説明

開閉体制御装置

【課題】ユーザの移動に応じて開閉体を開動作させることにより、高い利便性を得られる開閉体制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】開閉体制御装置は、無線信号を受信する受信部と、受信部で受信した無線信号を用いて、送信機が受信部へ接近する速度を導出する速度導出手段と、速度導出手段が導出した速度を用いて、開閉体を開動作させるまでの開動作開始時間を導出して設定する開動作開始時間設定手段と、開動作開始時間設定手段が設定した開動作開始時間に応じて、開閉体が開動作を行う指示を開閉体へ出力する開閉動作制御手段とを備え、送信機から送信される無線信号に応じて、開閉体の開閉動作を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開閉体制御装置に関し、より特定的には、受信した無線信号に応じて開閉体の動作を制御する開閉体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車において、ユーザが携帯機に備えられたスイッチを操作することにより、車両から離れた位置で当該車両のドアの開施錠、およびスライドドアやバックドアなどの開閉を可能とする、所謂キーレスエントリーシステムが一般的に知られている。また、近年では、ユーザが携帯機を所持したまま車両に接近すると、当該車両のドアがアンロックし、ユーザが携帯機を所持したまま車両から遠ざかると当該車両のドアがロックされる、所謂キーフリーシステムが普及し始めている。これらのシステムは、ユーザが携帯する携帯機と、車両に備えられた本体機とで無線通信を行うことにより、ユーザの車両への接近や、ユーザの携帯機への入力操作に応じて、本体機が車両に搭載されたドアの開閉や、ロックの開施錠を行う。
【0003】
上記のようなキーフリーシステムを応用した車両の開閉体制御装置が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される車両の開閉体制御装置は、携帯機から自動的に送信される無線信号を受信し、受信した無線信号の電界強度が所定値以上になると、ドアをアンロックし、さらにウィンドウなどを開ける制御を行う。無線信号の電界強度は、開閉体制御装置と携帯機との距離に応じて変化し、該距離が短いほど大きく、該距離が長いほど小さい。したがって、携帯機を携帯したユーザが、開閉体制御装置から電界強度が所定値となる一定の距離以内に移動することにより、ドアがアンロックされ、さらにウィンドウなどが開かれる。
【特許文献1】特開2001−234653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような一般的なキーレスエントリーシステムでは、例えば、ユーザが車両へ近づきながら携帯機でドアを開く操作を行った際、ユーザが車両近傍に到達した時点でドアが完全に開いていない場合がある。そのような場合、ユーザは、ドアが開くまで待つ必要があり不便である。また、特許文献1に開示される車両の開閉体制御装置を、自動車のドアを開閉する装置として適用した場合、携帯機を所持したユーザが車両から一定の距離以内に近づいた時点でドアが開かれる。そのため、ユーザの移動速度が早い場合には、ユーザがドアに到着した時点でドアがまだ開いていない場合がある。また、ユーザの移動速度が遅い場合には、ユーザがドアに到着するよりも早い時点でドアが全開した状態になり、雨天時など雨が車内に入ってしまう場合がある。このように、従来の技術では、ドアが開閉されるタイミングがユーザの意図するタイミングより早くなったり、遅くなったりして、ユーザが不便を感じる場合がある。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、無線信号を送信する携帯機を所持したユーザの移動に応じたタイミングで開閉体を開動作させることにより、利便性の高い開閉体制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するため、本願は以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明は、送信機から送信される無線信号に応じて、開閉体の開閉動作を制御する開閉体制御装置である。開閉体制御装置は、無線信号を受信する受信部と、受信部で受信した無線信号を用いて、送信機が受信部へ接近する速度を導出する速度導出手段と、速度導出手段が導出した速度を用いて、開閉体を開動作させるまでの開動作開始時間を導出して設定する開動作開始時間設定手段と、開動作開始時間設定手段が設定した開動作開始時間に応じて、開閉体が開動作を行う指示を開閉体へ出力する開閉動作制御手段とを備える。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明において、開閉体制御装置は、速度導出手段が導出した速度に基づいて、受信部の配置位置に前記送信機が到達するまでの到達時間を導出する到達時間導出手段を、さらに備える。開動作開始時間設定手段は、到達時間導出手段が導出した到達時間に応じて、開動作開始時間を設定する。
【0008】
第3の発明は、上記第2の発明において、開閉体制御装置は、受信部が受信した無線信号の受信強度を検出する無線信号強度検出手段を、さらに備える。到達時間導出手段は、速度導出手段が導出した速度および無線信号強度検出手段が検出した受信強度に基づいて、到達時間を導出する。
【0009】
第4の発明は、上記第2の発明において、開動作開始時間設定手段は、到達時間導出手段が導出した到達時間に基づいて、送信機を所持するユーザが開閉体に接近する時間を推定し、当該接近する時間に開閉体が開状態となる開動作開始時間を導出する。
【0010】
第5の発明は、上記第1の発明、または上記第2の発明において、開閉体制御装置は、受信部が受信した無線信号の受信強度を、時系列的に異なる時点で少なくとも2回検出する無線信号強度検出手段を、さらに備える。速度導出手段は、無線信号強度検出手段が検出した少なくとも2つの受信強度を用いて、速度を導出する。
【0011】
第6の発明は、上記第5の発明において、開閉体制御装置は、無線信号強度検出手段が受信強度を検出することに応じて、それぞれ送信機と受信部との距離を導出する距離導出手段を、さらに備え、速度導出手段は、距離導出手段が導出した少なくとも2つの距離を用いて、速度を算出する。
【0012】
第7の発明は、上記第6の発明において、距離導出手段は、導出した距離を時系列順に記憶手段に記憶し、速度導出手段は、距離導出手段が導出した最新の距離と、当該最新の距離が導出される直前に記憶手段に記憶されている直前の距離とを用いて、速度を算出する。
【0013】
第8の発明は、上記第6の発明において、距離導出手段は、導出した距離を時系列順に記憶手段に記憶し、速度導出手段は、距離導出手段が導出した最新の距離と、前記記憶手段に記憶された一連の距離のうち最初に記憶された距離とを用いて、前記速度を算出する。
【0014】
第9の発明は、上記第6の発明において、開閉体制御装置は、距離導出手段が導出した最初の距離が予め定められた閾値より短いか否かを判定する距離判定手段を、さらに備える。そして、開閉動作制御手段は、最初の距離が閾値より短いと距離判定手段が判定した場合、即時前記開閉体を開動作させる指示を行う。
【0015】
第10の発明は、上記第1の発明において、速度導出手段は、受信部が前記無線信号を継続して受信している間、定められた時間が経過する毎に、最新の速度を導出する。開動作開始時間設定手段は、最新の速度を用いて最新の開動作開始時間を導出して当該開動作開始時間を更新する。そして、開閉動作制御手段は、開動作開始時間設定手段が設定した最新の開動作開始時間に応じて、開閉体が開動作を行う指示を開閉体へ出力する。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によると、送信機が受信部へ接近する速度に応じて開閉体を開動作することができる。例えば、送信機を所持したユーザが開閉体に接近する場合、ユーザの接近速度が速いときに開閉体を開動作するタイミングを早くしたり、ユーザの接近速度が遅いときに開閉体を開動作するタイミングを遅くしたりすることが可能である。
【0017】
第2の発明によると、受信部の配置位置へ送信機が到達する時間をもとに開閉体が開動作されるタイミングが決定される。したがって、送信機を所持したユーザが受信部の配置位置に到達するタイミングに応じて開閉体を開ける等、到達時間に応じた所望のタイミングで開閉体を開けることが可能である。
【0018】
第3の発明によると、受信部の配置位置へ送信機が到達する時間が、無線信号の受信強度および送信機の移動速度をもとに導出されるため、受信部の配置位置へ送信機が到達する時間をより正確に導出することができる。
【0019】
第4の発明によると、送信機を所持するユーザが開閉体に接近する時間に前記開閉体を開状態になるため、ユーザは開閉体に接近してから開閉体が開状態になるまで待たなくて済む。
【0020】
第5の発明によると、送信機の移動速度は、送信機と受信部との距離に応じて変動する無線信号の受信強度を利用して算出されるため、送信機の移動速度を検出するための装置などを別途に備える必要がなく、速度に応じて開閉体を開動作させる開閉体制御装置を低コストで得ることが可能である。
【0021】
第6の発明によると、送信機と受信部との距離に応じて変動する無線信号の受信強度を利用して送信機と受信部との距離が導出されるため、送信機の位置を検出するための装置などを別途に備える必要がなく、送信機と受信部との距離をもとに、送信機の移動速度を算出することが可能である。
【0022】
第7の発明によると、送信機の現時点の移動速度をもとに開閉体が開動作される時間が決定されるため、送信機の移動速度がリアルタイムに変化することに応じたタイミングで開閉体を開動作させることができる。
【0023】
第8の発明によると、導出された送信機の最初の距離と最新の距離とに基づいて開閉体を開く時間が決定される。したがって、例えば、送信機が無線信号発信中に移動を一旦停止した場合などでも、大きな時間間隔における送信機の移動速度を導出することによって、移動速度に応じたタイミングで開閉体を開動作することが可能である。
【0024】
第9の発明によると、無線信号の受信開始時に送信機が予め定められた距離よりも受信部の近くにある場合、開閉体が即時開動作される。そのため、ユーザは、開閉体の近距離における操作では、開閉体を即時に開くことができる。
【0025】
第10の発明によると、開閉体制御装置が無線信号を受信している間、定期的に、送信機の移動に関する最新の情報にもとづいて開閉体が開動作される時間が更新されるため、送信機の移動速度の変化に応じて開閉体が開動作されるタイミングが変更される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態に係る開閉体制御装置10を含む開閉体制御システムについて説明する。本実施形態では、開閉体制御装置10が自動車等の車両に搭載され、ドアを開閉体としてドアの開動作を制御する一例について説明する。なお、開閉体制御装置10により開閉制御されるドアは、車両のスライドドアであっても良いし、車両のバックドアであっても良い。また、ドアに限らず、車両に備えられたウィンドウの開閉などが開閉体制御装置10の制御の対象とされても良い。
【0027】
例えば、開閉体制御装置10は車両本体に取付けられ、開閉体制御システムに含まれる携帯機20から送信される無線信号に応じて、車両のドアの開動作を制御する。携帯機20は、ユーザが携帯可能な端末装置であり、典型的には、開閉体制御装置10が搭載される車両のキーである。以下、開閉体制御装置10の機能構成について、図1を参照して説明する。なお、図1は、開閉体制御装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
図1に示すように、開閉体制御装置10は、受信部11および制御部12を備える。受信部11は、制御部12と接続される。受信部11は、携帯機20(図2参照)から送信される無線信号を受信し、受信した該信号を復調して制御部12へ出力する。制御部12は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)などの情報処理装置、メモリなどの記憶装置、およびインターフェース回路などを備える。
【0029】
そして、制御部12は、車両のドアロック装置61およびドア開閉装置62と接続される。ドアロック装置61は、制御部12からの指示やユーザのキー操作等に応じて、ドアの施錠をロック状態およびアンロック状態に切換えるロック装置である。ドアロック装置61は、ドアの施錠がロック状態であるか、またはアンロック状態であるかを示す信号を制御部12へ出力する。ドア開閉装置62は、制御部12からの指示やユーザの操作等に応じて、車両のドアの開閉を行う装置で、典型的には、車両のドアを開閉方向に移動させる駆動装置である。また、ドア開閉装置62は、ドアが閉じているか、またはドアが開いているかを示す信号を制御部12へ出力する。制御部12は、予め記憶したプログラムを実行し、受信部11から受けた信号をもとにドアロック装置61およびドア開閉装置62へ動作を指示する信号を出力する。
【0030】
次に、携帯機20の機能構成について、図2を参照して説明する。なお、図2は、携帯機20の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0031】
図2に示すように、携帯機20は、スイッチ21および送信部22を備える。スイッチ21は、送信部22に接続される押下式のボタン等で構成され、ユーザが押下することに応じた信号を出力する。送信部22は、スイッチ21からの入力信号を無線信号へ変調して送信する。スイッチ21は、ユーザにより押下されている間、すなわち長押し操作が実行されている間、入力信号を送信部22へ出力し続ける。スイッチ21からの入力信号が継続的に送信部22へ出力されている間、送信部22は、継続的に無線信号を送信し続ける。ユーザは、このような携帯機20を所持し、スイッチ21を長押し操作しながら移動することにより、開閉体制御装置10から離れた位置から開閉体制御装置10の動作指示を行うことができる。
【0032】
なお、本実施形態では、ユーザが携帯可能な端末装置で携帯機20が構成される例を用いて説明するが、携帯機20は他の態様でもかまわない。例えば、携帯機20は、ユーザが乗車する車両などに備え付けられ、当該車両と共に移動する態様でもかまわない。この場合、携帯機20は、例えば搭載される車両が出入りする扉の開閉(例えば、ガレージの出入り口に設けられたシャッターの開閉)等の操作を行う。
【0033】
また、本実施例では、上記無線信号にFM波(周波数変調波)を用いる例を示すが、電磁波や赤外線などの他の一般的な通信波を用いてもよい。但し、送信部22から送信される無線信号は、送信部22と受信部11との距離が近いほど受信部11での受信強度が強く、遠いほど受信部11での受信強度が弱くなる性質を有するものとする。また、送信部22および受信部11の間で送受信される無線信号は、他の通信波と混信しないように暗号化されることが好ましい。この場合、無線信号は、送信部22で暗号化されてから送信され、受信部11で受信されてから復号される。
【0034】
制御部12が備えるメモリには、図3に示すデータが一時的に記憶される。なお、図3は、制御部12が備えるメモリに記憶される主なデータを示した図である。
【0035】
制御部12が備えるメモリには、距離L、移動速度V、到着予想時間ΔTc、およびドアオープン時間ΔTdをそれぞれ示すデータが主に記憶される。距離Lは、受信部11で受信される無線信号強度をもとに推定され、送信部22と受信部11とのおよその距離である。距離Lは、後述の処理により複数の時点で特定され、距離Lを示すデータが時系列順にメモリに記憶される。図3においては、時系列順に第1の距離L1、第2の距離L2、第3の距離L3を示すデータが記憶されている例を図示している。移動速度Vは、送信部22が受信部11へ接近する速度である。到着予想時間ΔTcは、送信部22が受信部11の近傍に到着するまでに要すると予想される所要時間である。ドアオープン時間ΔTdは、ユーザがドアを開動作させる操作に応じて、制御部12がドア開閉装置62にドアを開動作させる指示を行うまで当該指示を待機する待機時間である。
【0036】
また、制御部12は、時間をカウントするドアタイマーおよびサンプリングタイマーを備える。ドアタイマーは、ドアオープン時間ΔTdをカウントする。サンプリングタイマーは、制御部12が無線信号の受信強度を取得する時間の間隔をカウントする。
【0037】
次に、図4から図11を参照して、本実施形態に係る開閉体制御装置10の動作について説明する。まず、図4および図5に示すフローチャートを参照して、制御部12の動作について説明する。図4および図5は、制御部12により実行される処理の詳細を示すフローチャートである。なお、図4および図5に示す動作は、制御対象の車両のドアが閉状態である場合に実行されるものとする。
【0038】
ステップS10において、制御部12は、送信部22から送信される無線信号を受信部11が受信しているか否か判断する。上述したように、送信部22からの無線信号は、受信部11を介して制御部12へ入力される。したがって、制御部12は、受信部11から入力される信号をもとに、受信部11が無線信号を受信しているか否かを判断する。そして、無線信号を受信部11が受信していると判断した場合、制御部12は、処理をステップS12へ進める。一方、送信部22からの無線信号を受信部11が受信していないと判断した場合、制御部12は、ステップS10の処理を繰り返す。
【0039】
ステップS12において、制御部12は、メモリに記憶される各データおよび各タイマーのカウント値を初期化する。そして、制御部12は、ステップS12の処理を完了すると処理をステップS12へ進める。
【0040】
ステップS14において、制御部12は、受信部11で受信した無線信号の受信強度を取得する。そして、制御部12は、ステップS14の処理を完了すると処理をステップS16へ進める。
【0041】
以下、図6および図7を参照して、ステップS14における受信強度の取得について詳細に説明する。なお、図6は、本実施形態に開閉体制御装置10を備えた車両、および携帯機20を携帯したユーザの位置の一例を示す図である。図7(a)は、図6の地点Aから送信された無線信号が受信部11で受信された信号強度の一例を示す図である。図7(b)は、図6の地点Bから送信された無線信号が受信部11で受信された信号強度の一例を示す図である。図7(a)および図7(b)共に、縦軸を信号強度、横軸を周波数として受信される無線信号の一例を示している。
【0042】
図6において、地点Cは、開閉体制御装置10を備えた車両が駐車されている地点である。また、地点Aは、地点Cから距離La離れた地点である。また、地点Bは、地点Cから距離Lb(Lb<La)離れた地点である。
【0043】
地点Aで携帯機20を携帯したユーザがスイッチ21を押下すると、図7(a)に示す信号強度の無線信号が受信部11で受信される。受信部同様に、地点Bでユーザがスイッチ21を押下すると、図7(b)に示す信号強度の無線信号が受信部11で受信される。受信部制御部12は、各周波数帯の信号強度のうち、最も大きな信号強度の値を、上記ステップS14で受信した受信強度とする。すなわち、図7(a)に示す例では、地点Aにおいて送信された無線信号の受信強度は信号強度Saである。同様に、図7(b)に示す例では、地点Bにおいて送信された無線信号の受信強度は信号強度Sbである。なお、本実施形態では信号強度の最大値を受信強度としたが、図7(a)および図7(b)に示すように信号強度に複数のピークが存在する場合、ピーク値の平均値を受信強度としても良い。
【0044】
ステップS16において、制御部12は、受信強度を用いて距離Lを特定し、該距離Lを示すデータをメモリに記憶する。そして、制御部12はステップS16の処理が完了すると、ステップS18へ処理を進める。
【0045】
以下、ステップS16において受信強度を用いて距離Lを特定する方法について具体的に説明する。制御部12には、受信部11で受信した無線信号の受信強度と距離Lとの関係を表すデータテーブルが予め記憶される。なお、図8は、受信部11で受信した無線信号の受信強度および距離Lの関係を表すデータテーブルの一例である。図8に示すデータテーブルは、列毎に距離Lおよび受信強度の値が各々並べられたテーブルである。該データテーブルにおいて、距離Lの値は1列目に示され、各距離Lの値と対応する受信強度の値が2列目に示される。制御部12は、取得した無線信号の受信強度を用いて、上記データテーブルから当該受信強度に対応する距離Lの値を特定する。具体的には、制御部12は、図8に示されたデータテーブル中の2列目で、取得した無線信号の受信強度の値を探索する。そして、当該受信強度が記された行と同じ行の1列目に記された距離Lの値を、当該受信強度に対応した距離Lの値とする。
【0046】
例えば、図6に示す地点Aにおいて送信された無線信号の受信強度Saの値が−99dBm(ディービーエム)であった場合、制御部12は、図8に示すデータテーブルから、地点Aから地点Cまでの距離Laが15mであるとする。同様に、地点Bからの無線信号の受信強度Sbの値が−100dBmであった場合、制御部12は、図8に示すデータテーブルから、地点Bから地点Cまでの距離Lbが10mであるとする。制御部12は、上記データテーブルを参照して特定した距離Lを示すデータを、メモリに記憶する。
【0047】
ステップS18において、制御部12は、距離Lが予め指定された距離より短いか否かを判断する。制御部12は、ステップS16において特定された距離Lが予め指定された距離、例えば1mより短いと判断した場合、処理をステップS20へ進める。一方、制御部12は、距離Lが予め指定された距離より長いと判断した場合、処理をステップS22へ進める。
【0048】
ステップS20において、制御部12は、ドアの開動作を指示する。具体的には、制御部12は、ドア開閉装置62にドアを開動作する指示信号を出力する。ドア開閉装置62は、制御部12より出力されるドアを開動作させる指示信号を受けてドアを開動作させる。ドアを開動作させる際、ドアの施錠がロック状態である場合には、アンロック状態へ切換えてからドアを開動作させる。この場合、制御部12は、ドアの施錠状態を示す信号をドアロック装置61より取得し、ドアの施錠がロック状態である場合、ドアロック装置61にドアの施錠をアンロック状態にする指示信号を出力する。そして、ドアロック装置61は、制御部12より出力される指示信号を受けてドアをアンロック状態へ切換える。制御部12はステップS20の処理が完了すると処理を終了する。
【0049】
このように、スイッチ21を押下された時点の距離Lが予め指定された距離より短い場合、即時ドアが開けられる。したがって、携帯機20を所持するユーザが、既に車両の近傍や車両内で携帯機20を操作する場合などには、即時に車両のドアが開けられるため、ユーザの利便性が向上する。
【0050】
ステップS22において、制御部12は、サンプリングタイマーをカウントアップする。制御部12は、サンプリングタイマーのカウント値に1を加算する。そして、制御部12はステップS22の処理が完了すると、ステップS24へ処理を進める。
【0051】
ステップS24において、制御部12は、ドアオープン時間ΔTdが設定済みであるか否かを判断する。例えば、制御部12は、メモリを参照してドアオープン時間ΔTdの値が記憶されている場合、ドアオープン時間ΔTdが設定済であると判断する。また、制御部12は、ドアオープン時間ΔTdの値がメモリに記憶されていない場合、ドアオープン時間ΔTdが設定済ではないと判断する。また、メモリに記述されているドアオープン時間ΔTdの値が0sec以下である場合も、制御部12は、ドアオープン時間ΔTdが設定済ではないと判断する。なお、ドアオープン時間ΔTdの設定方法については、後述のステップS38の処理において説明する。制御部12は、ドアオープン時間ΔTdが設定済であると判断した場合、処理をステップS26へ進める。一方、制御部12は、ドアオープン時間ΔTdが設定済でないと判断した場合、処理をステップS30へ進める。
【0052】
ステップS26において、制御部12は、ドアタイマーをカウントアップする。制御部12は、ドアタイマーのカウント値に1を加算する。そして、制御部12はステップS26の処理が完了すると、ステップS28へ処理を進める。
【0053】
ステップS28において、制御部12は、ドアタイマーのカウント値がドアオープン時間ΔTdに相当する時間に達したか否かを判断する。ドアタイマーのカウント値がドアオープン時間ΔTdに達したと判断した場合、処理を上記ステップS20へ進める。一方、制御部12は、ドアタイマーのカウント値がドアオープン時間ΔTdに達していないと判断した場合、処理をステップS30へ進める。
【0054】
図5を参照し、ステップS30において、制御部12は、サンプリングタイマーのカウント値がサンプリング周期ΔTsに相当する時間に達したか否かを判断する。サンプリング周期ΔTsは、制御部12が無線信号の信号強度を取得する時間間隔を示す予め定められた定数値で、例えば0.5secである。制御部12は、サンプリングタイマーのカウント値がサンプリング周期ΔTsに達したと判断した場合、処理をステップS32へ進める。一方、制御部12は、サンプリングタイマーのカウント値がサンプリング周期ΔTsに達していないと判断した場合、処理をステップS40へ進める。
【0055】
ステップS32において、制御部12は、サンプリングタイマーおよびドアタイマーのカウント値を初期化する。そして、制御部12は、ステップS32の処理が完了すると、ステップS34へ処理を進める。
【0056】
ステップS34において、制御部12は、受信部11が受信した無線信号の受信強度を取得する。本ステップにおける処理は、上記ステップS14の処理と同様であるため詳細な説明を省略する。制御部12は、ステップS34の処理を完了すると処理をステップS36へ進める。
【0057】
ステップS36において、制御部12は、受信強度を用いて距離Lを特定し、該距離Lを示すデータをメモリに記憶する。そして、制御部12は、ステップS36の処理が完了すると、ステップS38へ処理を進める。本ステップにおける処理は、上記ステップS16と同様であるため詳細な説明を省略する。なお、上述したように、制御部12は、距離Lを示すデータを時系列順にそれぞれメモリ上に記憶する。したがって、制御部12は、既にメモリに距離Lを示すデータを記憶している場合、既に記憶している距離Lを示すデータを記憶したまま、新たに特定された距離Lを示すデータを記憶する。
【0058】
ステップS38において、制御部12は、ドアオープン時間ΔTdを設定する。以下、ステップS38の処理の詳細について、図9を参照して説明する。なお、図9はステップS38の詳細な処理の一例を示すサブルーチンである。
【0059】
ステップS382において、制御部12は、移動速度Vを算出する。そして、制御部12は、ステップS382の処理が完了すると、ステップS384へ処理を進める。
【0060】
具体的には、制御部12は、最新の距離L、および前回特定した距離Lを参照し、これらを減算して、当該距離間の送信部22の移動量ΔLを算出する。そして、制御部12は、送信部22が移動量ΔLの移動に要した移動時間ΔTmを用いて、移動量ΔLを移動時間ΔTmで除算して、移動速度Vを算出する。なお、この場合、移動時間ΔTmはサンプリング周期ΔTsと同値である。
【0061】
例えば、図6においてユーザが地点Aから地点Bへ移動したとして、上記最新の距離Lが地点Bにおける距離Lbであり、上記前回特定した距離Lが地点Aにおける距離Laであるとすると、移動量ΔLは、
ΔL=La−Lb
として算出される。また、移動速度Vは、
V=ΔL/ΔTm
=ΔL/ΔTs
として算出される。例として、距離Laが9.5m、距離Lbが10mであり、ΔTsが0.5secであったとすると。ΔL=0.5m、V=1m/secである。
【0062】
上式より、移動速度Vは、送信部22が受信部10へ接近する場合には正の値になり、送信部22が受信部10から遠ざかる場合には負の値になる。なお、送信部22の移動が停止するなどして、移動速度Vの値が0となった場合、制御部12は、前回算出した移動速度Vの値を最新の移動速度Vの値として用いる。
【0063】
ステップS384において、制御部12は、携帯機20の到着予想時間ΔTcを算出する。制御部12は、下式のように最新の距離Lを、上記ステップS382において求めた移動速度Vで除算して到着予想時間ΔTcを算出する。例えば、図6において地点Bにおける移動速度が移動速度Vb、最新の距離が距離Lbであるとすると、ΔTcは、
ΔTc=Lb/Vb
として算出される。例えば、図6のB地点において、距離Lbが10m、移動速度Vbが1m/secである場合、到着予想時間ΔTcは10secと算出される。制御部12は、ステップS384の処理が完了すると、ステップS386へ処理を進める。
【0064】
ステップS386において、制御部12は、ドアオープン時間ΔTdを設定する。例えば、ドアオープン時間ΔTdが経過した後に開始されるドアの開動作は、ステップS384で算出された到着予想時間ΔTcに完了すると、送信部22が受信部11の近傍に到着する時点、すなわち、携帯機20を携帯するユーザが開閉体制御装置10を備えた車両の近傍に到着した時点でドアの開動作が完了して、ユーザにとって便利である。したがって、ドアオープン時間ΔTdは、上記ステップS384で算出された到着予想時間ΔTcから、ドアが開動作を開始してから完全に開くまでの所要時間ΔDを減算して算出すると良い。つまり、ドアオープン時間ΔTdは、到着予想時間ΔTcの所要時間ΔD前に設定する。また、ドアの開動作が完了する時間を早めたい場合や、遅くしたい場合は、必要に応じてドアオープン時間ΔTdから適当な調整値αを加減すると良い。したがってドアオープン時間ΔTdは、下記の式により算出することができる。
ΔTd=ΔTc−ΔD±α
制御部12は、算出したドアオープン時間ΔTdを示すデータをメモリに記憶する。なお、既にドアオープン時間ΔTdがメモリに記憶されている場合、制御部12は、既に記憶されているドアオープン時間ΔTdの値を、新しく算出されたドアオープン時間ΔTdに更新する。制御部12は、ステップS386の処理が完了すると、図5のフローチャートに示す処理に戻り、ステップS40へ処理を進める。
【0065】
図5に戻り、ステップS40において、制御部12は、送信部22からの無線信号を受信部11が受信しているか否か判断する。本ステップにおける処理は上記ステップS10の処理と同様であるため説明を省略する。送信部22からの無線信号を受信部11が受信していると判断した場合、制御部12は、処理をステップS22へ戻す。一方、送信部22からの無線信号を受信していないと判断した場合、制御部12は、処理をステップS42へ進める。
【0066】
上記ステップS22からステップS40の処理により、受信部11が送信部22からの無線信号を受信している間、すなわち、ユーザがスイッチ21を長押ししている間、サンプリング周期ΔTsが経過する毎にドアオープン時間ΔTdが最新の値に更新される。したがって、ユーザの移動速度Vが変化した場合、その変化に応じてドアが開動作される時間が変化する。なお、ステップS22からステップS40の処理により、ドアオープン時間ΔTdが更新される様子の詳細な説明は後述する。
【0067】
ステップS42において、制御部12は、ドアオープン時間ΔTdが設定済みであるか否かを判断する。本ステップにおける処理は上記ステップS24の処理と同様であるため説明を省略する。制御部12は、ドアオープン時間ΔTdが設定済であると判断した場合、処理をステップS44へ進める。一方、制御部12は、ドアオープン時間ΔTdが設定済でないと判断した場合、処理をステップS10へ戻す。
【0068】
ステップS44において、制御部12は、ドアタイマーをカウントアップする。本ステップにおける処理は、上記ステップS26の処理と同様であるため詳細な説明を省略する。制御部12はステップS44の処理が完了すると、ステップS46へ処理を進める。
【0069】
ステップS46において、制御部12は、ドアタイマーのカウント値がドアオープン時間ΔTdに達したか否かを判断する。制御部12は、ドアタイマーのカウント値がドアオープン時間ΔTdに達したと判断した場合、処理をステップS20へ進める。一方、制御部12は、ドアタイマーのカウント値がドアオープン時間ΔTdに達していないと判断した場合、処理をステップS48へ進める。
【0070】
ステップS48において、制御部12は、送信部22からの無線信号を受信部11が受信しているか否か判断する。本ステップにおける処理は上記ステップS10の処理と同様であるため詳細な説明を省略する。送信部22からの無線信号を受信部11が受信していると判断した場合、制御部12は、処理をステップS44へ戻す。一方、送信部22から無線信号を受信していないと判断した場合、制御部12は、処理をステップS12へ戻す。
【0071】
上記ステップS40からステップS48の処理により、スイッチ21の長押し操作が止められた後も、ドアオープン時間ΔTdが設定されている場合にはドアタイマーによる時間の測定が継続され、ドアタイマーのカウント値がドアオープン時間ΔTdに達した時点でドアが開動作される。また、ドアオープン時間ΔTdが設定されて長押し操作を止めた後、再度スイッチ21が押下されると、再度、送信部22の移動に応じてドアオープン時間ΔTdが設定されるように、処理が戻される。
【0072】
次に、車両に搭載された開閉体制御装置10を、携帯機20を携帯したユーザが操作した場合、ステップS22からステップS40の処理により、ドアオープン時間ΔTdが更新される様子について、図6および図12を参照して詳細に説明する。図12は、送信部22の移動およびドアオープン時間ΔTdが変化する様子を示した図である。なお、図12において、縦軸は距離Lを示し、横軸は時間を示す。
【0073】
図6において、ユーザは、地点Aから地点Bを経て車両が駐車されている地点Cまで速度を変化させながら移動するとする。そして、ユーザは、地点Aから地点Bへ到達するまでの間、スイッチ21を長押しする。図12において、時点Taはユーザが図6の地点Aに居る時点を示す。同じく、時点Tbはユーザが図6の地点Bに到達する時点を示す。時点Taから時点Tbの間、サンプリング周期ΔTsが経過する毎、すなわち時点Ta、時点T2、時点T3、時点T4、および時点Tbにおいて、制御部12は、無線信号の受信強度をもとに各時点における距離Lを距離La、距離L2、距離L3、距離L4、距離Lbとして特定し、それぞれを示すデータを記憶する。そして、制御部12は、時点Ta、時点T2、時点T3、時点T4、および時点Tbにおいて、各時点間における移動速度Vを算出し、移動速度Vをもとにドアオープン時間ΔTdをそれぞれ設定する。
【0074】
上記の各時点間における移動速度Vを算出し、移動速度Vをもとにドアオープン時間ΔTdをそれぞれ設定する様子について、時点T2を例として詳細に説明する。時点T2において、制御部12は、時点Taにおける距離La、および時点T2における距離L2をもとに時点Taから時点T2までの間の移動速度Vを求める。さらに制御部12は、移動速度Vをもとに、時点T2における到着予想時間ΔTc2を算出する。そして、到着予想時間ΔTc2から、ドアが開動作を開始してから完全に開くまでの所要時間ΔDを減算して、時点T2におけるドアオープン時間ΔTd2が算出される。なお、ここでは、説明を簡単にするために調整値αの値は0とする。以上のようにして、時点T3、時点T4、および時点Tbにおいても同様に、それぞれドアオープン時間ΔTd3、ドアオープン時間ΔTd4、およびドアオープン時間ΔTdbが算出される。
【0075】
図12において、ユーザの移動速度Vが時点T2および時点T4において段階的に増加している。そして、移動速度Vが変化すると、ドアオープン時間ΔTdも変化する。このようにユーザの移動速度Vが変化する場合でも、上記に説明したサンプリング周期ΔTs毎の制御部12の処理によりドアオープン時間ΔTdが更新されるため、送信部22が受信部11に到着する時点に合わせてドアの開動作が完了する。以上のようにして、ユーザの移動速度Vが変化した場合でも、開閉体制御装置10により、ユーザが車両の近傍に到着する時点に合わせてドアが開状態にすることが可能となる。なお、上記に説明した通り、ドアオープン時間ΔTdは送信部22が受信部11に到達する時間を示す到達予想時間ΔTcをもとに算出されるため、ユーザがドア付近に到着する時刻に合わせてドアの開動作を完了させたい場合には、受信部11が、ドアの近傍に備え付けられることが望ましい。
【0076】
なお、上記に説明した制御部12のステップS38の処理において、ドアオープン時間ΔTdが到着予想時間ΔTcをもとに算出される例を示したが、ドアオープン時間ΔTdは、移動速度Vおよび距離Lをもとに図10に示すようなデータテーブルから特定されてもよい。なお、図10は、移動速度Vおよび距離Lに対して、設定されるドアオープン時間ΔTdを示すデータテーブルの一例である。以下、図10に示すデータテーブルを用いて、ドアオープン時間ΔTdを特定する場合のステップS38の処理について、図11を参照して説明する。なお、図11は、ステップS38の詳細な処理の一例を示すサブルーチンである。
【0077】
ステップS392において、制御部12は、移動速度Vを算出する。本ステップにおける制御部12の処理は、上記ステップS382の処理と同様であるため詳細な説明を省略する。制御部12は、ステップS392の処理を完了すると、ステップS396へ処理を進める。
【0078】
ステップS396において、制御部12は、データテーブルを参照してドアオープン時間ΔTdを設定する。制御部12は、ステップS396の処理が完了すると、図5のフローチャートに示す処理に戻り、ステップS40へ処理を進める。
【0079】
具体的には、制御部12は、最新の距離Lおよび最新の移動速度Vをもとに、図10に示すデータテーブルを参照してドアオープン時間ΔTdを特定する。図10に示すデータテーブルは、移動速度Vを行の要素とし、最新の距離Lを列の要素とし、各行列要素に対応するドアオープン時間ΔTdが並べられたマトリックス状のテーブルである。制御部12は、最新の距離Lの値から列を探索し、移動速度Vの値から行を探索して、各値に応じたドアオープン時間ΔTdを特定する。
【0080】
例えば、距離Lが2m、移動速度Vが0.5m/secである場合、データテーブルよりドアオープン時間ΔTdは2secであると特定される。制御部12は、このようにして特定したドアオープン時間ΔTdを示すデータをメモリに記憶する。なお、既にドアオープン時間ΔTdがメモリに記憶されている場合、制御部12は、既に記憶されているドアオープン時間ΔTdの値を、新しく算出されたドアオープン時間ΔTdに更新する。
【0081】
なお、上記に説明した制御部12のステップS382およびステップS392において、移動量ΔLを算出するために用いる2つの時点の距離Lは、最新の距離Lおよび最初に特定された距離Lであっても良い。移動量ΔLを算出する際に、メモリに記憶された一連の距離Lのうち、最新の距離L、および最初に記憶された距離Lを用いれば、移動速度Vの値が0になることがなく、ドアオープン時間ΔTdを算出することができる。
【0082】
例えば、図12において、時点T3から時点T4にかけてユーザが移動しないものとした場合の、時点T4における移動速度V4について説明する。最新の距離L4、および前回特定した距離L3の値を用いた場合、距離L3と距離L4の値が同値であるため、移動量ΔLの値は0となる。したがって、移動量ΔLを移動時間ΔTmで除算して算出される移動速度V4の値は0となる。一方、最新の距離L4、および最初に記憶された距離Laを用いた場合、移動量ΔLの値はL4―La(L4>La)となる。移動量ΔLを移動時間ΔTmで除算して算出される移動速度V4の値は(L4―La)/ΔTmとなり移動速度V4の値は0より大きくなる。
【0083】
上記のように、移動速度V4の導出に最新の距離L4、および最初に記憶された距離Laを用いた場合、ステップS382およびステップS392において、制御部12は、距離Lを示すデータを記憶する時点において、最初に距離Lを特定した時点からの経過時間を該時点における移動時間ΔTmとして取得する。
【0084】
以上のようにして算出される移動量ΔLおよび移動時間ΔTmから、大きな時間間隔における移動速度Vを求めることができる。そのため、例えば、ユーザが長押し操作を行いながら移動している途中で立ち止まった場合であっても、ユーザの移動に応じたタイミングでドアを開状態にすることができる。
【0085】
また、上記に説明した制御部12のステップS382およびステップS392において、移動速度Vを算出するために、最新の距離Lおよび前回特定した距離Lを用いて移動量ΔLを算出する例、ならびに最新の距離Lおよび最初に特定された距離Lを用いて移動量ΔLを算出する例を示したが、移動量ΔLを算出するために用いる距離Lは上記に限らず、移動量Lは異なる2つの時点で特定された距離Lをもとに算出されて構わない。このような場合、制御部12は、例えば、最初に距離Lを特定した時点から、移動量ΔLの算出に用いる2つの距離Lを特定した各時点までの各時間をそれぞれに求め、各時間を差分して移動時間ΔTmを算出する。このように算出された移動量ΔLおよび移動時間ΔTmをもとに、制御部12は移動速度Vを算出することができる。
【0086】
また、上記に説明した制御部12のステップS36の処理において、無線信号の受信強度から特定した距離Lを記憶する例を示したが、距離Lを特定せずに、取得した無線信号の受信強度を示すデータをメモリに記憶しても良い。この場合、ステップS382およびステップS392において、受信強度の時間当りの変化量を算出して、該変化量をもとに移動速度Vを算出する。さらに、ステップS384およびステップS396においては、最新の受信強度および移動速度Vから到達予想時間ΔTcを算出する。このように距離Lを特定しない場合、制御部12の処理量を減少することができる。
【0087】
また、上記に説明した制御部12のステップS382の処理において、送信部22の移動が停止するなどして、移動速度Vの値が0となった場合、制御部12は、前回算出した移動速度Vの値を最新の移動速度Vの値として用いる例を示したが、移動速度Vの値が0となった場合の処理は上記に限るものではない。例えば、移動速度Vの値が0となった場合、制御部12の処理をステップS10に戻し、移動速度Vの値が0以上になるまでドアを開動作しないものとしても良い。
【0088】
また、上記に説明した制御部12の処理において、受信部11が無線信号を受信している間、制御部12がサンプリング周期ΔTsの経過毎に複数の時点で無線信号の受信強度が取得する例を示したが、制御部12が無線信号の受信強度を取得する時間間隔は周期的でなくても構わない。さらに、受信部11が無線信号を受信している間、制御部12が無線信号の受信強度を取得する回数は少なくとも2回以上であれば何回でも構わない。
【0089】
また、上記に説明した制御部12の処理においては、移動速度V、到着予想時間ΔTc、およびドアオープン時間ΔTdが計算により算出される例を示し、距離Lおよびドアオープン時間ΔTdがデータテーブルから特定される例を示したが、各パラメータの導出方法は上記に限らない。本願における導出とは、上記の算出および特定を含み、上記の各パラメータを求めるためのあらゆる手段を含む概念である。
【0090】
また、上記実施形態においては、ユーザがスイッチ21を長押ししている間のみ送信部22から無線信号が送信される例を示したが、ユーザがスイッチ21を押下した時点から、その後ユーザがスイッチ21を押下しているか否かに関わらず、予め定められた時間が経過するまで、自動的に送信部22から無線信号が送信されても良い。このように、自動的に送信部22から無線信号が送信されることにより、ユーザはスイッチ21を押下し続ける必要が無く、ユーザの利便性が向上する。特に、携帯機20が、ユーザが乗車する車両などに備え付けられ、開閉体制御装置10がガレージなどのシャッターの開閉を制御する様態として適用される場合など、ユーザは車両を運転しながらスイッチ21を押下し続けなくて済み、高い利便性を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る開閉体制御装置は、無線信号を送信する送信部の移動に応じたタイミングで開閉体を開動作させることができ、例えば、受信した無線信号に応じて、車両に備えられたドアなどの開閉体の開閉動作を制御する開閉体制御装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】開閉体制御装置10の機能構成の一例を示すブロック図
【図2】携帯機20の機能構成の一例を示すブロック図
【図3】制御部12が備えるメモリに記憶される主なデータを示した図
【図4】制御部12により実行される処理の詳細を示すフローチャート
【図5】制御部12により実行される処理の詳細を示すフローチャート
【図6】本実施形態に開閉体制御装置10を備えた車両、および携帯機20を所持したユーザの位置の一例を示す図
【図7】(a)は図6の地点Aから送信された無線信号の信号強度の一例を示す図、(b)は図6の地点Bから送信された無線信号の信号強度の一例を示す図
【図8】受信部11で受信した無線信号の受信強度および距離Lの関係を表すデータテーブル
【図9】ステップS38の処理の一例を示すサブルーチン
【図10】移動速度V、距離L、およびドアオープン時間ΔTdの関係を表すデータテーブル
【図11】ステップS38の処理の一例を示すサブルーチン
【図12】ユーザの移動およびドアオープン時間ΔTdが変化する様子を示した図
【符号の説明】
【0093】
10 開閉体制御装置
11 受信部
12 制御部
20 携帯機
21 スイッチ
22 送信部
61 ドアロック装置
62 ドア開閉装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機から送信される無線信号に応じて、開閉体の開閉動作を制御する開閉体制御装置であって、
前記無線信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記無線信号を用いて、前記送信機が前記受信部へ接近する速度を導出する速度導出手段と、
前記速度導出手段が導出した速度を用いて、前記開閉体を開動作させるまでの開動作開始時間を導出して設定する開動作開始時間設定手段と、
前記開動作開始時間設定手段が設定した開動作開始時間に応じて、前記開閉体が開動作を行う指示を前記開閉体へ出力する開閉動作制御手段とを備える、開閉体制御装置。
【請求項2】
前記速度導出手段が導出した速度に基づいて、前記受信部の配置位置に前記送信機が到達するまでの到達時間を導出する到達時間導出手段を、さらに備え、
前記開動作開始時間設定手段は、前記到達時間導出手段が導出した到達時間に応じて、前記開動作開始時間を設定する、請求項1に記載の開閉体制御装置。
【請求項3】
前記受信部が受信した前記無線信号の受信強度を検出する無線信号強度検出手段を、さらに備え、
前記到達時間導出手段は、前記速度導出手段が導出した速度および前記無線信号強度検出手段が検出した受信強度に基づいて、前記到達時間を導出する、請求項2に記載の開閉体制御装置。
【請求項4】
前記開動作開始時間設定手段は、前記到達時間導出手段が導出した到達時間に基づいて、前記送信機を所持するユーザが前記開閉体に接近する時間を推定し、当該接近する時間に前記開閉体が開状態となる開動作開始時間を導出する、請求項2に記載の開閉体制御装置。
【請求項5】
前記受信部が受信した前記無線信号の受信強度を、時系列的に異なる時点で少なくとも2回検出する無線信号強度検出手段を、さらに備え、
前記速度導出手段は、前記無線信号強度検出手段が検出した少なくとも2つの受信強度を用いて、前記速度を導出する、請求項1または請求項2に記載の開閉体制御装置。
【請求項6】
前記無線信号強度検出手段が受信強度を検出することに応じて、それぞれ前記送信機と前記受信部との距離を導出する距離導出手段を、さらに備え、
前記速度導出手段は、前記距離導出手段が導出した少なくとも2つの距離を用いて、前記速度を算出する、請求項5に記載の開閉体制御装置。
【請求項7】
前記距離導出手段は、導出した距離を時系列順に記憶手段に記憶し、
前記速度導出手段は、前記距離導出手段が導出した最新の距離と、当該最新の距離が導出される直前に前記記憶手段に記憶されている直前の距離とを用いて、前記速度を算出する、請求項6に記載の開閉体制御装置。
【請求項8】
前記距離導出手段は、導出した距離を時系列順に記憶手段に記憶し、
前記速度導出手段は、前記距離導出手段が導出した最新の距離と、前記記憶手段に記憶された一連の距離のうち最初に記憶された距離とを用いて、前記速度を算出する、請求項6に記載の開閉体制御装置。
【請求項9】
前記距離導出手段が導出した最初の距離が予め定められた閾値より短いか否かを判定する距離判定手段を、さらに備え、
前記開閉動作制御手段は、前記最初の距離が前記閾値より短いと前記距離判定手段が判定した場合、即時前記開閉体を開動作させる指示を行う、請求項6に記載の開閉体制御装置。
【請求項10】
前記速度導出手段は、前記受信部が前記無線信号を継続して受信している間、定められた時間が経過する毎に、最新の速度を導出し、
前記開動作開始時間設定手段は、前記最新の速度を用いて最新の開動作開始時間を導出して当該開動作開始時間を更新し、
前記開閉動作制御手段は、前記開動作開始時間設定手段が設定した最新の開動作開始時間に応じて、前記開閉体が開動作を行う指示を前記開閉体へ出力する、請求項1に記載の開閉体制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−127336(P2009−127336A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304895(P2007−304895)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】