説明

鉛フリーはんだ用鉄合金の材料等の表面処理方法及びその方法により処理された機器を有する電子部品の実装装置。

【課題】 鉛フリーはんだ溶融液に接触する機器に使用しても従来のものより優れた耐食性を有し、かつ安価な機器部材等を製造することができる表面処理方法及びこの方法で製造した機器を有する電子部品の実装装置を提供すること。
【解決手段】ステンレス鋼等の鉄合金の材料又は機器の表面にAl又はAl合金の溶融めっきを施し、これを加熱してAl又はAl合金を拡散させると同時にめっき時に余剰に付着したAl又はAl合金を自然落下等で溶融除去し、更にめっき時に付着したフラックスを酸溶液で除去して表面にAl濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層を形成することを特徴とする錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する材料又は機器の表面処理方法及びこの方法で製造した機器を有する電子部品の実装装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する鉄合金の材料又は機器の表面処理方法及びこの表面処理方法により表面を処理された機器で構成した電子部品の実装装置、詳細には鉄合金の材料又は機器の表面にFe−Al金属間化合物又はアルミニウム拡散浸透層を設ける表面処理方法及びこの表面処理方法により表面を処理された機器で構成した電子部品の実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されてきたはんだ、例えば63wt%錫−37wt%鉛の鉛はんだは、鉛が人体に有害であること等から環境問題になり、鉛はんだの使用の規制が叫ばれており、最近全面的に使用を禁止する動きになってきた。
この鉛はんだに代わるはんだとして、鉛を含有しないはんだ、すなわち鉛フリーはんだが使用されるようになってきた。この鉛フリーはんだは、錫を主成分とするものがほとんどで、その代表的なものは、錫−銀−銅系の錫−3.5銀−0.75銅の鉛フリーはんだ、錫−銅系の錫−0.7銅の鉛フリーはんだ、錫−銀系の錫−4銀の鉛フリーはんだ、錫−亜鉛系の錫−9亜鉛の鉛フリーはんだ、これらのはんだに微量の元素を加えてはんだの諸特性を改善した鉛フリーはんだが多数知られている。このように、殆どの鉛フリーはんだは、錫の含有量が85wt%以上である。
【0003】
これらの錫の含有量が85wt%以上の鉛フリーはんだは、従来の63wt%錫−37wt%鉛(以下「Sn−Pbはんだ」という。)と比較して(1)融点が30〜50℃高いこと、(2)Pbの持つ潤滑性能が低いこと等の理由から、鉛フリーはんだ溶融液に接触する機器は、高温のSnにより侵食(エロージョン)や摩耗され、機器の寿命が著しく短くなるという問題が生じている。
なお、従来のSn−Pbはんだに使用する機器は、大部分がオーステイト系ステンレス鋼のSUS304で製造されている。
【0004】
一方、電子部品を実装する際に、はんだ付け性を改善するため、その被はんだ付け部にフラックスを塗布するが、従来から使用されてきたアルコール系の溶媒、すなわちVOC(Volataile Organic Compounds)を使用したフラックスは、光化学スモッグの発生や地球温暖化の原因になるとして、最近VOCを含まないVOCフリーフラックスか又はVOC10wt%以下の低VOCフラックスが使用されるようになってきた。
【0005】
このVOCを含まないVOCフリーフラックス又は10wt%以下の低VOCフラックスは、通常溶媒が水であるが、被はんだ付け部の表面清浄作用を必要とするため、酸性度やアルカリ度を高くしたフラックスが使用されるようになってきた。これらのフラックスと前記鉛フリーはんだ溶融液の両方に接触する機器は、前記鉛フリーはんだ溶融液による侵食が前記フラックスにより加速されるという問題が生じてきた。
【0006】
この鉛フリーはんだ溶融液に接触する機器に使用する材料として、(1)SUS316、(2)SUS304を窒化処理した材料、(3)特許文献1に記載されているような表面にセラミックコーテングをした材料、(4)Ti又はTi合金等が使用され又は使用することが検討されている。
しかし、上記(1)のSUS316は、従来Sn−Pbはんだに使用されている機器の材料であるSUS304より寿命が僅かに長くなる程度である。
【0007】
さらに、上記(2)のSUS304の表面を窒化処理した材料は、SUS304で作製されたものより寿命が2倍程度になるが、まだ不十分である。
また、上記(3)のセラミックコーテングしたものは、寿命が十分長くなるが、価格が高くなるという欠点がある。
また、上記(4)のTi又はTi合金は、使用の仕方(特にはんだ付けの際に使用されるフラックスの種類)により効果がある場合と無い場合があり、かつ高価があるという欠点がある。
【0008】
溶融した錫に対して耐食性の優れた材料として、鋼又はステンレス鋼をアルミニウム拡散被覆法で処理した材料、すなわち鋼等をアルミニウム−鉄合金粉末等と一緒に容器の中に入れ、900〜1000℃で10時間程度加熱処理し、鋼等の表面に鉄−アルミニウム合金層を設けた材料が特許文献2において知られている。
しかし、この方法は、高温で長時間処理をする必要があるため、溶接等で接合した機器は著しく変形して機能を阻害し、また高価になるという問題がある。
【0009】
また、ステンレス鋼等の表面に鉄−アルミニウム合金層を設ける方法として、浸漬法等でアルミニウムを被覆し、次いで加熱して拡散処理をする方法も非特許文献1で知られている。
【特許文献1】特開2003−311398号公報
【特許文献2】特公昭48−27056号公報
【非特許文献1】社団法人金属表面技術協会編「金属表面技術便覧」昭和51年11月30日、日刊工業新聞社発行、1163〜1167頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する機器に使用してもSUS304を窒化処理した材料及び機器より優れた耐侵食性等の耐食性を有し、かつ安価な材料及び機器を製造することができる表面処理方法及びSUS304を窒化処理した機器より優れた耐食性を有し、かつ安価である機器を有する電子部品の実装装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明者らは、錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する機器に使用しても窒化処理した機器より優れた耐侵食性等の耐食性を有する材料及び機器を製造することができる表面処理方法等について鋭意研究していたところ、鋼、ステンレス鋼、鋳鉄等の鉄合金の表面にアルミニウム又はアルミニウム合金を溶融めっきし、加熱してアルミニウム又はアルミニウム合金を拡散させると同時にめっき時に余剰に付着したアルミニウム又はアルミニウム合金を溶融除去(自然落下等で除去)し、表面にアルミニウム濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層を形成したステンレス鋼、鋼、鋳鉄等の鉄合金を用いて錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する機器を構成すると、ステンレス鋼に窒化処理した材料で製造したものより寿命がはるかに長くなるとの知見を得た。
【0012】
さらに、錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだの中にアルミニウムが混入すると、はんだ接合部において金属間化合物を形成し、接合部を脆くするので、アルミニウムが混入しないようにする必要があること、めっき時に付着したフラックスを付けたままにしておくと、はんだ溶融液を汚染し、接合部の強度、化学的性質を低下するので、酸溶液で十分除去する必要があるとの知見を得た。
【0013】
また、酸溶液でフラックスを除去し、水洗したままでは、極微量のアルミニウム残渣と硝酸が反応して硝酸アルミニウムを形成し、これがスラッジとして表面に付着したまま残り、錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだと接触すると、この鉛フリーはんだ中のAg、Cu等と合金及び金属間化合物を形成し、これがはんだ溶融液中のドロスを増加させ、このドロスがはんだ接合部に介在して機械的、化学的特性を低下する危険性があるので、このスラッジを除去することが好ましいこと、このスラッジを除去するには、ショットピーニングをすればスラッジの除去が十分行えるとともに、最表面の残留応力分布が均一な圧縮応力になり、鉛フリーはんだ溶融液と接触することにより残留応力分布のバラツキが原因と思われるシミ状の変色が無くなるという効果がある等の知見を得た。
本発明は、これらの知見により発明をされたものである。
【0014】
すなわち、本発明は、ステンレス鋼、特殊鋼、鋳鉄等の鉄合金の材料又は機器の表面にアルミニウム又はアルミニウム合金の溶融めっきを施してめっき層及びFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層を形成し、これを加熱してアルミニウム又はアルミニウム合金を拡散させると同時にめっき時に余剰に付着したアルミニウム又はアルミニウム合金を自然落下等で溶融除去し、更にめっき時に付着したフラックスを酸溶液で除去して表面にアルミニウム濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層を形成することを特徴とする錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する材料又は機器の表面処理方法である。
【0015】
さらに、本発明は、上記めっき時に付着したフラックスを酸溶液で除去した後、ショットピーニングをしてアルミニウム又はアルミニウム合金等の酸化スラッジを除去して表面にアルミニウム濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層を形成することを特徴とする錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する材料又は機器の表面処理方法である。
【0016】
また、本発明は、錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する機器が、表面にアルミニウム濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層を有するステンレス鋼、特殊鋼、鋳鉄等の鉄合金により構成されていることを特徴とする電子部品の実装装置である。
【0017】
また、本発明は、錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液及びアルコール系溶媒を含まないか又は10wt%以下の低アルコール系溶媒のフラックスに接触する機器が、表面にアルミニウム濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物又はアルミニウム拡散浸透層を有するステンレス鋼、特殊鋼、鋳鉄等の鉄合金により構成されていることを特徴とする電子部品の実装装置である。
【0018】
また、本発明は、上記85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する電子部品の実装装置の機器が、はんだ槽、チャンバ体、吹き口体、ヒーター、ポンプ及びはんだ流路のうちの1つ又は2つ以上であることを特徴とするものである。
【0019】
なお、本発明において「機器」とは、材料を加工して作製したもののことであり、材料を加工して作製した部材を含むものである。
さらに、本発明において、「・・・鉄合金により構成されている・・・」の「構成」には、機器を作製する前の材料の表面にアルミニウム濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層を形成し、この材料で機器が作製される場合、機器を作製した後、機器の表面をアルミニウム濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物又はアルミニウム拡散浸透層を設ける場合を含むものである。
【0020】
また、本発明において「Fe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層」とは、Fe−Al金属間化合物層のみの場合、アルミニウム拡散浸透層のみの場合ばかりでなく、Fe−Al金属間化合物層及びアルミニウム拡散浸透層の両方を有するものも含むものであり、これらにCr−Al金属間化合物、Ni−Al金属間化合物等のFe以外の他の金属とAlとの金属間化合物を含むものを排除するものでもない。また、これらの層の最表面に本発明の処理又は自然に生成される不動態化皮膜がある場合も排除するものではない。
【発明の効果】
【0021】
(1)本発明の表面処理方法は、ステンレス鋼、特殊鋼、鋳鉄等の鉄合金の材料又は機器の表面に錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ(以下、「鉛フリーはんだ」という。)溶融液に対して侵食(エロージョン)や摩耗に優れたアルミニウム濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層(以下、「Fe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層」という。)を安価に形成することができ、また、めっき時に付着したフラックスを酸溶液で十分除去しているので、鉛フリーはんだ溶融液を汚染し、はんだ接合部の機械的、化学的特性を低下させることがない。
【0022】
(2)本発明のめっき時に付着したフラックスを酸溶液で除去し、その後ショットピーニングをすればスラッジの除去が十分行えるとともに、最表面の残留応力分布が均一な圧縮応力になり、鉛フリーはんだ溶融液と接触することにより残留応力分布のバラツキが原因と思われるシミ状の変色が無くなるという効果があるので、アルミニウム等が鉛フリーはんだ溶融液を汚染しないため、はんだ接合部の機械的、化学的特性を低下させることがなく、また、表面が安定しているので、鉛フリーはんだ溶融液等による侵食、摩耗等に対してさらに優れたものとなる。
【0023】
(3)本発明の電子部品の実装装置は、鉛フリーはんだ溶融液又は鉛フリーはんだ溶融液及びアルコール系溶媒を含まないか又は10wt%以下の低アルコール系溶媒のフラックス(以下、両者を総称して「低VOCフラックス」という。)に接触する機器が、表面にFe−Al金属間化合物又はアルミニウム拡散浸透層を有するステンレス鋼、鋼等の鉄合金により構成されているので、鉛フリーはんだ溶融液による侵食、摩耗等に優れ、かつ安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
まず、本発明に共通する事項について説明をする。
本発明の表面処理方法により処理され、又は本発明の電子部品の実装装置に用いられる鉄合金は、普通鋼、ステンレス鋼、特殊鋼、鋳鉄等であるが、多くの部材においてはオーステナイト系ステンレス鋼のSUS304、SUS316等は耐食性が優れているので好ましい。ただ、はんだ槽は鋳鉄、吹き口体は炭素鋼でよく、ヒータのカバー(シース)は炭素鋼管が好ましい。ヒータのカバー(シース)は、熱サイクルを受けるため膨張と収縮の繰り返しが多いので、線膨張係数がオーステナイト系ステンレス鋼より小く耐熱疲労性に優れている炭素鋼管が好ましい。
【0025】
本発明において、Fe−Al金属間化合物とは、Fe3 Al、Fe2 Al5 、Fe3 Al2 等である。本発明の表面処理方法により処理されて形成されたFe−Al金属間化合物又はアルミニウム拡散浸透層は、大部分がアルミニウム濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物であり、アルミニウム拡散浸透層は僅かである。Fe−Al金属間化合物のうちでは、大部分がFe2 Al5 (η相)である。
【0026】
また、本発明において、Fe−Al金属間化合物又はアルミニウム拡散浸透層のアルミニウム濃度を13〜60at%に限定しているのは、アルミニウム濃度が13at%未満では、鉛フリーはんだ溶融液又は鉛フリーはんだ溶融液及び低VOCフラックスに対して耐侵食性、耐摩耗性等が十分でないからであり、60at%を超えると純アルミニウムが表面に現れ易くなり、鉛フリーはんだ溶融液中に溶出する恐れがあるからである。
【0027】
次に、本発明の表面処理方法について説明する。
本発明の溶融めっきにより処理される鉄合金の前処理方法は、通常のアルミニウム又はアルミニウム合金の溶融めっき方法で行われている方法でよい。例えば、ショットブラストをし、強アルカリ性溶液により脱脂、水洗、酸洗い、水洗、湯洗い予熱及びフラックス塗布(溶融めっき浴の表面に浮遊させて置けばよい。)をこの順番で行うことである。
【0028】
この前処理方法において、強アルカリ性溶液により脱脂をする前にショットブラストをすると、材料自体の不均質な表面性状と二次加工(鋳造、プレス、機械加工、溶接等)により不均質となった表面性状が均質化され、かつ表面が清浄化され、また表面に凹凸(梨地肌)が形成されることにより表面積を増大し、Fe−Al金属間化合物の前段階の溶融アルミニウムのめっき性が良好になる。特に、鋳鉄にFe−Al金属間化合物層を形成する場合には、表面の酸化層、付着した鋳型の粘結剤、表面へ埋没した鋳砂を除去して清浄化するので効果的である。シヨットブラスト材として切削性のある砂、セラミック、粉砕ガラスを用い、吹きつけ圧力:0.5〜10kg/cm2 で表面粗さが均一になるまで行うのが好ましい。
【0029】
また、溶融めっき前に予熱をすると、材料、加工(プレス、機械加工、溶接等)の残留応力が解放され、また溶融めっき浴へ浸漬することによる急激な加熱による変形(肉厚の違いによる膨張差による変形)を防止することができる。この予熱は、無酸化雰囲気炉中で応力除去焼鈍をしながら600〜800℃に加熱するか、又は200〜300℃に加熱した後、さらにアルミニウム溶融めっき浴の直上に5〜90分間保持し、300〜700℃に加熱するのが好ましい。
溶融めっきに使用する装置は、アルミニウム又はアルミニウム合金を溶融めっきする通常の装置でもよい。
【0030】
本発明の表面処理方法において使用する溶融めっき材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金であるが、アルミニウム合金は、Al−12wt%Si合金、Al−Si−Mg合金、これらに0.2〜2wt%のBe又は0.1〜1.5wt%のMnを含有させた合金等である。上記Beを含有させたアルミニウム合金は、めっき浴表面に浮上するドロスの発生を抑制する効果があり、大気中でめっきをする場合に有効である。また、上記Mnを含有させた合金は、母材との界面がデインプルな形状(断面が小さい波)でアンカー効果のある金属間化合物層となり、界面から剥離するのを抑制する効果がある。
【0031】
溶融めっき温度は、めっきをする材料のアルミニウム又はアルミニウム合金の融点より30〜50℃高い温度が適当である。例えば、Al−12wt%Si合金の場合、溶融めっき温度は、650〜700℃である。溶融めっき温度が高過ぎると、ドロスの発生が多くなり、また金属間化合物が均一に形成されなくなるので、なるべく温度が低い方が好ましい。また、温度が高過ぎると、被めった材がステンレス鋼の場合には、クロム炭化物が粗大化して耐食性、靱性等を低下させるので、なるべく低い方が好ましい。
【0032】
溶融めっき浴への浸漬時間は、アルミニウム又はアルミニウム合金のめっき方式により異なる。
被めっき材をH2 、H2 −N2 還元雰囲気で加熱する方式の場合は、1〜2秒でめっきをすることができる。
フラックス方式の場合は、被めっき材の表面が活性化する反応時間とめっき溶融液の温度に到達しないと反応しないため、予熱温度、フラックスの組成、反応温度及び被めっき材の質量により異なる。
【0033】
置換めっき方式の場合は、めっき皮膜が溶融めっき浴に溶け込まないと反応しないので、予熱温度と質量によって異なる。
浸漬時間は、長過ぎると被めっき材が溶融アルミニウムに侵食され、溶融アルミニウム中に溶け出して被めっき材の肉厚が減少し、かつめっき浴の組成が変化してしまうので、20分以内が好ましい。したがって、溶融めっき浴への浸漬時間は、2秒〜20分が適当である。
溶融めっき浴への浸漬は、2回以上行うのが好ましい。一回では全体に均一にめっきできない場合があるからである。
【0034】
溶融めっき後の冷却速度は、本発明においては速くても遅くてもよい。一般の溶融アルミニウムめっきの場合、被めっき材とめっき層との界面に金属間化合物層ができるのを抑制する(金属間化合物層は脆いため。)ために急冷するが、本発明は、この金属間化合物層を活用するからである。
【0035】
溶融めっき後に加熱するのは、アルミニウム又はアルミニウム合金を拡散させてFe−Al金属間化合物又はアルミニウム拡散浸透層を増大させると同時にめっき時に余剰に付着したアルミニウム又はアルミニウム合金を自然落下等で溶融除去するためである。この加熱温度は、700〜900℃が適当であり、大気中で加熱してもよい。加熱時間は、1〜5時間程度である。
【0036】
溶融めっき後にめっき時に付着したフラックスを酸溶液で除去するのは、フラックスが鉛フリーはんだ溶融液を汚染し、そのフラックスが接合部に入って接合部の強度、化学的性質を低下するからである。このフラックスを除去するには、3〜6wt%の硝酸溶液等で酸洗いすればよい。
その後、水洗、湯洗及び乾燥を行えば終了することもできるが、必要な場合には、下記ショットピーニングで表面を処理する工程を加えることができる。
【0037】
めっき時に付着したフラックスを酸溶液で除去後、水洗、湯洗し、その後にショットピーニングをするのは、スラッジを除去するとともに、最表面の残留応力分布を均一な圧縮応力にするためである。ショットピーニングをすると、スラッジが十分除去されるとともに、被めっき材が鉛フリーはんだ溶融液と接触することにより発生する最表面の残留応力分布のバラツキがなくなり、これのバラツキが原因と思われるシミ状の変色が無くなるからである。
このショットピーニングは、ブラスト材の粒度が100〜600メッシュ、投射圧力が0.3〜10kg/cm2 で行うのが適当である。
【0038】
次に、電子部品の実装装置の鉛フリーはんだ溶融液又は鉛フリーはんだ溶融液及び低VOCフラックスに接触する機器について説明する。
図3は、プリント配線板に電子部品を装着し、はんだ付けをしたところを示す説明図、図4は、本発明を適用する電子部品の実装装置のはんだ付け装置の一例の斜視図、図5は、図4のA−A断面図、図6は、本発明を適用する電子部品の実装装置のはんだ付け装置の他例の斜視図、図7は、図6のB−B断面図である。
【0039】
先ず、本発明の電子部品の実装装置によりプリント配線板に電子部品を鉛フリーはんだを用いてはんだ付けをする部分及びはんだ付け方法を図3を参照して説明する。
リード型電子部品の場合には、プリント配線板の穴(穴の裏側の周囲にランドと呼ばれる銅箔部分があり、この銅箔部分が回路に接続されている。)にリード型電子部品のリード端子を上から挿入し、チップ型電子部品の場合には、プリント配線板のランドにその端子電極を載せた状態にして接着剤で仮接着し、リード端子とランド、端子電極とランドがはんだ槽の中に設けた吹き口(図4参照)から出る鉛フリーはんだ溶融液の噴流波に接触するように電子部品を装着したプリント配線板を搬送し、図3に示すようにリード端子とランド、端子電極とランドとにはんだのフィレットを形成してはんだ付けをする方法である。
【0040】
次に、電子部品の実装装置のはんだ付け装置の一例を図4及び図5を参照して説明する。
本発明の電子部品の実装装置のはんだ付け装置1は、鉛フリーはんだ溶融液5を収容するはんだ槽2、はんだ槽2内の上部に設けられたチャンバ体3、チャンバ体3の上部に固定されている吹き口体4、はんだ槽2内に設けられ、鉛フリーはんだ溶融液5をチャンバ体3の中に送り込む電磁ポンプ6、鉛フリーはんだ溶融液5を加熱するヒータ7、はんだ槽2の外に設けられた電磁ポンプ6の制御装置8、ヒータ7を制御する制御装置9等からなっている。
【0041】
はんだ槽2は、ケージング10で固定されており、鉛フリーはんだ溶融液5を入れるもので、チャンバ体3等が中に設置さており、鋳鉄等で作製されている。このはんだ槽2の内側の表面は、鉛フリーはんだ溶融液5に接触し、さらに低VOCフラックスに接触する場合もあるので、その表面にFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層が形成されている。
【0042】
なお、図5を見ると、はんだ槽2が上下に分かれているように見えるが、真ん中に見える仕切りのような物は、チャンバ体3を上側に支持し、電磁ポンプ6を下側に支持する吊り下げ部材11であり、鉛フリーはんだ溶融液5が上下に自由に移動(使用中は矢印のように移動)することができるようになっているものである。
【0043】
はんだ槽2内の上部に設けられたチャンバ体3は、はんだ槽2の上縁にねじ25で固定され、上部に取手12が設けられた吊り下げ部材11に固定されている。このチャンバ体3は、内部に案内板13が設けられ、上部に吹き口体4がスリーブ14で保護されたねじ15で固定されており、下部に電磁ポンプ6の吐出口16が固定されているもので、ヒータ7で加熱され、所定温度になっている鉛フリーはんだ溶融液5が電磁ポンプ6で送り込まれ、上部に固定されている吹き口体4に鉛フリーはんだ溶融液5を供給するようなっているものである。
【0044】
このチャンバ体3は、オーステナイト系ステンレス鋼のSUS316等で作製されており、その内側及び外側の両面は鉛フリーはんだ溶融液5と接触し、さらに低VOCフラックスに接触する場合もあるので、その表面にFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層が形成されている。
また、吊り下げ部材11、スリーブ14も鉛フリーはんだ溶融液5と接触し、さらに低VOCフラックスに接触する場合もあるので、その表面にFe−Al金属間化合物又はアルミニウム拡散浸透層が形成されている。
【0045】
吹き口体4は、チャンバ体3の上部にスリーブ14で保護されたねじ15で固定されており、上部に縦方向に幅が狭く、横方向に長い吹き口17が設けられており、チャンバ体3から供給された鉛フリーはんだ溶融液5が吹き口17から噴流波18を造ってはんだ槽2に流出するようになっている。
【0046】
この吹き口体4は、炭素鋼等で作製されており、内側及び外側の両面が鉛フリーはんだ溶融液5と接触し、さらに低VOCフラックスに接触する場合もあるので、その表面にFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層が形成されている。
【0047】
吊り下げ部材11の下側に固定ねじ29で固定されており、チャンバ体3の中に鉛フリーはんだ溶融液5を送り込む電磁ポンプ6は、外部コア及びコイル19、上部に把持部23を有する内部コア20、該コイルに通電するための電線カバー用のパイプ24等からなっており、外部コア及びコイル19、内部コア20は直接鉛フリーはんだ溶融液5に接触しないようにカバー21,22が設けられている。
【0048】
この電磁ポンプ6は、はんだ槽2の外部に設けた電源26から供給される電気が制御装置8によって制御されるようになっており、外部コア及びコイル19と内部コア20の間の下の吸い込み口27から鉛フリーはんだ溶融液5を吸い込み、それらの間を通り、チャンバ体3に結合されている吐出口16からチャンバ体3の下部に供給し、案内板13で分配され、吹き口体4の吹き口17から噴流波18を造って流出するようになっている。
【0049】
この電磁ポンプ5の外部コア及びコイル19と内部コア20のカバー21,22及びパイプ24は、SUS316等で作製されており、それらの外側の表面は、鉛フリーはんだ溶融液5に接触し、さらに低VOCフラックスに接触する場合もあるので、その表面にFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層が形成されている。また固定ねじ29も同様な処理がされている。
【0050】
はんだ槽2内の下部に設けられたヒータ7は、鉛フリーはんだ溶融液5を所定の温度に加熱するためのもので、直接鉛フリーはんだ溶融液5に接触しないようにカバー(シース)28が設けられている。
このヒータ7は、はんだ槽2の外部に設けた電源26から電気が供給されて加熱されるようになっており、鉛フリーはんだ溶融液5の温度をカバー31で覆われたセンサー30で測定し、その測定値に基づいて温度制御根装置9により電源26から供給する電気を制御して温度を制御するようになっているものである。
【0051】
ヒータ7のカバー(シース)28は、炭素鋼等で作製されており、それらの外側の表面は、鉛フリーはんだ溶融液5に接触し、さらに低VOCフラックスに接触する場合もあるので、その表面にFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層が形成されている。
また、センサー30のカバー31の外側の表面も鉛フリーはんだ溶融液5に接触し、さらに低VOCフラックスに接触する場合もあるので、その表面にFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層が形成されている。
【0052】
このように、本発明の電子部品の実装装置のはんだ付け装置1は、鉛フリーはんだ溶融液5に接触し、さらに低VOCフラックスに接触する場合もある機器の表面にFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層が形成されているので、鉛フリーはんだ溶融液等に対して優れた耐侵食性等の耐食、耐摩耗性等を有するものである。
なお、図中の符号38はドロスである。
【0053】
次に、電子部品の実装装置のはんだ付け装置の他例を図6及び図7を参照して説明する。
本発明の電子部品の実装装置のはんだ付け装置1は、回転式ポンプ32を使用したもので、鉛フリーはんだ溶融液5を収容するはんだ槽2、はんだ槽2内の上部に設けられたチャンバ体3、チャンバ体3の上部に固定されている吹き口体4、鉛フリーはんだ溶融液5をチャンバ体3の中に送り込む回転式ポンプ32、鉛フリーはんだ溶融液5を加熱するヒータ7、はんだ槽2の外に設けられた回転式ポンプ32の制御装置(図示省略)、ヒータ7を制御する制御根装置9等からなっている。
【0054】
この電子部品の実装装置のはんだ付け装置1は、大部分の機器が上記電子部品の実装装置のはんだ付け装置1の一例のものと実質的に同じであるので、これらの説明は省略し、形式が相違している回転式ポンプ32について説明する。
【0055】
この回転式ポンプ32は、はんだ槽2の上に固定した台座36の上に設置したモーター33、このモーター33に駆動される回転軸34、この回転軸34に固定され、回転する羽根車35からなっている。ヒータ7で所定の温度に加熱された鉛フリーはんだ溶融液5は、下側の吸い込み口27から吸い込まれ、横側に設けた吐出口16からチャンバ体3に供給され、案内板13で分配され、多孔板37で整流されて吹き口体4の吹き口17から噴流波18を造って流出するようになっている。
【0056】
この回転式ポンプ32は、回転軸34と羽根車35の表面が鉛フリーはんだ溶融液5に接触し、さらに低VOCフラックスに接触する場合もあるので、その表面にFe−Al金属間化合物又はアルミニウム拡散浸透層が形成されている。
【実施例1】
【0057】
JISのSUS316の厚さ3mmのステンレス鋼板を被めっき材とし、この被めっき材を図1に示すように、前処理として粒度120メッシュのガラスビーズのシヨット材を使用してショットブラストをし、脱脂、水洗、酸洗い、水洗及び乾燥をこの順序で行い、300℃で60分間の予熱を行い、ステンレス鋼用フラックス添加した700℃のアルミニウムの溶融めっき浴に5分間浸漬し、処理ムラを無くすため更に5分間浸漬し、余剰付着のアルミニウムを振り落として大気中で冷却をした。その後830℃の大気炉に被めっき材を入れて3時間加熱し、表面に付着したアルミニウムを被めっき材へ熱拡散させると共に、表面に付着した溶融アルミニウムを自然落下させ、冷却した。さらにその後、5%の硝酸溶液に浸漬してめっき時に付着したフラックスを除去し、水洗、湯洗及び乾燥して本発明の試験片1とした。
【0058】
上記本発明のテストピース1の表面層のアルミニウムの濃度等を測定したところ、金属間化合物層及び拡散浸透層のアルミニウムの濃度は約54.7at%であり、アルミニウの大部分が金属間化合物のFe2 Al5 (η相)になっていた。また、金属間化合物層及び拡散浸透層の厚さは、薄いところが15μmであり、厚いところが25μmであった。
【実施例2】
【0059】
JISのSUS316の厚さ3mmのステンレス鋼板を被めっき材とし、この被めっき材を図2に示すように、めっき前処理として粒度100メッシュのガラスビーズのシヨット材を使用してショットブラストをし、脱脂、水洗、酸洗い、水洗及び乾燥をこの順序で行い、300℃で60分間の予熱を行い、ステンレス鋼用フラックスを添加した700℃のアルミニウムの溶融めっき浴に5分間浸漬し、処理ムラを無くすため更に5分間浸漬し、余剰付着のアルミニウムを振り落として大気中で冷却した。その後710℃の大気炉に被めっき材を入れて3時間加熱し、表面に付着したアルミニウムを被めっき材へ熱拡散させると共に、表面に付着した溶融アルミニウムを自然落下させ、空冷し、湯洗した。さらにその後、5wt%の硝酸溶液に浸漬して付着しているフラックスを除去し、水洗し、湯洗及び乾燥し(ここまでは実施例1と同じ。)、粒度240メッシュのガラスビーズのシヨット材を使用してショットピーニングをした。その後水洗し、湯洗及び乾燥して本発明の試験片2とした。
【0060】
上記本発明の試験片2の表面層のアルミニウムの濃度等を測定したところ、金属間化合物層及び拡散浸透層のアルミニウムの濃度は約54.7at%であり、アルミニウムの大部分が金属間化合物のFe2 Al5 (η相)になっていた。また、金属間化合物層及び拡散浸透層の厚さは、薄いところで15μm、厚いところで25μmであり、表面は平滑で、表面をティシュペーパーで擦っても、酸化スラッジ等はティシュペーパーに付着しなかった。
【実施例3】
【0061】
JISのSUS304の厚さ3mmのステンレス鋼板を被めっき材としたこと以外は実施例2と同様に処理して本発明の試験片3とした。
【0062】
上記本発明の試験片3の表面層のアルミニウムの濃度等を測定したところ、金属間化合物層及び拡散浸透層のアルミニウムの濃度は約54.7at%であり、アルミニウムの大部分が金属間化合物のFe2 Al5 (η相)になっていた。また、金属間化合物層及び拡散浸透層の厚さは、薄いところで15μm、厚いところで25μmであり、表面は平滑で、表面をティシュペーパーで擦っても、酸化スラッジ等はティシュペーパーに付着しなかった。
【0063】
[侵食試験]
上記本発明の試験片1、2および3、無処理のSUS304の厚さ3mmのステンレス鋼板の試験片(比較例1)、無処理のSUS316の厚さ3mmのステンレス鋼板の試験片(比較例2)、SUS304の厚さ3mmのステンレス鋼板を減圧中で窒化処理し、表面に2〜3μmの酸化層を設けた試験片(比較例3)及びSUS316の厚さ3mmのステンレス鋼板を表面に不動態化皮膜を有す状態で窒化処理をした試験片(比較例4)を400℃の鉛フリーはんだ(Sn−3.0wt%Ag−0.5wt%Cu)溶融液に浸漬して毎分6回上下動し、図8に示した時間毎に各試験片の重量を測定し、図8に侵食状態を減量率で表した。
【0064】
これらの結果によると、比較例1の試験片(無処理)は500時間で減量率が、−3.2%、比較例2の試験片(無処理)は500時間で減量率が−1.1%、比較例3の試験片(特殊窒化処理)は3700時間で減量率が−0.6%になり、また比較例4の試験片(特殊窒化処理)は1400時間で減量率が−0.4%になり、かなり侵食されていた。 これらに対して、本発明の試験片1は、1,064時間で減量率が+0.11%、本発明の試験片2は、4,200時間で減量率が+0.21%であり、また本発明の試験片3は、5,300時間で減量率が+0.28%であり、侵食による減量がなく、やや増量していた。
【0065】
本発明の試験片1を1064時間経過後の表面状態を図9の写真、本発明の試験片2を4200時間経過後の表面状態を図10の写真、本発明の試験片3を4000時間経過後の表面状態を図11の写真で、比較例1の試験片を920時間経過後の表面状態を図12の写真、比較例2の試験片を920時間経過後の表面状態を図13の写真、比較例3の試験片を3700時間経過後の表面状態を図14の写真、また比較例4の試験片を1400時間経過後の表面状態を図15 の写真で示す。これらの写真の白い部分は侵食された部分である。
これらの写真から、比較例1〜4の試験片は、かなり侵食されていることが分かる。しかし、本発明の試験片1〜3は1064時間、4200時間又は4000時間経過後もほとんど侵食されていないことが分かる。
【実施例4】
【0066】
上記本発明の試験片2及び3並びに比較例1及び2の試験片を使用し、また上記侵食試験と同様な鉛フリーはんだ溶融液を使用し、毎分6回上下動し、VOCフリーフラックスを溶融鉛フリーはんだと試験片が接する近傍に少量ずつ1000時間当たり20ミリリットル加えたところ、比較例1の試験片と比較例2の試験片は、溶融鉛フリーはんだに接触しない部分も変色して腐食が進行していたが、本発明の試験片2及び3は変色がなく、腐食もなかった。
【実施例5】
【0067】
はんだ槽を鋳鉄(FCD材)で製造し、ヒーターのカバー(シース)を炭素鋼管(STKM材)で製造し、これらを上記試験片2と同様に処理して表面にFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層を形成した。これらのはんだ槽及びヒーターのカバーを上記侵食試験のはんだ槽及びヒーターのカバーとして使用したところ、4500時間経過後も侵食は全く見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、電子部品をプリント配線板にはんだ付けするために欠かすことができない電子部品の実装装置等に適用されるものであり、侵食性等の高い溶融鉛フリーはんだや腐食性の高い低VOCフラックスに対して高い耐侵食性、耐腐食性があり、また実施する方法も容易であり、製造された材料及び機器も安価であるので、十分利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施方法の一例を示す説明図である。
【図2】本発明の実施方法の他例を示す説明図である。
【図3】プリント配線板に電子部品を装着し、はんだ付けをしたところを示す説明図である。
【図4】本発明を適用する電子部品の実装装置のはんだ付け装置の一例の斜視図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】本発明を適用する電子部品の実装装置のはんだ付け装置の他例の斜視図である。
【図7】図6のB−B断面図である。
【図8】本発明の実施例1〜3の試験片及び比較例1〜4の侵食試験をした結果を示すクラフである。
【図9】侵食試験をした本発明の試験片1の図面代用写真である。
【図10】侵食試験をした本発明の試験片2の図面代用写真である。
【図11】侵食試験をした本発明の試験片3の図面代用写真である。
【図12】侵食試験をした比較例1の試験片の図面代用写真である。
【図13】侵食試験をした比較例2の試験片の図面代用写真である。
【図14】侵食試験をした比較例3の試験片の図面代用写真である。
【図15】侵食試験をした比較例4の試験片の図面代用写真である。
【符号の説明】
【0070】
1 電子部品の実装装置のはんだ付け装置
2 はんだ槽2
3 チャンバ体
4 吹き口体
5 鉛フリーはんだ溶融液
6 電磁ポンプ
7 ヒータ
8 電磁ポンプの制御装置
9 ヒータの制御装置
10 ケ−シング
11 吊り下げ部材
12 取手
13 案内板
14 スリーブ
15 ねじ
16 吐出口
17 吹き口
18 噴流波
19 外部コア及びコイル
20 内部コア
21 外部コア及びコイルのカバー
22 内部コアのカバー
23 把持部
24 パイプ
25 固定ねじ
26 電源
27 吸い込み口
28 ヒータのカバー(シース)
29 固定ねじ
30 センサー
31 センサーのカバー
32 回転式ポンプ
33 モーター
34 回転軸
35 羽根車
36 吸い込み口
37 多孔板
38 ドロス



























【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄合金の材料又は機器の表面にアルミニウム又はアルミニウム合金の溶融めっきを施してめっき層及びFe−Al金属間化合物又はアルミニウム拡散浸透層を形成し、これを加熱してアルミニウム又はアルミニウム合金を拡散させると同時に余剰に付着したアルミニウム又はアルミニウム合金を溶融して除去し、更にめっき時に付着したフラックスを酸溶液で除去して表面にアルミニウム濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物又はアルミニウム拡散浸透層を形成することを特徴とする錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する鉄合金の材料又は機器の表面処理方法。
【請求項2】
鉄合金の材料又は機器の表面にアルミニウム又はアルミニウム合金の溶融めっきを施してめっき層及びFe−Al金属間化合物又はアルミニウム拡散浸透層を形成し、これを加熱してアルミニウム又はアルミニウム合金を拡散させると同時に余剰に付着したアルミニウム又はアルミニウム合金を溶融して除去し、更にめっき時に付着したフラックスを酸溶液で除去し、その後ショットピーニングをして表面のアルミニウム又はアルミニウム合金及び鉄の酸化スラッジを除去して表面にアルミニウム濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物又はアルミニウム拡散浸透層を形成することを特徴とする錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する鉄合金の材料又は機器の表面処理方法。
【請求項3】
上記鉄合金がステンレス鋼又は鋳鉄であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する材料又は機器の表面処理方法。
【請求項4】
錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する機器が、表面にアルミニウム濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層を有する鉄合金により構成されていることを特徴する電子部品の実装装置。
【請求項5】
上記錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液に接触する機器が、はんだ槽、チャンバ体、吹き口体、ヒーター、ポンプ及びはんだ流路のうちの1つ又は2つ以上であることを特徴とする請求項4記載の電子部品の実装装置。
【請求項6】
上記鉄合金がステンレス鋼又は鋳鉄であることを特徴とする請求項4記載の電子部品の実装装置。
【請求項7】
錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液及びアルコール系溶媒を含まないか又は10wt%以下の低アルコール系溶媒のフラックスに接触する機器が、表面にアルミニウム濃度が13〜60at%のFe−Al金属間化合物層又はアルミニウム拡散浸透層を有する鉄合金により構成されていることを特徴とする電子部品の実装装置。
【請求項8】
上記錫含有量が85%以上の鉛フリーはんだ溶融液及びアルコール系溶媒を含まないか又は10wt%以下の低アルコール系溶媒のフラックスに接触する機器が、はんだ槽、チャンバ体、吹き口体、ヒーター、ポンプ及びはんだ流路のうちの1つ又は2つ以上であることを特徴とする請求項7記載の電子部品の実装装置。
【請求項9】
上記鉄合金がステンレス鋼又は鋳鉄であることを特徴とする請求項7記載の電子部品の実装装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−28638(P2006−28638A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5849(P2005−5849)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000232450)日本電熱計器株式会社 (25)
【出願人】(503304500)株式会社伸和熱処理 (1)
【出願人】(596170273)伸光金属工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】