説明

開閉体支持機構及び画像形成装置、開閉体支持機構の組み立て方法

【課題】固定体に設けた回転支軸を支点とし回転することで、固定体に対して開閉可能な開閉体の支持機構であって、組み立て性を損ねない開閉支持機構及びこの開閉機構を使用した画像形成装置を提供すること。
【解決手段】開閉体3に回転可能に支持された第1部材19と、固定体2に回転可能に支持された第2部材20と、これら第1部材と第2部材の各自由端部同士を枢着する枢着手段19bと、ねじりコイルばね40を有し、この枢着手段19bに前記ねじりコイルばねのねじりコイル部を装着しかつ、開閉体3を閉方向に付勢するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定体に対して開閉可能な開閉体支持機構およびこの開閉体支持機構を備えた複写機、ファクシミリ、プリンタ、プロッタ、複合機などの画像形成装置、開閉体支持機構の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、用紙の両面に画像を形成する場合には、画像形成装置の画像形成部で片面に画像形成された用紙を反転させて画像形成部に再給紙する反転搬送装置が用いられている。このような反転搬送装置を画像形成装置本体の側面に形成する構成のものでは、固定体としての画像形成装置本体に設けた回転支軸を支点として、反転搬送装置が設けられた部材を開閉可能にした開閉体の支持機構が用いられる。開閉体の支持機構としては、例えば、その一端部を開閉体に回転可能に支持された第1部材と、その一端部を固定体に回転可能に支持された第2部材と、これら第1部材及び第2部材の各他端部同士を軸部材で枢着する構成がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる画像形成装置に適用された開閉支持機構において、開閉時の衝撃を緩和するダンパ機能、開閉体の開き位置を規制するストッパ機能等を得るのにねじりコイルばね等のばねを開閉体に対する第1部材の支持部に設けて付勢している。
しかし、従来の構成では開閉支持機構の組み立て時において、ばねの装着に際して、予め圧縮させてから取り付ける作業があるため、初期組み立て性やメンテナンス時における組み立て性が損なわれる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−2298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、組み立て性を損ねない開閉体支持機構及びこの開閉体支持機構を使用した画像形成装置、開閉体支持機構の組み立て方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するため請求項1にかかる発明は、固定体と、この固定体に設けた回転支軸と、この回転支軸を支点として回転可能な開閉体を有する開閉体支持機構であって、その一端部を前記開閉体に回転可能に支持されている第1部材と、その一端部を前記固定体に回転可能に支持されている第2部材と、これら第1部材及び第2部材の各他端部同士を枢着している枢軸と、この枢軸に装着されているねじりコイルばねを有し、前記開閉体を閉方向に付勢するように前記第1部材と前記第2部材とに前記ねじりコイル部から延出した2つのばね片がそれぞれ掛けられた構成とした。請求項2にかかる発明では、請求項1記載の開閉体支持機構において、前記ねじりコイルばねは、外力が作用しない状態のもとで前記2つのばね片は互いが接近した閉じ状態になることとした。
請求項3にかかる発明では、請求項1または2記載の開閉体支持機構において、第1部材と第2部材の各自由端部同士を枢着する枢軸の一端側は止め輪により抜け止めされていることとした。
請求項4にかかる発明では、請求項1乃至3の何れかに記載の開閉体支持機構において、前記開閉体に対する前記第1部材の支持手段、前記固定体に対する前記第2部材の支持手段の少なくとも一方は分解可能とした。
請求項5にかかる発明では、画像形成装置本体の側面部と、該側面部の下部を支点に開閉回動可能な両面装置とを有画像形成装置において、前記画像形成装置本体に対して両面装置を開閉可能に支持する支持手段として請求項1乃至7の何れかに記載の開閉支持機構を備えたこととした。
請求項6にかかる発明では、固定体と、この固定体に設けた回転支軸と、この回転支軸を支点として回転可能な開閉体を有する開閉体の支持機構であって、その一端部を前記開閉体に回転可能に支持されている第1部材と、その一端部を前記固定体に回転可能に支持されている第2部材と、これら第1部材及び第2部材の各他端部同士を枢着している枢軸と、この枢軸に装着されているねじりコイルばねを有し、前記開閉体を閉方向に付勢するように前記第1部材と前記第2部材とに前記ねじりコイル部から延出した2つのばね片がそれぞれ掛けられた構成の開閉体支持機構を組み立てるに際して、前記コイル部を前記枢軸に挿通装着した後、前記2つのばね片の一方を前記第1部材(又は前記第2部材)に掛けてから、てこを用いて他方のばね片を前記第2部材(又は前記第1部材)に掛けることによりばね掛けして組み立てることとした。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、組み立て性を損ねない開閉体支持機構及びこの開閉体支持機構を使用した画像形成装置、開閉体支持機構の組み立て方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1において、画像形成装置1の画像形成装置本体2には、ドラム状をした感光体4に電子写真法により画像を形成する画像形成部5が設けられ、その上方には原稿読取装置15が配置されている。原稿読取装置15は原稿台上に載置された原稿を読み取り、電気的な原稿情報信号に変換して走査装置200に送る。走査装置200は原稿情報信号に基づきレーザビームの出力を制御して感光体4を露光走査する。画像形成部5の下方にはシート状媒体(以下、転写紙という。)を収容する給紙トレイ6、該給紙トレイ6に収容されている転写紙を1枚づつ分離する分離手段7が配置されている。
【0009】
感光体4のまわりには、よく知られるように、帯電、露光、現像、転写の各手段が配置されている。帯電後の感光体2は走査装置200からのレーザービームで露光され、静電潜像が形成される。この静電潜像は現像手段でトナーにより可視像化されトナー像が転写紙に転写される。
【0010】
転写紙の搬送系としては、給紙トレイ6における積載状態から分離された1枚の転写紙を画像形成部5へ送給する途中で作像プロセスのタイミングに合わせるレジストローラ8、画像形成部5で転写された転写紙上の像を定着する定着ローラ9、機外に転写紙を排出する一対のコロからなる排出手段10、定着ローラ9を出た記録紙の進路を排出手段10か反転部11のいずれかに分岐させる分岐爪12を設けている。
【0011】
例えば、転写紙を反転する場合、分岐爪12により進路を変えられた転写紙を反転部11でスイッチバック搬送する。反転された転写紙は両面装置3に送られる。両面装置3は、画像形成装置本体2の下部に設けた支点軸14に回転自在(開閉自在)に保持されている。
【0012】
両面装置3を閉じて画像形成装置本体2にセットすると感光体4に対向配置された転写ローラ16の加圧ばね17が圧縮され、反力で両面装置3を開放する方向に力が働く。両面装置3の上部にはセットレバー150があり、セットレバー150が画像形成装置本体2に設けられた凸部18に引っ掛かることにより両面装置3は閉じ状態を保持する。両面装置3には、片面の画像形成を終えた転写紙を、残る片面の画像形成のために反転後、再度画像形成部に向けて搬送するための再給紙経路13が設けられている。再給紙経路13において、片面(第1面)を印字された転写紙は再度、レジストローラ8に搬送可能になっている。
【0013】
次に、図1乃至図4を適宜参照しつつ、開閉体支持機構の構成を説明する。固定体としての画像形成装置本体2の下部には回転支軸である支点軸14により開閉体としての両面装置3が軸支されている。これにより、両面装置3は支点軸14を中心に回動可能である。
【0014】
画像形成装置本体2に対する両面装置3の支持機構25は、第1部材19、第2部材20、枢着手段19b、ねじりコイルばね40などを有する。ここで、第1部材19は両面装置3にブラケット42を介して軸支されている。つまり、第1部材19の基端部はブラケット42の軸穴42aを介して軸21でその一端部の軸穴19cを回転可能に支持されている。軸21は両面装置3と一体的な支持部材30にその基端部が植設されている。ブラケット42は、支点となる軸21が片持ちで第1部材19を支持することにならないように、第1部材19の基端側に形成された軸穴19cを挿通した軸21の軸端部を軸穴42aで挿通支持していると共に、該第1部材19のスラスト方向の抜け防止を兼ねている。
【0015】
第2部材20は画像形成装置本体2に軸22でその一端部の軸穴20bを回転可能に支持されている。枢軸19bは一端側が第1部材19に固定されている。他端側はねじりコイルばね40のコイル部40aを枢軸19bの大径部が挿通し、その先の先端側部は小径部になっていて、この小径部が第2部材20の軸穴20aを挿通し、端部を止め輪26で抜け止めされている。
枢軸19bについて、前記大径部から小径部に変わる段差部で構成される座面は第2部材の軸穴20aに沿う縁部に接する第2部材20用の受け座を構成し、第2部材20の回動を安定させる。
【0016】
このように、枢軸19bにより第1部材19と第2部材20の各他端部同士は枢着されている。枢軸19bは第1部材19に固定された側の他端側がねじりコイルばね40の案内部と第2部材20の支点を兼ねている。
【0017】
ねじりコイルばね40の一部であって、コイル状をなすコイル部40aからは、2つのばね片40a1、40a2が延出しており、ばね片40a1は第1部材19に掛けられ、ばね片40a2は第2部材20に掛けられている。より詳しくいえば、図3、図5に示すように、ばね片40a1は第1部材19に形成された係止穴19aに先端折曲部が掛けられ、図6に示すように、ばね片40a2は第2部材20に形成された係止穴20cに先端折曲部が掛けられている。
【0018】
ねじりコイルばね40がこのように掛けられることにより、枢軸19bを支点にしてばね片40a1は時計回りの向きの付勢力R1を第1部材19に作用させ、かつ、枢軸19bを支点にしてばね片40a2は反時計回りの向きの付勢力R2を第1部材19に作用させる。つまり、支持機構25は枢着手段19aを頂点とする山型傾向に折曲されて閉じる方向に付勢され、これに伴い両面装置3も閉じる向きに付勢される。
【0019】
かかる構成により、支持機構25は両面装置がを勢いよく開放されるのを抑制する開放時の衝撃緩和機能と、両面装置3の開き位置を規制するストッパ機能とを有する。従来方法だと、ばねの装着に際して、作業者がばねを撓ませつつセットしなければならい(後述の比較例参照)。
【0020】
これに対し、本実施の形態では、ばねの掛け手順として、先ず、枢軸19bにねじりコイルばね40のコイル部40aを挿入してばねを枢着状態に拘束支持する。しかる後に、第2部材20をセットして止め輪26で締結する。その後、例えば、ばね片40a1を係止穴19aに掛ける。次に、残るもう一方のばね片40a2を係止穴20cに掛けるのであるが、その作業は、図6に示したように、第2部材20とばね片40a2との間にてこ60を差し込み、てこ60と第2部材20との接触部であるP点を支点とし、てこ60とばね片40a2との接触部であるQ点を作用点とし、てこ60を図中矢印で示すように、こじるように動かせばてこの原理によりばね片40a2をばね掛けが状態まで容易に撓ませることがきる。このように、てこを用いると、たとえ、撓ませる量が大きくても容易にばね片40a2の端部を係止穴20cに近づけることができ、係止することができる。
【0021】
本例の構成では、ねじりコイルばね40は、ねじりコイル部40aを中心として2つのばね片40a1、40b1が閉じる方向に弾性を備え、外力が作用しない状態のもとでばね片40a1、40b1は互いが接近した閉じ状態になっている。
一方、第1部材19、第2部材20も枢軸bを支点として互いが接近した閉じ状態にすることが容易にできる。よって、ねじりコイルばね40及び支持機構25を共に閉じ状態にしたときには、ねじりスプリング40自体を撓ませる量はわずかで済み、組付け性が劣化しない。
【0022】
図3に示すように、第2部材20は一端側が画像形成装置本体2に回転自在に保持されるが、軸22に対する締結に使用する止め輪28を樹脂の弾性を利用する止め輪にすることで、メンテナンスの際に、簡単に両面装置3を画像形成装置本体2から取り外すことができる。
【0023】
[比較例]
本発明を適用しない場合におけるねじりコイルばね形状及び支持機構25へのばねセットの方法を比較例として説明する。この比較例では、第1部材19、第2部材20の組み合わせの構成、第1部材19の支持部材30に対する支持構造は前記本発明の構成と同じである。異なるのは、ばねの形状及びばねの配置位置である。この比較例では、軸21に装着したねじりコイルばね50で第1部材19に対して弾性力を与えて、開閉時の衝撃を緩和するダンパ機能、開閉体の開き位置を規制するストッパ機能等を得る。
【0024】
図7〜図9に示すようにばねとしては、ねじりコイルばねを使用しているがその形状は図7に示すように外力を作用させない状態でR字状をして閉じている。このねじりコイルばね50のコイル部50aを図8に示すように軸21に装着した状態でかつ、コイル部50aから出ている2つのばね片50a1、50a2を大きく撓ませて装着しなければならない。
【0025】
ばね装着状態において、ばね片50a2は第1部材19の、軸穴19a形成部近傍のコの字状をした部分の腹部面19eを押圧する。この押圧による第1部材19の軸21を中心とする回動はブラケット42のストッパ部42cで止められる。なお、ブラケット42は前記したように、両面装置3と一体的に保持された支持部材30に固定されている。
ばね装着状態において、ばね片50a1はブラケット40のストッパ部42cの裏面に接するようにセットされる。
【0026】
この比較例では、図8に示すようにねじりコイルばね50を図7に示した非荷重状態と比較して最初から撓ませた状態を保持しながら、ブラケット42を支持部材30に組み付けねばならず組み立て作業が困難である。また、前記した本発明の実施形態のように、ての原理を利用したばね装着が適用しづらい構成になっている上にねじりコイルばねを撓ませてのセットになるので、組み付け性がよくないことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】両面装置を閉じた状態の画像形成装置の概略構成を示した断面図である。
【図2】両面装置を開いた状態の画像形成装置の概略構成を示した図である。
【図3】支持機構を拡大して示した斜視図である。
【図4】支持機構の分解斜視図である。
【図5】ばね片先端部の斜視図である。
【図6】ばね片先端部の斜視図である。
【図7】本発明との比較例として従来のばねセットの仕方を説明した正面図である。
【図8】本発明との比較例として従来のばねセットの仕方を説明した正面図である。
【図9】本発明との比較例として従来のばねセットの仕方を説明した斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
2 画像形成装置本体
3 両面装置
19 第1部材
20 第2部材
40 ねじりコイルばね
40a ねじりコイル部
40a1、40a2 ばね片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体と、この固定体に設けた回転支軸と、この回転支軸を支点として回転可能な開閉体を有する開閉体の支持機構であって、
その一端部を前記開閉体に回転可能に支持されている第1部材と、その一端部を前記固定体に回転可能に支持されている第2部材と、これら第1部材及び第2部材の各他端部同士を枢着している枢軸と、この枢軸に装着されているねじりコイルばねを有し、
前記開閉体を閉方向に付勢するように前記第1部材と前記第2部材とに前記ねじりコイル部から延出した2つのばね片がそれぞれ掛けられたことを特徴とする開閉体支持機構。
【請求項2】
請求項1記載の開閉体支持機構において、
前記ねじりコイルばねは、外力が作用しない状態のもとで前記2つのばね片は互いが接近した閉じ状態になることを特徴とする開閉体支持機構。
【請求項3】
請求項1または2記載の開閉体支持機構において、
第1部材と第2部材の各自由端部同士を枢着する枢軸の一端側は止め輪により抜け止めされていることを特徴とする開閉体支持機構。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の開閉体支持機構において、
前記開閉体に対する前記第1部材の支持手段、前記固定体に対する前記第2部材の支持手段の少なくとも一方は分解可能であることを特徴とする開閉体支持機構。
【請求項5】
画像形成装置本体の側面部と、該側面部の下部を支点に開閉回動可能な両面装置とを有画像形成装置において、前記画像形成装置本体に対して両面装置を開閉可能に支持する支持手段として請求項1乃至7の何れかに記載の開閉支持機構を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
固定体と、この固定体に設けた回転支軸と、この回転支軸を支点として回転可能な開閉体を有する開閉体の支持機構であって、その一端部を前記開閉体に回転可能に支持されている第1部材と、その一端部を前記固定体に回転可能に支持されている第2部材と、これら第1部材及び第2部材の各他端部同士を枢着している枢軸と、この枢軸に装着されているねじりコイルばねを有し、前記開閉体を閉方向に付勢するように前記第1部材と前記第2部材とに前記ねじりコイル部から延出した2つのばね片がそれぞれ掛けられた構成の開閉体支持機構を組み立てるに際して、
前記コイル部を前記枢軸に挿通装着した後、前記2つのばね片の一方を前記第1部材(又は前記第2部材)に掛けてから、てこを用いて他方のばね片を前記第2部材(又は前記第1部材)に掛けることによりばね掛けして組み立てることを特徴とする開閉体支持機構の組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−121945(P2007−121945A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317357(P2005−317357)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】