説明

長尺センサ

【課題】十分な異物の検知精度を維持しつつ、製造コストの抑制を図る。
【解決手段】長尺センサ21は、乗降口4を開閉可能なスライドドア2の金属製の縁部に取着される取付基部22と、取付基部22から膨出し、内部に中空部24を有する表皮カバー部23と、可撓性を有するとともに、中空部24に挿設された絶縁体25と、取付基部22に対向するとともに、少なくとも一部が絶縁体25に埋設された板状の電極26とを備える。中空部24において、電極26と取付基部22との間に間隙部27を設けるとともに、電極26をプラス極、取付基部22をアースとしてのマイナス極として、電極26とアースマイナス極との間の静電容量の変化に基づき、異物の表皮カバー部23への近接及び/又は接触を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物を検知するためのセンサに関するものであり、特に自動車等の車両において車両本体とドア等の開閉体との間に挟み込まれた異物を検知するための長尺センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所謂ワンボックスカー等の車両においては、乗員の乗降口を大きく開閉して乗降の便を向上させるとともに、ドアをボディから離さないようにして、車両のボディに沿ってスライドするスライドドアを具備するものがある。また近年では、このスライドドアをモータ等を用いて自動開閉させるものが知られている。
【0003】
このようなドアの開閉システムでは、スライドドアの自動閉鎖中に何らかの異物(例えば、人体や衣服等)を挟み込まないようにする必要がある。そのため、異物を検知するためのセンサと、当該センサによって異物が検知された際に、スライドドアを停止させるとともに、開方向へと逆転制御する機構とが設けられている。ここで、前記センサとしては、長尺の被覆体の内部に、相対向する2枚の電極が配設されてなる静電容量式のセンサが提案されている。
【0004】
静電容量式のセンサは、電極を介して計測される静電容量の変化に基づいて異物を検知するものであり、人体等、比較的大きな静電容量を有する異物については非接触でこれを検知可能である。また、静電容量の比較的小さな異物に対する検知精度を向上させるべく、両電極間に空間を設ける手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該手法によれば、異物接触時の圧力が比較的小さなものであっても、両電極間の距離を大きく変化させることができる。その結果、静電容量の変化量を増加させることができ、異物を精度よく検知することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−329506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術によれば、少なくとも2枚の電極が必要である。また、2枚の電極の位置関係を保ちつつ、長尺の被覆体内部の所定位置にそれぞれを配置しなければならない。そのため、センサの製造には困難が伴うものとなる。すなわち、上記技術は、部品点数の面、及び、製造作業の面において必ずしも有利と言えず、結果として、製造コストの増大を招いてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、十分な異物の検知精度を維持しつつ、製造コストの抑制を図ることができる長尺センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.車両本体に設けられた開口部を開閉可能な開閉体の金属製の縁部に取着される取付基部と、
前記取付基部から前記開口部周縁側に向けて膨出し、内部に中空部を有する表皮カバー部と、
可撓性を有するとともに、前記中空部に挿設された絶縁体と、
前記取付基部に対向するとともに、少なくとも一部が前記絶縁体に埋設された板状の電極と
を備える長尺センサであって、
前記中空部において、前記電極と前記取付基部との間に間隙部を設けるとともに、
前記電極をプラス極とし、前記取付基部をアースとしてのマイナス極とし、
前記電極と前記アースマイナス極との間の静電容量の変化に基づき、異物の前記表皮カバー部への近接及び/又は接触を検知することを特徴とする長尺センサ。
【0010】
上記手段1によれば、取付基部をアースマイナス極として利用しているため、設ける電極が1本であっても、当該電極と取付基部との間の静電容量に基づき異物の検知を行うことができる。従って、2本の電極を設ける場合と比較して、材料コストの抑制を図ることができる。また、上記手段1によれば、センサを製造するにあたって、電極同士の位置関係を調整するといった作業を必要とせず、取付基部に対して所定の位置関係となるように電極が埋設された絶縁体を配置しさえすればよい。その結果、センサの製造を非常に容易に行うことが可能となり、材料コストの抑制が図られることと相俟って、製造コストの著しい低減を図ることができる。
【0011】
また、本手段1の長尺センサによる異物の検知感度について鑑みると、人体等、比較的大きな静電容量を有する異物については、センサに接近した段階で電極と取付基部(アースマイナス極)との間の静電容量が比較的大きく変化するため、非接触で感度よく検知することができる。さらに、電極と取付基部との間には間隙部が設けられているため、静電容量が小さい異物や、鉛筆等の接触面積が小さい異物については、異物がセンサ(表皮カバー部)に接触し、前記間隙部が潰れ変形することで、静電容量が大きく変化することとなる。すなわち、上記手段1によれば、人体等だけでなく、静電容量や接触面積の比較的小さな異物であっても感度よく検知することができる。
【0012】
尚、上記手段1による作用効果をより確実に発揮すべく、前記間隙部においては、前記電極と取付基部との間の距離の最大値を0.5mm以上とすることが望ましい。一方で、間隙部の潰れ変形量が同一であっても、電極と取付基部との間の距離を大きくするにつれて両者の間における静電容量の変化量が減少してしまう。従って、前記間隙部における、電極と取付基部との間の距離の最大値を3.0mm以下とすることが望ましい。
【0013】
手段2.前記電極のうち前記取付基部に対する対向面を、前記絶縁体により被覆するとともに、
前記絶縁体のうち前記電極の対向面を被覆する被覆部の厚さを、50μm以上300μm以下としたことを特徴とする手段1に記載の長尺センサ。
【0014】
上記手段2によれば、被覆部を設けることで、電極が絶縁体の表面に露出しないように構成されている。従って、センサに異物が接触したときなど、間隙部が潰れ変形した際に、電極が取付基部に接触してしまうことを防止でき、電極の損耗を防止することができる。その結果、より長期間に亘って感度よく異物を検知することができる。
【0015】
尚、電極の損耗防止効果を十分に長期間に亘って発揮させるためには、被覆部の厚さを50μm以上とすることが好ましく、100μm以上とすることがより好ましい。但し、被覆部の厚さを過度に厚くしてしまうと、異物の検知感度が低下してしまうおそれがある。従って、優れた検知感度を維持すべく、被覆部の厚さを300μm以下とすることが好ましく、200μm以下とすることがより好ましい。
【0016】
手段3.前記絶縁体に、前記表皮カバー部に向けて突出する絶縁体側突部を設けたことを特徴とする手段1又は2に記載の長尺センサ。
【0017】
上記手段3によれば、絶縁体に設けられた絶縁体側突部によって、絶縁体と表皮カバー部との距離を比較的小さなものとすることができる。従って、異物が接触した際における表皮カバー部の変形量が小さなものであっても絶縁体を変形させることができ、ひいては間隙部をより確実に潰れ変形させることができる。その結果、異物の検知精度の更なる向上を図ることができる。
【0018】
手段4.前記表皮カバー部の内周面に、前記絶縁体側に向けて突出するカバー側突部を設けたことを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の長尺センサ。
【0019】
上記手段4によれば、上記手段3と同様に、異物の接触に伴う表皮カバー部の変形量が比較的小さくても、間隙部をより確実に潰れ変形させることができる。これにより、異物の検知精度を一層向上させることができる。
【0020】
手段5.前記絶縁体のうち前記取付基部側の部位に、前記電極のうち前記取付基部に対する対向面と直交する方向に交差するようにして延びる2本の脚部を設け、
前記両脚部の間に、前記間隙部を設けたことを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の長尺センサ。
【0021】
上記手段5によれば、2本の脚部によって間隙部の形状をより確実に維持することができ、上記手段1等による作用効果をより確実に発揮させることができる。
【0022】
また、脚部は、前記電極の対向面に対する直交方向と交差するように延びている。そのため、脚部によって間隙部の潰れ変形が阻害されてしまうといった事態をより確実に抑制することができる。
【0023】
手段6.前記表皮カバー部と前記絶縁体との間に、空気からなる空間部を設けたことを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載の長尺センサ。
【0024】
上記特許文献1に記載の技術のように、被覆体と電極との間に隙間がない構成の場合において、降雨等によりセンサやセンサ周辺に水が付着してしまうと、静電容量が比較的大きく変化してしまう。従って、水滴の付着による誤判定が発生してしまうおそれがある。
【0025】
この点、上記手段6によれば、表皮カバー部と絶縁体との間に、空気で満たされ、比誘電率の比較的低い空間部(隙間)が設けられている。そのため、水滴が付着した際における静電容量の変化量を比較的小さなものとすることができ、その結果、誤判定の発生をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】スライドドアを具備する車両を示す斜視図である。
【図2】ECU等の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1におけるJ−J線断面図である。
【図4】長尺センサの部分拡大断面図である。
【図5】(a)は、水滴が表皮カバー部に接触した状態を示す長尺センサの拡大断面図であり、(b)は、異物が長尺センサに接近した状態を示す長尺センサの拡大断面図である。
【図6】異物が接触状態にあるときの長尺センサの拡大断面図である。
【図7】別の実施形態における長尺センサの拡大断面図である。
【図8】別の実施形態における長尺センサの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1はスライドドアを搭載した車両の概略斜視図である。同図に示すように、車両1は、そのボディ側面に金属製のスライドドア2(本発明の「開閉体」に相当する)を有している。当該スライドドア2は、ボディ側面の中央部に設けられたスライドレール3と、ボディ側面の天井部側及び床部側に設けられた図示しないスライドレールとによって、ボディ側面に支持されている。当該スライドドア2は、ボディ側面に示される開口部としての乗降口4を全閉した図示する全閉位置と、乗降口4を全開した全開位置(図中の二点鎖線参照)との間に亘ってボディ側面に沿ってスライドし、乗降口4を開閉できるように構成されている。尚、前記スライドドア2は、車両1の構成部品を介して接地(アース)された状態となっている。
【0029】
また、ボディのドアピラー5の後端面とスライドドア2の前方側サイドパネルとの間には、ボディとスライドドア2とを係合する図示しないロック機構が設けられている。そして、スライドドア2が図示する全閉位置までスライドされると、スライドドア2は、このロック機構により、全閉位置でロックされるように構成されている。
【0030】
また、前記スライドドア2の内部には、自動開閉機構(図示せず)が設けられている。当該自動開閉機構は、少なくとも全開位置にあるスライドドア2を全閉位置までスライド動作させるものである。加えて、自動開閉機構は、図2に示すように、スライドドア2の開閉動作を行う駆動モータ11と、当該駆動モータ11を駆動制御する電子制御ユニット(ECU)12とを備えている。ECU12には、運転席に配設される操作スイッチ13や、車両室内に配置されるリモートコントローラ(リモコン)スイッチ14等から閉鎖指令信号等が入力されるようになっている。また、ECU12には、駆動モータ11或いは別途の図示しない検出センサからの信号に基づき、スライドドア2の位置が現在どの程度であるのかが(全開位置、全閉位置をも含めて)把握可能となっている。
【0031】
尚、乗降口4が開状態(例えば、スライドドア2が全開位置)にあるときに、閉鎖指令信号が入力された場合、ECU12は、前記駆動モータ11を正転駆動制御する。これにより、スライドドア2が全閉位置までスライド動作され、全閉位置にてロックされるようになっている。そして、ロックが完了すると、駆動モータ11の動作が停止される。
【0032】
さらに、本実施形態では、スライドドア2の端縁部に、当該スライドドア2と乗降口4周縁との隙間に異物が存在していることを検知可能な長尺センサ21が設けられている。当該長尺センサ21は、静電容量計測手段15に電気的に接続されており、静電容量計測手段15は、前記ECU12に対して電気的に接続されている。ここで、静電容量計測手段15は、後述する電極26及び取付基部22(スライドドア2)間などの静電容量を所定時間毎に計測可能に構成されており、計測された静電容量(に関する情報)がECU12に対して伝送されるようになっている。本実施形態において、前記ECU12は、直前に計測された静電容量(基準静電容量)に対する伝送された静電容量の変化割合が、予め設定された閾値よりも大きい場合に、スライドドア2と乗降口4周縁との隙間に異物が存在しているものと検知する。そして、駆動モータ11の閉動作を一旦停止させるとともに、スライドドア2を開方向へと移動させる逆転駆動制御を行うようになっている。すなわち、ECU12は、停止制御手段としての機能をも発揮するよう構成されている。尚、前記閾値は、長尺センサ21及びその周辺に水滴が付着した際に誤判定が発生しない(ECU12により異物が存在すると判定されない)ような値に設定されている。
【0033】
次いで、長尺センサ21等の詳細について説明する。図3は、スライドドア2の前端縁及びボディのドアピラー5等を示す図1のJ−J線断面図である。図3に示すように、ボディのドアピラー5の後端側に沿って上下に延びるフランジ5aには、ウエザストリップ51が設けられている。ウエザストリップ51は、スライドドア2が全閉位置までスライドされたときに、ボディとスライドドア2との間をシールする。尚、スライドドア2の全閉直前においては、当該スライドドア2は、この全閉位置から図において斜め右下に位置する。
【0034】
前記ウエザストリップ51は、押出成形により得られるものであり、フランジ5aに差し込み固定される取付基部52と、中空状のシール部53とを備えている。本実施形態において、取付基部52はEPDMソリッドゴムにより形成され、シール部53はEPDMスポンジゴムにより形成されている。そして、シール部53が、スライドドア2のインナパネルにより押圧されて潰れ変形することでシール機能が発揮されるようになっている。
【0035】
次に、長尺センサ21について説明する。本実施形態において、長尺センサ21は、ボディのドアピラー5と対向する、スライドドア2の前端部2bのほぼ全域に亘って取付けられている。このため、スライドドア2がその全閉位置までスライドされる際に、ドアピラー5の後端側面及びこれに対向するスライドドア2の前端縁間の全域に亘って異物が存在しているか否かを検知可能となっている。
【0036】
さらに、長尺センサ21は、第1センサ構成体21Aと、第2センサ構成体21Bとを備えている。
【0037】
図4に示すように、第1センサ構成体21Aは、前記スライドドア2の前端部2bに固定される取付基部22と、前記取付基部22からドアピラー5側へと膨出する表皮カバー部23とを備えている。
【0038】
前記取付基部22は、EPDMソリッドゴムを押出成形することにより形成されており、基底部22Aと、当該基底部22Aから前記表皮カバー部23とは反対側へと延びる一対の側壁部22B,22Cとを備えている。加えて、前記基底部22Aの両端縁には、ドアピラー5側へと突出する一対の突出部22P1,22P2が形成されている。本実施形態においては、前記突出部22P1,22P2のうち後述する中空部24側の部位がテーパ状の傾斜面SA1,SA2となっている。加えて、前記取付基部22には、金属製のインサート22Nが埋設されている。
【0039】
前記表皮カバー部23は、EPDMスポンジゴムにより形成されており、前記突出部22P1,22P2からドアピラー5側へと膨出する断面円弧状をなしている。また、表皮カバー部23の内部には、中空部24が形成されているとともに、表皮カバー部23は比較的薄肉に形成されている。そのため、異物等の接触時において、表皮カバー部23は容易に変形可能となっている。
【0040】
さらに、前記中空部24内には、前記第2センサ構成体21Bが配設されている。当該第2センサ構成体21Bは、長尺状をなす絶縁体25と、当該絶縁体25の内部に埋設された電極26とを備えている。
【0041】
前記絶縁体25は、可撓性を有する絶縁素材〔例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等〕を押出成形することにより形成されている。また、当該絶縁体25は、表皮カバー部23側に向けて突出する絶縁体側突部25Pを有している。さらに、絶縁体25のうち取付基部22側の部位には、一対の脚部25L1,25L2が設けられており、脚部25L1,25L2は前記傾斜面SA1,SA2に当接している。
【0042】
前記電極26は、曲げやねじれに対する耐久性に優れた帯状の平編銅線(平板状をなす網状の銅線)であり、取付基部22の基底部22Aに対して対向するように配置されている。また、電極26のうち取付基部22と対向する面は、絶縁体25の表面に露出することなく、絶縁体25の被覆部25Cによって被覆されている。そして、被覆部25Cの厚さは、50μm以上300μm以下(より好ましくは、100μm以上200μm以下)とされている。
【0043】
尚、前記絶縁体25の脚部25L1,25L2は、前記電極26の取付基部22に対する対向面の直交方向と交差する方向に向けて(本実施形態では、基底部22Aの幅方向に向けて)延出するように構成されている。そのため、長尺センサ21に対してドアピラー5側から押圧力が加えられた際には、脚部25L1,25L2の根元部分が屈曲し、ひいては電極26が取付基部22(基底部22A)に接近・接触するようになっている。尚、本実施形態では、少なくとも前記脚部25L1,25L2を構成する部位の硬度が、ショアA値で30度以上60度以下とされている。そのため、脚部25L1,25L2の根元部分が比較的容易に屈曲するようになっている。
【0044】
さらに、前記表皮カバー部23の内周面のうち前記基底部22A側には、前記絶縁体25(絶縁体側突部25P)側へと突出するカバー側突部23P1,23P2が形成されている。また、当該カバー側突部23P1,23P2同士の間隔は、前記脚部25L1,25L2の先端同士の間隔よりも狭くされている。これにより、前記カバー側突部23P1,23P2よりもドアピラー5側へと脚部25L1,25L2が相対移動してしまうことが規制され、ひいては第1センサ構成体21Aに対する第2センサ構造体21Bの相対回転が規制されている。これにより、センシング条件を安定させることができる。(静電容量の変化を安定して検知することができる。)
加えて、前記絶縁体25の基底部22A側表面と取付基部22(基底部22A)表面との間に間隙部27が形成されている。当該間隙部27においては、前記電極26と取付基部22との間の間隔の最大値が0.5mm以上とされている。
【0045】
さらに、前記電極26は、図示しない電荷供給装置に対して電気的に接続されており、当該電荷供給装置から所定の電荷が供給されている。その一方で、前記取付基部22は、前記スライドドア2に取付けられており、接地状態とされている。従って、電極26と接地された前記取付基部22(アースマイナス極)とによりコンデンサが構成されている。また、電極26には、前記静電容量計測手段15が接続されており、静電容量計測手段15によって、少なくとも電極26と取付基部22(アースマイナス極)との間の静電容量が計測されるようになっている。尚、長尺センサ21の周辺に異物が接近した場合、静電容量計測手段15により計測される静電容量は、異物の有する静電容量の分だけ変化することとなる。
【0046】
さらに、中空部24において、前記表皮カバー部23の内周面と、絶縁体25の表皮カバー部23側表面との間には、空気で満たされた空間部28が設けられている。当該空間部28においては、表皮カバー部23と絶縁体25との間の間隔の最大値が0.5mm以上とされている。
【0047】
次いで、上述した長尺センサ21の製造方法について説明する。
【0048】
まず、前記第1センサ構成体21Aを成形するためのダイス(図示せず)を備えてなる押出成形機(図示せず)に対して、取付基部22を構成するEPDM未加硫ゴムと、表皮カバー部23を構成するEPDM未加硫発泡ゴムとを、前記インサート22Nとともに連続的に供給する。これにより、前記ダイスから、前記第1センサ構成体21Aとなる第1中間成形体(図示せず)が押出成形される。尚、第1中間成形体のうち取付基部22に相当する部位は、開いた状態で略平板状に成形される。次いで、得られた第1中間成形体を所定の加硫槽に搬送するとともに、当該加硫槽において熱風や高周波等で第1中間成形体を加硫・発泡させる。次いで、第1中間成形体に折曲加工を施し、取付基部22を前記所定の形状とするとともに、所定長さに切断することで、第1センサ構成体21Aが得られる。
【0049】
次に、前記第2センサ構成体21Bを成形するためのダイス(図示せず)を有する押出成型機(図示せず)に対して、可塑化状態にあるTPOと電極26とを連続的に供給する。これにより、前記ダイスから、第2センサ構成体21Bとなる第2中間成形体(図示せず)が押出成形される。次いで、第2中間成形体を冷却、固化させるとともに、所定長さに切断する。これにより、第2センサ構成体21Bが得られる。
【0050】
その後、第1センサ構成体21Aに対する第2センサ構成体21Bの位置関係を所定の位置に保ちつつ、第1センサ構成体21Aの中空部24に第2センサ構成体21Bを挿通する。さらに、静電容量計測手段15に対する電気的な接続手段を電極26に設けることで、上述した長尺センサ21が得られる。
【0051】
次に、図5及び図6を用いて、上述した長尺センサ21による異物の検知方法について説明する。尚、図5(a)は、水滴DWが長尺センサ21(表皮カバー部23)に付着した状態(水滴接触状態)を示しており、図5(b)は、人体等、静電容量の比較的大きな異物S1が長尺センサ21に接近した状態を示している。また、図6は、異物S2(例えば、ペン先等、サイズが比較的小さい絶縁物)が表皮カバー部23に対して接触した状態(接触状態)を示している。
【0052】
図5(a)に示すように、水滴DWが長尺センサ21に付着した場合において、当該水滴DWと電極26との間には空気で満たされた空間部28が介在している。このため、静電容量計測手段15によって計測される静電容量の変化量は比較的小さなものとなる。従って、静電容量の変化割合は、前記予め設定された閾値よりも小さなものとなり、ECU12は、異物が存在しないものと判定する(つまり、ECU12は、長尺センサ21に付着した水滴DWを異物とは判定しない)こととなる。
【0053】
これに対して、図5(b)に示すように、人体等の異物S1が長尺センサ21に近接したときにおいて、異物S1は水分含有量が比較的多いため、前記空間部28が介在していても、静電容量の変化量は十分に大きなものとなる。従って、異物S1が接近した場合には、静電容量の変化割合が前記閾値を超えることとなり、ECU12は、異物が存在するものと判断することとなる。すなわち、人体等の異物S1については、長尺センサ21に接近した段階で検知されるようになっている。
【0054】
一方、絶縁物や水分含有量が比較的少ないもの、或いは、サイズが比較的小さいものである異物S2が接近・接触した場合には、静電容量の変化量が比較的小さなものとなる。そのため、静電容量の変化割合が、前記閾値よりも小さなものとなり得る。
【0055】
この場合、図6に示すように、異物S2が長尺センサ21に接近しただけでは異物S2を検知することができず、異物S2は長尺センサ21(表皮カバー部23)に対して接触することとなる。このとき、前記脚部25L1,25L2の付根部分が屈曲し、前記間隙部27が潰れ変形することで、電極26及び取付基部22間の静電容量が大きく変化する。そのため、静電容量の変化割合も大きなものとなり、ECU12は、異物S2が存在するものと検知することとなる。
【0056】
以上詳述したように、本実施形態によれば、取付基部22をアースマイナス極として利用しているため、設ける電極が1本の電極26であっても、当該電極26と取付基部22との間の静電容量に基づき異物の検知を行うことができる。従って、2本の電極を設ける場合と比較して、材料コストの抑制を図ることができる。また、長尺センサ21を製造するにあたって、電極同士の位置関係を調整するといった作業を必要とせず、取付基部22(第1センサ構成体21A)に対して所定の位置関係となるように電極26が埋設された絶縁体25(第2センサ構成体21B)を配置しさえすればよい。その結果、センサの製造を非常に容易に行うことが可能となり、材料コストの抑制が図られることと相俟って、製造コストの著しい低減を図ることができる。
【0057】
また、本実施形態の長尺センサ21による異物の検知感度について鑑みると、人体等、比較的大きな静電容量を有する異物については、センサに接近した段階で電極26と取付基部22(アースマイナス極)との間の静電容量が比較的大きく変化するため、非接触で感度よく検知することができる。さらに、電極26と取付基部22との間には間隙部27が設けられているため、静電容量が小さい異物や、鉛筆等の接触面積が小さい異物については、異物が長尺センサ21(表皮カバー部23)に接触し、前記間隙部27が潰れ変形することで、静電容量を大きく変化させることができる。すなわち、長尺センサ21によれば、人体等だけでなく、静電容量や接触面積の比較的小さな異物であっても感度よく検知することができる。
【0058】
さらに、厚さが50μm以上300μm以下の被覆部25Cが設けられているため、電極26の損耗をより長期間に亘ってより確実に防止することができるとともに、優れた異物の検知精度を維持することができる。
【0059】
加えて、絶縁体側突部25Pと、カバー側突部23P1,23P2とが設けられているため、異物が接触した際における表皮カバー部23の変形量が小さなものであっても、間隙部27をより確実に潰れ変形させることができる。その結果、異物の検知精度をより一層向上させることができる。
【0060】
また、表皮カバー部23と絶縁体25との間に、空気で満たされ、比誘電率の比較的低い空間部28が設けられているため、水滴が付着した際における静電容量の変化量を比較的小さなものとすることができる。その結果、水滴の付着に伴う誤判定の発生をより確実に防止することができる。
【0061】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0062】
(a)上記実施形態では、絶縁体25の脚部25L1,25L2が基底部22Aの幅方向に沿って延びるとともに、脚部25L1,25L2が基底部22Aの傾斜面SA1,SA2に当接することで、絶縁体25に押圧力が加わった際に、間隙部27が容易に潰れるように構成されている。これに対して、図7に示すように、絶縁体35の脚部35L1,35L2を基底部32Bの幅方向に対して斜め方向に延びる断面略ハの字状に形成することで、絶縁体35に押圧力が加わった際に、間隙部37が潰れるように構成することとしてもよい。
【0063】
(b)上記実施形態では、表皮カバー部23の内周面から絶縁体25側へと延びるカバー側突部23P1,23P2が設けられることで、表皮カバー部23(第1センサ構成体21A)に対する絶縁体25(第2センサ構成体21B)の相対回転が規制されている。これに対して、図7に示すように、取付基部32の内周面(中空部側の面)から突出する突部32P1,32P2を設けることで、表皮カバー部33に対する絶縁体35の相対回転を規制することとしてもよい。
【0064】
また、突部を設ける部位は表皮カバー部23(33)や取付基部22(32)に限定されるものではなく、例えば、絶縁体25(35)の外周面から表皮カバー部23(33)側へと突出するようにして突部を設けることとしてもよい。
【0065】
(c)上記実施形態において、表皮カバー部23のカバー側突部23P1,23P2は、絶縁体25に対して非接触状態とされているが、図8に示すように、先端部が絶縁体45に接触するように、表皮カバー部46のカバー側突部46P1,46P2を構成することとしてもよい。この場合には、空間部48の形状維持をより確実に図ることができるとともに、表皮カバー部46に押圧力が加えられた際に、間隙部47をより容易に潰れ変形させることができる。その結果、異物をより一層確実に検知することができる。
【0066】
(d)上記実施形態において、ECU12は、静電容量の変化割合に基づいて異物を検知しているが、静電容量の変化量に基づいて異物を検知することとしてもよい。また、電極26に発振回路を電気的に接続するとともに、前記静電容量測定手段15に代えて、静電容量の経時変化にかかる前記発振回路からの発振出力に応じた周波数信号を計測する周波数計測手段を設け、当該周波数計測手段によって計測された周波数信号に基づいて、異物を検知することとしてもよい。
【0067】
(e)上記実施形態では、電極26は平編銅線により構成されているが、導電率高い金属材料からなる金属箔や帯状のカーボン含有材料(導電性樹脂)等により構成することとしてもよい。
【0068】
(f)上記実施形態では、絶縁体25を形成する素材として、TPOが例示されているが、EPDMスポンジゴムなど、他の可撓性を有する素材により絶縁体25を形成することとしてもよい。
【0069】
(g)上記実施形態において、取付基部22はインサート22Nを備えて構成されているが、インサート22Nを省略することとしてもよい。
【0070】
(h)上記実施形態では、ボディ側面に設けられた乗降口4を開閉するためのスライドドア2を有する場合について具体化している。つまり、上記実施形態における開閉体はスライドドア2とされている。これに対し、本発明の技術思想を他の開閉体(例えば、非スライドタイプ)に適用することとしてもよい。他の開閉体としては、例えば、上部が支持されているハッチバックタイプのバックドアや、車両天井部を開閉するスライディングルーフ、ドアの窓部を開閉するドアガラス等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0071】
1…車両、2…スライドドア(開閉体)、4…乗降口(開口部)、21…長尺センサ、22…取付基部、23…表皮カバー部、23P1,23P2…カバー側突部、24…中空部、25…絶縁体、25L1,25L2…脚部、25C…被覆部、25P…絶縁体側突部、26…電極、27…間隙部、28…空間部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に設けられた開口部を開閉可能な開閉体の金属製の縁部に取着される取付基部と、
前記取付基部から前記開口部周縁側に向けて膨出し、内部に中空部を有する表皮カバー部と、
可撓性を有するとともに、前記中空部に挿設された絶縁体と、
前記取付基部に対向するとともに、少なくとも一部が前記絶縁体に埋設された板状の電極と
を備える長尺センサであって、
前記中空部において、前記電極と前記取付基部との間に間隙部を設けるとともに、
前記電極をプラス極とし、前記取付基部をアースとしてのマイナス極とし、
前記電極と前記アースマイナス極との間の静電容量の変化に基づき、異物の前記表皮カバー部への近接及び/又は接触を検知することを特徴とする長尺センサ。
【請求項2】
前記電極のうち前記取付基部に対する対向面を、前記絶縁体により被覆するとともに、
前記絶縁体のうち前記電極の対向面を被覆する被覆部の厚さを、50μm以上300μm以下としたことを特徴とする請求項1に記載の長尺センサ。
【請求項3】
前記絶縁体に、前記表皮カバー部に向けて突出する絶縁体側突部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の長尺センサ。
【請求項4】
前記表皮カバー部の内周面に、前記絶縁体側に向けて突出するカバー側突部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の長尺センサ。
【請求項5】
前記絶縁体のうち前記取付基部側の部位に、前記電極のうち前記取付基部に対する対向面と直交する方向に交差するようにして延びる2本の脚部を設け、
前記両脚部の間に、前記間隙部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の長尺センサ。
【請求項6】
前記表皮カバー部と前記絶縁体との間に、空気からなる空間部を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の長尺センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−209248(P2011−209248A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80007(P2010−80007)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】