開封防止機構付きキャップ、その製造方法、開封防止機構付きキャップの成形金型、及び開封防止機構付き容器
【課題】キャップの螺合部と螺子最終位置側の先端部との位置ズレの発生を抑制し、キャップの体裁が良く、また、容器本体の口部の径の大きさの制限を抑止しうる開封防止機構付きキャップ等を提供すること。
【解決手段】本発明の開封防止機構付きキャップ1は、外形周囲を亘る一の外周板11と、この外周板11の内側面に形成された内螺子部と、外周板11の内側面のうち内螺子部の下方に複数個形成され、開封時に容器本体の一部と掛止しうる第一の掛止爪21と、外周板11の内側面であって第一の掛止爪21間に複数個形成され、樹脂成形時に成形金型の一部と掛止しうる第三の掛止爪23とを具備する。
【解決手段】本発明の開封防止機構付きキャップ1は、外形周囲を亘る一の外周板11と、この外周板11の内側面に形成された内螺子部と、外周板11の内側面のうち内螺子部の下方に複数個形成され、開封時に容器本体の一部と掛止しうる第一の掛止爪21と、外周板11の内側面であって第一の掛止爪21間に複数個形成され、樹脂成形時に成形金型の一部と掛止しうる第三の掛止爪23とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、不要な開封を防止するための開封防止機構を備えた、開封防止機構付きキャップにつき、この成形金型を用いた同開封防止機構付きキャップの製造方法、この製造方法に用いられる同開封防止機構付きキャップの成形金型、及び同開封防止機構付きキャップを備えた開封防止機構付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、容器本体とキャップ(容器蓋)との、不要な開封を防止するための開封防止機構を備えた容器が存在する。この開封防止機構として、開封防止機構付きキャップと容器本体を打ち込み固定式とするものか、或いは螺子固定式とするものが存在する。
【0003】
打ち込み固定式のものは、抜け防止のひだ付きのキャップを容器本体の上部の枠内へ打ち込んで固定する。
【0004】
一方、螺子固定式のものは、螺合構造の最終螺子部側へ、互いに掛止しあう第一及び第二の掛止爪からなる逆回転防止のための掛止構造を、複数個ずつ隣設してなる(例えば、特許文献1参照)。これは、キャップの内側縁付近に設けた第一の掛止爪が、第一の周方向へ偏った偏突起からなると共に、容器本体の口部の外周側部付近に設けた第二の掛止爪が、前記第一の周方向とは逆の周方向へ偏った逆偏突起からなる。これにより、螺子締結の完了時に、第一の掛止爪間へ第二の掛止爪が位置すると共に、キャップを開封方向へ回転させようとすると、第一及び第二の掛止爪が、各偏突起面同士で当接して掛止するものとしている。
【0005】
これらは、例えばサプリメント等の錠剤を収容する目的に用いられ、店舗での展示中等に容易に開封されることの無いようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開平07−291273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記打ち込み固定式のものは容器本体との密閉度が低いため、収容物によっては密閉度の高い螺子固定による容器を必要とする。
【0008】
これに対して、前記螺子固定式のものは、容器本体との螺子締結によって、比較的密閉度の高い封止状態とすることができる。
【0009】
しかしながら、螺子固定式で開封防止機構を備えたものは、開封防止機構付きキャップが射出成形による樹脂成形品である場合に、下記製法上の課題が存在していた。
【0010】
すなわち、開封防止機構付きキャップが射出成形による樹脂成形品である場合、開封防止機構付きキャップの内螺子を形成する螺子形成金型として、内螺子形成用のモーターラック式金型を使用する必要がある。
【0011】
このモーターラック式金型は、例えば図12に示すように、周囲に螺子金型が形成されたモーターラック5´を、金型基台に対して回転移動可能とすると共に、樹脂が充填される金型基台上の樹脂押さえ用金型6´に、樹脂押さえ機構たる樹脂押さえ用突起63´を形成したものである。これは、金型内への樹脂射出後、樹脂押さえ用突起63´によって射出樹脂が回転しないように射出樹脂を押さえたまま、モーターラック5´を回転退進させることで、開封防止機構付きキャップの型抜きを行うものである。
【0012】
開閉防止機構を備える開封防止機構付きキャップの成形における樹脂押さえ機構は、上記のように、図12や13に示すような、上方を向いた複数の樹脂押さえ用突起63´を、モーターラック5´の周縁の樹脂押さえ用金型6´上へ配置形成したものが代表的である。これら樹脂押さえ用突起が射出樹脂内に入り込むことで、「射出樹脂がモーターラック回転に追従して変移する事態」を防止している。これにより、型抜き時に射出樹脂とモーターラックとが容易に分離するものとなる。
【0013】
ここで、前記樹脂押さえ用突起63´を形成するためには、開封防止機構付きキャップの螺子の最終位置において、所定以上の樹脂厚さ(軸断面視にて軸と垂直な幅方向の距離)が必要となる(図13のd2´参照)。さらに最終螺子部側には開閉防止機構として嵌合爪21´を設ける必要があるため、これを成形するための開封防止用溝61´(図14)によって。開封防止機構付きキャップの螺合部と螺子最終位置側の先端部との間に、比較的大きな厚さ方向の位置ズレd1´が生じてしまう(図13のd1´参照)。
【0014】
前記位置ズレd1´を確保すべく、開封防止機構付きキャップの外形に大きな外周段差を生じさせた形状(例えば図10)とすると体裁が悪いものとなり、密閉後に外周を覆うフィルムラミネート工程も困難なものとなる。
【0015】
なお、樹脂の成形厚さには限界があり、所定の厚さ(例えば2mm)以上にするとひずみ等の成形不良が発生してしまう。このため、前記位置ズレd1´を含むほどの厚肉構造の開封防止機構付きキャップを製造することは困難である。
【0016】
また、前記位置ズレd1´のため、容器本体の口部の内径32d´を所定大以上とすることができず、容器形状や収容物の大きさが制限されてしまう。特に、開封防止機構付きキャップ外形に段差を生じさせないため、開封防止機構付きキャップ外周縁を別コアで覆ったダブルコア形状とすると、容器本体部の外径31d´と口部の内径32d´とが、相当大(例えば20mm以上)以上相違し、容器本体の口部の大きさに極めて大きな制限が生じてしまう。
【0017】
そこで本発明では、開封防止機構付きキャップの成形金型、この成形金型を用いた開封防止機構付きキャップの製造方法、この製造方法によって得られる開封防止機構付きキャップ、及び、前記開封防止機構付きキャップを備えた容器(開封防止機構付き容器)であって、開封防止機構付きキャップの螺合部と螺子最終位置側の先端部との位置ズレの発生を抑制し、開封防止機構付きキャップの体裁が良く、また、容器本体の口部の径の大きさの制限を抑止しうるものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決すべく、本発明では下記(1)ないし(7)の手段を講じている。
【0019】
(1)本発明の開封防止機構付きキャップ1は、外形周囲を亘る一の外周板11と、この外周板11の内側面に形成された内螺子部12と、外周板11の内側面のうち内螺子部12の下方に複数個形成され、開封時に容器本体3の一部たる第二の掛止爪22と掛止しうる第一の掛止爪21と、外周板11の内側面であって、前記複数個の第一の掛止爪21のうち隣り合う二つの第一の掛止爪21間に形成され、樹脂成形時に成形金型の一部たる樹脂押さえ用溝63によって形成される複数の第三の掛止爪23とを具備した開封防止機構付きキャップである。そして、前記外周板11は、その内側面に設けた段差の上方及び下方にそれぞれ厚肉部111及び薄肉部113を有し、前記内螺子部12はこの厚肉部111に形成され、前記複数個の第一の掛止爪21及び第三の掛止爪23はいずれも、この薄肉部113に形成されてなることを特徴とする。
【0020】
このようなものであれば、第三の掛止爪23が、外周板11の薄肉部111の内側面であって、第一の掛止爪21間に、側方向を向いて散設形成されるため、外周板11を比較的薄型のものとすることができる。また、成形金型分離時の掛止機能と共に、開封防止機能をも果たしうる。
【0021】
(2)前記本発明の開封防止機構付きキャップ1において、複数個の第一の掛止爪21及び第三の掛止爪23はいずれも、外周板11の内側へ向かって突出した偏突起からなり、それぞれの偏突起の、内側面方向の掛止高さ2hは、いずれも前記厚肉部111と薄肉部113の厚さの差たる段差幅112bよりも小さいものであることが好ましい。
【0022】
このようなものであれば、複数の第一の掛止爪21及び複数の第三の掛止爪23がいずれも、底面視にて内螺子部12の最外縁(螺子底)よりも内側へ突出することなく形成される。
【0023】
これにより、開封防止機構付きキャップ1と容器本体3とを螺合する際に、第一及び第三の掛止爪23がいずれも、容器本体3の外螺子部33と接触することのないものとなる。このため、開封防止機構付きキャップ1と容器本体3とを、容易に或いは確実に螺合固定することができ、また掛止爪は、螺子部等との接触によって欠損することなく掛止位置に配置される。
【0024】
或いは、前記第三の掛止爪23が第一の掛止爪21よりも低い掛止高さ2hであることが好ましい。
【0025】
なお、前記第三の掛止爪23と第一の掛止爪21は、容器本体3の口部32根元に形成された複数の第二の掛止爪22と掛止するものであると共に、すべての第三の掛止爪23と第一の掛止爪21において、第二の掛止爪22に対する掛止面2fの角度が共通することが好ましい。
【0026】
(3)また、本発明の容器は、前記いずれか記載の開封防止機構付きキャップ1と、この開封防止機構付きキャップ1の内螺子部12に螺合しうる口部32を備えた容器本体3とから構成された容器である。そして、容器本体3は、口部32の下端付近の螺子終端側に複数個形成され、前記第一及び第三の掛止爪31、33に掛止しうる第二の掛止爪32と、前記外周板と共通した外径(31d)の容器側板31とを具備してなる。
【0027】
このようなものであれば、容器本体3の容器側板31の外径と、開封防止機構付きキャップ1の外周板11の外径11dとが共通するため、容器本体3と開封防止機構付きキャップ1とを螺合させた状態で、両部品間で外側面に大きな径の変化が生じることなく、いわゆる面一の容器となる。これは、例えば螺子締結後の容器の周囲をフィルム等でラミネートする場合、このラミネート工程を容易に行うことができ、皺の生じにくい体裁の良いラミネート状態とすることができる。
【0028】
なお、このとき開封防止機構は、開封方向へ螺進した開封防止機構付きキャップ1の外周板11に備えた第一の掛止爪21及び第三の掛止爪23と、容器本体3の口部32下方に備えた第二の掛止爪22とが掛止することによるものであり、容器側板31は、前記第二の掛止爪22よりも下方に配置される。
【0029】
(4)本発明の開封防止機構付きキャップ1の成形金型は、
開封防止機構付きキャップ1の内螺子部に対応する螺子部金型が外周に沿って形成されると共に基台4に対して回転進退可能なモーターラック5と、
開封防止機構付きキャップ1の開封防止機構に対応する開封防止用溝61が外周に沿って複数個形成されると共に基台4内で前記モーターラック5の周囲に立設した開封防止用金型6と、
開封防止機構付きキャップ1の外周側面及び天面に対応して形成されると共に前記開封防止用金型6を覆って基台4に当接しうる外部金型7とを具備した、射出成形用の成形金型である。
そして、前記開封防止用金型6は、複数の開封防止用溝61と共に、その外周側面に、金型内へ射出された樹脂の回転を押えるための複数の樹脂押さえ用溝63を散設してなることを特徴とする。
【0030】
このようなものであれば、樹脂押さえ機構として、側面を向いた樹脂押さえ用溝63を、同じく側面を向いた開封防止用溝61と共に、外周側面に形成したものとなる。このため、樹脂押さえ機構を形成するための、厚さ方向への樹脂成形領域を別途確保する必要がなくなる。
【0031】
(5)また、前記開封防止機構付きキャップ1の成形金型において、複数の開封防止用溝61が、いずれも平面視にて一の周方向へ偏った偏倚溝であると共に、樹脂押さえ用溝63が、前記開封防止用溝の偏倚溝と同一の周方向に偏った偏倚溝であることが好ましい。
【0032】
このようなものであれば、成形された開封防止機構付きキャップ1において、樹脂押さえ用溝63の偏倚溝によって偏突起からなる第三の掛止爪23が形成され、この第三の掛止爪23が容器本体3の第二の掛止爪22に掛止することで、第三の掛止爪23によってもある程度の開封防止機能を果たしうる。
【0033】
(6)また、前記開封防止機構付きキャップ1の成形金型において、複数の開封防止用溝61と樹脂押さえ用溝63とが混在して、開封防止用溝61又は樹脂押さえ用溝63のいずれかが、開封防止用金型6の外周へ等間隔に形成されることが好ましい。
【0034】
このようなものであれば、開封防止機構付きキャップ1の螺子締結時に、容器本体3の口部32の螺子終端側に形成した第二の掛止爪22を、第一及び第三の掛止爪31、33のいずれかの間に配置させるまでねじ締結することで、第一及び第三の掛止爪31、33の、第二の掛止爪22への掛止機会を増加させ、より確実に開封防止するものとなる。
【0035】
(7)また、本発明の開封防止機構付きキャップ1の製造方法は、前記いずれかの開封防止機構付きキャップ1の成形金型を用いたものであって、
基台4よりも突出した位置のモーターラック5、開封防止用金型6、及び外部金型7を当接させて成形型の型締めを行う型締め工程と、
前記型締め工程後に開封防止機構付きキャップ1型内へ樹脂を射出してこの射出樹脂を冷却固化させる射出固化工程と、
前記射出固化工程後にモーターラック5を基台4から回転退進させて内螺子部12の型抜きをする内型抜き工程と、
前記内型抜き工程後に開封防止用金型6及び外部金型7の当接を解除して外側の型抜きをする外型抜き工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
上記構成を採用することで、開封防止機構付きキャップ1の螺合部と螺子最終位置側の先端部との位置ズレd1の発生が抑制される。このため、螺合部と螺子最終位置側の先端部とで、外形に必ずしも段差を設ける必要がなく、体裁の良い開封防止機構付きキャップ1を形成しうる。また、容器本体3の口部32の径の大きさの制限が抑止され、比較的おおきな口部32の容器本体3を使用しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明を実施するための最良の形態例について、実施例として示す各図を参照して詳細に説明する。図1ないし図2に、本発明の実施例1の開封防止機構付き容器、及び開封防止機構付きキャップ1を示す。図3ないし図9に、本発明の実施例1の開封防止機構付きキャップ1の成形金型及び製造方法を示す。
【0038】
具体的には、図1が、本発明の実施例1の開封防止機構付きキャップ1とそれを備えた開封防止機構付き容器の側方向視軸断面説明図であり、図2が、実施例1の開封防止機構付きキャップ1の底面図である。
【0039】
図3、図5、図8、及び図9は、実施例1の開封防止機構付きキャップ1の製造方法の各工程後ないし工程中の状態を示す軸断面説明図であり、成形金具の状態説明図である。各工程とはそれぞれ、型締め工程後(図3)、射出固化工程後(図5)、内型抜き工程中(図8)、および外型抜き工程後(図9)の状態である。
【0040】
また、図4は、型締め工程後の状態(図3)における、成形型内のモーターラック5及び開封防止用金型6を示す斜視説明図である。図6及び図7は、射出固化工程後の状態(図5)における、それぞれA−B部拡大断面説明図、及びC−C線断面説明図である。
【0041】
なお図10ないし図14には、従来の開封防止機構付き容器、開封防止機構付きキャップ1、その成形金型及び製造方法の一例を示す。それぞれ図10は本発明の図1に、図11は本発明の図2に、図12は本発明の図4に、図13は本発明の図6に、そして図14は本発明の図7に対応する。
【0042】
<本発明の開封防止機構付き容器>
本発明の開封防止機構付き容器は、開封防止機構付きキャップ1を備えた容器であり、図1に示すように、外周板11に内螺子部が形成された開封防止機構付きキャップ1と、これに螺合しうる外螺子が形成された口部32を容器側板31の上方に有する容器本体3とから構成される。
【0043】
そして、容器本体3の容器側板31の外径31dと、開封防止機構付きキャップ1の外周板11の外径11dとが共通する。このため、容器本体3と開封防止機構付きキャップ1とを螺合させた図1に示す状態で、外側面に段差が生じることなのない、いわゆる面一の容器となる。
【0044】
これにより、例えば内容物収容後に螺子締結後の容器の周囲をフィルム等でラミネートするラミネート工程を容易に行うことができ、皺の生じにくい体裁の良いラミネート状態とすることができる。
【0045】
<開封防止機構>
このとき開封防止機構は、開封方向へ螺進した開封防止機構付きキャップ1の外周板11に備えた第一の掛止爪21及び第三の掛止爪23と、容器本体3の口部32の下方に備えた第二の掛止爪22とが掛止することによるものである(図1)。なお容器側板31は、前記第二の掛止爪22よりも下方に配置される。
【0046】
<本発明の開封防止機構付きキャップ1>
本発明の開封防止機構付きキャップ1は、外形周囲を亘る一の外周板を具備し、ヒンジによって開封しうるヒンジ蓋を一体的に備えた、シングルコア開封防止機構付きキャップ1である。具体的には、図2に示すように、外形周囲を亘る一の外周板11と、この外周板の内側面に形成された内螺子部12と、この外周板12の内側面のうち内螺子部12の下方にて、いずれも内側方を向いて形成された複数の第一の掛止爪21及び複数の第三の掛止爪23と、外周板12の上部にて、繰り返し開閉可能なヒンジ蓋と、ヒンジ蓋を開けたときに現出し、その中心部分が切り取り可能な内部天板を具備する。開封防止機構付きキャップ1の開封時には、ヒンジ蓋を開けて内部天板の中心部分を切り取る。切り取った内部天板の切り取り孔から内容物を取り出した後は、再びヒンジ蓋を閉める。
【0047】
(外周板11)
外周板11は、それ自体の内側面にのみ段差を有してこの段差より上方の厚肉部111と段差より下方の薄肉部113とから一体的に構成されてなる。
【0048】
外周板11は、それ自体の内側面にのみに設けた所定の段差幅112bの段差を介して、この段差より上方の厚肉部111と段差より下方の薄肉部113とから一体的に構成されてなる。
【0049】
厚肉部111は、側面に樹脂押さえ用溝63を形成した成形金型によって、比較的薄いものとして形成される。なお、ここで樹脂押さえ用溝63は、金型分離時に樹脂を押さえるためのものであり、開封防止機構付きキャップ1の内側側方へ形成される。
【0050】
厚肉部111が比較的薄いため、樹脂押さえ機構に基づく段差が外周板11の外面に生じることがなく、なだらかな外周形のシングルコア開封防止機構付きキャップ1となる。
【0051】
(内螺子部12)
内螺子部12は、成形金型の一部たるモーターラック5によって、外周板11の厚肉部111に形成される。
【0052】
本発明の開封防止機構付きキャップ1の製造方法は、前記いずれかの開封防止機構付きキャップ1を成形するものである。
【0053】
(第一の掛止爪21)
第一の掛止爪21は、開封防止機構付きキャップ1を容器本体へ螺合締結したときに、容器本体に設けた第二の掛止爪22の、開封方向側の掛止面2fと掛止して、容易な開封を防止するためのものである。
【0054】
第一の掛止爪21はいずれも、成形金型の一部に形成された開封防止用溝61によって、外周板11の薄肉部113の内側面に形成される。これらは上下方向ではなく、開封防止機構付きキャップ1の内側側方へ向かって突出してなり、内側側方へ所定の掛止高さを有する。
【0055】
複数の第一の掛止爪21はいずれも、(成形金型の)開封防止用溝61によって前記薄肉部113に等間隔に4箇所形成される。
【0056】
この第一の掛止爪21は、容器本体3の第二の掛止爪22に掛止しうる掛止面2fを有しており、第二の掛止爪22の数及び位置に対応して配設される。そして、成形後の容器本体3への螺合締結状態において、容器の第二の掛止爪22の掛止面2fと当接することで、開封防止機能を果たしうる。
【0057】
(第三の掛止爪23)
第三の掛止爪23は、主に、成形時の金型分離時に成形金型の一部に掛止するためのものである。また、第一の掛止爪21間にて上下方向ではなく、開封防止機構付きキャップ1の内側側方へ向かって突出し、一の周方向へ掛止面2fを有して形成されるため、容器本体2に設けた第二の掛止爪22の開封方向側の掛止面2fと掛止して、容易な開封を防止する開封防止用のものとしても機能しうる。
【0058】
第三の掛止爪23はいずれも、外周板11の薄肉部113の内側面内、かつ内螺子部12の下方に隣接した下端の位置に形成される。また、前記複数の第一の掛止爪21複数の第一の掛止爪21のうち、隣り合う一対の第一の掛止爪21間に散設される。これらは、成形金型の一部たる開封防止用金型6に形成された樹脂押さえ用溝63の偏移溝によって形成されるものである。
【0059】
それぞれの第三の掛止爪23は背面視(図2)にて開封防止機構付きキャップ1の内側側方へ向かって突出した偏突起からなる。そして、外周板11の内側面から中心方向へ向かって所定の掛止高さ2hを有する。
【0060】
第三の掛止爪23はまた、第一の掛止爪21と相似形状であり、第一の掛止爪21よりも一回り小さいものとなっている。これにより、第三の掛止爪23の掛止面2f及び掛止高さ2hは、第三の掛止爪23の掛止面2f及び掛止高さ2hよりも小さい。
【0061】
第三の掛止爪23はいずれも内側面を向き、同じく内側面を向いた第一の掛止爪21と共に形成されるため、成形時の樹脂押さえ機構を形成するための、厚さ方向への樹脂成形領域を別途確保する必要がなくなり、外周板11のうち、厚肉部111を比較的薄いものとすることができる。これにより、外周板11の外側面に段差を有さない滑らかな外周面の外周板11の開封防止機構付きキャップ1となる。
【0062】
外周板11において、隣り合う第一の掛止爪21と第三の掛止爪23、及び、隣り合う第三の掛止爪23同士は混在して、第一の掛止爪21又は第三の掛止爪23が等間隔に形成される。
【0063】
共に側方向を向いた樹脂押さえ用溝63と第三の掛止爪23とから、本発明の樹脂押さえ機構が形成される。この本発明の樹脂押さえ機構は、側方を向いた開封防止用の第一の掛止爪21の間にて、第一の掛止爪21と同じく開封防止機構付きキャップ1の内側方を向いて形成される。これは、たとえば図10、図11に示す従来の樹脂押さえ用溝63´やこれによる形成穴33´のように、外周板11の段差内で上下方向を向いて形成されるものではないため、厚肉部111を比較的薄いものとして形成することが可能となる。これにより、本発明のの開封防止機構付きキャップ1は、樹脂押さえ機構に基づく段差が外周板11の外面に生じることがなく、なだらかな外周形のシングルコア開封防止機構付きキャップ1となっている。
【0064】
(第一の掛止爪21及び三の掛止爪23)
第一の掛止爪21及び第三の掛止爪23の、外周板11の内側へ向かう掛止高さ2hはいずれも、前記厚肉部111と薄肉部113の厚さの差、すなわち段差幅112bよりも小さいものである。ここで、厚肉部111と薄肉部113の境界となる外周板11の段差は、外周板の内側面にのみ設けられたものであり、外周板11の外側面は滑らかな面からなる。
【0065】
このため、複数の第一の掛止爪21及び複数の第三の掛止爪23がいずれも、底面視にて内螺子部12の最外縁(螺子底)よりも内側へ突出することなく形成される。
【0066】
これにより、開封防止機構付きキャップ1と容器本体3とを螺合する際に、第一及び第三の掛止爪23がいずれも、容器本体3の外螺子部33と接触することのないものとなる。このため、開封防止機構付きキャップ1と容器本体3とを、容易に或いは確実に螺合固定することができ、また掛止爪は、螺子部等との接触によって欠損することなく掛止位置に配置される。
【0067】
(本発明の開封防止機構付きキャップ1の製造方法)
本発明の開封防止機構付きキャップ1は、例えば、後述する特定の開封防止機構付きキャップ1の成形金型を用いて、少なくとも下記各製造工程を具備することによって製造される。
【0068】
各製造工程とは順に、
・基台4よりも突出した位置のモーターラック5、開封防止用金型6、及び外部金型7を当接させて成形型の型締めを行う型締め工程(図3)、
・前記型締め工程後に開封防止機構付きキャップ1型内へ樹脂を射出してこの射出樹脂を冷却固化させる射出固化工程(図5)、
・前記射出固化工程後にモーターラック5を基台4から回転退進させて内螺子部12の型抜きをする内型抜き工程(図8)、
・前記内型抜き工程後に開封防止用金型6及び外部金型7の当接を解除して外側の型抜きをする外型抜き工程(図9)である。
【0069】
<本発明の開封防止機構付きキャップ1の成形金型>
本発明の開封防止機構付きキャップ1の成形金型は、射出成形による開封防止機構付きキャップ1の成形金型である。少なくとも、
・基台4と、
・基台4に対して回転進退可能なモーターラック5と、
・基台4内で前記モーターラック5の周囲を支承する開封防止用金型6と、
・前記開封防止用金型6を覆って基台4に当接しうる外部金型7とを具備する。
【0070】
(開封防止用金型6)
開封防止用金型6は、開封防止機構付きキャップ1の開封防止機構に対応する開封防止用溝61を外周に沿って等間隔に散設してなると共に、金型内への射出樹脂の回転を押えるための複数の樹脂押さえ用溝63を、外周側面に散設してなる。
【0071】
このようなものであれば、樹脂押さえ機構として、側面を向いた樹脂押さえ用溝63を、同じく側面を向いた開封防止用溝61と共に、外周側面に形成したものとなる。このため、樹脂押さえ機構を形成するための、厚さ方向への樹脂成形領域を別途確保する必要がなくなる。
【0072】
(モーターラック5)
モーターラック5は、成形金型のうち、開封防止機構付きキャップ1の内螺子部12に対応するものであり、モーター機構によって、突出位置S1から退進位置S2までの間を回転しながら進退しうる。モーターラック5の外周に沿って、開封防止機構付きキャップ1の内螺子部に対応する螺子部金型が形成される。
【0073】
(外部金型7)
外部金型7は、射出口71を有し、開封防止機構付きキャップ1の外周側面及び天面に対応して形成される。成形後の金型分離のため、図示するように複数ブロックから形成されることが好ましい。
【0074】
(開封防止用溝61)
複数の開封防止用溝61は、いずれも平面視にて第一の周方向(回転軸中心からみて同一廻りの方向)へ偏った第一の偏突起を形成するための偏倚溝である。
【0075】
(樹脂押さえ用溝63)
複数の樹脂押さえ用溝63は、前記第一の周方向、すなわち、開封防止用溝61の偏移溝と同一の周方向に偏った偏倚溝である。
【0076】
(開封防止用溝61と樹脂押さえ用溝63)
実施例の複数の開封防止用溝61と樹脂押さえ用溝63は、両溝が規則的に並び、開封防止用金型6の外周へ等間隔に形成される。
【0077】
このようなものであれば、開封防止機構付きキャップ1の螺子締結時に、容器の口部32の螺子終端側に形成した第二の掛止爪22を、第一及び第三の偏突起のいずれかの間に配置させるまでねじ締結することで、第二の掛止爪22の掛止機会を増加させ、より確実に開封防止するものとなる。
【0078】
(容器本体3)
容器本体3は、外螺子が形成された口部32を、容器側板31の上方に有する。この外螺子は、開封防止機構付きキャップ1の内螺子部12に螺合しうるものである。また、口部の基端側の周囲に、複数の第二の掛止爪22が側方を向いて等間隔に形成される。
【0079】
容器本体3の容器側板31の外径31dは、開封防止機構付きキャップ1の外周板11の外径11dと共通する。容器側板31は、前記第二の掛止爪22よりも下方に配置される。
【0080】
これにより、容器本体3と開封防止機構付きキャップ1とを螺合させた状態で、外側面に段差が生じることなく、体裁の良いいわゆる面一の容器となる。これは、例えば螺子締結後の容器の周囲をフィルム等でラミネートする場合、このラミネート工程を容易に行うことができ、皺の生じにくいラミネート状態とすることができるものである。
【0081】
また、口部内径32dを比較的大きいものとすることができるため、収容しうる内容物の形状及び大きさが口部32の大きさによって大きく制限されない。この口部内径32dの大きさは、開封防止機構付きキャップ1の金型分離時の樹脂押さえ機構によって生じる厚さ方向の位置ズレd1を小さいものとしたことで確保されるものである。
【0082】
なお、このとき開封防止機構は、開封方向へ螺進した開封防止機構付きキャップ1の外周板11に備えた第一の掛止爪21及び第三の掛止爪23と、容器本体3の口部32の下方に備えた第二の掛止爪22とからなる。
【0083】
(第二の掛止爪22)
複数の第二の掛止爪22はいずれも、片側へ掛止面2fを有して外周方向へ突出した平面視扁平三角形の偏突起からなる。また、容器本体3の口部32の基端側かつ外螺子部33の終端側の外周に沿って、等間隔に形成される。開封防止機構付きキャップ1締結時の第一の掛止爪21に対応した数(実施例では4個)が形成される。
【0084】
但しここで、第二の掛止爪の掛止面2fは、第一及び第三の掛止爪21、23の掛止面2fとは逆の周方向を向いて形成される。これにより、開封防止機構付きキャップ1を容器本体3へ螺合締結した状態において、開封防止機構付きキャップ1の第一の掛止爪21ないし第三の掛止爪23の各掛止面2fと第二の掛止爪の掛止面2fとが当接し、開封防止機能を果たしうる。
【0085】
その他各部の具体的な構成は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施例1の開封防止機構付きキャップ1とそれを備えた開封防止機構付き容器の側方向視軸断面説明図である。
【図2】実施例1の開封防止機構付きキャップ1の底面図である。
【図3】実施例1の開封防止機構付きキャップ1の製造方法における型締め工程後中の成形金具等の状態を示す軸断面説明図である。
【図4】図3の型締め工程後の状態における、成形型内のモーターラック及び開封防止用金型を示す斜視説明図である。
【図5】実施例1の開封防止機構付きキャップ1の製造方法における射出固化工程後の成形金具等の状態を示す軸断面説明図である。
【図6】図5の射出固化工程後の状態における、側面視A−B部拡大断面説明図である。
【図7】図5の射出固化工程後の状態における、側面視C−C線断面説明図である。
【図8】実施例1の開封防止機構付きキャップ1の製造方法における内型抜き工程中の成形金具等の状態を示す軸断面説明図である。
【図9】実施例1の開封防止機構付きキャップ1の製造方法における外型抜き工程後の成形金具等の状態を示す軸断面説明図である。
【図10】従来の開封防止機構付きキャップ1例とそれを備えた開封防止機構付き容器例の側方向視軸断面説明図である。
【図11】図10に示す従来の開封防止機構付きキャップ例の底面図である。
【図12】従来の型締め工程後の状態における、成形型内のモーターラック及び開封防止用金型の例を示す斜視説明図である。
【図13】従来の射出固化工程後の状態例における、側面視一部拡大断面説明図である。
【図14】従来の射出固化工程後の状態例における、底面視断面説明図である。
【符号の説明】
【0087】
1 開封防止機構付きキャップ
11 外周板
11d 外周板の外径
111 厚肉部
111b 厚肉部厚さ
112b 段差幅
113 薄肉部
12 内螺子部
21 第一の掛止爪
22 第二の掛止爪
23 第三の掛止爪
2f 掛止面
2h 掛止高さ
3 容器本体
31 容器側板
31d 容器側板の外径
32 口部
32d 口部内径
33 外螺子部
4 基台
5 モーターラック
6 開封防止用金型
61 開封防止用溝
63 樹脂押さえ用溝
7 外部金型
71 射出口
d1 位置ズレ
R 樹脂
S1 突出位置
S2 退進位置
【技術分野】
【0001】
この発明は、不要な開封を防止するための開封防止機構を備えた、開封防止機構付きキャップにつき、この成形金型を用いた同開封防止機構付きキャップの製造方法、この製造方法に用いられる同開封防止機構付きキャップの成形金型、及び同開封防止機構付きキャップを備えた開封防止機構付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、容器本体とキャップ(容器蓋)との、不要な開封を防止するための開封防止機構を備えた容器が存在する。この開封防止機構として、開封防止機構付きキャップと容器本体を打ち込み固定式とするものか、或いは螺子固定式とするものが存在する。
【0003】
打ち込み固定式のものは、抜け防止のひだ付きのキャップを容器本体の上部の枠内へ打ち込んで固定する。
【0004】
一方、螺子固定式のものは、螺合構造の最終螺子部側へ、互いに掛止しあう第一及び第二の掛止爪からなる逆回転防止のための掛止構造を、複数個ずつ隣設してなる(例えば、特許文献1参照)。これは、キャップの内側縁付近に設けた第一の掛止爪が、第一の周方向へ偏った偏突起からなると共に、容器本体の口部の外周側部付近に設けた第二の掛止爪が、前記第一の周方向とは逆の周方向へ偏った逆偏突起からなる。これにより、螺子締結の完了時に、第一の掛止爪間へ第二の掛止爪が位置すると共に、キャップを開封方向へ回転させようとすると、第一及び第二の掛止爪が、各偏突起面同士で当接して掛止するものとしている。
【0005】
これらは、例えばサプリメント等の錠剤を収容する目的に用いられ、店舗での展示中等に容易に開封されることの無いようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開平07−291273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記打ち込み固定式のものは容器本体との密閉度が低いため、収容物によっては密閉度の高い螺子固定による容器を必要とする。
【0008】
これに対して、前記螺子固定式のものは、容器本体との螺子締結によって、比較的密閉度の高い封止状態とすることができる。
【0009】
しかしながら、螺子固定式で開封防止機構を備えたものは、開封防止機構付きキャップが射出成形による樹脂成形品である場合に、下記製法上の課題が存在していた。
【0010】
すなわち、開封防止機構付きキャップが射出成形による樹脂成形品である場合、開封防止機構付きキャップの内螺子を形成する螺子形成金型として、内螺子形成用のモーターラック式金型を使用する必要がある。
【0011】
このモーターラック式金型は、例えば図12に示すように、周囲に螺子金型が形成されたモーターラック5´を、金型基台に対して回転移動可能とすると共に、樹脂が充填される金型基台上の樹脂押さえ用金型6´に、樹脂押さえ機構たる樹脂押さえ用突起63´を形成したものである。これは、金型内への樹脂射出後、樹脂押さえ用突起63´によって射出樹脂が回転しないように射出樹脂を押さえたまま、モーターラック5´を回転退進させることで、開封防止機構付きキャップの型抜きを行うものである。
【0012】
開閉防止機構を備える開封防止機構付きキャップの成形における樹脂押さえ機構は、上記のように、図12や13に示すような、上方を向いた複数の樹脂押さえ用突起63´を、モーターラック5´の周縁の樹脂押さえ用金型6´上へ配置形成したものが代表的である。これら樹脂押さえ用突起が射出樹脂内に入り込むことで、「射出樹脂がモーターラック回転に追従して変移する事態」を防止している。これにより、型抜き時に射出樹脂とモーターラックとが容易に分離するものとなる。
【0013】
ここで、前記樹脂押さえ用突起63´を形成するためには、開封防止機構付きキャップの螺子の最終位置において、所定以上の樹脂厚さ(軸断面視にて軸と垂直な幅方向の距離)が必要となる(図13のd2´参照)。さらに最終螺子部側には開閉防止機構として嵌合爪21´を設ける必要があるため、これを成形するための開封防止用溝61´(図14)によって。開封防止機構付きキャップの螺合部と螺子最終位置側の先端部との間に、比較的大きな厚さ方向の位置ズレd1´が生じてしまう(図13のd1´参照)。
【0014】
前記位置ズレd1´を確保すべく、開封防止機構付きキャップの外形に大きな外周段差を生じさせた形状(例えば図10)とすると体裁が悪いものとなり、密閉後に外周を覆うフィルムラミネート工程も困難なものとなる。
【0015】
なお、樹脂の成形厚さには限界があり、所定の厚さ(例えば2mm)以上にするとひずみ等の成形不良が発生してしまう。このため、前記位置ズレd1´を含むほどの厚肉構造の開封防止機構付きキャップを製造することは困難である。
【0016】
また、前記位置ズレd1´のため、容器本体の口部の内径32d´を所定大以上とすることができず、容器形状や収容物の大きさが制限されてしまう。特に、開封防止機構付きキャップ外形に段差を生じさせないため、開封防止機構付きキャップ外周縁を別コアで覆ったダブルコア形状とすると、容器本体部の外径31d´と口部の内径32d´とが、相当大(例えば20mm以上)以上相違し、容器本体の口部の大きさに極めて大きな制限が生じてしまう。
【0017】
そこで本発明では、開封防止機構付きキャップの成形金型、この成形金型を用いた開封防止機構付きキャップの製造方法、この製造方法によって得られる開封防止機構付きキャップ、及び、前記開封防止機構付きキャップを備えた容器(開封防止機構付き容器)であって、開封防止機構付きキャップの螺合部と螺子最終位置側の先端部との位置ズレの発生を抑制し、開封防止機構付きキャップの体裁が良く、また、容器本体の口部の径の大きさの制限を抑止しうるものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決すべく、本発明では下記(1)ないし(7)の手段を講じている。
【0019】
(1)本発明の開封防止機構付きキャップ1は、外形周囲を亘る一の外周板11と、この外周板11の内側面に形成された内螺子部12と、外周板11の内側面のうち内螺子部12の下方に複数個形成され、開封時に容器本体3の一部たる第二の掛止爪22と掛止しうる第一の掛止爪21と、外周板11の内側面であって、前記複数個の第一の掛止爪21のうち隣り合う二つの第一の掛止爪21間に形成され、樹脂成形時に成形金型の一部たる樹脂押さえ用溝63によって形成される複数の第三の掛止爪23とを具備した開封防止機構付きキャップである。そして、前記外周板11は、その内側面に設けた段差の上方及び下方にそれぞれ厚肉部111及び薄肉部113を有し、前記内螺子部12はこの厚肉部111に形成され、前記複数個の第一の掛止爪21及び第三の掛止爪23はいずれも、この薄肉部113に形成されてなることを特徴とする。
【0020】
このようなものであれば、第三の掛止爪23が、外周板11の薄肉部111の内側面であって、第一の掛止爪21間に、側方向を向いて散設形成されるため、外周板11を比較的薄型のものとすることができる。また、成形金型分離時の掛止機能と共に、開封防止機能をも果たしうる。
【0021】
(2)前記本発明の開封防止機構付きキャップ1において、複数個の第一の掛止爪21及び第三の掛止爪23はいずれも、外周板11の内側へ向かって突出した偏突起からなり、それぞれの偏突起の、内側面方向の掛止高さ2hは、いずれも前記厚肉部111と薄肉部113の厚さの差たる段差幅112bよりも小さいものであることが好ましい。
【0022】
このようなものであれば、複数の第一の掛止爪21及び複数の第三の掛止爪23がいずれも、底面視にて内螺子部12の最外縁(螺子底)よりも内側へ突出することなく形成される。
【0023】
これにより、開封防止機構付きキャップ1と容器本体3とを螺合する際に、第一及び第三の掛止爪23がいずれも、容器本体3の外螺子部33と接触することのないものとなる。このため、開封防止機構付きキャップ1と容器本体3とを、容易に或いは確実に螺合固定することができ、また掛止爪は、螺子部等との接触によって欠損することなく掛止位置に配置される。
【0024】
或いは、前記第三の掛止爪23が第一の掛止爪21よりも低い掛止高さ2hであることが好ましい。
【0025】
なお、前記第三の掛止爪23と第一の掛止爪21は、容器本体3の口部32根元に形成された複数の第二の掛止爪22と掛止するものであると共に、すべての第三の掛止爪23と第一の掛止爪21において、第二の掛止爪22に対する掛止面2fの角度が共通することが好ましい。
【0026】
(3)また、本発明の容器は、前記いずれか記載の開封防止機構付きキャップ1と、この開封防止機構付きキャップ1の内螺子部12に螺合しうる口部32を備えた容器本体3とから構成された容器である。そして、容器本体3は、口部32の下端付近の螺子終端側に複数個形成され、前記第一及び第三の掛止爪31、33に掛止しうる第二の掛止爪32と、前記外周板と共通した外径(31d)の容器側板31とを具備してなる。
【0027】
このようなものであれば、容器本体3の容器側板31の外径と、開封防止機構付きキャップ1の外周板11の外径11dとが共通するため、容器本体3と開封防止機構付きキャップ1とを螺合させた状態で、両部品間で外側面に大きな径の変化が生じることなく、いわゆる面一の容器となる。これは、例えば螺子締結後の容器の周囲をフィルム等でラミネートする場合、このラミネート工程を容易に行うことができ、皺の生じにくい体裁の良いラミネート状態とすることができる。
【0028】
なお、このとき開封防止機構は、開封方向へ螺進した開封防止機構付きキャップ1の外周板11に備えた第一の掛止爪21及び第三の掛止爪23と、容器本体3の口部32下方に備えた第二の掛止爪22とが掛止することによるものであり、容器側板31は、前記第二の掛止爪22よりも下方に配置される。
【0029】
(4)本発明の開封防止機構付きキャップ1の成形金型は、
開封防止機構付きキャップ1の内螺子部に対応する螺子部金型が外周に沿って形成されると共に基台4に対して回転進退可能なモーターラック5と、
開封防止機構付きキャップ1の開封防止機構に対応する開封防止用溝61が外周に沿って複数個形成されると共に基台4内で前記モーターラック5の周囲に立設した開封防止用金型6と、
開封防止機構付きキャップ1の外周側面及び天面に対応して形成されると共に前記開封防止用金型6を覆って基台4に当接しうる外部金型7とを具備した、射出成形用の成形金型である。
そして、前記開封防止用金型6は、複数の開封防止用溝61と共に、その外周側面に、金型内へ射出された樹脂の回転を押えるための複数の樹脂押さえ用溝63を散設してなることを特徴とする。
【0030】
このようなものであれば、樹脂押さえ機構として、側面を向いた樹脂押さえ用溝63を、同じく側面を向いた開封防止用溝61と共に、外周側面に形成したものとなる。このため、樹脂押さえ機構を形成するための、厚さ方向への樹脂成形領域を別途確保する必要がなくなる。
【0031】
(5)また、前記開封防止機構付きキャップ1の成形金型において、複数の開封防止用溝61が、いずれも平面視にて一の周方向へ偏った偏倚溝であると共に、樹脂押さえ用溝63が、前記開封防止用溝の偏倚溝と同一の周方向に偏った偏倚溝であることが好ましい。
【0032】
このようなものであれば、成形された開封防止機構付きキャップ1において、樹脂押さえ用溝63の偏倚溝によって偏突起からなる第三の掛止爪23が形成され、この第三の掛止爪23が容器本体3の第二の掛止爪22に掛止することで、第三の掛止爪23によってもある程度の開封防止機能を果たしうる。
【0033】
(6)また、前記開封防止機構付きキャップ1の成形金型において、複数の開封防止用溝61と樹脂押さえ用溝63とが混在して、開封防止用溝61又は樹脂押さえ用溝63のいずれかが、開封防止用金型6の外周へ等間隔に形成されることが好ましい。
【0034】
このようなものであれば、開封防止機構付きキャップ1の螺子締結時に、容器本体3の口部32の螺子終端側に形成した第二の掛止爪22を、第一及び第三の掛止爪31、33のいずれかの間に配置させるまでねじ締結することで、第一及び第三の掛止爪31、33の、第二の掛止爪22への掛止機会を増加させ、より確実に開封防止するものとなる。
【0035】
(7)また、本発明の開封防止機構付きキャップ1の製造方法は、前記いずれかの開封防止機構付きキャップ1の成形金型を用いたものであって、
基台4よりも突出した位置のモーターラック5、開封防止用金型6、及び外部金型7を当接させて成形型の型締めを行う型締め工程と、
前記型締め工程後に開封防止機構付きキャップ1型内へ樹脂を射出してこの射出樹脂を冷却固化させる射出固化工程と、
前記射出固化工程後にモーターラック5を基台4から回転退進させて内螺子部12の型抜きをする内型抜き工程と、
前記内型抜き工程後に開封防止用金型6及び外部金型7の当接を解除して外側の型抜きをする外型抜き工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
上記構成を採用することで、開封防止機構付きキャップ1の螺合部と螺子最終位置側の先端部との位置ズレd1の発生が抑制される。このため、螺合部と螺子最終位置側の先端部とで、外形に必ずしも段差を設ける必要がなく、体裁の良い開封防止機構付きキャップ1を形成しうる。また、容器本体3の口部32の径の大きさの制限が抑止され、比較的おおきな口部32の容器本体3を使用しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明を実施するための最良の形態例について、実施例として示す各図を参照して詳細に説明する。図1ないし図2に、本発明の実施例1の開封防止機構付き容器、及び開封防止機構付きキャップ1を示す。図3ないし図9に、本発明の実施例1の開封防止機構付きキャップ1の成形金型及び製造方法を示す。
【0038】
具体的には、図1が、本発明の実施例1の開封防止機構付きキャップ1とそれを備えた開封防止機構付き容器の側方向視軸断面説明図であり、図2が、実施例1の開封防止機構付きキャップ1の底面図である。
【0039】
図3、図5、図8、及び図9は、実施例1の開封防止機構付きキャップ1の製造方法の各工程後ないし工程中の状態を示す軸断面説明図であり、成形金具の状態説明図である。各工程とはそれぞれ、型締め工程後(図3)、射出固化工程後(図5)、内型抜き工程中(図8)、および外型抜き工程後(図9)の状態である。
【0040】
また、図4は、型締め工程後の状態(図3)における、成形型内のモーターラック5及び開封防止用金型6を示す斜視説明図である。図6及び図7は、射出固化工程後の状態(図5)における、それぞれA−B部拡大断面説明図、及びC−C線断面説明図である。
【0041】
なお図10ないし図14には、従来の開封防止機構付き容器、開封防止機構付きキャップ1、その成形金型及び製造方法の一例を示す。それぞれ図10は本発明の図1に、図11は本発明の図2に、図12は本発明の図4に、図13は本発明の図6に、そして図14は本発明の図7に対応する。
【0042】
<本発明の開封防止機構付き容器>
本発明の開封防止機構付き容器は、開封防止機構付きキャップ1を備えた容器であり、図1に示すように、外周板11に内螺子部が形成された開封防止機構付きキャップ1と、これに螺合しうる外螺子が形成された口部32を容器側板31の上方に有する容器本体3とから構成される。
【0043】
そして、容器本体3の容器側板31の外径31dと、開封防止機構付きキャップ1の外周板11の外径11dとが共通する。このため、容器本体3と開封防止機構付きキャップ1とを螺合させた図1に示す状態で、外側面に段差が生じることなのない、いわゆる面一の容器となる。
【0044】
これにより、例えば内容物収容後に螺子締結後の容器の周囲をフィルム等でラミネートするラミネート工程を容易に行うことができ、皺の生じにくい体裁の良いラミネート状態とすることができる。
【0045】
<開封防止機構>
このとき開封防止機構は、開封方向へ螺進した開封防止機構付きキャップ1の外周板11に備えた第一の掛止爪21及び第三の掛止爪23と、容器本体3の口部32の下方に備えた第二の掛止爪22とが掛止することによるものである(図1)。なお容器側板31は、前記第二の掛止爪22よりも下方に配置される。
【0046】
<本発明の開封防止機構付きキャップ1>
本発明の開封防止機構付きキャップ1は、外形周囲を亘る一の外周板を具備し、ヒンジによって開封しうるヒンジ蓋を一体的に備えた、シングルコア開封防止機構付きキャップ1である。具体的には、図2に示すように、外形周囲を亘る一の外周板11と、この外周板の内側面に形成された内螺子部12と、この外周板12の内側面のうち内螺子部12の下方にて、いずれも内側方を向いて形成された複数の第一の掛止爪21及び複数の第三の掛止爪23と、外周板12の上部にて、繰り返し開閉可能なヒンジ蓋と、ヒンジ蓋を開けたときに現出し、その中心部分が切り取り可能な内部天板を具備する。開封防止機構付きキャップ1の開封時には、ヒンジ蓋を開けて内部天板の中心部分を切り取る。切り取った内部天板の切り取り孔から内容物を取り出した後は、再びヒンジ蓋を閉める。
【0047】
(外周板11)
外周板11は、それ自体の内側面にのみ段差を有してこの段差より上方の厚肉部111と段差より下方の薄肉部113とから一体的に構成されてなる。
【0048】
外周板11は、それ自体の内側面にのみに設けた所定の段差幅112bの段差を介して、この段差より上方の厚肉部111と段差より下方の薄肉部113とから一体的に構成されてなる。
【0049】
厚肉部111は、側面に樹脂押さえ用溝63を形成した成形金型によって、比較的薄いものとして形成される。なお、ここで樹脂押さえ用溝63は、金型分離時に樹脂を押さえるためのものであり、開封防止機構付きキャップ1の内側側方へ形成される。
【0050】
厚肉部111が比較的薄いため、樹脂押さえ機構に基づく段差が外周板11の外面に生じることがなく、なだらかな外周形のシングルコア開封防止機構付きキャップ1となる。
【0051】
(内螺子部12)
内螺子部12は、成形金型の一部たるモーターラック5によって、外周板11の厚肉部111に形成される。
【0052】
本発明の開封防止機構付きキャップ1の製造方法は、前記いずれかの開封防止機構付きキャップ1を成形するものである。
【0053】
(第一の掛止爪21)
第一の掛止爪21は、開封防止機構付きキャップ1を容器本体へ螺合締結したときに、容器本体に設けた第二の掛止爪22の、開封方向側の掛止面2fと掛止して、容易な開封を防止するためのものである。
【0054】
第一の掛止爪21はいずれも、成形金型の一部に形成された開封防止用溝61によって、外周板11の薄肉部113の内側面に形成される。これらは上下方向ではなく、開封防止機構付きキャップ1の内側側方へ向かって突出してなり、内側側方へ所定の掛止高さを有する。
【0055】
複数の第一の掛止爪21はいずれも、(成形金型の)開封防止用溝61によって前記薄肉部113に等間隔に4箇所形成される。
【0056】
この第一の掛止爪21は、容器本体3の第二の掛止爪22に掛止しうる掛止面2fを有しており、第二の掛止爪22の数及び位置に対応して配設される。そして、成形後の容器本体3への螺合締結状態において、容器の第二の掛止爪22の掛止面2fと当接することで、開封防止機能を果たしうる。
【0057】
(第三の掛止爪23)
第三の掛止爪23は、主に、成形時の金型分離時に成形金型の一部に掛止するためのものである。また、第一の掛止爪21間にて上下方向ではなく、開封防止機構付きキャップ1の内側側方へ向かって突出し、一の周方向へ掛止面2fを有して形成されるため、容器本体2に設けた第二の掛止爪22の開封方向側の掛止面2fと掛止して、容易な開封を防止する開封防止用のものとしても機能しうる。
【0058】
第三の掛止爪23はいずれも、外周板11の薄肉部113の内側面内、かつ内螺子部12の下方に隣接した下端の位置に形成される。また、前記複数の第一の掛止爪21複数の第一の掛止爪21のうち、隣り合う一対の第一の掛止爪21間に散設される。これらは、成形金型の一部たる開封防止用金型6に形成された樹脂押さえ用溝63の偏移溝によって形成されるものである。
【0059】
それぞれの第三の掛止爪23は背面視(図2)にて開封防止機構付きキャップ1の内側側方へ向かって突出した偏突起からなる。そして、外周板11の内側面から中心方向へ向かって所定の掛止高さ2hを有する。
【0060】
第三の掛止爪23はまた、第一の掛止爪21と相似形状であり、第一の掛止爪21よりも一回り小さいものとなっている。これにより、第三の掛止爪23の掛止面2f及び掛止高さ2hは、第三の掛止爪23の掛止面2f及び掛止高さ2hよりも小さい。
【0061】
第三の掛止爪23はいずれも内側面を向き、同じく内側面を向いた第一の掛止爪21と共に形成されるため、成形時の樹脂押さえ機構を形成するための、厚さ方向への樹脂成形領域を別途確保する必要がなくなり、外周板11のうち、厚肉部111を比較的薄いものとすることができる。これにより、外周板11の外側面に段差を有さない滑らかな外周面の外周板11の開封防止機構付きキャップ1となる。
【0062】
外周板11において、隣り合う第一の掛止爪21と第三の掛止爪23、及び、隣り合う第三の掛止爪23同士は混在して、第一の掛止爪21又は第三の掛止爪23が等間隔に形成される。
【0063】
共に側方向を向いた樹脂押さえ用溝63と第三の掛止爪23とから、本発明の樹脂押さえ機構が形成される。この本発明の樹脂押さえ機構は、側方を向いた開封防止用の第一の掛止爪21の間にて、第一の掛止爪21と同じく開封防止機構付きキャップ1の内側方を向いて形成される。これは、たとえば図10、図11に示す従来の樹脂押さえ用溝63´やこれによる形成穴33´のように、外周板11の段差内で上下方向を向いて形成されるものではないため、厚肉部111を比較的薄いものとして形成することが可能となる。これにより、本発明のの開封防止機構付きキャップ1は、樹脂押さえ機構に基づく段差が外周板11の外面に生じることがなく、なだらかな外周形のシングルコア開封防止機構付きキャップ1となっている。
【0064】
(第一の掛止爪21及び三の掛止爪23)
第一の掛止爪21及び第三の掛止爪23の、外周板11の内側へ向かう掛止高さ2hはいずれも、前記厚肉部111と薄肉部113の厚さの差、すなわち段差幅112bよりも小さいものである。ここで、厚肉部111と薄肉部113の境界となる外周板11の段差は、外周板の内側面にのみ設けられたものであり、外周板11の外側面は滑らかな面からなる。
【0065】
このため、複数の第一の掛止爪21及び複数の第三の掛止爪23がいずれも、底面視にて内螺子部12の最外縁(螺子底)よりも内側へ突出することなく形成される。
【0066】
これにより、開封防止機構付きキャップ1と容器本体3とを螺合する際に、第一及び第三の掛止爪23がいずれも、容器本体3の外螺子部33と接触することのないものとなる。このため、開封防止機構付きキャップ1と容器本体3とを、容易に或いは確実に螺合固定することができ、また掛止爪は、螺子部等との接触によって欠損することなく掛止位置に配置される。
【0067】
(本発明の開封防止機構付きキャップ1の製造方法)
本発明の開封防止機構付きキャップ1は、例えば、後述する特定の開封防止機構付きキャップ1の成形金型を用いて、少なくとも下記各製造工程を具備することによって製造される。
【0068】
各製造工程とは順に、
・基台4よりも突出した位置のモーターラック5、開封防止用金型6、及び外部金型7を当接させて成形型の型締めを行う型締め工程(図3)、
・前記型締め工程後に開封防止機構付きキャップ1型内へ樹脂を射出してこの射出樹脂を冷却固化させる射出固化工程(図5)、
・前記射出固化工程後にモーターラック5を基台4から回転退進させて内螺子部12の型抜きをする内型抜き工程(図8)、
・前記内型抜き工程後に開封防止用金型6及び外部金型7の当接を解除して外側の型抜きをする外型抜き工程(図9)である。
【0069】
<本発明の開封防止機構付きキャップ1の成形金型>
本発明の開封防止機構付きキャップ1の成形金型は、射出成形による開封防止機構付きキャップ1の成形金型である。少なくとも、
・基台4と、
・基台4に対して回転進退可能なモーターラック5と、
・基台4内で前記モーターラック5の周囲を支承する開封防止用金型6と、
・前記開封防止用金型6を覆って基台4に当接しうる外部金型7とを具備する。
【0070】
(開封防止用金型6)
開封防止用金型6は、開封防止機構付きキャップ1の開封防止機構に対応する開封防止用溝61を外周に沿って等間隔に散設してなると共に、金型内への射出樹脂の回転を押えるための複数の樹脂押さえ用溝63を、外周側面に散設してなる。
【0071】
このようなものであれば、樹脂押さえ機構として、側面を向いた樹脂押さえ用溝63を、同じく側面を向いた開封防止用溝61と共に、外周側面に形成したものとなる。このため、樹脂押さえ機構を形成するための、厚さ方向への樹脂成形領域を別途確保する必要がなくなる。
【0072】
(モーターラック5)
モーターラック5は、成形金型のうち、開封防止機構付きキャップ1の内螺子部12に対応するものであり、モーター機構によって、突出位置S1から退進位置S2までの間を回転しながら進退しうる。モーターラック5の外周に沿って、開封防止機構付きキャップ1の内螺子部に対応する螺子部金型が形成される。
【0073】
(外部金型7)
外部金型7は、射出口71を有し、開封防止機構付きキャップ1の外周側面及び天面に対応して形成される。成形後の金型分離のため、図示するように複数ブロックから形成されることが好ましい。
【0074】
(開封防止用溝61)
複数の開封防止用溝61は、いずれも平面視にて第一の周方向(回転軸中心からみて同一廻りの方向)へ偏った第一の偏突起を形成するための偏倚溝である。
【0075】
(樹脂押さえ用溝63)
複数の樹脂押さえ用溝63は、前記第一の周方向、すなわち、開封防止用溝61の偏移溝と同一の周方向に偏った偏倚溝である。
【0076】
(開封防止用溝61と樹脂押さえ用溝63)
実施例の複数の開封防止用溝61と樹脂押さえ用溝63は、両溝が規則的に並び、開封防止用金型6の外周へ等間隔に形成される。
【0077】
このようなものであれば、開封防止機構付きキャップ1の螺子締結時に、容器の口部32の螺子終端側に形成した第二の掛止爪22を、第一及び第三の偏突起のいずれかの間に配置させるまでねじ締結することで、第二の掛止爪22の掛止機会を増加させ、より確実に開封防止するものとなる。
【0078】
(容器本体3)
容器本体3は、外螺子が形成された口部32を、容器側板31の上方に有する。この外螺子は、開封防止機構付きキャップ1の内螺子部12に螺合しうるものである。また、口部の基端側の周囲に、複数の第二の掛止爪22が側方を向いて等間隔に形成される。
【0079】
容器本体3の容器側板31の外径31dは、開封防止機構付きキャップ1の外周板11の外径11dと共通する。容器側板31は、前記第二の掛止爪22よりも下方に配置される。
【0080】
これにより、容器本体3と開封防止機構付きキャップ1とを螺合させた状態で、外側面に段差が生じることなく、体裁の良いいわゆる面一の容器となる。これは、例えば螺子締結後の容器の周囲をフィルム等でラミネートする場合、このラミネート工程を容易に行うことができ、皺の生じにくいラミネート状態とすることができるものである。
【0081】
また、口部内径32dを比較的大きいものとすることができるため、収容しうる内容物の形状及び大きさが口部32の大きさによって大きく制限されない。この口部内径32dの大きさは、開封防止機構付きキャップ1の金型分離時の樹脂押さえ機構によって生じる厚さ方向の位置ズレd1を小さいものとしたことで確保されるものである。
【0082】
なお、このとき開封防止機構は、開封方向へ螺進した開封防止機構付きキャップ1の外周板11に備えた第一の掛止爪21及び第三の掛止爪23と、容器本体3の口部32の下方に備えた第二の掛止爪22とからなる。
【0083】
(第二の掛止爪22)
複数の第二の掛止爪22はいずれも、片側へ掛止面2fを有して外周方向へ突出した平面視扁平三角形の偏突起からなる。また、容器本体3の口部32の基端側かつ外螺子部33の終端側の外周に沿って、等間隔に形成される。開封防止機構付きキャップ1締結時の第一の掛止爪21に対応した数(実施例では4個)が形成される。
【0084】
但しここで、第二の掛止爪の掛止面2fは、第一及び第三の掛止爪21、23の掛止面2fとは逆の周方向を向いて形成される。これにより、開封防止機構付きキャップ1を容器本体3へ螺合締結した状態において、開封防止機構付きキャップ1の第一の掛止爪21ないし第三の掛止爪23の各掛止面2fと第二の掛止爪の掛止面2fとが当接し、開封防止機能を果たしうる。
【0085】
その他各部の具体的な構成は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施例1の開封防止機構付きキャップ1とそれを備えた開封防止機構付き容器の側方向視軸断面説明図である。
【図2】実施例1の開封防止機構付きキャップ1の底面図である。
【図3】実施例1の開封防止機構付きキャップ1の製造方法における型締め工程後中の成形金具等の状態を示す軸断面説明図である。
【図4】図3の型締め工程後の状態における、成形型内のモーターラック及び開封防止用金型を示す斜視説明図である。
【図5】実施例1の開封防止機構付きキャップ1の製造方法における射出固化工程後の成形金具等の状態を示す軸断面説明図である。
【図6】図5の射出固化工程後の状態における、側面視A−B部拡大断面説明図である。
【図7】図5の射出固化工程後の状態における、側面視C−C線断面説明図である。
【図8】実施例1の開封防止機構付きキャップ1の製造方法における内型抜き工程中の成形金具等の状態を示す軸断面説明図である。
【図9】実施例1の開封防止機構付きキャップ1の製造方法における外型抜き工程後の成形金具等の状態を示す軸断面説明図である。
【図10】従来の開封防止機構付きキャップ1例とそれを備えた開封防止機構付き容器例の側方向視軸断面説明図である。
【図11】図10に示す従来の開封防止機構付きキャップ例の底面図である。
【図12】従来の型締め工程後の状態における、成形型内のモーターラック及び開封防止用金型の例を示す斜視説明図である。
【図13】従来の射出固化工程後の状態例における、側面視一部拡大断面説明図である。
【図14】従来の射出固化工程後の状態例における、底面視断面説明図である。
【符号の説明】
【0087】
1 開封防止機構付きキャップ
11 外周板
11d 外周板の外径
111 厚肉部
111b 厚肉部厚さ
112b 段差幅
113 薄肉部
12 内螺子部
21 第一の掛止爪
22 第二の掛止爪
23 第三の掛止爪
2f 掛止面
2h 掛止高さ
3 容器本体
31 容器側板
31d 容器側板の外径
32 口部
32d 口部内径
33 外螺子部
4 基台
5 モーターラック
6 開封防止用金型
61 開封防止用溝
63 樹脂押さえ用溝
7 外部金型
71 射出口
d1 位置ズレ
R 樹脂
S1 突出位置
S2 退進位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形周囲を亘る一の外周板と、この外周板の内側面に形成された内螺子部と、外周板の内側面のうち内螺子部の下方に複数個形成され、開封時に容器本体の一部と掛止しうる第一の掛止爪と、外周板の内側面のうち前記複数個のうち隣り合う二つの第一の掛止爪間に形成され、樹脂成形時に成形金型の一部(樹脂押さえ用溝)によって形成される複数の第三の掛止爪とを具備した開封防止機構付きキャップであって、前記外周板は、その内側面に設けた段差の上方及び下方にそれぞれ厚肉部及び薄肉部を有し、前記内螺子部はこの厚肉部に形成され、前記複数個の第一の掛止爪及び第三の掛止爪はいずれも、この薄肉部に形成されてなることを特徴とする開封防止機構付きキャップ。
【請求項2】
複数個の第一の掛止爪及び第三の掛止爪はいずれも、外周板の内側へ向かって突出した偏突起からなり、各偏突起の、内側面方向の掛止高さは、いずれも前記厚肉部と薄肉部の厚さの差よりも小さいものである請求項1記載の開封防止機構付きキャップ。
【請求項3】
請求項1または2記載の開封防止機構付きキャップと、この開封防止機構付きキャップの内螺子部に螺合しうる口部を備えた容器本体とから構成された容器であって、容器本体は、口部の下端付近に複数個形成され、前記第一及び第三の掛止爪に掛止しうる第二の掛止爪と、前記外周板と共通した外径の容器側板とを具備してなる開封防止機構付き容器。
【請求項4】
キャップの内螺子に対応する螺子部金型が外周に沿って形成されると共に基台に対して回転進退可能なモーターラックと、開封防止機構付きキャップの開封防止機構に対応する開封防止用溝が複数個形成されると共に基台内で前記モーターラックの周囲に立設した開封防止用金型と、開封防止機構付きキャップの外周側面及び天面に対応して形成されると共に前記開封防止用金型を覆って基台に当接しうる外部金型とを具備した、射出成形用の成形金型であって、前記開封防止用金型は、その外周側面に、金型内へ射出された樹脂の回転を押えるための複数の樹脂押さえ用溝を散設してなる開封防止機構付きキャップの成形金型。
【請求項5】
複数の開封防止用溝が、いずれも平面視にて一の周方向へ偏った偏倚溝であると共に、樹脂押さえ用溝が、前記開封防止用溝の偏倚溝と同一の周方向に偏った偏倚溝である請求項4記載の開封防止機構付きキャップの成形金型。
【請求項6】
複数の開封防止用溝と樹脂押さえ用溝とが混在して、開封防止用溝又は樹脂押さえ用溝のいずれかが、開封防止用金型の外周へ等間隔に形成される請求項4又は5記載の開封防止機構付きキャップの成形金型。
【請求項7】
請求項4、5または6のいずれか記載の開封防止機構付きキャップの成形金型を用いた開封防止機構付きキャップの製造方法であって、基台よりも突出した位置のモーターラック、開封防止用金型、及び外部金型を当接させて成形型の型締めを行う型締め工程と、前記型締め工程後にキャップ型内へ樹脂を射出してこの射出樹脂を冷却固化させる射出固化工程と、前記射出固化工程後にモーターラックを基台から回転退進させて内螺子部の型抜きをする内型抜き工程と、前記内型抜き工程後に開封防止用金型及び外部金型の当接を解除して外側の型抜きをする外型抜き工程と、を具備することを特徴とする開封防止機構付きキャップの製造方法。
【請求項1】
外形周囲を亘る一の外周板と、この外周板の内側面に形成された内螺子部と、外周板の内側面のうち内螺子部の下方に複数個形成され、開封時に容器本体の一部と掛止しうる第一の掛止爪と、外周板の内側面のうち前記複数個のうち隣り合う二つの第一の掛止爪間に形成され、樹脂成形時に成形金型の一部(樹脂押さえ用溝)によって形成される複数の第三の掛止爪とを具備した開封防止機構付きキャップであって、前記外周板は、その内側面に設けた段差の上方及び下方にそれぞれ厚肉部及び薄肉部を有し、前記内螺子部はこの厚肉部に形成され、前記複数個の第一の掛止爪及び第三の掛止爪はいずれも、この薄肉部に形成されてなることを特徴とする開封防止機構付きキャップ。
【請求項2】
複数個の第一の掛止爪及び第三の掛止爪はいずれも、外周板の内側へ向かって突出した偏突起からなり、各偏突起の、内側面方向の掛止高さは、いずれも前記厚肉部と薄肉部の厚さの差よりも小さいものである請求項1記載の開封防止機構付きキャップ。
【請求項3】
請求項1または2記載の開封防止機構付きキャップと、この開封防止機構付きキャップの内螺子部に螺合しうる口部を備えた容器本体とから構成された容器であって、容器本体は、口部の下端付近に複数個形成され、前記第一及び第三の掛止爪に掛止しうる第二の掛止爪と、前記外周板と共通した外径の容器側板とを具備してなる開封防止機構付き容器。
【請求項4】
キャップの内螺子に対応する螺子部金型が外周に沿って形成されると共に基台に対して回転進退可能なモーターラックと、開封防止機構付きキャップの開封防止機構に対応する開封防止用溝が複数個形成されると共に基台内で前記モーターラックの周囲に立設した開封防止用金型と、開封防止機構付きキャップの外周側面及び天面に対応して形成されると共に前記開封防止用金型を覆って基台に当接しうる外部金型とを具備した、射出成形用の成形金型であって、前記開封防止用金型は、その外周側面に、金型内へ射出された樹脂の回転を押えるための複数の樹脂押さえ用溝を散設してなる開封防止機構付きキャップの成形金型。
【請求項5】
複数の開封防止用溝が、いずれも平面視にて一の周方向へ偏った偏倚溝であると共に、樹脂押さえ用溝が、前記開封防止用溝の偏倚溝と同一の周方向に偏った偏倚溝である請求項4記載の開封防止機構付きキャップの成形金型。
【請求項6】
複数の開封防止用溝と樹脂押さえ用溝とが混在して、開封防止用溝又は樹脂押さえ用溝のいずれかが、開封防止用金型の外周へ等間隔に形成される請求項4又は5記載の開封防止機構付きキャップの成形金型。
【請求項7】
請求項4、5または6のいずれか記載の開封防止機構付きキャップの成形金型を用いた開封防止機構付きキャップの製造方法であって、基台よりも突出した位置のモーターラック、開封防止用金型、及び外部金型を当接させて成形型の型締めを行う型締め工程と、前記型締め工程後にキャップ型内へ樹脂を射出してこの射出樹脂を冷却固化させる射出固化工程と、前記射出固化工程後にモーターラックを基台から回転退進させて内螺子部の型抜きをする内型抜き工程と、前記内型抜き工程後に開封防止用金型及び外部金型の当接を解除して外側の型抜きをする外型抜き工程と、を具備することを特徴とする開封防止機構付きキャップの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−13181(P2008−13181A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182864(P2006−182864)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000177117)三洋化学工業株式会社 (5)
【出願人】(599110832)大阪硬質硝子株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000177117)三洋化学工業株式会社 (5)
【出願人】(599110832)大阪硬質硝子株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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