説明

鎮痛分子及び/または鎮痙分子を経口経粘膜投与するための処方物

鎮痛薬及び/または鎮痙薬用の分子を経口経粘膜投与するための処方物。本発明が提供するのは、鎮痛及び/または鎮痙の作用を有する1以上の有効成分を経口経粘膜投与するための処方物であって、当該処方物は、塩塩基形及び/または塩形の前記有効成分と、重量で35度以上のアルコール度数に設定された水性アルコール溶液とを含み、前記有効成分は、水性アルコール溶液中に完全に溶解して安定した状態で存在している。本発明はまた、痙攣発症の治療を目的とした当該処方物の調剤方法及び使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鎮痛作用及び/または鎮痙作用を有する1以上の有効成分を瞬時に経口経粘膜全身投与するための処方物に関する。
本発明はまた、痙攣発症(spastic crisis)及び痛発症(painful crisis)の治療及び予防を目的とした、本処方物の調剤方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性プロセスに関連するいくつかの器官病状は、激しく、予測不能で、しかも苦痛を伴う痙攣発症という形で現れ、しばしば、肝臓−腸−結腸系(痙攣性の大腸炎及び胆嚢炎)または泌尿器系(腎臓の疝痛及び膀胱炎)において生じる。これらは、機能虚弱状態を引き起こした器官に生じる反応性の痙攣であって、処置を怠れば失神状態に陥ることもあるため、緊急治療が必要な場合もある。
【0003】
こうした痙攣の軽減や解消に用いられる治療法の中でも、2種類の分子が特に知られている。すなわち、Spasfon(登録商標)の商品名で市販されているフロログルシノール、そして、Visceralgine(登録商標)の商品名で市販されているチエモニウムである。鎮痙薬部門を占有している、これら2つの有効成分は、第4アンモニウム化合物という、分子量の小さい脂肪親和性分子である。
【0004】
フロログルシノールは、尿管及びオッジ括約筋に特に顕著な作用を発揮する鎮痙性向筋肉鎮痙薬である。それは、平滑(smooth)繊維に直接作用し、酵素ホスホジエステラーゼを抑制して環状3'5'−AMPを高めることにより、筋膜においてカルシウム拮抗薬として働く。
メチル硫酸チエモニウムは、苦痛を伴う急性の消化器症状(大腸炎、胆嚢炎)、婦人科症状(月経困難症)、泌尿器症状(腎臓の疝痛)を対象とした鎮痙薬である。これには二重の薬理学的作用がある。すなわち、1つはパパベリン性、向筋肉性の作用であって、フロログルシノールと同様に平滑筋繊維に直接作用し、細胞性膜においてカルシウム拮抗薬として作用する。もう一つは、交感神経系節のレベルでの穏やかな副交感神経抑制作用であるが、投与量をかなり大きくしなければ節遮断性を示さない。
【0005】
痙攣発症の治療の関係では、これらの鎮痙薬とは別に、苦しんでいる患者の苦痛を軽減するために鎮痛薬を投与することもありうる。
痙攣発症に対して投与される可能性のある鎮痛薬の中では、ネホパムが特に適している。これは、純粋中枢性(pure central)の、脂肪親和性または両親媒性の作用を有する非アヘン剤鎮痛薬であり、激しい苦痛(特に術後の苦痛)の緩和治療に用いられる。また、潜在的な用法として、いわゆる「痙攣性」の苦痛を伴う病状(痙攣性大腸炎、腎臓型大腸炎(nephritic colitis)、術後または臓器損傷後の外傷性の苦痛など)の緊急治療用に用いられる場合もありえる。これには、呼吸抑制剤でなく、消化管輸送の縮小も引き起こさない、という効果がある。
【0006】
痙攣の問題の治療に用いられるこれらの分子は、鎮痙性分子であれ鎮痛性分子であれ、作用は証明済みと認識されている。にもかかわらず、痙攣発症の治療にこれらを投与する場合、多数の困難に直面する。
ネホパム型の鎮痛薬は、静脈内投与または筋肉内投与されることが多い。
主な鎮痙薬については、錠剤または口腔内崩壊錠(ODT)の形で、経口ルートで投与されるのが一般的である。それらは、また、坐薬や、静脈内または筋肉内注射の形で投与される場合もある。
【0007】
分子の種類に関わりなく、最も素早く最も効果的な投与ルートは、静脈ルートまたは筋肉内ルートである。しかし、こうした投与ルートには、処方、特殊な設備の使用、専任の人員が必要となる。これはコスト高であり、また、使用する患者にとっては重荷となるため、患者自身で治療を行うのには適さない。
従って、痙攣発症の治療に関しては、注射によるものは避けて、経口ルートで鎮痙性分子または鎮痛性分子を投与することが好ましい。
【0008】
最もよく知られた経口ルートは、錠剤またはODTの形で腸内ルートを経て投与するものであるが、この投与ルートは鎮痙薬または鎮痛薬には適さない。
第1に、激しい痙攣発症は、消化管に生じた問題と関係していることが多いからである。対象となる患者が、経口での薬物摂取に極端に敏感になって、薬剤を即座に拒絶してしまうかもしれない。
【0009】
また、このような、患者の状態や、患者が製薬処方物を拒絶することなく吸収できるか否かという問題を別にして、吸収状況が最善の場合でも、痙攣や苦痛の軽減をもたらす薬力学的効果が生じ始めるまでには、約40分の遅延を想定しなければならない。こうした遅延は到底、苦しんでいる患者の期待に応えられるものではない。
消化管や胃に導入されると、脂肪親和性の鎮痙性及び鎮痛性の分子には、いわゆる「消化管ファーストパス(digestive first pass)」効果が生じる。これは、胃の環境や腸管生理における変化に関連した劣化や損失を指す。その後、さらに、いわゆる「肝臓ファーストパス(hepatic first pass)」効果の影響を受ける。これによって代謝及び/または多少とも激しい効能低下が生じ、数多くの代謝物質が形成されるが、その大部分は不活性及び/または毒性のもので、副作用を生じる。
【0010】
従って、有効成分のうち、消化管で再吸収されて実際に生体に利用可能となる量は非常に少ない。
ネホパムの場合、主要な3つの代謝物質はいずれも薬理学的作用を持たないため、生体利用は実質的に皆無である。
鎮痙薬の場合、平滑筋膜に実際に到達して酵素ホスホジエステラーゼを抑制するのは、わずかな残余部分のみである。その割合は、平均すると最大でも、フロログルシノールで40から50%、チエモニウムで10から15%である。これは、ODT型の被覆錠剤にも当てはまる。ODT型は、舌下使用が目的とされるが、鎮痙性分子を完全に溶解させることは不可能である。口腔環境では、分子は必ず両親媒性または疎水性であるが、それにもかかわらず、前記分子は嚥下され、消化管及び肝臓で代謝されることになる。
【0011】
従って、いくつか重要な課題が存在する。
第1の課題は、すでに衰弱していて反射的に嘔吐してしまう患者にも、物質を吸収できるようにする必要がある、ということである。薬剤は、嚥下時に拒絶されてしまってはならず、有効成分は、患者が消化管にいかなる問題を抱えていても、充分に吸収されなければならない。
【0012】
第2の課題は、患者の体重と、生体内での有効成分の希薄及び分散とを前提に、有意な有効部分が、鎮痙薬と共に肝臓−腸−結腸系または泌尿器系に、または、鎮痛薬と共に中枢神経系に達するように、患者に充分な量の薬物を投与することにある。
さらに、もう一つ問題となるのは、分子が作用して患者が効果を実感するまでの待ち時間であり、これは生体内での代謝及び拡散によって生じる。
【0013】
従って、消化管ルートで鎮痙薬や鎮痛薬を投与するのは不適当である。これら分子の生体利用能と作用が生じるまでの遅延とは、当該分子を必要とする治療の緊急性と、驚くほどに相反している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】仏国特許発明第2 910 317号明細書
【特許文献2】国際公開第2008/035020号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、苦痛を伴う生体の痙攣性病状の治療は、現在のところ困難であり、問題を抱えている。そして、現在利用可能な治療手段は不適当なものである。そのため、現在、以下のような投与処方物が必要とされている。すなわち、製造が簡単で、速やかに作用し、患者自身による利用や管理が容易であるのに加え、従来の処方物や注射用の処方物(時間がかかりすぎる上にばらつきがあり、医師や看護師にしか使用できない)とは異なり、最大限経済的な投与量で可能な限り短時間のうちに痙攣を解消できる、という処方物である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、こうした必要に応えるものであり、そのために特別な投与処方物を提供する。これは、非常に特別な溶液の形を取ることで、痙攣発症治療用の1以上の鎮痛性有効成分を瞬時に経口経粘膜投与できるが、その有効投与量は、静脈投与や筋肉内投与の場合と同等である。当該処方物は、末梢作用鎮痙薬及びネホパムから選択され、塩基形または塩形で存在する1以上の有効成分と、アルコール度数を35度以上の設定した水性アルコール溶液と、オプションとして、中枢作用鎮痛薬から選択され、塩基形または塩形で存在する別の有効成分と、を含み、有効成分が、水性アルコール溶液中に完全に溶解して安定した状態で存在すること、を特徴とする処方物である。
【0017】
また、本発明は、痙攣性病状の治療を目的とした、本処方物の調剤方法及び使用方法を提案する。
本発明との関連で痙攣発症や痙攣病状という語が意味するのは、生体の平滑筋繊維の何らかの活動亢進状態であり、その生理病理学的な原因が何であれ、当然治療上の関心を引く慢性的な有痛症候群を引き起こすものを指す。
【発明の効果】
【0018】
既存の処方物と比較して、本発明の処方物は以下の点で効果的である。すなわち、製造及び使用が非常に簡単であり、鎮痛性及び/または鎮痙性の分子をベースとする治療用の調剤を瞬時かつ完全に経口経粘膜通過させることができるため、分子の嚥下や唾液による希薄が抑制され、分子は実質的に瞬時に脈管系に送られて、投与量の全部が薬理学的作用の対象となる器官のレセプタに分配される。投与される有効成分の量は、既存の経口処方物の場合の摂取必要量よりも小さい。
【0019】
本処方物は、使用が簡単で比較的コストも低く、入手が容易で比較的非侵襲性である。これにより、即座に生体利用可能な量の鎮痛薬及び/または鎮痙薬を投与することができ、その結果、非常に速やかに、効果的に痙攣発症を治療することができる。また、本処方物には、末梢作用鎮痙薬と中枢作用鎮痛薬とを1つの処方物において組み合わせることができる、という効果がある。
【0020】
本発明の処方物は、適切な量を供給することができるため、非常時の緊急治療(静脈ルートや筋肉内ルートを用いる必要なしに、効果を生じるのに必要最小限な量だけで、速やかに痙攣を解消するための治療)と、自己治療との両方で有用である。
他の特徴及び効果については、以下の本発明の詳細な説明を読めば明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、その第1の様態として、痙攣発症を治療する目的で1以上の有効成分を経口経粘膜投与するための処方物を提供する。当該処方物は以下から成る。
・末梢作用鎮痙薬及びネホパムから選択され、塩基形または塩形で存在する1以上の有効成分;
・アルコール度数を35度以上の設定した水性アルコール溶液;
・オプションとして、中枢作用鎮痛薬から選択され、塩基形または塩形で存在する別の有効成分。
【0022】
本処方物は、これら要素のみによって成る点が、非常に好ましい。
有効成分は、水性アルコール溶液に完全に溶解して安定した状態で存在しており、その量については、口腔粘膜を通して前記有効成分を迅速に吸収できるように、2ミリリットル(mL)未満とするのが好ましい。
本発明が提供する処方物の水性アルコール溶液には、以下のものが含まれる。
【0023】
・末梢作用のみ有する鎮痙薬;
・中枢作用を有する鎮痛性と周辺作用を有する鎮痙薬との組合せ(パラセタモールやネホパムなど);
・ネホパム単独;
・他の1つの中枢作用鎮痛薬(パラセタモールなど)と組み合わせたネホパム。
【0024】
分子が属する薬物療法学のカテゴリは、市販承認(Notice of Compliance)において適用されているものである。
具体的には、フロログルシノール及びチエモニウムは、「鎮痙薬」の項目のバイダルディクショナリ(VIDAL Dictionary)のリストに載っており、ネホパム及びパラセタモールは「非アヘン鎮痛薬」の項目にある。
【0025】
「経粘膜ルート」との表現は、溶解し安定した状態で存在する脂肪親和性または両親媒性の分子が、舌粘膜、舌下粘膜、歯茎粘膜、口蓋粘膜、頬粘膜または口腔内の他の粘膜を通過する何らかの形の受動通過を指す。
また、「完全に溶解して安定した状態」との表現は、溶媒中の有効成分が弱イオン化された分子の状態になっている溶液状態を指し、この溶液状態では、不都合なタイミングでの再結晶が生じる可能性はない。こうした、「完全に溶解して安定した状態」は、本発明の処方物の使用時に観察される。観察は、得られた溶液の視覚的外観の評価(透明度の測定)によって、その次に濾過残留物(結晶出現の有無)のレベルで行う。そして、最終的には、温度及び相対湿度を様々に変化させながら中期的及び長期的な安定性追跡テストを行う。
【0026】
「X度にアルコール度数を設定した水性アルコール溶液」という表現は、Xに等しいアルコール度数を示す溶液を指す。そして、Xは、水性アルコール溶液に含まれる純粋(100度)アルコールの量と溶液全体の量との比率に当たる。水性アルコール溶液のアルコール度数は、水溶液の形成に用いられるアルコールの度数や水溶液の水/アルコール比率に応じて変化する。例えば、アルコールが100度で、水/アルコール比率が50/50の場合、それは、アルコール度数を50度に設定した水性アルコール溶液となる。
【0027】
鎮痛性及び/または鎮痙性の有効成分は塩基形(base form)及び/または塩形(salt form)で存在している(例えば、琥珀酸塩、塩化水素塩、硫酸塩またはメチル硫酸塩の形)。
鎮痛性有効成分については、全ての非アヘン剤中枢作用鎮痛薬の中から選択することができるが、非限定的な例として、ネホパムやパラセタモールといった、脂肪親和性または両親媒性の有効成分が挙げられる。
【0028】
また、好ましい点として、痙攣発症の治療を目的とした有効成分については、全ての鎮痙薬(例えば、フロログルシノール、チエモニウム)から選択できる。
さらに、好ましい点として、処方物には、ネホパム、パラセタモール、フロログルシノール、チエモニウムが含まれる。
本発明の1つの特定の実施の形態では、処方物は2以上の異なる有効成分を含む。中枢作用鎮痛薬、そして、末梢(すなわち、内臓)作用専用の鎮痙薬である。
【0029】
鎮痛薬としては、ネホパムまたはパラセタモールが選択される。
鎮痙薬としては、フロログルシノールまたはチエモニウムが選択される。
この組合せによれば、通常は別個の治療分野とされる苦痛と痙攣とが1回の少量投与で同時にカバーされる。
この治療法は、1回の投与で2重の即効の治療的作用を生じさせるものである。
【0030】
特に適切な例は、処方物でネホパムとフロログルシノールとを組み合わせる、というものである。
また、本発明の処方物にはpH調整剤を含ませることもできる。pH調整剤とは、有効成分の物理化学的な特徴を損なうことのない、何らかの酸剤(acid agent)または塩基剤(base agent)を意味する。
【0031】
pH調整剤は、炭酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウム、1ナトリウムリン酸塩または2ナトリウムリン酸塩、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)から選択するのが好ましいが、塩化水素酸剤、硫酸剤、リン酸剤、クエン酸剤、リンゴ酸剤、乳酸剤、コハク酸剤及び/または酪酸剤から選択するのも好ましい。
【0032】
本発明の処方物は、体積で30%〜95%のアルコールと5〜70%の水とを含む、という水性アルコール溶液の形とするのが好ましい。更には、本発明の処方物は、体積で40%〜85%のアルコールと60〜15%の水とを含む、という水性アルコール溶液の形とするのがいっそう好ましい。この値は、水(約1g/cm)及びエタノール(0.79g/cm)の密度が与えられれば、質量比に対応する。
【0033】
水性アルコール溶液のアルコール度数は、35度以上であり、35度から70度が好ましく、35度から60度であればさらに好ましいが、40度から50度の周辺が理想的である。こうしたアルコール度数は、特に鎮痛性及び/または鎮痙性の分子に適しており、これら分子を一定の安定かつ完全な形で溶解させることができると共に、口粘膜を通してほぼ瞬時に残らず吸収させることができる。
【0034】
水性アルコール溶液は、本発明の処方物に用いられる好適な唯一の溶媒である。
さらに、水性アルコール溶液中のアルコールは、水の中では安定しない分子のための希釈剤として働くだけでなく、経粘膜吸収の加速を促進する働きもする、吸収速度はアルコール度数に応じて上昇する。ただし、本処方物のアルコール度数は70度を上回ってはならない。度数が高くなれば、粘膜の火傷の問題があって、口腔使用する製薬組成物と組み合わせることができなくなる。
【0035】
本発明の好適かつ特に適当な実施の形態では、水性アルコール溶液は水とエタノールとから作られる。
一例として、エタノールと、これに溶解させるフロログルシノールとの率を、約40度のエタノール0.75ミリリットル(mL)に対し20ミリグラム(mg)のフロログルシノールという値にすれば、前記有効成分を完全に溶解させることができる。
【0036】
同様に、エタノールと、これに溶解させるメチル硫酸チエモニウムとの率を、約40度のエタノール0.75mLに対し10mgのメチル硫酸チエモニウムという値にすると、前記有効成分を完全に溶解させることができる。また、エタノールと、これに溶解させるネホパムとの率を、約40度のエタノール1mLに対し20mgのネホパムという値とすれば、前記有効成分を完全に溶解させることができる。
【0037】
この係数は、経粘膜通過の加速に必要とされるアルコール度数と、採用する好適な水/エタノール比率とに応じて調節すればよい。
本発明の処方物のpHは、5.0〜9.0の範囲が好ましく、5.5〜7.5の範囲であれば更に好ましい。こうしたpH値であれば、溶液の吸収を最大にするのに都合がよい。
本発明の処方物であれば、有効成分は投与から6〜10秒で口腔粘膜を受動通過することができる。このように吸収時間が非常に短いため、口腔環境内で溶液や有効成分が停滞する事態を防止することができる。さらに、溶液や有効成分が唾液と混合する不都合な事態も防止できる。こうした混合は品質低下の原因となりやすく、有効成分の溶解の連続性や安定性を損なってしまう。さらに、このように遅延が短いことで、溶液やそこに含まれる有効成分が反射的に嚥下されてしまう事態も防止できる。
【0038】
溶液中に溶解した状態で存在する本発明の有効成分は、経口経粘膜通過して外(external)上皮性膜に達する。この膜はホスホ脂質構造から成り、完全に溶解して安定した状態で存在する脂肪親和性分子は選択的親和性によって受動吸収される。有効成分が通過できるのは、前記膜を挟んで反対側に向かおうとする浸透圧または引圧の力による。ここには、溶解した有効成分の濃度と関連するアルコール溶液の濃度とが共に関与する。活性(activity)及び浸透圧の強さは、吸収促進剤として働くアルコールの度数に応じて大きくなる。フロログルシノール、チエモニウムまたはネホパムの場合、適切なアルコール度数は35〜60度であるが、約40〜50度が好ましい。これによって、確実に、オンダンセトロンの溶解及び安定に関して最善の数値が実現及び設定されるのと同時に、4〜10秒の範囲内で経粘膜通過するよう促進することができる(1mL以下の量の場合)。
【0039】
1つの特に適切な実施の形態は、10mgのメチル硫酸チエモニウム、20mgのフロログルシノールまたは10mgのネホパムに対し、アルコール度数が約40度の水性アルコール溶液が0.75mLというものである。
また、別の特に適切な実施の形態として、25mgのメチル硫酸チエモニウム、40mgのフロログルシノールまたは20mgのネホパムに対し、アルコール度数が約40度の水性アルコール溶液が1mLというものもある。
【0040】
口の粘膜は、微小血管の密度が非常に高い擬スポンジ配列を有し、その結果、上皮膜の脂肪親和性の孔を通過する分子は、アルコール溶媒の分子であれ溶解した有効成分の分子であれ、直ちに微小血液循環系に捕らえられ集められて、舌下静脈から頸静脈、そして心臓へと向かう。この現象はアルコールの存在によって加速される。アルコールは血管拡張を引き起こし、局所的に粘膜の微小血管の流量を大きくする。
【0041】
このようにして循環流量が大きくなるため、上皮膜を挟んだ両側で均衡状態が生じることは決してない。吸収すべき分子がなくなってメカニズムが解消するまで、口の中の濃度の方が高い状態が続く。
よって、本発明の有効成分と、それが溶解したアルコールとは残らず粘膜を通過し、これは、他の全ての「舌下」と呼ばれる形式と明らかな対照をなす。
【0042】
このように、本発明の投与処方物を使用すれば、所定量の鎮痛薬及び/または鎮痙薬を受動投与するにあたって、粘膜上に置かれると直ちに吸収され、さらに、静脈ルートによって瞬時に分配されるため、薬理学的作用の発揮に先立って遅延が生じることがなく、作用前に消化管及び肝臓を通過する際にも有害な影響を受けることがない。よって、本発明の投与処方物によれば、組織は急速かつ完全に鎮痛性及び/または鎮痙性の分子を吸収することができ、その後、生体の中心循環系に分子を分配されることで、「フラッシュ(flash)」型の急速な薬理学的反応が生じる。
【0043】
例えば、40度エタノール溶液1mLに40mgのフロログルシノールを溶解させて調剤した本発明の投与処方物の場合、受動的かつほぼ瞬時に充分に有効な量のフロログルシノールを投与することができる。この40mgという量は、経口ルートで通常投与される投与量(62.25mg)のうち実際に利用される部分の理論上の最大値よりも大きい(経口ルートの通常投与の場合は最大でも投与量の40〜50%(31.12mg))。
【0044】
同様に、40度エタノール溶液0.75mLに10mgのチエモニウムを溶解させて調剤した本発明の投与処方物の場合、受動的かつほぼ瞬時に投与することのできる量は、経口ルートで通常投与される投与量(50mg)のうち実際に利用される部分の理論上の最大値よりも大きい(経口ルートの通常投与の場合は最大でも投与量の10〜15%(約5mg))。
【0045】
また、別の例として、40度エタノール溶液1mLに20mgのネホパムを溶解させて調剤した本発明の投与処方物の場合、受動的かつほぼ瞬時に投与することのできる量は、静脈注射で通常投与される量と同一である(2mLの溶液に対して20mgのネホパム塩酸塩)。
本発明の処方物の場合、局所的な経粘膜ルートを介して投与された量が残らず生体利用可能となる。
【0046】
また、アルコール度数を35度以上に設定した本発明の水性アルコール溶液には、脂肪親和性であっても鎮痛性分子や鎮痙性分子を溶解させることができる効果があり、それによって、これら分子の経粘膜自然吸収が可能となると共に、抗菌保存剤を入れなくとも、本発明の医薬処方物を微生物汚染から守ることができる。
すなわち、本発明の水性アルコール溶液には4重の効果がある。
【0047】
・痙攣発症治療用の鎮痛性及び/または鎮痙性の有効成分(低分子量の脂肪親和性または両親媒性の分子)を溶かす溶媒として働く。
・上記のような分子状態で存在する当該溶解有効成分を、脂肪親和性膜において経粘膜通過させる。
・アルコール度数によって粘膜吸収の速度を向上させる。先ず、浸透効果によって向上させ、さらに、微小血管の反射的な拡張を生じさせて局所的に微小循環流速を加速させることで向上させる;
・それ自体安定剤であり、そのため、従来のような添加物を使用しなくともよい。
【0048】
また、本発明には、製造が非常に簡単で、投与安定性(dosage stability)も非常に優れている、という効果がある。すなわち、極めて単純化された水/エタノール溶液であるため、有効成分の溶解が保証されると共に、従来の医薬調剤物には通常使用されている補形剤(防腐剤など)が不要となる。
従って、本発明によれば、製造コストを下げることができると共に、有効成分と補形剤との間の不耐性や生じうる相互作用に関連したリスクも軽減することができる。
【0049】
さらに別の効果として、本発明の剤形では、薬力学作用の遅延が既存の鎮痙薬系の薬剤に比べて非常に短い。既存の薬剤の場合、摂取から鎮痛または鎮痙の薬理学的作用が現れ始めるまでに40分以上の遅延が生じる。
薬理学的送達がほぼ瞬間的に行われるため、患者自身が組成物を投与しても、その有効性は瞬時静脈注射した場合に等しく、この種の投与に関連した問題も生じない。また、病院での緊急処置が可能で、その際、静脈カテーテルの準備、装着、監視の必要もなく、従って院内感染の危険もない。
【0050】
こうした形での投与は、痙攣発症の治療を目的とした既存の分子投与ルートと比較して、簡単である点及び非外傷性投与が可能な点だけではなく、単位量や治療コストの点でもはるかに優れている。投与量/効果の比率に関しては、少なくとも40%〜50%高まる。よって、本発明の処方物では、40%〜50%以上少ない投与量で治療効果が得られ、しかも遅延がない。投与される鎮痛性及び/または鎮痙性の分子は、大きな障害に直面することなく、目標となる平滑繊維または中枢神経系の受容体に動脈経由で短時間のうちに分配され、到達までの時間は数秒である。また、投与する必要のある基本量は小さくなるが、それでも、所望の薬理学的活性を発揮させるのに必要な生体利用可能量に相当する。従って、本発明の処方物に含まれる有効成分の量は、従来投与されている量よりも少ない。もちろん、この量は求められる効果に応じて変わってくる。0.5mL〜2mLの範囲の水性アルコール溶液量に対し、有効成分は2mg〜50mgの範囲とするのが好ましい。
【0051】
その上、口腔粘膜の総吸収面積は極めて大きい(絨毛状襞組織の特性として面積が大きくなる)。そのため、本発明の処方物は、投与にあたって、嚥下されてしまったり本来と異なるルートに進んだりする、という問題が生じるリスクがない。また、極めて迅速な粘膜通過が可能になることから、投与された有効成分が唾液に溶解したり、嚥下されたりする事態を防止できる。そして、各種成分や補形剤では粘膜が不安定になるという問題が起こりうるが、本発明の処方物には、こうした不安定化の問題が生じないという効果もある。さらに、本発明の処方物は、投与した薬物が嘔吐の形で拒絶される可能性を排除できるため、嘔吐症候群を伴う強い痙攣発症に苦しむ患者に特に適している。
【0052】
さらに、アルコールの影響は問題にならない。例えば、40度のエタノール水性アルコール溶液0.75mLであれば、アルコールの血中濃度は、公式のWidmark基本式によれば、血液1リットルあたり0.004グラム(g)を下回る値にしかならない。これは、血液1リットルにつき0.5gと定めたフランスの法定許容量の125分の1である。さらに、アルコール溶液には初めに肺で排除が行われ、蒸気の形を取るエタノールを実質的に完全に除去することができる。エタノールは、生体に分配される前に、呼吸ルートを通して抽出されたり、発散したりするからである。こうして、アルコールベクター(vector)は、呼吸によって実質的にほぼ完全に除去される。
【0053】
本発明の第2の様態は、上述した処方物の調剤方法に関する。
本発明の投与処方物の特に適切な製造方法は、以下の処理から成る:
・アルコールと精製水とを混合して得られた混合物に、1以上の鎮痛薬及び/または鎮痙薬用の有効成分を加える;
・調剤物を撹拌して均一な懸濁液を得る;
・さらに撹拌して、有効成分を完全に溶解させる;
・濾過する。
【0054】
本発明の好適な実施の形における方法は、以下の処理から成る:
・エタノールと精製水とを混合して得られた混合物に、ネホパムまたはフロログルシノールまたはメチル硫酸チエモニウムを加える;
・調剤物を、好ましくは10分間から60分間撹拌して、均一な懸濁液を得ると共に、有効成分を完全に溶解させる;
・濾過する。
【0055】
本方法では、濾過の前に以下の処理を行うことにしてもよい:
・5.0〜8.0の所望のpHが得られるまで、徐々にpH調整剤を加える;
・好ましくは5分間から30分間、さらに撹拌して有効成分を完全に溶解させる;
・必要であれば、所望の量になるまで水を補う。
本発明は、鎮痛薬(特にネホパムなどの非アヘン鎮痛薬)や鎮痙薬(特にフロログルシノールまたはチエモニウム)を短時間で全身投与する目的に使用することができ、その使用量も小さい。
【0056】
また、本発明の処方物は、特に痙攣発症を経口経粘膜投与によって治療するための薬物療法に用いることができる。その対象となる痙攣発症は、痙攣性大腸炎、腎臓の疼痛、胆嚢炎、術後または外傷後の痛み、骨盤痛、婦人科関連の痛み、出産関連(gyneco-obstetric)の内臓の痛みなどの激しい症状である。
こうした経口経粘膜投与用の薬剤は、非常に短い時間で、そして、従前のよりも少ない投与量で、痙攣及び/または苦痛を解消する、という治療的作用を有する。ネホパムやパラセタモールのような中枢系非アヘン鎮痛性分子を鎮痙性分子と組み合わせた、本発明の処方物から成る薬剤は好ましいものである。
【0057】
また、本発明の処方物は、液体体積が極めて小さいため、投与が非常に簡単である。患者は容易に、口の中の所定位置、口や歯茎、または舌の下にある特定の狭い粘膜領域に直接接触するように処方物を塗布することができる。
患者が本発明の処方物を塗布する位置については、唾液分泌から保護される粘膜領域(たとえば頬の溝(gutter))とするのが好ましく、当該領域は、歯茎の下側外輪部(external ring)と頬及び下唇の下側内面の粘膜壁との間にある。この場合の経路(channel)は、おおよそ、長さが約18センチメートル(cm)で深さが1cmから1.5cmという、閉じた容器(closed reservoir)に相当する(すなわち、吸収を行う粘膜の面積は35平方センチメートル(cm)から55cmとなる)。
【0058】
本発明の最後の様態として、本処方物は特別な工業包装を必要とするが、これは、安全、簡単かつ人間工学的に使用できるようにすること、そして、有効成分が空気との接触によって劣化するのを防止することを目的としている。
1つの特定の実施の形態として、不透明なガラス、可撓性の金属プラスチックまたはプラスチックの包装を用いるものがある。当該包装については、小型なものとし、窒素などの不活性気体の中で充填するのが好ましい。不活性気体中で充填するのは、組成物の安定性を保つため、そして、酸素や放射を通さないようにするためである。こうした形での包装により、本発明の有効成分が水性アルコール溶液に溶解すること、そして、溶解した有効成分が長期間安定状態に保たれることが保証される。
【0059】
こうした形の包装については、本発明の溶液を付着させる位置を厳密に決めて、適切な面積の粘膜と接触させることができるように、カニューレを設けるのが好ましい。
患者が快適に使用できるように、また、搬送が容易になるように、当該包装については、専用の密封包装を用いるのが好ましい。更には、本発明の投与処方物は、適正量の有効成分を提供するのに適した、0.5mL〜2mLを1回分とする包装に入れるのが好ましい。
【0060】
こうした包装は、運搬が簡単である点、そして、1日のどの時点でも本投与処方物を簡単に使用できる点で効果的である。
以下に、特に鎮痙及び/または鎮痛の効果を生じさせるのに適した本発明の処方物の例を複数挙げる。
処方物1:25mgのメチル硫酸チエモニウム、約40度のエタノール1.00mL
・メチル硫酸チエモニウム(有効成分):25.0mg
・95度のエタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.40mL
・精製水(希釈剤):qsp 1.00mL
この第1の処方物の例は、下記の方法を用いて、1000回分の量(すなわち1リットル(L))をひとまとめに製造する。
【0061】
95% V/Vのエタノール0.40Lと精製水0.6Lとをステンレス鋼タンクに入れる。
メチル硫酸チエモニウム25gを水性アルコール溶液に加える。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌して、均一な懸濁液を得る。
チエモニウムが完全に溶解するまで、さらに撹拌する。
【0062】
5μmの孔を有するポリプロピレンまたは類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1回分1.00mLのビンに分けて詰める。
処方物2:10mgのメチル硫酸チエモニウム、約40度のエタノール0.75mL
・メチル硫酸チエモニウム(有効成分):10.0mg
・95度のエタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.30mL
・精製水(希釈剤):qsp 0.75mL
この第2の処方物の例は、下記の方法を用いて、1000回分の量(すなわち0.75L)をひとまとめに製造する。
【0063】
95% V/Vのエタノール0.30Lと精製水0.45Lとをステンレス鋼タンクに入れる。
メチル硫酸チエモニウム10gを水性アルコール溶液に入れる。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌して、均一な懸濁液を得る。
チエモニウムが完全に溶解するまで、さらに撹拌する。
【0064】
5μmの孔を有するポリプロピレンまたは類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1回分0.75mLのビンに分けて詰める。
処方物3:20mgのフロログルシノール、約40度のエタノール0.75mL
・フロログルシノール(有効成分):20.0mg
・95度のエタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.30mL
・精製水(希釈剤):qsp 0.75mL
本例の処方物は、下記の方法を用いて、1000回分の量(すなわち0.75L)をひとまとめに製造する。
【0065】
95% V/Vのエタノール0.30Lと精製水0.45Lとをステンレス鋼タンクに入れる。
フロログルシノール20gを水性アルコール溶液に入れる。
螺旋撹拌器を用いて調剤物を20〜40分の間撹拌することで、均一な懸濁液を得ると共に、フロログルシノールを完全に溶解させる。
【0066】
5μmの孔を有するポリプロピレンまたは類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1回分0.75mLのビンに分けて詰める。
処方物4:40mgのフロログルシノール、約40度のエタノール1.00mL
・フロログルシノール(有効成分):40.0mg
・95度のエタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.40mL
・精製水(希釈剤):qsp 1.00mL
本処方物は、下記の方法を用いて、1000回分の量(すなわち1.00L)をひとまとめに製造する。
【0067】
95% V/Vのエタノール0.40Lと精製水0.60Lとをステンレス鋼タンクに入れる。
フロログルシノール40gを水性アルコール溶液に入れる。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌して、均一な懸濁液を得る。
さらに撹拌して完全に溶解させる。
【0068】
5μmの孔を有するポリプロピレンまたは類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1回分1.00mLのビンに分けて詰める。
処方物5:20mgのネホパム、40度のエタノール1.0mL
・ネホパム(有効成分):20.0mg
・95度のエタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.40mL
・精製水(希釈剤):qsp 1.00mL
本処方物は、下記の方法を用いて、1000回分の量(すなわち1.00L)をひとまとめに製造する。
【0069】
95% V/Vのエタノール0.40Lと精製水0.60Lとをステンレス鋼タンクに入れる。
ネホパム20gを水性アルコール溶液に入れる。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌して、均一な懸濁液を得る。
さらに撹拌して完全に溶解させる。
【0070】
5μmの孔を有するポリプロピレンまたは類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1回分1.00mLのビンに分けて詰める。
処方物6:10mgのネホパム、40度のエタノール0.75mL
・ネホパム(有効成分):10.0mg
・95度のエタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.30mL
・精製水(希釈剤):qsp 0.75mL
本例の処方物は、下記の方法を用いて、1000回分の量(すなわち0.75L)をひとまとめに製造する。
【0071】
95% V/Vのエタノール0.30Lと精製水0.45Lとをステンレス鋼タンクに入れる。
ネホパム10gを水性アルコール溶液に入れる。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌することで、均一な懸濁液を得ると共に、ネホパムを完全に溶解させる。
【0072】
5μmの孔を有するポリプロピレンまたは類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1回分0.75mLのビンに分けて詰める。
処方物7:10mgのネホパム、20mgのフロログルシノール、40度のエタノール1.0mL
・ネホパム(有効成分):10.0mg
・フロログルシノール(有効成分):20.0mg
・95度のエタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.40mL
・精製水(希釈剤):qsp 1.00mL
本例の処方物は、下記の方法を用いて、1000回分の量(すなわち1.00L)をひとまとめに製造する。
【0073】
95% V/Vのエタノール0.40Lと精製水0.60Lとをステンレス鋼タンクに入れる。
ネホパム10gとフロログルシノール20gとを水性アルコール溶液に入れる。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌することで、均一な懸濁液を得ると共に、ネホパム及びフロログルシノールを完全に溶解させる。
【0074】
5μmの孔を有するポリプロピレンまたは類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1回分1.00mLのビンに分けて詰める。
処方物8:10mgのチエモニウム、125mgのパラセタモール、45度のアルコール1.0mL
・メチル硫酸チエモニウム(有効成分):10.0mg
・パラセタモール(有効成分):125.0mg
・95度のエタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.45mL
・精製水(希釈剤):qsp 1.00mL
本例の処方物は、下記の方法を用いて、1000回分の量(すなわち1.00L)をひとまとめに製造する。
【0075】
95% V/Vのエタノール0.45Lと精製水0.55Lとをステンレス鋼タンクに入れる。
メチル硫酸チエモニウム10.0gとパラセタモール125gとを水性アルコール溶液に入れる。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌することで、均一な懸濁液を得る。
【0076】
5μmの孔を有するポリプロピレンまたは類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1回分1.00mLのビンに分けて詰める。
処方物9:40mgのフロログルシノール、125mgのパラセタモール、45度のアルコール1.0mL
・フロログルシノール(有効成分):40.0mg
・パラセタモール(有効成分):125.0mg
・95度のエタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.45mL
・精製水(希釈剤):qsp 1.00mL
本例の処方物は、下記の方法を用いて、1000回分の量(すなわち1.00L)をひとまとめに製造する。
【0077】
95% V/Vのエタノール0.45Lと精製水0.55Lとをステンレス鋼タンクに入れる。
フロログルシノール40gとパラセタモール125gとを水性アルコール溶液に入れる。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌することで、均一な懸濁液を得る。
5μmの孔を有するポリプロピレンまたは類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1回分1.00mLのビンに分けて詰める。
【0078】
言うまでもなく、本発明が上述した例に限定されないことは明らかであり、反対に、上述の例の全ての変形例も本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
痙攣発症の治療に用いられる1以上の有効成分を経口経粘膜投与するための処方物であって、
末梢作用鎮痙薬及びネホパムから選択され、塩基形または塩形で存在する1以上の有効成分と、
アルコール度数を35度以上に設定した水性アルコール溶液と、
オプションとして、中枢作用鎮痛薬から選択され、塩基形または塩形で存在する別の有効成分と、を含み、
有効成分が、水性アルコール溶液中に完全に溶解して安定した状態で存在すること、を特徴とする処方物。
【請求項2】
末梢作用鎮痙薬が、チエモニウム及びフロログルシノールから選択されること、
を特徴とする請求項1に記載の処方物。
【請求項3】
中枢作用鎮痛薬が、パラセタモール及びネホパムから選択されること、
を特徴とする請求項1または2に記載の処方物。
【請求項4】
水性アルコール溶液のアルコール度数が35度から70度に設定されていること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の処方物。
【請求項5】
水性アルコール溶液のアルコールがエタノールであること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の処方物。
【請求項6】
pH調整剤をさらに含むこと、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の処方物。
【請求項7】
pH調整剤が、炭酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウム、1ナトリウムリン酸塩又は2ナトリウムリン酸塩、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選択される、及び/または、塩化水素酸剤、硫酸剤、琥珀酸剤、酪酸剤、リン酸剤、クエン酸剤、リンゴ酸剤から選択される、及び/または乳酸剤から選択されること、
を特徴とする請求項6に記載の処方物。
【請求項8】
pHが5.0から9.0の値であること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の処方物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の処方物の調剤方法であって、
アルコールと精製水とを混合した混合物に1以上の鎮痛薬有効成分または鎮痙薬有効成分を加える処理と、
均一な懸濁液が得られるまで調剤物を撹拌する処理と、
有効成分が完全に溶解するまで、さらに撹拌する処理と、
濾過処理と、
を有することを特徴とする調剤方法。
【請求項10】
エタノールと精製水とを混合した混合物に、ネホパム及びパラセタモールのいずれか、及び/または、フロログルシノール及びチエモニウムのいずれかを加える処理と、
調剤物を10分間から60分間撹拌し、均一な懸濁液を得ると共に有効成分を完全に溶解させる処理と、
濾過処理と、を有すること、
を特徴とする請求項9に記載の調剤方法。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の処方物を、痛みを伴う痙攣発症を経口経粘膜投与によって治療することを目的とした薬物療法に用いること、
を特徴とする処方物使用方法。
【請求項12】
痙攣性大腸炎の痛み、腎臓型大腸炎、術後または外傷後の痛み、骨盤の痛み、婦人科関連の痛み、出産関連の内臓の痛み、を経口経粘膜投与によって治療することを目的とした薬物療法に用いられること、
を特徴とする請求項11に記載の処方物使用方法。

【公表番号】特表2012−515154(P2012−515154A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544913(P2011−544913)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050039
【国際公開番号】WO2010/081984
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(511148455)
【出願人】(511148503)
【Fターム(参考)】