説明

鉄骨構造物の柱構造およびその構築方法

【課題】 短期間でかつ経済的に構築できる鉄骨構造物の柱構造およびその構築方法を提供することである。
【解決手段】 鉄骨構造物の柱構造1は、フーチング基礎2に建て込まれた0節鉄骨柱材6と鉄筋コンクリート7、8とで構成された鉄骨鉄筋コンクリート柱材3と、鉄骨鉄筋コンクリート柱材3の上側に構築された鉄筋コンクリート柱材4と、該鉄筋コンクリート柱材4に接合された1節鉄骨柱材9とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は鉄骨構造物の柱構造およびその構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄骨構造物の柱構造12は、図3に示すように、基礎梁13を設けた基礎14に0節鉄骨柱材15を建て込み、この0節鉄骨柱材15に1節鉄骨柱材16を建て込んだ構成になっている。またその他の鉄骨構造物の柱構造として、例えば特開2001−355246号の発明が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−355246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の鉄骨構造物の柱構造は、基礎梁を設けた基礎に建て込まれて構成されているため、基礎梁施工のための掘削、地業、配筋、型枠形成、コンクリート打設および埋戻工事が発生して、工期と工費が嵩むという問題があった。
【0005】
本願発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、短期間でかつ経済的に構築できる鉄骨構造物の柱構造およびその構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための鉄骨構造物の柱構造は、フーチング基礎に建て込まれた0節鉄骨柱材と鉄筋コンクリートとで構成された鉄骨鉄筋コンクリート柱材と、該鉄骨鉄筋コンクリート柱材の上側に構築された鉄筋コンクリート柱材と、該鉄筋コンクリート柱材に接合された1節鉄骨柱材とからなることを特徴とする。また0節鉄骨柱材と1節鉄骨柱材とがアンカーボルトで接合されたことを含む。また鉄筋コンクリート柱材と1節鉄骨柱材とは柱曲げモーメント反曲点位置で接合されたことを含むものである。
【0007】
また鉄骨構造物の柱構造の構築方法は、フーチング基礎に0節鉄骨柱材を建て込むとともに、該0節鉄骨柱材の上端部にアンカーボルトを設け、前記0節鉄骨柱材を芯材とした鉄骨鉄筋コンクリート柱材を形成するとともに、該鉄骨鉄筋コンクリート柱材の上部に鉄筋コンクリート柱材を形成し、該鉄筋コンクリート柱材の上面に1階鉄骨柱材を建て込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
柱構造が基礎梁のないフーチング基礎に建てられているため、基礎工事の省力化と工期の短縮が可能になる。また0節鉄骨柱材が特殊な鉄骨でなく、通常の鉄骨が使用できるため基礎工事の早期着手が可能になる。低層建物では鉄骨柱の現場溶接がなくなるため、鉄骨工事の省力化と工期の短縮が可能になる。また鉄筋コンクリート柱材と1節鉄骨柱材とは柱曲げモーメント反曲点位置で接合されたことにより、合理的な鉄骨断面にすることができ、省資源化が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本願発明の鉄骨構造物の柱構造およびその構築方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。また各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。
【0010】
図1は鉄骨構造物の柱構造(以下柱構造という)1を示す断面図である。この柱構造1は基礎梁のないフーチング基礎2上に建てられた鉄骨鉄筋コンクリート柱材3と、鉄筋コンクリート柱材4と、鉄骨柱材5とからなる混合構造柱である。
【0011】
この鉄骨鉄筋コンクリート柱材3はフーチング基礎2に建て込まれた0節鉄骨柱材6と、この周囲の鉄筋7およびコンクリート8とで構成されている。この鉄骨鉄筋コンクリート柱材3の上部には鉄筋コンクリート柱材4が構築され、これに1節鉄骨柱材9が接続されている。すなわち、0節鉄骨柱材6と1節鉄骨柱材9とが鉄筋コンクリート柱材4を挟んで分離し、これらが0節鉄骨柱材6の上部に設けたアンカーボルト10で接合されている。
【0012】
この鉄筋コンクリート柱材4と1節鉄骨柱材9とは、図2に示すように、柱曲げモーメントが作用しない柱曲げモーメント反曲点位置11で接合されている。このことにより0節鉄骨柱材6と1節鉄骨柱材9との鉄骨断面を合理的な断面にすることができる。
【0013】
このように0節鉄骨柱材6と1節鉄骨柱材9とが鉄筋コンクリート柱材4を挟んで分離し、これらがアンカーボルト10で接合されたことにより、基礎梁のないフーチング基礎2に建て込んだ柱構造1にすることができ、工期の短縮および工費の削減を図ることができる。
【0014】
次に、柱構造の構築方法について説明する。はじめに基礎梁のないフーチング基礎2に0節鉄骨柱材6を建て込む。そして、この0節鉄骨柱材6の頭部にアンカーボルト10を先付けする。次に、この0節鉄骨柱材6の周りに主筋および帯筋7を配筋するとともに、柱型枠(図示せず)を組立形成する。
【0015】
この鉄筋7および柱型枠は0節鉄骨柱材6の上側まで延ばし、この上側の部分を鉄筋コンクリート柱材用の鉄筋7および柱型枠にする。そして、この柱型枠にコンクリートを打設し、これが硬化した後に柱型枠を解体すると鉄骨鉄筋コンクリート柱材3と鉄筋コンクリート柱材4とが同時に構築され、この鉄筋コンクリート柱材4の上面からはアンカーボルト10が突出されている。
【0016】
次に、この鉄筋コンクリート柱材4の上面に1節鉄骨柱材9を建て込んでアンカーボルト10で固定すると、0節鉄骨柱材6と1節鉄骨柱材9とが鉄筋コンクリート柱材4で分離した混合構造柱が構築される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】柱構造の断面図である。
【図2】柱構造の応力図を示した断面図である。
【図3】従来の柱構造の断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1、12 柱構造
2 フーチング基礎
3 鉄骨鉄筋コンクリート柱材
4 鉄筋コンクリート柱材
5 鉄骨柱材
6、15 0節鉄骨柱材
7 鉄筋
8 コンクリート
9、16 1節鉄骨柱材
10 アンカーボルト
11 柱曲げモーメント反曲点位置
13 基礎梁
14 基礎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フーチング基礎に建て込まれた0節鉄骨柱材と鉄筋コンクリートとで構成された鉄骨鉄筋コンクリート柱材と、該鉄骨鉄筋コンクリート柱材の上側に構築された鉄筋コンクリート柱材と、該鉄筋コンクリート柱材に接合された1節鉄骨柱材とからなることを特徴とする鉄骨構造物の柱構造。
【請求項2】
0節鉄骨柱材と1節鉄骨柱材とがアンカーボルトで接合されたことを特徴とする請求項1に記載の鉄骨構造物の柱構造。
【請求項3】
鉄筋コンクリート柱材と1節鉄骨柱材とは柱曲げモーメント反曲点位置で接合されたことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄骨構造物の柱構造。
【請求項4】
フーチング基礎に0節鉄骨柱材を建て込むとともに、該0節鉄骨柱材の上端部にアンカーボルトを設け、前記0節鉄骨柱材を芯材とした鉄骨鉄筋コンクリート柱材を形成するとともに、該鉄骨鉄筋コンクリート柱材の上部に鉄筋コンクリート柱材を形成し、該鉄筋コンクリート柱材の上面に1階鉄骨柱材を建て込むことを特徴とする鉄骨構造物の柱構造の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−214195(P2006−214195A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28890(P2005−28890)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】