説明

長尺物用取付け具

【課題】ワンタッチ操作をもって長尺物をガタツキの少ない状態で挾持保持することができるものでありながら、構造の簡素化と製造コストの低廉化を図ることができ、しかも、長尺物の押し込み時の操作性も改善する。
【解決手段】取付け基台1に対して押え体2が、無負荷状態では挾持解除姿勢に開き付勢された状態で設けられ、押え体2を挾持姿勢に揺動操作したとき当該押え体2を取付け基台1に係止固定する係止固定手段15が設けられ、押え体2の揺動基端側部位には、取付け基台1の受け面1aと押え体2の押え面2aとの間に突出して、長尺物Pを押え面2aとの間で受止め可能な受止め凹部Sを形成する補助受止め体16が設けられ、補助受止め体16が、受け面1aとの当接に連れて当該受け面1aに沿う姿勢に弾性変形可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用冷媒管や給湯管、ケーブル等の長尺物を壁面や床面、天井面或いはそれらに固設された取付けブラケット等の固定部に取り付ける長尺物用取付け具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の長尺物用取付け具では、例えば、下記特許文献1等に開示されているように、長尺物の外周面の一部を脱着自在に受け止め可能な凹状の受け面を備えた上向きコの字状の取付け基台に、当該取付け基台の上側開口を横断する方向に突出する作動杆が、受け面側に押し込み操作される長尺物との当接に連れて受け面の周方向一端側を支点として下方側に揺動可能に設けられている。
【0003】
前記作動杆には、受け面との間で長尺物を挾持保持するための弾性変形可能な弾性押え杆を備えた押えカバー体が、無負荷状態では起立した挾持解除姿勢に開き付勢されているとともに、前記取付け基台における受け面の周方向両側部を構成する両側壁部のうち、一方の側壁部と作動杆の先端部との対応する部位には、受け面側に押し込み操作される長尺物との当接に連れて作動杆が一方の側壁部の内面に沿う退避姿勢に揺動したとき、当該作動杆を退避姿勢で係止固定する係止固定手段が設けられている。
【0004】
前記作動杆が退避姿勢で係止固定された状態では、当該作動杆と一体揺動する押えカバー体が取付け基台の上側開口を横断する閉じ姿勢となり、取付け基台の受け面に受止められた長尺物が押えカバー体の弾性押え杆で挾持保持されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−2366号公報(図1〜図5)
【特許文献2】特開平7−310864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の長尺物用取付け具では、取付け基台の受け面に向って長尺物を押し込み操作すると、取付け基台の上側開口を横断する作動杆が長尺物との当接に伴って下方に揺動して長尺物の装着通路を開放するとともに、この作動杆と一体揺動する押えカバー体が取付け基台の上側開口を横断する閉じ姿勢となり、取付け基台の受け面に受止められた長尺物を押えカバー体の弾性押え杆で挾持保持すると同時に、係止固定手段によって作動杆が一方の側壁部の内面に沿う退避姿勢で係止固定され、押えカバー体が閉じ姿勢に維持される。
【0007】
そのため、取付け基台の受け面に向って長尺物を押し込み操作するだけのワンタッチ操作をもって長尺物を挾持保持することができる。しかも、例えば、特許文献2等に開示されているように、受け面を備えた取付け基台の両側壁部の上部に、受け面に受止められた長尺物を受け面側に押し付けた状態で挾持保持する一対の弾性挾持体を連設して、取付け基台の受け面に向って押し込み操作される長尺物との当接に連れて、両弾性挾持体をそれの弾性復元力に抗して長尺物が通過可能な間隔にまで強制的に押し開き操作する場合に比較して、長尺物の押し込み操作力の軽減化を図ることができるとともに、長尺物の表面の損傷を抑制することができる。
【0008】
反面、前記取付け基台の受け面側へ押し込み操作される長尺物との当接に伴って、起立状態で開き付勢されている押えカバー体を取付け基台の上側開口を横断する閉じ姿勢に揺動作動させるためだけの作動杆と、取付け基台の受け面に受止められた長尺物を挾持保持する押えカバー体側の弾性押え杆とが必要であるため、長尺物用取付け具の構造が複雑化するとともに、製造コストの高騰化を招来し易い。
【0009】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、取付け基台の受け面側に長尺物を押し込み操作するだけのワンタッチ操作をもって長尺物をガタツキのない状態で挾持保持することができるものでありながら、構造の簡素化と製造コストの低廉化を図ることができ、しかも、長尺物の押し込み時の操作性も改善することのできる長尺物用取付け具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の特徴構成は、長尺物の外周面の一部を脱着自在に受け止め可能な凹状の受け面を備えた取付け基台に、前記受け面との間で長尺物を挾持保持するための押え面を備えた押え体が、前記受け面の周方向一端側を支点として揺動開閉可能で、且つ、無負荷状態では挾持解除姿勢に開き付勢された状態で設けられているとともに、前記取付け基台と押え体との相対向する部位には、当該押え体を挾持姿勢で取付け基台に係止固定する係止固定手段が設けられている長尺物用取付け具であって、
前記押え体の揺動基端側部位には、前記受け面と挾持解除姿勢にある前記押え体の押え面との間に突出して、長尺物を前記押え面との間で受止め可能な受止め凹部を形成する補助受止め体が、前記押え体と一体揺動する状態で設けられているとともに、前記補助受止め体が、前記押え体の挾持姿勢への揺動による前記受け面との当接に連れて当該受け面に沿う姿勢に弾性変形可能に構成されている点にある。
【0011】
上記構成によれば、長尺物の押し込み操作前の無負荷状態では、取付け基台に設けられた押え体が挾持解除姿勢に開き付勢され、且つ、この押え体の揺動基端側部位に一体揺動状態で設けられた補助受止め体が、取付け基台の受け面と挾持解除姿勢にある押え体の押え面との間に突出して、この補助受止め体と押え面との間で長尺物を受止め可能な受止め凹部を形成している。
【0012】
そのため、前記補助受止め体と押え体の押え面との間に形成されている受止め凹部に向って長尺物を押し込み操作すると、この受止め凹部内に長尺物を取り込んだ状態で補助受止め体と押え体とが取付け基台の受け面側に一体揺動し、補助受止め体が受け面との当接に連れて当該受け面に沿う姿勢に弾性変形し、この補助受止め体及び取付け基台の受け面と押え体の押え面との間で長尺物が挾持保持されるとともに、前記係止固定手段によって押え体が挾持姿勢で取付け基台に係止固定される。
【0013】
それ故に、長尺物を取付け基台の受け面に向って押し込み操作するだけで長尺物をガタツキの少ない状態で挾持保持することができるとともに、前記補助受止め体が押え体の押え面との間で長尺物を挾持保持するための弾性付勢体として機能するから、従来の長尺物用取付け具の主要構成の一つである弾性押え杆を省略することができる。
【0014】
したがって、前記受止め凹部に押し込まれた長尺物をそのまま取付け基台の受け面側に連続して押し込み操作するだけのワンタッチ操作をもって長尺物をガタツキの少ない状態で挾持保持することができるとともに、構成部材の削減に伴う構造の簡素化と製造コストの低廉化とを図ることができ、しかも、長尺物の押し込み時の操作性も同時に改善することができる。
【0015】
本発明による第2の特徴構成は、前記補助受止め体が、前記受け面と挾持解除姿勢にある前記押え体の押え面との間において当該押え面の仮想延長線から次第に離れる状態で突出形成されている点にある。
【0016】
上記構成によれば、前記補助受止め体の先端と押え体の先端との間に形成される開口を大きくすることができるから、補助受止め体と押え体の押え面との間に形成されている受止め凹部に向っての長尺物の押し込み操作を容易に行うことができる。
【0017】
本発明による第3の特徴構成は、前記補助受止め体が、前記押え体の挾持姿勢への揺動途中で取付け基台における受け面の周方向他端側部位に揺動方向から当接可能な長さで、且つ、その当接する受け面の周方向他端側部位を弾性変形しながら通過可能な長さに構成されている点にある。
【0018】
上記構成によれば、長尺物用取付け具の梱包時や長尺物の取付け前の準備作業工程時等において、押え体に挾持姿勢への意図しない外力が加えられても、この押え体の挾持姿勢への揺動途中において、補助受止め体の先端部が取付け基台における受け面の周方向他端側部位に揺動方向から当接することで制動力が働き、しかも、この補助受止め体の先端部が取付け基台の当接部位を弾性変形しながら通過しなければ前記係止固定手段が作動する挾持姿勢(挾持位置)に至らないから、押え体の意図しない挾持姿勢への揺動に起因する係止固定手段の係止固定作動を抑制することができる。
【0019】
本発明による第4の特徴構成は、前記取付け基台の受け面と前記補助受止め体との相対向する部位には、前記補助受止め体を受け面に沿って弾性変形された挾持姿勢で係止固定する第2係止固定手段が設けられている点にある。
【0020】
上記構成によれば、前記取付け基台における受け面の周方向一端側部位に対して前記押え体及び補助受止め体を一体揺動自在に支持する揺動支持部が破断しても、前記取付け基台と押え体との相対向する部位に設けられた係止固定手段による係合連結機能と、前記取付け基台の受け面と前記補助受止め体との相対向する部位に設けられた第2係止固定手段による係合連結機能とにより、押え体及び補助受止め体を挾持姿勢又はそれに近い姿勢に維持することができるから、使用形態が天井付け又は壁付けであっても、長尺物の脱落を防止することができる。
【0021】
本発明による第5の特徴構成は、前記取付け基台の受け面には、前記補助受止め体の少なくとも先端部が前記受け面と面一又は略面一になる状態で入り込む窪み部が形成されている点にある。
【0022】
上記構成によれば、前記補助受止め体と押え体の押え面との間に形成されている受止め凹部に向って長尺物を押し込み操作すると、前記受止め凹部内に長尺物を取り込んだ状態で補助受止め体と押え体とが取付け基台の受け面側に一体揺動し、前記補助受止め体が受け面との当接に連れて当該受け面に沿う姿勢に弾性変形するが、このとき、前記補助受止め体の少なくとも先端部が受け面に形成されている窪み部に入り込んで、当該補助受止め体の少なくとも先端部の内側面と取付け基台の受け面とが面一又は略面一になるから、挾持固定される長尺物の外周面の損傷を抑制することができる。
【0023】
本発明による第6の特徴構成は、前記取付け基台の受け面と補助受止め体との各長尺物長手方向での幅が同一又は略同一に構成されているとともに、前記取付け基台の受け面には、取付け基台を固定部に取付ける取付け部材が挿通される第1取付け孔と、これに挿通された取付け部材の頭部が入り込む操作凹部とが形成されている点にある。
【0024】
上記構成によれば、前記取付け基台の受け面に形成された操作凹部と第1取付け孔とに挿通されるネジや釘等の取付け部材によって取付け基台を固定部に取付けることができるとともに、前記補助受止め体が受け面との当接に連れて当該受け面に沿う姿勢に弾性変形したとき、当該補助受止め体をもって操作凹部の受け面側の開口を閉止又は略閉止することができるから、挾持保持される長尺物の一部が操作凹部の受け面側開口に押し込まれることに起因する外周面の損傷を抑制することができる。
【0025】
本発明による第7の特徴構成は、前記取付け基台における長尺物長手方向の一端部には、取付け基台を固定部に取付ける取付け部材が挿通される第2取付け孔を備えた取付け片が長尺物長手方向に沿って突設されている点にある。
【0026】
上記構成によれば、前記取付け基台の長尺物長手方向の一端部側の広い空間において、この部位に突設された取付け片の第2取付け孔に挿通されるネジや釘等の取付け部材によって取付け基台を固定部に容易に取付けることができるとともに、前記取付け基台が固定された状態では、前記取付け片が取付け基台の受け面に挾持保持された長尺物と重合配置されるから、前記取付け片を取付け基台の一端部から突設させながらも他の取付け等に邪魔にならない状態で体裁良く取り付けることができる。
【0027】
本発明による第8の特徴構成は、前記取付け基台における受け面の周方向両側部を構成する両側壁部の付け根側には、当該両側壁部の対向方向内方側への弾性変形を許容するヒンジ部が形成されている点にある。
【0028】
上記構成によれば、前記取付け基台の両側壁部がそれの付け根側に形成されたヒンジ部を揺動支点として対向方向内方側に弾性変形することにより、両側壁部の対向面間の幅を減少することができるから、長尺物が小径側に径変化しても、長尺物の外周面の一部に密着又は近接させた状態で良好に挾持保持することができる。
【0029】
本発明による第9の特徴構成は、前記係止固定手段が、前記押え体の外周面の先端側の複数箇所に形成された係止突起と、押え体の挾持姿勢への揺動に連れて当該押え体の先端が係入移動する状態で取付け基台に設けられる係入ガイド部と、この係入ガイド部に係入する押え体の係止突起と選択的に係止可能な状態で取付け基台に設けられる係止爪と、前記係止爪を係止解除する操作体とから構成されている点にある。
【0030】
上記構成によれば、前記補助受止め体と押え体の押え面との間に形成されている受止め凹部に向って長尺物を押し込み操作すると、前記受止め凹部内に長尺物を取り込んだ状態で補助受止め体と押え体とが取付け基台の受け面側に一体揺動し、押え体の先端が取付け基台に設けられた係入ガイド部に係入し、当該押え体の係止突起と取付け基台に設けられた係止爪とが係止し、押え体が挾持姿勢で取付け基台に係止固定される。
【0031】
それ故に、前記受止め凹部を介して取付け基台の受け面側に長尺物を押し込み操作するだけのワンタッチ操作をもって長尺物をガタツキのない状態で挾持保持すると同時に、押え体を挾持姿勢で取付け基台に確実に係止固定することができる。
【0032】
しかも、前記押え体の先端側が係止固定手段を介して取付け基台に固定連結されているから、長尺物の抜け出しを強固に阻止することができるとともに、前記係止爪を押え体の複数の係止突起と選択的に係止させることにより、長尺物の径変化に対応した良好な挾持保持状態を簡単に現出することができる。
【0033】
本発明による第10の特徴構成は、前記係止固定手段が、前記押え体の外周面の先端側の複数箇所に形成された係止突起と、押え体の挾持姿勢への揺動に連れて当該押え体の先端が係入移動する状態で取付け基台に設けられる係入ガイド部と、この係入ガイド部に係入する押え体の係止突起と選択的に係止可能な状態で取付け基台に設けられる係止爪とから構成されているとともに、前記係止固定手段の係入ガイド部に対する押え体の先端側部位の係入移動に伴って押え体の係止部を取付け基台の被係止部側に近接移動させる係合強化手段が設けられている点にある。
【0034】
上記構成によれば、前記係止固定手段の係入ガイド部に対する押え体の先端側部位の係入移動に伴い、前記係合強化手段によって押え体の係止部が取付け基台の被係止部側に近接移動させられるため、押え体の係止部と取付け基台の被係止部との係合が強化され、長尺物に外力が作用しても、長尺物を挾持保持状態に維持することができる。
したがって、長尺物の押し込み時の操作性も改善しつつ長尺物を径変化に拘わらず確実、強固に挾持保持することができる。
【0035】
本発明による第11の特徴構成は、前記取付け基台における受け面の周方向他端側部位には、前記押え体が挾持姿勢に揺動されたとき、この押え体と補助受止め体との間の受止め凹部に受止められている長尺物に当接して当該長尺物を取付け基台の受け面側に押し付ける押圧手段が設けられている点にある。
【0036】
上記構成によれば、前記補助受止め体と押え体の押え面との間に形成されている受止め凹部に向って長尺物を押し込み操作すると、この受止め凹部内に長尺物を取り込んだ状態で補助受止め体と押え体とが取付け基台の受け面側に一体揺動し、補助受止め体が受け面との当接に連れて当該受け面に沿う姿勢に弾性変形し、この補助受止め体及び取付け基台の受け面と押え体の押え面との間で長尺物が挾持保持される。
このとき、取付け基台における受け面の周方向他端側部位に設けた押圧手段が押え体と補助受止め体との間の受止め凹部に受止められている長尺物に当接して、長尺物を取付け基台の受け面側に押し付けることができるので、長尺物をガタツキのない状態で挾持保持することができる。
【0037】
本発明による第12の特徴構成は、前記取付け基台の受け面に形成された前記窪み部の端面とこれに入り込んだ前記補助受止め体の先端とが周方向から係合して、前記押え体を挾持姿勢に保持可能に構成されている点にある。
【0038】
上記構成によれば、前記補助受止め体と押え体の押え面との間に形成されている受止め凹部に向って長尺物を押し込み操作して、前記補助受止め体を受け面との当接に連れて当該受け面に沿う姿勢に弾性変形させ、当該補助受止め体の少なくとも先端部を受け面に形成されている窪み部に入り込ませることにより、当該補助受止め体の少なくとも先端部の内周面と取付け基台の受け面とを面一又は略面一に構成することができるのであるが、このとき、前記補助受止め体の先端と窪み部の端面とが周方向から係合するため、前記押え体を挾持姿勢で取付け基台に仮固定することができる。
それ故に、補助受止め体の先端と窪み部の端面とが周方向から係合する仮止め機能を利用して、長尺物の挾持固定操作時における取り扱いの容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態を示す長尺物用取付け具の床面取付け時の断面図
【図2】長尺物を挾持保持したときの斜視図
【図3】長尺物用取付け具の平面図(a)、正面図(b)、側面図(c)、底面図(d)
【図4】天井面取付けの取付け具に対する適合大径の長尺物の取付け途中を示す断面図(a)と取付け完了時の断面図(b)
【図5】天井面取付けの取付け具に対する適合小径の取付け動作を示す断面図
【図6】図5における左側部位の拡大断面図(a)と右側部位の拡大断面図(b)
【図7】押え体の縮径操作時の動作を示す拡大断面図(a)と押え体の拡径操作時の動作を示す拡大断面図(b)
【図8】本発明の第2実施形態を示す長尺物用取付け具の断面図
【図9】本発明の第3実施形態を示す長尺物用取付け具の仮係止時の断面図(a)と係止固定時の断面図(b)
【図10】本発明の第4実施形態を示す長尺物用取付け具の平面図
【図11】本発明の第5実施形態を示す長尺物用取付け具の開き時の正面図
【図12】長尺物を挾持保持したときの正面図
【図13】第2係止固定手段を構成する係止溝及び第2係止爪の拡大斜視図
【図14】本発明の第6実施形態を示す長尺物用取付け具の正面図
【図15】長尺物用取付け具の側面図
【図16】長尺物用取付け具の底面図
【図17】長尺物用取付け具の断面図
【図18】第1番目〜第3番目の係止突起を係止爪に係合したときの要部の拡大断面図(a)と第2番目〜第4番目の係止突起を係止爪に係合したときの要部の拡大断面図(b)
【図19】第8番目〜第10番目の係止突起を係止爪に係合したときの要部の拡大断面図
【図20】本発明の第7実施形態を示す長尺物用取付け具の側面図
【発明を実施するための形態】
【0040】
〔第1実施形態〕
図1〜図7は、空調用冷媒管や給湯管、ケーブル等の長尺物Pを壁面や床面、天井面或いはそれらに固設された取付けブラケット等の固定部Wに取り付ける長尺物用取付け具を示し、長尺物Pの周面の一部を脱着自在に受け止め可能な凹状の略半円弧状の受け面1aを備えた取付け基台1と、前記受け面1aとの間で長尺物Pを挾持保持するための凹状の略半円弧状の押え面2aを備えた弾性変形可能な押え体2とが、前記受け面1aの周方向一端側に形成される薄肉状の第1ヒンジ部3を介して合成樹脂(例えば、ポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂)で一体成形されている。
【0041】
前記取付け基台1は、図1〜図3に示すように、当該取付け基台1を固定部Wに取付けるネジや釘等の取付け部材4が挿通される円形状の第1取付け孔5と、これに挿通された取付け部材4の頭部4Aが入り込む操作凹部6とが同芯状態で形成されている基台本体1Aの上部に、受け面1aの周方向両側部を構成する弧状の両側壁部1Bを一体形成して構成されている。
【0042】
前記第1ヒンジ部3は、前記受け面1aの周方向一端側に位置する取付け基台1の一方の側壁部1Bと押え体2の基端部との境界相当箇所の外面にV状又はU字状の第1ヒンジ形成溝7を形成することにより構成されている。
【0043】
前記取付け基台1の基台本体1Aにおける長尺物長手方向の一端部には、図3に示すように、取付け基台1を固定部Wに取付けるネジや釘等の取付け部材4が挿通される円形の第2取付け孔8を備えた取付け片9が長尺物長手方向に沿って突出する状態で一体成形されているとともに、前記取付け片9の幅方向両側縁及び幅方向の中間二箇所には、当該取付け片9の上面と基台本体1Aの一側面とにわたる三角形状の補強リブ10が一体形成されている。
【0044】
前記取付け基台1の基台本体1Aと両側壁部1Bとの境界相当箇所又はそれよりも少し両側壁部1B側に寄った部位の外面にV状又はU字状の第2ヒンジ形成溝11を形成して、前記両側壁部1Bの付け根側に、当該両側壁部1Bの対向方向内方側への弾性変形を許容する薄肉状の第2ヒンジ部12が形成されている。
【0045】
前記押え体2は、図1、図3に示すように、第1ヒンジ部3を揺動支点として取付け基台1の受け面1aに対する遠近方向に揺動開閉可能で、且つ、無負荷状態では起立した挾持解除姿勢、換言すれば、取付け基台1の受け面1aの開口中央位置を通る第1中心線Yに対して押え体2の押え面2aの開口中央位置を通る第2中心線Xが略直交又はそれに近い角度で水平方向に交差する挾持解除姿勢(開き姿勢)に維持された状態で樹脂成形されているとともに、前記取付け基台1における受け面1aの周方向他端側部位に位置する他方の側壁部1Bと前記押え体2の先端側部位との対応する部位には、押え体2を挾持姿勢に揺動操作したとき当該押え体2を挾持姿勢で取付け基台1に係止固定する係止固定手段15が係止解除操作可能に設けられている。
【0046】
前記取付け基台1の他方の側壁部1Bにおける先端の高さ寸法は、一方の側壁部1Bにおける先端の高さ寸法よりも大きく、且つ、前記取付け基台1の受け面1aに載置された取付け対象の中で最大径の長尺物P(図4参照)の中心を通る水平面よりも外方(図3では上方)に突出する寸法に構成されている。
【0047】
前記係止固定手段15を構成するに、図3〜図7に示すように、前記押え体2のうち、基端側押え部2Aの幅及び取付け基台1の受け面1aの幅よりも小なる幅に形成されている先端側押え部2Bの外側面には、長尺物Pの長手方向視で直角三角形状に形成された複数個の係止突起15Aが、押え体2の周方向に一定ピッチで一体形成され、前記取付け基台1の他方の側壁部1Bには、押え体2の挾持姿勢への揺動に連れて当該押え体2の係止突起15Aが係入移動する係入ガイド孔15bを備えた角筒状の係入ガイド部15Bが一体形成されているとともに、前記係入ガイド部15Bの入口部には、当該係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bに係入する押え体2の係止突起15Aの一つと選択的に係止可能な係止爪15Cが、薄肉の第3ヒンジ部15Dを介して係止解除位置に揺動可能な状態で一体形成されている。
【0048】
前記各係止突起15Aには、図6、図7に示すように、係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bに対する押え体2の係止突起15Aの係入移動に連れて係止爪15Cを係止解除位置に揺動させる傾斜カム面15Aaと、この傾斜カム面15Aaが通過した直後に係止爪15Cに係合する係止面15Abとが略直角三角形状に形成されている。
【0049】
前記係止爪15Cの揺動基端部には、当該係止爪15Cを係止解除するための操作体である操作レバー15Eが、係止爪15Cと同じ幅及び厚みを有し、且つ、他方の側壁部1Bから次第に径方向外方側に離れる状態で一直線状に一体形成され、他方の側壁部1Bに対面する操作レバー15Eの側面が、押え体2の挾持姿勢への揺動に連れて当該押え体2の係止突起15Aを係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bに係入案内する傾斜ガイド面15eに構成されている。
【0050】
前記操作レバー15Eを係止解除位置に操作して、取付け基台1側の係止爪15Cと押え体2側の係止突起15Aとの係合を解除すると、押え体2の弾性復元力で係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bに係入している押え体2の先端側押え部2Bが抜け出し移動するように構成されている(図7(b)参照)。
【0051】
前記押え体2の外側面における基端側押え部2Aと先端側押え部2Bとの境界相当箇所には、押え体2の係止突起15Aを係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bに押し込み操作するための操作摘み13が、先端側押え部2Bと同じ幅で径方向外方に一体的に突出形成されている。
【0052】
前記取付け基台1の一方の側壁部1Bの先端に連続する前記押え体2の揺動基端側部位には、図3、図4に示すように、前記取付け基台1の受け面1aと挾持解除姿勢にある押え体2の押え面2aとの間において当該押え面2aの仮想延長線である仮想延長円弧線Zから次第に径方向外方に離れる、換言すれば、押え面2aの仮想延長円弧線Zの略接線方向に沿って次第に径方向外方に離れる状態で突出して、長尺物Pを前記押え面2aとの間で受止め可能な受止め凹部Sを形成する内側受け面16bを備えた可撓性の補助受止め体16が、押え体2と一体揺動可能な状態で一体成形されている。
【0053】
前記補助受止め体16は先端側ほど厚みが薄くなる先細り形状に形成されているとともに、前記補助受止め体16が、前記押え体2の挾持姿勢への揺動による前記受け面1aとの当接に連れて当該受け面1aに密着状態で沿う半円弧状姿勢に弾性変形可能に構成されている。
【0054】
前記補助受止め体16は、図4に示すように、前記押え体2の挾持姿勢への揺動途中で取付け基台1における受け面1aの周方向他端側部位に位置する他方の側壁部1Bの先端に揺動方向から当接可能な長さで、且つ、その当接する他方の側壁部1Bの先端部位を弾性変形しながら通過可能な長さに構成されているとともに、前記補助受止め体16が他方の側壁部1Bの先端部位に当接した状態では、当該補助受止め体16の先端が操作レバー15Eと非接触に構成されている。
【0055】
図3,図4に示すように、前記補助受止め体16の内側受け面16bと取付け基台1の受け面1aとの各長尺物長手方向での幅が同一又は略同一に構成され、前記取付け基台1の受け面1aには、前記補助受止め体16の全体が前記受け面1aと面一又は略面一になる状態で入り込む窪み部17が形成されているとともに、前記補助受止め体16の先端部における外側角部16a及びこれに対応する前記窪み部17内の周方向一端部における底面側角部17aがそれぞれ受け面1aの周方向から係止不能な弧状面に形成されている。
【0056】
また、前記取付け基台1の受け面1aに形成された窪み部17の深さ、つまり、図3(b)に示すように、残存する受け面1aの仮想延長線である延長弧状線Z1から窪み部17の底面までの深さは、前記補助受止め体16の長手方向での厚みに対応した深さに構成され、前記補助受止め体16の全体が窪み部17内に入り込んだ状態では、当該補助受止め体16の内側受け面16bが窪み部17及び操作凹部6の形成によって欠落した取付け基台1の受け面1aに構成されている。
【0057】
そして、長尺物Pの押し込み操作前の無負荷状態では、図3に示すように、前記取付け基台1に第1ヒンジ部3を介して一体成形された押え体2が、それの開口中央位置を通る第2中心線Xが略水平方向に向く挾持解除姿勢(開き姿勢)に維持され、且つ、この押え体2の揺動基端側部位に設けられた補助受止め体16が、取付け基台1の受け面1aと挾持解除姿勢にある前記押え体2の押え面2aとの間に突出して、当該補助受止め体16の内側受け面16bと押え体2の押え面2aとの間で長尺物Pを受止め可能な受止め凹部Sが形成されている。
【0058】
この無負荷状態では、前記受止め凹部Sは、図3(b)において補助受止め体16の延設方向に沿う斜め上方に向って開口し、かつ、補助受止め体16の先端が押え体2の先端側押え部2Bの先端よりも前記延設方向に突出して、取付け基台1の受け面1a側に押し込み操作される長尺物Pの受入れ間口が広く構成されている。
【0059】
そのため、前記補助受止め体16の内側受け面16bと押え体2の押え面2aとの間に形成されている受止め凹部Sに向って長尺物Pを押し込み操作すると、前記受止め凹部S内に長尺物Pを取り込んだ状態で補助受止め体16と押え体2とが第1ヒンジ部3を揺動支点として取付け基台1の受け面1a側に一体揺動し、前記補助受止め体16が受け面1aとの当接に連れて当該受け面1aに密着状態で沿う姿勢に弾性変形し、この補助受止め体16及び取付け基台1の受け面1aと押え体2の押え面2aとの間で長尺物Pが挾持保持されるとともに、前記係止固定手段15を構成する押え体2側の最前列の一番目の係止突起15Aが係止爪15Cに係合し、押え体2が挾持姿勢で取付け基台1に係止固定される。
【0060】
それ故に、前記取付け基台1の受け面1aに向って長尺物Pを押し込み操作するだけのワンタッチ操作をもって長尺物Pをガタツキのない状態で挾持保持することができる。
【0061】
尚、前記長尺物Pが小径の場合は、長尺物Pの周囲に当該長尺物Pが可動可能な空隙が発生するため、図5、図6に示すように、前記押え体2の外側面に突出形成されている操作摘み13を押し込み操作して、前記押え体2側の一番目以降の係止突起15Aを取付け基台1側の係止爪15Cに係止させる。
【0062】
〔第2実施形態〕
図8は長尺物用取付け具の別実施形態を示し、前記補助受止め体16が、前記押え体2の挾持姿勢への揺動途中で取付け基台1における受け面1aの周方向他端側部位に位置する他方の側壁部1Bの先端に揺動方向から当接しない長さに構成されている。
【0063】
換言すれば、前記補助受止め体16の長さは、当該補助受止め体16の先端が取付け基台1の他方の側壁部1Bで形成される受け面1aに沿って非接触状態で近接移動する長さに構成されている。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0064】
〔第3実施形態〕
図9は長尺物用取付け具の別実施形態を示し、前記補助受止め体16の先端部における外側角部16a及びこれに対応する前記窪み部17内の周方向一端部における底面側角部17aがそれぞれ周方向から係止可能な直角面に形成されている。
【0065】
図9(a)に示すように、前記補助受止め体16の全体が窪み部17内に入り込んだ時点では、補助受止め体16の先端部における外側角部16aが前記窪み部17内の底面側角部17aに係合した仮止め状態となる。この仮止め状態では、係止固定手段15を構成する押え体2側の最前列の一番目の係止突起15Aと取付け基台1側の係止爪15Cとはまだ係合しておらず、長尺物Pの周囲には当該長尺物Pが可動可能な空隙が存在する。
【0066】
そのため、前記押え体2の外側面に突出形成されている操作摘み13を押し込み操作して、前記押え体2側の最前列の一番目の係止突起15Aを取付け基台1側の係止爪15Cに係止させる。この状態でも、長尺物Pの周囲には当可動可能な空隙が存在する場合には、前記操作摘み13をさらに押し込み操作して、押え体2側の次番目の係止突起15Aを取付け基台1側の係止爪15Cに係止させる。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0067】
〔第4実施形態〕
図10は長尺物用取付け具の別実施形態を示し、第1実施形態の第2取付け孔8を備えた取付け片9を省略して構成してある。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0068】
〔第5実施形態〕
図11〜図13は長尺物用取付け具の別実施形態を示し、前記取付け基台1の受け面1aとこれに当接する補助受止め体16の外側当り面16cとの相対向する部位で、且つ、前記受け面1aの周方向一端側に位置する取付け基台1の一方の側壁部1Bの付け根側には、前記補助受止め体16を受け面1aに沿って弾性変形された挾持姿勢で係止固定する第2係止固定手段18が係止解除操作可能に設けられている。
【0069】
前記第2係止固定手段18は、前記受け面1aに開口する状態で形成された係止溝18Aと、該係止溝18Aに係合可能な状態で外側当り面16cに突設された第2係止爪18Bとから構成されているとともに、前記第2係止爪18Bは、係止溝18Aから離脱する係止解除位置に弾性変形操作可能に構成されている。
【0070】
そして、前記取付け基台1における受け面1aの周方向一端側部位に対して前記押え体2及び補助受止め体16を一体揺動自在に支持する揺動支持部である薄肉状の第1ヒンジ部3が破断しても、前記取付け基台1の他方の側壁部1Bと前記押え体2の先端側部位との対応する部位に設けられた係止固定手段15による係合連結機能と、前記取付け基台1の受け面1aと前記補助受止め体16の外側当り面16cとの相対向する部位に設けられた第2係止固定手段18による係合連結機能とにより、押え体2及び補助受止め体16を挾持姿勢又はそれに近い受け止め姿勢に維持することができるから、使用形態が天井付け又は壁付けであっても、長尺物Pの脱落を防止することができる。
【0071】
また、前記係止溝18A及び第2係止爪18Bの各長尺物長手方向での長さは、前記取付け基台1の受け面1a及び補助受止め体16における各長尺物長手方向での幅寸法よりも少し小なる寸法に形成され、前記係止溝18Aの長手方向一端部には、当該係止溝18Aを閉止する遮蔽壁部1bが形成されている。
前記遮蔽壁部1bの存在により長尺物用取付け具の捩れに対する剛性を高めることができる。
【0072】
また、当該実施形態では、前記係止固定手段15の係止爪15Cが、係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15b内の入口側から出口側に向って片持ち状態で延出され、当該係止爪15Cの基端部に形成された薄肉の第3ヒンジ部15Dを支点として係止解除位置に揺動可能に構成されているとともに、前記係止爪15Cを係止解除するための操作体である操作レバー15Eが、係入ガイド部15Bの出口から下方に突出する状態で係止爪15Cの下端に一体形成されている。
【0073】
前記係止爪15Cの背面と係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bの内面との間には、係入ガイド部15B内に係入移動された押え体2の係止突起15Aとの当接に伴って該係止突起15Aとの係合が解除される係合解除位置までの係止爪15Cの後退揺動を許容する空隙15Fが形成されている。
【0074】
さらに、当該実施形態では、第1実施形態に比して前記係止爪15Cの形成数が一個から三個に増加形成され、前記係止突起15Aの形成数が7個から15個に増加形成されている。
【0075】
前記係止爪15Cの各爪部も、第1実施形態の係止突起15Aと同様に、係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bに係入移動される係止突起15Aの傾斜カム面15Aaとの当接に連れて係止爪15Cを係合解除位置に揺動させる傾斜カム面と、係止突起15Aの傾斜カム面15Aaが通過した直後に当該係止突起15Aの係止面15Abに係合する係止面とが略直角三角形状に形成されている。
【0076】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0077】
〔第6実施形態〕
図14〜図19は、上述の第5実施形態の長尺物用取付け具の変形例を示し、前記係止固定手段15の係入ガイド部15Bに対する押え体2の先端側部位の係入移動に伴って押え体2の係止突起15Aを取付け基台1の係止爪15C側に近接移動させる係合強化手段19と、前記取付け基台1における受け面1aの周方向他端側部位には、前記押え体2が挾持姿勢に揺動されたとき、この押え体2と補助受止め体16との間の受止め凹部Sに受止められている長尺物Pに当接して当該長尺物Pを取付け基台1の受け面1a側に押し付ける押圧手段20が設けられている。
【0078】
前記係合強化手段19は、取付け基台1の係止爪15Cを通過した押え体2の先端側部位との当接に伴って押え体2の係止突起15Aを取付け基台1の係止爪15C側に近接移動させる状態で取付け基台1の外面に形成された移動案内突起19Aから構成され、さらに、この移動案内突起19Aは、取付け基台1の他方の側壁部1Bの外面で、且つ、押え体2の先端側押え部2Bの横幅中央位置を通る線上に相当する部位に上下方向に沿って一体的に突出形成された補強リブをもって兼用構成されている。
【0079】
前記補強リブをもって兼用構成される移動案内突起19Aは、取付け基台1の下端から係入ガイド部15Bの出口相当位置までの範囲に形成され、この移動案内突起19Aの移動案内面19aの上端部は、係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bの出口側内面において面一となるテーパー面19bに構成されている。
【0080】
図18(a)に示すように、前記押え体2における先端側の第1番目〜第3番目の係止突起15Aが係止爪15Cの三つの爪部に係合した状態では、押え体2の先端が移動案内突起19Aのテーパー面19bの先端又はその近傍部位に位置し、この状態では、係止爪15Cの係止面側と係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bの内面との対向面間隔が押え体2の先端側押え部2Bの厚みよりも小に構成されているため、係止爪15Cが第3ヒンジ部15Dを支点として弾性復元力に抗して背面側に少し後退揺動した状態にあり、押え体2の係止突起15Aと係止爪15Cの爪部とが密着状態で係合している。
【0081】
図18(b)に示すように、前記押え体2の最先端の一つの係止突起15Aが係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bの出口から飛び出した状態、換言すれば、前記押え体2における先端側の第2番目〜第4番目の係止突起15Aが係止爪15Cの三つの爪部に係合した状態では、押え体2の先端が移動案内突起19Aのテーパー面19bを略通過する位置に移行し、且つ、取付け基台1の他方の側壁部1Bの外面に対して二点で当接する押え体2の先端側押え部2Bの弧状内側面における接当間隔が増大するため、他方の側壁部1Bの外面と先端側押え部2Bの弧状内側面との対向面間の空隙が大きくなる。
そして、係止爪15Cの爪部側への押え体2の係止突起15Aの押出し移動量が増加する分だけ、係止爪15Cが第3ヒンジ部15Dを支点として弾性復元力に抗して背面側に更に後退揺動した状態に押し込まれる。
【0082】
この状態では、押え体2の係止突起15Aが係止爪15Cの爪部に強く当て付けられ、且つ、係止爪15Cの弾性復元力も増加しているため、押え体2の係止突起15Aと取付け基台1の係止爪15Cとの係合が強化され、長尺物Pに外力が作用しても、長尺物Pを挾持保持状態に確実に維持することができる。
【0083】
さらに、図19に示すように、係入ガイド部15Bに対して押え体2の先端側押え部2Bを更に係入操作すると、例えば、前記押え体2における先端側の第8番目〜第10番目の係止突起15Aが係止爪15Cの三つの爪部に係合操作した状態では、係止爪15Cの背面と係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bの内面との間の空隙15Fの水平方向での幅が、係止突起15Aと係止爪15Cとの水平方向での係合深さ(係合代)以下に減少する。この場合でも、係止突起15A及び係止爪15Cの爪部の撓み変形と押え体2の先端側押え部2Bの撓み変形の範囲内で、係止突起15Aが係止爪15Cの爪部を乗り越え移動させることが可能である。
それ故に、係止爪15Cの爪部に対する押え体2の係止突起15Aの当て付け力の増加と、係止突起15Aと係止爪15Cの爪部及び押え体2の先端側押え部2Bの撓み変形
に伴う弾性復元力の増加とにより、押え体2の係止突起15Aと取付け基台1の係止爪15Cとの係合がより強化される。
【0084】
そして、係入ガイド部15Bに対して押え体2の先端側押え部2Bを係入側に押し込み操作しても、係止突起15Aが係止爪15Cの爪部を乗り越え移動することができない場合には、押え体2の係止突起15Aと取付け基台1の係止爪15Cとの係合を解除操作できないロック状態となる。
【0085】
前記押圧手段20は、他方の側壁部1Bの先端部位1cを、受止め凹部S内に受止められて第1ヒンジ部3を揺動支点として取付け基台1の受け面1a側に揺動する長尺物Pの外周面の外側移動軌跡よりも受止め凹部Sの中心移動軌跡側に少し突出する位置にまで、
その先端側ほど受け面1aの仮想延長面よりも受止め凹部Sの中心移動軌跡側に入り込み位置する傾斜姿勢に屈曲形成することにより構成されている。
【0086】
そのため、受止め凹部S内に受止められた長尺物Pが他方の側壁部1Bの先端部位1cを通過するとき、長尺物Pの外周面との当接に伴って他方の側壁部1Bの先端部位1cが外方側に撓み変形し、且つ、補助受止め体16の全体が取付け基台1の受け面1aの窪み部17内に入り込んだ状態では、受止め凹部S内に受止められた長尺物Pの外周面の上半側に他方の側壁部1Bの先端部位1cが当て付けられた状態になるため、長尺物Pを取付け基台1の受け面1a側に押し付けることになり、長尺物Pをガタツキのない状態で挾持保持することができる。
【0087】
また、他方の側壁部1Bの先端部位1cを受止め凹部Sの中心移動軌跡側に屈曲形成することによって、前記押え体2の挾持姿勢への揺動途中で補助受止め体16の先端側部位が他方の側壁部1Bの先端部位1cに揺動方向から確実に当接する。
【0088】
それ故に、長尺物用取付け具の梱包時や長尺物Pの取付け前の準備作業工程時等において、押え体2に挾持姿勢への意図しない外力が加えられても、この押え体2の挾持姿勢への揺動途中において、補助受止め体16の先端部が他方の側壁部1Bの先端部位1cに揺動方向から当接することで制動力が働くため、押え体2の意図しない挾持姿勢への揺動に起因する係止固定手段15の係止固定作動を抑制することができるとともに、受止め凹部Sに対する長尺物Pの挿入作業も容易に行うことができる。
【0089】
さらに、他方の側壁部1Bの先端部位1cを受止め凹部Sの中心移動軌跡側に屈曲形成することによって、この先端部位1cの外面側が傾斜面となり、前記受止め凹部S内に長尺物Pを取り込んだ状態で補助受止め体16と押え体2とが第1ヒンジ部3を揺動支点として取付け基台1の受け面1a側に一体揺動する際、押え体2の係止突起15Aを係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bに係合案内するガイド面として作用するから、押え体2の係止突起15Aが取付け基台1の受け面1a側に入り込むことを防止することができる。
【0090】
前記係入ガイド部15Bには、押え体2の外側面における基端側押え部2Aと先端側押え部2Bとの境界相当箇所に設けられた操作摘み13とによる指操作により、押え体2の係止突起15Aを係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bに押し込み操作するための操作摘み14が、係入ガイド部15Bと同じ幅で径方向外方に一体的に突出形成されている。
【0091】
尚、その他の構成は、第1実施形態及び第5実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態及び第5実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0092】
また、当該実施形態では、他方の側壁部1Bの先端部位1cを受止め凹部Sの中心移動軌跡側に屈曲形成することにより、長尺物Pを取付け基台1の受け面1a側に押し付ける押圧手段20を構成したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、前記取付け基台1における受け面1aの周方向他端側部位に、前記押え体2が挾持姿勢に揺動されたとき、この押え体2と補助受止め体16との間の受止め凹部Sに受止められている長尺物Pに当接して当該長尺物Pを取付け基台1の受け面1a側に押し付ける板バネ等の弾性付勢体を設けて前記押圧手段20を構成してもよい。
【0093】
〔第7実施形態〕
上述の第6実施形態では、前記係合強化手段19を、取付け基台1の係止爪15Cを通過した押え体2の先端側部位との当接に伴って押え体2の係止突起15Aを取付け基台1の係止爪15C側に近接移動させる状態で取付け基台1の外面に形成された上下方向の移動案内突起19Aから構成したが、図20に示すように、前記係入ガイド部15Bの係入ガイド孔15bの出口から飛び出す押え体2の最先端部位が接当作用する係止固定作用領域において横方向に沿う状態で突出形成された移動案内突起19Bから構成してもよい。
【0094】
尚、その他の構成は、第6実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第6実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0095】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第1実施形態では、前記取付け基台1の受け面1aに、前記補助受止め体16の全体が前記受け面1aと面一又は略面一になる状態で入り込む窪み部17を形成したが、前記受け面1aに、補助受止め体16の先端部だけが入り込む大きさの窪み部17を形成して実施してもよい。
さらに、前記窪み部17を形成しない状態で実施してもよい。この場合、前記取付け基台1の受け面1aに沿って重合した補助受止め体16の内側面が受け面1aの一部を構成することになるが、この補助受止め体16の先端側を薄肉に構成することによって、補助受止め体16の先端部と取付け基台1の受け面1aとの間での段差を極力小さくすることができる。
【0096】
(2)上述の第1実施形態では、前記取付け基台1の他方の側壁部1Bと押え体2の先端側部位との対応する部位に、押え体2を挾持姿勢で係止固定する係止固定手段15を構成したが、この係止固定手段15は、取付け基台1と押え体2との対応する部位の何れの位置でも構成することができ、さらに、前記取付け基台1と補助受止め体16のとの対応する部位においても前記係止固定手段15を構成することができる。
【0097】
(3)上述の第1実施形態では、前記取付け基台1の受け面1aと補助受止め体16との各長尺物長手方向での幅を同一又は略同一に構成したが、前記補助受止め体16の長尺物長手方向での幅を取付け基台1の受け面1aの幅寸法よりも小又は大なる幅寸法に構成してもよい。
【0098】
(4)上述の第1実施形態では、前記取付け基台1の受け面1aの形成領域に第1取付け孔5と操作凹部6とを形成し、前記取付け基台1における長尺物長手方向の一端部に、第2取付け孔8を備えた取付け片9を連設したが、前記取付け基台1側の第1取付け孔5と操作凹部6とを省略してもよい。
また、前記第2取付け孔8を備えた取付け片9を、取付け基台1における長尺物長手方向の両端部に連設してもよい。
さらに、前記第2取付け孔8を備えた取付け片9を、取付け基台1における長尺物長手方向と直交する方向の端部に連設してもよい。
【符号の説明】
【0099】
P 長尺物
W 固定部
S 受止め凹部
1 取付け基台
1a 受け面
1B 側壁部
2 押え体
2a 押え面
4 取付け部材
5 第1取付け孔
6 操作凹部
8 第2取付け孔
9 取付け片
12 ヒンジ部(第2ヒンジ部)
15 係止固定手段
15A 係止突起
15B 係入ガイド部
15C 係止爪
15E 操作体(操作レバー)
16 補助受止め体
17 窪み部
18 第2係止固定手段
19 係合強化手段
20 押圧手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺物の外周面の一部を脱着自在に受け止め可能な凹状の受け面を備えた取付け基台に、前記受け面との間で長尺物を挾持保持するための押え面を備えた押え体が、前記受け面の周方向一端側を支点として揺動開閉可能で、且つ、無負荷状態では挾持解除姿勢に開き付勢された状態で設けられているとともに、前記取付け基台と押え体との相対向する部位には、当該押え体を挾持姿勢で取付け基台に係止固定する係止固定手段が設けられている長尺物用取付け具であって、
前記押え体の揺動基端側部位には、前記受け面と挾持解除姿勢にある前記押え体の押え面との間に突出して、長尺物を前記押え面との間で受止め可能な受止め凹部を形成する補助受止め体が、前記押え体と一体揺動する状態で設けられているとともに、前記補助受止め体が、前記押え体の挾持姿勢への揺動による前記受け面との当接に連れて当該受け面に沿う姿勢に弾性変形可能に構成されている長尺物用取付け具。
【請求項2】
前記補助受止め体が、前記受け面と挾持解除姿勢にある前記押え体の押え面との間において当該押え面の仮想延長線から次第に離れる状態で突出形成されている請求項1記載の長尺物用取付け具。
【請求項3】
前記補助受止め体が、前記押え体の挾持姿勢への揺動途中で取付け基台における受け面の周方向他端側部位に揺動方向から当接可能な長さで、且つ、その当接する受け面の周方向他端側部位を弾性変形しながら通過可能な長さに構成されている請求項1又は2記載の長尺物用取付け具。
【請求項4】
前記取付け基台の受け面と前記補助受止め体との相対向する部位には、前記補助受止め体を受け面に沿って弾性変形された挾持姿勢で係止固定する第2係止固定手段が設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の長尺物用取付け具。
【請求項5】
前記取付け基台の受け面には、前記補助受止め体の少なくとも先端部が前記受け面と面一又は略面一になる状態で入り込む窪み部が形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の長尺物用取付け具。
【請求項6】
前記取付け基台の受け面と補助受止め体との各長尺物長手方向での幅が同一又は略同一に構成されているとともに、前記取付け基台の受け面には、取付け基台を固定部に取付ける取付け部材が挿通される第1取付け孔と、これに挿通された取付け部材の頭部が入り込む操作凹部とが形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の長尺物用取付け具。
【請求項7】
前記取付け基台における長尺物長手方向の一端部には、取付け基台を固定部に取付ける取付け部材が挿通される第2取付け孔を備えた取付け片が長尺物長手方向に沿って突設されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の長尺物用取付け具。
【請求項8】
前記取付け基台における受け面の周方向両側部を構成する両側壁部の付け根側には、当該両側壁部の対向方向内方側への弾性変形を許容するヒンジ部が形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の長尺物用取付け具。
【請求項9】
前記係止固定手段が、前記押え体の外周面の先端側の複数箇所に形成された係止突起と、押え体の挾持姿勢への揺動に連れて当該押え体の先端が係入移動する状態で取付け基台に設けられる係入ガイド部と、この係入ガイド部に係入する押え体の係止突起と選択的に係止可能な状態で取付け基台に設けられる係止爪と、前記係止爪を係止解除する操作体とから構成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の長尺物用取付け具。
【請求項10】
前記係止固定手段が、前記押え体の外周面の先端側の複数箇所に形成された係止突起と、押え体の挾持姿勢への揺動に連れて当該押え体の先端が係入移動する状態で取付け基台に設けられる係入ガイド部と、この係入ガイド部に係入する押え体の係止突起と選択的に係止可能な状態で取付け基台に設けられる係止爪とから構成されているとともに、前記係止固定手段の係入ガイド部に対する押え体の先端側部位の係入移動に伴って押え体の係止部を取付け基台の被係止部側に近接移動させる係合強化手段が設けられている請求項1〜8のいずれか1項に記載の長尺物用取付け具。
【請求項11】
前記取付け基台における受け面の周方向他端側部位には、前記押え体が挾持姿勢に揺動されたとき、この押え体と補助受止め体との間の受止め凹部に受止められている長尺物に当接して当該長尺物を取付け基台の受け面側に押し付ける押圧手段が設けられている請求項1〜10のいずれか1項に記載の長尺物用取付け具。
【請求項12】
前記取付け基台の受け面に形成された前記窪み部の端面とこれに入り込んだ前記補助受止め体の先端とが周方向から係合して、前記押え体を挾持姿勢に保持可能に構成されている請求項5記載の長尺物用取付け具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−92971(P2012−92971A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209457(P2011−209457)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000119830)因幡電機産業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】