説明

銀とカーボンナノチューブを含む導電性樹脂ペースト組成物およびこれを用いた半導体装置

【課題】耐マイグレーション性、接着強度、導電性に優れ、ダイボンド用としてIC、LSI等の半導体素子をリードフレーム、ガラスエポキシ基板等に接着するのに好適な、銀とカーボンナノチューブを含む導電性樹脂ペースト組成物およびこれを用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】少なくとも熱硬化性樹脂(A)と導電性フィラー(B)とを含む導電性樹脂ペースト組成物において、導電性フィラー(B)は、銀粉(B1)に、耐マイグレーション性を向上させるに十分な量の長さ0.5〜5μmのカーボンナノチューブ(B2)を配合させることを特徴とする導電性樹脂ペースト組成物およびこれを用いた半導体装置によって提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀とカーボンナノチューブを含む導電性樹脂ペースト組成物およびこれを用いた半導体装置に関し、より詳しくは、耐マイグレーション性、接着強度、導電性に優れ、ダイボンド用としてIC、LSI等の半導体素子をリードフレーム、ガラスエポキシ基板等に接着するのに好適な、銀とカーボンナノチューブを含む導電性樹脂ペースト組成物およびこれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置を製造する際の半導体素子とリードフレーム(支持部材)の接合方法として、金−シリコン共晶体等の無機材料を接着剤として用いる方法や、エポキシ樹脂等の有機材料に銀粉等を分散させてペースト状態とし、これを接着剤として用いる方法などがある。しかしながら、金−シリコン共晶体等を用いる前者の方法では接着剤のコストが高く、350℃から400℃程度の高温での熱処理が必要であり、また接着剤が硬く、熱応力によってチップの破壊が起こるという問題がある。
【0003】
そのため、最近では銀粉を含んだ銀ペーストを用いる後者の方法が主流となっている。しかしながら、この方法にしても、銀が高価であることからペーストも高価なものになるという問題があった。また、銀は高温多湿の雰囲気下で電界が印加されると、マイグレーションと称する銀の電析が生じるという問題もあった。さらに、形状が扁平状等の銀フィラーを用いると、導電性は良好であるが粘度が高くなり、作業性が悪くなるという問題もあった。作業性を改善するためには、希釈剤量を増加させねばならず、そうすると接着強度が低下してしまうという現象が起こる。
【0004】
これに対して、カーボンナノチューブを用いた導電性ペーストが提案されている(例えば、特許文献1参照)。これは、蛍光表示管にアノード電極形成用として、従来の黒鉛粉末に代わりカーボンナノチューブを用いており、導電性フィラーとして銀粉を用いるペースト組成物ではない。そのため、銀粉を用いることで大きな問題となるマイグレーション性に関しては全く言及されていない。
【0005】
このような状況下、導電性フィラーとして銀粉を含むペースト組成物を用いて半導体素子とリードフレーム(支持部材)を接合する際、耐マイグレーション性に優れ、接着強度、導電性とのバランスも良い組成物の出現が切望されていた。
【特許文献1】特開2000−63726公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐マイグレーション性、接着強度、導電性に優れ、ダイボンド用としてIC、LSI等の半導体素子をリードフレーム、ガラスエポキシ基板等に接着するのに好適な、銀とカーボンナノチューブを含む導電性樹脂ペースト組成物およびこれを用いた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる従来の課題に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも熱硬化性樹脂、および導電性フィラーを含有してなる導電性樹脂ペースト組成物において、銀粉を主成分とする導電性フィラーに、特定の長さのカーボンナノチューブを特定量配合することにより、高温多湿の雰囲気下で電界が印加されても、マイグレーションと称する銀の電析が生じなくなることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、少なくとも熱硬化性樹脂(A)と導電性フィラー(B)とを含む導電性樹脂ペースト組成物において、導電性フィラー(B)は、銀粉(B1)に、耐マイグレーション性を向上させるに十分な量の長さ0.5〜5μmのカーボンナノチューブ(B2)を配合させることを特徴とする導電性樹脂ペースト組成物が提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、熱硬化性樹脂(A)が、エポキシ樹脂又はフェノール樹脂から選ばれる1種以上の樹脂であることを特徴とする導電性樹脂ペースト組成物が提供される。
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、熱硬化性樹脂(A)の含有量が、組成物全体に対して5〜80重量%であることを特徴とする導電性樹脂ペースト組成物が提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、銀粉(B1)の含有量が、組成物全体に対して5〜95重量%であることを特徴とする導電性樹脂ペースト組成物が提供される。
【0012】
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、カーボンナノチューブ(B2)の含有量が、組成物全体に対して0.01〜5重量%であることを特徴とする導電性樹脂ペースト組成物が提供される。
【0013】
一方、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明の導電性樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子と基板が接着され、ついで封止されてなる半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐マイグレーション性、接着強度、導電性に優れるだけでなく、接着強度及び導電性のバランスに優れている導電性樹脂ペースト組成物が提供される。従って、本発明の導電性樹脂ペースト組成物を用いた半導体装置は、高温多湿の雰囲気でも接着強度、導電性が低下せず優れた電気的特性を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
1.導電性樹脂ペースト組成物
本発明の導電性樹脂ペースト組成物は、熱硬化性樹脂(A)と導電性フィラー(B)とを含有し、導電性フィラー(B)は、銀粉(B1)に、耐マイグレーション性を向上させるに十分な量の長さ0.5〜5μmのカーボンナノチューブ(B2)を配合したものである。本発明の導電性樹脂ペースト組成物には、ペースト組成物の作製時の作業性、及び使用時の塗布性をより良好するため、必要に応じて希釈剤(C)を添加することができる。
【0016】
(A)熱硬化性樹脂
本発明において、熱硬化性樹脂は、バインダー樹脂として機能する成分であり、導電性ペースト用として一般に市販されているものを用いることができる。例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、およびこれらの各種変性品等が挙げられ、1種もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
これらの熱硬化性樹脂の中でも、本発明の効果が充分得られるペースト状の組成物とするためには、20℃(常温)で液状であることが好ましい。特に、ポットライフや硬化後の種々の特性を得るために、比較的調製が容易なエポキシ樹脂やフェノール樹脂を用いることが好ましい。更には、芳香族基を有するエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0018】
例えば、20℃で液状の熱硬化性樹脂としては、希釈剤を低減できる等の点から、粘度の低いもの、具体的には20℃で粘度が50Pa・s以下のものが好ましく、さらには0.1〜10Pa・sのものが好ましい。
【0019】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、芳香族系のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。また、上記エポキシ樹脂のうち、粘度が低く、希釈剤量を低減できることから、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビスフェノールAD型エポキシ樹脂が好ましい。なお、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、2つのヒドロキシフェニル基を結ぶ基がメチレン基である化合物であり、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂は、2つのヒドロキシフェニル基を結ぶ基が1,1−エチレン基である化合物である。また、フェノール樹脂としては、アルカリレゾール型のフェノール樹脂が好ましい。
【0020】
熱硬化性樹脂は、樹脂成分(A)と導電性フィラー成分(B)との総量、すなわち組成物全体に対して5〜80重量%使用することが好ましく、耐半田リフロー性の点から、10〜50重量%使用することがより好ましい。
【0021】
本発明に用いられる熱硬化性樹脂には、必要に応じて硬化剤を併用することができる。併用できる硬化剤は特に制限はないが、熱硬化性樹脂が例えばエポキシ樹脂であれば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ジシアンジアミド、二塩基酸ジヒドラジドなどを用いることができる。
【0022】
(B)導電性フィラー
本発明において用いられる導電性フィラーの必須成分は、銀粉および長さ0.5〜5μmのカーボンナノチューブである。
【0023】
銀粉としては、例えば微細球状銀粉、粗粒球状銀粉、フレーク状銀粉等が挙げられ、これらのいずれか1種もしくは2種以上を組み合せて用いることができる。特に好ましいのは、フレーク状銀粉である。
【0024】
微細球状銀粉の球状とは、アスペクト比、すなわち長短度(長径/短径)が1〜2.5のものを指し、特にその長短度が1〜1.25のものが、より好ましい。ここで、短径とは、前記切断面に現れる粒子について、その粒子の外側に接する二つの平行線の組み合わせが粒子を挟むように選択し、それらの組み合わせのうち最短間隔になる二つの平行線の距離である。一方、長径とは、前記短径を決する平行線に直角方向の二つの平行線であって、粒子の外側に接する二つの平行線の組み合わせのうち、最長間隔になる二つの平行線の距離である。これらの四つの線で形成される長方形は、粒子がちょうどその中に納まる大きさとなる。
【0025】
また、微細球状銀粉の平均粒径は、10μm以下であることが望ましく、これを越えると、十分に緻密な膜が得られない。なお、組成物作製時の混練性を考慮すると、微細球状銀粉の平均粒径は0.1〜5μm程度がより好ましい。また、粗粒球状銀粉は必要に応じて使用することができ、その長短度は、上記微細球状銀粉の場合と同様である。
【0026】
一方、フレーク状銀粉は、長径における平均粒径が0.1〜10μmの範囲のものを使用するのが好ましい。その長径における平均粒径が0.1μm未満であると、均一な混合が困難となる上、充填率を向上させる効果が少ないため充分な抵抗率が得られない。また10μmを越えると、スクリーン印刷等を行う際にスクリーンの目詰まりを生じ易くなるため好ましくない。さらに収縮特性を考慮すると、0.5〜5μmの範囲のものがより好ましい。また、フレーク状銀粉のアスペクト比(長短度)は1〜5の範囲内、更に好ましくは1〜3.5の範囲内のものを用いるとよい。その厚さは0.05〜2μm、更に好ましくは0.1〜1.2μmのものを使用するとよい。
【0027】
上記の微細球状銀粉、粗粒球状銀粉、およびフレーク状銀粉は、必要に応じた混合率で使用できる。混合率としては、銀粉総量の5〜50重量%を微細球状銀粉が占め、残部を粗粒球状銀粉またはフレーク状銀粉となるようにすることが好ましい。
【0028】
また、銀粉の含有量は、組成物全体に対して5〜95重量%であることが好ましく、10〜90重量%がより好ましい。5重量%よりも少ないと充分な低抵抗率を確保できず、また95重量%よりも多いと組成物の粘度が上昇して実用に耐えられなくなる。
【0029】
また、本発明において、導電性フィラーのもう一方の必須成分であるカーボンナノチューブは、長さが0.5〜5μmであれば特に限定されない。
カーボンナノチューブは、2次元のグラフェンシートを筒状に巻いた層構造を有し、層の数や先端部の形状によって、多層型、単層型、ホーン型に分けられる。また、グラフェンシートの巻き方によって、アームチェア型構造、ジグザグ型構造、カイラル型構造の3種類に分類される。本発明においては、多層型、単層型、ホーン型のいずれでも使用することができ、どのような層構造であってもよい。
【0030】
これらの製造方法としては、例えば、特開2000−63112号公報、特開2001−64004号公報、特開2003−277032号公報、特開2000−63726号公報、特開2003−171107号公報、「カーボンナノチューブの基礎」(斎藤弥八、坂東俊治著、1998年11月発行、コロナ社)等に記載された方法で得ることができる。
この特開2000−63726号公報には、ジグザグ型構造を主として有し、チューブ径の揃ったカーボンナノチューブの製造方法が記載されている。この方法では、真空下でSiCを、該SiCが分解して該SiCの表面から珪素原子が失われる温度(1,100〜1,300℃)に加熱することにより、該SiCから珪素原子が除去され、チューブ径のばらつきの度合いが小さいカーボンナノチューブを製造できる。SiCの結晶面からカーボンナノチューブが垂直に成長するように条件を整え、上記の温度で所定の時間加熱すればよい。
【0031】
カーボンナノチューブの長さは、0.5〜5μmであることが必要で、好ましくは1〜5μm、特に2〜5μmが好ましい。カーボンナノチューブの長さが、この範囲にあることにより、カーボンナノチューブが、銀粉の周囲を略均一に取り巻いた状態で組成物中に分散するため、「多湿下に於ける銀イオンの抑制」というメカニズムによって、耐マイグレーション性を改善できるものと考えられる。これに対して、長さが0.5μm未満であると、銀粉の周囲から離れやすくなり、また、5μmを超えると、カーボンナノチューブが組成物中で凝集しやすくなるので、十分な耐マイグレーション性を得ることができない。
カーボンナノチューブの直径は、特に制限されないが、0.5〜200nmであることが好ましい。また、アスペクト比は、カーボンナノチューブの長さと直径によって決まり、一概に言うことはできないが、20〜10000であることが好ましい。特に好ましい直径は1〜150nmであり、また、好ましいアスペクト比は、50〜1000である。
【0032】
カーボンナノチューブの含有量は、耐マイグレーション性を向上するのに十分な量でなければならない。具体的には組成物全体に対して0.01〜5重量%が好ましく、更には0.05重量%〜1重量%が好ましい。0.01重量%よりも少ないと、耐マイグレーション性を向上できないだけでなく充分な低抵抗率が得られず、一方、5重量%よりも多いと著しい組成物粘度の上昇を招き本発明の効果を得ることができない。
【0033】
更に、本発明の導電性樹脂ペースト組成物には、必要に応じて硬化促進剤を添加することができる。硬化促進剤としては、有機ボロン塩、三級アミン類及びその塩、イミダゾール類、アセチルアセトン金属塩などが挙げられる。硬化促進剤は単独でもよく、複数種の硬化促進剤を適宜組み合わせて用いてもよい。これらを用いる場合、その量は熱硬化性樹脂に対して0.1〜20重量%が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0034】
(C)希釈剤
本発明の導電性樹脂ペースト組成物には、必要に応じて希釈剤(C)を添加することができる。
【0035】
希釈剤としては、ブチルセロソルブ、カルビトール、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、エチレングリコールジエチルエーテル、ターピネオールなどの比較的沸点の高い有機溶剤;1分子中に1〜2個のエポキシ基を有する反応性希釈剤が挙げられる。ペースト組成物の作製時の作業性、及び使用時の塗布性をより良好するため、これらは導電性樹脂ペースト組成物中に1重量%以上配合することが好ましく、3〜20重量%配合することがより好ましい。
【0036】
更に、本発明の導電性樹脂ペースト組成物には、必要に応じてシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の接着性向上剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ性向上剤、シリコーン油等の消泡剤、無機イオン交換体等のイオントラップ剤などの各種添加剤を適宜添加することができる。
【0037】
2.導電性樹脂ペースト組成物の製造
本発明の導電性樹脂ペースト組成物は、前記の熱硬化性樹脂(A)、及び導電性フィラー(B)を用い、必要に応じて希釈剤(C)、及び硬化促進剤ほか各種添加剤を配合して製造される。
【0038】
これら成分を、一括又は分割して攪拌機、らいかい機、3本ロール、プラネタリーミキサー等の分散、溶解装置又はこれらを適宜組み合わせた装置に投入する。導電性フィラーである銀粉とカーボンナノチューブとを緊密に混合してから、熱硬化性樹脂中へ一緒に少しずつ投入してゆくことが好ましい。これにより、カーボンナノチューブの少なくとも一部が銀粉の周囲を取り巻き、カーボンナノチューブと銀粉が固着しないまでも一体となって熱硬化性樹脂の中に均一に分散してゆく。各成分を混合するには、比較的低温で均一な組成物が得られるまで攪拌すればよい。
【0039】
その後、必要に応じて加熱して混合、溶解、解粒、混練又は分散して均一なペースト状とすることができる。ただし、硬化剤、硬化促進剤の種類にもよるが、50℃を超える温度では液状エポキシ樹脂の硬化反応が進行して固化するので注意が必要である。
【0040】
3.半導体装置
本発明においては、上記のようにして製造される導電性樹脂ペースト組成物を接着用樹脂ペースト組成物、すなわちダイボンド材として用いることができる。このダイボンド材によって半導体素子と基板とを接着した後、封止することにより本発明の半導体装置が得られる。
【0041】
本発明の導電性樹脂ペースト組成物を用いて、半導体素子をリードフレーム等の基板と接着させるには、まず、基板上に導電性樹脂ペースト組成物をディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法などにより塗布する。
【0042】
次いで、半導体素子を圧着し、その後、オーブン、ヒートブロック等の加熱装置を用いて、例えば100〜300℃に加熱硬化する。加熱条件は、硬化剤の種類によっても異なるが、オーブン中に10〜180分間放置して導電性樹脂ペースト組成物を硬化させればよい。100℃未満或いは10分間未満では接着剤の硬化が不十分となり、一方、300℃を超えるか180分間を超えると樹脂成分が分解する恐れが生じるので好ましくない。
さらに、ワイヤボンド工程を経た後、通常の方法、例えば各種封止剤を用いて半導体素子を封止することにより半導体装置を完成することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で用いた材料は、下記の方法で作製したもの、あるいは入手したものである。
【0044】
(1)導電性樹脂ペースト組成物の材料
B1 銀粉
・銀粉1:フレーク状銀粉
(商品名 シルコートAgC−2011、福田金属箔工業社製)
平均粒径1.8μm、アスペクト比:3〜6。
・銀粉2:フレーク状銀粉
(商品名 シルコートAgC−2411、福田金属箔工業社製)
平均粒径7.7μm、アスペクト比:15〜26。
B2 カーボンナノチューブ
・MWCN1(多層カーボンナノチューブ、中国シンセンナノテクポート社製)
直径10〜20nm、長さ1〜2μm、アスペクト比50〜200。
・MWCN2(多層カーボンナノチューブ、中国シンセンナノテクポート社製)
直径10〜20nm、長さ5〜15μm、アスペクト比50〜1500。
【0045】
A 熱硬化性樹脂
1)エポキシ樹脂
・樹脂1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:エピコート806)
ジャパンエポキシレジン株式会社製、20℃の粘度3Pa・s
・樹脂2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート825)
ジャパンエポキシレジン株式会社製、20℃の粘度7Pa・s
2)エポキシ樹脂用硬化剤
・DICY(ジシアンジアミド、商品名:DICY7)
ジャパンエポキシレジン社製
3)レゾール型フェノール樹脂
・樹脂3:(商品名:PL4348)
群栄化学工業(株)、20℃の粘度4Pa・s
C 有機溶媒
・BCA(ブチルカルビトールアセテート、沸点245℃)
【0046】
(2)作製した導電性樹脂ペースト組成物は、以下の通り評価した。
(i)接着強度
導電性樹脂ペースト組成物を銅板上にスクリーン印刷し、この上に2mm×2mmのSiチップ(厚さ0.4mm)を圧着し、更に200℃に設定したオーブンに入れ、約60分加熱した。常温に戻した後、この試料について自動接着力試験装置(Dage社、マイクロテスター)を用いて、室温における剪断接着強度(kg/チップ)を測定した。当該接着強度は、数値が大きいほど好ましい。
【0047】
(ii)シート抵抗値
導電性樹脂ペースト組成物をアルミナ基板上に塗布し、更に200℃で1時間オーブンに入れて加熱した。常温に戻した後、この試料についてデジタルマルチメーター(岩通電子社製 VOAC−7411)を用いて、シート抵抗値を測定した。当該シート抵抗値は、数値が小さいほど好ましい。
【0048】
(iii)耐マイグレ−ション性
ウォータードロップ法で耐マイグレーション性を評価した。導電性樹脂ペースト組成物をよく洗浄したアルミナ基板上にスクリーン印刷し、更に200℃で1時間、オーブン中で加熱した。常温に戻した後、この電極間上に純水で湿らせたろ紙を置き、5Vを印加した。印加中、ろ紙が乾かないように純水を随時ろ紙に滴下し、電極間に100mA流れるまでの時間を測定した。この時間が長いほど耐マイグレーション性は良好である。
【0049】
(実施例1〜12)
銀粉、カーボンナノチューブ及び熱硬化性樹脂を含む各材料を表1〜2に示す配合割合で計量した後、三本ロールミルで混合混練し、得られた組成物を666.61Pa(5トール(Torr))以下で10分間脱泡処理を行い、本発明の導電性樹脂ペースト組成物を得た。なお、銀粉と、カーボンナノチューブとは、予め、緊密に混合しておき、これを熱硬化性樹脂中へ少しずつ混合した。この樹脂ペースト組成物の特性(接着強度、シート抵抗及び耐マイグレーション性)を前記の方法で測定した。結果を表1〜2に示す。
尚、本実施例における銀粉のアスペクト比の具体的測定法を以下に示す。低粘度のエポキシ樹脂(ビューラー社)の主剤(No.10−8130)8gと、硬化剤(No.10−8132)2gを混合し、ここへ銀粉2gを混合して良く分散させ、そのまま30℃で真空脱泡した後、10時間30℃で静置して粒子を沈降させ硬化させた。その後、得られた硬化物を垂直方向に切断し、切断面を電子顕微鏡で1000倍に拡大して切断面に現れた150個の粒子について長径/短径を求め、それらの平均値をもって、アスペクト比とした。
【0050】
(比較例1〜10)
銀、及び熱硬化性樹脂を配合し、カーボンナノチューブ1を配合しないか、カーボンナノチューブの配合量を変えた以外は実施例と同様にして、導電性樹脂ペースト組成物を得た。また、カーボンナノチューブ1の代わりにカーボンナノチューブ2を配合した以外は実施例と同様にして、比較用の導電性樹脂ペースト組成物を得た。これらの樹脂ペースト組成物の特性(接着強度、シート抵抗及び耐マイグレーション性)を前記の方法で測定した。結果を表3〜4に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
表1〜4に示した結果から、銀粉および特定の長さを有するカーボンナノチューブを含む本発明の導電性樹脂ペースト組成物を用いた場合は、抵抗値や接着強度に問題を与えることなく、耐マイグレーション性が著しく向上することが確認された。これに対して、カーボンナノチューブを含まないか、長さが本発明から外れるカーボンナノチューブを含む比較例の導電性樹脂ペースト組成物を用いた場合は、抵抗値や接着強度に問題を与えることはないものの、耐マイグレーション性が著しく低下することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも熱硬化性樹脂(A)と導電性フィラー(B)とを含む導電性樹脂ペースト組成物において、
導電性フィラー(B)は、銀粉(B1)に、耐マイグレーション性を向上させるに十分な量の長さ0.5〜5μmのカーボンナノチューブ(B2)を配合させることを特徴とする導電性樹脂ペースト組成物。
【請求項2】
熱硬化性樹脂(A)が、エポキシ樹脂又はフェノール樹脂から選ばれる1種以上の樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の導電性樹脂ペースト組成物。
【請求項3】
熱硬化性樹脂(A)の含有量が、組成物全体に対して5〜80重量%であることを特徴とする請求項1に記載の導電性樹脂ペースト組成物。
【請求項4】
銀粉(B1)の含有量が、組成物全体に対して5〜95重量%であることを特徴とする請求項1に記載の導電性樹脂ペースト組成物。
【請求項5】
カーボンナノチューブ(B2)の含有量が、組成物全体に対して0.01〜5重量%であることを特徴とする請求項1に記載の導電性樹脂ペースト組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の導電性樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子と基板が接着され、ついで封止されてなる半導体装置。

【公開番号】特開2007−149522(P2007−149522A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343319(P2005−343319)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】