説明

鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御装置及び蛇行制御方法

【課題】上流側の蛇行抑制手段で蛇行異常を検出したときに、下流側の蛇行抑制手段で最適なストリップの通過制御を行う。
【解決手段】ストリップ2の終端に次のストリップ2の前端を溶接して連続して処理を行う鋼帯の連続処理ラインに当該ストリップの蛇行を抑制する複数の蛇行抑制手段5A〜5D及び各蛇行抑制手段の蛇行量を検出する蛇行検出手段が配置され、前記蛇行検出手段で溶接点通過時に蛇行異常状態が検出されたか否かに応じて下流側の蛇行抑制手段5B〜5Dの制御態様を変更する蛇行抑制制御手段32が設けられ、前記蛇行抑制制御手段32は、前記蛇行異常状態でない正常時には下流側の蛇行抑制手段5B〜5Dでの溶接点通過時の蛇行抑制制御を許容し、前記蛇行異常状態であるときには、下流側の蛇行抑制手段5B〜5Dでの溶接部通過時の蛇行抑制制御を中断させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間圧延、連続焼鈍、めっき等の表面処理などの鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御装置及び蛇行制御方法に関し、特に、溶接点における蛇行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼帯の連続処理ラインでは、ストリップをセンタリングするセンターポジションコントロール(CPC)装置が設けられ、このセンターポジションコントロール装置でストリップの蛇行を抑制するようにしている。鋼帯の連続処理ラインでは、ストリップの終端に次のストリップの前端を溶接して連続したストリップとして通板するようにしている。このため、センターポジションコントロール装置には、ストリップの溶接部と溶接部を含まない定常部とが通過することになるが、通常は溶接部と定常部とにかかわらずセンターポジションコントロール装置で蛇行抑制制御を行っている。
【0003】
そして、センターポジションコントロール装置による蛇行抑制制御が良好であるか否かは、センターポジションコントロール装置を制御する蛇行制御装置によって、蛇行量設定値と蛇行量実績値との蛇行量偏差が閾値を超えか否かによって判断し、蛇行量偏差が閾値を超えた場合に、蛇行異常と判断して警報を出力することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−84126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、蛇行量設定値と蛇行量実績値との偏差が閾値を超えたときに蛇行異常と判断して警報を発することは開示されているが、蛇行異常が発生したときの対処方法については何ら言及されておらず、警報が発せられたときには、鋼帯の連続処理ラインを停止して蛇行量が拡大することを防止する他に術はなく、ストリップの破断等の異常事態が発生することは回避されるものの、鋼帯の連続処理ラインを停止することによる生産量の低下が問題となるという未解決の課題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載の従来例に限らず、従来の蛇行抑制技術では、くの字溶接や幅方向のオフセットの程度が非常に大きい場合に、過剰な蛇行修正や応答遅れによって、蛇行をかえって助長させて、ストリップの破断が生じる場合があった。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、上流側の蛇行抑制手段で蛇行異常を検出したときに、下流側の蛇行抑制手段で最適なストリップの通過制御を行うことができる鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御装置及び蛇行制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御装置は、ストリップの終端に次のストリップの前端を溶接して連続して処理を行う鋼帯の連続処理ラインに当該ストリップの蛇行を抑制する複数の蛇行抑制手段及び各蛇行抑制手段の蛇行量を検出する蛇行検出手段が配置され、前記蛇行検出手段で溶接点通過時に蛇行異常状態が検出されたか否かに応じて下流側の蛇行抑制手段の制御態様を変更する蛇行抑制制御手段が設けられ、前記蛇行抑制制御手段は、前記蛇行異常状態でない正常時には下流側の蛇行抑制手段での溶接点通過時の蛇行抑制制御を許容し、前記蛇行異常状態であるときには、下流側の蛇行抑制手段での溶接部通過時の蛇行抑制制御を中断させることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に係る鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御装置は、請求項1に係る発明において、前記蛇行抑制制御手段が、連続焼鈍炉の上流側の蛇行検出手段で蛇行異常状態が検出されたときに、少なくとも前記連続焼鈍炉内に設けられた蛇行抑制手段での溶接点通過時の蛇行抑制制御を中断させることを特徴としている。
また、請求項3に係る鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記蛇行抑制手段が、前記ストリップをセンタリングするセンターポジションコントロール装置で構成されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項4に係る鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御方法は、ストリップの終端に次のストリップの前端を溶接して連続して処理を行う鋼帯の連続処理ラインに当該ストリップの蛇行を抑制する蛇行抑制手段を複数配置した場合に、少なくとも上流側の蛇行抑制手段の出側で溶接点通過時に蛇行異常状態が発生したか否かを判定し、該判定結果が蛇行異常状態であるときに、下流側の蛇行抑制手段について溶接部通過時の蛇行防止制御を中断させることを特徴としている。
【0010】
また、請求項5に係る鋼帯の連続処理ラインにおける溶接点通過制御方法は、請求項4に係る発明において、連続焼鈍炉の入側の蛇行抑制手段で溶接部通過時に蛇行異常状態と判定されたときに、少なくとも当該連続焼鈍炉内の蛇行抑制手段について溶接部通過時の蛇行制御を中断するようにしたことを特徴としている。
また、請求項6に係る鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御方法は、前記蛇行抑制手段が、前記ストリップをセンタリングするセンターポジションコントロール装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鋼帯の連続処理ラインの上流側に配設された蛇行抑制手段でストリップ間の溶接部の通過時に蛇行異常と判定されたときに、下流側の蛇行抑制手段でストリップ間の溶接部が通過する際に、蛇行抑制制御を中断するようにしたので、溶接時にくの字溶接や幅方向のオフセット溶接が生じたときに蛇行抑制制御により、過剰な蛇行修正や応答遅れによって、蛇行量を助長させて、最悪の場合にストリップの破断が生じることを確実に防止することができる。この場合、下流側の蛇行抑制手段で、溶接点通過時に蛇行抑制制御を一時的に中断しても、ストリップ自体には所定の張力が付与されていることから大きな蛇行が発生することは抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施に供する鋼帯の連続処理ラインの一例を示すライン構成図である。
【図2】センターポジションコントロール装置の具体例を示す斜視図である。
【図3】CPC装置の制御システムを示すブロック図である。
【図4】上流側CPC装置の蛇行抑制制御装置で実行する蛇行抑制制御処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】下流側CPC装置の蛇行抑制制御装置で実行する蛇行抑制制御処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】上位制御装置で実行する蛇行抑制監視処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】CPC装置をストリップ間の溶接点が通過するときのストリップ偏差(蛇行量)と油圧シリンダストロークとの関係を示すタイムチャートである。
【図8】本発明及び従来例におけるストリップ偏差と油圧シリンダストロークとの関係を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施に供する鋼帯の連続処理ラインの一例として示す連続焼鈍ラインのライン構成図である。図中、1はコイルからストリップ2を巻き戻す2台のペイオフリールであって、ペイオフリール1から供給されるストリップ2は入側シャー3によって先端及び後端が切断されて溶接機4に供給される。この溶接機4では、先行するストリップ2の後端と後行するストリップ2の前端とを突き合わせて溶接する。
【0014】
溶接機4を通過したストリップ2は、ストリップ2をセンタリングして蛇行を抑制する蛇行抑制手段としてのセンターポジションコントロール装置(以下、CPC装置と称す)5Aによって蛇行抑制制御され、さらに入側ルーパー6を通過して例えば2段の連続焼鈍炉7で焼鈍される。連続焼鈍炉7は、加熱帯7a、均熱帯7b及び冷却帯7cで構成されており、加熱帯7a及び冷却帯7cには、それぞれ中間部にCPC装置5B及び5Cが配設されてストリップの蛇行抑制制御が行われる。
【0015】
連続焼鈍炉7で焼鈍されたストリップ2は、出側ルーパー10を通じ、さらに調質圧延ミル11で調質圧延された後、出側のCPC装置5Dで蛇行防止制御されてから分割シャー13で溶接部を切断して2台のテンションリール14に交互に巻き取られる。
各CPC装置5A〜5Dの具体的構成の一例は、図2に示すように、一対のステアリングロール21,22を所定距離離間して平行に回転自在に配置した支持枠23を有する。この支持枠23はステアリングロール21側の枠部23aがピボットピン24によって水平方向に回動可能に支持され、ステアリングロール22側の枠部23bに支持枠23を水平方向で回動させる油圧シリンダ25のピストンロッド25aがブラケット25bを介して取付けられている。
【0016】
ステアリングロール21及び22の下側には、支持枠23が中立位置にある状態でステアリングロール21及び22と平行な入側固定ロール26及び出側固定ロール27が配設されている。そして、水平方向に搬送されるストリップ2が入側固定ロール26で上方に方向転換され、次いでステアリングロール21によって水平方向に方向転換され、さらにステアリングロール22によって下方に方向転換され、最後に出側固定ロール27で水平方向に方向転換される。
【0017】
そして、ステアリングロール22の出側すなわちCPC装置の出側にストリップ2の幅方向の両端位置を個別に検出する蛇行検出器28a,28bが配設されているとともに、油圧シリンダ25のピストンロッドのストロークを例えば磁気的に検出するストローク検出器29が配設されている。
このCPC装置5A〜5Dでは、ストリップ2に蛇行が生じることなく通過しているときには、ステアリングロール21,22が固定ロール26,27と平行な中立位置となるように油圧シリンダ25のピストンロッド25aのストロークが制御される。この状態からストリップ2が蛇行検出器28a側へストリップ偏差量が正方向となるように蛇行する状態となると、このストリップ2をセンタリングするために、油圧シリンダ25のピストンロッド25aがストリップ偏差量を“0”とするように収縮される。逆に、ストリップ2が蛇行検出器28b側へストリップ偏差量が負方向となるように蛇行する状態となると、このストリップ2をセンタリングするために、油圧シリンダ25のピストンロッド25aがストリップ偏差量を“0”となるように伸長される。
【0018】
そして、各CPC装置5A,5B,5C及び5Dの油圧シリンダ25は、図3に示すように、蛇行抑制制御装置30A,30B,30C,30D及び油圧シリンダ25を油圧駆動する油圧駆動装置31A,31B,31C,31Dによって制御される。これら蛇行抑制制御装置30A〜30Dには、各CPC装置5A〜5Dの出側に配設された蛇行検出器28a,28bで検出した蛇行量実績値が入力されているとともに、ストローク検出器29で検出した油圧シリンダ25のピストンロッド25aのストローク検出値が入力されている。さらに、図3に示すように、蛇行抑制制御装置30Aから蛇行抑制制御手段としての上位制御装置32に最大ストリップ偏差ΔMmaxが出力されるとともに、上位制御装置32からの蛇行抑制制御装置30B〜30Dに蛇行制御中断指令Cib〜Cidが入力される。
【0019】
上流側のCPC装置5Aの蛇行抑制制御装置30Aでは、図4に示す蛇行抑制制御処理を実行する。この蛇行抑制制御処理では、先ず、ステップS1で、蛇行検出器28a,28bで検出した蛇行量実績値Mrを読込み、次いでステップS2に移行して、予め設定された蛇行量設定値Msから蛇行量実績値Mrを減算してストリップ偏差量ΔMを算出してからステップS3に移行する。
【0020】
このステップS3では、ストリップ偏差量ΔMが“0”近傍の不感帯±M1の範囲であるか否かを判定し、ストリップ偏差量ΔMが不感帯幅内であるときすなわち−M1≦ΔM≦+M1であるときにはステップS4に移行し、油圧シリンダ25のストロークを中立位置に制御するストローク指令値Csを油圧駆動装置31Aに出力してから前記ステップS1に戻る。
【0021】
一方、前記ステップS3の判定結果が、ストリップ偏差量ΔMが不感帯幅を超えている場合には、ステップS5に移行して、ストリップ偏差量ΔMが正であるか否かを判定し、ΔM>0であるときにはステップS6に移行して、油圧シリンダ25のピストンロッドのストロークをストリップ偏差量ΔMに応じて中立位置より収縮させるストローク指令値Csを油圧駆動装置31Aに出力してから前記ステップS1に戻る。
【0022】
また、前記ステップS5の判定結果が、ΔM<0であるときにはステップS7に移行して、油圧シリンダ25のピストンロッドのストロークを中立位置より伸長させるストローク指令値Csを油圧駆動装置31Aに出力してから前記ステップS1に戻る。
また、下流側のCPC装置5B〜5Cの蛇行抑制制御装置30B〜30Dでは、図5に示す蛇行抑制制御処理を実行する。この蛇行抑制制御処理では、前述した図4の蛇行制御処理において、ステップS1の前に上位制御装置32から入力される蛇行制御中断指令Ciが論理値“1”であるか否かを判定するステップS0が設けられ、このステップS0の判定結果が、蛇行制御中断指令Ciが論理値“0”であるときには、前記図4のステップS1に移行する。
【0023】
一方、ステップS0の判定結果が、蛇行制御中断指令Ciが論理値“1”であるときには、ステップS8に移行して、ストリップ偏差量ΔMにかかわらず油圧シリンダ25のストロークを中立位置に制御するストローク指令値Csを油圧駆動装置31B〜31Dに出力して蛇行抑制制御を中断して前記図4のステップS1に戻る。
また、上位制御装置32では、上流側のCPC装置5の蛇行抑制制御装置30で算出したストリップ偏差量ΔMが入力されているとともに、溶接されているストリップ間の溶接点をトラッキングする溶接点トラッキング装置33から出力される溶接点通過情報が入力されている。
【0024】
この上位制御装置32では、図6に示す蛇行制御監視処理を実行する。この蛇行制御監視処理は、先ず、ステップS11で、溶接点トラッキング装置33から出力される溶接点トラッキング情報を読込み、次いでステップS12に移行して、読込んだ溶接点トラッキング情報に基づいて溶接点が上流のCPC装置5Aを通過しているか否かを判定する。この判定結果が、溶接点が通過していないときには、後述するステップS15にジャンプし、溶接点が通過したときには、ステップS13に移行する。
【0025】
このステップS13では、上流のCPC装置5Aの蛇行抑制制御装置30Aで算出したストリップ偏差量ΔMを読込み、読込んだストリップ偏差量ΔMの最大値ΔMmaxを抽出する。次いで、ステップS14に移行して、ストリップ偏差量ΔMの最大値ΔMmaxが予め設定した蛇行閾値ΔMthを超えているか否かを判定し、ΔMmax≦ΔMthであるときには、溶接点通過時の蛇行量が許容範囲内であると判断してステップS15に移行する。
このステップS15では、論理値“0”の蛇行制御中断指令Cib〜CidをCPC装置5Aより下流側の各CPC装置5B〜5Dの蛇行抑制制御装置30B〜30Dに出力してから前記ステップS11に戻る。
【0026】
一方、前記ステップS14の判定結果が、ΔMmax>ΔMthであるときには、CPC装置5Aにおける溶接点通過時の蛇行量が許容範囲を超えている蛇行異常状態であるものと判断してステップS16に移行する。
このステップS16では、溶接点が図7に示すように下流側のCPC装置5Bを中心とする前後の所定範囲Lc(例えば100m)に到達したか否かを判定し、溶接点がCPC装置5Bの所定範囲Lcに到達していないときには溶接点がCPC装置5Bの所定範囲Lcに達するまで待機し、溶接点が所定範囲Lcに到達したときには、ステップS17に移行して、論理値“1”の蛇行制御中断指令CibをCPC装置5Bの蛇行抑制制御装置30Bに出力してからステップS18に移行する。
【0027】
このステップS18では、溶接点がCPC装置5Bの所定範囲Lcを通過したか否かを判定し、所定範囲Lc内であるときには、所定範囲Lcを通過するまで待機し、所定範囲Lcを通過したときにはステップS19に移行して、論理値“0”の蛇行制御中断指令CibをCPC装置5Bの蛇行抑制制御装置30Bに出力してからステップS20に移行する。
このステップS20では、溶接点が下流側のCPC装置5Cを中心とする前後の所定範囲Lcに到達したか否かを判定し、溶接点がCPC装置5Cの所定範囲Lcに到達していないときには溶接点がCPC装置5Cの所定範囲Lc到達するまで待機し、溶接点が所定範囲Lcに到達したときには、ステップS21に移行して、論理値“1”の蛇行制御中断指令CicをCPC装置5Cの蛇行抑制制御装置30Cに出力してからステップS22に移行する。
【0028】
このステップS22では、溶接点がCPC装置5Cの所定範囲Lcを通過したか否かを判定し、所定範囲Lc内であるときには、溶接点が所定範囲Lcを通過するまで待機し、所定範囲Lcを通過したときにはステップS23に移行して、論理値“0”の蛇行制御中断指令CicをCPC装置5Cの蛇行抑制制御装置30Cに出力してからステップS24に移行する。
このステップS24では、溶接点が下流側のCPC装置5Cを中心とする前後の所定範囲Lcに到達したか否かを判定し、溶接点がCPC装置5Cの所定範囲Lcに到達していないときには溶接点がCPC装置5Cの所定範囲Lcに到達するまで待機し、溶接点が所定範囲Lcに到達したときには、ステップS25に移行して、論理値“1”の蛇行制御中断指令CicをCPC装置5Cの蛇行抑制制御装置30Cに出力してからステップS26に移行する。
【0029】
このステップS26では、溶接点がCPC装置5Dの所定範囲Lcを通過したか否かを判定し、所定範囲Lc内であるときには、所定範囲Lcが経過するまで待機し、所定範囲Lcを通過したときにはステップS27に移行して、論理値“0”の蛇行制御中断指令CidをCPC装置5Dの蛇行抑制制御装置30Dに出力してから前記ステップS11に戻る。
【0030】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、一方のペイオフリール1からストリップ2が巻き戻されているものとする。このペイオフリール1から巻き戻されたストリップ2は、最初のCPC装置5Aによって、センタリングされる。このCPC装置5Aでは、その出側に配設された蛇行検出器28a,28bで検出した蛇行量実績値Mrを読込む(ステップS1)。次いで、蛇行量設定値Msから蛇行量実績値Mrを減算してストリップ偏差量ΔMを算出する(ステップS2)。
【0031】
このとき、ストリップ2に蛇行を殆ど生じておらず、ストリップ偏差量ΔMが不感帯内であるときには、CPC装置5Aの油圧シリンダ25に対してピストンロッド25aのストロークを中立位置に制御するストローク指令値Csを油圧駆動装置31Aに出力する(ステップS4)。
このため、油圧駆動装置31Aによって、CPC装置5Aの油圧シリンダ25のピストンロッド25aのストロークが中立位置に制御され、これによってステアリングロール21,22が固定ロール26,27と平行となるように制御される。このため、ストリップ2に対して蛇行量の修正を行うことなく通過させる。
【0032】
また、ストリップ偏差量ΔMが不感帯を超えている場合には、ストリップ偏差量ΔMが正であるか負であるかに応じてストリップ2を中央位置に戻すセンタリングを行うストローク指令値Csを油圧駆動装置31Aに出力し(ステップS6又はS7)、油圧駆動装置31Aで油圧シリンダ25のピストンロッド25aを中立位置から収縮させるか又は伸長させることにより、ストリップ2を中央位置にセンタリングする。
【0033】
このCPC装置5Aによる蛇行抑制制御時に、ストリップ2の溶接点がCPC装置5Aを通過していないので、上位制御装置32から論理値“0”の蛇行制御中断指令Cib〜Cidが下流側のCPC装置5B〜5Dに出力される(ステップS15)。
このCPC装置5Aを通過したストリップ2は、入側ルーパー6を通過して連続焼鈍炉7の加熱帯7aで加熱される。この加熱帯7aでは、その内部に配設されたCPC装置5Bによってセンタリングされる。このCPC装置5Bでは、蛇行抑制制御装置30Bに上位制御装置32から論理値“0”の蛇行制御中断指令Cibが供給されている。このため、蛇行抑制制御装置30Bで図5の蛇行抑制制御装置30BでステップS1〜ステップS7の蛇行抑制制御処理が行われて、ストリップ2がセンタリングされて蛇行が抑制される。
【0034】
その後、ストリップ2は均熱帯7bを通過して冷却帯7cで冷却されて焼鈍される。
この冷却帯7cでも、CPC装置5Cによってストリップ2のセンタリングが行われて蛇行が抑制される。
そして、連続焼鈍炉7で焼鈍されたストリップ2は、出側ルーパー10を通過して、調質圧延ミル11で調質圧延された後に、出側のCPC装置5Dで蛇行防止制御されてからテンションリール14の何れか一方に巻取られる。
【0035】
このストリップ2の連続焼鈍状態で、一方のペイオフリール1からのストリップ2の巻き戻しが終了し、他方のペイオフリール1からストリップ2を巻き戻す状態となると、先ず、入側ルーパー6からストリップ2を払い出す状態として、入側シャー3で現在巻き戻しているストリップ2の後端を切断する。このストリップ2の後端の切断の前又は後に新たに巻き戻すストリップ2の前端を切断する。
【0036】
次いで、現在のストリップ2の後端と新たなストリップ2の前端とを溶接機4の溶接位置で突合せて溶接する。このストリップ2の溶接が完了すると、入側ルーパー6でストリップ2の払出しを終了して貯留状態としながらストリップ2を送り出す。これにより、ストリップ2同士を溶接した溶接点が移動を開始する。この溶接点の移動位置は、溶接点トラッキング装置33でトラッキングされる。
【0037】
そして、ストリップ2の溶接点が上流側のCPC装置5Aに達すると、このCPC装置5Aでは蛇行抑制制御処理を実行している。このとき、ストリップ2の溶接点がオフセット溶接や、くの字溶接が行われていない正常状態である場合には、CPC装置5Aでストリップ2をセンタリングしての蛇行を抑制することができる。しかしながら、ストリップ2の溶接点が接続するストリップ2同士に幅方向のズレが生じるオフセット溶接や溶接点を挟むストリップ2がくの字状となるくの字溶接が生じていると、CPC装置5Aで蛇行抑制処理を実行したときに、過剰な蛇行修正や応答遅れによって蛇行量を助長させてしまう。
【0038】
このため、上位制御装置32は、ストリップ2の溶接点がCPC装置5Aに達すると、蛇行抑制制御装置30Aで演算したストリップ偏差量ΔMを読込み、ストリップ偏差ΔMの最大値ΔMmaxを抽出する(ステップS13)。抽出された最大値ΔMmaxが閾値ΔMth以下であるときには、正常な蛇行抑制制御を行っているものと判断して、論理値“0”の蛇行制御中断指令Cib〜Cidを各CPC装置5B〜5Dの蛇行抑制制御装置30B〜30Dに出力する。
このため、各CPC装置5B〜5Dでは、ストリップ2の溶接点が通過する際に、溶接点ではない部分が通過する定常時と同様の蛇行抑制制御処理を実行して、ストリップ2の蛇行を抑制する。
【0039】
ところが、上流側のCPC装置5Aをストリップ2の溶接点が通過する際に、オフセット溶接や、くの字溶接が生じていると、図7で実線図示のようにストリップ偏差量ΔMの最大値ΔMmaxが例えば正方向に閾値ΔMthを超える状態となる。このため、蛇行抑制制御装置30Aでは、ストリップ偏差量ΔMに基づいて蛇行を抑制するストローク指令値Csを油圧駆動装置31Aに出力する。したがって、CPC装置5Aの油圧シリンダ25のピストンロッド25aのストロークが、図7で破線図示のように、中立位置からストリップ偏差量ΔMとは逆位相でストリップ偏差量ΔMより所定の応答遅れを持って負方向に制御される。
【0040】
このように、上流側のCPC装置5Aでのストリップ偏差量ΔMが閾値ΔMthを超える状態となると、上位制御装置32では、ストリップ偏差量ΔMの最大値ΔMmaxが閾値ΔMthを超えているので、蛇行異常状態と判断して、溶接点トラッキング装置33からの溶接点トラッキング情報を読込み、溶接点が次のCPC装置5Bに到達する際に、溶接点が通過する前後の所定範囲Lcの間に論理値“1”の蛇行制御中断指令Cibを出力する。
【0041】
このため、CPC装置5Bでは、図8(b)に示すように、溶接点が通過する前後の所定範囲Lcに相当する所定期間T1では、蛇行制御中断指令Cibが論理値“1”となっているので、油圧シリンダ25のピストンロッド25aのストロークを中立位置に制御するストローク指令値Csを油圧駆動装置31Bに出力する。したがって、CPC装置5Bで蛇行抑制制御を行わない状態となり、蛇行抑制制御を行うことなく溶接点を通過させる。このため、ストリップ偏差量ΔMは、図8(a)に示すように、溶接点の形状に応じて変化するが過剰蛇行抑制制御によるハンチング現象を生じることはい。
【0042】
その後、所定期間T1が経過して、ストリップ2の溶接点がCPC装置5Cの前後の所定範囲Lcの間を通過し終わると、上位制御装置32から論理値“0”の蛇行制御中断指令CibがCPC装置5Bの蛇行抑制制御装置30Bに出力されることにより、蛇行抑制制御装置30Bで蛇行抑制制御が再開されて、ストリップ偏差量ΔMが零近傍の不感帯幅内となるように蛇行抑制制御が行われる。
【0043】
なお、CPC装置5Bで蛇行抑制制御処理を中断した場合でも、ストリップ2には搬送するために所定の張力が付与されているので、この張力によってストリップ2がセンタリングされることになり、ストリップ2の蛇行量が大幅に増加することは抑制される。
因みに、CPC装置5Bで従来例と同様に蛇行抑制制御処理を実行すると、溶接点が通過することにより、図8(c)に示すように、ストリップ偏差量ΔMが例えば正方向に増加し、これに応じてストリップ2の蛇行を戻すために、油圧シリンダ25のピストンロッド25aが図8(d)に示すように、ストリップ偏差量ΔMとは逆位相となる負方向にストロークされる。
【0044】
このため、溶接点が通過した直後のストリップ偏差量ΔMが図8(c)に示すように負方向に大きく戻されてしまい、これに応じて油圧シリンダ25のピストンロッド25aが図8(d)に示すように正方向にストロークされる。このピストンロッド25aのストロークが、ストリップ偏差量ΔMが零に収束するにしたがって、減衰しながら中立位置に収束する。
このように、溶接点の通過時に蛇行抑制制御を実行すると、過剰な蛇行抑制制御によるストリップ位置の修正によって油圧シリンダ25のストロークにハンチング現象が生じてしまう。このため、ストリップ2の溶接点近傍で座屈現象が発生したり、最悪の場合にはストリップが破断状態に至る場合が生じたりする。
【0045】
しかしながら、本実施形態のように、溶接点の通過時に蛇行抑制制御を中断すると、過剰な蛇行抑制制御が抑制され、CPC装置5Bの油圧シリンダ25のストロークにハンチング現象を生じることがなくなるととともに、ストリップ2に座屈現象が発生したり、ストリップ2が破断したりすることを確実に防止することができる。
その後、さらに下流側のCPC装置5C及び5Dでもストリップ2の溶接点が通過前後の所定期間T1の間で上記と同様に蛇行抑制制御が中断される。
【0046】
なお、上記実施形態においては、CPC装置5Aより下流側の全てのCPC装置5B〜5Dで蛇行抑制制御を中断する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、少なくともストリップ破断修復に時間を要する連続焼鈍炉7内のCPC装置5B及び5Cの蛇行抑制制御を中断するようにすればよい。また、連続焼鈍炉7の上流側に複数のCPC装置が配設されている場合には、連続焼鈍炉7の上流側の何れかのCPC装置でストリップ偏差量ΔMが閾値ΔMthを超えたときに、CPC装置5B及び5Cの蛇行抑制制御を中断するようにすればよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、図4〜図6のフローチャートに基づいて蛇行抑制制御を行う場合について説明したが、蛇行抑制制御は上記フローチャートの処理に限定されるものではなく、要は、上流側のCPC装置において溶接点の蛇行量が過大となった場合に、その下流側のCPC装置における当該溶接点の蛇行抑制制御を中断するようにすればよい。
さらに、上記実施形態において、CPC装置が連続焼鈍炉7の入側及び出側と連続焼鈍炉内との4個所に配置されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、入側ルーパー6、出側ルーパー10等にもCPC装置を設け、これらをCPC装置5B〜5Dと同様に制御するようにしてもよい。
【0048】
さらにまた、上記実施形態においては、CPC装置5A〜5Dが図2に示す構成を有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、平行に配置した2本のストリップ案内ロールにZ状にストリップを巻回して挿通させ、何れか一方のロールをステアリングロールとした構成等の任意の構成とすることができ、要はストリップ2をセンタリングする機能を有すれば良い。
なおさらに、上記実施形態においては鋼帯の連続処理ラインとして連続焼鈍ラインを適用した場合ついて説明したが、これに限定されるものではなく、圧延機を配置した冷間圧延ライン、めっき等の表面処理ライン等の他の任意の鋼帯の連続処理ラインにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…ペイオフリール、2…ストリップ、3…シャー、4…溶接機、5A〜5D…センターポジションコントロール(CPC)装置、6…入側ルーパー、7…連続焼鈍炉、10…出側ルーパー、11…調質圧延機、13…分割シャー、14…テンションリール、21,22…ステアリングロール、23…支持枠、25…油圧シリンダ、28a,28b…蛇行検出器、30A〜30D…蛇行抑制制御装置、31A〜31D…油圧駆動装置、32…上位制御装置、33…溶接点トラッキング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリップの終端に次のストリップの前端を溶接して連続して処理を行う鋼帯の連続処理ラインに当該ストリップの蛇行を抑制する複数の蛇行抑制手段及び各蛇行抑制手段の蛇行量を検出する蛇行検出手段が配置され、前記蛇行検出手段で溶接点通過時に蛇行異常状態が検出されたか否かに応じて下流側の蛇行抑制手段の制御態様を変更する蛇行抑制制御手段が設けられ、
前記蛇行抑制制御手段は、前記蛇行異常状態でない正常時には下流側の蛇行抑制手段での溶接点通過時の蛇行抑制制御を許容し、前記蛇行異常状態であるときには、下流側の蛇行抑制手段での溶接部通過時の蛇行抑制制御を中断させることを特徴とする鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御装置。
【請求項2】
前記蛇行抑制制御手段は、連続焼鈍炉の上流側の蛇行検出手段で蛇行異常状態が検出されたときに、少なくとも前記連続焼鈍炉内に設けられた蛇行抑制手段での溶接点通過時の蛇行抑制制御を中断させることを特徴とする請求項1に記載の鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御装置。
【請求項3】
前記蛇行抑制手段は、前記ストリップをセンタリングするセンターポジションコントロール装置で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御装置。
【請求項4】
ストリップの終端に次のストリップの前端を溶接して連続して処理を行う鋼帯の連続処理ラインに当該ストリップの蛇行を抑制する蛇行抑制手段を複数配置した場合に、少なくとも上流側の蛇行抑制手段の出側で溶接点通過時に蛇行異常状態が発生したか否かを判定し、該判定結果が蛇行異常状態であるときに、下流側の蛇行抑制手段について溶接部通過時の蛇行防止制御を中断させることを特徴とする鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御方法。
【請求項5】
連続焼鈍炉の入側の蛇行抑制手段で溶接部通過時に蛇行異常状態と判定されたときに、少なくとも当該連続焼鈍炉内の蛇行抑制手段について溶接部通過時の蛇行制御を中断するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御方法。
【請求項6】
前記蛇行抑制手段は、前記ストリップをセンタリングするセンターポジションコントロール装置であることを特徴とする請求項4又は5に記載の鋼帯の連続処理ラインにおける蛇行制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−161465(P2011−161465A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24807(P2010−24807)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】