説明

開閉機構および画像形成装置

【課題】開閉部材を閉じた時に開閉部材の閉止状態を確実に保持することができる開閉機構を提供する。
【解決手段】固定レバー5が固定位置にある場合において開いている前カバー3を閉じていくと、前カバー3に形成したガイド板部62が固定レバー5を支軸51ごと上昇させ、次いで固定レバー5の連結ピン52が前カバー3側のカム溝61に入り、固定レバー5がカム溝61に連結した閉止状態を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば画像形成装置(複写機、プリンタ、ファクシミリ、さらにはこれらの複合機等)に具備されるカバーの開閉機構に関する。また、該開閉機構を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記画像形成装置は、装置本体に対して各種開閉部材が開閉可能に設けられている。開閉部材としては、装置本体に挿入される給紙カセット、メンテナンス用のカバー、トナー等の交換用品を交換する時に開ける扉などが挙げられる。これらの開閉部材は、特に装置本体側へ閉じる時において、ばね等を有する閉止機構によって閉じる方向に引き込まれる作用を受けて操作力が軽減したり、閉じた位置での位置決めがなされるといった工夫がなされているものが知られている(特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−222629号公報
【特許文献2】特開2006−139052号公報
【特許文献3】特開2001−240259号公報
【特許文献4】特開2008−254841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、開閉部材を閉じた時に開閉部材の閉止状態を確実に保持することができる開閉機構および該開閉機構を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、装置本体と、該装置本体に開閉可能に設けられた開閉部材と、前記装置本体と前記開閉部材のいずれか一方に支軸を介して回転可能に支持され、前記開閉部材が閉止された状態を固定する固定レバーと、前記支軸を移動可能に保持する保持手段と、該固定レバーが支持された側とは他方側である前記装置本体または前記開閉部材に設けられ、該開閉部材を閉じた時に前記固定レバーが連結する被連結部と、前記固定レバーの回転角度位置を、前記被連結部に連結して前記開閉部材を固定する固定位置と、前記被連結部に連結可能な待機位置の2位置のうちのいずれか一方の位置に位置付ける弾性部材と、前記開閉部材が前記装置本体から離間しており、かつ、前記固定レバーが前記固定位置にある状態から、該開閉部材を閉じた時に、前記固定レバーに作用することにより、該固定レバーを、前記支軸ごと前記被連結部への連結可能位置に移動させる連結手段と、前記支軸を前記固定レバーの前記待機位置に対応した位置に付勢する支軸付勢手段とを具備する開閉機構である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記保持手段は前記支軸が挿入されて該支軸をスライド可能に保持する空所であり、前記支軸付勢手段は該支軸に作用する弾性部材であることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記保持手段は前記支軸を揺動可能に保持するレバー部材であって、前記支軸付勢手段は該レバー部材を揺動させる弾性部材であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記固定レバーは、前記支軸の軸線方向に離間して一対設けられており、かつ、連結部材によって一体的に回転可能に連結されていることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記連結手段は、前記開閉部材もしくは前記固定レバーの少なくとも一方に設けられ、前記開閉部材の閉動作に伴い、前記固定レバーを前記被連結部に連結可能な前記連結可能位置に移動させるガイド部であることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の開閉機構を備えた画像形成装置であって、前記装置本体内に、プロセスカートリッジを備えた画像形成部が内蔵されており、前記開閉部材は、該プロセスカートリッジ交換用の扉部材であることを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の開閉機構を備えた画像形成装置であって、前記装置本体内に画像形成部が内蔵されており、前記開閉部材は、該画像形成部に用紙を供給する給紙カセットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、固定レバーが待機位置にはなく固定位置にある状態であっても、開閉部材を装置本体側に閉じた場合、連結手段により固定レバーが支軸ごと被連結部への連結可能位置に移動させられ、これにより固定レバーを被連結部に連結させることができ、その結果、開閉部材の閉じた状態を確実に保持することができる。また、弾性部材により、固定レバーが被連結部に連結する際に開閉部材を装置本体側に引き込む力が発生し、開閉部材を閉じる際の操作力が軽減される。
【0013】
請求項2の発明によれば、保持手段および支軸付勢手段を簡素に構成でき、かつ、コンパクト化が図られる。
【0014】
請求項3の発明によれば、固定レバーの上記2位置間を回転する動作が安定して行われ、また、支軸を固定レバーの待機位置に対応した位置に付勢する付勢力の調整が容易である。
【0015】
請求項4の発明によれば、一対の固定レバーの被連結部に対する連結・被連結動作が一体的になされ、また、幅のある開閉部材の装置本体への閉止状態を確実に得ることができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、連結手段を簡素な構成とすることができ、また、固定レバーを連結可能位置に確実に移動させることができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、プロセスカートリッジ交換用の扉部材を装置本体に対し確実に閉止することができる。
【0018】
請求項7の発明によれば、給紙カセットを装置本体に対し確実に閉止した状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの内部構造を模式的に示す側面図である。
【図2】一実施形態に係る前カバーの装置本体への取付構造を示す側面図である。
【図3】一実施形態に係る前カバーの閉止機構の側面図であって、固定レバーが待機位置にある状態から前カバーが閉じる際の作用を示している。
【図4】同閉止機構において固定レバーが反転していた場合の作用を示す側面図である。
【図5】同閉止機構を備えない場合に起こる不具合を説明するための側面図である。
【図6】同閉止機構の側面図であって、前カバーが開く際の作用を示す側面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る前カバーの閉止機構を示す側面図であって、固定レバーが待機位置にある状態から前カバーが閉じる際の作用を示している。
【図8】他の実施形態において固定レバーが反転していた場合の作用を示す側面図である。
【図9】他の実施形態において前カバーが開く際の作用を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
(1)プリンタの基本構成
図1は一実施形態の画像形成装置であるプリンタ1の内部構成を模式的に示している。同図に示すように、プリンタ1は、装置本体2と、装置本体2内の前側(図1でF方向がプリンタ1における前方)を開放する前カバー3と、装置本体2の前方の上側を開放する上カバー4とを備えている。 なお、以下の説明で前後左右といった方向は、特に注釈がない限り装置本体2を前側から見た状態での方向を言う。
【0021】
装置本体2は、フルカラーの画像形成部21、画像形成部21の前方に対向配置された転写部23、電源ユニット24および制御部25を内蔵している。また、装置本体2の下部には、多数の用紙Pを積層して収納する給紙カセット10が開閉可能に挿入される。給紙カセット10は装置本体2から後方に引き出されて内部に用紙Pが収納される。
【0022】
前カバー3は、下端部が左右方向に延びるヒンジ軸31を介して装置本体2に回転可能に支持されている。前カバー3は、装置本体2から前方に回転して開放され、後方に回転させられると装置本体2に対し直立した状態で閉止される。
【0023】
上カバー4は、後端部が左右方向に延びるヒンジ軸41を介して、装置本体2に回転可能に支持されている。上カバー4は、装置本体2から上方に回転して開放され、下方に回転させられると閉じた状態となる。上カバー4は、閉じた状態の前カバー3の上端部に前側から重なるようにして閉じられる。したがって、上カバー4を開かなければ前カバー3を開くことはできず、前カバー3を閉じてから上カバー4を閉じるように使用される。
【0024】
画像形成部21は、給紙カセット10の上方において下から上に積層された状態に配設されたプロセスカートリッジからなる4色の画像形成ユニット22Y,22M,22C,22Kを主体としている。画像形成ユニット22Y,22M,22C,22Kは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー画像を形成するものであって、感光体ドラム221、帯電ローラ222、現像ローラ223、感光体ドラムクリーナ224、除電ローラ225等から構成される。感光体ドラム221には、画像形成ユニット22Y,22M,22C,22Kの後方に配設された露光装置226によって潜像が形成される。
【0025】
転写部23は、上下一対のベルトローラ231に架け渡された搬送ベルト232と、搬送ベルト232の内側であって画像形成ユニット22Y,22M,22C,22Kの各感光体ドラム221に対応する位置にそれぞれ配設された転写ローラ233とを有している。
【0026】
プリントされる用紙Pは、給紙カセット10から、画像形成部21と転写部23との間に形成される搬送路26を上昇し、装置本体2の上部に形成された排紙トレー27に排出される。用紙の搬送路26は、搬送ベルト232と各感光体ドラム221との間、搬送ベルト232の上流側の給紙ローラ対28A、ピックアップローラ対28B、搬送ベルト232の下流側の定着ローラ対28Cおよび排紙ローラ対28Dによって構成される。
【0027】
プリンタ1には、パーソナルコンピュータ等からカラー画像情報が入力される。カラー画像情報が入力されると、1枚の用紙Pがピックアップローラ対28Bで給紙カセット10から給紙ローラ対28Aに送られ、帯電装置29で帯電された搬送ベルト232に静電吸着して上方に搬送される。一方、画像形成ユニット22Y,22M,22C,22Kの感光体ドラム221が帯電ローラ222によって帯電させられ、各感光体ドラム221の表面に各色の画像に対応する静電潜像が露光装置226によって形成される。この色画像はそれぞれの現像ローラ223によって感光体ドラム221の表面に現像され、この現像が搬送ドラム232で上昇搬送される用紙Pに対し転写されて現像される。
【0028】
このような感光体ドラム221から用紙Pへの現像が各画像形成ユニット22Y,22M,22C,22Kにおいて所定タイミングで順に行われ、最も下流側のブラックの画像形成ユニット22Kを通過する時に、用紙Pにフルカラートナー像が形成される。
【0029】
ブラックの画像形成ユニット22Kを通過してフルカラートナー像が転写された用紙Pは、定着ローラ対28Cを通過し、この定着ローラ対28Cによってフルカラートナー像が用紙Pに対し圧着と加熱の作用で定着される。そして、定着ローラ対28Cを通過した用紙Pは排紙ローラ対28Dによって排紙トレー27に排出される。
【0030】
図2は、前カバー3が手前側に開いた状態を示している。上記転写部23は、下端部が軸234を介して装置本体2に対し前後方向に傾倒可能に支持されており、前カバー3を開けると、転写部23は前カバー3の内側に上端部が接触した状態で手前側に開く。この状態で、上記画像形成ユニット22Y,22M,22C,22Kは開放状態となり、したがって前カバー3を開けることにより、搬送路26に生じた用紙詰まり等のトラブルに対処することができる。
【0031】
前カバー3の内面(装置本体2への対向面)には、ばね支持部32を介して装置本体2側に延びるコイルばね33が設けられている。前カバー3を閉じるに伴い転写部23も閉じられていき、転写部23の上端部が装置本体2の一部をなす本体フレーム2Aの前端部に接触する。そしてさらに前カバー3が閉じられることによりコイルばね33は圧縮状態となり、転写部23はそのコイルばね33によって本体フレーム2Aに押圧されて、本体フレーム2Aに接触した稼働位置に位置決めされ、かつ保持される。
【0032】
(2)前カバーの閉止機構
以上がプリンタ1の基本的な構成および動作であり、次に、上記前カバー3の装置本体2に対する閉止機構を説明する。
【0033】
図2に示すように、装置本体2の上端部には、固定レバー5が設けられている。この固定レバー5は装置本体2の上端部において左右一対の状態で設けられている。左右の固定レバー5は、左右方向に延びる1本の支軸51に一端部が固定されており、この支軸51を介して一体的に連結された状態で、A−B方向に回転自在に装置本体2に支持されている。固定レバー5の先端の一側面には、軸方向が左右方向に延びる連結ピン52が形成されている。
【0034】
固定レバー5は、引っ張りばね53によって、図2に示す待機位置と、図3(c)に示す固定位置の2位置のいずれか一方の位置に位置付けられるようになっている。固定レバー5はL字状であって、待機位置においては、支軸51への固定端から前上がりに傾斜してから屈曲部を経て真っ直ぐ前方に延びる形状を有している。引っ張りばね53は、一端が本体フレーム2Aに係止され、他端が固定レバー5に係止されており、固定レバー5は、A方向に回転すると待機位置で停止し、B方向に回転すると固定位置に停止するようになっている。そしてこれら両位置の間に、引っ張りばね53のテンションが最大になる中間点が存在する。
【0035】
支軸51は、装置本体2に形成された上下方向に延びる長孔54内に保持されており、この長孔54に沿って上下方向に揺動可能となっている。すなわち固定レバー5は支軸51ごと長孔54に沿って上下方向に揺動可能となっている。また、支軸51は板ばね55によって長孔54の下端部である固定レバー5の待機位置に対応した位置に常に付勢されている。板ばね55は一端部が本体フレーム2Aに係止されており、そこから前方に延びて他端部が支軸51の上部に弾性的に押圧する状態に設けられている。
【0036】
一方、前カバー3の上端部であって、左右の固定レバー5に対応する位置には、固定レバー5の連結ピン52が入り込むカム溝61が形成されている。このカム溝61は、前方が外周側となるように円弧状に形成されている。
【0037】
また、前カバー3の内面におけるカム溝61の側方であって上記固定レバー5に対応する位置には、装置本体2側に突出する三角形状のガイド板部62が形成されている。このガイド板部62の上縁をなすように形成された傾斜面621が、上記固定レバー5が固定位置にある場合に固定レバー5をカム溝61に連結可能な連結可能位置に移動させるように作用する。この傾斜面621の先端には凸部622が形成されており、傾斜面621は凸部622からカム溝61の開口縁に向かって直線的に延びている。カム溝61とガイド板部62は左右方向にずれており、左右方向の位置は、カム溝61が連結ピン52に一致し、ガイド板部62が固定レバー5に一致している。
【0038】
以下、前カバー3の閉止動作を説明する。
前カバー3が開いた状態では、固定レバー5は引っ張りばねによって図2に示すように待機位置に位置付けられている。この状態から、開いている前カバー3を閉じていくと、まず、図3(a)に示すように連結ピン52がカム溝61の前側内面611の上端部に接触する。カム溝61は、固定レバー5に近接した時において前側内面611の上端の方が後側内面612の上端よりも高くなるようになされており、このため連結ピン52はカム溝61の上部開口を通過して前側内面611の上端部に接触する。
【0039】
次いで前カバー3が閉じられていくことにより、連結ピン52が前側内面611に沿って下降しながらカム溝61に入り込んでいき、これによって固定レバー5はB方向に回転する。回転する固定レバー5は図3(b)に示すように上記中間点を通過して、図3(c)に示すように引っ張りばね53の力で反転して固定位置に達し、この時、連結ピン52はカム溝61の底部に連結して固定レバー5により前カバー3は閉じる方向に引き込まれる。これにより固定レバー5がカム溝61に連結し、前カバー3は装置本体2側に閉止された状態に保持される。なお、図3では長孔54および板ばね55の図示を省略している。
【0040】
次に、前カバー3が開いている際に何らかの理由で固定レバー5が待機位置から固定位置に反転している状態から、前カバー3を閉じる際の動作を説明する。前カバー3を閉じていくと、図4(a)に示すように固定位置にある固定レバー5の先端に、ガイド板部62の傾斜面621の先端が近接する。
【0041】
そして図4(b)〜(c)に示すように、傾斜面621が連結ピン52に接触し、さらに前カバー3が閉じられていくことにより連結ピン52が傾斜面621を摺動して上昇し、これに追従して固定レバー5が支軸51ごと長孔54に沿って上昇する。そして連結ピン52はカム溝61に達し、さらに引っ張りばね53の力でカム溝61に入り、固定レバー5は固定位置に戻る。この時、固定レバー5により前カバー3は閉じる方向に引き込まれる。これにより固定レバー5がカム溝61に連結し、前カバー3は装置本体2側に閉止された状態に保持される。
【0042】
ここで、ガイド板部62を有さない場合を想定すると、図5に示すように前カバー3の上端部が固定位置にある固定レバー5に干渉し、固定レバー5がカム溝61に連結することは不可能である。本実施形態では前カバー3を閉じる動作に伴ってガイド板部62が固定レバー5を上昇させてカム溝61への連結可能位置に移動させるため、連結ピン52がカム溝61に連結可能となり、前カバー3の閉止が確実になされる。
【0043】
また、左右の固定レバー5は支軸51で一体的に連結されているので、一方の固定レバー5のみが待機位置あるいは連結可能位置にあって他方の固定レバー5がそれら位置にない場合には、双方の固定レバー5はカム溝61に連結せず、したがって一方の固定レバー5のみが連結した片側閉止といった不具合は起こらない。
【0044】
次に、図6により閉止状態の前カバー3を開ける際の動作を説明する。図6(a)に示すように、前カバー3を開けていくと、引っ張りばね53でB方向に付勢されている固定レバー5の連結ピン52がカム溝61の後側内面612に摺動しながら上昇し、固定レバー5はA方向に回転する。この時には、板ばね55で支軸51は押さえられ、浮き上がることはない。次いで図6(b)に示すように、連結ピン52がカム溝61を出る直前に固定レバー5は中間点に達し、さらにA方向に回転して元の待機位置に戻る。これにより、図6(c)に示すようにカム溝61から固定レバー5は完全に外れ、前カバー3を開けることができる状態になる。
【0045】
上記一実施形態によれば、上記の如く固定レバー5が待機位置にはなく固定位置にある状態であっても、前カバー3を装置本体2に対し常に確実に閉止させることができる。また、固定レバー5の支軸51を移動自在に保持するために長孔54を形成しており、また、支軸51を下方に付勢するものとして板ばね55を用いているため、これらを簡素に構成でき、かつ、コンパクト化が図られる。また、固定レバー5を連結可能位置に移動させるガイド板部62は簡素な構成であり、固定レバー5を連結可能位置に確実に移動させることができる。
【0046】
(3)閉止機構の他の実施形態
次に、図7〜図9を参照して上記前カバー3の閉止機構に係る他の実施形態を説明する。この実施形態では、装置本体2における前カバー3の上端部に対応する両側に、左右一対の状態で軸方向が左右方向に延びる連結ピン7が設けられている。この連結ピン7は、例えば上記本体フレーム2Aに固定されて設けられる。なお、図7〜図9では、前カバー3の図示を省略している。
【0047】
一方、前カバー3側に、連結ピン7に連結して前カバー3を閉止状態とする固定レバー8が、揺動レバー9を介して取り付けられている。揺動レバー9は軸線方向が左右方向に延びる軸91を介して矢印C−D方向に揺動可能に前カバー3に支持されている。軸91は揺動レバー9の中間にあり、前カバー3から手前側の一端に掛けられた引っ張りばね92によって、図7(a)に示すように、前下がりに傾斜した状態となっている。
【0048】
固定レバー8は長片部81と短片部82を有するL字状に屈曲したものであって、屈曲部分の内側に凹所83が形成されている。また、屈曲部分から短片部82の外縁には円弧面84が形成されている。左右の固定レバー8は、屈曲部分が左右方向に延びる1本の支軸85に固定されており、この支軸85を介して一体的に連結された状態で、揺動レバー9の後端部に、E−F方向に回転自在に支持されている。固定レバー8には、揺動レバー9から引っ張りばね86が掛けられており、この引っ張りばね86によって、図7(a)に示す連結ピン7に連結する待機位置と、図7(c)に示す固定位置の2位置のいずれか一方の位置に位置付けられるようになっている。
【0049】
待機位置にある固定レバー8は、凹所83が後方に向き、かつ、長片部81が短片部82よりも手前側に位置し、長片部81の先端が短片部82の先端よりも高い位置にある。待機位置にある固定レバー8がE方向に回転すると固定位置に位置付けられる。この固定位置での固定レバー8は、凹所83が後方に向き、かつ、短片部82が前方に位置し、長片部81が屈曲部分から後方に延びた状態になる。固定レバー8は、揺動レバー9に設けられたストッパ87に長片部81の外縁が当たることにより固定位置で停止する。待機位置と固定位置との間を回転する固定レバー8にあっては、引っ張りばね86のテンションが最大になる中間点が存在する。
【0050】
以下、前カバー3の閉止動作を説明する。
前カバー3が開いた状態では、固定レバー8は引っ張りばね86によって図7(a)に示すように待機位置に位置付けられている。この状態から、開いている前カバー3を閉じていくと、まず、図7(a)に示すように装置本体2側の連結ピン7が固定レバー8の長片部81の内面に接触し、次いで連結ピン7に相対的に押された固定レバー8がE方向に回転させられ、図7(b)に示す中間点を通過して反転し、図7(c)に示す固定位置で停止する。この状態で連結ピン7は凹所83に嵌り込んで固定レバー8に連結し、前カバー3は装置本体2側に閉止された状態に保持される。
【0051】
次に、前カバー3が開いている際に何らかの理由で固定レバー8が待機位置から固定位置に反転している状態から、前カバー3を閉じる際の動作を説明する。開放している前カバー3を閉じていくと、図8(a)〜(b)に示すように固定位置にある固定レバー8の、短片部82の円弧面84に連結ピン7が接触する。
【0052】
ここからさらに前カバー3が閉じられることにより、固定レバー8が連結ピン7によって下方に押される。これにより固定レバー8が固定位置にあるまま、揺動レバー9が引っ張りばね92に抗してD方向に回転させられ、連結ピン7が連結可能な位置まで下降し、次いで連結ピン7が短片部82の先端を乗り越える。すると、連結ピン7による押さえが外れて揺動レバー9はC方向に回転し、図8(c)に示すように連結ピン7が凹所83に嵌り込んで固定レバー8に連結する。このようにして固定レバー8が固定位置にある状態で前カバー3を閉じても、連結ピン7が固定レバー8に連結し、前カバー3は装置本体2側に閉止された状態に保持される。
【0053】
ここで、揺動レバー9が揺動しないと仮定すると、固定位置にある固定レバー8の短片部82が連結ピン7に干渉し、連結ピン7が固定レバー8に連結することは不可能である。本実施形態では前カバー3を閉じる動作に伴って揺動レバー9が下がり、固定レバー8が連結ピン7に連結可能な位置に移動するため、連結ピン7が固定レバー8に連結可能となり、前カバー3の閉止が確実になされる。
【0054】
次に、図9により閉止状態の前カバー3を開ける際の動作を説明する。図9(a)に示すように連結ピン7が固定レバー8に連結している状態から前カバー3を開けていくと、図9(b)に示すように、固定レバー8の短片部82が連結ピン7によって相対的に後方に押されることにより固定レバー8がF方向に回転して中間点に達し、さらにF方向に回転して元の待機位置に戻る。これにより図9(c)に示すように固定レバー8から連結ピン7は完全に外れ、前カバー3を開けることができる状態になる。なお、このような動作を可能とするため、図9(b)に示すように、引っ張りばね92,86のそれぞれの力F1,F2と、軸91からの距離L1,L2の関係は、(L1×F1)が(F2×L2)よりも大きいように設定される。
【0055】
上記他の実施形態によれば、揺動レバー9で固定レバー8を支持することにより、固定レバー8の待機位置と固定位置間を回転する動作が安定して行われる。また、引っ張りばね92を適宜なものに選択することにより、支軸85を待機位置に付勢する付勢力の調整が容易である。
【0056】
本発明は上記実施形態に限定されず、開閉部材としては、プロセスカートリッジ交換用の扉部材や、上記給紙カセット10等が挙げられ、これら扉部材や給紙カセット10等に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…プリンタ(画像形成装置)
10…給紙カセット
2…装置本体
22Y,22M,22C,22K…画像形成ユニット(プロセスカートリッジ)
3…前カバー(開閉部材)
5…固定レバー
51,85…支軸(連結部材)
53,86…引っ張りばね(弾性部材)
55…板ばね(支軸付勢手段、弾性部材)
61…カム溝(被連結部)
62…ガイド板部(連結手段、ガイド部)
7…連結ピン(被連結部)
8…固定レバー
82…長孔(保持手段、空所)
84…円弧面(連結手段、ガイド部)
9…揺動レバー(保持手段、レバー部材)
92…引っ張りばね(支軸付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
該装置本体に開閉可能に設けられた開閉部材と、
前記装置本体と前記開閉部材のいずれか一方に支軸を介して回転可能に支持され、前記開閉部材が閉止された状態を固定する固定レバーと、
前記支軸を移動可能に保持する保持手段と、
該固定レバーが支持された側とは他方側である前記装置本体または前記開閉部材に設けられ、該開閉部材を閉じた時に前記固定レバーが連結する被連結部と、
前記固定レバーの回転角度位置を、前記被連結部に連結して前記開閉部材を固定する固定位置と、前記被連結部に連結可能な待機位置の2位置のうちのいずれか一方の位置に位置付ける弾性部材と、
前記開閉部材が前記装置本体から離間しており、かつ、前記固定レバーが前記固定位置にある状態から、該開閉部材を閉じた時に、前記固定レバーに作用することにより、該固定レバーを、前記支軸ごと前記被連結部への連結可能位置に移動させる連結手段と、
前記支軸を前記固定レバーの前記待機位置に対応した位置に付勢する支軸付勢手段と、
を具備することを特徴とする開閉機構。
【請求項2】
前記保持手段は前記支軸が挿入されて該支軸をスライド可能に保持する空所であり、前記支軸付勢手段は該支軸に作用する弾性部材であることを特徴とする請求項1に記載の開閉機構。
【請求項3】
前記保持手段は前記支軸を揺動可能に保持するレバー部材であって、前記支軸付勢手段は該レバー部材を揺動させる弾性部材であることを特徴とする請求項1に記載の開閉機構。
【請求項4】
前記固定レバーは、前記支軸の軸線方向に離間して一対設けられており、かつ、連結部材によって一体的に回転可能に連結されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の開閉機構。
【請求項5】
前記連結手段は、前記開閉部材もしくは前記固定レバーの少なくとも一方に設けられ、前記開閉部材の閉動作に伴い、前記固定レバーを前記被連結部に連結可能な前記連結可能位置に移動させるガイド部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の開閉機構。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の開閉機構を備えた画像形成装置であって、
前記装置本体内に、プロセスカートリッジを備えた画像形成部が内蔵されており、
前記開閉部材は、該プロセスカートリッジ交換用の扉部材であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の開閉機構を備えた画像形成装置であって、
前記装置本体内に画像形成部が内蔵されており、
前記開閉部材は、該画像形成部に用紙を供給する給紙カセットであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−53281(P2011−53281A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199698(P2009−199698)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】