説明

間隔警告システムを有する自動車内の疲労警告装置

運転者の疲労状態を検出するための運転者センサ技術(20)と間隔警告システムとを有しており,その間隔警告システムは環境センサ技術を有し,かつ,前を走行する車両に対する警告間隔を下回った場合に警告信号を出力し,および/または車両の駆動システムおよび/またはブレーキシステム(14,16)へ制御介入を行うように形成されている,自動車内の疲労警告装置は,間隔警告システムが調節装置(22)を有しており,その調節装置は,検出された疲労状態(E)に従って警告間隔を変化させるように形成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,運転者の疲労状態を検出するための運転者センサ技術と間隔警告システムを有し,その間隔警告システムは環境センサ技術を有し,かつ,前を走行する車両に対する警告間隔を下回った場合に警告信号を出力し,および/または,車両の駆動システムおよび/またはブレーキシステムへの制御介入を行うように形成されている,自動車内の疲労警告装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人の以前の出願において,この種の装置が提案されており,同装置においては疲労警告システムはいわゆるACCシステム(Active Cruise Control)と組み合わされている。ACCシステムは,環境センサ技術として実際にすでに使用されている。ACCシステムは,一般的に,自動車の前に組み込まれた,前方を走行する車両の位置を測定することのできるレーダーセンサと,制御器とを有しいる。制御器は,前方を走行する車両に対する間隔が予め定められた目標間隔を下回った場合に,車両の駆動システムまたはブレーキシステムへ自動的に介入する。前方を走行する車両に対する間隔が再び増大した場合には,制御器は車両の加速を行わせるので,間隔は自動的に目標間隔に制御される。目標間隔は,大体においていわゆるタイムギャップによって定められる。タイムギャップは,前方を走行する車両と自己の車両が走行路上の固定点を通過する際の,時間的な間隔である。この種のいくつかのシステムにおいては,運転者は,目標タイムギャップを所定の限界内で,たとえば1秒と2秒の間の範囲内において,自分で調節する可能性を有している。
【0003】
自動的な間隔制御が行われるACCシステムの他に,警告間隔を特徴づける目標タイムギャップを下回った場合に単に警告信号のみが出力され,車両のコントロールは運転者に委ねられる,間隔警告システムも知られている。この出願においては,実際には警告だけでなく,駆動システムまたはブレーキシステムへの介入も行われる場合でも,「目標間隔」という概念の代わりに,常に「警告間隔」という概念が使用される。
【0004】
以前の出願において提案されている装置においては,運転者センサ技術が運転者の疲労状態を認識した場合に,車両が強制的に減速されて,ついには停止するように制動される。その場合に間隔制御システムと組み合わせることによって,事故の危険を減少させようとしている。自己の車両の前方の走行路があいている場合には,車両の減速は,後続の交通を惑わせたり,危険にさらすことがないように,適度な減速率で行われる。それに対して,環境センサ技術によって,前方を走行する車両の位置が測定された場合には,測定された間隔に従って,自己の車両のより強い,あるいはより迅速な減速が行われ,それによって前方を走行する車両への追突が回避される。しかし,調節された目標タイムギャップは,運転者の疲労状態には依存しない。
【0005】
WO00/24309A1には,疲労警告システムが開示されている。同システムでは,特に,運転者のまぶたの運動に反応するカメラシステムを用いて走行無能力が検出される。この警告システムは,走行無能力が認識された場合に警告信号を出力して,警告点滅設備をオンにするだけでなく,車両を安全に停止するように制動するために,制御された制動プロセスも導入するように,形成されている。
【0006】
多くの既知の疲労警告システムでは,疲労状態が認識された場合に,警告信号,たとえば光学的または音響的な警告信号,あるいはまた,たとえばステアリングホィールを揺する形式の,触覚的な信号が,運転者に出力されるだけである。しかし,このシステムは,自動車運転者においては余り受け入れられない。というのは,運転者は主観的には大体において理由がないと感じられる頻繁な警告信号を,煩わしいと感じるからである。
【発明の開示】
【発明の利点】
【0007】
請求項1に記載された特徴を有する本発明は,疲労警告システムの受入れが増大し,それにもかかわらず高い交通安全性が達成される,という利点を提供する。
【0008】
そのために,本発明によれば,間隔警告システムまたは間隔制御システム内で基礎とされている警告間隔が,検出された疲労状態に従って変化される。運転者の疲労が認識された場合には,まず,警告信号の出力は行われず,単に警告間隔のみが増大される。警告信号の出力は,前を走行する車両に対する間隔が比較的大きい警告間隔を下回った場合に初めて行われる。このようにして,前の車両に追いつく場合に運転者に提供される反応時間を増大させることによって,運転者が不必要な信号に煩わされることなく,交通安全性を増大することができる。警告信号を出力する代わりに,あるいはそれに加えて,間隔制御システムの枠内で,車両の自動的な減速を行うこともできる。通常と異なる大きい間隔において使用される,この車両の減速は,通常,運転者によって知覚され,従って同時に「穏やか」で,運転者に受け入れられる警告信号の機能を有している。
【0009】
本発明の好ましい形態と展開が,従属請求項から明らかにされる。
【0010】
警告間隔は,好ましくは,間隔制御システムまたはACCシステムにおいて一般的であるように,目標タイムギャップを介して定められる。運転者が目標タイムギャップを手動で調節することのできるシステムでは,本発明に基づく装置は,好ましくは,目標タイムギャップの自動的な増大が,運転者によって手動で行われた調節を上位制御するように,形成されている。疲労が認識された場合には,手動の調節のために設けられている調節領域を越えることができる。
【0011】
認識された疲労状態をダッシュボード上の光学的な表示によって見えるようにすると効果的であって,それによって運転者にとってなじみのない,間隔警告システムまたは間隔制御システムの動作が透明になる。
【0012】
本発明の実施形態を図面に示し,以下で詳細に説明する。
【実施例の説明】
【0013】
図1には,1つまたは複数のマイクロプロセッサによって形成された,自動車のACC制御ユニットがブロック図として示されている。ACC制御ユニットは,たとえば車両の前に組み込まれているレーダーセンサ等の環境センサ技術12からの信号を受信し,前方を走行する車両の測定された間隔と相対速度を用いて,前方を走行する車両に対する間隔を目標タイムギャップによって定められる目標間隔(警告状態)に制御するために,車両の駆動システム14および/またはブレーキシステム16へ介入する。この制御機能は,既知のように,ACC制御ユニット10の制御器18によって実施される。
【0014】
付加的に,本発明に基づく装置は,運転者センサ技術20を有しており,その運転者センサ技術によって運転者の疲労状態を検出することができる。この運転者センサ技術20は,たとえば,公知のように,カメラシステムと電子的な画像評価システムによって形成することができ,同システムが運転者のまぶたの運動に反応する。しかし選択的に,あるいは付加的に,疲労状態を認識するために,他の判断基準,たとえば疲労した運転者が車線維持を補正する,比較的唐突な操舵介入の頻度を利用することもできる。環境センサ技術12が,走行路境界を認識することのできる,走行路へ向けられたカメラシステムも有している場合には,車線中央からの偏差の頻度と程度が直接記録される。
【0015】
好ましくは,運転者センサ技術20は,運転者の疲労の徴候の頻度を統計的に評価して,この統計的なデータから量的なパラメータE(疲労度)を計算するように,形成されている。
【0016】
ACC制御ユニット10は,さらに,目標タイムギャップΔtを定めるための調節装置22を有しており,その目標タイムギャップがその後制御器18内で間隔制御機能または間隔警告機能の基礎とされる。調節装置22と接続されている操作素子24が,運転者に,通常,疲労状態が存在しない場合に使用すべきタイムギャップΔTをたとえば1から2秒の制限された調節領域内で手動で調節することを可能にする。
【0017】
疲労度Eは,運転者センサ技術20から調節装置22へ伝達されて,そこで疲労状態に従って目標タイムギャップΔTを修正するために用いられる。
【0018】
調節装置22内で自動的に行われる,目標タイムギャップの修正の例が,図2のグラフで示されている。疲労度E=0の場合には,運転者が操作素子24を用いて手動で行った調節が有効である。このようにして調節された目標タイムギャップΔTは,1秒と2秒の間の調節領域内にある。疲労度が増加するにつれて,図2の実線のカーブ26によって示されるように,目標タイムギャップΔTは線形に増大される。疲労が増加した場合に,この修正された目標タイムギャップを,2秒の調節領域の上方の限界を超えて上昇させることもできる。そして,目標タイムギャップは,所定の疲労度において最大値に達し,その最大値は図示の例においては3sであって,その目標タイムギャップは疲労度がさらに増大した場合でも一定に留まる。
【0019】
このように目標タイムギャップが疲労度Eに従って自動的に増大されることによって,警告間隔,あるいは間隔制御機能がアクティブである場合には前方を走行する車両を追従する目標間隔は,疲労度の増大に伴って増大されるので,疲労した場合に潜在的に長くなる,運転者の反応時間が考慮される。
【0020】
運転者が1から2秒の調節領域内で比較的大きい値に目標タイムギャップを調節しており,あるいは調節する場合には,目標タイムギャップの修正は,図2に破線で記入されているカーブ28に従って行われる。この場合においても,目標タイムギャップは最大値まで線形に増大し,その後は一定に留まる。運転者が,操作素子24を用いて目標タイムギャップを再調整し,それをたとえば最大可能な2sの値に調節した場合でも,疲労度が大きくなった場合には目標タイムギャップの強制的な増大が行われ,それを運転者が補償することはできない。このようにして一方では,向上された交通安全性が達成され,他方では運転者は間欠的に,休みをとるように促される。
【0021】
通常,運転者は適切な指令を入力することによって,いつでもACC機能を非アクティブにすることができる。しかし,ここで提案されている装置は,疲労度Eが所定のしきい値を上回った場合には,ACC機能が強制的にアクティブにされて,その場合に運転者によっては非アクティブにされないように,設計することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に基づく装置のブロック図である。
【図2】疲労状態に従って目標タイムギャップを変化させることを説明する図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の疲労状態を検出するための運転者センサ技術(20)と間隔警告システムとを有し,前記間隔警告システムは環境センサ技術(12)を有し,前方を走行する車両に対する警告間隔を下回った場合に警告信号を出力し,および/または車両の駆動システムおよび/またはブレーキシステム(14,16)への制御介入を行うように形成されている,自動車内の疲労警告装置において,
間隔警告システムが調節装置(22)を有しており,前記調節装置は,検出された疲労状態(E)に従って前記警告間隔を変化させるように形成されていることを特徴とする,疲労警告装置。
【請求項2】
前記警告間隔が,目標タイムギャップ(ΔT)を介して定められ,前記目標タイムギャップは,前記前方を走行する車両と自己の車両が走行路上の同一の点を通過する時間的な間隔を表していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
調節装置(22)に,操作素子(24)が対応づけられており,前記操作素子が運転者に,前記警告間隔または目標タイムギャップ(ΔT)を手動で調節することを許し,かつ,
前記調節装置(22)は,検出された運転者の前記疲労状態に従って手動の調節を上位制御するように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記警告間隔または前記目標タイムギャップ(ΔT)は,所定の限界内でのみ前記操作素子(24)を用いが調節が可能であって,かつ
前記調節装置(22)は,前記疲労状態が検出された場合に,前記警告間隔または前記目標タイムギャップ(ΔT)を,前記限界を越えて増大させるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記運転者センサ技術(20)は,前記疲労状態を量的に特徴づけるパラメータ(E)を出力するように形成されており,かつ,
前記調節装置(22)は,前記パラメータ(E)の単調に上昇する関数に従って,前記警告間隔または前記目標タイムギャップ(ΔT)を増大させるように形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記間隔警告システムは,前記疲労状態が認識された場合に自立的にアクティブになるように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−515327(P2007−515327A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535933(P2006−535933)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001630
【国際公開番号】WO2005/044612
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】