説明

金属酸化物シェルを有するナノメートルコアシェル粒子の形成

(a)高剪断力下で、コア材料を含む油相を水相中に乳化させることにより、水中油エマルジョンを調製するステップであって、油相及び水相の一方又は両方がゾルゲル前駆体を含んでいるステップ、(b)(a)で得られたエマルジョンに高圧均質化を行って、ナノエマルジョンを得るステップ、及び(c)ゾルゲル前駆体を加水分解し、及び重縮合するための条件を適用して、コア材料を封入した金属酸化物シェルを有するナノカプセルを得るステップであって、前記ナノカプセルは、直径が、d10=10〜80nm、d50=30〜200nm、及びd90=70〜500nmである粒度分布を有しているステップとを含む、コアシェル構造を有するナノカプセルを調製するための方法。本発明は、上記粒度分布を有するナノカプセル、及びこのナノカプセルを含む組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノカプセル及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゾルゲル法によって調製されたシェルからなるマイクロカプセルは、様々な文献に記載されている。
【0003】
米国特許第6303149号、第6238650号、第6468509号、第6436375号、米国特許出願公開第2005037087号、第2002064541号と、国際公開WO00/09652、WO00/72806、WO01/80823、WO03/03497、WO03/039510、WO00/71084、WO05/009604、及びWO04/81222は、ゾルゲルマイクロカプセル及びその調製方法を開示する。EP0934773及び米国特許第6337089号は、コア材料及びオルガノポリシロキサンで作製されたカプセル壁を含有するマイクロカプセルと、その製造について教示する。EP0941761及び米国特許第6251313号は、オルガノポリシロキサンのシェル壁を有するマイクロカプセルの調製についても教示する。
【0004】
米国特許第4931362号は、活性の水不混和性成分を含有した内部水不混和性液相を有するマイクロカプセル又はマイクロマトリックス体を形成する方法について記述する。カプセル形成又はマトリックス形成モノマーとして、有機ケイ素化合物が使用される。
【0005】
ゾルゲル法によって調製されたマイクロカプセルは、英国特許第2416524号、米国特許第6855335号、WO03/066209にも開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのようなマイクロカプセルは、活性成分と隣接環境との間の化学接触が最小限に抑えられるべき様々な適用例、例えば、化粧品用着色剤、食品着色剤、日焼け止め組成物、又は活性成分の送達が有益であるその他の適用例(例えば、皮膚への局所送達)で、使用されてきた。しかし、非経口投与、経口投与、繊維工業、などのある適用例では、不活性で製造が単純化され、様々な担体に容易に組み込むことができ、意図される用途に応じてそこから活性成分を単離し且つ/又は放出することが可能であり、さらに貯蔵中は物理的に安定で(例えば、凝集塊を形成せず、好ましくは界面活性剤を実質的に含まない組成物中であっても凝集塊を形成しない)、それによって製剤の長期使用がもたらされる、狭いサイズ分布を特に有するナノカプセルを有することが、非常に有利になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
(a)高剪断力下で、コア材料を含む油相を水相中に乳化させることにより、水中油エマルジョンを調製するステップであって、油相及び水相の一方又は両方がゾルゲル前駆体を含んでいるステップ、
(b)(a)で得られたエマルジョンに高圧均質化を行って、ナノエマルジョンを得るステップ、及び
(c)ゾルゲル前駆体を加水分解し、及び重縮合するための条件を適用して、コア材料を封入した金属酸化物シェルを有するナノカプセルを得るステップであって、該ナノカプセルは、直径が、d10=10〜80nm、d50=30〜200nm、及びd90=70〜500nmである粒度分布を有しているステップと
を含む、コアシェル構造を有するナノカプセルを調製するための方法が提供される。
【0008】
本発明の別の態様によれば、本発明で記述される方法によって得られた生成物が、提供される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、ナノカプセルシェル内に封入されたコア材料を有するナノカプセルが提供され、このナノカプセルシェルは、少なくとも1種の金属酸化物を含み、ナノカプセルは、直径が、d10=10〜80nm、d50=30〜200nm、d90=70〜500nmである粒度分布を有する。
【0010】
本発明の別の態様によれば、本発明に記述されるナノカプセル及び担体を含む、組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1(図1A)及び実施例2(図1B)によって得られた、動的光散乱により測定されたナノカプセルの粒度分布を示す図である。
【図2】透過型電子顕微鏡(TEM)によって分析された、実施例2により得られたナノカプセルを示す図である。図2aは、得られた粒子がナノメートル範囲にあることを示し、図2bは、明らかなコアシェル構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、狭い粒度分布によって特徴付けられる、金属酸化物シェルを有するナノカプセルを、ゾルゲル法によって調製することが可能であるという知見に基づく。そのようなナノカプセルは、ナノスケールサイズの狭いサイズ分布が、例えば繊維への組込み(例えば、織物に使用される)、マトリックス中への分散(ポリオレフィンマトリックスのUV安定化剤)、化粧品、及び医薬品適用例(例えば、非経口投与)などに有益なものである適用例において、有利である。得られたナノカプセルは、貯蔵中(界面活性剤を含まない水性媒体中で)、物理的に安定であることが見出され、凝集しなかった。
【0013】
本発明は、
(a)高剪断力下で、コア材料を含む油相を水相中に乳化させることにより、水中油エマルジョンを調製するステップであって、油相及び水相の一方又は両方がゾルゲル前駆体を含んでいるステップ、
(b)(a)で得られたエマルジョンを高圧均質化して、ナノエマルジョンを得るステップ、及び
(c)ゾルゲル前駆体を加水分解し、及び重縮合するための条件を適用して、コア材料を封入した金属酸化物シェルを有するナノカプセルを得るステップであって、該ナノカプセルは、直径が、d10=10〜80nm、d50=30〜200nm、及びd90=70〜500nmである粒度分布を有しているステップと
を含む、コアシェル構造を有するナノカプセルを調製するための方法に関する。
【0014】
ゾルゲル法によって調製され、狭い粒度分布を有し、さらに高剪断力及び高圧均質化を利用した方法によって物理的に安定な(例えば、凝集塊を形成しない)、ナノカプセルを得ることが可能であることが見出された。
【0015】
本明細書で使用される「コア材料」という用語は、任意選択で活性成分を含んでいるナノカプセルの内側部分(コア)を構成する材料を指す。コア材料は、ナノカプセルのシェルによって取り囲まれる。この用語は、コア内に存在する任意の材料、例えば、活性成分と液体担体などの賦形剤との両方、又は活性成分が存在しない場合には賦形剤を指す。この用語は、ナノカプセルのコアをその後構成することになる、本明細書に記述された方法で使用されるエマルジョンの油相に組み込まれた材料を定義するのにも、使用されることになる。
【0016】
コア材料は、賦形剤として、液体疎水性コア材料、例えば油を含んでよい。油は、化粧品として許容することができ(意図される適用例に応じて)、例えば、アルカン、アルケン、グリセリド又はトリグリセリド、脂肪アルコール、脂肪酸及び脂肪酸エステル、例えばマレイン酸ジカプリリル、カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、パルミチン酸オクチル、C12〜C15アルキルベンゾエート、マレイン酸ジオクチル、リンゴ酸ジオクチル、プロピレングリコールジカプリレート、プロピレングリコールジカプレート、アジピン酸ジイソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ラノリン、天然又は合成油及びワックス、及びこれらの混合物でよい。ナノカプセルの意図される用途、活性成分の性質などに応じて、その他の賦形剤を使用してよいことが理解される。
【0017】
本明細書で使用される「高剪断力」という用語は、典型的にはd50=1〜20μmの中央粒(液滴)度を有するエマルジョンを得るのに通常は不混和性と考えられる、1つの相(油相)を主要連続相(水相)中に移送するために、混合器又は分散器によって加えられたエネルギーを意味する。高エネルギー分散プロセスは、高剪断混合によって、又は高エネルギーミリングによって、実施することができる。この相の移送は、通常は、電気モータ及び回転プロペラ又は高速ロータなどの高速分散ユニットを通した、エネルギーの入力によって実現される。好ましくは高速分散ユニットは、0.1〜40m/秒の範囲、より好ましくは2〜8m/秒の範囲、さらにより好ましくは5〜8m/秒の範囲の剪断速度で、典型的には分散凝集PT−DA 6045/6を使用して、且つ高剪断ホモジナイザ、例えばPolytron PT6100、Kinematicaを利用して、作動する。粒度は、エマルジョンの調製に使用される油のタイプにも依存することが、理解される。
【0018】
本明細書で使用される「高圧均質化」という用語は、加工されたエマルジョンに放出される、高濃度のエネルギーの生成を指す。この高圧(エネルギー)は、均質なナノ液滴サイズ分布をもたらすキャビテーション、乱流、剪断、及び衝撃などの、いくつかの流体力学的作用をもたらす。このプロセスは、弁(均質化弁)を通して又はミリングセルによって、典型的には1000〜2000バールの範囲、好ましくは1300〜1700バールの範囲の圧力を加えながら、実施してもよい。高圧ホモジナイザの例は、マイクロフルイダイザである。
【0019】
したがって、例えば本発明の方法において、エマルジョンの均質化は、分散凝集PT−DA 6045/6を備えた高剪断ホモジナイザ(Polytron PT 6100 Kinematica)によって、1000〜4000rpm(好ましくは3000rpm)で約1〜10分間(好ましくは約5分間)、実施することができる。次いで分散体を、高圧ホモジナイザ(例えば、M−110Yマイクロフルイダイザプロセッサ(Microfluidics))で約5〜30分間(好ましくは約10分間)均質化する。
【0020】
本明細書で使用される、d10、d50、及びd90という用語は、それぞれ、粒子の10体積%、50体積%、及び90体積%の直径に関する。例えば、d10=10〜80nmという表示は、粒子(即ち、ナノカプセル)の10体積%が、10から80nmという指示範囲内の値以下の直径を有することを示す。同様に、例えば、d50=30〜200nmという表示は、粒子の50体積%が、30から200nmの範囲内の値以下の直径を有することを意味し;d90=70〜500nmという表示は、粒子の90体積%が、70から500nmの範囲内の値以下の直径を有することを意味するなどである。
【0021】
本明細書で使用される用語、「d10」と「d(0.1)」、「d50」と「d(0.5)」、「d90」と「d(0.9)」は、同じ意味を有し、同義に使用されることになる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、d90とd10との差(d90−d10)は、好ましくは50〜300nmの範囲であり、より好ましくは50〜250nmの範囲、さらにより好ましくは50〜200nmの範囲、最も好ましくは50〜150nmの範囲である。
【0023】
体積基準の粒度分布は、典型的には、光散乱(例えば、動的光散乱)又はレーザ回折などの方法によって測定される。
【0024】
一実施形態によれば、ステップ(a)のエマルジョンは、1〜10μmの範囲で中央粒(液滴)度直径(d50)を有することを、特徴とする。
【0025】
特定の実施形態によれば、ステップ(a)のエマルジョンは、その直径が、d10=0.5〜5μm、d50=1〜10μm、d90=2〜30μmの粒度分布(液滴の)を有する。
【0026】
エマルジョンに関して先に述べたパラメータd10、d50、d90は、ナノカプセルに関して先に定義されたものと同じ意味を有する。
【0027】
本明細書で使用される「d10=0.5〜5μm」という用語は、粒(液滴)度(直径で)の10体積%が、0.5〜5μmの範囲の値以下であることを示す。
【0028】
本明細書で使用される「d50=1〜10μm」という用語は、粒(液滴)度(直径で)の50体積%が、1〜10μmの範囲の値以下であることを示す。
【0029】
本明細書で使用される「d90=2〜30μm」という用語は、粒(液滴)度(直径で)の90体積%が、2〜30μmの範囲の値以下であることを示す。
【0030】
好ましい実施形態によれば、油相はゾルゲル前駆体を含む。
【0031】
したがって、この好ましい実施形態によれば、ステップ(a)は、
(a)高剪断力下で、コア材料及びゾルゲル前駆体を含む油相を水相中で乳化することにより、水中油エマルジョンを調製するステップ
を含む。
【0032】
本明細書で使用される「ゾルゲル前駆体」という用語は、任意の有機金属又は有機半金属モノマー、又はそのプレポリマー(一まとめに重合された、いくつかのモノマーを意味する)を指し、in−situ重合(無機ゾルゲル重合法)によって、金属酸化物材料(例えば、シリカ)を得ることが可能になる。
【0033】
本明細書で使用される、「in situ重合」という用語は、ゾルゲル前駆体の加水分解及び縮合反応の結果、エマルジョンの油−水の界面で無機ポリマーを形成する、ゾルゲル前駆体のゾルゲル重合法を指す。
【0034】
好ましくは、ゾルゲル前駆体は、金属アルコキシドモノマー、半金属アルコキシドモノマー、金属エステルモノマー、半金属エステルモノマー、及び式M(R)(P)のモノマー(但し、Mは金属又は半金属元素であり、Rは加水分解性置換基であり、nは2から6までの整数であり、Pは非重合性置換基であり、mは0から6の整数である)、部分的に加水分解し、及び部分的に縮合したこれらのポリマー、又はこれらの任意の混合物から選択される。
【0035】
好ましくは、金属又は半金属元素は、Si、Ti、Zr、Al、及びZnから選択される。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によれば、R(即ち、加水分解性の置換基)は、C〜Cアルコキシ、アリールオキシ、カルボン酸エステル、アシルオキシ基、ハロ(例えば、クロロ又はブロモ)から選択される。
【0037】
「C〜Cアルコキシ」という用語は、アルコキシのアルキルがC〜Cアルキルであり、より好ましくはC〜Cアルキルであり、最も好ましくはメチル又はエチルであることを意味する。
【0038】
好ましくは、アリールオキシドのアリールは、フェニル基である。
【0039】
P(即ち、非重合性置換基)は、例えば、C〜Cl8アルキル、アリール、アリールC〜C18アルキル、C〜C18アルキルアミン、C〜Cl8アルキルメタクリレート、ハロC〜Cl8アルキル、アリル、ビニル、C〜Cl8アルキルエステル、アクリルオキシ、アリルオキシ、アリールオキシ、カルボキシC〜Cl8アルキル、C〜Cl8アルキル(C=O)−O−、シアノC〜Cl8アルキル、エポキシシクロアルキル、グリシドキシアルキル、メタクリルオキシ、メルカプト基でよい。
【0040】
「非重合性置換基」という用語は、ナノカプセルの調製に使用される条件(即ち、ナノカプセルのシェルを調製するのに使用されるゾルゲル法条件)において、前記非重合性置換基が加水分解を受けない(即ち、M−P結合において)ことを意味すると理解される。この用語はさらに、ナノカプセルを調製する条件(即ち、ゾルゲル法)において、非重合性置換基が重合しないことを意味する。
【0041】
ゾルゲル前駆体は、単一モノマー単位でよく、或いはゾルゲル前駆体は、いくつかのモノマー単位を含んでよい(時には、「プレポリマー」とも呼ばれる)。
【0042】
例えば前駆体は、前駆体のオリゴマー、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解に基づく前加水分解TEOSのオリゴマーであってよく、このオリゴマーは、封入にも使用することができる短鎖ポリマー(プレポリマー)を得るために使用してよい。
【0043】
本発明の特定の実施形態では、ゾルゲル前駆体は、シリコンアルコキシドモノマー、シリコンエステルモノマー、式Si(R)(P)のモノマー(但し、Rは加水分解性置換基であり、nは2から4までの整数であり、Pは非重合性置換基であり、mは0から2までの整数である。)、部分的に加水分解し、及び部分的に縮合したこれらのポリマー、並びにこれらの任意の混合物から選択される。
【0044】
R及びPは、上記にて定義した通りでよい。好ましい実施形態によれば、m=0及びn=4である。好ましくは、RはC〜Cアルコキシであり、より好ましくはC〜Cアルコキシであり、最も好ましくは、Rはエトキシ又はメトキシ基である。
【0045】
本発明の別の実施形態では、いくつかの前駆体を、いくつかの金属又は半金属モノマーの混合物として、油相中で一緒に使用し、その結果、最終生成物中に種々の金属及び/又は半金属元素を含む複合体であるナノカプセルシェルが得られる。
【0046】
好ましくは、前駆体は、金属アルコキシドモノマー、半金属アルコキシドモノマー、部分的に加水分解し、及び部分的に縮合したこれらのポリマー、並びにこれらの任意の混合物から選択される。
【0047】
好ましくは、半金属アルコキシドモノマーは、シリコンアルコキシドモノマーである。
【0048】
好ましくは、シリコンアルコキシドモノマーは、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、及びこれらの混合物から選択される。
【0049】
最も好ましくは、シリコンアルコキシドモノマーはテトラエトキシシランである。
【0050】
本発明で使用してよいゾルゲル前駆体(やはりゾルゲル前駆体と呼ぶ)は、米国特許第6303149号、第6238650号、第6468509号、第6436375号と、国際公開WO01/80823、WO03/034979、及びWO03/039510(これら特許及び公開公報の開示全体を、参照により本明細書に組み込む)にも記載されている。
【0051】
一実施形態によれば、ステップ(c)における条件は、ナノカプセルシェルの形成を加速させるために触媒を添加するステップを含み、例えば、酸又は塩基を添加する。
【0052】
したがって、好ましい実施形態によれば、ステップ(c)における条件は、酸又は塩基から選択された触媒を添加するステップを含む。好ましい実施形態では、2〜5の範囲のpHをナノエマルジョンに与えるために、酸を添加する。別の実施形態では、8〜13の範囲のpHをナノエマルジョンに与えるために、塩基を添加する。
【0053】
したがって、ステップ(c)における条件は、例えば、懸濁液中にナノカプセルが形成されるように、2〜13の範囲内で適切に選択されたpHで、好ましくは2〜5又は8〜13のpHのナノエマルジョンを得るために、より好ましくはpH2〜5のナノエマルジョンを得るために、さらにより好ましくはpH3〜4を得るために、ナノエマルジョンを別の水溶液と混合し攪拌するステップを含んでよい。
【0054】
好ましい実施形態によれば、水溶液のpHは、2〜5の範囲内であり、さらにより好ましくは3〜4である。
【0055】
ステップ(a)における水相のpHは、2〜13の範囲でよい。一実施形態によれば、ステップ(a)における水相のpHは、2〜5の範囲でよい。この実施形態によれば、ステップ(c)の条件は、ナノカプセルが形成されるまで任意選択で攪拌しながら、(触媒を添加せずに)ナノカプセルを形成させることができる。
【0056】
好ましい実施形態によれば、ステップ(a)の水相のpHは、5〜8の範囲内である。
【0057】
エマルジョンの水相が、2〜5の範囲のpH、より具体的には3〜4の範囲のpHを有するある実施形態では、懸濁液中のナノカプセルは、例えば酸や塩基などの触媒の添加など、さらに加工する必要なしに、ナノ乳化ステップ後に得ることができる。そのような場合、ステップ(c)の条件は、加水分解及び重縮合を加速させるためにさらに処理することなく、ナノカプセルを形成させることができる(任意選択で、ナノエマルジョンを混合する)。
【0058】
好ましくは、ステップ(c)の条件は、ナノエマルジョンの混合を含む。
【0059】
ステップ(c)の混合は、少なくとも4時間、典型的には4〜24時間実施してよい。反応終了及びナノカプセル形成の兆候は、反応媒体から得られたナノカプセルのサンプルを繰り返し測定したときに、一定の乾燥減量値が得られることである。
【0060】
好ましくは、ステップ(a)では、水相、油相、又はその両方の、いずれかに、界面活性剤が含まれる。
【0061】
好ましくは、ステップ(a)の水相は、界面活性剤を含む。
【0062】
この方法はさらに、ステップ(a)で触媒を添加するステップを含んでよい。この方法はさらに、ステップ(a)で、界面活性剤、触媒、及びこれらの混合物から選択された成分を添加するステップを含んでよい。界面活性剤は、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、及びこれらの混合物から選択してよい。
【0063】
好ましくは、界面活性剤は、陽イオン界面活性剤である。最も好ましくは、陽イオン界面活性剤は、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)である。
【0064】
好ましくは、触媒は、塩酸溶液、リン酸溶液、又は硝酸溶液などの酸性溶液である。触媒は、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化アンモニウム、及びこれらの混合物のような塩でもよい。
【0065】
疎水性油相及び/又は水相は、追加の界面活性剤、又は生成物を改善する任意の添加剤を含んでよい。
【0066】
界面活性剤は、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陰イオンポリマー界面活性剤、陽イオンポリマー界面活性剤、非イオンポリマー活性剤、又はこれらの混合物でよい。
【0067】
乳化は、少なくとも1種の乳化剤(界面活性剤)を使用して行ってよい。水溶液は、少なくとも1種の親水性(水溶性)界面活性剤を含んでよい。
【0068】
油相は、疎水性界面活性剤、疎水性ポリマー界面活性剤、又はこれらの混合物を含んでよい。好ましくは、疎水性界面活性剤又は疎水性ポリマー界面活性剤は、非イオン界面活性剤である。
【0069】
親水性界面活性剤は、例えば、陰イオン、陽イオン、非イオン界面活性剤、又はこれらの混合物でよい。
【0070】
好ましい実施形態によれば、乳化は、少なくとも1種の親水性界面活性剤を使用して行うことが好ましい。好ましくは、親水性界面活性剤は、陽イオン界面活性剤である。
【0071】
最も好ましくは、陽イオン界面活性剤は、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)である。
【0072】
水溶液(水相)中の陽イオン界面活性剤の濃度は、0.1から5%(w/w)でよく、より好ましくは1から5%(w/w)でよい。界面活性剤の濃度は、油相及び水相のパーセンテージにも依存することが理解される。界面活性剤の濃度は、油相の重量から5〜10%(w/w)でよい。
【0073】
本発明の方法はさらに、遠心力による分離;濾過;蒸発;水性媒体中への再懸濁;及び透析の、少なくとも1つから選択された手順を通して、ナノカプセルを単離し濯ぐステップを含んでよい。
【0074】
本発明の方法はさらに、遠心力による、又は濾過及び水中への再懸濁、蒸発及び水中への再懸濁による、又は透析による、又は当技術分野で知られている任意のその他の従来の手段による分離から選択されたサイクルを通して、ナノカプセルを単離し濯ぐ追加のステップを含んでよい。
【0075】
そのように得られた懸濁液は、非イオン、陽イオン、若しくは陰イオンポリマー又は界面活性剤、又はこれらの混合物などの添加剤を添加することによって、安定化させてよい。懸濁液は、懸濁形態の最終生成物を得るための、任意のその他の適切な懸濁剤によって、安定化してよい。
【0076】
この方法はさらに、粉末形態の最終生成物(ナノカプセル)を得るために、水を除去するステップ(例えば、蒸発濾過など)を含んでよい。
【0077】
この方法はさらに、非イオン、陽イオン、又は陰イオン界面活性剤又はポリマー、又はこれらの混合物などの、再構成添加剤を添加するステップを含んでよい(界面活性剤又はポリマーは、非イオン、陽イオン、又は陰イオンでよい)。
【0078】
驚くべきことに、本発明のナノカプセルは、周囲条件で、界面活性剤を実質的に含まない水性媒体中、3カ月間にわたって物理的に安定であることが見出され、その粒度パラメータ(d10、d50、d90)は約10%増大する。「界面活性剤を実質的に含まない」という用語は、乳化プロセス(エマルジョンの調製の際に使用される。)由来の界面活性剤が、無視し得る量でしか存在できないことを意味する。
【0079】
好ましくは、ナノカプセルは、液体又は半固体組成物中で、3カ月間、より好ましくは1年間(好ましくは3カ月間から1年間)、最も好ましくは3年間(好ましくは3カ月から3年間)、周囲温度で物理的に安定である。好ましくは、組成物は、界面活性剤を実質的に含まない。
【0080】
「物理的に安定」という用語は、パラメータd10、d50、及びd90も関し、直径の最大30%の増加、好ましくは最大20%、より好ましくは最大10%の増加を意味する。
【0081】
好ましくは、この方法は、4〜40℃の温度で実施される。ステップ(a)は、好ましくは20〜25℃の温度で実施され;ステップ(b)は、好ましくは5〜25℃、より好ましくは5〜15℃、さらにより好ましくは5〜10℃の温度で実施され;ステップ(c)は、好ましくは4〜35℃、より好ましくは15〜25℃の温度で実施される。
【0082】
ステップ(b)で得られたナノエマルジョン、及び/又はステップ(c)で得られたナノカプセルは、さらに、加熱ステップ、冷却ステップ、真空又は圧力をかけるステップ、不活性ガス雰囲気中で保持するステップ、pHを変化させるステップ、及びエイジング期間にかけるステップから選択された、追加のステップを含んでよい。
【0083】
本明細書で使用される「エイジング」という用語は、シェルの開口の閉鎖によって活性成分の最小限の溶出率を得るために必要な、ナノカプセルシェル(金属酸化物シェル)形成が終了するまで付加される期間を指す。
【0084】
一実施形態では、この方法によって得られた生成物は、前記ナノカプセルの懸濁液である。
【0085】
別の実施形態では、得られた生成物は、前記ナノカプセルの粉末である。得られた生成物が、前記ナノカプセルの粉末である場合、方法はさらに、例えば蒸発、濾過、凍結乾燥などの、当技術分野で知られている任意の手段によって水を除去する他のステップを含む。
【0086】
方法はさらに、得られたナノカプセルを担体に分散させるステップを含んでよい。
【0087】
担体は、例えば、化粧品担体、医薬品担体、食品担体、農業又は工業プロセスで使用される担体でよい。
【0088】
担体は、例えば、液体、半固体、又は固体担体でよい。
【0089】
化粧品又は医薬品製剤中の懸濁液又は粉末の形をとる最終生成物を組み込むことによって、化粧品又は医薬品活性成分のバイオアベイラビリティを改善することができ、したがって、作用の持続期間が長くなるように活性成分のリザーバが保持される。
【0090】
本発明の方法はさらに、この方法の任意のステップ中に、陰イオン又は陽イオン界面活性剤又はポリマーを添加することによって、生成物の表面電荷を変化させるステップを含んでよい。
【0091】
ステップ(a)で得られたエマルジョン、及び/又はステップ(b)で得られたナノエマルジョンを、加熱し又は冷却し、真空又は圧力をかけ、又は不活性ガス雰囲気中で保持し、pHを変化させ、又は任意選択で、室温若しくは高温でさらにエイジング期間にかけてよい。
【0092】
得られた粒子(ナノカプセル)は、任意選択で、遠心分離又は濾過、及び脱イオン水への再懸濁のサイクルを通して、又は透析によって、又は当技術分野で知られている任意のその他の技法によって、単離し濯ぐことができる。
【0093】
得られた懸濁液は、例えば、適切な担体中に組み込んでよい。
【0094】
最終生成物は、適切な手段(例えば、乾燥、凍結乾燥など)によって水を除去した後に、非イオン、陽イオン、又は陰イオン界面活性剤又はポリマーなどの再構成添加剤を任意選択で添加して、粉末形態で使用してもよい。
【0095】
エマルジョン中の油相の濃度は、5%から80%(w/w)の範囲、より好ましくは10〜60%の範囲でよい。
【0096】
好ましくは、ゾルゲル前駆体とコア材料との重量比は、5/95から50/50である。より好ましくは、ゾルゲル前駆体とコア材料との重量比は、15/85から70/30である。上述の比は、前駆体としてのテトラエトキシシラン(TEOS)に関する。その他の前駆体を使用する場合の重量比は、モルベースで計算することができる。
【0097】
ナノカプセルの全重量に対するコア材料の濃度は、20%から98%(w/w)でよい。特定の実施形態によれば、ナノカプセルの全重量に対するコア材料の濃度は、50%から95%(w/w)である。
【0098】
好ましくは、得られたナノカプセルのコアは、液体コアである。より好ましくは、液体コアは、例えば溶液、懸濁液、又は分散液の形をとる油状コアである。
【0099】
一実施形態によれば、ゾル前駆体及びコア材料を含む油相(活性成分を含む)は、水に混和しない。
【0100】
ある実施形態によれば、ゾルゲル前駆体及びコア材料は、乳化の前に混合される。その他の実施形態によれば、コア材料は、水相中に乳化され、そこにゾルゲル前駆体を添加した(乳化の前又は後)。
【0101】
活性成分は、選択されたゾルゲル前駆体(金属、又は半金属アルコキシドである)に可溶であり又は懸濁することのできる、任意の分子又は物質でよい。
【0102】
形成されたナノカプセルシェルは、ゾルゲル前駆体のin−situ重合によって得られた、重合したゾルゲル前駆体を含む、少なくとも1種の金属酸化物を含む。
【0103】
本発明によるナノカプセルのコアは、ゾルゲル前駆体由来の金属酸化物を実質的に含まない(残留不純物として)ことが好ましい。さらに、金属酸化物シェルは、コア材料構成成分を実質的に含まない(残留不純物として)ことが好ましい。「実質的に含まない」という用語は、残留不純物が、10%(w/w)まで、好ましくは5%(w/w)まで、より好ましくは1%(w/w)まで、さらにより好ましくは0.5%(w/w)までの濃度(w/w)を有することを意味する。
【0104】
他の実施形態によれば、コア材料は、少なくとも1種の活性成分を含む。
【0105】
本発明において、「活性成分」という用語は、農業、工業(食品工業を含む)、医療、化粧品で使用することができ、且つ少なくとも1つの所望の性質を最終生成物(化粧品、薬物など)に与える、任意の分子又は物質を指す。
【0106】
したがって、本発明によるナノカプセルは、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下)、局所投与、眼科での投与などに役立てることができる。
【0107】
一実施形態によれば、コア材料は、本質的に少なくとも1種の活性成分からなる。
【0108】
本明細書で使用される「本質的に少なくとも1種の活性成分からなる」という用語は、コア材料が、高いパーセンテージ(w/w)の活性成分及び低いパーセンテージの賦形剤(液体担体など)を含むことを意味する。ある実施形態では、コア材料の全重量に対する活性成分の濃度は、約80%w/wよりも高く、より好ましくは90%w/wよりも高く、最も好ましくは95%w/wよりも高い。また「本質的に活性成分からなる」という用語は、コア材料が、ナノカプセルの調製に又は活性成分を溶解するのに必要とされる賦形剤を、含んでもよいことを意味する。好ましくは、コア材料の全重量に対する賦形剤の濃度は、20%w/wまでであり、より好ましくは10%w/wまでであり、最も好ましくは5%w/wまでである。
【0109】
別の実施形態によれば、コア材料は、前記少なくとも1種の活性成分である(即ち、液体担体などの賦形剤を含まない)。
【0110】
活性成分が、日焼け防止剤などの油であり、また溶媒や共溶媒などの追加の賦形剤が、以下のプロセスに記述されるエマルジョンの油相の調製に必要とされないある場合には、このような場合は形成されたナノカプセルのコア材料が、活性成分である。
【0111】
その他の適用例では、例えば活性成分が染料である場合、所望の色特性を与えるのに十分な染料濃度で、活性成分(染料)を溶媒に溶解することが有利になる。この場合、コア材料は、賦形剤、好ましくは油状溶媒と、活性成分(染料)を含む。
【0112】
一実施形態によれば、コアは液体コアであり、より好ましくは、液体コアは油状コアである(即ち、非水性の水に混和しない液体)。液体コア、好ましくは油状コアは、例えば、溶液、懸濁液、又は分散液の形をとってよい。
【0113】
活性成分は、コアに溶解し、分散し、又は懸濁した形で存在してよい(即ち、活性成分は、ナノカプセルのコア材料の調製に使用される賦形剤中に、溶解し、分散し、又は懸濁した形で存在してよい)。
【0114】
ナノカプセルは、化粧品又は医薬品の適用例で役立てることができる。ナノカプセルは、農業、ポリマー、又は食品工業で使用してもよい。ナノカプセルは、活性成分を周囲環境から一時的に又は永久に単離すべき任意の適用例に、役立てることができる。
【0115】
活性成分は、選択されたゾルゲル前駆体(金属又は半金属アルコキシド)に可溶であり又は懸濁することができる、任意の分子又は物質でよい。
【0116】
活性成分は、例えば、日焼け防止剤、歯科用薬剤、芳香剤、香料、着色剤及び染料、食品着色剤及び食品添加物、ワックス、抗酸化剤、湿潤剤、ビタミン、農薬、生物学的分子(酵素、補酵素、又は抗体など)、薬物、触媒、試薬、又はこれらの混合物でよい。
【0117】
薬物は、例えば、皮膚科用薬剤、抗炎症薬、鎮痛薬、抗真菌薬、抗生物質、抗ウイルス薬、にきび予防薬、抗ヒスタミン、皮膚美白剤、抗寄生虫薬、筋弛緩剤、ステロイド、ホルモン、収斂剤、又はこれらの混合物でよい。
【0118】
活性成分は、例えば、農業又は工業で使用される、殺虫剤、除草剤、又は殺菌剤などの、農薬でよい。
【0119】
活性成分は、日焼け防止剤でよい。
【0120】
日焼け防止剤は、例えば、UVA吸収剤、UVB吸収剤、又はこれらの混合物でよい。
【0121】
UVA吸収剤は、例えば、ケイ皮酸オクチルメトキシ、p−アミノ安息香酸、又はこれらの混合物でよい。
【0122】
UVB吸収剤は、例えば、3−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ベンゾフェノン−3、又はこれらの混合物でよい。
【0123】
日焼け防止剤(紫外線吸収分子、又は紫外線反射物質)は、例えば、ケイ皮酸オクチルメトキシ、3−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ベンゾフェノン−3、ベンゾフェノン−1、ベンゾフェノン−2、ベンゾフェノン−6、ベンゾフェノン−4、ベンゾフェノン−8、p−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、p−アミノ安息香酸、N,N−ジメチル−p−アミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2−シアノ−3、3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシルエステル、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、オキシベンゾン、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、4,4’−メトキシ−t−ブチルジベンゾイルメタン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、3−(4−メチルベンジレデン)カンファー、3−ベンジリデンカンファー、サリチル酸トリエタノールアミン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンの4−N,N−(2−エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル、4−ヒドロキシジベンゾイルメタンの4−N,N−(2−エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)−ベンゾフェノンの4−N,N−(2−エチルヘキシル)メチル−アミノ安息香酸エステル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタンの4−N,N−(2−エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル、又はこれらの混合物でよい。
【0124】
本発明で使用することができる、追加の日焼け防止剤は、米国特許第6238650号、第6468509号、第6303149号、第6436375号、及び国際公開WO03/039510に開示されている。これらの特許及び公開公報の開示は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0125】
活性成分は、例えば、食品又は経口薬物に使用される、天然の食品着色剤、又は合成の食品着色剤、又は食品添加物でよい。
【0126】
活性成分は、例えば、化粧品用着色剤及び皮膚施用に使用される、天然の食品着色剤又は合成の食品着色剤でよい。
【0127】
1つの好ましい実施形態によれば、活性成分は染料である。
【0128】
活性成分は、例えば、蛍光染料などの染料でよい。
【0129】
蛍光染料は、化粧品、医薬品、インク、又は、染料とその分散環境又は人体の種々の器官(皮膚など)との接触を回避することが必要な任意のその他の工業で、使用することができる。
【0130】
蛍光染料は、例えば、ナイルレッド、ペリレン、ピレン、アントラセン、又はこれらの混合物でよい。
【0131】
本発明の好ましい実施形態によれば、ナノカプセルは、直径が、d10=10〜30nm、d50=30〜150nm、d90=70〜300nmの粒度分布を有する。別の好ましい実施形態によれば、ナノカプセルは、直径が、d10=10〜30nm、d50=30〜100nm、d90=70〜200nmの粒度分布を有する。さらに、好ましい実施形態によれば、ナノカプセルは、d10=10〜30nm、d50=30〜100nm、d90=70〜180nmの粒度分布を有する。さらに、好ましい実施形態によれば、ナノカプセルは、d10=10〜30nm、d50=30〜100nm、d90=70〜160nmの粒度分布を有する。さらに、好ましい実施形態によれば、ナノカプセルは、10〜30nm、d50=30〜100nm、d90=70〜150nmの粒度分布を有する。
【0132】
(b)で得られたナノエマルジョン粒度分布は、ナノカプセルの粒度分布に類似していることが理解される。このように、ナノエマルジョンの粒度分布(d10、d50、d90)は、ナノカプセルに関して本発明で示したものと同じ値を有してよい。
【0133】
本発明の追加の実施形態によれば、方法はさらに、金属酸化物シェルの表面を化学的に改質するステップを含む。
【0134】
本発明の別の実施形態によれば、化学的な表面改質は、金属酸化物シェルの表面のシラノール基と、式
(R)S(OR”)、(R)(R)Si(OR”)、(R)(R)(R)S(OR”)
を有する前駆体との反応を含む
(式中、R、R、Rは、同じでも異なっていてもよく、C〜C18アルキル、アリール、アリールC〜C18アルキル、C〜C18アルキルアミン、C〜C18アルキルメタクリレート、アリル、ビニル、C〜C18アルキルエステル、アクリルオキシ、アリルオキシ、アリールオキシ、カルボキシC〜C18アルキル、ハロC〜C18アルキル、C〜C18アルキル(C=O)−O−、シアノC〜C18アルキル、エポキシシクロアルキル、グリシドキシC〜C18アルキル、メタクリルオキシ、C〜C18アルキルチオールから独立に選択される)。
【0135】
数値範囲、例えば「1〜18」は、本明細書においてアルキル基と関連して記述されているときはいつでも、この場合はアルキル基である基は、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、18個までの及び18個を含めた炭素原子を含有してよいことを意味する。
【0136】
好ましい実施形態によれば、C〜C18アルキルは、C〜Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)である。
【0137】
〜C18アルキルメタクリレートは、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピルなどでよい。
【0138】
アリールは、例えば、フェニル又はベンジルでよい。
【0139】
ハロ基は、例えば、クロロ、フルオロなどでよい。
【0140】
カルボキシC〜C18アルキルは、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシプロピルなどでよい。
【0141】
エポキシシクロアルキル中のシクロアルキルは、エポキシシクロペンチルやエポキシシクロヘキシルなどの5〜6員環でよい。
【0142】
グリシドキシC〜C18アルキルは、例えば、グリシドキシプロピルでよい。
【0143】
OR”は、好ましくは、C〜Cアルコキシ、アリールオキシ、カルボン酸エステル、アシルオキシ基、ハロ(例えば、クロロ又はブロモ)から選択される。
【0144】
、R、Rは、金属酸化物表面の化学的改質を実施するのに使用される条件で、加水分解しないことが好ましい。
【0145】
官能基R、R、Rによるそのような表面改質は、pHが2〜7の範囲、より好ましくは2〜4の範囲にある水性媒体中での、ステップ(c)で得られたナノカプセルと上記にて定義された前駆体との反応を含む、さらなるステップによって実施されることが好ましい。この反応は、例えば4〜24時間にわたり混合される(例えば、機械的攪拌又は磁気攪拌によって)ことが好ましい。反応終了の兆候は、様々な時間間隔で採取されたナノカプセルのサンプルの、一定の乾燥減量測定値によって、得ることができる。
【0146】
本発明はさらに、本発明で記述された方法によって得られた生成物に関する。
【0147】
本発明はさらに、ナノカプセルシェル内に封入されたコア材料を有するナノカプセルに関し、ナノカプセルシェルは、少なくとも1種の金属酸化物を含み、但しナノカプセルは、直径が、d10=10〜80nm、d50=30〜200nm、d90=70〜500nmの粒度分布を有する。
【0148】
1つの好ましい実施形態によれば、ナノカプセルは、直径が、d10=10〜30nm、d50=30〜150nm、d90=70〜300nmの粒度分布を有する。
【0149】
別の好ましい実施形態によれば、ナノカプセルは、d10=10〜30nm、d50=30〜100nm、d90=70〜200nmの粒度分布を有する。
【0150】
さらに、好ましい実施形態によれば、ナノカプセルは、d10=10〜30nm、d50=30〜100nm、d90=70〜180nmの粒度分布を有する。さらに、好ましい実施形態によれば、ナノカプセルは、d10=10〜30nm、d50=30〜100nm、d90=70〜160nmの粒度分布を有する。さらに、好ましい実施形態によれば、ナノカプセルは、10〜30nm、d50=30〜100nm、d90=70〜150nmの粒度分布を有する。
【0151】
本発明の好ましい実施形態によれば、d90とd10の差(d90−d10)は、好ましくは50〜300nmの範囲であり、より好ましくは50〜250nmの範囲、さらにより好ましくは50〜200nmの範囲、最も好ましくは50〜150nmの範囲である。
【0152】
好ましくは、コア材料は、少なくとも1種の活性成分を含む。
【0153】
一実施形態によれば、活性成分は、日焼け防止剤、歯科用薬剤、芳香剤、香料、着色剤及び染料、食品着色剤、食品添加物、ワックス、抗酸化剤、湿潤剤、ビタミン、農薬、生物学的分子、薬物、触媒、試薬、及びこれらの混合物から選択される。
【0154】
他の実施形態によれば、金属酸化物は、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、ZnOから選択される。
【0155】
シェルは、C〜Cl8アルキル、アリール、アリールC〜C18アルキル、C〜C18アルキルアミン、C〜Cl8アルキルメタクリレート、ハロC〜Cl8アルキル、アリル、ビニル、C〜Cl8アルキルエステル、アクリルオキシ、アリルオキシ、アリールオキシ、カルボキシC〜Cl8アルキル、C〜Cl8アルキル(C=O)−O−、シアノC〜Cl8アルキル、エポキシシクロアルキル、グリシドキシC〜Cl8アルキル、メタクリルオキシ、C〜Cl8アルキルチオールから選択された官能基によって、さらに改質してよい。
【0156】
ナノカプセル構成成分、構成成分の濃度、特定活性成分と、その他のパラメータ及び特徴は、方法やこの方法によって得られた生成物などに関して本発明で記述された通りでよいと理解される。
【0157】
本発明はさらに、本発明で記述されたナノカプセル及び担体を含む組成物に関する。
【0158】
本発明のナノカプセルは、様々な担体に容易に組み込むことができるので、ヒト又はヒト以外での適用例に役立てることができる。ナノカプセルは、担体又は希釈剤に、容易に分散し又は懸濁することができる。
【0159】
任意の適切な混合器又は攪拌子による単純な攪拌は、有効な分散液を実現するのに十分である。必要に応じて、ナノカプセルの小さな粒度分布により、高剪断力を加えて担体中のナノカプセルの迅速且つ効率的な混合を促進させることができる。
【0160】
組成物は、例えば、化粧品組成物、医薬品組成物、食品組成物、農業又は工業プロセスで使用される組成物でよい。
【0161】
担体は、化粧品担体、医薬品担体、食品担体、農業又は工業プロセスで使用される担体でよい。
【0162】
担体は、液体、半固体、又は固体担体でよい。担体は、例えば、エマルジョン、クリーム、水溶液、油、軟膏、ペースト、ゲル、ローション、ミルク、懸濁液、粉末、加工食品、スプレー、塗料、ラッカー、コーティング、プラスチック、又は洗浄剤でよい。
【0163】
担体は、少なくとも1種の非封入活性成分を、さらに含んでよい。
【0164】
組成物の最終形態は、例えば、エマルジョン、水溶液、油、半固体配合物(クリーム、軟膏、ペースト、又はゲルなど)、ローション、ミルク、懸濁液、粉末、カプセル、エアロゾル、スプレー、フォーム、シャンプー、ヘアコンディショナー、ラッカー、メイキャップ、固体スティック、歯磨き剤、食品、塗料、プラスチック、又はコーティングでよい。
【0165】
一実施形態によれば、組成物は、前記ナノカプセルを水性媒体に懸濁した懸濁液である。
【0166】
好ましい実施形態によれば、懸濁液は、ナノカプセル重量に対して低い界面活性剤濃度を含む。
【0167】
「ナノカプセル重量に対して低い界面活性剤濃度」という用語は、ナノカプセルの全重量に対して好ましくは5%w/wまで、より好ましくは2%w/wまで、最も好ましくは0.5%w/wまでの濃度を意味する。
【0168】
好ましい実施形態によれば、組成物は、界面活性剤を実質的に含まない水性媒体に、前記ナノカプセルを懸濁した懸濁液である。
【0169】
特定の実施形態によれば、懸濁液は、周囲温度で少なくとも3カ月間、好ましくは1年間、より好ましくは3年間にわたり、物理的に安定である。
【0170】
さらに、別の実施形態によれば、組成物は、ナノカプセルを液体又は半固体担体に分散した分散液であり、前記組成物は、周囲温度で少なくとも3カ月間、好ましくは1年間、より好ましくは3年間にわたり、物理的に安定である。組成物は、界面活性剤を実質的に含まなくてもよい。或いは、組成物は、ナノカプセルの重量に対して低い界面活性剤濃度を含んでもよい。
【0171】
「物理的に安定」という用語は、d10、d50、及びd90のパラメータが、30%まで、好ましくは20%まで、より好ましくは10%まで、最も好ましくは5%まで増加することを意味する。
【0172】
本発明の組成物は、局所的に施用してよい。
【0173】
本発明において、「局所施用」という用語は、皮膚、毛髪、粘膜に対する施用、直腸施用、鼻施用、並びに口腔内での歯科施用を指す。
【0174】
ナノカプセルからの活性成分の放出は、即時型、遅延型、又は制御型になるよう設計することができ;この放出は、ナノカプセルシェルの組成、その直径を変えることによって、またナノカプセルを取り囲む担体の組成を変えることによって、制御することができる。
【0175】
放出は、シェルの表面の性質及び細孔を通る拡散速度を制御するために、エイジング時間、熱処理、又はシェルの特徴的多孔率若しくは強度を変化させることができる任意の機械的手段によって、或いは、ナノカプセルが形成されている間に添加することができる有機ポリマー及び/又は界面活性剤などの化学的手段によって、得ることができ且つ制御することができる。
【0176】
封入は、製剤全体の内部にマイクロドメインを生成するので、1種の活性成分を封入することができると共に、第2の活性成分を、ナノカプセルを取り囲む担体の内部に存在させることができる。これは、これらの成分が一緒に相乗的に作用し、なお一方が他方と化学的に反応する場合に、有利である。
【0177】
或いは、活性成分のそれぞれを、個別のナノカプセルにナノ封入してもよい。
【0178】
代替例において、活性成分は、単独で又はその他の成分と一緒に、同じナノカプセル内に封入することができる。感受性ある成分の安定性を高める化合物の、同時封入が、有益である。例えば、抗酸化物は、酸素感受性又は酸化剤感受性の成分と共に同時封入して、「局所保護」をもたらすことができる。
【0179】
本発明は、その出願において、以下の説明に記述される構成の詳細及び成分の配置構成に限定されないことを、理解すべきである。本発明は、その他の実施形態を含み、様々な方法で実施し又は実現することができる。また、本明細書で用いられる言い回し及び用語は、単に説明を目的としたものであり、限定されると解釈すべきではないことが、理解されよう。
【実施例】
【0180】
下記の実施例は、本発明を明らかにし且つ実証する。これらの実施例は、排他的ないかなる状況下にもあるものではなく、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0181】
(実施例1)
油のナノメートルコアシェル粒子
(実施例1a)
パラフィン油のナノメートルコアシェル粒子
パラフィン油400g、及びTOES(テトラエトキシシラン)70gを、CTAC(29%w/w)5gを含有する水405gの溶液に添加した。混合物を、KINEMATICA製Polytron 6100を使用した高剪断ホモジナイザにより、3500rpmで5分間均質化した。エマルジョンを、マイクロフルイダイザによって、7℃の温度で(M−110Yマイクロフルイダイザプロセッサ)3つの部分で、それぞれ10分間ミリングすることにより、ナノエマルジョンを得た。ナノエマルジョンを、機械式攪拌子に適合させたステンレス容器に移し、HCl(1N)0.2gを含有する水100.2gを、ナノエマルジョンに添加した。ナノエマルジョンを、35℃で20時間攪拌して、油のコア及びシリカのシェルを有するナノカプセルを得た。
【0182】
カプセルは、体積基準で、d(0.9)=146nm、d(0.5)=84.2nm、d(10)=26.4nmの粒度分布を有しており(図1a)(Zetasizer Nano Z Malvernで測定)、固体含量は、27.3%w/wであった(固体含量は、ナノカプセルの水性分散液の全重量に対する、不揮発性成分を指す)。
【0183】
(実施例1b)
IPM(イソプロピルミリステート)のナノメートルコアシェル粒子
IPM 20g、及びTOES 20gを、CTAC(29%)5gを含有する水95gの溶液に添加した。混合物を、高剪断ホモジナイザ(KINEMATICA製Polytron 6100を使用)により、2800rpmで5分間均質化した。エマルジョンを、マイクロフルイダイザによって、7℃の温度で10分間ミリングすることにより、ナノエマルジョンを得た。水150gをナノエマルジョンに添加し、ミリングをさらに5分間継続した。ナノエマルジョンを、1M HCl溶液0.5mlを添加した後に、室温で20時間攪拌することにより、IPM油コア及びシリカシェルを有するナノカプセルが得られた。カプセルは、d(0.9)=215nm、d(0.5)=126nm、d(0.1)=71nmの粒度分布を有していた。粒度分布は、体積基準で、マスターサイザ200(Malvern)で測定した。
【0184】
(実施例2)
パラフィン油及びナイルレッドコアを有するナノメートルコアシェル粒子
ナイルレッド0.02gを、加熱することによって(60℃の温度に)20gのパラフィンに溶解し、30分間攪拌した。TEOS 20gを高温の溶液に添加し、混合物を、さらに30分間攪拌した。鮮やかなオレンジ色の溶液を、室温に冷却した。CTACが0.5〜2%w/wの溶液を調製した。油相及びCTAC溶液を、分散凝集PT−DA 6045/6を備えた高剪断ホモジナイザ(Polytron PT 6100 Kinematica)を使用して、3000rpmで約5分間、長首ビーカ(200ml)内で均質化した。均質化中、エマルジョンの色は、鮮やかなオレンジ色から紫色に変化した。エマルジョンを、10分間、M−110Yマイクロフルイダイザプロセッサ(microfluidics)で、7℃の温度で剪断することにより、ナノエマルジョンが得られた。RO(逆浸透)水150gを添加し、エマルジョンをさらに5分間剪断した。剪断後、ナノエマルジョンを、磁気攪拌子を備えた400mlビーカに移した。1M HCl溶液0.5mlを触媒として添加し、ナノエマルジョンを24時間攪拌して、コア/シェル構造を有するナノメートルカプセルを形成した。
【0185】
得られたナノメートルカプセルの粒度分布(PSD)は、Zetasizer Nano Z Malvernで測定した場合、体積基準でd(0.9)=120.6nm、d(0.5)=67.9nm、d(0.1)=16.7nmであり(図1b)、固体含量は10.27%w/wであった。
【0186】
PSDは、Mastersizer 2000(Malvern)によっても測定し、その結果は:d(0.9)=190nm、d(0.5)=112nm、d(0.1)=68nm、及びd(0.9)=181nm、d(0.5)=120nm、d(0.1)=79nmであった。
【0187】
ナノメートルコアシェル粒子を、図2に示される図に見られるように、透過型電子顕微鏡(TEM)により分析した。図2aは、得られたナノカプセルを示す。ナノメートル粒子のコアシェル構造は、図2bに示されるように、約4〜8nmのシリカシェル厚を有することが観察された。
【0188】
(実施例3)
アクリレート官能基によるナノメートルカプセルの改質
3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート1.5gを、実施例2で得られたナノメートルカプセル分散液100gに、最大1000rpmで激しく攪拌しながら添加した。分散液を24時間攪拌した。改質後の粒度分布(PSD)は、約d(0.9)=210nm、d(0.5)=104.6nm、d(0.1)=40.0nmであった。
【0189】
(実施例4)
ナノメートルカプセルへのUV吸収剤の封入
Tinuvin 326(UV吸収剤)1gを、加熱することによって(60℃の温度に)、IPM(イソプロピルミリステート)19gに溶解した。TEOS 20gを添加し、溶液を室温まで冷却した。油相を、CTACの水溶液(CTAC 29%w/w 5g、及びRO水95g)と共に、分散凝集PT−DA 6045/6を備えた高剪断ホモジナイザ(Polytron PT 6100 Kinematica)を使用して、3000rpmで約5分間、長首ビーカ(200ml)内で均質化した。微細なエマルジョンを、M−110Yマイクロフルイダイザプロセッサ(microfluidics)で、10分間剪断した。150gのRO水を添加し、エマルジョンをさらに5分間剪断した。剪断後、ナノエマルジョンを、磁気攪拌子を備えた400mlビーカに移した。1M HCl溶液0.5mlを触媒として添加し、ナノエマルジョンを24時間攪拌した。ナノメートルカプセルは、約d(0.9)=160nm、d(0.5)=90nm、d(0.1)=46nm(Zetasizer Nano Z Malvernで測定)のPSDを有していた。
【0190】
(実施例5)
ナノメートルコアシェル粒子へのUV吸収剤及び蛍光染料の封入
Tinuvin 326 0.5g、及びナイルレッド0.015gを、高温(60℃の温度)IPM(19.5g)中に溶解した。TEOS 20gを添加し、油相を室温まで冷却した。油相を、CTACの水溶液(CTAC 29%w/w 5g、及びRO水95g)と共に、分散凝集PT−DA 6045/6を備えた高剪断ホモジナイザ(Polytron PT 6100 Kinematica)を使用して、3000rpmで約5分間、長首ビーカ(200ml)内で均質化した。微細なエマルジョンを、M−110Yマイクロフルイダイザプロセッサ(microfluidics)で、10分間剪断した。150gのRO水を添加し、エマルジョンをさらに5分間剪断した。剪断後、ナノエマルジョンを、磁気攪拌子を備えた400mlビーカに移した。1M HCl溶液0.5mlを触媒として添加し、ナノエマルジョンを24時間攪拌した。
【0191】
PSDをMastersizer 2000(Malvern)で測定し、その結果は:d(0.9)=255nm、d(0.5)=137nm、d(0.1)=73nmであった。
【0192】
(実施例6)
ナノメートルコアシェル粒子への保存剤の封入
フェノニップ(フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、及びイソブチルパラベンの混合物)4g(20%)を、IPM(16g)中に溶解した。TEOS 20gを、室温で油相に添加した。油相を、CTACの水溶液(CTAC 29% 4g、及びRO水96g)と共に、分散凝集PT−DA 6045/6を備えた高剪断ホモジナイザ(Polytron PT 6100 Kinematica)を使用して、3000rpmで約5分間、長首ビーカ(200ml)内で均質化した。微細なエマルジョンを、M−110Yマイクロフルイダイザプロセッサ(microfluidics)で、10分間剪断した。150gのRO水を添加し、エマルジョンをさらに5分間剪断した。剪断後、ナノエマルジョンを、磁気攪拌子を備えた400mlビーカに移した。1M HCl溶液0.5mlを触媒として添加し、ナノエマルジョンを24時間攪拌した。
【0193】
PSDをMastersizer 2000(Malvern)で測定し、その結果は:d(0.9)=290nm、d(0.5)=137nm、d(0.1)=67nmであった。
【0194】
(実施例7)
連続相へのシリカ前駆体の添加
パラフィン油200gを、CTAC(29%w/w)3gを含有する水305gの溶液に、添加する。混合物を、高剪断ホモジナイザで5分間均質化する。エマルジョンをマイクロフルイダイザで10分間ミリングすることにより、ナノエマルジョンが得られる。ナノエマルジョンを、機械式攪拌子に適合させたステンレス容器に移す。TEOS 50gをナノエマルジョンに添加し、混合物を30分間混合する。HCl(1N)0.2gを含有する水100.2gを、ナノエマルジョンに添加する。ナノエマルジョンを35℃で20時間攪拌して、油のコア及びシリカのシェルを有するナノカプセルが得られる。
【0195】
(実施例8)
チタニアシェルを有するナノカプセル
パラフィン油300g、及びチタン酸トリプロポキシ50gを、CTAC(29%w/w)3gを含有する水405gの溶液に、添加する。混合物を、高剪断ホモジナイザで5分間均質化する。エマルジョンをマイクロフルイダイザで10分間ミリングすることにより、ナノエマルジョンが得られる。ナノエマルジョンを、機械式攪拌子に適合させたステンレス容器に移す。HCl(1N)0.2gを含有する水100.2gを、ナノエマルジョンに添加する。ナノエマルジョンを4℃で20時間攪拌することにより、油のコア及びシリカのシェルを有するナノカプセルが得られる。
【0196】
(実施例9)
シリカ前駆体としてのTMOS
パラフィン油400g、及びTMOS(テトラメトキシシラン)100gを、CTAC(29%w/w)5gを含有する水605gの溶液に、添加する。混合物を、高剪断ホモジナイザで5分間均質化する。エマルジョンをマイクロフルイダイザにより3つの部分で、それぞれ10分間ミリングすることにより、ナノエマルジョンが得られる。ナノエマルジョンを、機械式攪拌子に適合させたステンレス容器に移し、pHを、HCl(1N)を使用して6に調節する。ナノエマルジョンを4℃で20時間攪拌することにより、油のコア及びシリカのシェルを有するナノカプセルが得られる。
【0197】
(実施例10)
実施例2により調製された水性懸濁液の安定性
水性懸濁液を、実施例2により得られたナノカプセルを使用して調製した。水性懸濁液は、媒体としての水(界面活性剤なし)の中にナノカプセルを10%w/w含有していた。
【0198】
水性懸濁液は、d10、d50、及びd90のパラメータに約10%の増加があり、周囲温度で3カ月間安定であることがわかった。
【0199】
本発明を、その好ましい実施形態に関して図示し記述してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの代替、修正、及び変形をそこに加えることができることが、当業者に理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲に含まれるそのような代替例、修正例、及び変形例のすべてを包含するものとする。
【0200】
本明細書で挙げられたすべての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許、及び特許出願のそれぞれが参照により本明細書に組み込まれることを具体的且つ個別的に示すのと同じ範囲まで、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)高剪断力下で、コア材料を含む油相を水相中に乳化させることにより、水中油エマルジョンを調製するステップであって、前記油相及び前記水相の一方又は両方がゾルゲル前駆体を含んでいるステップ、
(b)(a)で得られたエマルジョンに高圧均質化を行って、ナノエマルジョンを得るステップ、及び
(c)ゾルゲル前駆体を加水分解し、及び重縮合するための条件を適用して、コア材料を封入した金属酸化物シェルを有するナノカプセルを得るステップであって、該ナノカプセルは、直径が、d10=10〜80nm、d50=30〜200nm、及びd90=70〜500nmである粒度分布を有しているステップと
を含む、コアシェル構造を有するナノカプセルを調製するための方法。
【請求項2】
前記油相が、コア材料及びゾルゲル前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)で得られたエマルジョンが、1〜10μmの範囲の中央粒度直径(d50)を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)のエマルジョンが、直径で、d10=0.5〜5μm、d50=1〜10μm、d90=2〜30μmの粒度分布を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コア材料が、少なくとも1種の活性成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
活性成分が、日焼け防止剤、歯科用薬剤、芳香剤、香料、着色剤及び染料、食品着色剤、食品添加物、ワックス、抗酸化剤、湿潤剤、ビタミン、農薬、生物学的分子、薬物、触媒、試薬、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ゾルゲル前駆体が、金属アルコキシドモノマー、半金属アルコキシドモノマー、金属エステルモノマー、半金属エステルモノマー、及び式M(R)(P)のモノマー(但し、Mは金属又は半金属元素であり、Rは加水分解性置換基であり、nは2から6までの整数であり、Pは非重合性置換基であり、mは0から6の整数である)、部分的に加水分解し、及び部分的に縮合したこれらのポリマー、並びにこれらの任意の混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記金属又は半金属元素が、Si、Ti、Zr、Al、及びZnから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ゾルゲル前駆体が、シリコンアルコキシドモノマー、シリコンエステルモノマー、式Si(R)(P)のモノマー(但し、Rは加水分解性置換基であり、nは2から4までの整数であり、Pは非重合性置換基であり、mは0から2までの整数である)、部分的に加水分解し、及び部分的に縮合したこれらのポリマー、並びにこれらの任意の混合物から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記シリコンアルコキシドモノマーが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びこれらの混合物から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)の条件が、酸又は塩基から選択された触媒を添加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)の条件が、ナノカプセルの懸濁液を得るために、前記ナノエマルジョンと別の水溶液とを、2〜13の範囲で適切に選択されたpHで混合し及び攪拌するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
水溶液のpHが、2〜5の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水相のpHが、2〜13の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
水相のpHが、5〜8の範囲である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノカプセルが、直径で、d10=10〜30nm、d50=30〜150nm、d90=70〜300nmの粒度分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
金属酸化物シェルの表面を化学的に改質するステップをさらに含む、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記化学的な表面改質が、金属酸化物シェルの表面のシラノール基と、式:
(R)S(OR”)、(R)(R)Si(OR”)、(R)(R)(R)S(OR”)
を有する前駆体との反応を含む、請求項18に記載の方法
(式中、R、R、Rは、同じでも異なっていてもよく、C〜C18アルキル、アリール、アリールC〜C18アルキル、C〜C18アルキルアミン、C〜C18アルキルメタクリレート、ハロC〜C18アルキル、アリル、ビニル、C〜C18アルキルエステル、アクリルオキシ、アリルオキシ、アリールオキシ、カルボキシC〜C18アルキル、C〜C18アルキル(C=O)−O−、シアノC〜C18アルキル、エポキシシクロアルキル、グリシドキシC〜C18アルキル、メタクリルオキシ、C〜C18アルキルチオールから独立に選択される)。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法によって得られた生成物。
【請求項20】
少なくとも1種の金属酸化物を含むナノカプセルシェル内に封入された、コア材料を有するナノカプセルであって、直径が、d10=10〜80nm、d50=30〜200nm、d90=70〜500nmの粒度分布を有する、上記ナノカプセル。
【請求項21】
前記コア材料が、少なくとも1種の活性成分を含む、請求項20に記載のナノカプセル。
【請求項22】
前記活性成分が、日焼け防止剤、歯科用薬剤、芳香剤、香料、着色剤及び染料、食品着色剤、食品添加物、ワックス、抗酸化剤、湿潤剤、ビタミン、農薬、生物学的分子、薬物、触媒、試薬、及びこれらの混合物から選択される、請求項21に記載のナノカプセル。
【請求項23】
前記金属酸化物が、C〜Cl8アルキル、アリール、アリールC〜C18アルキル、C〜C18アルキルアミン、C〜Cl8アルキルメタクリレート、ハロC〜Cl8、アリル、ビニル、C〜Cl8アルキルエステル、アクリルオキシ、アリルオキシ、アリールオキシ、カルボキシC〜Cl8アルキル、C〜Cl8アルキル(C=O)−O−、シアノC〜Cl8アルキル、エポキシシクロアルキル、グリシドキシC〜Cl8アルキル、メタクリルオキシ、C〜Cl8アルキルチオールから選択された官能基によって化学的に改質される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記金属酸化物が、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、ZnOから選択される、請求項20に記載のナノカプセル。
【請求項25】
請求項20から24までのいずれか一項に記載のナノカプセル、及び担体を含む、組成物。
【請求項26】
前記組成物が、前記ナノカプセルを、界面活性剤を実質的に含まない水性媒体に懸濁した懸濁液である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記懸濁液が、周囲温度で少なくとも3カ月間にわたり物理的に安定である、請求項26に記載の組成物。


【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2010−512244(P2010−512244A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540970(P2009−540970)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/IL2007/001541
【国際公開番号】WO2008/072239
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(508036547)ソル − ゲル テクノロジーズ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】