説明

長尺成形品用金型および長尺成形品の製造方法

【課題】 キャビティ内に設けたイジェクタによりキャビティの長尺成形品を突き出すと、長尺成形品にイジェクタの跡が付くという問題がある。
【解決手段】 可動型および固定型を組み合わせることにより、長尺なキャビティと、このキャビティの長手方向の一端に連通したランナーと、このキャビティの長手方向の他端に連通した樹脂溜まり部とを形成した長尺成形品用金型において、可動型側のランナーおよび樹脂溜まり部にイジェクタを設け、ランナーおよび樹脂溜まり部の溶融樹脂が冷却固化した成形物を、イジェクタにより突き出すことにより、可動型側のキャビティ中の溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品を可動型から取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンタやデジタル複写機等の画像形成装置に用いられるマグネットロールで用いられるマグネットピース等の長尺な成形品を成形するための長尺成形品用金型、および長尺成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8および図9に示すように、従来より、シャフト52の周りに短手方向の断面(横断面)の形状が略扇形状で、横断面の面積が長手方向(シャフト52の軸方向)に渡って略均一な複数のマグネットピース(長尺成形品)53〜58を接着剤等を用いて放射状に貼り合わせたマグネットロール51が提供されている(例えば、特許文献1〜7参照)。
【0003】
このマグネットロール51は、図8に示すように、シャフト52の周りに、汲み上げ極S3(S極)のマグネットピース55と、トリミング極N2(N極)のマグネットピース54と、現像極S1(S極)のマグネットピース53と、回収(搬送)極N1(N極)のマグネットピース58と、剥離極S2(S極)のマグネットピース57と、介在極ピース56(S極)がこの順に貼り付けられた(貼り合わされた)ものである。
【0004】
これらのマグネットピース53〜58は、磁石材料粉、樹脂バインダー、添加剤等の混合物からなる磁性樹脂材料を用いて磁場中で成形することによって製造したものである。
【0005】
磁石材料粉としては、例えば、フェライト粉や、Nd等の希土類金属粉とFe、Co、Ni等の鉄族金属粉との混合物を使用することができる。また、樹脂バインダーは、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エチレンエチルアクリレート(EEA)等を使用することができる。
【0006】
この所謂貼り合わせマグネットロール51に用いられる個々のマグネットピース(長尺成形品)53〜58は、図10に示すように、配向ヨーク68を備えた固定型64と、イジェクタ69を備えた可動型63とを組み合わせて形成したキャビティ65の長手方向の一端と連通するランナー(図示せず)から溶融した磁性樹脂材料を射出し、キャビティ65に満たされた磁性樹脂材料を冷却固化することにより製造することができる(例えば、特許文献8参照)。
【0007】
ここで、キャビティとは、金型内部の空間(射出成形品の形状を有する空間)のことをいい、キャビティ面とは、当該キャビティを形成する金型の面のことをいう。また、連通とは、二つの空間を連続状態にすることをいう。
【0008】
そして、キャビティ65内のマグネットピース70は、図11に示すように可動型63を固定型64に対して相対的に移動させて型開きし、図12に示すようにイジェクタ69を可動型63側のキャビティ内部に突き出すことにより、可動型63から取り出すことができる(例えば、特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−229309号公報
【特許文献2】特開2003−229321号公報
【特許文献3】特開2001−034068号公報
【特許文献4】特開2000−075665号公報
【特許文献5】特開平10−308308号公報
【特許文献6】特開平01−114011号公報
【特許文献7】特開昭62−282422号公報
【特許文献8】特開2003−229321号公報
【特許文献9】特開平10−270277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、成形品の生産現場においては、生産タクトを短くし、マグネットピース70の生産量を多くする目的で、キャビティ65において溶融樹脂が完全に冷却固化しない状態で型開きを行い、イジェクタ69を突き出して金型からマグネットピース70を取り出すことが一般に行われている。このため、図13に示すように、マグネットピース70には、イジェクタ69の跡75が付くという問題がある。
【0011】
このようにマグネットピース70にイジェクタ69の跡75が付くと、跡75の近傍の磁性樹脂材料の密度が他の部分とは異なるため、跡75の近傍における磁界に乱れが生じるという問題がある。
【0012】
また、跡75の周囲が、他の部分と比較して若干盛り上がるので、マグネットピース70をシャフト52の周面に貼り合わせた場合に、跡75の部分がシャフト52から浮くという問題がある。
【0013】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであって、イジェクタの跡が無い長尺成形品を製造する方法と、長尺成形品用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(第1発明)
第1発明は、可動型および固定型を組み合わせることにより、長尺なキャビティと、このキャビティの長手方向の一端にゲートを介して連通したランナーと、このキャビティの長手方向の他端に連通した樹脂溜まり部とが形成された長尺成形品用金型に関するものである。
【0015】
ここで、連通とは、隔絶された2つの空間が通路を介して連続状態になっていることをいう。つまり、本第1発明に係る長尺成形品用金型は、キャビティの一端とランナーがゲートを介してつながっており、キャビティの他端と樹脂溜まり部がつながっているものである。
【0016】
そして、本第1発明に係る長尺成形品用金型は、可動型側のランナーおよび樹脂溜まり部にイジェクタが設けられており、長尺成形品が成形されるキャビティにイジェクタが設けられていない。このため、可動型を固定型から離すように移動させて型開きした後、ランナーおよび樹脂溜まり部の中の溶融樹脂が冷却固化して形成された成形物を、イジェクタにより突き出すことにより、可動型側のキャビティ中の溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品を可動型から取り出すことを特徴とするものである。
【0017】
ここで、成形物とは、ランナーおよび樹脂溜まり部の中で溶融樹脂が冷却固化して成形されるものを総称し、キャビティ中で溶融樹脂が冷却固化して成形される長尺成形品を除くものである。また、ゲートとは、キャビティ内に溶融樹脂を注入する口をいう。
【0018】
かかる構成により、長尺成形品は、イジェクタが当たることが無いので、イジェクタの跡が無い長尺成形品を製造することができる。
このため、長尺成形品がマグネットピースの場合、当該マグネットピースをシャフトに対して浮くことが無く(シャフトとマグネットピースの間に隙間無く)貼り合わせることができる。
さらに詳述すると、キャビティに突き出し可能にイジェクタを設けると、イジェクタの出入りにより、可動型のイジェクタとの接触部分が摩耗する。この摩耗箇所に溶融樹脂が入り込み、長尺成形品にバリが発生する。しかし、本第1発明に係る長尺成形品用金型は、そもそもキャビティにイジェクタが存在しないので、長尺成形品にバリが発生することがない。
【0019】
また、長尺成形品にイジェクタの跡が無いので、長尺成形品がマグネットピースである場合、イジェクタ跡の近傍に磁界の乱れがなく、表面(円弧面)に発生する磁界が長手方向に渡って安定したマグネットピースを提供できる。
【0020】
(第2発明)
第2発明は、非磁性材料(非磁性鋼)からなる可動型および固定型を組み合わせることにより、長尺なキャビティと、このキャビティの長手方向の一端にゲートを介して連通したランナーと、このキャビティの長手方向の他端に連通した樹脂溜まり部とが形成され、固定型にキャビティ中の溶融樹脂の磁性粉を配向着磁する配向ヨークが配設され、可動型に、溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品を可動型から取り出すイジェクタが配設された長尺成形品用金型に関するものである。
【0021】
そして、可動型側のランナーおよび樹脂溜まり部にイジェクタが設けられ、ランナーおよび樹脂溜まり部の溶融樹脂が冷却固化した成形物を、イジェクタにより突き出すことにより、キャビティ中の溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品を可動型から取り出すことを特徴とする。
【0022】
ここで、成形物とは、ランナーおよび樹脂溜まり部の中で溶融樹脂が冷却固化して成形されたものを総称し、キャビティ中で溶融樹脂が冷却固化して成形される長尺成形品を除くものである。
【0023】
かかる構成により、前記した第1発明の効果を得ることができる。
また、可動型と固定型の材質が共に非磁性鋼であるため、磁化したマグネットピース等の長尺成形品は、可動型または固定型に磁力によって吸着することがなく、ランナーおよび樹脂溜まり部にあるイジェクタで金型から長尺成形品を取り出すことができる。つまり、長尺成形品が磁石であっても、キャビティにイジェクタを設けることなく、容易に長尺成形品を金型から取り出すことができる。
【0024】
(第3発明)
第3発明は、第1発明または第2発明に記載の長尺成形品用金型において、可動型側または固定型側のキャビティにおけるゲート近傍に、キャビティに突出した突出部を設け、樹脂溜まり部の断面積を、キャビティの長手方向の他端に向かって除々に大きくしたものである。
【0025】
かかる構成により、第1発明または第2発明の効果を奏するのみならず、イジェクタにより成形物を突き出した際、可動型から成形物と共に長尺成形品を確実に突き出すことができるという効果を奏する。
【0026】
かかる第3発明の効果について、より詳細に説明する。すなわち、キャビティに射出された溶融樹脂が冷却固化して長尺成形品が形成される際、キャビティは長尺であるため、キャビティ中の長尺成形品は長手方向に大きく収縮する。そして、ゲートの断面積は長尺成形品の断面積よりも非常に小さいので、長尺成形品の収縮により、キャビティの長手方向の一端(長尺成形品とランナーが繋がっているゲートに位置する部分)において、長尺成形品とランナーが分離する場合がある。
【0027】
尚、キャビティの長手方向の他端の樹脂溜まり部は、その断面積がキャビティの長手方向の他端に向かって除々に大きくなっているので、長尺成形品が当該他端において収縮しても、樹脂溜まり部の溶融樹脂が冷却固化した成形物と長尺成形品が分離することは無い。
【0028】
この場合、可動型においてランナーをイジェクタにより突き出しても、長尺成形品とランナーが分離しているので、長尺成形品におけるゲート側の一端は可動型側のキャビティに残ったままとなり、イジェクタにより長尺成形品を突き出すことができないという問題がある。
【0029】
しかし、前記した第3発明の構成を採用することにより、長尺成形品の長手方向のゲート側(一端側)において、長尺成形品中に突起が入り込んでいるので、長尺成形品はゲートから離れる向きに収縮できない。このため、長尺成形品の長手方向の収縮はゲートの無い他端側(反ゲート側)において発生するので、長尺成形品とランナーがゲートが位置する部分において分離することが無く、成形物をイジェクタにより付き出すことにより、成形物と共に、確実に長尺成形品を突き出すことができる。
【0030】
(第4発明)
第4発明に係る長尺成形品の製造方法は、可動型および固定型を組み合わせることにより、長尺なキャビティと、このキャビティの長手方向の一端にゲートを介して連通したランナーと、このキャビティの長手方向の他端に連通した樹脂溜まり部とが形成された長尺成形品用金型を準備し、この長尺成形品用金型のランナーからキャビティおよび樹脂溜まり部に溶融樹脂を射出し、可動型および固定型を冷却して溶融樹脂が冷却固化した後、可動型を固定型に対して相対的に移動させて型開きし、ランナーおよび樹脂溜まり部の溶融樹脂が冷却固化した成形物を、可動型に設けられたイジェクタにより突き出すことにより、キャビティにおける溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品を可動型から取り出し、その後、成形物をカットするものである。
【0031】
かかる構成により、イジェクタの跡が無い長尺成形品を製造することができる。
このため、長尺成形品がマグネットピースの場合、当該マグネットピースをシャフトに対して浮くことが無く(シャフトとマグネットピースの間に隙間無く)貼り合わせる(貼り付ける)ことができる。
さらに詳述すると、キャビティに突き出し可能にイジェクタを設けると、イジェクタの出入りにより、可動型のイジェクタとの接触部分が摩耗する。この摩耗箇所に溶融樹脂が入り込み、長尺成形品にバリが発生する。しかし、本第1発明に係る長尺成形品用金型は、そもそもキャビティにイジェクタが存在しないので、長尺成形品にバリが発生することがない。
【0032】
また、長尺成形品にイジェクタの跡が無いので、長尺成形品がマグネットピースである場合、イジェクタ跡の近傍に磁界の乱れがなく、表面(円弧面)に発生する磁界が長手方向に渡って安定したマグネットピースを提供できる。
【0033】
(第5発明)
第5発明に係る長尺成形品の製造方法は、非磁性材料からなる可動型および固定型を組み合わせることにより、長尺なキャビティと、このキャビティの長手方向の一端にゲートを介して連通したランナーと、このキャビティの長手方向の他端に連通した樹脂溜まり部とが形成され、固定型に、キャビティ中の溶融樹脂の磁性粉を配向着磁する配向ヨークが配設され、可動型に、溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品を可動型から取り出すイジェクタが配設された長尺成形品用金型を準備し、この長尺成形品用金型のランナーからキャビティおよび樹脂溜まり部に、配向ヨークにより配向着磁させながら溶融樹脂を射出し、可動型および固定型を冷却して溶融樹脂が冷却固化した後、可動型を移動させて型開きし、ランナーおよび樹脂溜まり部の溶融樹脂が冷却固化した成形物を、可動型に設けられたイジェクタにより突き出すことにより、キャビティの溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品を可動型から取り出し、成形物をカットするものである。
【0034】
配向ヨークは、電流を流している間は磁力を発生するものであるため、型開きをする際は、配向ヨークに流す電流は切るのが望ましい。
【0035】
かかる構成により、前記した第3発明の効果のみならず、磁化したマグネットピース等の長尺成形品は、可動型または固定型に磁力によって吸着することがなく金型から取り出すことができる。
【0036】
(第6発明)
第6発明は、第4発明または第5発明に記載の長尺成形品の製造方法において、長尺成形品用金型は、さらに、可動型側または固定型側のキャビティにおけるゲート近傍に、キャビティに突出した突出部を設け、樹脂溜まり部の断面積を、キャビティの長手方向の他端に向かって除々に大きくしたものである。
【0037】
かかる構成により、第4発明または第5発明の効果を奏するのみならず、イジェクタにより成形物を突き出した際、可動型から成形物と共に長尺成形品を確実に突き出すことができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る長尺成形品用金型および長尺成形品の製造方法により、イジェクタの跡がない高品質な長尺成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る長尺成形品用金型の斜視図
【図2】固定型の斜視図
【図3】可動型の斜視図
【図4】長尺成形品用金型の断面図
【図5】長尺成形品の斜視図
【図6】マグネットロールの斜視図
【図7】現像剤担持体の断面図
【図8】従来のマグネットロールの側面図
【図9】従来のマグネットロールの斜視図
【図10】従来の金型の断面図
【図11】従来の金型の断面図
【図12】従来の金型の断面図
【図13】従来のマグネットピース
【図14】本発明に係る長尺成形品用金型の斜視図
【図15】固定型の斜視図
【図16】可動型の斜視図
【図17】長尺成形品用金型の断面図
【図18】可動型のキャビティの他端近傍の平面図(部分拡大図)
【図19】図18の側部断面図(部分拡大図)
【図20】可動型のキャビティの一端近傍の側部断面図(部分拡大図)
【図21】長尺成形品用金型の断面図
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
尚、以下の実施例は、長尺成形品として、マグネットロールで使用されるマグネットピースを例示して説明するが、長尺成形品をマグネットピースに限定して解釈する趣旨ではない。
また、以下の実施例は、マグネットロールに使われる複数のマグネットピースの内の特定の1つのマグネットピースの成形用金型を取り上げて説明するが、他のマグネットピースの成形用金型も同様に構成されるものである。
【実施例1】
【0041】
本発明に係る長尺成形品用金型を図1〜図4を用いて説明する。
図4は、可動型と固定型を組み合わせた長尺成形品用金型を側面から見た場合の断面図である。
〔長尺成形品用金型〕
図1および図4に示すように、本発明に係る長尺成形品用金型21は、可動型13と固定型14とからなる。これら可動型13と固定型14にはそれぞれ可動型側キャビティ面19と固定型側キャビティ面20が形成されており、可動型13と固定型14を組み合わせることにより、キャビティ30が形成される。
【0042】
また、可動型13には可動型側のランナー面22と樹脂溜まり面23が形成され、固定型14には固定型側のランナー面24と樹脂溜まり面25が形成されており、可動型13と固定型14を組み合わせることにより、図4に示すように、樹脂溜まり部26とランナー18が形成される。
【0043】
(固定型)
固定型14はステンレス等の非磁性材料(非磁性鋼)を切削加工して製造され、図1および図4に示すように、固定型14には長尺成形品としてのマグネットピース3を配向着磁するための配向ヨーク17が設けられている。
(可動型)
可動型13はステンレス等の非磁性鋼を切削加工して製造され、図1および図2に示すように、可動型13には長尺成形品としてのマグネットピース3を可動型側のキャビティから取り出すためのイジェクタ10が2本設けられている。このイジェクタ10は、1本が可動型側の樹脂溜まり部に、もう1本が可動型側のランナーに設けられているので、可動型側のキャビティからマグネットピース3を取り出すに際し、イジェクタ10が直接マグネットピース3を突き出すものではない。マグネットピース3は、その長手方向の一端に連結するランナーおよび他端に連結する樹脂溜まり、すなわち成形物がイジェクタ10により突き出されることにより、可動型側のキャビティから取り出される。
【0044】
〔長尺成形品の製造方法〕
まず、前記した可動型13および固定型14のパーティングライン面12同士を接触させて組み合わせた長尺成形品用金型21を準備し、そのランナー18からキャビティ30および樹脂溜まり部26に、配向ヨークにより配向着磁させながら磁性粉(磁石材料粉)を有する流動状態の溶融樹脂材料を射出(注入)する。
【0045】
そして、キャビティ30および樹脂溜まり部26を溶融樹脂材料で満たした後、可動型13および固定型14のそれぞれに設けられた図示しない冷却水流路に冷却水を流して、可動型13および固定型14を冷却する。そうすると、長尺成形品用金型21のランナー18、キャビティ30および樹脂溜まり部26の内部にある溶融樹脂材料が冷却固化する。
【0046】
その後、可動型13を固定型14から離すように移動させて型開きを行う。この時、冷却固化した樹脂材料(長尺成形品3と成形物23が一体になったもの)は、可動型13側のキャビティにある。このため、図3に示すように、可動型13に設けた2本のイジェクタ10により成形物23を突き出すことにより、可動型13から冷却固化した長尺成形品3を取り出すことができる。
【0047】
長尺成形品としてのマグネットピース3の長手方向の両端には、ランナー18および樹脂溜まり部26にあった溶融樹脂材料が冷却固化した成形物23が付いているので、この成形物23をニッパ等を用いてカットする(取り除く)ことにより、マグネットピース3を得ることができる。
【0048】
かかる長尺成形品用金型21を用いることにより、イジェクタ10は、製品としての長尺成形品に接触することが無いので、製品にイジェクタ10の跡が付かない。
【0049】
また、長尺成形品がマグネットピース3のように、磁力を有する磁性体の場合、可動型13および固定型14は、非磁性綱でできているため、マグネットピース3が可動型13または固定型14に付くことが無い。このため、可動型側のキャビティにイジェクタを設けなくても容易にマグネットピース3を取り出すことができる。
【0050】
本発明に係る長尺成形品用金型により製造された長尺成形品としてのマグネットピース3〜8は、シャフト2の周面に接着剤で固定してマグネットロール1を構成した後、図7に示すように、シャフト2の両端部をベアリング34により支持したフランジ33と、フランジ33を両端で固定した現像スリーブ37とを用いて現像剤担持体31として使用できる。
【実施例2】
【0051】
他の実施例を図14〜図20を用いて説明する。
尚、説明を分かりやすくするため、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と同一の部分は、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
〔長尺成形品用金型〕
図14および図17に示すように、実施例2に係る長尺成形品用金型73は、可動型71および固定型72を組み合わせることにより、長尺なキャビティ30と、キャビティ30の長手方向の一端80にゲート38を介して連通したランナー18と、キャビティ30の長手方向の他端81に連通した樹脂溜まり部77とを形成したものである。
【0053】
そして、長尺成形品用金型73は、可動型71側のランナー18および樹脂溜まり部77にイジェクタ10が設けられており、ランナー18および樹脂溜まり部77の溶融樹脂が冷却固化した成形物を、イジェクタ10により突き出すことにより、可動型71側のキャビティ30中の溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品が可動型71から取り出される。
【0054】
また、実施例2に係る長尺成形品用金型73は、図14、図16および図20に示すように、可動型71側のキャビティ19におけるゲート38の近傍に、キャビティ30(19)に突出した突出部78を設けると共に、樹脂溜まり部77の断面積を、キャビティ30の長手方向の他端81に向かって除々に大きくしたものである。
【0055】
実施例1との主な相違点は、突出部78および樹脂溜まり部77であるため、これらについて詳細に説明する。
(突出部78)
図20に示すように、突出部78は、可動型71側のキャビティ19に突出するように設けられている。この突出部78は、可動型71側のキャビティ19内の長尺成形品が成形物と共にイジェクタ10により可動型71の型開き方向に突き出された際に、長尺成形品が突出部78からスムーズに抜けるように可動型71の型開き方向に対してアンダーカットにならないように可動型71に形成されている。ここで、アンダーカットとは、長尺成形品を射出成形金型から取り出す際に型開き方向に対して引っ掛かりとなる部分をいう。
【0056】
本実施例2においては、突出部78として、可動型71側のキャビティ19のキャビティ面の底面に、直径1.5mm(図20のF=1.5mm)、高さ1.5mm(図20のE=1.5mm)のピンを突出させた。尚、図20におけるG寸法は、長尺成形品の熱収縮に負けない肉厚であれば良く、本実施例2においては、1.5mmとした。尚、突起部78の位置は、長尺成形品がマグネットピースである場合は、キャビティ30の長手方向の一端80から10mm以内の範囲に設けることが望ましい。かかる範囲であれば、長手方向の磁力均一性に影響が出にくいからである。
【0057】
(樹脂溜まり部77)
樹脂溜まり部77は、図14〜図17に示すように、可動型71側の樹脂溜まり部74と、固定型72側の樹脂溜まり部75を型閉じにより合わせることにより形成される。これら樹脂溜まり部74および75の構成は同一であるため、樹脂溜まり部74について詳細に説明する。
【0058】
図18および図19(図18のA−A断面図)に示すように、樹脂溜まり部74は、可動型71側のキャビティ19の他端81に向かって徐々に断面積が大きくなるように構成されている。より詳細に説明すると、図18および図19において樹脂溜まり部74の末端82から、キャビティ19の他端81に向かって、幅寸法がB<C<D、高さ寸法がE<F<Gとなるようになっている。尚、BとE、CとF、DとGの位置が対応している。
【0059】
このように構成することにより、キャビティ30および樹脂溜まり部77の内部に満たされた溶融樹脂が冷却固化して長尺成形品が形成される際、キャビティ30の一端80側においては長尺成形品に突出部78が突入しているので、長尺成形品の一端80側は、キャビティ30の他端81側に向かって収縮できない。
【0060】
しかし、長尺成形品の他端81側は、樹脂溜まり部77が前記したように構成されているので、樹脂溜まり部77の内部で形成された成形物および当該成形物に接続した長尺成形品の他端81側は、キャビティ30の一端80側に向かって自由に収縮できる。
【0061】
このため、キャビティ30内の溶融樹脂が冷却固化し、長尺成形品が形成される際の長尺成形品の収縮は専らキャビティ30の他端81側で発生するので、長尺成形品とランナーがゲート38が位置する部分において分離(切断)されることがなく、イジェクタ10により成形物を突き出すことにより長尺成形品も可動型71から安定して突き出すことができる。
【0062】
〔長尺成形品の製造方法〕
次に、前記した長尺成形品用金型73を用いて長尺成形品を成形する方法について説明する。まず、前記した可動型71および固定型72のパーティングライン面12同士を接触させて組み合わせた長尺成形品用金型73を準備し、そのランナー18からキャビティ30および樹脂溜まり部77に、配向ヨークにより配向着磁させながら磁性粉(磁石材料粉)を有する流動状態の溶融樹脂材料を射出(注入)する。
【0063】
そして、キャビティ30および樹脂溜まり部77を溶融樹脂材料で満たした後、可動型71および固定型72のそれぞれに設けられた図示しない冷却水流路に冷却水を流して、可動型71および固定型72を冷却する。そうすると、長尺成形品用金型73のランナー18、キャビティ30および樹脂溜まり部77の内部にある溶融樹脂材料が冷却固化し、長尺成形品が形成される。
【0064】
この際、前記したように、ランナー18の内部で形成される成形物と長尺成形品は、長尺成形品の収縮により分離されることが無い。
その後、可動型71を固定型72から相対的に移動させて型開きを行う。この時、冷却固化した樹脂材料(長尺成形品と成形物76が一体になったもの)は、可動型71側のキャビティ19にある。このため、図16に示すように、可動型71に設けた2本のイジェクタ10により成形物76を突き出すことにより、可動型71から冷却固化した長尺成形品3を取り出すことができる。
【0065】
長尺成形品としてのマグネットピース3の長手方向の両端には、ランナー18および樹脂溜まり部77にあった溶融樹脂材料が冷却固化した成形物76が付いているので、この成形物76をニッパ等を用いてカットする(取り除く)ことにより、マグネットピース3を得ることができる。
【0066】
かかる長尺成形品用金型73を用いることにより、イジェクタ10は、製品としての長尺成形品に接触することが無いので、製品にイジェクタ10の跡が付かない。
【0067】
また、長尺成形品がマグネットピース3のように、磁力を有する磁性体の場合、可動型71および固定型72は、非磁性綱でできているため、マグネットピース3が可動型71または固定型72に付くことが無い。このため、可動型71側のキャビティ19にイジェクタ10を設けなくても容易にマグネットピース3を取り出すことができる。
【0068】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載から当事者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更、削除および付加が可能である。
【0069】
例えば、前記した実施例においては、イジェクタがランナーおよび樹脂溜まり部に各1品ずつの計2本の場合を示したが、少なくともランナーおよび樹脂溜まり部に各1品ずつあり、かつ、製品が成形されるキャビティにイジェクタが無ければ良く、イジェクタの合計本数は3本以上であっても良い。
【0070】
また、図17および図20に示した突出部78は、図21の符号79に示したように、固定型91側に付いていても良い。さらに、突出部は、ピン形状でなくても良く、前記したように、アンダーカットにならなければ平板形状でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、画像形成装置に使用されるマグネットピース用金型等に適用される。
【符号の説明】
【0072】
10 イジェクタ
12 パーティングライン面
13 可動型
14 固定型
17 配向ヨーク
18 ランナー
19 可動型側キャビティ面
20 固定型側キャビティ面
21 長尺成形品用金型
23 成形物
26 樹脂溜まり部
30 キャビティ
38 ゲ−ト
78 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動型および固定型を組み合わせることにより、長尺なキャビティと、該キャビティの長手方向の一端にゲートを介して連通したランナーと、該キャビティの長手方向の他端に連通した樹脂溜まり部とを形成した長尺成形品用金型において、
前記可動型側の前記ランナーおよび前記樹脂溜まり部にイジェクタを設け、
前記ランナーおよび前記樹脂溜まり部の溶融樹脂が冷却固化した成形物を、前記イジェクタにより突き出すことにより、前記可動型側のキャビティ中の前記溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品を前記可動型から取り出すことを特徴とする長尺成形品用金型
【請求項2】
非磁性材料からなる可動型および固定型を組み合わせることにより、長尺なキャビティと、該キャビティの長手方向の一端にゲートを介して連通したランナーと、該キャビティの長手方向の他端に連通した樹脂溜まり部とを形成し、
前記固定型に、前記キャビティ中の溶融樹脂の磁性粉を配向着磁する配向ヨークを配設し、
前記可動型に、前記溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品を前記可動型から取り出すイジェクタを配設した長尺成形品用金型において、
前記可動型側の前記ランナーおよび前記樹脂溜まり部にイジェクタを設け、
前記ランナーおよび前記樹脂溜まり部の溶融樹脂が冷却固化した成形物を、前記イジェクタにより突き出すことにより、前記キャビティ中の前記溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品を前記可動型から取り出すことを特徴とする長尺成形品用金型
【請求項3】
前記可動型側または前記固定型側の前記キャビティにおける前記ゲート近傍に、前記キャビティに突出した突出部を設け、
前記樹脂溜まり部の断面積を、前記キャビティの長手方向の前記他端に向かって除々に大きくした請求項1または2に記載の長尺成形品用金型
【請求項4】
可動型および固定型を組み合わせることにより、長尺なキャビティと、該キャビティの長手方向の一端にゲートを介して連通したランナーと、該キャビティの長手方向の他端に連通した樹脂溜まり部とが形成された長尺成形品用金型を準備し、
該長尺成形品用金型の前記ランナーから前記キャビティおよび前記樹脂溜まり部に溶融樹脂を射出し、
前記可動型および前記固定型を冷却して前記溶融樹脂が冷却固化した後、前記可動型を移動させて型開きし、
前記ランナーおよび前記樹脂溜まり部の溶融樹脂が冷却固化した成形物を、前記可動型に設けられたイジェクタにより突き出すことにより、前記キャビティの溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品を前記可動型から取り出し、
前記成形物をカットすることを特徴とする長尺成形品の製造方法
【請求項5】
非磁性材料からなる可動型および固定型を組み合わせることにより、長尺なキャビティと、該キャビティの長手方向の一端にゲートを介して連通したランナーと、該キャビティの長手方向の他端に連通した樹脂溜まり部とが形成され、
前記固定型に、前記キャビティ中の溶融樹脂の磁性粉を配向着磁する配向ヨークが配設され、
前記可動型に、前記溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品を前記可動型から取り出すイジェクタが配設された長尺成形品用金型を準備し、
該長尺成形品用金型の前記ランナーから前記キャビティおよび前記樹脂溜まり部に、前記配向ヨークにより配向着磁させながら溶融樹脂を射出し、
前記可動型および前記固定型を冷却して前記溶融樹脂が冷却固化した後、前記可動型を移動させて型開きし、
前記ランナーおよび前記樹脂溜まり部の溶融樹脂が冷却固化した成形物を、前記可動型に設けられたイジェクタにより突き出すことにより、前記キャビティの溶融樹脂が冷却固化した長尺成形品を前記可動型から取り出し、
前記成形物をカットすることを特徴とする長尺成形品の製造方法
【請求項6】
前記長尺成形品用金型は、さらに、前記可動型側または前記固定型側の前記キャビティにおける前記ゲート近傍に、前記キャビティに突出した突出部を設け、
前記樹脂溜まり部の断面積を、前記キャビティの長手方向の前記他端に向かって除々に大きくした請求項4または5に記載の長尺成形品の製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−221691(P2010−221691A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196391(P2009−196391)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(310010793)富士ゼロックスマニュファクチュアリング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】