンチン酸化酵素から選択される酵素を阻害する化合物である。
【0032】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、1−デオキシ−d−キシルロース−5−リン酸レダクトイソメラーゼ(DXR)、17−αヒドロキシラーゼ(CYP17)、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)、アミノペプチダーゼP、炭疽菌致死因子、アルギナーゼ、β−ラクタマーゼ、チトクロームP450 2A6、D−Ala−D−Alaリガーゼ、ドーパミン−β−ヒドロキシラーゼ、エンドセリン変換酵素−1、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII、グルタミニルシクラーゼ、グリオキサラーゼ、ヘムオキシゲナーゼ、HPV/HSV E1ヘリカーゼ、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ、ロイコトリエンA4加水分解酵素、メチオニンアミノペプチダーゼ2、ペプチド脱ホルミル酵素、ホスホジエステラーゼVII、レラキサーゼ(relaxase)、レチノイン酸ヒドロキシラーゼ(CYP26)、TNF−α変換酵素(TACE)、UDP−(3−O−(R−3−ヒドロキシミリストイル))−N−アセチルグルコサミン脱アセチル化酵素(LpxC)、血管接着タンパク質−1(VAP−1)およびビタミンDヒドロキシラーゼ(CYP24)から選択される酵素を阻害する化合物である。
【0033】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、金属に結合するものとして特定されている化合物である。
【0034】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、鉄、亜鉛、ヘム鉄、マンガン、マグネシウム、硫化鉄クラスタ、ニッケル、モリブデンまたは銅に結合するものとして特定されている化合物である。
【0035】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、チトクロームP450ファミリ、ヒストン脱アセチル化酵素、マトリックスメタロプロテイナーゼ、ホスホジエステラーゼ、シクロオキシゲナーゼ、炭酸脱水酵素および一酸化窒素合成酵素から選択される酵素クラスを阻害するものとして特定されている化合物である。
【0036】
一態様では、式IもしくはIIの化合物は、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ、5−リポキシゲナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アルコール脱水素酵素、アミノペプチダーゼN、アンギオテンシン変換酵素、アロマターゼ(CYP19)、カルシニューリン、カルバモイルリン酸合成酵素、炭酸脱水酵素ファミリ、カテコール−O−メチル転移酵素、シクロオキシゲナーゼファミリ、ジヒドロピリミジン脱水素酵素−1、DNAポリメラーゼ、ファルネシル二リン酸合成酵素、ファルネシル転移酵素、フマル酸還元酵素、GABAアミノ基転移酵素、HIF−プロリルヒドロキシラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素ファミリ、HIVインテグラーゼ、HIV−1逆転写酵素、イソロイシンtRNAリガーゼ、ラノステロールデメチラーゼ(CYP51)、マトリックスメタロプロテアーゼファミリ、メチオニンアミノペプチダーゼ、中性エンドペプチダーゼ、一酸化窒素合成酵素ファミリ、ホスホジエステラーゼIII、ホスホジエステラーゼIV、ホスホジエステラーゼV、ピルビン酸フェレドキシン酸化還元酵素、腎臓ペプチダーゼ、リボヌクレオシド二リン酸還元酵素、トロンボキサン合成酵素(CYP5a)、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ウレアーゼおよびキサンチン酸化酵素から選択される酵素を阻害するものとして特定されている化合物である。
【0037】
一態様では、本明細書中の化合物は、CYP17阻害剤として特定されている化合物である。
【0038】
一態様では、本明細書中の化合物は、標的酵素に対する活性範囲と標的外酵素に対する活性範囲(例えば、CYP17に対してIC50<1.0μMであり、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4に対してIC50>3.0μM、CYP17に対してIC50<0.5μMであり、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4に対してIC50>1.0μM、CYP17に対してIC50<0.46μMであり、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4に対してIC50>4.8μM、CYP17に対してIC50<XXμMであり、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4に対してIC50>YYμM(ここで、XXは独立した数であり、YYは独立した数であるか、他の様態では、XXはYYより小さい数である。特定の態様では、例えば、XXは、YYよりも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍または1000倍小さい))を有するものとして特定されている化合物である。
【0039】
別の態様は、本明細書中の式の化合物を金属酵素に接触させることを含む金属酵素活性の阻害方法である。一態様では、この接触は生体内接触である。別の態様では、この接触は生体外接触である。
【0040】
さらに、本方法は、金属酵素が、鉄、亜鉛、ヘム鉄、マンガン、マグネシウム、硫化鉄クラスタ、ニッケル、モリブデンまたは銅である金属原子を含み、
金属酵素が、チトクロームP450ファミリ、ヒストン脱アセチル化酵素、マトリックスメタロプロテイナーゼ、ホスホジエステラーゼ、シクロオキシゲナーゼ、炭酸脱水酵素および一酸化窒素合成酵素から選択される酵素クラスの一員であり、金属酵素は、アロマターゼ(CYP19)、シクロオキシゲナーゼ、ラノステロールデメチラーゼ(CYP51)、一酸化窒素合成酵素、トロンボキサン合成酵素(CYP5a)、甲状腺ペルオキシダーゼ、17−αヒドロキシラーゼ/17,20−リアーゼ(CYP17)、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)、チトクロームP450 2A6、ヘムオキシゲナーゼ、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ、レチノイン酸ヒドロキシラーゼ(CYP26)またはビタミンDヒドロキシラーゼ(CYP24)であるか、
金属酵素が、17−αヒドロキシラーゼ/17,20−リアーゼ(CYP17)であるか、
金属酵素が、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ、5−リポキシゲナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アルコール脱水素酵素、アミノペプチダーゼN、アンギオテンシン変換酵素、アロマターゼ(CYP19)、カルシニューリン、カルバモイルリン酸合成酵素、炭酸脱水酵素ファミリ、カテコール−O−メチル転移酵素、シクロオキシゲナーゼファミリ、ジヒドロピリミジン脱水素酵素−1、DNAポリメラーゼ、ファルネシル二リン酸合成酵素、ファルネシル転移酵素、フマル酸還元酵素、GABAアミノ基転移酵素、HIF−プロリルヒドロキシラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素ファミリ、HIVインテグラーゼ、HIV−1逆転写酵素、イソロイシンtRNAリガーゼ、ラノステロールデメチラーゼ(CYP51)、マトリックスメタロプロテアーゼファミリ、メチオニンアミノペプチダーゼ、中性エンドペプチダーゼ、一酸化窒素合成酵素ファミリ、ホスホジエステラーゼIII、ホスホジエステラーゼIV、ホスホジエステラーゼV、ピルビン酸フェレドキシン酸化還元酵素、腎臓ペプチダーゼ、リボヌクレオシド二リン酸還元酵素、トロンボキサン合成酵素(CYP5a)、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ウレアーゼおよびキサンチン酸化酵素であるか、あるいは
金属酵素が、1−デオキシ−d−キシルロース−5−リン酸レダクトイソメラーゼ(DXR)、17−αヒドロキシラーゼ(CYP17)、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)、アミノペプチダーゼP、炭疽菌致死因子、アルギナーゼ、β−ラクタマーゼ、チトクロームP450 2A6、D−Ala−D−Alaリガーゼ、ドーパミン−β−ヒドロキシラーゼ、エンドセリン変換酵素−1、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII、グルタミニルシクラーゼ、グリオキサラーゼ、ヘムオキシゲナーゼ、HPV/HSV E1ヘリカーゼ、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ、ロイコトリエンA4加水分解酵素、メチオニンアミノペプチダーゼ2、ペプチド脱ホルミル酵素、ホスホジエステラーゼVII、レラキサーゼ、レチノイン酸ヒドロキシラーゼ(CYP26)、TNF−α変換酵素(TACE)、UDP−(3−O−(R−3−ヒドロキシミリストイル))−N−アセチルグルコサミン脱アセチル化酵素(LpxC)、血管接着タンパク質−1(VAP−1)またはビタミンDヒドロキシラーゼ(CYP24)である方法であってもよい。
【0041】
本明細書中の方法は、本化合物を対象に投与することをさらに含むことができる。
【0042】
本明細書中の方法としては、式(I)もしくは(II)の化合物が、標的酵素に対する活性範囲と標的外酵素に対する活性範囲(例えば、CYP17に対してIC50<1.0μMであり、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4に対してIC50>3.0μM、CYP17に対してIC50<0.5μMであり、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4に対してIC50>1.0μM、CYP17に対してIC50<0.46μMであり、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4に対してIC50>4.8μM、CYP17に対してIC50<XXμMであり、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4に対してIC50>YYμM(ここで、XXは独立した数であり、YYは独立した数であるか、他の様態では、XXはYYよりも小さい数である。特定の態様では、例えば、XXはYYよりも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍または1000倍小さい))を有するものとして特定されている本明細書中の方法が挙げられる。
【0043】
本明細書中の化合物としては、金属に対する1つ以上の以下の種類の化学相互作用もしくは結合:シグマ結合、共有結合、配位共有結合、イオン結合、π結合、δ結合または逆結合相互作用の形成によって、金属酵素の親和性を少なくとも部分的に達成するものとして特定されている化合物が挙げられる。本化合物は、ファンデルワールス相互作用、πカチオン相互作用、πアニオン相互作用、双極子相互作用、イオン双極子相互作用などのより弱い金属との相互作用によって親和性を達成することもできる。一態様では、本化合物は、2−テトラゾール部分を介した金属との結合相互作用を有するものとして特定されている。別の態様では、本化合物は、2−テトラゾール部分のNを介した金属との結合相互作用を有するものとして特定されている。
【0044】
例えば、"Principles of Bioinorganic Chemistry" by Lippard and
Berg, University Science Books, (1994); "Mechanisms of Inorganic Reactions"
by Basolo and Pearson John Wiley & Sons Inc; 2nd edition (September 1967);
"Biological Inorganic Chemistry" by Ivano Bertini, Harry Gray, Ed
Stiefel, Joan Valentine, University Science Books (2007); Xue et al.
"Nature Chemical Biology", vol. 4, no. 2, 107-109 (2008)などの参考文献に例示されているように、金属と配位子との結合相互作用を評価する方法が当該技術分野で知られている。
【0045】
場合によっては、本発明の化合物は、式(I)もしくは(II)の以下の化合物:
2−(1−(6,7−ビス(ジフルオロメトキシ)ナフタレン−2−イル)−2−メチルプロピル)−2H−テトラゾール(1)、
2−(2−メチル−1−(6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ナフタレン−2−イル)プロピル)−2H−テトラゾール(2)、
2−(1−(6,7−ジメトキシナフタレン−2−イル)−2−メチルプロピル)−2H−テトラゾール(3)、
2−(1−(6−(ジフルオロメトキシ)ナフタレン−2−イル)−2−メチルプロピル)−2H−テトラゾール(4)、
およびその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物から選択される。
【0046】
別の態様では、本発明は、式IもしくはIIの化合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0047】
他の様態では、本発明は、金属酵素活性を調整するのに十分な量および条件下で、対象を式IもしくはIIの化合物に接触させることを含む、対象における金属酵素活性の調整方法を提供する。
【0048】
一態様では、本発明は、有効量の式IもしくはIIの化合物または医薬組成物を対象に投与することを含む、本明細書に詳述されている障害または疾患に罹患しているか罹患しやすい対象の治療方法を提供する。
【0049】
一態様では、本発明は、有効量の式IもしくはIIの化合物または医薬組成物を対象に投与することを含む、金属酵素に関連する障害または疾患に罹患しているか罹患しやすい対象の治療方法を提供する。
【0050】
別の態様では、本発明は、対象が金属酵素に関連する障害または疾患の治療を必要としているものとして特定され、それを必要としている前記対象が前記疾患に対して治療されるように、前記対象に有効量の式IもしくはIIの化合物または医薬組成物を投与することを含む、金属酵素に関連する障害または疾患に罹患しているか罹患しやすい対象の治療方法を提供する。
【0051】
別の態様では、本発明は、対象が金属酵素媒介性障害または疾患の治療を必要としているものとして特定され、それを必要としている前記対象における金属酵素活性が調節される(例えば、下方制御される、阻害される)ように、前記対象に有効量の式IもしくはIIの化合物または医薬組成物を投与することを含む、金属酵素媒介性障害または疾患に罹患しているか罹患しやすい対象の治療方法を提供する。別の態様では、本明細書に詳述されている化合物は、非形質転換細胞よりも癌細胞を選択的に標的とする。
【0052】
本明細書中の方法としては、疾患または障害が、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ、5−リポキシゲナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アルコール脱水素酵素、アミノペプチダーゼN、アンギオテンシン変換酵素、アロマターゼ(CYP19)、カルシニューリン、カルバモイルリン酸合成酵素、炭酸脱水酵素ファミリ、カテコール−O−メチル転移酵素、シクロオキシゲナーゼファミリ、ジヒドロピリミジン脱水素酵素−1、DNAポリメラーゼ、ファルネシル二リン酸合成酵素、ファルネシル転移酵素、フマル酸還元酵素、GABAアミノ基転移酵素、HIF−プロリルヒドロキシラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素ファミリ、HIVインテグラーゼ、HIV−1逆転写酵素、イソロイシンtRNAリガーゼ、ラノステロールデメチラーゼ(CYP51)、マトリックスメタロプロテアーゼファミリ、メチオニンアミノペプチダーゼ、中性エンドペプチダーゼ、一酸化窒素合成酵素ファミリ、ホスホジエステラーゼIII、ホスホジエステラーゼIV、ホスホジエステラーゼV、ピルビン酸フェレドキシン酸化還元酵素、腎臓ペプチダーゼ、リボヌクレオシド二リン酸還元酵素、トロンボキサン合成酵素(CYP5a)、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ウレアーゼまたはキサンチン酸化酵素のいずれかによって媒介される方法が挙げられる。
【0053】
本明細書中の方法としては、疾患または障害が、1−デオキシ−d−キシルロース−5−リン酸レダクトイソメラーゼ(DXR)、17−αヒドロキシラーゼ(CYP17)、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)、アミノペプチダーゼP、炭疽菌致死因子、アルギナーゼ、β−ラクタマーゼ、チトクロームP450 2A6、D−Ala−D−Alaリガーゼ、ドーパミン−β−ヒドロキシラーゼ、エンドセリン変換酵素−1、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII、グルタミニルシクラーゼ、グリオキサラーゼ、ヘムオキシゲナーゼ、HPV/HSV E1ヘリカーゼ、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ、ロイコトリエンA4加水分解酵素、メチオニンアミノペプチダーゼ2、ペプチド脱ホルミル酵素、ホスホジエステラーゼVII、レラキサーゼ、レチノイン酸ヒドロキシラーゼ(CYP26)、TNF−α変換酵素(TACE)、UDP−(3−O−(R−3−ヒドロキシミリストイル))−N−アセチルグルコサミン脱アセチル化酵素(LpxC)、血管接着タンパク質−1(VAP−1)またはビタミンDヒドロキシラーゼ(CYP24)のいずれかによって媒介される方法が挙げられる。
【0054】
本明細書中の方法としては、疾患または障害が、癌、心血管疾患、炎症性疾患、感染症、代謝性疾患、眼科疾患、中枢神経系(CNS)疾患、泌尿器疾患または胃腸疾患である方法が挙げられる。
【0055】
本明細書中の方法としては、疾患または障害が、前立腺癌、乳癌、子宮内膜症、子宮筋腫、炎症性腸疾患、乾癬、全身性真菌感染症、爪真菌症または心血管疾患である方法が挙げられる。
【0056】
本明細書に詳述されている方法としては、対象が特に定められた治療を必要としているものとして特定される方法が挙げられる。そのような治療を必要としている対象を特定することは、対象または医療の専門家の判断であってもよく、主観的(例えば、所見)または客観的(例えば、試験または診断法によって測定可能)であってもよい。
【0057】
本発明の別の態様は、本明細書中の式のいずれかの化合物と、農学的に許容される担体とを含む組成物である。
【0058】
本発明の別の態様は、本明細書中の式のいずれかの化合物を植物に接触させることを含む、植物の中または表面における金属酵素媒介性疾患または障害の治療または予防方法である。
【0059】
本発明の別の態様は、本明細書中の式のいずれかの化合物を植物に接触させることを含む、植物の表面にいる微生物における金属酵素活性の阻害方法である。
【0060】
本発明の別の態様は、本明細書中の式のいずれかの化合物を植物に接触させることを含む、植物の中もしく表面における真菌性疾患または障害の治療または予防方法である。
【0061】
本発明の別の態様は、本明細書中の式のいずれかの化合物を植物に接触させることを含む、植物の中または表面における真菌増殖の治療または予防方法である。
【0062】
本発明の別の態様は、本明細書中の式のいずれかの化合物を植物に接触させることを含む、植物の中または表面にいる微生物の阻害方法である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
(定義)
本発明をより容易に理解できるように、便宜上ここで特定の用語を最初に定義する。
【0064】
本明細書に使用されている、疾患を「治療すること」という用語は、疾患および/または疾患を引き起こし得る状態を予防、寛解、緩和および/または管理することを包含する。「治療すること」および「治療」とう用語は、疾患および/またはその付随する症状を緩和または寛解させる方法を指す。本発明によれば、「治療すること」は、例えば、疾患の悪影響を防止、遮断、阻害、減弱、防御、調節、対抗し、かつそれらの発生を減少させることを含む。
【0065】
本明細書に使用されている「阻害すること」は、進行を予防、減少および停止させることを包含する。「酵素阻害」(例えば、金属酵素阻害)は区別され、以下に説明されていることに留意されたい。
【0066】
「調節する」という用語は、本発明の化合物への曝露に応答する酵素活性の増加または減少を指す。
【0067】
「単離された」「精製された」または「生物学的に純粋な」という用語は、その天然状態で存在するような通常それに付随する成分を実質的または本質的に含有しない材料を指す。純度および均質性は典型的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィなどの分析化学技術を用いて測定される。特に、いくつかの実施形態では、本化合物は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%純粋であり、最も好ましくは少なくとも99%純粋である。
【0068】
「投与」または「投与すること」という用語は、それらの目的の機能を果たすために1種以上の本化合物を対象に導入する経路を含む。使用することができる投与経路の例としては、注射(皮下、静脈内、非経口、腹膜内、クモ膜下腔内)、局所、経口、吸入、直腸および経皮が挙げられる。
【0069】
「有効量」という用語は、投与時と所望の結果を達成するのに必要な期間にわたって有効な量を含む。化合物の有効量は、対象の病状、年齢および体重などの要因、ならびに対象において所望の応答を誘発する化合物の能力に応じて異なってもよい。投与計画は、最適な治療応答を得るように調整してもよい。有効量は、治療的に有益な効果が阻害化合物の任意の有毒または有害な効果(例えば、副作用)を上回る量でもある。
【0070】
本明細書に使用されている「全身投与」「全身的に投与される」「末梢投与」および「末梢的に投与される」という語句は、患者の全身に入り、従って、代謝および他の同様のプロセスを受けるような1種以上の化合物、薬物または他の材料の投与を意味する。
【0071】
「治療的有効量」という用語は、治療中の疾患または障害の1つ以上の症状の進行を予防するか、ある程度緩和するのに十分な投与される本化合物の量を指す。
【0072】
化合物の治療的有効量(すなわち、有効投与量)は、体重の約0.005μg/kg〜約200mg/kg、好ましくは約0.01mg/kg〜約200mg/kg、より好ましくは約0.015mg/kg〜約30mg/kgの範囲であってもよい。他の実施形態では、治療的有効量は、約1.0pM〜約10μMの範囲であってもよい。当業者であれば、限定されるものではないが、疾患または障害の重症度、以前の治療、一般的な健康状態および/または対象の年齢および存在する他の疾患などの特定の要因が、対象を効果的に治療するために必要とされる投与量に影響を与え得ることを理解しているであろう。さらに、治療的有効量の化合物による対象の治療は、単一の治療、好ましくは一連の治療を含むことができる。一例では、対象は、約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、より好ましくは約3〜7週間、さらにより好ましくは約4、5または6週間にわたって1日1回、体重の約0.005μg/kg〜約200mg/kgの範囲の化合物で治療される。別の例では、慢性の疾患または病気の状況で、数年間にわたって毎日対象を治療してもよい。治療のために使用される化合物の有効投与量が特定の治療の過程を通じて増減し得ることも理解されるであろう。
【0073】
「キラル」という用語は、鏡像相手と重ね合わせ不可能な特性を有する分子を指し、「アキラル」という用語は、それらの鏡像相手に重ね合わせ可能な分子を指す。
【0074】
「ジアステレオマー」という用語は、2つ以上の不斉中心を有し、かつそれらの分子が互いに鏡像でない立体異性体を指す。
【0075】
「鏡像異性体」という用語は、互いの重ね合わせ不可能な鏡像である化合物の2種類の立体異性体を指す。2種類の鏡像異性体の等モル混合物は、「ラセミ混合物」または「ラセミ体」と呼ばれる。
【0076】
「異性体」または「立体異性体」という用語は、同一の化学組成を有するが、空間における原子または基の配置に関して異なる化合物を指す。
【0077】
「プロドラッグ」という用語は、生体内で代謝されることができる部分を有する化合物を含む。一般に、プロドラッグは、エステラーゼによって、あるいは活性薬物に対する他の機構によって生体内で代謝される。プロドラッグおよびそれらの用途の例は当該技術分野でよく知られている(例えば、Berge et al. (1977) "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci.
66:1-19を参照)。プロドラッグは、化合物の最終的な単離および精製の間に原位置で、あるいは好適なエステル化剤によってその遊離酸形態の精製された化合物またはヒドロキシルを別々に反応させることによって調製することができる。ヒドロキシル基は、カルボン酸による処理によってエステルに変換することができる。プロドラッグ部分の例としては、置換もしくは非置換の分岐鎖もしくは非分岐鎖状の低級アルキルエステル部分(例えば、プロピオン酸エステル)、低級アルケニルエステル、ジ低級アルキルアミノ低級アルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル(例えば、アセチルオキシメチルエステル)、アシルオキシ低級アルキルエステル(例えば、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール低級アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル)、(例えば、メチル、ハロまたはメトキシ置換基によって)置換されたアリールおよびアリール低級アルキルエステル、アミド、低級アルキルアミド、ジ低級アルキルアミドおよびヒドロキシアミドが挙げられる。好ましいプロドラッグ部分は、プロピオン酸エステルおよびアシルエステルである。生体内で他の機構によって活性型に変換されるプロドラッグも含まれる。いくつかの態様では、本発明の化合物は、本明細書中の式のいずれかのプロドラッグである。
【0078】
「対象」という用語は、哺乳類、限定されるものではないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラットおよびマウスなどの動物を指す。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0079】
「1つ(a)」「1つ(an)」および「その(the)」という用語は、特許請求の範囲を含む本出願に使用されている場合、「1つ以上」を指す。従って、例えば、「1つの試料」について述べている場合、文脈が明らかにそれに反すること(例えば、複数の試料でないこと)などを示していなければ、複数の試料を含む。
【0080】
本明細書および特許請求の範囲の全体にわたって、「含む(comprise)」「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」という言葉は、文脈が他の意味を求めている場合を除き、排他的でない意味で使用されている。
【0081】
本明細書に使用されている「約」という用語は、値について述べている場合、開示されている方法を実施するか開示されている組成物を用いるのに適当な変動になるように、指定されている量からの、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、いくつかの実施形態では±0.1%の変動を包含するものである。
【0082】
本明細書での「阻害剤」という言葉の使用は、金属酵素を阻害するための活性を呈する分子を意味するものである。本明細書では「阻害する」とは、阻害剤の非存在下での金属酵素の活性と比べて、金属酵素の活性を減少させることを意味する。いくつかの実施形態では、「阻害する」という用語は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約95%の金属酵素活性の減少を意味する。他の実施形態では、「阻害する」とは、約5%〜約25%、約25%〜約50%、約50%〜約75%または約75%〜100%の金属酵素活性の減少を意味する。いくつかの実施形態では、「阻害する」とは、約95%〜100%の金属酵素活性の減少、例えば、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の減少を意味する。そのような減少は、当業者によって認識されている各種技術を用いて測定することができる。個々の活性を測定するための特定のアッセイは、以下に記載されている。
【0083】
さらに、本発明の化合物としては、いずれか一方の幾何学的形状を有するオレフィンも挙げられる:「Z」は、「シス」(同じ側)型と呼ばれるものを指し、「E」は、「トランス」(反対側)型と呼ばれるものを指す。キラル中心の命名法に関する「d」および「l」(または、+および−)型という用語は、IUPAC勧告によって定義されているとおりである。ジアステレオマー、ラセミ体、エピマーおよび鏡像異性体という用語の使用に関して、これらの用語は、製剤の立体化学を説明するために、それらの通常の文脈で使用される。
【0084】
本明細書に使用されている「アルキル」という用語は、1〜12個の炭素原子を含む直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素基を指す。「低級アルキル」という用語は、C1〜C6アルキル鎖を指す。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチルおよびn−ペンチルが挙げられる。アルキル基は、1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよい。
【0085】
「アルケニル」という用語は、2〜12個の炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素二重結合とを含む直鎖または分岐鎖であってもよい不飽和炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよい。
【0086】
「アルキニル」という用語は、2〜12個の炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素三重結合とを含む直鎖または分岐鎖であってもよい不飽和炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよい。
【0087】
アルケニル基およびアルキニル基のspまたはsp炭素はそれぞれ任意に、アルケニルまたはアルキニル基の結合点であってもよい。
【0088】
「アルコキシ」という用語は、−O−アルキルラジカルを指す。
【0089】
「ハロアルコキシ」という用語は、1つ以上のハロ置換基で置換された−O−アルキルラジカルを指す。ハロアルコキシ基の例としては、トリフルオロメトキシおよび2,2,2−トリフルオロエトキシが挙げられる。
【0090】
本明細書に使用されている「ハロゲン」「hal」または「ハロ」という用語は、−F、−Cl、−Brまたは−Iを意味する。
【0091】
「シクロアルキル」という用語は、少なくとも1つの飽和環または少なくとも1つ非芳香族環を有する3〜8員の単環式または7〜14員の二環式の環系の炭化水素を指し、ここで、非芳香族環は、ある程度の不飽和を有していてもよい。シクロアルキル基は、1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよい。一実施形態では、シクロアルキル基の各環の0、1、2、3または4つの原子は、置換基で置換されていてもよい。シクロアルキル基の代表的な例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロブチル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニルおよびシクロヘキサジエニルなどが挙げられる。
【0092】
「アリール」という用語は、単環式、二環式または三環式の芳香族環系の炭化水素を指す。アリール基は、1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよい。一実施形態では、アリール基の各環の0、1、2、3、4、5または6つの原子は置換基で置換されていてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、インデニルおよびアズレニルなどが挙げられる。
【0093】
「ヘテロアリール」という用語は、単環式の場合、1〜4つの環ヘテロ原子を有し、二環式の場合1〜6つのヘテロ原子を有し、三環式の場合、1〜9つのヘテロ原子を有する5〜8員の単環式、8〜12員の二環式または11〜14員の三環式の芳香族の環系を指し、前記ヘテロ原子は、O、NまたはSから選択され、残りの環原子は、(特に明記されていない限り適当な水素原子をもつ)炭素である。ヘテロアリール基は、1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよい。一実施形態では、ヘテロアリール基の各環の0、1、2、3または4つの原子は、置換基で置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、キノリニル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、イソキノリニルおよびインダゾリルが挙げられる。
【0094】
「窒素含有ヘテロアリール」という用語は、単環式の場合1〜4つの環窒素ヘテロ原子を有し、二環式の場合1〜6つの環窒素ヘテロ原子を有し、三環式の場合1〜9つの環窒素ヘテロ原子を有するヘテロアリール基を指す。
【0095】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、単環式の場合1〜3つのヘテロ原子を含み、二環式の場合1〜6つのヘテロ原子を含み、三環式の場合1〜9つのヘテロ原子を含む3〜8員の単環式、7〜12員の二環式または10〜14員の三環式の非芳香族の環系を指し、前記ヘテロ原子は、O、N、S、B、PまたSiから選択され、ここでは、非芳香族の環系は完全飽和である。ヘテロシクロアルキル基は、1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよい。一実施形態では、ヘテロシクロアルキル基の各環の0、1、2、3または4つの原子は、置換基で置換されていてもよい。代表的なヘテロシクロアルキル基としては、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、1,3−ジオキソラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニルおよびチエニルなどが挙げられる。
【0096】
「アルキルアミノ」という用語は、1つまたは2つのアルキル基でさらに置換されたアミノ置換基を指す。「アミノアルキル」という用語は、1つ以上のアミノ基でさらに置換されたアルキル置換基を指す。「ヒドロキシアルキル」または「ヒドロキシルアルキル」という用語は、1つ以上のヒドロキシル基でさらに置換されたアルキル置換基を指す。アルキルアミノ、アミノアルキル、メルカプトアルキル、ヒドロキシアルキル、メルカプトアルコキシ、スルホニルアルキル、スルホニルアリール、アルキルカルボニルおよびアルキルカルボニルアルキルのアルキルまたはアリール部分は、1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよい。
【0097】
本明細書中の方法で有用な酸および塩基は当該技術分野で知られている。酸触媒は任意の酸性化学物質であり、実際には、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、三塩化アルミニウム)または有機酸(例えば、カンファースルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、イッテルビウムトリフラート)であってよい。酸は、化学反応を容易にする触媒量または化学量論量のいずれかで有用である。塩基は任意の塩基性化学物質であり、実際には、無機塩基(例えば、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム)または有機塩基(例えば、トリエチルアミン、ピリジン)であってもよい。塩基は、化学反応を容易にする触媒量または化学量論量のいずれかで有用である。
【0098】
アルキル化剤は、目的の官能基(例えば、アルコールの酸素原子、アミノ基の窒素原子)のアルキル化を達成することができる任意の試薬である。アルキル化剤は、本明細書に引用されている参考文献に記載されているものを含み、当該技術分野で知られており、ハロゲン化アルキル(例えば、ヨウ化メチル、臭化ベンジルまたは塩化ベンジル)、硫酸アルキル(例えば、硫酸メチル)または当該技術分野で知られている他のアルキル基と脱離基との組み合わせが挙げられる。脱離基は、反応(例えば、脱離反応、置換反応)中に分子から脱離することができる任意の安定な化学種であり、本明細書に引用されている参考文献に記載されているものを含み、当該技術分野で知られており、ハロゲン化物(例えば、I−、Cl−、Br−、F−)、ヒドロキシ、アルコキシ(例えば、−OMe、−O−t−Bu)、アシルオキシアニオン(例えば、−OAc、−OC(O)CF)、スルホン酸(例えば、メシル、トシル)、アセトアミド(例えば、−NHC(O)Me)、カルバミン酸(例えば、N(Me)C(O)Ot−Bu)、ホスホン酸(例えば、−OP(O)(OEt))、水またはアルコール類(プロトン性条件)などが挙げられる。
【0099】
特定の実施形態では、任意の基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルなど)にある置換基は、その基の任意の原子に位置していてもよく、ここでは、置換することができる任意の基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルなど)を、1つ以上の置換基(同じであっても異なっていてもよい)で任意に置換することができ、それぞれが水素原子を置換している。好適な置換基の例としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、ヒドロキシルアルキル、オキソ(すなわち、カルボニル)、カルボキシル、ホルミル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールオキシカルボニル、チオ、メルカプト、メルカプトアルキル、アリールスルホニル、アミノ、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルカルボニルもしくはアリールアミノ置換されたアリール、アリールアルキルアミノ、アラルキルアミノカルボニル、アミド、アルキルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、イミノ、カルバミド、カルバミル、チオウレイド、チオシアナト、スルホアミド、スルホニルアルキル、スルホニルアリール、メルカプトアルコキシ、N−ヒドロキシアミジニルまたはN’−アリール,N”−ヒドロキシアミジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
本発明の化合物は、当該技術分野で知られている有機合成手段によって調製することができる。反応条件を最適化し、必要であれば競合する副生成物を最小にする方法が当該技術分野で知られている。反応の最適化およびスケールアップは、高速平行合成装置およびコンピュータ制御マイクロリアクタを有利に利用してもよい(例えば、Design
And Optimization in Organic Synthesis, 2nd Edition, Carlson R, Ed,
2005; Elsevier Science Ltd.; Jahnisch, K et al, Angew. Chem. Int. Ed. Engl.
2004 43: 406およびその中の参考文献)。さらなる反応スキームおよび手順は、市販の構造検索可能なデータベースソフトウェア、例えば、SciFinder(登録商標)(米国化学会のCAS部門)およびCrossFire Beilstein(登録商標)(Elsevier MDL社)を用いて、またはGoogle(登録商標)などのインターネット検索エンジンを用いる適切なキーワード検索によって、あるいは米国特許商標庁テキストデータベースなどのキーワードデータベースによって、当業者が決定してもよい。
【0101】
また、本明細書中の化合物は、結合(例えば、炭素−炭素結合)を含んでいてもよく、ここでは、結合の回転はその特定の結合の周りで制限されており、例えば、環または二重結合の存在により制限が生じている。従って、全てのシス/トランスおよびE/Z異性体は、明示的に本発明に含まれている。本明細書中の化合物は、複数の互変異性型で表されていてもよく、そのような場合、本発明は、本明細書に記載されている化合物の全ての互変異性型を明示的に含むが、単一の互変異性型のみが表わされていてもよい。本明細書中のそのような化合物の全てのそのような異性型は、明示的に本発明に含まれている。本明細書に記載されている化合物の全ての結晶形および多形は、明示的に本発明に含まれている。本発明の化合物を含む抽出物および画分も具現化される。「異性体」という用語は、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、位置異性体、構造異性体、回転異性体および互変異性体などを含むものである。1つ以上の立体中心を含む化合物、例えば、キラル化合物のために、鏡像異性的に濃縮された化合物、ラセミ体またはジアステレオマーの混合物を用いて本発明の方法を実施してもよい。
【0102】
好ましい鏡像異性的に濃縮された化合物は、50%以上の鏡像体過剰率を有し、より好ましくは、本化合物は、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%以上の鏡像体過剰率を有する。好ましい実施形態では、本発明のキラル化合物の1種のみの鏡像異性体またはジアステレオマーが細胞または対象に投与される。
【0103】
(治療方法)
一態様では、本発明は、金属酵素活性を調整するのに十分な量および条件下で対象を式IもしくはIIの化合物に接触させることを含む、対象における細胞の金属酵素活性の調整方法を提供する。
【0104】
一実施形態では、調整は阻害である。
【0105】
別の態様では、本発明は、有効量の式IもしくはIIの化合物または医薬組成物を対象に投与することを含む、金属酵素媒介性障害または疾患に罹患しているか罹患しやすい対象の治療方法を提供する。
【0106】
他の様態では、本発明は、対象が金属酵素媒介性障害または疾患の治療を必要としているものとして特定され、それを必要としている前記対象が前記疾患に対して治療されるように、前記対象に有効量の式IもしくはIIの化合物または医薬組成物を投与することを含む、金属酵素媒介性障害または疾患に罹患しているか罹患しやすい対象の治療方法を提供する。
【0107】
特定の実施形態では、本発明は、疾患が、癌、心血管疾患、炎症性疾患または感染症である、疾患、障害またはその症状の治療方法を提供する。他の実施形態では、疾患、障害またはその症状は、代謝性疾患、眼科疾患、中枢神経系(CNS)疾患、泌尿器疾患または胃腸疾患である。特定の実施形態では、疾患は、前立腺癌、乳癌、アンドロゲン依存性癌、エストロゲン依存性癌、炎症性腸疾患、乾癬、全身性真菌感染症、爪真菌症、副腎過形成症、前立腺肥大、男性化症、多毛症、男性型脱毛症、思春期早発症、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮癌、子宮類線維症、乳腺症、多嚢胞性卵巣症候群、不妊症、座瘡、機能性卵巣アンドロゲン過剰、慢性無排卵を伴う高アンドロゲン症、高アンドロゲン症、早発性副腎皮質徴候発現(premature adrenarche)、副腎もしくはアンドロゲン過剰である。
【0108】
特定の実施形態では、対象は哺乳類であり、好ましくは霊長類またはヒトである。
【0109】
別の実施形態では、本発明は、有効量の式IもしくはIIの化合物が上述のとおりである上記方法を提供する。
【0110】
別の実施形態では、本発明は、式IもしくはIIの化合物が、静脈内、筋肉内、皮下、脳室内、経口または局所投与される上記方法を提供する。
【0111】
別の実施形態では、本発明は、式IもしくはIIの化合物が、標的酵素に対する活性範囲および標的外酵素に対する活性範囲(例えば、CYP17に対してIC50<1.0μMであり、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4に対してIC50>3.0μM、CYP17に対してIC50<0.5μMであり、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4に対してIC50>1.0μM、CYP17に対してIC50<0.46μMであり、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4に対してIC50>4.8μM、CYP17に対してIC50<XXμMであり、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4に対してIC50>YYμM(ここでXXは独立した数であり、YYは独立した数であるか、他の様態ではXXはYYよりも小さい数である。特定の態様では、例えば、XXはYYよりも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍または1000倍小さい)において選択性を示す本明細書に記載されている方法を提供する。
【0112】
他の実施形態では、本発明は、式IもしくはIIの化合物が単独または1種以上の他の治療薬と併用して投与される上記方法を提供する。さらなる実施形態では、さらなる治療薬は、抗癌剤、抗真菌薬、心血管作動薬、抗炎症薬、化学療法剤、抗血管新生薬、細胞毒性薬、抗細胞増殖薬、代謝性疾患薬、眼科疾患薬、中枢神経系(CNS)疾患薬、泌尿器疾患薬または胃腸疾患薬である。
【0113】
本明細書に使用されている「CYP17関連疾患」は、CYP17の活性に依存している生理学的または病理学的状態である。CYP17関連疾患の非限定的な例としては、前立腺癌、乳癌、副腎過形成症、前立腺肥大、男性化症、多毛症、男性型脱毛症、思春期早発症、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮癌、乳腺症、多嚢胞性卵巣症候群、不妊症、座瘡、機能性卵巣アンドロゲン過剰、慢性無排卵を伴う高アンドロゲン症、高アンドロゲン症、早発性副腎皮質徴候発現、副腎もしくはアンドロゲン過剰が挙げられる。
【0114】
本発明の別の目的は、金属酵素媒介性障害または疾患の治療に使用される薬の製造における本明細書に記載されている化合物(例えば、本明細書中の任意の式の化合物)の使用である。本発明の別の目的は、金属酵素媒介性障害または疾患の治療に使用される本明細書に記載されている化合物(例えば、本明細書中の任意の式の化合物)の使用である。本発明の別の目的は、農業または農地環境における金属酵素媒介性障害または疾患の治療または予防に使用される農業用組成物の製造における本明細書に記載されている化合物(例えば、本明細書中の任意の式の化合物)の使用である。
【0115】
(医薬組成物)
一態様では、本発明は、本明細書中の式(例えば、式I、IIまたはIII)のいずれかの化合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0116】
別の実施形態では、本発明は、さらなる治療薬をさらに含む医薬組成物を提供する。さらなる実施形態では、さらなる治療薬は、抗癌剤、抗真菌薬、心血管作動薬、抗炎症薬、化学療法剤、抗血管新生薬、細胞毒性薬、抗細胞増殖薬、代謝性疾患薬、眼科疾患薬、中枢神経系(CNS)疾患薬、泌尿器疾患薬または胃腸疾患薬である。
【0117】
一態様では、本発明は、癌、固形腫瘍、心血管疾患、炎症性疾患、感染症などの金属酵素媒介性疾患または障害に罹患しているか罹患しやすい対象に本化合物を投与するための説明書と共に、単位剤形として有効量の式IもしくはIIの化合物を含むキットを提供する。他の実施形態では、疾患、障害またはその症状は、代謝性疾患、眼科疾患、中枢神経系(CNS)疾患、泌尿器疾患または胃腸疾患である。
【0118】
「薬学的に許容される塩」「薬学的に許容される担体」という用語は、本明細書に記載されている化合物に存在する特定の置換基に応じて、比較的毒性のない酸または塩基と共に調製される活性化合物の塩を含むものである。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含む場合、塩基付加塩は、そのままか好適な不活性溶媒中でそのような化合物の中性形態を十分な量の所望の塩基と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノまたはマグネシウム塩あるいは同様の塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合、酸付加塩は、そのままか好適な不活性溶媒中でそのような化合物の中性形態を十分な量の所望の酸と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素、リン酸、リン酸一水素、リン酸二水素、硫酸、硫酸一水素、ヨウ化水素酸または亜リン酸などの無機酸に由来する塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的毒性のない有機酸に由来する塩が挙げられる。アルギン酸塩などのアミノ酸の塩やグルクロン酸またはガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al.,
Journal of Pharmaceutical Science 66:1-19 (1977)を参照)。本発明の特定の具体的な化合物は、本化合物を塩基または酸付加塩のいずれか一方に変換させることができる塩基性および酸性の両官能基を含む。当業者に知られている他の薬学的に許容される担体は本発明に適している。
【0119】
本化合物の中性形態は、その塩を塩基または酸と接触させ、かつ従来の方法で親化合物を単離することによって再生してもよい。化合物の親型は、極性溶媒中の溶解性などの特定の物理的特性において各種塩形態とは異なるが、それ以外の点では、その塩は本発明の目的のための化合物の親型と同等である。
【0120】
塩形態に加えて、本発明はプロドラッグ形態の化合物を提供する。本明細書に記載されている化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学変化を受けて本発明の化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグは、生体外環境で化学的または生化学的な方法によって本発明の化合物に変換させることができる。例えば、好適な酵素または化学試薬を含む経皮パッチ貯蔵部に入れた場合、プロドラッグを徐々に本発明の化合物に変換することができる。
【0121】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和形態ならびに水和形態などの溶媒和形態で存在させることができる。一般に、溶媒和形態は非溶媒和形態と同等であり、本発明の範囲に包含されるものである。本発明の特定の化合物は、複数の結晶または非晶質形態で存在していてもよい。一般に、全ての物理的形態は、本発明によって想定されている使用にとって同等であり、本発明の範囲に含まれるものである。
【0122】
本発明は、有効量の本明細書に記載されている化合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。一実施形態では、薬学的に許容される製剤、例えば、薬学的に許容される製剤を対象に投与してから少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、1週間、2週間、3週間または4週間にわたって本化合物を対象に持続送達させる薬学的に許容される製剤を用いて、化合物が対象に投与される。
【0123】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルおよび投与の時間経過は、患者に対する毒性(容認できない毒性)なしに、特定の患者、組成物および投与様式にとって望ましい治療応答を達成するのに効果的な量の有効成分を得るように変えてもよい。
【0124】
使用時には、静脈内、筋肉内、皮下もしくは脳室内注射あるいは経口投与または局所塗布によって、それを必要としている対象に医薬用担体に入れた薬学的に有効な量の少なくとも1種の本発明に係る化合物を投与する。本発明によれば、本発明の化合物を、単独または第2の異なる治療薬と併用して投与してもよい。「〜と併用して」とは、実質的に同時または順次に一緒であることを意味する。一実施形態では、本発明の化合物を急性投与する。従って、約1日〜約1週間などの短期治療のために本発明の化合物を投与してもよい。別の実施形態では、慢性疾患を寛解させるために、治療される病気に応じて、例えば約1週間〜数ヶ月などの長期間にわたって本発明の化合物を投与してもよい。
【0125】
本明細書に使用されている「薬学的に有効な量」とは、適切な医学的判断の範囲内で、治療中の病気を有意に改善させるのに十分に高量であるが、深刻な副作用を回避するのに十分に少量である(妥当な利益/リスク比の)本発明の化合物の量を意味する。薬学的に有効な量の本発明の化合物は、達成させる特定の目標、治療中の患者の年齢および健康状態、基礎疾患の重症度、治療期間、併用療法の性質および用いられる具体的な化合物によって異なる。例えば、小児または新生児に投与される治療的有効量の本発明の化合物は、適切な医学的判断に従って比例的に減少させる。従って、有効量の本発明の化合物は、所望の効果を与える最少量である。
【0126】
本発明の決定的な実際的利点は、本化合物を、静脈内、筋肉内、皮下、経口または脳室内注射経路などによる好都合な方法で、あるいはクリームまたはゲルなどの局所塗布によって投与し得ることである。投与経路に応じて、本発明の化合物を含む有効成分を、本化合物を、酵素、酸および本化合物を不活性化させ得る他の自然条件の作用から保護するための材料でコーティングしなければならない場合もある。非経口投与以外の方法で本発明の化合物を投与するために、本化合物を、不活性化を防止するための材料でコーティングするかそれと共に投与することができる。
【0127】
本化合物を非経口または腹膜内投与してもよい。例えば、グリセリン、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物ならびに油で分散系を調製してもよい。
【0128】
医薬用担体として機能する物質のいくつかの例は、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類、コーンスターチおよびジャガイモ澱粉などの澱粉、セルロースとカルボキシルメチルセルロースナトリウム、酢酸エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのその誘導体、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、落花生油、綿実油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油およびカカオ脂などの植物油、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール、寒天、アルギン酸、発熱性物質除去蒸留水、等張食塩水およびリン酸緩衝液、脱脂粉乳ならびにビタミンC、エストロゲンおよびエキナセアなどの医薬製剤に使用される他の非毒性適合性物質である。ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤および滑沢剤ならびに着色剤、着香料、滑沢剤、賦形剤、錠剤化剤、安定化剤、抗酸化剤および防腐剤も存在させることができる。例えば、クレモフォアおよびβシクロデキストリンなどの可溶化剤も本明細書中の医薬組成物に使用することができる。
【0129】
ここに開示されている主題の活性化合物もしくはそのプロドラッグを含む医薬組成物を、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠形成、研和(levigating)、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥プロセスの手段によって製造することができる。活性化合物を薬学的に使用可能な製剤に加工するのを容易にする1種以上の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤または補助剤を用いる従来の方法で、本組成物を製剤化することができる。
【0130】
ここに開示されている主題の医薬組成物を、例えば、局所、眼、経口、口腔内、全身、経鼻、注射、経皮、直腸内、膣内などの実質的に任意の投与様式に適した形態あるいは吸入または吹送による投与に適した形態にすることができる。
【0131】
局所投与のために、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして、1種以上の本活性化合物もしくはプロドラッグを製剤化することができる。
【0132】
全身用製剤としては、注射、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、クモ膜下腔内または腹膜内注射による投与のために設計されたもの、ならびに経皮、経粘膜、経口または経肺投与のために設計されたものが挙げられる。
【0133】
有用な注射用製剤としては、水性または油性媒体中の1種以上の本活性化合物の無菌懸濁液、溶液または乳濁液が挙げられる。本組成物は、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤も含有することができる。注射用製剤は、単位剤形(例えば、アンプルまたは複数回投与用容器)で提供することができ、添加防腐剤を含有することができる。
【0134】
あるいは、使用前に、限定されるものではないが、発熱性物質除去蒸留水、緩衝液、デキストロース溶液などの好適な媒体で再構成するための粉末形態で注射用製剤を提供することができる。この目的のために、1種以上の本活性化合物を凍結乾燥などの当該技術分野で公知の任意の技術で乾燥し、使用前に再構成することができる。
【0135】
経粘膜投与のために、本製剤では、障壁に浸透させるのに適した浸透剤を使用する。そのような浸透剤は当該技術分野で知られている。
【0136】
経口投与のために、本医薬組成物を、結合剤(例えば、前ゼラチン化トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉またはデンプングリコール酸ナトリウム)または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される賦形剤と共に従来の手段によって調製された、例えば、トローチ剤、錠剤またはカプセルの形態とすることができる。錠剤は、当該技術分野でよく知られている方法によって、例えば、糖類または腸溶コーティング剤でコーティングすることができる。
【0137】
経口投与用液体製剤は、例えば、エリキシル、溶液、シロップまたは懸濁液の形態とすることも、使用前に水または他の好適な媒体で構成するための乾燥製品として提供するもできる。そのような液体製剤は、従来の手段によって、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア)、非水性媒体(例えば、扁桃油、油性エステル、エチルアルコールまたは分別された植物油)および防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはp−ヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸)などの薬学的に許容される添加剤と共に調製することができる。液体製剤は、必要に応じて、緩衝塩、防腐剤、着香料、着色料または甘味料も含有することができる。
【0138】
経口投与用製剤は、周知のように、活性化合物もしくはプロドラッグの制御放出を提供するように製剤化できることが好ましい。
【0139】
口腔内投与のために、本組成物を、従来の様式で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態とすることができる。
【0140】
直腸内および膣内投与経路のために、溶液(停留浣腸用)、坐薬、またはカカオ脂または他のグリセリド類などの従来の坐薬主成分を含有する軟膏として、1種以上の本活性化合物を製剤化することができる。
【0141】
経鼻投与または吸入もしくは吹送による投与のために、1種以上の本活性化合物もしくはプロドラッグを、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、フルオロカーボン、二酸化炭素または他の好適なガスを用いる加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレーの形態で有利に送達することができる。加圧エアゾールの場合、測定量を送達するための弁を提供することによって単位投与量を測定することができる。吸入器または吹送器で使用されるカプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチンからなるカプセルおよびカートリッジ)は、本化合物とラクトースまたは澱粉などの好適な粉末主成分との粉末混合物を含有するように製剤化することができる。
【0142】
市販の経鼻スプレー装置を用いる経鼻投与に適した水性懸濁液製剤の具体的な例は、以下の成分:活性化合物もしくはプロドラッグ(0.5〜20mg/ml)、塩化ベンザルコニウム(0.1〜0.2mg/mL)、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80、0.5〜5mg/ml)、カルボキシメチルセルロースナトリウムもしくは微結晶性セルロース(1〜15mg/ml)、フェニルエタノール(1〜4mg/ml)およびデキストロース(20〜50mg/ml)を含む。最終懸濁液のpHは、約pH5〜pH7の範囲に調整することができ、約5.5のpHが典型的である。
【0143】
眼投与のために、眼への投与に適した溶液、乳濁液、懸濁液などとして、1種以上の本活性化合物もしくはプロドラッグを製剤化することができる。眼への化合物の投与に適した各種媒体が当該技術分野で知られている。具体的な非限定的な例は、米国特許第6,261,547号、米国特許第6,197,934号、米国特許第6,056,950号、米国特許第5,800,807号、米国特許第5,776,445号、米国特許第5,698,219号、米国特許第5,521,222号、米国特許第5,403,841号、米国特許第5,077,033号、米国特許第4,882,150号および米国特許第4,738,851号に記載されており、各開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0144】
長期間の送達のために、埋め込み物または筋肉内注射による投与のためのデポ剤として1種以上の本活性化合物もしくはプロドラッグを製剤化することができる。有効成分は、好適なポリマーもしくは疏水材料(例えば、許容される油の乳濁液として)またはイオン交換樹脂と共に、あるいはやや溶けにくい誘導体として、例えば、やや溶けにくい塩として製剤化することができる。あるいは、経皮吸収のために1種以上の本活性化合物を徐々に放出する接着盤または接着パッチとして製剤化された経皮送達システムを使用することができる。この目的のために、浸透促進剤を使用して、1種以上の本活性化合物の経皮浸透を容易にすることができる。好適な経皮パッチは、例えば、米国特許第5,407,713号、米国特許第5,352,456号、米国特許第5,332,213号、米国特許第5,336,168号、米国特許第5,290,561号、米国特許第5,254,346号、米国特許第5,164,189号、米国特許第5,163,899号、米国特許第5,088,977号、米国特許第5,087,240号、米国特許第5,008,110号および米国特許第4,921,475号に記載されており、各開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
あるいは、他の医薬用送達システムを用いることができる。リポソームおよび乳濁液は、1種以上の活性化合物もしくはプロドラッグを送達するために使用することができる送達媒体の周知の例である。ジメチルスルホキシド(DMSO)などの特定の有機溶媒も用いることができる。
【0146】
所望であれば、1種以上の本活性化合物を含有する1種以上の単位剤形を含むことができるパックまたはディスペンサ装置として本医薬組成物を提供することができる。上記パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチック箔を含むことができる。上記パックまたはディスペンサ装置には、投与のための説明書を添付することができる。
【0147】
ここに開示されている主題の1種以上の本活性化合物もしくはプロドラッグまたはその組成物は一般に、目的の結果を達成するのに有効な量で、例えば治療中の特定の疾患を治療または予防するのに有効な量で使用される1種以上の本化合物を投与して、治療的に治療効果を達成するか予防的に予防効果を達成することができる。治療効果とは、患者がなお基礎疾患に罹患している可能性があるにも関わらず患者が感覚または状態の改善を報告するような、治療中の基礎疾患の根絶または寛解および/または基礎疾患に伴う1つ以上の症状の根絶または寛解を意味する。例えば、アレルギーに罹患している患者への化合物の投与によって、根本的なアレルギー応答が根絶または寛解された場合だけでなく、アレルゲンへの曝露後にアレルギーに伴う症状の重症度または持続期間の減少を患者が報告した場合にも治療効果が得られる。他の例としては、喘息の状況での治療効果としては、喘息発作の開始後の呼吸の改善または喘息の症状の発現の頻度もしくは重症度の減少が挙げられる。治療効果としては、改善が認められるか否かに関わらず、疾患の進行が停止または遅くなることも挙げられる。
【0148】
予防投与のために、先に述べた疾患のうちの1つを発症するリスクのある患者に本化合物を投与することができる。疾患を発症するリスクのある患者は、適切な医療の専門家または医療グループによって定義されているように、指定されたリスク患者群に分類される特徴を有する患者であってもよい。リスク患者は、一般的または日常的に、本発明に係る金属酵素阻害剤の投与によって治療することができる基礎疾患の進行が生じ得る環境にある患者であってもよい。言い換えると、リスク患者は、一般的または日常的に疾患または病気を引き起こす状況に曝されているものまたは限られた時間で急性的に曝され得るものである。あるいは、基礎疾患を診断された患者における症状の発症を回避するために、予防投与を適用することができる。
【0149】
投与される化合物の量は、例えば、治療中の特定の兆候、投与様式、所望の効果が予防であるか治療であるか、治療中の兆候の重症度および患者の年齢と体重、特定の活性化合物の生物学的利用能などの様々な要因によって決まる。有効な投与量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0150】
有効な投与量は、最初に生体外アッセイから推定することができる。例えば、生体外CHMCまたはBMMCなどの生体外アッセイおよび実施例の箇所に記載されている他の生体外アッセイで測定された特定の化合物のIC50以上に活性化合物の循環血液または血清中濃度が達するように、動物に使用される初期用量を製剤化することができる。特定の化合物の生物学的利用能を考慮してそのような循環血液または血清中濃度に達成する投与量を計算することは、十分に当業者の能力の範囲内である。指針として、Fingl
& Woodbury, "General Principles," In: Goodman and Gilman's The
Pharmaceutical Basis of Therapeutics, Chapter 1, pp. 1-46, latest edition,
Pagamonon Pressおよび本明細書に引用されている参考文献を参照されたく、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0151】
動物モデルなどの生体内データから初期用量を推定することもできる。上記各種疾患を治療または予防するための化合物の有効性を試験するのに有用な動物モデルは当該技術分野でよく知られている。
【0152】
投与量は典型的に、約0.0001または0.001または0.01mg/kg/日〜約100mg/kg/日の範囲であるが、とりわけ、本化合物の活性、その生物学的利用能、投与様式および上記各種要因に応じて増減することができる。治療または予防効果を維持するのに十分な1種以上の本化合物の血漿中濃度を得るために、投与量および投与間隔を個々に調整することができる。局所局部投与などの局所投与または選択的取り込みの場合、1種以上の本活性化合物の有効な局所濃度を血漿中濃度に関連づけることはできない。当業者であれば、過度な実験をすることなく有効な局所用量を最適化することができるであろう。
【0153】
1種以上の本化合物を、とりわけ治療中の兆候および処方医師の判断に応じて、1日1回、1日数回、さらには1日複数回投与することができる。
【0154】
好ましくは、1種以上の本化合物によって、実質的な毒性を引き起こすことなく治療または予防効果が得られる。標準的な製薬手順を用いて1種以上の本化合物の毒性を決定することができる。毒性と治療(または予防)効果との間の用量比は治療係数である。高い治療係数を示す化合物が好ましい。
【0155】
本明細書中の可変部分に関する任意の定義における化学基の列挙の記載は、列挙されている基の任意の単一の基または組み合わせとしてのその可変部分の定義を含む。本明細書中の可変部分に関する実施形態の記載は、任意の単一の実施形態として、あるいは任意の他の実施形態またはその部分との組み合わせでのその実施形態を含む。
【0156】
(農業用途)
本明細書中の化合物および組成物は、本明細書中の化合物を植物(例えば、種、苗、草、雑草、穀物)に接触させることを含む植物の表面にいる微生物の金属酵素活性を調整する方法で使用することができる。本化合物または組成物を、対象の植物、田畑または他の農業領域に投与する(例えば、接触させる、塗布する、噴霧する、霧吹きする、散布するなど)ことによって、本明細書中の化合物および組成物を使用して、植物、田畑または他の農業領域を治療することができる(例えば、除草剤、殺虫剤、成長調整剤など)。この投与は出芽前または後であってもよい。この投与は治療または予防措置のいずれかとしてであってもよい。
【0157】
一態様は、本明細書中の式のいずれかの化合物を植物に接触させることを含む、植物の中または表面における真菌性疾患または障害の治療または予防方法である。別の態様は、本明細書中の式のいずれかの化合物を植物に接触させることを含む、植物の中または表面における真菌増殖の治療または予防方法である。別の態様は、本明細書中の式のいずれかの化合物を植物に接触させることを含む、植物の中または表面にいる微生物の阻害方法である。
【0158】
本明細書中の化合物を含む組成物は、例えば、噴霧、霧吹き、散布、拡散または注入によって直接噴霧可能な水溶液、粉末、懸濁液、高濃縮の水性、油性もしくは他の懸濁液もしくは分散系、乳濁液、油分散系、ペースト、粉塵、拡散用材料または顆粒の形態で用いることができる。
【0159】
本明細書中の組成物は、本明細書中の式のいずれかの化合物と農学的に許容される担体とを含む。本組成物は、1種以上のさらなる農業用薬剤をさらに含むことができる。さらなる農業用薬剤は、農業用途で有用な任意の薬剤、例えば、殺菌剤(例えば、アゾール系またはストロビルリン系)、殺虫剤、生育剤などであってもよい。殺菌剤としては、例えば、エポキシコナゾール、テブコナゾール、フルキンコナゾール、フルトリアホール、メトコナゾール、ミクロブタニル、シプロコナゾール、プロチオコナゾール、プロピコナゾール、トリフロキシストロビン、ピラクロストロビン、オリサストロビン、フルオキサストロビンまたはアゾキシストロビンが挙げられる。
【0160】
水性使用形態は、水を添加することによって、乳濁液濃縮物、懸濁液、ペースト、水和剤または水分散性顆粒から調製することができる。乳濁液、ペーストまたは油分散系を調製するために、そのままの物質または油もしくは溶媒に溶解した物質を、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤または乳化剤によって水中で均質化することができる。但し、活性物質、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤または乳化剤と適当であれば溶媒または油とからなる濃縮物を調製することもでき、これらの濃縮物は水での希釈に適している。
【0161】
顆粒、例えば、コーティングされた顆粒、含浸された顆粒および均質な顆粒は、有効成分(例えば、本明細書中の化合物)を固体担体に結合させることによって調製することができる。固体担体は、シリカ、シリカゲル、ケイ酸塩、タルク、カオリン、石灰石、石灰、チョーク、陶土、黄土、粘土、ドロマイト、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、地盤合成材料などの鉱質土類、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素などの肥料および穀粉、樹皮粉、木粉および堅果殻粉などの植物性由来の製品、セルロース粉末または他の固体担体である。
【0162】
本明細書中の化合物を、植物、田畑または他の農業領域への投与に適した通常の錠剤、カプセル、固体、液体、乳濁液、スラリー、油、細粒または粉末として製剤化することができる。好ましい実施形態では、本製剤は、担体または希釈液中に1〜95%(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、25%、75%、80%、90%、95%)の本明細書中の化合物を含む。本明細書に詳述されている組成物は、金属酵素媒介性農業疾患または障害を制御する(例えば、調整する、阻害する)のに有効な量で、本明細書に詳述されている式の化合物と存在する場合さらなる農業用薬剤とを含む。
【0163】
一手法では、本明細書中の化合物は、カプセル剤(液体または粉末)として提供される。カプセル材料の使用に適している具体的な材料としては、シリカ、真珠岩、タルク、粘土、葉蝋石、珪藻土、ゼラチンおよびゲルなどの多孔性粒子もしくは基材、ポリマー(例えば、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステルなど)、ポリマー粒子またはセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。これらとしては、例えば、本明細書中に指定されている化合物を壁から放出する中空繊維、中空管または管、管の開口部から本化合物を放出する毛管、ポリマーマトリックスから本化合物を放出する異なる形状、例えば、小片、ブロック、錠剤、円盤状のポリマーブロック、不浸透性容器内に本化合物を保持しかつ測定浸透膜からそれを放出する膜システムおよび上記組み合わせが挙げられる。そのような分注用組成物の例は、ポリマー積層体、ポリ塩化ビニルペレットおよびマイクロキャピラリである。
【0164】
カプセル化プロセスは典型的に、化学的または機械的なのものに分類される。カプセル化のための化学的プロセスの例としては、複合コアセルベーション、ポリマー―ポリマー不相容性(polymer-polymer incompatibility)、液体媒体中での界面重合、原位置重合、液中乾燥、液体媒体中での熱およびイオンゲル化、液体媒体中での脱溶媒和、澱粉系化学的プロセス、シクロデキストリン包接およびリポソームの形成が挙げられるが、これらに限定されない。カプセル化のための機械的プロセスの例としては、噴霧乾燥、噴霧冷却、流動床、静電堆積、遠心押出、回転盤もしくは回転懸濁液分離、環状噴流カプセル化、液気もしくは固気界面での重合、溶媒蒸発、溶剤抽出浴内への圧力押出または噴霧が挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
また、マイクロカプセルも本明細書中の活性化合物の長期放出に適している。マイクロカプセルは、コーティングまたはシェルによって囲まれたコア材料すなわち有効成分を含有する小さな粒子である。マイクロカプセルのサイズは典型的に、1〜1000ミクロンの範囲で様々であり、1ミクロン未満のカプセルはナノカプセルに分類され、1000ミクロンを超えるカプセルはマクロカプセルに分類される。コア負荷量は通常、0.1〜98重量パーセントの範囲で様々である。マイクロカプセルは、様々な構造(連続コアシェル、多核または一体構造)を有することができ、かつ不規則または幾何学的な形状を有することができる。
【0166】
別の手法では、本明細書中の化合物は、油系送達システムとして提供される。油放出基材としては、植物油および/または鉱油が挙げられる。一実施形態では、上記基材は、本組成物を水に容易に分散させる界面活性剤を含有し、そのような界面活性剤としては、湿潤剤、乳化剤、分散剤などが挙げられる。
【0167】
本発明の化合物を乳濁液として提供することもできる。乳濁液製剤は、油中水型(w/o)または水中油型(o/w)として提供することができる。液滴直径は、ナノメートル規模(コロイド分散系)から数百ミクロンの範囲で異なってもよい。通常、様々な界面活性剤および増粘剤を本製剤に組み込んで、液滴直径を変更し、乳濁液を安定させ、かつ放出を変更する。
【0168】
あるいは、本発明の化合物は、固形錠剤として製剤化してもよく、油、タンパク質/炭水化物材料(好ましくは野菜系)、甘味料および金属酵素媒介性農業疾患または障害の予防または治療に有用な有効成分を含む(好ましくは、本質的にそれらからなる)。一実施形態では、本発明は、固形錠剤を提供し、油、タンパク質/炭水化物材料(好ましくは、野菜系)、甘味料、金属酵素媒介性農業疾患または障害の予防または治療に有用な有効成分(例えば、本明細書中の化合物、その組み合わせまたは誘導体)を含む(好ましくは、本質的にそれらからなる)。錠剤は典型的に、約4〜40重量%(例えば、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%)の油(例えば、トウモロコシ油、ヒマワリ油、落花生油、オリーブ油、ブドウ種子油、キリ油、カブ油、大豆油、綿実油、クルミ油、椰子油、ヒマシ油、ショクヨウカヤツリ油、ヘーゼルナッツ油、アボカド油、胡麻油、ハズ油、カカオ脂、亜麻仁油、ナタネ油およびカノーラ油などの植物油およびそれらの水素化誘導体、石油由来の油(例えば、パラフィンおよびワセリン)および他の水不混和性炭化水素(例えば、パラフィン)を含有する。錠剤は、約5〜40重量%(例えば、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%)の植物系タンパク質/炭水化物材料をさらに含有する。上記材料は、炭水化物部分(例えば、小麦、ライ麦、大麦、カラス麦、トウモロコシ、米、粟、モロコシ、粒餌、蕎麦、アルファルファ、ムラサキウマゴヤシ(mielga)、トウモロコシ粉、大豆粉、穀粉、小麦シャープス、小麦ふすま、トウモロコシグルテンミール、藻類粉、乾燥酵母、豆、米などの穀物に由来するもの)とタンパク質部分の両方を含む。
【0169】
有効成分の送達を支援するため、または錠剤に適当な構造を与えるために、様々な賦形剤および結合剤を任意に使用することができる。好ましい賦形剤および結合剤としては、無水ラクトース、微結晶性セルロース、コーンスターチ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0170】
本発明は、農業もしくは植物疾患または障害の治療または予防のためのキットを提供する。一実施形態では、本キットは、植物部位への送達に適した形態で有効量の本明細書中の化合物を含有する組成物を含む。いくつかの実施形態では、本キットは、式(I)もしくは(II)の化合物を含有する容器を含み、そのような容器は、箱、アンプル、瓶、バイアル、管、袋、小袋、ブリスターパックまたは当該技術分野で知られている他の好適な容器形態であってもよい。そのような容器は、化合物を保持するのに適したプラスチック、ガラス、貼合せ紙、金属箔または他の材料からできたものであってもよい。
【0171】
所望であれば、1種以上の本発明の化合物は、植物、田畑または他の農業領域にそれを投与するための説明書と共に提供される。上記説明書は一般に、金属酵素媒介性農業疾患または障害の治療または予防のための本組成物の使用に関する情報を含む。他の実施形態では、上記説明書は、本化合物の説明、金属酵素媒介性農業疾患または障害の治療または予防のための投与量スケジュールおよび投与、使用上の注意、警告、調査研究の説明および/または参考文献のうちの少なくとも1つを含む。上記説明書は、容器(存在する場合)の上に直接印刷されているか、容器に貼り付けられたラベルとして、あるいは容器の中に入れるか容器と共に提供される別個のシート、パンフレット、カードまたは折り畳み印刷物として存在してもよい。
【実施例】
【0172】
ここで、限定として解釈されるべきではない具体的な例を用いて本発明について実証する。
【0173】
(一般的な実験手順)
本明細書のスキーム中の構造の可変部分に関する定義は、本明細書に詳述されている式の中の対応する位置の可変部分の定義に相応している。
【0174】
2−テトラゾールの合成
【化4】

【0175】
以下に示す例示の合成(スキーム1)を用いて、2−置換テトラゾール標的物(III)の合成を達成してもよい。官能化されたハロ−およびアルコキシ−ナフタレン出発物質(例えば、A)から開始して、広範囲のRおよびR−置換ナフタレンを調製してもよい。
【化5】

【0176】
2,3−ジメトキシ−ナフタレンの塩化イソブチリル/三塩化アルミニウムによるフリーデル・クラフツアシル化によって、中間体Bを調製してもよい。このケトンを対応する第二級アルコールに還元した後に、塩化チオニルおよびテトラゾールで連続処理して、化合物3(1−テトラゾール副生成物に沿った微量の位置異性体として)を得る。化合物III(ここでは、R4またはR5はアリールまたはヘテロアリールである)のために、鈴木カップリング法[アリール−B(OH)またはヘテロアリール−B(OH)、酢酸パラジウム(II)触媒作用]によって、これらの基をBr−ナフタレン中間体(R4またはR5=Br)に付加してもよい。
【0177】
スキーム1
【化6】

【0178】
実施例1:2−(1−(6,7−ビス(ジフルオロメトキシ)ナフタレン−2−イル)−2−メチルプロピル)−2H−テトラゾール(1)
化合物A(40g、0.21mol)のCHCl(600mL)撹拌溶液に、−5℃で塩化イソブチリル(34mL、0.31mol)を添加した後、窒素雰囲気下で20分間にわたってAlCl(56.8g、0.42mol)を数回に分けて添加した。反応物を放置してゆっくりと室温まで温め、3時間撹拌し、反応混合物を氷冷水(200mL)に入れ、有機層を分離した。次いで、水層をCHCl(2×100mL)で抽出し、一緒にした有機抽出物を、5%NaHCO溶液(100mL)、水(100mL)、塩水(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥した。真空中での濾過および蒸発後、粗製材料をn−ヘキサンで洗浄して、化合物B(35g、0.13mol、63%)を灰色がかった白色の固体として得た。1H NMR (200 MHz, CDCl3):
δ8.34 (s, 1 H), 7.90 (dd, J = 8.6,1.8 Hz, 1 H), 7.73 (d, J = 8.6 Hz, 1 H), 7.26
(s, 1 H), 7.14 (s, 1 H), 4.03 (s, 6 H), 3.79-3.63 (m, 1 H), 1.27 (d, J = 7.0
Hz, 6H)。MS (ESI): m/z 259 [M+H]+
【0179】
化合物B(18g、69mmol)のCHCl(180mL)撹拌溶液に、−40℃でBBr(87.2g、348mmol)を滴下した。添加の完了後、−40℃でさらに1時間、室温で1時間撹拌し続けた。反応混合物を冷水に入れた後、水層をCHCl(2×200mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を、水(100mL)、塩水(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥した。真空中での溶媒の濾過および蒸発後、粗製材料をカラムクロマトグラフィ(SiO、100〜200メッシュ)で精製して、化合物C(9.0g、39mmol、56%)を褐色の固体として得た。1H NMR (200 MHz, CDCl3):
δ8.29 (s, 1 H), 7.88 (dd, J = 8.8, 1.6 Hz, 1 H), 7.68 (d, J = 8.6 Hz, 1 H),
7.36 (s, 1 H), 7.26 (s, 1 H), 5.88 (br s, 2 H), 3.79-3.63 (m, 1 H), 1.27 (d, J
= 6.8 Hz, 6 H)。
【0180】
化合物C(10.0g、0.043mol)のDMF(100mL)撹拌溶液に、2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸ナトリウム(42.6g、0.21mol)(エステルを1.0当量のNaOHのEtOH:HO(2:1)溶液で室温で16時間処理して、このナトリウム塩を調製した。次いで、溶媒を蒸発させ、残留物をトルエンと同時蒸留(3回)して、当該塩を得た)およびKCO(36g、0.26mol)を添加し、混合物を80〜90℃で48時間撹拌した。反応混合物を冷水に入れた後、水層をCHCl(3×100mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を、水(50mL)、塩水(50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥した。真空中での溶媒の濾過および蒸発後、粗製材料をカラムクロマトグラフィ(SiO、100〜200メッシュ)で精製して、化合物D(3.0g、0.009mol、21%)を固体として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ8.40 (s, 1 H), 8.05 (dd, J =
8.5, 1.5 Hz, 1 H), 7.86 (d, J = 9.0 Hz, 1 H), 7.79 (s, 1 H), 7.68 (s, 1 H),
6.67 (t, JF,H = 73 Hz, 1 H),
6.65 (t, JF,H = 73 Hz, 1 H), 3.72-3.65 (m, 1 H), 1.27 (d, J =
7.0 Hz, 6 H)。
【0181】
化合物D(0.65g、1.96mmol)のMeOH(10mL)撹拌溶液に、0℃でNaBH(0.15g、3.9mmol)を添加し、得られた混合物を0℃でさらに30分間撹拌した。反応混合物を氷冷水で失活させた後、水層をEtOAc(2×50mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、真空濃縮した。粗製材料をEtOAc/ヘキサン勾配を用いるカラムクロマトグラフィ(SiO、100〜200メッシュ)で精製して、化合物E(0.58g、1.74mmol、89%)を半固体として得た。1H NMR (200 MHz, CDCl3):
δ7.80-7.72 (m, 2 H), 7.64 (s, 2 H), 7.50 (dd, J = 8.4, 1.8 Hz, 1 H), 6.63 (t, JF,H
= 72 Hz, 2 H), 4.58-4.53 (m, 1 H), 2.10-2.00 (m, 1 H), 1.95 (d, J = 3.0 Hz, 1
H), 1.00 (d, J = 6.8 Hz, 3 H), 0.84 (d, J = 6.8 Hz, 3 H)。
【0182】
化合物E(0.8g、2.4mmol)のアセトニトリル(15mL)撹拌溶液に、0℃で塩化チオニル(0.27mL、3.61mmol)を添加し、得られた反応混合物を0℃でさらに30分間撹拌した。反応混合物を水(20mL)で失活させた後、水層をEtOAc(3×50mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を、5%NaHCO溶液(50mL)、水(50mL)、塩水(50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、真空濃縮して、化合物F(0.8g、2.28mol、95%)を固体として得た。1H NMR (200 MHz, CDCl3):
δ7.81-7.72 (m, 2 H), 7.65 (s, 2 H), 7.53 (dd, J = 8.6, 1.8 Hz, 1 H), 6.62 (t, JF,H
= 74 Hz, 2 H), 4.75 (d, J = 8.0 Hz, 1 H), 2.38-2.28 (m, 1 H), 1.14 (d, J = 6.4
Hz, 3 H), 0.87 (d, J = 6.8 Hz, 3 H)。
【0183】
化合物F(0.3g、0.85mmol)のDMF(5mL)撹拌溶液に、室温でKCO(0.47g、3.41mmol)および1H−テトラゾール(0.18g、2.56mmol)を添加した。反応混合物を90℃で36時間加熱した。反応混合物を水(50mL)で希釈し、EtOAc(2×50mL)で抽出し、一緒にした有機抽出物を、水(50mL)、塩水(50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥した。真空中での溶媒の濾過および蒸発後、粗製材料をカラムクロマトグラフィ(SiO、100〜200メッシュ)で精製して、化合物3(30mg、0.07mmol、9.0%)を固体として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ8.51 (s, 1 H), 7.94 (s, 1 H),
7.81 (d, J = 9.0 Hz, 1 H), 7.72 (dd, J = 8.5, 1.0 Hz, 1 H), 7.67-7.64 (m, 2 H),
(t, JF,H = 73 Hz, 2 H), 5.65 (d, J = 11.0 Hz, 1 H), 3.04-2.99 (m, 1
H), 0.91 (d, J = 6.5 Hz, 3 H), 0.87 (d, J = 6.5 Hz, 3 H)。MS (ESI): m/z 385 [M+H]+。HPLC:
94.4%。
【0184】
スキーム2
【化7】

【0185】
実施例2:2−(2−メチル−1−(6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ナフタレン−2−イル)プロピル)−2H−テトラゾール(2)
化合物G(1.0g、5.91mmol)のDMF(10mL)撹拌溶液に、室温でKCO(2.44g、17.75mmol)およびCFCHI(3.72g、17.75mmol)を添加した。反応混合物を60℃で16時間加熱した。反応混合物を水(25mL)で希釈した後、水層をEtOAc(3×50mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を、水(50mL)、塩水(50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥した。真空中での溶媒の濾過および蒸発後、粗製材料を、15%EtOAc/ヘキサンで溶出させるカラムクロマトグラフィ(SiO、100〜200メッシュ)で精製して、化合物H(0.47g、1.87mmol、32%)を淡黄色の固体として得た。1H NMR (200 MHz, CDCl3): δ8.18 (s, 1 H), 7.83 (t, J = 9.4
Hz, 2 H), 7.60 (dd, J = 8.6, 1.4 Hz,1 H), 7.32 (dd, J = 8.8, 2.6 Hz, 1 H), 7.18
(app s, 1 H), 4.50 (q, J = 8.0 Hz, 2 H)。MS (ESI): m/z
252.1 [M+H]+
【0186】
化合物H(0.1g、0.39mmol)のトルエン(2mL)撹拌溶液に、窒素雰囲気下、室温で、触媒量のCuBrを添加した。反応混合物を0℃まで冷却した後、イソプロピルマグネシウムブロミド(0.14g、0.99mmol、1Mのジエチルエーテル溶液)を反応混合物に滴下し、0℃でさらに1時間撹拌し続けた。反応混合物を飽和NHClで失活させ、水層を酢酸エチル(2×50mL)で抽出し、一緒にした有機抽出物を塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥して、真空濃縮した。粗製材料を、10%EtOAc/ヘキサンで溶出させるカラムクロマトグラフィ(SiO、100〜200メッシュ)で精製して、化合物I(70mg、0.26mmol、67%)を固体として得た。1H NMR (200 MHz, CDCl3):
δ8.42 (s, 1 H), 8.05 (dd, J = 8.6, 1.6 Hz, 1 H), 7.92 (d, J = 8.8 Hz, 1 H),
7.80 (d, J = 8.8 Hz, 1 H), 7.29 (d, J = 2.6 Hz, 1 H), 7.17 (app s, 1 H), 4.50
(q, J = 8.2 Hz, 2 H), 3.77-3.63 (m, 1 H), 1.28 (d, J = 7.0 Hz, 6 H)。MS (ESI): m/z 297 [M+H]+
【0187】
ケトンI(0.5g、1.68mmol)のMeOH(5mL)撹拌溶液に、不活性雰囲気下、0℃で、NaBH(0.24g、6.7mmol)を数回に分けて添加した。室温で3時間撹拌した後、反応混合物を水(25mL)で失活させ、EtOAc(2×50mL)で抽出した。一緒にした有機相を、水、塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥した。濾過後、溶媒を真空蒸発させて、粗製材料を得た。粗製材料をカラムクロマトグラフィ(SiO、100〜200メッシュ)で精製して、アルコールJ(0.45g、1.5mmol、89%)を濃いシロップとして得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3):
δ7.78 (d, J = 8.5 Hz, 1 H), 7.73-7.71 (m, 2 H), 7.47 (dd, J = 9.0, 2.0 Hz, 1
H), 7.22 (dd, J = 8.5, 2.0 Hz, 1 H), 7.15 (s, 1 H), 4.52-4.44 (m, 3 H),
2.07-2.05 (m, 1 H), 1.88 (s, 1 H), 1.04 (d, J = 6.5 Hz, 3 H), 0.83 (d, J = 6.5
Hz, 3 H)。MS
(ESI): m/z 299 [M++1]。
【0188】
1H−テトラゾール(1.75g、25.0mmol)のアセトニトリル(15mL)撹拌溶液に、−10℃でSOCl(0.49mL、6.68mmol)を滴下した。0℃で1時間撹拌した後、KCO(0.34g、2.5mmol)、次いで、化合物J(0.5g、1.67mmol)のアセトニトリル(3mL)溶液を、−10℃で反応混合物に添加した。添加の完了後、反応混合物を放置して室温に温め、さらに16時間撹拌し続けた。揮発性物質を真空中で蒸発させ、残留物を水(50mL)で希釈し、有機層を分離した。次いで、水層をEtOAc(3×50mL)で抽出し、一緒にした有機抽出物を、水(50mL)、塩水(50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥した。真空中での溶媒の濾過および蒸発後、粗製材料を、10%MeOH/DCMで溶出させるカラムクロマトグラフィ(SiO、100〜200メッシュ)で精製して、化合物2(40mg、0.11mmol、7.0%)を固体として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3):
δ8.50 (s, 1 H), 7.92 (s, 1 H), 7.80 (d, J = 9.0 Hz, 1 H), 7.56-7.68 (m, 2 H),
7.22 (dd, J = 9.0, 2.5 Hz, 1 H), 7.13 (s, 1 H), 5.64 (d, J = 11.0 Hz, 1 H),
4.47 (q, J = 8.0 Hz, 2 H), 3.04-2.99 (m, 1 H), 0.92 (d, J = 7.0 Hz, 3 H), 0.95
(d, J = 6.5 Hz, 3 H)。HPLC: 97.3%。
【0189】
スキーム3
【化8】

【0190】
実施例3:2−(1−(6,7−ジメトキシナフタレン−2−イル)−2−メチルプロピル)−2H−テトラゾール(3)
テトラゾール(0.32g、4.6mmol)の乾燥アセトニトリル(2mL)撹拌溶液に、不活性雰囲気下、10℃で、塩化チオニル(0.16mL、2.3mmol)のアセトニトリル(1mL)溶液を滴下し、得られた混合物を10℃で1時間撹拌した。次いで、KCO(0.23g、1.73mmol)を反応混合物に滴下した後、10℃で化合物K(0.3g、1.15mmol)のアセトニトリル(2mL)溶液を滴下した。添加の完了後、反応混合物を放置して室温にし、16時間撹拌した。揮発性物質を真空蒸発させ、得られた残留物を水(10mL)で希釈し、EtOAc(2×30mL)で抽出した。一緒にした有機相を塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、真空中で濾過および蒸発させた。粗製材料を、25%アセトン/ヘキサンで溶出させるカラムクロマトグラフィ(SiO、100〜200メッシュ)で精製して、化合物3(0.10g、0.32mmol、27.8%)を固体として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ8.62 (s, 1 H), 7.73-7.65 (m, 2
H), 7.38 (d, J = 9.0 Hz, 1 H), 7.10 (s, 2 H), 5.27 (d, J = 9.5 Hz, 1 H), 3.99
(s, 6 H), 2.97-2.92 (m, 1 H), 0.97-0.91 (m, 6 H)。HPLC:
98.8%。質量: m/z 243 [M+-CH2N4+1]。
【0191】
スキーム4
【化9】

【0192】
実施例4:2−(1−(6−(ジフルオロメトキシ)ナフタレン−2−イル)−2−メチルプロピル)−2H−テトラゾール(4)
化合物G(10.0g、0.05mol)のDMF(100mL)撹拌溶液に、不活性雰囲気下、室温で、KCO(48.9g、0.35mol)および2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(59g、0.29mol)を添加した。反応混合物を110℃まで徐々に加熱し、48時間撹拌し続けた。反応の進行をTLCで監視した。反応混合物を水(100mL)で希釈し、ジエチルエーテル(3×100mL)で抽出した。一緒にした有機相を、水(100mL)、塩水(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し真空中で濾過および濃縮した。粗製材料をカラムクロマトグラフィ(SiO、100〜200メッシュ)で精製して、化合物L(2.0g、0.009mol、15.5%)を灰色がかった白色の固体として得た。1H NMR (200 MHz, CDCl3):
δ8.23 (s, 1 H), 7.90 (t, J = 8.8 Hz, 2 H), 7.65 (dd, J = 8.6, 1.6 Hz, 1 H),
7.54 (app s, 1 H), 7.40 (dd, J = 9.2, 2.6 Hz, 1 H), 6.67 (t, JF,H =
73.0 Hz, 1 H)。MS (ESI): m/z 221 [M+H]+
【0193】
化合物L(3.0g、13.6mmol)のトルエン(30mL)撹拌溶液に、不活性雰囲気下、0℃で、CuBr(0.2g)、次いでイソプロピルマグネシウムブロミド(6.0g、41mmol)を滴下した。0℃でさらに1時間撹拌した後、反応混合物を飽和NHCl溶液で失活させ、DCM(2×100mL)で抽出した。一緒にした有機相を、水(100mL)、塩水(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し真空中で濾過および濃縮した。粗製材料をカラムクロマトグラフィ(SiO、100〜200メッシュ)で精製して、化合物M(2.5g、9.4mmol、69.25%)を半固体として得た。1H NMR (200 MHz, CDCl3):
δ8.46 (s, 1 H), 8.09-7.95 (m, 2 H), 7.85 (d, J = 8.8 Hz, 1 H), 7.52 (app s, 1
H), 7.35 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 1 H), 6.67 (t, JF,H = 73.4 Hz, 1 H),
3.77-3.64 (m, 1 H), 1.28 (d, J = 6.8 Hz, 6 H)。MS (ESI):
m/z 265 [M+H]+
【0194】
化合物M(0.3g、1.13mmol)のMeOH(2mL)撹拌溶液に、0℃でNaBH(0.08g、2.2mmol)を添加し、得られた混合物を0℃でさらに1時間撹拌した。反応混合物を氷冷水で失活させた後、水層をEtOAc(2×50mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、真空濃縮した。粗製材料を、EtOAc/ヘキサンの勾配を用いるカラムクロマトグラフィ(SiO、100〜200メッシュ)で精製して、化合物N(0.25g、0.93mmol、83%)を固体として得た。1H NMR (200 MHz, CDCl3):
δ7.85-7.76 (m, 3 H), 7.52-7.47 (m, 2 H), 7.30 (d, J = 2.4 Hz, 1 H), 6.62 (t, JF,H
= 73.8 Hz, 1 H), 4.55 (dd, J = 6.6, 2.4 Hz, 1 H), 2.11-2.01 (m, 1 H), 1.92 (app
s, 1 H), 1.02 (d, J = 6.8 Hz, 3 H), 0.83 (d, J = 6.8 Hz, 3 H)。MS
(ESI): m/z 268 [M+H]+
【0195】
化合物N(0.25g、0.93mmol)のアセトニトリル(5mL)撹拌溶液に、0℃で塩化チオニル(0.26g、2.18mmol)を添加し、得られた反応混合物を0℃さらに5時間撹拌した。反応混合物を水(20mL)で失活させた後、水層をEtOAc(2×25mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を、5%NaHCO溶液(25mL)、水(25mL)、塩水(25mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、真空濃縮して、化合物O(0.20g、粗製)を濃いシロップとして得た。粗製材料をさらに精製することなく次の工程で使用した。MS (ESI): m/z 286 [M+H]+
【0196】
化合物O(0.35g、1.22mmol)のDMF(5mL)撹拌溶液に、室温でKCO(0.5g、3.68mmol)および1H−テトラゾール(0.34g、4.88mmol)を添加した。反応混合物を90℃で16時間加熱した。反応混合物を水(50mL)で希釈し、EtOAc(2×50mL)で抽出し、一緒にした有機抽出物を、水(50mL)、塩水(50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥した。真空中での溶媒の濾過および蒸発後、粗製材料をカラムクロマトグラフィ(SiO、100〜200メッシュ)で精製して、化合物4(35mg、0.09mmol、9.0%)を灰色がかった白色の固体として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ8.50 (s, 1 H), 7.96 (s, 1 H),
7.85 (d, J = 9.0 Hz, 1 H), 7.80 (d, J = 9.0 Hz, 1 H), 7.40 (dd, J = 8.5, 1.5
Hz, 1 H), 7.49 (s, 1 H), 7.40 (dd, J = 9.0, 2.5 Hz, 1 H), 6.61 (t, JF,H
= 73.5 Hz, 1 H), 5.65 (d, J = 11 Hz, 1 H), 3.05-3.00 (m, 1 H), 0.92 (d, J = 7.0
Hz, 3 H), 0.87 (d, J = 6.5 Hz, 3 H)。MS (ESI): m/z 319
[M+H]+。HPLC: 93.9%。
【0197】
(+)−4に関する分析データ
1H NMR (500 MHz, CDCl3):
δ8.50 (s, 1 H), 7.96 (s, 1 H), 7.85 (d, J = 9.0 Hz, 1 H), 7.80 (d, J = 9.0 Hz,
1 H), 7.40 (dd, J = 8.5, 1.5 Hz, 1 H), 7.49 (s, 1 H), 7.40 (dd, J = 9.0, 2.5
Hz, 1 H), 6.61 (t, JF,H = 73.5 Hz, 1 H), 5.65 (d, J = 11 Hz, 1 H),
3.05-3.00 (m, 1 H), 0.92 (d, J = 7.0 Hz, 3 H), 0.87 (d, J = 6.5 Hz, 3 H)。HPLC: 99.2%。
キラルHPLC:保持時間=10.2分[カラム:Chiralpak IC、250×4.6mm、5u、移動相:A)n−ヘキサン、B)IPA、定組成:A:B(90:10)、流量:1.00mL/分、希釈液:EtOH:ヘキサン(20:80)]。
旋光度[α]:38.2°(c=0.5w/v%のMeOH溶液)。
【0198】
実施例5:金属酵素活性
A.CYP17の阻害
以下の手順に従って、CYP17活性をアッセイした。DMSO:ACN(50:50のv/v)での連続希釈によって、各試験化合物およびイソ酵素阻害剤(ケトコナゾール)の溶液を、2700、540、90、18、3、0.6および0.1μMの濃度で別々に調製した。次いで、個々の試験化合物およびイソ酵素阻害剤溶液を、135、27、4.5、0.9、0.15、0.03および0.005μMの濃度まで、脱イオン水(50:950v/v)で20倍に希釈した。最終反応混合物中の試験化合物または阻害剤混合物に起因する有機溶媒の割合は1%である。貯蔵したラット睾丸ミクロソーム懸濁液(20mg/ml)をリン酸緩衝液で希釈して、1.25mg/mlの懸濁液を得た。NADPH溶液を、2.5倍の濃度のリン酸緩衝液で調製した。基質の原液を、DMSO:MeCN(50:50v/v)で調製し、混合し、リン酸緩衝液で希釈して、5μMの基質を含有する単一の溶液を得た。最終反応混合物中の基質混合物に起因する有機溶媒の割合は、1%である。基質溶液およびミクロソーム懸濁液を、1:1の体積比で一緒にし、混合し、PCRプレートの反応ウェルに分注した。各濃度の個々の試験化合物または阻害剤溶液をウェルに添加し、繰り返しの吸引/分注サイクルによって混合した。活性制御のために、試験化合物溶液の代わりに空試験化合物希釈液を添加した。反応混合物を放置して、37℃で約2分間平衡させた後、NADPH溶液を添加して、反応を開始させ、次いで、反応混合物をピペットで混合した。ここに開示されている主題化合物は、表1に示す範囲のIC50を呈する。
【0199】
実施例6:金属酵素選択性
A.肝臓チトクロームP450酵素の阻害
各試験化合物の溶液を、DMSO:MeCN(50:50v/v)での連続希釈によって、20000、6000、2000、600、200および60μMの濃度で別々に調製した。次いで、個々の試験化合物溶液を、1000、300、100、30、10および3μMの濃度まで、DMSO:MeCN:脱イオン水(5:5:180v/v/v)で20倍に希釈した。イソ酵素阻害剤(それぞれ、イソ酵素2C9、2C19および3A4の具体的な阻害剤としてのスルファフェナゾール、トラニルシプロミンおよびケトコナゾール)の混合物を、DMSO:ACN(50:50v/v)での連続希釈によって、6000、2000、600、200、60、20、6および2μMの濃度の各阻害剤を含有するように調製した。次いで、混合阻害剤溶液を、300、100、30、10、3、1、0.3および0.1のμMの濃度まで、DMSO:MeCN:脱イオン水(5:5:180v/v/v)で20倍に希釈した。最終反応混合物中の試験化合物または阻害剤混合物に起因する有機溶媒の割合は、2%v/vであった。
【0200】
貯蔵したヒトの肝ミクロソーム懸濁液(20mg/ml)を、リン酸緩衝液で希釈して、5mg/mlの懸濁液を得た。NADPH溶液を、5mMの濃度のリン酸緩衝液で調製した。各基質の別々の原液を、DMSO:MeCN(50:50v/v)で調製し、混合し、リン酸緩衝液で希釈して、その実験的に決定されたK濃度の5倍の濃度の各基質を含有する単一の溶液を得た。最終反応混合物中の基質混合物に起因する有機溶媒の割合は、1%v/vであった。
【0201】
基質溶液およびミクロソーム懸濁液を、1:1の体積比で一緒にし、混合し、PCRプレートの反応ウェルに分注した。各濃度の個々の試験化合物または一緒にした阻害剤溶液をウェルに添加し、繰り返しの吸引/分注サイクルによって混合した。活性制御のために、試験化合物溶液の代わりに、ブランクリン酸緩衝液を添加した。反応混合物を放置して、37℃で約2分間平衡させた後、NADPH溶液を添加して、反応を開始させ、次いで、反応混合物をピペットで混合した。NADPHの添加から10分後に、反応混合物を冷たいアセトニトリルで失活させた。試料を、約1分間の回転振盪によって混合し、2900RCFで10分間遠心分離した。上澄みの一部を、正イオンモードのエレクトロスプレーイオン化トリプル四重極質量分析による検出と共に勾配逆相HPLCで分析した。
【0202】
データをS字状用量反応曲線に当てはめ、各試験化合物の阻害能力を、そのIC50値として決定した。
【表1】

【0203】
(参照による組み込み)
本出願の全体にわたって引用されている全ての参考文献(文献、取得済特許、公開特許出願および同時係属中の特許出願を含む)の内容全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0204】
(均等物)
当業者であれば、本明細書に記載されている本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を知っているか、日常の実験のみを用いて確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)もしくは(II):
【化1】

の化合物またはその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグ
(式中、
各RおよびRは独立して、任意に置換されたアリール、任意に置換されたナフチル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたヘテロアリールアルキルまたは任意に置換されたヘテロアリール−(ジ)フルオロアルキルであり、
は独立して、任意にH、置換されたアルキルまたは置換されたシクロアルキルであり、
本化合物は以下の化合物ではない)
【化2】





およびその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物。
【請求項2】
はHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は任意に置換されたアルキルであり、RはHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
は任意に置換されたアリールであり、Rはアルキルであり、RはHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
は任意に置換されたヘテロアリールであり、Rはアルキルであり、RはHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
は置換されたアリールであり、Rはアルキルであり、RはHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
は任意に置換されたナフチルであり、Rはアルキルであり、RはHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
は置換されたナフチルであり、Rはアルキルであり、RはHである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
は、アルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ハロ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはヘテロアリールから独立して選択された1、2、3または4つの置換基で置換されたナフチルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
式(III)の構造:
【化3】

(式中、XはCHまたはNであり、YはCHまたはNであり、RおよびRは独立して、H、ハロゲン、アルコキシ、1〜5個のフッ素を含むフルオロアルコキシ、シアノ、カルボキサミド、任意に置換されたアリールまたは任意に置換されたヘテロアリールである)を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
X=CHおよびY=CHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
X=CHおよびY=Nである、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
X=NおよびY=CHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
2−(1−(6,7−ビス(ジフルオロメトキシ)ナフタレン−2−イル)−2−メチルプロピル)−2H−テトラゾール(1)、
2−(2−メチル−1−(6−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ナフタレン−2−イル)プロピル)−2H−テトラゾール(2)、
2−(1−(6,7−ジメトキシナフタレン−2−イル)−2−メチルプロピル)−2H−テトラゾール(3)、
2−(1−(6−(ジフルオロメトキシ)ナフタレン−2−イル)−2−メチルプロピル)−2H−テトラゾール(4)、
またはそれらの塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物は、金属に対する1つ以上の以下の種類の化学相互作用もしくは結合:シグマ結合、共有結合、配位共有結合、イオン結合、π結合、δ結合または逆結合相互作用の形成によって金属酵素との親和性を達成する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
前記化合物は金属に結合する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
前記化合物は、鉄、亜鉛、ヘム鉄、マンガン、マグネシウム、硫化鉄クラスタ、ニッケル、モリブデンまたは銅に結合する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
前記化合物は、チトクロームP450ファミリ、ヒストン脱アセチル化酵素、マトリックスメタロプロテイナーゼ、ホスホジエステラーゼ、シクロオキシゲナーゼ、炭酸脱水酵素および一酸化窒素合成酵素から選択される酵素クラスを阻害する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
前記化合物は、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ、5−リポキシゲナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アルコール脱水素酵素、アミノペプチダーゼN、アンギオテンシン変換酵素、アロマターゼ(CYP19)、カルシニューリン、カルバモイルリン酸合成酵素、炭酸脱水酵素ファミリ、カテコール−O−メチル転移酵素、シクロオキシゲナーゼファミリ、ジヒドロピリミジン脱水素酵素−1、DNAポリメラーゼ、ファルネシル二リン酸合成酵素、ファルネシル転移酵素、フマル酸還元酵素、GABAアミノ基転移酵素、HIF−プロリルヒドロキシラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素ファミリ、HIVインテグラーゼ、HIV−1逆転写酵素、イソロイシンtRNAリガーゼ、ラノステロールデメチラーゼ(CYP51)、マトリックスメタロプロテアーゼファミリ、メチオニンアミノペプチダーゼ、中性エンドペプチダーゼ、一酸化窒素合成酵素ファミリ、ホスホジエステラーゼIII、ホスホジエステラーゼIV、ホスホジエステラーゼV、ピルビン酸フェレドキシン酸化還元酵素、腎臓ペプチダーゼ、リボヌクレオシド二リン酸還元酵素、トロンボキサン合成酵素(CYP5a)、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ウレアーゼおよびキサンチン酸化酵素から選択される酵素を阻害する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
前記化合物は、1−デオキシ−d−キシルロース−5−リン酸レダクトイソメラーゼ(DXR)、17−αヒドロキシラーゼ(CYP17)、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)、アミノペプチダーゼP、炭疽菌致死因子、アルギナーゼ、β−ラクタマーゼ、チトクロームP450 2A6、D−Ala−D−Alaリガーゼ、ドーパミン−β−ヒドロキシラーゼ、エンドセリン変換酵素−1、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII、グルタミニルシクラーゼ、グリオキサラーゼ、ヘムオキシゲナーゼ、HPV/HSV E1ヘリカーゼ、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ、ロイコトリエンA4加水分解酵素、メチオニンアミノペプチダーゼ2、ペプチド脱ホルミル酵素、ホスホジエステラーゼVII、レラキサーゼ、レチノイン酸ヒドロキシラーゼ(CYP26)、TNF−α変換酵素(TACE)、UDP−(3−O−(R−3−ヒドロキシミリストイル))−N−アセチルグルコサミン脱アセチル化酵素(LpxC)、血管接着タンパク質−1(VAP−1)およびビタミンDヒドロキシラーゼ(CYP24)から選択される酵素を阻害する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
前記化合物は、金属に結合するものとして特定されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
前記化合物は、鉄、亜鉛、ヘム鉄、マンガン、マグネシウム、硫化鉄クラスタ、ニッケル、モリブデンまたは銅に結合するものとして特定されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
前記化合物は、チトクロームP450ファミリ、ヒストン脱アセチル化酵素、マトリックスメタロプロテイナーゼ、ホスホジエステラーゼ、シクロオキシゲナーゼ、炭酸脱水酵素および一酸化窒素合成酵素から選択される酵素クラスを阻害するものとして特定されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
前記化合物は、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ、5−リポキシゲナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アルコール脱水素酵素、アミノペプチダーゼN、アンギオテンシン変換酵素、アロマターゼ(CYP19)、カルシニューリン、カルバモイルリン酸合成酵素、炭酸脱水酵素ファミリ、カテコール−O−メチル転移酵素、シクロオキシゲナーゼファミリ、ジヒドロピリミジン脱水素酵素−1、DNAポリメラーゼ、ファルネシル二リン酸合成酵素、ファルネシル転移酵素、フマル酸還元酵素、GABAアミノ基転移酵素、HIF−プロリルヒドロキシラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素ファミリ、HIVインテグラーゼ、HIV−1逆転写酵素、イソロイシンtRNAリガーゼ、ラノステロールデメチラーゼ(CYP51)、マトリックスメタロプロテアーゼファミリ、メチオニンアミノペプチダーゼ、中性エンドペプチダーゼ、一酸化窒素合成酵素ファミリ、ホスホジエステラーゼIII、ホスホジエステラーゼIV、ホスホジエステラーゼV、ピルビン酸フェレドキシン酸化還元酵素、腎臓ペプチダーゼ、リボヌクレオシド二リン酸還元酵素、トロンボキサン合成酵素(CYP5a)、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ウレアーゼおよびキサンチン酸化酵素から選択される酵素を阻害するものとして特定されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
前記化合物は、CYP17阻害剤として特定されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
前記化合物は、標的酵素に対する活性範囲と標的外酵素に対する活性範囲とを有するものとして特定されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項27】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物を金属酵素に接触させることを含む、金属酵素活性の阻害方法。
【請求項28】
前記接触は生体内接触である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記接触は生体外接触である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記金属酵素は、鉄、亜鉛、ヘム鉄、マンガン、マグネシウム、硫化鉄クラスタ、ニッケル、モリブデンまたは銅である金属原子を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記金属酵素は、チトクロームP450ファミリ、ヒストン脱アセチル化酵素、マトリックスメタロプロテイナーゼ、ホスホジエステラーゼ、シクロオキシゲナーゼ、炭酸脱水酵素および一酸化窒素合成酵素から選択される酵素クラスの一員であり、前記金属酵素は、アロマターゼ(CYP19)、シクロオキシゲナーゼ、ラノステロールデメチラーゼ(CYP51)、一酸化窒素合成酵素、トロンボキサン合成酵素(CYP5a)、甲状腺ペルオキシダーゼ、17−αヒドロキシラーゼ/17,20−リアーゼ(CYP17)、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)、チトクロームP450 2A6、ヘムオキシゲナーゼ、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ、レチノイン酸ヒドロキシラーゼ(CYP26)またはビタミンDヒドロキシラーゼ(CYP24)である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記金属酵素は17−αヒドロキシラーゼ/17,20−リアーゼ(CYP17)である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記金属酵素は、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ、5−リポキシゲナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アルコール脱水素酵素、アミノペプチダーゼN、アンギオテンシン変換酵素、アロマターゼ(CYP19)、カルシニューリン、カルバモイルリン酸合成酵素、炭酸脱水酵素ファミリ、カテコール−O−メチル転移酵素、シクロオキシゲナーゼファミリ、ジヒドロピリミジン脱水素酵素−1、DNAポリメラーゼ、ファルネシル二リン酸合成酵素、ファルネシル転移酵素、フマル酸還元酵素、GABAアミノ基転移酵素、HIF−プロリルヒドロキシラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素ファミリ、HIVインテグラーゼ、HIV−1逆転写酵素、イソロイシンtRNAリガーゼ、ラノステロールデメチラーゼ(CYP51)、マトリックスメタロプロテアーゼファミリ、メチオニンアミノペプチダーゼ、中性エンドペプチダーゼ、一酸化窒素合成酵素ファミリ、ホスホジエステラーゼIII、ホスホジエステラーゼIV、ホスホジエステラーゼV、ピルビン酸フェレドキシン酸化還元酵素、腎臓ペプチダーゼ、リボヌクレオシド二リン酸還元酵素、トロンボキサン合成酵素(CYP5a)、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ウレアーゼおよびキサンチン酸化酵素である、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記金属酵素は、1−デオキシ−d−キシルロース−5−リン酸レダクトイソメラーゼ(DXR)、17−αヒドロキシラーゼ(CYP17)、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)、アミノペプチダーゼP、炭疽菌致死因子、アルギナーゼ、β−ラクタマーゼ、チトクロームP450 2A6、D−Ala−D−Alaリガーゼ、ドーパミン−β−ヒドロキシラーゼ、エンドセリン変換酵素−1、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII、グルタミニルシクラーゼ、グリオキサラーゼ、ヘムオキシゲナーゼ、HPV/HSV E1ヘリカーゼ、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ、ロイコトリエンA4加水分解酵素、メチオニンアミノペプチダーゼ2、ペプチド脱ホルミル酵素、ホスホジエステラーゼVII、レラキサーゼ、レチノイン酸ヒドロキシラーゼ(CYP26)、TNF−α変換酵素(TACE)、UDP−(3−O−(R−3−ヒドロキシミリストイル))−N−アセチルグルコサミン脱アセチル化酵素(LpxC)、血管接着タンパク質−1(VAP−1)またはビタミンDヒドロキシラーゼ(CYP24)である、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記化合物を対象に投与することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
式(I)の前記化合物は、CYP17に対してIC50<0.46uMであり、CYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4に対してIC50>4.8μMである活性範囲を有するものとして特定されている、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
金属酵素活性を調整するのに十分な量および条件下で対象を請求項1に記載の化合物に接触させることを含む、対象における金属酵素活性の調整方法。
【請求項38】
対象に有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、金属酵素に関連する障害または疾患に罹患しているか罹患しやすい対象の治療方法。
【請求項39】
対象が金属酵素に関連する障害または疾患の治療を必要としているものとして特定され、それを必要としている前記対象が前記疾患に対して治療されるように、前記対象に有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、金属酵素に関連する障害または疾患に罹患しているか罹患しやすい対象の治療方法。
【請求項40】
対象が金属酵素媒介性障害または疾患の治療を必要としているものとして特定され、それを必要としている前記対象における金属酵素活性が調整される(例えば、下方制御される、阻害される)ように、前記対象に有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、金属酵素媒介性障害または疾患に罹患しているか罹患しやすい対象の治療方法。
【請求項41】
前記疾患または障害は、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ、5−リポキシゲナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アルコール脱水素酵素、アミノペプチダーゼN、アンギオテンシン変換酵素、アロマターゼ(CYP19)、カルシニューリン、カルバモイルリン酸合成酵素、炭酸脱水酵素ファミリ、カテコール−O−メチル転移酵素、シクロオキシゲナーゼファミリ、ジヒドロピリミジン脱水素酵素−1、DNAポリメラーゼ、ファルネシル二リン酸合成酵素、ファルネシル転移酵素、フマル酸還元酵素、GABAアミノ基転移酵素、HIF−プロリルヒドロキシラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素ファミリ、HIVインテグラーゼ、HIV−1逆転写酵素、イソロイシンtRNAリガーゼ、ラノステロールデメチラーゼ(CYP51)、マトリックスメタロプロテアーゼファミリ、メチオニンアミノペプチダーゼ、中性エンドペプチダーゼ、一酸化窒素合成酵素ファミリ、ホスホジエステラーゼIII、ホスホジエステラーゼIV、ホスホジエステラーゼV、ピルビン酸フェレドキシン酸化還元酵素、腎臓ペプチダーゼ、リボヌクレオシド二リン酸還元酵素、トロンボキサン合成酵素(CYP5a)、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ウレアーゼまたはキサンチン酸化酵素のいずれかによって媒介される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記疾患または障害は、1−デオキシ−d−キシルロース−5−リン酸レダクトイソメラーゼ(DXR)、17−αヒドロキシラーゼ(CYP17)、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)、アミノペプチダーゼP、炭疽菌致死因子、アルギナーゼ、β−ラクタマーゼ、チトクロームP450 2A6、D−Ala−D−Alaリガーゼ、ドーパミン−β−ヒドロキシラーゼ、エンドセリン変換酵素−1、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII、グルタミニルシクラーゼ、グリオキサラーゼ、ヘムオキシゲナーゼ、HPV/HSV E1ヘリカーゼ、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ、ロイコトリエンA4加水分解酵素、メチオニンアミノペプチダーゼ2、ペプチド脱ホルミル酵素、ホスホジエステラーゼVII、レラキサーゼ、レチノイン酸ヒドロキシラーゼ(CYP26)、TNF−α変換酵素(TACE)、UDP−(3−O−(R−3−ヒドロキシミリストイル))−N−アセチルグルコサミン脱アセチル化酵素(LpxC)、血管接着タンパク質−1(VAP−1)またはビタミンDヒドロキシラーゼ(CYP24)のいずれかによって媒介される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記疾患または障害は、癌、心血管疾患、炎症性疾患、感染症、代謝性疾患、眼科疾患、中枢神経系(CNS)疾患、泌尿器疾患または胃腸疾患である、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記疾患または障害は、前立腺癌、乳癌、アンドロゲン依存性癌、エストロゲン依存性癌、副腎過形成症、前立腺肥大、男性化症、多毛症、男性型脱毛症、思春期早発症、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮癌、乳腺症、多嚢胞性卵巣症候群、不妊症、座瘡、機能性卵巣アンドロゲン過剰、慢性無排卵を伴う高アンドロゲン症、高アンドロゲン症、早発性副腎皮質徴候発現、副腎もしくはアンドロゲン過剰、子宮筋腫、炎症性腸疾患、乾癬、全身性真菌感染症、爪真菌症または心血管疾患である、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
請求項1に記載の化合物と農学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項46】
請求項1に記載の化合物を植物に接触させることを含む、植物の中または表面における金属酵素媒介性疾患または障害の治療または予防方法。
【請求項47】
請求項1〜26のいずれかに記載の化合物を植物に接触させることを含む、植物の表面にいる微生物における金属酵素活性の阻害方法。
【請求項48】
請求項1〜26のいずれかに記載の化合物を植物に接触させることを含む、植物の中または表面における真菌性疾患または障害の治療または予防方法。
【請求項49】
請求項1〜26のいずれかに記載の化合物を植物に接触させることを含む、植物の中または表面における真菌増殖の治療または予防方法。
【請求項50】
請求項1〜26のいずれかに記載の化合物を植物に接触させることを含む、植物の中または表面にいる微生物の阻害方法。
【請求項51】
エポキシコナゾール、テブコナゾール、フルキンコナゾール、フルトリアホール、メトコナゾール、ミクロブタニル、シプロコナゾール、プロチオコナゾールおよびプロピコナゾールから選択されるアゾール殺菌剤をさらに含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項52】
トリフロキシストロビン、ピラクロストロビン、オリサストロビン、フルオキサストロビンおよびアゾキシストロビン群からのストロビルリン殺菌剤をさらに含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項53】
請求項1に記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項54】
さらなる治療薬をさらに含む、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
抗癌剤、抗真菌薬、心血管作動薬、抗炎症薬、化学療法剤、抗血管新生薬、細胞毒性薬、抗細胞増殖薬、代謝性疾患薬、眼科疾患薬、中枢神経系(CNS)疾患薬、泌尿器疾患薬または胃腸疾患薬であるさらなる治療薬をさらに含む、請求項53に記載の組成物。

【公表番号】特表2013−516418(P2013−516418A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547272(P2012−547272)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/062385
【国際公開番号】WO2011/082245
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512168803)ヴィアメット ファーマスーティカルズ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】