説明

銀粒子

【課題】溶液に分散させた後に沈降しない特性に優れた新たな銀粒子を提案する。
【解決手段】電子顕微鏡観察による形状が非粒状であり、中心粒径(D50)が0.05μm〜3.0μmであり、且つ、カーボン含有量が0.03〜3質量%であることを特徴とする銀粒子を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば微細回路形成やプラズマディスプレイパネル等の電極形成に用いるインクの原料として好適に使用することができる銀粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
銀粒子を含有するインク、すなわち銀インクは、プリント配線板の配線回路、ビアホール充填、部品実装などに利用されている。例えばフレキシブル基板やICカード、その他の基板上に回路を形成する場合、銀インクを用いて回路パターンを印刷し、UV照射或いは焼き付け等によって、銀インクを硬化させて回路を形成することが行なわれている。
【0003】
このような銀インクに用いる銀粉として、従来、硝酸銀溶液とアンモニア水とで銀アンミン錯体水溶液を製造し、これに有機還元剤を添加する湿式還元プロセスによって得られる銀粉が開示されている(特許文献1参照)。
また、特許文献2は、低温焼結性を高めた銀粉として銀ナノ粒子を含む銀インクが提案されている。
【0004】
さらに、特許文献3は、銀インク用の銀粉として、走査型電子顕微鏡像の画像解析により得られる一次粒子の平均粒径が0.6μm以下である銀粉を開示している。
【0005】
【特許文献1】特開2001−107101号公報
【特許文献2】特開2002−334618号公報
【特許文献3】特開2005−093380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
銀インク用銀粉には、分散性とともに、分散した後に沈降しない特性(これを「非沈降性」という)が求められる。
そこで本発明は、特に非沈降性に優れた新たな銀粒子を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題解決のため、本発明は、電子顕微鏡観察(例えば5000倍)による形状が非粒状(;粒状でない)であり、中心粒径(D50)が0.05μm〜3.0μmであり、且つ、カーボン含有量が0.03〜3質量%であることを特徴とする銀粒子を提案する。また、銀錯塩水溶液に水溶性高分子を添加した電解液を用いて電解して得られる銀粒子を提案する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の銀粒子は、中心粒径(D50)0.05μm〜3.0μmの微粒子であって、しかも形状が非粒状であるがゆえに、非沈降性に優れる。また、非粒状の銀粒子であるから導電性にも優れており、前記の如く微粒子であるから低温焼結性にも優れている。さらに、カーボンを含有しているため、導電性を著しく損なうことなく分散性及び非沈降性を高めることができる。よって、例えば本銀粒子を水系インクに含有させれば、粒子表面に付着した水溶性高分子(例えばゼラチン)によって分散性が高まり、より一層凝集し難いものとなると同時に、非沈降性もさらに良好となる。よって、本発明の銀粒子は、導電性ペーストの原料として用いることも可能であるが、特に銀インクの原料として用いるのに適している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳述するが、本発明の範囲が以下の実施形態に限定されるものではない。
なお、本発明において「銀粒子」とは、単結晶粒子、多結晶粒子、あるいはそれらの集合体のいずれをも指す。本発明の銀粒子は、銀インク中に存在する場合が想定され、その場合に、乾粉でないのに銀粉と称するには違和感がある。また、銀粒子群と称するにも違和感があるため、多数の銀粒子からなる銀粒子群を銀粒子と称することとした。
また、本明細書において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きく、Yより小さい」の意を包含するものである。
【0010】
本実施形態に係る銀粒子(以下「本銀粒子」という)は、電子顕微鏡観察(5000倍)による形状が非粒状であり、且つ、中心粒径(D50)が0.05μm〜3.0μmである銀粒子である。
【0011】
(非粒状)
本銀粒子は、電子顕微鏡観察像(例えば5000倍)で観察した際、形状が非粒状(;粒状でない)であることを特徴とする。
ここで、「粒状」とは、等方的形状をはじめとする塊状(例えば球状、略球状、柱状など)のものを包含する。そして、「非粒状」すなわち粒状ではない形状の具体例としては、例えばデンドライト状(樹葉状、針枝状を含む)や針状など、アスペクト比(長径/短径、平均径/厚み径など)が3以上、或いは測定困難なものなどを挙げることができ、中でもデンドライト状であるのが好ましい。
「デンドライト状」は、主枝から枝部分が分岐して平面状或いは三次元的に成長してなる形状のものを包含する。
【0012】
本発明は、非粒状銀粒子の作用効果を妨げない範囲であれば、粒状の銀粒子を僅かに含んでいても構わない。その意味で、非粒状の銀粉粒子が、全粒子の80%以上を占めることが重要であり、好ましくは90%以上(100%含む)を占めるのがよい。
【0013】
(中心粒径(D50))
本銀粒子の中心粒径(D50)、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50は、0.05μm〜3.0μmであることが重要である。D50が3.0μmより大きいと低温焼結特性が十分に得られない。その一方、0.05μmより小さいと、凝集を生じるおそれがある。このような観点から、0.05μm〜1.0μmであるのが好ましく、中でも0.1μm〜0.8μmであるのが特に好ましい。
【0014】
(最大粒度(Dmax))
本銀粒子の最大粒度(Dmax)は、30μm以下、特に25μm以下、中でも特に23
μm以下であるのが好ましい。Dmaxが30μmより大きくなると、例えば回路形成した
際に凹凸が大きくなるようになるため好ましくない。
【0015】
(比表面積)
本銀粉のBET一点法で測定される比表面積は、0.1m2/g〜25m2/gであることが好ましく、0.5m2/g〜20m2/gであるのがより好ましく、中でも1m2/g
〜15m2/gであるのが特に好ましい。比表面積が0.1m2/g未満の場合、粒径が大きいことを意味し、本発明の効果である非沈降性が得られない可能性がある。他方、25m2/gよりも大きい場合は、粒径が小さいことを意味し、凝集性が強くなり好ましくな
い。
【0016】
(非沈降性)
本銀粒子は、40℃の純水100mLに銀粒子3gを投入して1分間攪拌した後、1時間以上、特に3時間以上沈まない非沈降性を備えることが好ましい。
本銀粒子の銀粉粒子は、微粒子である上、非粒状、例えばデンドライト状であるため、粒子内の空隙が多く、粒子の見掛けの大きさ(粒径とも言える)に対する密度が小さいため、液中に分散させた際の沈降速度が遅く、長時間浮遊している特性を有しているものと考えることができる。
【0017】
(カーボン量)
銀錯塩水溶液に水溶性高分子を添加した電解液を用いて電解して本銀粒子を得た場合、銀粒子は水溶性高分子を含むものとなる。とりわけ、銀粒子表面に付着する量は多いと考えられる。この際、本銀粒子は非粒状を呈するため水溶性高分子が特に付着し易い。そのため、本銀粒子におけるカーボン含有量は高くなるが、中でもカーボン含有量は0.03〜3質量%であるのが好ましく、特に0.2〜2質量%、その中でも0.1〜1質量%であるのが好ましい。
本銀粒子のカーボン量が0.03〜3質量%に調整すると、カーボンを含有しているため、導電性を著しく損なうことなく分散性及び非沈降性を高めることができる。よって、例えば本銀粒子を水系インクに含有させれば、粒子表面に付着した水溶性高分子(例えばゼラチン)によって分散性が高まり、より一層凝集し難いものとなると同時に、非沈降性もさらに良好となる。
【0018】
(用途)
本銀粒子は、非沈降性、導電性、さらには低温焼結性に優れているから、導電性ペーストの原料として用いることも可能であるが、銀インクの原料として用いるのが特に好ましい。例えば微細回路形成やプラズマディスプレイパネルの電極形成に使用する銀インクの原料などとして好適に用いることができる。
【0019】
(製造方法)
本銀粒子は、例えば次のようにして製造することができる。但し、次に説明する製造方法に限定されるものではない。
【0020】
本銀粒子は、銀錯塩水溶液、特に一座配位子錯塩である銀アンミン錯塩の水溶液(銀アンミン錯塩水溶液)に水溶性高分子を添加した電解液を用いて電解して得ることができる。
なお、本発明における「電解」とは、DSE電極を用いた電解採取、銀電極を用いた電解精製のどちらも包含するものである。
【0021】
一座配位子である銀アンミン錯塩は、二座配位子或いはそれ以上の多座配位子に比べて銀イオンとの結合力が弱く、立体障害も少ないため、錯体の中でも特に銀粉の電析に適している。
【0022】
銀アンミン錯塩水溶液の調製方法は、特に限定するものではない。例えば硝酸銀水溶液などの銀イオンを含む水溶液に、アンモニア或いはアンモニア水を加えて調製することもできるし、また、さらに硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩をさらに加えて調製することもできる。この際、アンモニウム塩はアンモニウムイオンの供給源となると共にpH緩衝剤として機能するため、アンモニア或いはアンモニア水の添加量を抑えることができ、電解液のpH調整を容易にすることができる。
【0023】
銀錯塩水溶液のpHは3〜11、特に4〜11、その中でも特に5〜10に調整するの
が好ましい。pHが3よりも低いときは、析出した粒子が溶解してしまい、形状が安定しない。また、pHが11を超える場合には、アンモニアガスが揮発し、悪臭を引き起こすばかりか、生成する粒子に差がないため経済的でない。中でも特に銀錯塩水溶液のpHを5〜10の範囲に調整することにより、析出した微粒銀粒子が溶解(再溶解)することなくより一層安定して存在するため、形状及び大きさの点で品質がより一層安定した微粒銀粉を製造することができる。
【0024】
電解液中の銀濃度は、0.5g/L〜50g/L、特に1g/L〜30g/Lに調整するのが好ましい。0.5g/L未満になると、銀の析出速度が遅くなり、効率的に銀粉を得ることができない。また、50g/Lより多くなると、生成する銀粒子の形状が安定しなくなるため好ましくない。
【0025】
電解液中のNH3/Ag+は、モル比で2以上、中でも2〜20に調整するのが好ましい。2未満であると錯形成が不十分となり銀が沈殿するようになる。また、20より大きくなると不経済であり、アンモニアガスの悪臭により作業環境が悪化する可能性がある。
具体的には、例えば硝酸銀水溶液とアンモニア水、或いはさらに、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩とを、銀とNH3とのモル比が上記所定の範囲内になるように混合する
のが好ましい
【0026】
水溶性有機高分子としては、例えばゼラチン、ポリビニルアルコール、水溶性でんぷん、にかわ、水溶性カルボン酸塩などを挙げることができ、中でもゼラチンが好ましい。
非粒状粒子、特にデンドライト状粒子を作製した後で水溶性高分子を粒子に付着させようとしても、複雑な粒子形状ゆえに粒子表面に水溶性高分子(カーボン)を均一に付着させることは極めて難しい。これに対し、水溶性高分子を添加した電解液を用いて電解して本銀粒子を製造すれば、粒子が成長する過程で該粒子表面に水溶性高分子(カーボン)が付着するため、たとえデンドライト状粒子であっても粒子表面に水溶性高分子(カーボン)を均一に付着させることができる。また、粒子の成長過程で該粒子表面に水溶性高分子(カーボン)が付着するため、粒子成長そのものを抑制することができ、粒子の大きさを微粒化することができる。
水溶性有機高分子は、電解液に対して0.005g/L〜5g/Lとなるように添加するのが好ましい。0.005g/L未満であると十分な効果が得られず、5g/Lより多くなると、粒子形状が不安定になるほか、粒径が小さくなり、凝集性の問題が発生する可能性があるので好ましくない。このような観点から、0.08g/L〜3g/Lがさらに好ましく、中でも0.1g/L〜1g/Lであるのが特に好ましい。
【0027】
電解条件としては、電流密度は10〜1000A/m2が好ましく、より好ましくは3
0〜800A/m2であり、さらに好ましくは50〜500A/m2である。10A/m2
未満であると、銀の析出速度が遅くなり粒子が粗大化する。また1000A/m2より高
くなると、溶液内の温度が上昇し、銀粉の形状が安定しない。また、アンモニアもより揮発しやすくなり、ランニングコストもかさみ不経済である。
【0028】
極板上に析出した銀粉は適宜時間おきに掻き落し、極板から掻き落した銀粉は、濾過し、洗浄し、乾燥することにより、微粒銀粉を得ることができる。この際、濾過、洗浄および乾燥の方法は特に限定するものではなく、一般的な方法を採用すればよい。
【0029】
上記のように電解して得られた銀粉を、必要に応じて湿式粉砕してもよい。湿式粉砕することにより、例えばデンドライト状銀粒子の幹部分と分岐部分とを分離することができ、さらに微粒な針状銀粒子を得ることができる。
湿式粉砕手段としては、銀粒子は軟らかいため、形状を維持できるように、メディア(ビーズやボールなどの粉砕媒体)を使用しない湿式粉砕手段を採用するのが好ましく、例
えば湿式ジェットミルなどを好適に用いることができる。
【0030】
さらに、上記湿式粉砕に続いて必要に応じて分級してもよい。分級することにより、例えば幹部分と分岐部分とを分離することができ、いずれも極めて微粒な粒子であるが、その中でも幹部分と分岐部分のそれぞれの特徴に応じた用途に利用することができる。
この際、分級方法としては、遠心分級のほか、振動篩いや面内篩いのように一定の大きさの網目を通過させる方法や、気流により分離する方法のいずれを採用してもよい。
【0031】
上記のようにして得られた銀粉に対して有機表面処理を施してもよい。銀粒子に有機表面処理を施すことにより、凝集性を抑制することができる。また、有機表面処理剤を適宜選択することにより、他材料との親和性をコントロールすることも可能となる。
この際、有機表面処理としては、例えば飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びシランカップリング剤等からなる皮膜を銀粒子表面を形成するようにすればよい。中でも、上記有機化合物のうち、オレイン酸、カプリン酸又はステアリン酸を用いて行なうのが好ましい。皮膜形成方法としては、例えば乾式法、湿式法等、公知の方法を採用すればよい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
<粒度測定>
銀粉を少量ビーカーに取り、3%トリトンX溶液(関東化学製)を2、3滴添加し、粉末になじませてから、0.1%SNディスパーサント41溶液(サンノプコ製)50mLを添加し、その後、超音波分散器TIPφ20(日本精機製作所製、OUTPUT:8、TUNING:5)を用いて2分間分散処理して測定用サンプルを調製した。
この測定用サンプルを、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置MT3300 (日機装製)を用いて、体積累積粒径D50、Dmaxを測定した。
【0034】
<比表面積の測定>
比表面積は、ユアサアイオニクス社製モノソーブにて、BET一点法で測定した。
【0035】
<カーボン量の測定>
カーボン量の測定は、堀場社製炭素分析装置(型番:EMIA-110)を用いて、1
250℃にて測定した。
【0036】
<沈降性の評価>
40℃の純水100mLに銀粒子3gを投入して1分間攪拌し、その後、銀粒子の沈降の様子を肉眼で観察し、次の基準で評価した。
◎:3時間以上沈まなかった。
○:1時間〜3時間後に沈降が観察された。
×:1時間未満のうちに沈降が観察された。
【0037】
(実施例1)
0.8Lの純水に硝酸銀12.6gを溶解し、25%アンモニア水を24mL、さらに硫酸アンモニウムを40g添加し、銀アンミン錯塩水溶液を調製した(銀濃度10g/L、NH3/Ag+モル比12、20℃、pH9.4)。
この銀アンミン錯塩水溶液に0.1g/Lの割合でゼラチンを添加し、これを電解液とし、陽極、陰極共にDSE極板を使用し、電流密度200A/m2、溶液温度20℃で電
解し、適当な間隔をおいてスクレーパにより電析した銀粒子を極板から掻き落し、1時間
電解した。
その後、掻き落して得られた銀粉をヌッチェでろ過し、純水、さらにアルコール洗浄を行い、70℃×12時間、大気雰囲気下で乾燥させ、デンドライト状銀粉を得た。
【0038】
得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM)観察像を図1及び図2に示した。また、得られた銀粉について測定した比表面積、C量、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いた中心粒径D50、Dmax及び沈降性の評価などを表1に示した。
【0039】
(実施例2)
0.8Lの純水に硝酸銀12.6gを溶解し、25%アンモニア水を24mL、さらに硫酸アンモニウムを40g添加し、銀アンミン錯塩水溶液を調製した(銀濃度10g/L、NH3/Ag+モル比12、20℃、pH9.4)。
この銀アンミン錯塩水溶液に1g/Lの割合でゼラチンを添加し、これを電解液とし、陽極、陰極共にDSE極板を使用し、電流密度200A/m2、溶液温度20℃で電解し
、実施例1同様に電析した銀粒子を極板から掻き落し、1時間電解した。
その後、掻き落して得られた銀粉をヌッチェでろ過し、純水、さらにアルコール洗浄を行い、70℃×12時間、大気雰囲気下で乾燥させ、デンドライト状銀粉を得た。
【0040】
得られた銀粉について測定した比表面積、C量、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いた中心粒径D50、Dmax及び沈降性の評価などを表1に示した。
【0041】
(実施例3)
0.8Lの純水に硝酸銀12.6gを溶解し、25%アンモニア水を24mL、さらに硫酸アンモニウムを40g添加し、銀アンミン錯塩水溶液を調製した(銀濃度10g/L、NH3/Ag+モル比12、20℃、pH9.4)。
この銀アンミン錯塩水溶液に0.01g/Lの割合でゼラチンを添加し、これを電解液とし、陽極、陰極共にDSE極板を使用し、電流密度200A/m2、溶液温度20℃で
電解し、実施例1同様に電析した銀粒子を極板から掻き落し、1時間電解した。
その後、掻き落して得られた銀粉をヌッチェでろ過し、純水、さらにアルコール洗浄を行い、70℃×12時間、大気雰囲気下で乾燥させ、デンドライト状銀粉を得た。
【0042】
得られた銀粉について測定した比表面積、C量、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いた中心粒径D50、Dmax及び沈降性の評価などを表1に示した。
【0043】
(比較例1)
0.8Lの純水に硝酸銀12.6gを溶解し、25%アンモニア水を24mL、さらに硫酸アンモニウムを40g添加し、銀アンミン錯塩水溶液を調製した(銀濃度10g/L、NH3/Ag+モル比12、20℃、pH9.4)。
この銀アンミン錯塩水溶液を電解液とし、陽極、陰極共にDSE極板を使用し、電流密度200A/m2、溶液温度20℃で電解し、実施例1同様に電析した銀粒子を極板から
掻き落し、1時間電解した。
その後、掻き落して得られた銀粉をヌッチェでろ過し、純水、さらにアルコール洗浄を行い、70℃×12時間、大気雰囲気下で乾燥させ、デンドライト状銀粉を得た。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1〜3の結果より、銀錯塩水溶液に水溶性高分子を添加した電解液を用いて電解することにより、非粒状(特にデンドライト状)で、中心粒径(D50)が0.05μm〜3.0μmで、カーボン含有量が0.03〜3質量%の銀粒子が得られることが確認された。
そして、実施例1〜3で得られた銀粒子は、40℃の純水100mLに銀粒子3gを投入して1分間攪拌した後、1時間以上沈まない優れた非沈降性を備えていることが分った。中でも、中心粒径(D50)が0.1μm以下、或いは比表面積が10m2/g以上、
或いはC量0.9%以上の銀粒子は特に非沈降性が優れていた。
これに対し、比較例4では、電解液に水溶性高分子が添加されていないため、粒径が大きく、且つ粒子表面に水溶性高分子(カーボン)が付着せず、非沈降性に劣るものであった。
【0046】
また、焼結性を検討するため、実施例1と比較例1のサンプルについて、熱機械分析装置(TMA)を用いて熱膨張収縮を測定した(測定方法:空気を150mL/minで流通させ、昇温速度10℃/minで測定した。)。
その結果、実施例1のサンプルは440℃付近で急激な収縮が始まったのに対し、比較例1のサンプルは540℃付近で急激な収縮が始まった。
これより、本発明の銀粒子は、低温焼結性に優れていることを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1で得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)観察像である。
【図2】実施例1で得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM、倍率20000倍)観察像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡観察による形状が非粒状であり、中心粒径(D50)が0.05μm〜3.0μmであり、且つ、カーボン含有量が0.03〜3質量%であることを特徴とする銀粒子。
【請求項2】
BET一点法で測定される比表面積が0.1m2/g〜25m2/gであることを特徴とする請求項1に記載の銀粒子。
【請求項3】
40℃の純水100mLに上記の銀粒子3gを投入して1分間攪拌した後、1時間以上沈まないことを特徴とする請求項1又は2に記載の銀粒子。
【請求項4】
銀錯塩水溶液に水溶性高分子を添加した電解液を用いて電解して得られる銀粒子。
【請求項5】
電子顕微鏡観察による形状が非粒状であり、中心粒径(D50)が0.05μm〜3.0μmであり、且つ、カーボン含有量が0.03〜3質量%であることを特徴とする請求項4に記載の銀粒子。
【請求項6】
BET一点法で測定される比表面積が0.1m2/g〜25m2/gであることを特徴とする請求項4又は5に記載の銀粒子。
【請求項7】
40℃の純水100mLに上記の銀粒子3gを投入して1分間攪拌した後、1時間以上沈まないことを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の銀粒子。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の銀粒子を含有するインク。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−291513(P2007−291513A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83605(P2007−83605)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】