説明

鋼管矢板壁の防食構造及び防食方法

【課題】鋼管矢板壁の外壁面を防食するうえで、ペトロラタム系防食材の鋼管本体や凹底部の底側壁面に対する密着性の向上を図ることを可能とする。
【解決手段】鋼管矢板壁9の外壁面9aに接触するペトロラタム系防食層13とその外側の耐食性金属板17との間に緩衝材15が介装されてなる複数の防食カバー11により、鋼管矢板壁9の外壁面9aが被覆される。複数の防食カバー11は、隣り合う鋼管本体5間に形成された凹底部6内において互いの側端側の一部を重ね合わせた状態で固定される。鋼管本体5の外周面5aを被覆している防食カバー11の断面円弧状の耐食性金属板17に、凹底部6内に設けられた張力導入装置31により周方向引張力が導入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う鋼管本体が継手を介して連結された鋼管矢板壁の外壁面を防食するための鋼管矢板壁の防食構造及び防食方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海洋鋼構造物等として用いられる鋼管杭や鋼管矢板は、海水の干満帯や飛沫帯が厳しい腐食条件にさらされている。このため、従来より、このような厳しい腐食条件に晒されている鋼管杭等の外壁面を防食するための防食構造として様々なものが提案されている。
【0003】
特許文献1においては、鋼管杭等の外壁面にペトロラタム系防食材を塗布等し、防食材にプラスチック製又は金属製の保護カバーをその端部が重なり合うように巻き付け、ベルト、ゴムバンド等からなる締め付け具により保護カバーを締め付け、保護カバーの重合部を固定具で仮止めし、保護カバーの重合部を長尺保護カバーにより覆うとともに、その長尺保護カバー内に予め入れておいた経時硬化性封止材を硬化させることを特徴とした防食構造が提案されている。
【0004】
また、特許文献2においては、鋼管杭等の外壁面にペトロラタム系防食材を塗布等し、防食材に切欠円筒状のプラスチック製の保護カバーを取り付け、保護カバーの両端部に設けられたフランジをボルト、ナットにより締め付けることで保護カバーを固定することを特徴とした防食構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3749854号公報
【特許文献2】特開2001−152475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1においては、ペトロラタム系防食材を覆う保護カバーとしてプラスチック製、金属製のものが開示されているが、プラスチックは紫外線に弱いうえ、耐熱性の観点からも優れていない。このことから、これらの観点からは、金属製の保護カバーが好ましいように考えられる。このような金属製の保護カバーを用いる場合、耐食性を確保しつつコストを削減する観点からは、その板厚を例えば2.0mm以下のように薄くすることが求められる。しかしながら、板厚の薄い金属製保護カバーを用いると、ベルト等の締め付け具により保護カバーを締め付けたときに、締め付け具からの締め付けにより金属製保護カバーにしわが生じてしまい、金属製保護カバーをペトロラタム系防食材に密着させるのが困難になってしまうという問題点がある。
【0007】
また、同文献1においては、鋼管杭のみではなく、複数の鋼管矢板を連結した鋼管矢板壁の外壁面を防食するための防食構造も開示されている(同文献[0036]〜[0039]等参照。)。しかしながら、鋼管矢板壁は、隣り合う鋼管本体間に継手があるため、一つの鋼管本体の全周に亘りベルト等の締め付け具を巻き回すことがそもそも困難である。このため、隣り合う鋼管本体間に形成された凹底部内にある保護カバーを締め付け具により締め付けることが困難であるうえ、その凹底部とは別の箇所にある保護カバーの締め付けにより凹底部内の保護カバーが浮き上がってしまうことから、その凹底部内においてペトロラタム系防食材に保護カバーを密着させるのが特に困難であるという問題点がある。
【0008】
また、同文献1の開示技術を用いた場合、長尺保護カバーの配置位置について特に考慮されておらず、その配置位置によっては波浪や流木等により長尺保護カバーが損傷し易く、長期に亘って防食性能を発揮させ難いという問題もある。
【0009】
また、鋼管矢板壁では、鋼管本体の形状誤差に起因して、ペトロラタム系防食材を鋼管本体に密着させ難いという問題点がある。
【0010】
また、鋼管矢板壁では、隣り合う鋼管矢板の施工誤差に起因して、隣り合う鋼管本体間の距離、向き等の位置関係に変動が生じやすいという問題点がある。ここで、特許文献1の開示技術では、上述のように、隣り合う鋼管本体間の凹底部内において保護カバーが浮き上がってしまうため、そもそもこのような施工誤差に追従することが困難である。また、特許文献2の開示技術では、保護カバーがプラスチック製であるため、やはりこのような施工誤差に追従することが困難である。このため、これらの開示技術では、このような施工誤差に起因した位置関係の変動に追従できないことから、その施工誤差がある場合にペトロラタム系防食材を鋼管本体や凹底部の底側壁面に密着させ難いという問題点がある。
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、鋼管矢板壁の外壁面を防食するうえで、ペトロラタム系防食材の鋼管本体や凹底部の底側壁面に対する密着性の向上を図ることを可能とし、上述の問題点を有利に解決することのできる鋼管矢板壁の防食構造及び防食方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上述した課題を解決するため、下記の鋼管矢板壁の防食構造及び防食方法を発明した。
第1発明に係る鋼管矢板壁の防食構造は、隣り合う鋼管本体が継手を介して連結された鋼管矢板壁の外壁面を防食するための鋼管矢板壁の防食構造において、前記鋼管矢板壁の外壁面に接触するペトロラタム系防食層とその外側の耐食性金属板との間に緩衝材が介装されてなる複数の防食カバーにより、前記鋼管矢板壁の外壁面が被覆され、前記複数の防食カバーは、前記隣り合う鋼管本体間に形成された凹底部内において互いの側端側の一部を重ね合わせた状態で固定され、前記鋼管本体の外周面を被覆している前記防食カバーの断面円弧状の耐食性金属板に、前記凹底部内に設けられた張力導入装置により周方向引張力が導入されていることを特徴とする。
第2発明に係る鋼管矢板壁の防食構造は、第1発明において、前記防食カバーは、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部と、前記本体カバー部の側端から外側に折り曲げられた底カバー部とを有し、前記張力導入装置は、前記凹底部の底側壁面から突出して前記防食カバーの底カバー部を貫通する雄ねじ部材と、前記雄ねじ部材が挿通される押さえ部材と、前記雄ねじ部材に螺合されるナットとを有し、前記ナットの締め付けにより前記押さえ部材が前記防食カバーの底カバー部を前記底側壁面に押圧した状態で保持され、その押圧により前記本体カバー部の耐食性金属板に周方向引張力が導入されていることを特徴とする。
第3発明に係る鋼管矢板壁の防食構造は、第2発明において、前記ナットの締め付けにより前記本体カバー部と前記底カバー部とがなす角部寄りの部位を前記押さえ部材が前記底側壁面に押圧した状態で保持されていることを特徴とする。
第4発明に係る鋼管矢板壁の防食構造は、第2発明又は第3発明において、前記押さえ部材の外面にボルト挿通孔を有するリブが設けられ、前記防食カバーの底カバー部の耐食性金属板が前記押さえ部材に巻き付けられ、前記底カバー部の耐食性金属板の側端部と前記リブのボルト挿通孔とにボルトが挿通され、前記ボルトに螺合されるナットの締め付けにより前記本体カバー部の耐食性金属板の側端部が前記凹底部内に引き込まれた状態で保持され、その引き込みにより前記本体カバー部の耐食性金属板に周方向引張力が導入されていることを特徴とする。
第5発明に係る鋼管矢板壁の防食構造は、第2発明〜第4発明の何れかにおいて、前記押さえ部材は、前記防食カバーの底カバー部に当接する第1の押圧面と、前記防食カバーの本体カバー部に当接する第2の押圧面とを有することを特徴とする。
第6発明に係る鋼管矢板壁の防食構造は、第1発明〜第5発明の何れかにおいて、隣り合う前記防食カバーの一方は、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部を有し、隣り合う前記防食カバーの他方は、前記凹底部の底側壁面を被覆する底カバー部を有し、前記底カバー部は、隣り合う鋼管本体の継手同士が互いに引っ張られて嵌合された状態のときに、前記底側壁面の左右方向の略全長を被覆可能な長さに形成されていることを特徴とする。
第7発明に係る鋼管矢板壁の防食構造は、第1発明〜第6発明の何れかにおいて、隣り合う前記防食カバーの一方は、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部を有し、隣り合う前記防食カバーの他方は、前記凹底部の底側壁面を被覆する底カバー部と、前記底カバー部の耐食性金属板の側端より側方に長く設けられた前記防食層及び前記緩衝材からなる底カバー側余長部とを有し、前記鋼管本体と前記底側壁面とがなす隅角部において、前記本体カバー部の前記防食層及び前記緩衝材と前記底カバー側余長部とが互いに押圧した状態で保持されていることを特徴とする。
第8発明に係る鋼管矢板壁の防食構造は、第1発明〜第7発明の何れかにおいて、前記凹底部内において隣り合う鋼管本体間に受け部材が架設され、前記複数の防食カバーにより、前記鋼管本体の外周面と前記受け部材の外面とが被覆されていることを特徴とする。
第9発明に係る鋼管矢板壁の防食構造は、第1発明〜第8発明の何れかにおいて、前記防食カバーは、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部と、前記本体カバー部の側端から外側に折り曲げられた底カバー部と、前記本体カバー部と前記底カバー部とがなす角部に設けられ、他の部位の耐食性金属板より板厚の厚い耐食性金属板からなるL字状部材とを有することを特徴とする。
第10発明に係る鋼管矢板壁の防食構造は、第1発明〜第9発明の何れかにおいて、前記防食カバーは、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部と、前記本体カバー部の側端から外側に折り曲げられた底カバー部と、前記本体カバー部と前記底カバー部とがなす角部に設けられた補強リブとを有することを特徴とする。
第11発明に係る鋼管矢板壁の防食構造は、第1発明〜第10発明の何れかにおいて、前記防食カバーの耐食性金属板は、0.4mm〜2.0mmの板厚から構成されていることを特徴とする。
第12発明に係る鋼管矢板壁の防食構造は、第1発明〜第3発明、第5発明〜第11発明の何れかにおいて、前記複数の防食カバーは、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部と、前記本体カバー部の側端から外側に折り曲げられた底カバー部とを有する本体防食カバーから構成され、前記凹底部内において互いの底カバー部を重ね合わせた状態で固定されていることを特徴とする。
第13発明に係る鋼管矢板壁の防食構造は、第1発明〜第11発明の何れかにおいて、前記複数の防食カバーは、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部を少なくとも有する本体防食カバーと、前記凹底部の底側壁面を被覆する底カバー部を少なくとも有する補助防食カバーとの何れかから構成され、前記凹底部内において本体防食カバーの側端側の一部と補助防食カバーの側端側の一部とを重ね合わせた状態で固定されていることを特徴とする。
第14発明に係る鋼管矢板壁の防食方法は、隣り合う鋼管本体が継手を介して連結された鋼管矢板壁の外壁面を防食するための鋼管矢板壁の防食方法において、前記鋼管矢板壁の外壁面に接触するペトロラタム系防食層と外側の耐食性金属板との間に緩衝材が介装されてなる複数の防食カバーにより、前記鋼管矢板壁の外壁面を被覆し、前記隣り合う鋼管本体間に形成された凹底部内において前記複数の防食カバーの互いの側端側の一部を重ね合わせた状態で固定し、前記鋼管本体の外周面を被覆している前記防食カバーの断面円弧状の耐食性金属板に、前記凹底部内に設けられた張力導入装置により周方向引張力を導入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明〜第14発明によれば、張力導入装置により防食カバーの断面円弧状の耐食性金属板に周方向引張力を導入することとしているので、その耐食性金属板にしわが生じるのを防止することが可能となる。また、これにより、その断面円弧状の本体カバー部の緩衝材が圧縮変形することになり、変形した緩衝材の弾性反発力により鋼管本体に対する防食層の密着性を向上させることが可能となる。また、鋼管本体に形状誤差がある場合においても、緩衝材の圧縮変形によりその形状誤差に追従することができ、形状誤差がある場合でも鋼管本体に対する防食層の密着性を向上させることが可能となる。また、凹底部内に張力導入装置が設けられているので、凹底部内での防食カバーの浮き上がりが生じにくく、凹底部内における防食カバーの鋼管本体等に対する密着性を向上させることが可能となる。また、張力導入装置や互いに隣り合う防食カバーの重合部が凹底部内に設けられているので、凹底部以外の箇所において突出する部分を設けることが不要となる。
第3発明によれば、防食カバーの本体カバー部と底カバー部とがなす角部における耐食性金属板の浮き上がりを有効に防止することが可能となる。
第5発明によれば、防食カバーの本体カバー部と底カバー部とがなす角部における耐食性金属板の浮き上がりをより有効に防止することが可能となる。
第6発明によれば、施工誤差がある場合でも鋼管本体等に対する防食層の密着性を向上させることが可能となる。
第7発明によれば、防食層を密着させにくい隅角部においても、その防食層を容易に密着させることが可能となる。
第9発明によれば、防食カバーの本体カバー部と底カバー部とがなす角部における曲げ剛性を高めることが可能となり、ひいては、防食カバーの角部の耐食性金属板の浮き上がりをより有効に防止することが可能となる。
第10発明によれば、防食カバーの本体カバー部と底カバー部とがなす角部における曲げ剛性を高めることが可能となり、ひいては、防食カバーの角部の耐食性金属板の浮き上がりをより有効に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造の構成を示す平面断面図である。
【図2】第1実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造の構成を示す拡大平面断面図である。
【図3】第1実施形態に係る本体防食カバーの角部近傍の構成を示す拡大平面断面図である。
【図4】第1実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造の構成を示す正面図である。
【図5】(a)は防食カバーを取り外したときの鋼管矢板壁及び受け部材の構成を示す平面図であり、(b)はその正面図である。
【図6】第1実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造を構築する一段階目の工程を説明するための拡大平面断面図である。
【図7】第1実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造を構築する二段階目の工程を説明するための拡大平面断面図である。
【図8】第1実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造を構築する三段階目の工程を説明するための平面断面図である。
【図9】第1実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造を構築する三段階目の工程を説明するための拡大平面断面図である。
【図10】第1実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造を構築する四段階目の工程を説明するための拡大平面断面図である。
【図11】(a)は隣り合う鋼管本体の継手同士が引張嵌合状態であるときの構成を示す拡大平面断面図であり、(b)はその継手同士が圧縮嵌合状態であるときの構成を示す拡大平面断面図である。
【図12】隣り合う鋼管本体の継手同士が偏心嵌合状態であるときの構成を示す平面断面図である。
【図13】隣り合う鋼管本体の継手同士が引張嵌合状態であるときの複数の防食カバーの取り付け手順について説明するための拡大平面断面図である。
【図14】隣り合う鋼管本体の継手同士が圧縮嵌合状態であるときの複数の防食カバーの取り付け手順について説明するための拡大平面断面図である。
【図15】第1実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造の第1変形形態の構成を示す拡大平面断面図である。
【図16】第1実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造の第2変形形態の構成を示す拡大平面断面図である。
【図17】第1実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造の第3変形形態の構成を示す拡大平面断面図である。
【図18】第2実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造の構成を示す拡大平面断面図である。
【図19】第2実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造を構築する工程を説明するための拡大平面断面図である。
【図20】第2実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造を構築する他の工程を説明するための拡大平面断面図である。
【図21】第3実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造の構成を示す拡大平面断面図である。
【図22】第3実施形態に係る本体防食カバーの角部近傍の構成を示す拡大平面断面図である。
【図23】第3実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造の作用効果について説明するための拡大平面断面図である。
【図24】第3実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造の変形形態の構成を示す拡大平面断面図である。
【図25】第5実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造の構成を示す拡大平面断面図である。
【図26】(a)は本体防食カバーの角部に設けられた補強リブについて説明するための拡大平面断面図であり、(b)はその部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した鋼管矢板の防食構造を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
本発明に係る防食構造は、図1〜図5に示すように、隣り合う鋼管本体5が継手7を介して連結された鋼管矢板壁9の外壁面9aを防食するために用いられる。鋼管本体5は、円筒状に形成される。鋼管本体5の外周面5aには、周方向に間隔を空けて一対の継手7が溶接等により接合される。一対の継手7は、その形状、組み合わせについて公知の様々なものが用いられる。一対の継手7は、図示の例において、円形パイプにスリットが形成されたC型継手から構成されている。継手7の例としては、この他に、図16に示すような図中右側のT型継手や、図17に示すような図中左側のL型継手が挙げられる。
【0017】
このような鋼管矢板壁9は、海洋や河川等の地盤に打設されており、その外壁面9aの中でも海水の干満帯や飛沫帯が厳しい腐食条件に晒されている。本発明に係る防食構造は、このような腐食条件に晒されているその外壁面9aを防食するために用いられる。また、本発明に係る防食構造は、既設の鋼管矢板壁9を対象としてもよい。
【0018】
まず、第1実施形態に係る鋼管矢板の防食構造1について説明する。
【0019】
第1実施形態に係る鋼管矢板の防食構造1は、図1〜図5に示すように、鋼管矢板壁9の外壁面9aを被覆する複数の防食カバー11と、隣り合う鋼管本体5間に形成された凹底部6内に設けられた張力導入装置31と、その凹底部6内において隣り合う鋼管本体5間に架設された受け部材71とを備えている。
【0020】
防食カバー11は、鋼管矢板壁9の外壁面9aに接触する内側のペトロラタム系防食層13と外側の耐食性金属板17との間に緩衝材15が介装されており、これらが一体化されて構成されている。
【0021】
防食層13は、ペトロラタムペーストやペトロラタムを主成分とするコンパウンドを不織布等に含浸させてシート状にしたペトロラタムシートから構成される。防食層13は、例えば、厚さ2mm〜3mmのシート状に形成される。
【0022】
緩衝材15は、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡スチレン等の発泡合成樹脂製の弾性材料から構成されている。緩衝材15は、例えば、厚さ5mm〜20mmのシート状に形成される。
【0023】
耐食性金属板17は、チタン、耐海水性ステンレス等のような耐食性に優れた金属板から構成される。耐食性金属板17は、例えば、板厚0.4mm〜2.0mmの薄板状金属板から構成される。この板厚の範囲であれば十分な防食性能が得られる。0.4mm未満では、流木等の浮遊物の衝突に対する十分な耐衝撃性が得られない恐れがある。2.0mm超では、コストの過度の増大を招いてしまう。
【0024】
複数の防食カバー11は、防食対象となる鋼管矢板壁9の外壁面9aに沿って横方向に連続して配置される。具体的には、複数の防食カバー11は、鋼管本体5の外周面5aと、凹底部6の底側壁面6aとに沿って横方向に連続して配置されており、このように配置された複数の防食カバー11により、その鋼管本体5の外周面5aと凹底部6の底側壁面6aとが被覆される。ここでいう凹底部6の底側壁面6aとは、第1実施形態において、受け部材71の外面71aである場合を示している。また、複数の防食カバー11は、図4、図5に示すように、防食対象となる鋼管矢板壁9の飛沫帯、干満帯となる高さ範囲より上下に広い高さ範囲H1を被覆するように、その高さ寸法が調整されている。
【0025】
複数の防食カバー11は、その種類として、鋼管本体5の外周面5aを被覆する本体カバー部21を少なくとも有する本体防食カバー11Aと、後述するような、隣り合う鋼管本体5間の凹底部6の底側壁面6aを被覆する底カバー部23を少なくとも有する補助防食カバー11Bとの何れかがある。第1実施形態においては、複数の防食カバー11が本体防食カバー11Aのみで構成されている場合を例示している。以下の説明においては、本体防食カバー11Aと補助防食カバー11Bとに共通する内容については防食カバー11と記載して説明し、それぞれにのみ関連する内容については本体防食カバー11A又は補助防食カバー11Bと記載して説明する。
【0026】
本体防食カバー11Aは、第1実施形態において、本体カバー部21と、本体カバー部21の側端から外側に折り曲げられた底カバー部23とを有している。
【0027】
互いに隣り合う本体防食カバー11Aは、凹底部6内において互いの側端側の一部を重ね合わせた状態で固定される。第1実施形態においては、各本体防食カバー11Aの側端側にある底カバー部23を互いに重ね合わせた状態で固定される。この互いの側端側の一部を重ね合わせて設けられた重合部19は、後述のように、張力導入装置31により、凹底部6の底側壁面6aに押圧された状態で固定される。
【0028】
互いに隣り合う本体防食カバー11Aは、重合部19において外側に設けられた本体防食カバー11Aが、防食層13と緩衝材15とが設けられていない耐食性金属板17のみから構成されている。図2の例では、図中右側の本体防食カバー11Aの底カバー部23がこれに該当する。これにより、重合部19において互いに隣り合う本体防食カバー11Aの耐食性金属板17同士が重ね合わせられることになり、海水等の本体防食カバー11A内への浸水を防止することが可能となる。
【0029】
互いに隣り合う防食カバー11の一方は、図8、図9に示すように、本体カバー部21の耐食性金属板17の側端21aより周方向に長く設けられた本体カバー側余長部22を有している。図9の例では、図中右側の本体防食カバー11Aが本体カバー側余長部22を有している。また、互いに隣り合う防食カバー11の他方は、底カバー部23の耐食性金属板17の側端23aより側方に長く設けられた底カバー側余長部24を有している。図9の例では、図中左側の本体防食カバー11Aが底カバー側余長部24を有している。本体カバー側余長部22及び底カバー側余長部24は、何れも防食層13及び緩衝材15からなるものとして構成されている。これらの詳細については後述する。
【0030】
張力導入装置31は、図3〜図5等に示すように、第1実施形態において、凹底部6の底側壁面6aから突出して本体防食カバー11Aの底カバー部23を貫通する雄ねじ部材35と、本体防食カバー11Aの底カバー部23の外側に配置され、雄ねじ部材35が挿通される押さえ部材33と、雄ねじ部材35に螺合されるナット39とを有する。
【0031】
雄ねじ部材35は、例えば、鋼製のスタッドボルトから構成される。雄ねじ部材35は、凹底部6の底側壁面6aに溶接等により接合される。雄ねじ部材35は、凹底部6の底側壁面6aに上下方向に間隔を空けて複数接合される。ナット39は、例えば、鋼製材料から構成される。
【0032】
押さえ部材33は、防食カバー11の耐食性金属板17の外面に接触し得るものであり、その接触による異種金属接触腐食を防止する観点からは、異種金属接触腐食の発生がない絶縁性材料から構成されていることが好ましい。絶縁性材料の一例としては、例えば、フッ素樹脂、FRP、塩化ビニル等の樹脂製材料が挙げられる。
【0033】
押さえ部材33は、後述のように、防食カバー11を凹底部6の底側壁面6aに押圧した状態で保持されることにより、防食カバー11の鋼管本体5等に対する密着性を高めるものとして機能する。このため、押さえ部材33は、その曲げ剛性に優れていることが好ましく、この観点からは、厚み5mm〜20mmのFRP等の樹脂製材料の板材から構成されていることが好ましい。5mm未満では、十分な曲げ剛性が得られない恐れがある。20mm超では、過度の重量増大により施工性の低下を招く恐れがある。また、防食カバー11の鋼管本体5及び凹底部6の底側壁面6aに対する密着性を高める観点から、押さえ部材33は、凹底部6の底側壁面6aを被覆している防食カバー11の底カバー部23の略全長を押圧できるような長さの板材から構成されていることが好ましい。この他にも、押さえ部材33は、図15に示すように、左右方向の長さが短い複数の板材から構成されていてもよい。
【0034】
第1実施形態に係る張力導入装置31では、ナット39の締め付けにより、押さえ部材33が防食カバー11(11A)の底カバー部23を凹底部6の底側壁面6aに押圧した状態で保持されている。これにより、防食カバー11(11A)の底カバー部23が凹底部6の底側壁面6aから浮き上がるのが防止されている。
【0035】
また、このとき、ナット39の締め付けにより本体防食カバー11Aの底カバー部23の緩衝材15が圧縮変形することになり、その変形により本体防食カバー11Aの本体カバー部21の両側の側端部が凹底部6の底側壁面6aに向けて引き込まれる。また、これと同時に、本体防食カバー11Aの本体カバー部21の緩衝材15が圧縮変形し、その弾性反発力により緩衝材15が本体カバー部21の耐食性金属板17を外側に押し広げようとすることになる。これらの結果、押さえ部材33が本体防食カバー11Aの底カバー部23を底側壁面6aに押圧することにより、本体防食カバー11Aの本体カバー部21の耐食性金属板17に周方向引張力が導入されることになる。
【0036】
ここで、本体防食カバー11Aの耐食性金属板17は、防食上は非常に薄くて構わないので、コストを削減する観点から、例えば、板厚0.4mm〜2.0mmの薄板状金属板が用いられる。この場合、本体防食カバー11Aの耐食性金属板17は、その剛性があまり優れていないことから、底カバー部23の緩衝材15が圧縮変形したときに、本体カバー部21と底カバー部23とがなす角部25の耐食性金属板17が変形してしまい、その角部25が鋼管本体5等から浮き上がる恐れがある。これを防止するため、押さえ部材33は、図3等に示すように、その耐食性金属板17の角部25寄りの部位を凹底部6の底側壁面6aに押圧した状態で保持されることが好ましい。これにより、本体防食カバー11Aの角部25における耐食性金属板17の浮き上がりを防止し、更には、本体防食カバー11Aの本体カバー部21の耐食性金属板17に十分な周方向引張力を導入することが可能となる。これと同様の理由により、雄ねじ部材35は、ナット39が螺合可能となる限り、本体防食カバー11Aの角部25寄りの部位に設けられることが好ましい。
【0037】
なお、このとき、互いに隣り合う本体防食カバー11Aの重合部19は、ナット39や押さえ部材33により、凹底部6の底側壁面6aに押圧された状態で固定されることになる。
【0038】
受け部材71は、図5に示すように、鋼管本体5の上下方向に沿って長い板状に形成される。受け部材71は、その背面側に充填する後述のペトロラタムペースト93の流出を防止する観点から、その側端部71bと鋼管本体5とを上下方向に連続して溶接することが好ましい。受け部材71により、継手7の形状が湾曲等して凹底部6の底側壁面6aの形状が複雑な場合においても、凹底部6の底側壁面6aを平坦面とすることが可能となり、受け部材71の外面に防食カバー11を容易に密着させることが可能となる。
【0039】
なお、受け部材71、鋼管本体5及び継手7により囲まれた空間内には、第1実施形態において、ペトロラタムペースト93が充填されており、その空間に面する鋼管本体5、継手7の防食が図られている。このペトロラタムペースト93の流出を防止するため、受け部材71の上端71a及び下端71cには、鋼板等からなる押さえ板72が配置されている。押さえ板72は、止水性を高めるために受け部材71、鋼管本体5及び継手7に連続溶接して施される止水溶接等の接合手段により接合される。また、隣り合う鋼管本体5の継手7間には、第1実施形態において、止水性を高めるためにモルタル等の経時硬化性充填材91が充填されている。
【0040】
次に、第1実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造を構築するための方法について説明する。
【0041】
まず、図6に示すように、鋼管本体5の外周面5a等にペトロラタムペースト93を塗布等することにより、受け部材71を架設したときに受け部材71、鋼管本体5及び継手7により囲まれる空間内にペトロラタムペースト93を充填する。
【0042】
続いて、図7に示すように、凹底部6内において隣り合う鋼管本体5間に受け部材71を架設する。このとき、受け部材71の上端71a及び下端71cには押さえ板72を配置して、押さえ板72を止水溶接等の接合手段により接合する。
【0043】
続いて、図8、図9に示すように、防食対象となる鋼管矢板壁9の外壁面9aを複数の防食カバー11により被覆する。このとき、第1実施形態においては、凹底部6内において一方の本体防食カバー11Aの底カバー部23を他方の本体防食カバー11Aの底カバー部23に重ね合わせておく。また、張力導入装置31の雄ねじ部材35を本体防食カバー11Aの底カバー部23から貫通させておく。
【0044】
続いて、図10に示すように、本体防食カバー11Aの底カバー部23の外側に押さえ部材33を配置し、雄ねじ部材35にナット39を螺合する。これにより、互いに隣り合う防食カバー11の重合部19が受け部材71に固定され、更には、本体防食カバー11Aの本体カバー部21の耐食性金属板17に周方向引張力が導入される。
【0045】
以上の第1実施形態によれば、張力導入装置31により本体防食カバー11Aの本体カバー部21の耐食性金属板17に周方向引張力を導入することとしているので、その耐食性金属板17にしわが生じるのを防止することが可能となる。また、本体防食カバー11Aの本体カバー部21の耐食性金属板17に周方向引張力を導入することにより、その本体カバー部21の緩衝材15が圧縮変形することになり、変形した緩衝材15の弾性反発力により鋼管本体5に対する防食層13の密着性を向上させることが可能となる。また、鋼管本体5に形状誤差がある場合においても、緩衝材15の圧縮変形によりその形状誤差に追従することができ、形状誤差がある場合でも鋼管本体5に対する防食層13の密着性を向上させることが可能となる。
【0046】
また、凹底部6内に張力導入装置31が設けられているので、凹底部6内での防食カバー11の浮き上がりが生じにくく、凹底部6内における防食カバー11の鋼管本体5等に対する密着性を向上させることが可能となる。
【0047】
また、張力導入装置31や互いに隣り合う防食カバー11の重合部19が凹底部6内に設けられているので、凹底部6以外の箇所において突出する部分を設けることが不要となる。これにより、凹底部6以外の箇所において波浪や流木等による防食カバー11の損傷を防止することが可能となり、長期に亘って防食性能を発揮させることが可能となる。
【0048】
また、以上の第1実施形態によれば、以下に説明するような理由により、隣り合う鋼管本体5間に施工誤差がある場合においても、その施工誤差に追従することが可能となる。
【0049】
隣り合う鋼管本体5間の距離、向き等の位置関係は、その鋼管本体5の継手7同士の嵌合状態に応じて変化する。この継手7の嵌合状態としては、図11(a)に示すような、継手7同士が互いに引っ張られて嵌合された状態(以下、引張嵌合状態という。)と、図11(b)に示すような、継手7同士が互いに圧縮されて嵌合された状態(以下、圧縮嵌合状態という。)と、図12に示すような、継手7同士の中心線Lcがずれた状態で嵌合された状態(以下、偏心嵌合状態という。)とが挙げられる。
【0050】
そして、防食カバー11により被覆されるべき鋼管本体5の外周面5aの周方向長さは、上述の引張嵌合状態、圧縮嵌合状態、偏心嵌合状態の何れの嵌合状態でも変化がない。これに対して、防食カバー11により被覆されるべき凹底部6の底側壁面6aの左右方向長さL0や、その底側壁面6aの鋼管本体5に対する角度θは、継手7の嵌合状態に応じて変化し得る。
【0051】
ここで、上述の防食カバー11は、耐食性金属板17として、例えば、板厚0.4mm〜2.0mmの薄板状金属板を用いた場合、その全体の剛性があまり優れていないことから、上述の左右方向長さL0、角度θの変化に対して防食カバー11自身が変形することで追従することができる。そこで、隣り合う防食カバー11の一方は、本体カバー部21を有するものとしておき、隣り合う防食カバー11の他方は、底カバー部23を有するものとする。この底カバー部23は、引張嵌合状態のときに凹底部6の底側壁面6aの左右方向の略全長を被覆可能な長さに形成されたものを用いる。なお、本体カバー部21は、鋼管本体5の一対の継手7の一方から他方にかけての範囲にある鋼管本体5の外周面5aを被覆可能な長さに形成されている。
【0052】
これにより、継手7同士が引張嵌合状態である場合、図13(a)〜図13(c)に示すように、鋼管本体5の外周面5aの大部分は一方の防食カバー11の本体カバー部21により被覆され、凹底部6の底側壁面6aは他方の防食カバー11の底カバー部23により被覆される。
【0053】
また、継手7同士が圧縮嵌合状態である場合、図14(a)、(b)に示すように、底カバー部23を有する防食カバー11の側端部18が鋼管本体5の外周面5aに接触して折れ曲がることで、上述の左右方向長さL0の変化に追従することができる。このとき、図14(b)、図14(c)に示すように、他方の防食カバー11の折れ曲がった側端部18は、一方の防食カバー11の本体カバー部21の防食層13及び緩衝材15と互いに押圧することにより、圧縮されてつぶれた状態で保持されることになる。
【0054】
また、継手7同士が偏心嵌合状態である場合、図12に示すように、底側壁面6aの鋼管本体5に対する角度θに応じて、防食カバー11がその角部25や角部25の近傍で折れ曲がることで、その角度θの変化に追従することができる。
【0055】
以上のように、隣り合う鋼管本体5間に施工誤差がある場合においても、その施工誤差に追従することが可能となる。
【0056】
このとき、上述のような本体カバー側余長部22及び底カバー側余長部24が設けられていれば、引張嵌合状態、圧縮嵌合状態の何れの場合でも、鋼管本体5と凹底部6の底側壁面6aとがなす隅角部61において、本体カバー側余長部22と底カバー側余長部24とが互いに押圧することにより、これらが圧縮されてつぶれた状態で保持されることになる。これにより、防食カバー11の防食層13を密着させにくい隅角部61においても、本体カバー側余長部22及び底カバー側余長部24の緩衝材15の弾性反発力により、本体カバー側余長部22及び底カバー側余長部24の防食層13を、鋼管本体5の外周面5a及び凹底部6の底側壁面6aに容易に密着させることが可能となる。なお、第3実施形態においても説明するように、このような作用効果を得るうえでは、少なくとも底カバー側余長部24が設けられていればよい。
【0057】
因みに、上述の防食カバー11の製作方法の一例としては、下記のような方法が挙げられる。まず、耐食性金属板17を予め曲げ加工等により本体カバー部21等を有する所定形状に成形する。このとき、耐食性金属板17を上下左右方向に複数配置し、その側端部同士を重ね合わせて重合部を設け、重合部同士をTig溶接、シームレス溶接等により接合することとしてもよい。続いて、耐食性金属板17の内面に緩衝材15となる発泡合成樹脂製のシートを貼り付け、緩衝材15の内面に防食層13となるペトロラタムシートを貼り合わせる。これにより、上述の防食カバー11が製作される。
【0058】
また、上述の第1実施形態においては、受け部材71がある場合を例に説明したが、図17に示すように、継手7がL型継手等から構成される場合のように、凹底部6の底側壁面6aとなる継手7の外面7aが平坦である場合、受け部材71はなくともよい。
【0059】
また、例えば、雄ねじ部材35等のような耐食性金属板17と接触し得るものが、その耐食性金属板17と異なる金属材料から構成されている場合、その異なる金属材料のものと耐食性金属板17との接触による異種金属接触腐食を防止するために絶縁処理が施されていることが好ましい。ここでいう絶縁処理とは、フッ素樹脂、FRP、塩化ビニル等の絶縁性材料からなる絶縁性部材を耐食性金属板17と絶縁処理対象物との間に配置することをいう。第1実施形態においては、図3に示すように、耐食性金属板17と接触し得る絶縁処理対象物としての雄ねじ部材35が絶縁性材料からなる絶縁スリーブ81内に挿入されることにより絶縁処理が施されている。絶縁スリーブ81は、防食カバー11及び押さえ部材33に形成された貫通孔35a内に雄ねじ部材35とともに配置されている。他の絶縁処理対象物の例としては、押さえ部材33が耐食性金属板17と異なる金属材料から構成されている場合の押さえ部材33が挙げられる。この場合、押さえ部材33と耐食性金属板17との間に絶縁性材料からなる絶縁シートや絶縁ワッシャ等が介装されることにより絶縁処理が施される。
【0060】
次に、第2実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造について説明する。なお、以降の実施形態においては、上述した構成要素と同一の構成要素について、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0061】
第1実施形態においては、複数の防食カバー11が本体防食カバー11Aのみで構成されている場合を説明したが、第2実施形態においては、図18に示すように、複数の防食カバー11が本体防食カバー11Aと補助防食カバー11Bとから構成されている。
【0062】
本体防食カバー11Aは、第1実施形態において、本体カバー部21と、本体カバー部21の側端から外側に折り曲げられた底カバー部23とを有している。本体防食カバー11Aの底カバー部23は、第2実施形態において、凹底部6の底側壁面6aの一部を被覆するような長さに形成される。
【0063】
補助防食カバー11Bは、底カバー部23を有している。補助防食カバー11Bの底カバー部23は、継手7同士が引張嵌合状態のときに凹底部6の底側壁面6aの略全長を被覆するような長さに形成される。
【0064】
本体防食カバー11Aと補助防食カバー11Bとは、防食対象となる鋼管矢板壁9の外壁面9aに沿って横方向に交互に配置される。これにより、防食対象となる鋼管矢板壁9の外壁面9aが被覆される。
【0065】
互いに隣り合う本体防食カバー11A及び補助防食カバー11Bは、凹底部6内において互いの側端側の一部を重ね合わせた状態で固定される。第2実施形態においては、本体防食カバー11Aの側端側にある底カバー部23と、補助防食カバー11Bの底カバー部23の側端部18とを互いに重ね合わせた状態で固定される。この互いの側端側の一部を重ね合わせて設けられた重合部19は、第1実施形態と同様に、張力導入装置31により、凹底部6の底側壁面6aに押圧された状態で固定される。
【0066】
互いに隣り合う本体防食カバー11A及び補助防食カバー11Bは、重合部19において外側となる本体防食カバー11Aが防食層13と緩衝材15とが設けられていない耐食性金属板17のみから構成されている。これにより、第1実施形態と同様に、海水等の本体防食カバー11A及び補助防食カバー11B内への浸水を防止することが可能となる。
【0067】
次に、第2実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造を構築するための方法について説明する。
【0068】
図19に示すように、受け部材71を架設するまでは、第1実施形態と同様である。
【0069】
続いて、防食対象となる鋼管矢板壁9の外壁面9aを本体防食カバー11Aと補助防食カバー11Bとにより被覆する。このとき、第2実施形態においては、補助防食カバー11Bにより凹底部6の底側壁面6aを被覆し、続いて、本体防食カバー11Aにより鋼管本体5の外周面5aを被覆する。補助防食カバー11Bの底カバー部23の側端部18と本体防食カバー11Aの底カバー部23とは重ね合わせておく。また、張力導入装置31の雄ねじ部材35を本体防食カバー11Aの底カバー部23及び補助防食カバー11Bの底カバー部23の側端部18から貫通させておく。
【0070】
続いて、図20に示すように、本体防食カバー11Aの底カバー部23の外側に押さえ部材33を配置し、雄ねじ部材35にナット39を螺合する。これにより、本体防食カバー11Aと補助防食カバー11Bとの重合部19が受け部材71に固定され、更には、本体防食カバー11Aの本体カバー部21の耐食性金属板17に周方向引張力が導入される。
【0071】
次に、第3実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造1について説明する。
【0072】
第3実施形態においては、張力導入装置31の構成が第2実施形態のものと相違している。
【0073】
第3実施形態に係る張力導入装置31では、図21、図22に示すように、押さえ部材33の外面33aにボルト挿通孔42を有するリブ41が設けられている。リブ41は、鋼管本体5の上下方向に連続して、又は、間隔を空けて複数設けられている。押さえ部材33は、後述のように、本体カバー部21の耐食性金属板17を凹底部6内に引き込むときに、その耐食性金属板17との接触による損傷を防止する観点から、その角部33bが湾曲するように面取りされている。
【0074】
押さえ部材33には、図23に示すように、本体防食カバー11Aの底カバー部23の耐食性金属板17の側端部17aがそのリブ41と間隔を空けて配置されるように巻き付けられる。このとき、補助防食カバー11Bの底カバー部23と押さえ部材33との間は、それらの間において本体防食カバー11Aの底カバー部23が移動可能となる程度の隙間が確保されている。この隙間は、雄ねじ部材35に螺合されるナット39の締め付けの程度により調整される。
【0075】
互いに間隔を空けて配置されたリブ41のボルト挿通孔42と耐食性金属板17の側端部17aとにはボルト43が挿通されるとともに、ボルト43の先端部にナット45が螺合される。ナット45の締め付けにより、耐食性金属板17の側端部17aとリブ41との間でボルト43の軸方向に平行な軸力が導入され、リブ41に近づくように方向P1に向けて耐食性金属板17の側端部17aが引っ張られ、その結果、本体カバー部21の耐食性金属板17の側端部が凹底部6内に引き込まれた状態で保持される。そして、この本体カバー部21の耐食性金属板17の凹底部6内への引き込みにより、本体カバー部21の耐食性金属板17に周方向引張力が導入される。ここで、防食カバー11及び押さえ部材33には、雄ねじ部材35が挿通される貫通孔35aが形成されているが、本体防食カバー11Aの耐食性金属板17には、本体カバー部21の耐食性金属板17が凹底部6内へ引き込み可能となるように、その引き込まれる方向に沿って長孔35bが形成されている。
【0076】
耐食性金属板17の端部17aをある程度リブ41に向けて引っ張ったら、雄ねじ部材35に螺合されるナット39の締め付けを強くし、本体防食カバー11Aの底カバー部23と補助防食カバー11Bの底カバー部23の側端部18とを重ね合わせた重合部19を固定する。これにより、本体カバー部21の耐食性金属板17に更に周方向引張力が導入される。
【0077】
なお、第3実施形態における押さえ部材33は、凹底部6に対する防食層13の密着性向上に必要となる剛性を確保しつつ、軸力導入に対する強度を確保するために必要な厚さとすることが好ましい。
【0078】
また、第3実施形態においては、互いに隣り合う防食カバー11のうち、一方の防食カバー11(11B)の底カバー部23に底カバー側余長部24が設けられているのみであり、他方の防食カバー11(11A)の本体カバー部21に本体カバー側余長部22が設けられていない。この場合でも、本体カバー部21の耐食性金属板17の凹底部6内への引き込みにより、鋼管本体5と凹底部6の底側壁面6とがなす隅角部61において、本体カバー部21の防食層13及び緩衝材15と底カバー側余長部24とが互いに押圧することになり、これにより、これらが圧縮されてつぶれた状態で保持されることになる。これにより、防食層13を密着させにくい隅角部61において、本体カバー部21の緩衝材15と底カバー側余長部24の緩衝材15との弾性反発力により、本体カバー部21の防食層13及び底カバー側余長部24の防食層13を、鋼管本体5の外周面5a及び凹底部6の底側壁面6aに容易に密着させることが可能となる。
【0079】
また、上述の各実施形態においては、押さえ部材33が、本体防食カバー11Aの底カバー部23に当接する第1の押圧面34aを有するものについて説明した。この他にも、押さえ部材33は、図24に示すように、第1の押圧面34aと、本体防食カバー11Aの本体カバー部21に当接する第2の押圧面34bとを有していてもよい。第1の押圧面34aは、本体防食カバー11Aの底カバー部23の外面に沿うように形成されている。また、第2の押圧面34bは、本体防食カバー11Aの本体カバー部21の外面に沿うように形成されている。このような第2の押圧面34bを有することにより、本体防食カバー11Aの角部25の浮き上がりをより有効に防止することが可能となる。
【0080】
次に、第4実施形態に係る鋼管矢板壁の防食構造について説明する。
【0081】
第4実施形態に係る本体防食カバー11Aは、図25に示すように、本体カバー部21と底カバー部23との他に、本体カバー部21と底カバー部23とがなす角部25に設けられ、他の部位の耐食性金属板17より板厚の厚い耐食性金属板からなるL字状部材27を有している。このL字状部材27は、板厚2.0mm〜5.0mmの耐食性金属板から構成される。板厚が2.0mm未満では、後述のような本体防食カバー11Aの角部25の曲げ剛性を高める効果が十分に得られない恐れがある。板厚が5.0mm超ではコストの過度の増大を招いてしまう。L字状部材27は、他の部位の耐食性金属板17との間で溶接等により接合される。
【0082】
これにより、本体防食カバー11Aの角部25の曲げ剛性を高めることが可能となるので、押さえ部材33が本体防食カバー11Aの底カバー部23を凹底部6の底側壁面6aに押圧したときに、本体防食カバー11Aの角部25の耐食性金属板17の鋼管本体5等からの浮き上がりをより有効に防止し、本体防食カバー11Aの角部25の鋼管本体5等に対する密着性の向上を図ることが可能となる。
【0083】
ここで、L字状部材27は、第4実施形態において、本体防食カバー11Aの底カバー部23の耐食性金属板17の外面17aとそのL字状部材27の外面27aとがほぼ一致するように設けられている。これにより、L字状部材27と本体防食カバー11の底カバー部23との両方を、押さえ部材33により凹底部6の底側壁面6aに押圧した状態で保持することが可能となる。
【0084】
このように、本体防食カバー11Aの角部25の曲げ剛性を高めるうえで、本体防食カバー11Aは、図26に示すように、その角部25に設けられた補強リブ29を有していてもよい。補強リブ29は、鋼管本体5の上下方向に間隔を空けて複数設けられる。補強リブ29は、耐食性金属板17との異種金属接触腐食を防止する観点から、本体防食カバー11Aの耐食性金属板17と同種の材料から構成される。補強リブ29は、本体防食カバー11Aに溶接等により接合される。この場合も、本体防食カバー11Aの角部25の鋼管本体5等に対する密着性の向上を図ることが可能となる。
【0085】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0086】
1 :防食構造
5 :鋼管本体
6 :凹底部
6a :底側壁面
7 :継手
9 :鋼管矢板壁
9a :外壁面
11 :防食カバー
11A :本体防食カバー
11B :補助防食カバー
13 :防食層
15 :緩衝材
17 :耐食性金属板
18 :側端部
19 :重合部
21 :本体カバー部
22 :本体カバー側余長部
23 :底カバー部
24 :底カバー側余長部
25 :角部
27 :L字状部材
29 :補強リブ
31 :張力導入装置
33 :押さえ部材
34a :第1の押圧面
34b :第2の押圧面
35 :雄ねじ部材
39 :ナット
41 :リブ
42 :ボルト挿通孔
43 :ボルト
45 :ナット
61 :隅角部
71 :受け部材
81 :絶縁スリーブ
91 :充填材
93 :ペトロラタムペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う鋼管本体が継手を介して連結された鋼管矢板壁の外壁面を防食するための鋼管矢板壁の防食構造において、
前記鋼管矢板壁の外壁面に接触するペトロラタム系防食層とその外側の耐食性金属板との間に緩衝材が介装されてなる複数の防食カバーにより、前記鋼管矢板壁の外壁面が被覆され、
前記複数の防食カバーは、前記隣り合う鋼管本体間に形成された凹底部内において互いの側端側の一部を重ね合わせた状態で固定され、
前記鋼管本体の外周面を被覆している前記防食カバーの断面円弧状の耐食性金属板に、前記凹底部内に設けられた張力導入装置により周方向引張力が導入されていること
を特徴とする鋼管矢板壁の防食構造。
【請求項2】
前記防食カバーは、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部と、前記本体カバー部の側端から外側に折り曲げられた底カバー部とを有し、
前記張力導入装置は、前記凹底部の底側壁面から突出して前記防食カバーの底カバー部を貫通する雄ねじ部材と、前記雄ねじ部材が挿通される押さえ部材と、前記雄ねじ部材に螺合されるナットとを有し、
前記ナットの締め付けにより前記押さえ部材が前記防食カバーの底カバー部を前記底側壁面に押圧した状態で保持され、その押圧により前記本体カバー部の耐食性金属板に周方向引張力が導入されていること
を特徴とする請求項1記載の鋼管矢板壁の防食構造。
【請求項3】
前記ナットの締め付けにより前記本体カバー部と前記底カバー部とがなす角部寄りの部位を前記押さえ部材が前記底側壁面に押圧した状態で保持されていること
を特徴とする請求項2記載の鋼管矢板壁の防食構造。
【請求項4】
前記押さえ部材の外面にボルト挿通孔を有するリブが設けられ、前記防食カバーの底カバー部の耐食性金属板が前記押さえ部材に巻き付けられ、前記底カバー部の耐食性金属板の側端部と前記リブのボルト挿通孔とにボルトが挿通され、前記ボルトに螺合されるナットの締め付けにより前記本体カバー部の耐食性金属板の側端部が前記凹底部内に引き込まれた状態で保持され、その引き込みにより前記本体カバー部の耐食性金属板に周方向引張力が導入されていること
を特徴とする請求項2又は3記載の鋼管矢板壁の防食構造。
【請求項5】
前記押さえ部材は、前記防食カバーの底カバー部に当接する第1の押圧面と、前記防食カバーの本体カバー部に当接する第2の押圧面とを有すること
を特徴とする請求項2〜4の何れか1項記載の鋼管矢板壁の防食構造。
【請求項6】
隣り合う前記防食カバーの一方は、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部を少なくとも有し、
隣り合う前記防食カバーの他方は、前記凹底部の底側壁面を被覆する底カバー部を少なくとも有し、
前記底カバー部は、隣り合う鋼管本体の継手同士が互いに引っ張られて嵌合された状態のときに、前記底側壁面の左右方向の略全長を被覆可能な長さに形成されていること
を特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の鋼管矢板壁の防食構造。
【請求項7】
隣り合う前記防食カバーの一方は、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部を少なくとも有し、
隣り合う前記防食カバーの他方は、前記凹底部の底側壁面を被覆する底カバー部と、前記底カバー部の耐食性金属板の側端より側方に長く設けられた前記防食層及び前記緩衝材からなる底カバー側余長部とを少なくとも有し、
前記鋼管本体と前記底側壁面とがなす隅角部において、前記本体カバー部の前記防食層及び前記緩衝材と前記底カバー側余長部とが互いに押圧した状態で保持されていること
を特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の鋼管矢板壁の防食構造。
【請求項8】
前記凹底部内において隣り合う鋼管本体間に受け部材が架設され、
前記複数の防食カバーにより、前記鋼管本体の外周面と前記受け部材の外面とが被覆されていること
を特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載の鋼管矢板壁の防食構造。
【請求項9】
前記防食カバーは、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部と、前記本体カバー部の側端から外側に折り曲げられた底カバー部と、前記本体カバー部と前記底カバー部とがなす角部に設けられ、他の部位の耐食性金属板より板厚の厚い耐食性金属板からなるL字状部材とを有すること
を特徴とする請求項1〜8の何れか1項記載の鋼管矢板壁の防食構造。
【請求項10】
前記防食カバーは、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部と、前記本体カバー部の側端から外側に折り曲げられた底カバー部と、前記本体カバー部と前記底カバー部とがなす角部に設けられた補強リブとを有すること
を特徴とする請求項1〜9の何れか1項記載の鋼管矢板壁の防食構造。
【請求項11】
前記防食カバーの耐食性金属板は、0.4mm〜2.0mmの板厚から構成されていること
を特徴とする請求項1〜10の何れか1項記載の鋼管矢板壁の防食構造。
【請求項12】
前記複数の防食カバーは、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部と、前記本体カバー部の側端から外側に折り曲げられた底カバー部とを有する本体防食カバーから構成され、前記凹底部内において互いの底カバー部を重ね合わせた状態で固定されていること
を特徴とする請求項1〜3、5〜11の何れか1項記載の鋼管矢板壁の防食構造。
【請求項13】
前記複数の防食カバーは、前記鋼管本体の外周面を被覆する断面円弧状の本体カバー部を少なくとも有する本体防食カバーと、前記凹底部の底側壁面を被覆する底カバー部を少なくとも有する補助防食カバーとの何れかから構成され、前記凹底部内において本体防食カバーの側端側の一部と補助防食カバーの側端側の一部とを重ね合わせた状態で固定されていること
を特徴とする請求項1〜11の何れか1項記載の鋼管矢板壁の防食構造。
【請求項14】
隣り合う鋼管本体が継手を介して連結された鋼管矢板壁の外壁面を防食するための鋼管矢板壁の防食方法において、
前記鋼管矢板壁の外壁面に接触するペトロラタム系防食層と外側の耐食性金属板との間に緩衝材が介装されてなる複数の防食カバーにより、前記鋼管矢板壁の外壁面を被覆し、
前記隣り合う鋼管本体間に形成された凹底部内において前記複数の防食カバーの互いの側端側の一部を重ね合わせた状態で固定し、
前記鋼管本体の外周面を被覆している前記防食カバーの断面円弧状の耐食性金属板に、前記凹底部内に設けられた張力導入装置により周方向引張力を導入すること
を特徴とする鋼管矢板壁の防食方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−224994(P2012−224994A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91266(P2011−91266)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000227261)日鉄防蝕株式会社 (31)
【Fターム(参考)】