説明

防水シート及びその検査方法

【解決手段】不透水性層と、電磁波照射によってルミネセンスを起こす発光物質を含む発光層との、少なくとも2層が積層・接合されてなることを特徴とする防水シート、及び前記防水シートを用い、トンネル地山、一次覆工コンクリート側に前記発光層側を対向させて取り付ける共に、前記不透水性層側に二次覆工コンクリートを打設するに際し、トンネル内の照明を消した状態で該不透水性層側への電磁波発生装置による波長300〜450nm、出力17〜34Wの電磁波照射によって、該不透水性層の損傷部位を介して前記発光層中の発光物質にルミネセンスを起こさせ、該損傷部位を発見することを特徴とする防水シートの検査方法。
【効果】本発明によれば、トンネル等の施工に用いる防水シートに生じた損傷部位を簡便に作業性良く、かつ高い精度で発見することが可能な防水シート及びその検査方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等の施工に用いる防水シートに生じた損傷部位を簡便に作業性良く、かつ高い精度で発見することが可能な防水シート及びその検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、NATM工法に見られるように、トンネルの一次覆工コンクリートと二次覆工コンクリートとの間に防水シートを介装し、一次覆工コンクリート側からの湧水が二次覆工コンクリート側に漏水するのを防止することが行われている。
一般に、この防水シートは、透水性層と不透水性層とからなり、該透水性層側を一次覆工コンクリート側に、該不透水性層側を二次覆工コンクリート側になるよう介装することにより、地山からの湧水を該透水性層によってトンネル外に導出すると共に、該不透水性層によって二次覆工コンクリート側への漏水を防止している。
従って、当該施工にあたっては、防水シートによる二次覆工コンクリートに対する一次覆工コンクリートの液密な展張が必須となる。しかし、一次覆工コンクリート打設・防水シート展張後、二次覆工コンクリート打設までの間に、やむを得ず鉄筋の突き刺しや砕石の飛散等により防水シートを損傷させてしまうことがあり、この場合、二次覆工コンクリート打設までに、防水シートの損傷補修を行う必要がある。しかし、防水シートに生じた損傷部位が小さいとその検出は意外と困難である。
【0003】
そこで、防水シートに当該損傷部位を検出する機能を付与させることが幾つか提案されている。例えば、防水シート内部に電極を設けて、水浸入による電位差及び電流方向の変化により漏水個所を検出するもの(特許文献1:特開平6−63525号公報,特許文献2:特開平7−151633号公報)や、防水シート内部の空気や流体に圧力を発生させ、欠陥部の減圧を検知して漏水個所を検出するもの(特許文献3:特開平6−241939号公報,特許文献4:特開平7−31954号公報)、さらに防水シートを、暗い或いは濃い色のベースシートの表面に明るい或いは淡い色の薄いシートを貼着した複合シートの構成とし、両シートの色差によって該薄いシート表面の損傷部位を容易に視認できるようにするもの(特許文献5:特開平1−244008号公報)などである。
【0004】
しかし、特許文献1,2の防水シート内部に電極を設けて、水浸入による電位差及び電流方向の変化により漏水個所を検出するものも、特許文献3,4の防水シート内部の空気や流体に圧力を発生させ欠陥部の減圧を検知して漏水個所を検出するものも、防水シートの施工、漏水後にはじめて漏水部位を検知するものであって、防水シートの施工中に該防水シートに生じた小さな損傷部位を事前に検知するものではないため、本質的な信頼性に欠けており、しかも、特許文献1,2は防水シート内部に多数の電極を設ける複雑な構造であり、特許文献3,4もまた防水シート内部に密閉された空隙部である袋体の縦横の区画を複数設ける複雑な構造であり、いずれも各最小単位毎(前者は電極毎,後者は袋体の縦横の区画毎)に一定の検出精度(検出値の平均値とばらつき)が要求されるため、必ずしも該損傷部位を簡便に作業性良く、かつ高い精度で発見できるとは限らなかった。また、このような複雑な構成の防水シートはコスト面でも問題を抱えていた。
【0005】
特許文献5についても、トンネル内は環境照度が極端に低くなることから、該複合シートの色差のみで上記薄いシートに生じた損傷部位を発見することは容易ではなかった。
【0006】
即ち、上記特許文献1乃至5のいずれの例もトンネル等の施工に用いる防水シートに生じた損傷部位を簡便に作業性良く、かつ高い精度で発見することが可能な防水シート及びその検査方法とは言い難がった。
【0007】
【特許文献1】特開平6−63525号公報
【特許文献2】特開平7−151633号公報
【特許文献3】特開平6−241939号公報
【特許文献4】特開平7−31954号公報
【特許文献5】特開平1−244008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、トンネル等の施工に用いる防水シートに生じた損傷部位を簡便に作業性良く、かつ高い精度で発見することが可能な防水シート及びその検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成するため、鋭意検討を行なった結果、不透水性層と、電磁波照射によってルミネセンスを起こす発光物質を含む発光層との、少なくとも2層が積層・接合されてなることを特徴とする防水シートが上記損傷部位発見に有効であること、さらに前記防水シートを用い、トンネル地山、一次覆工コンクリート側に前記発光層側を対向させて取り付ける共に、前記不透水性層側に二次覆工コンクリートを打設するに際し、トンネル内の照明を消した状態で該不透水性層側への電磁波発生装置による波長300〜450nm,出力17〜34Wの電磁波照射によって、該不透水性層の損傷部位を介して前記発光層中の発光物質にルミネセンスを起こさせ、該損傷部位を発見することを特徴とする防水シートの検査方法によれば、該損傷部位を簡便に作業性良く、かつ高い精度で発見することが可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は下記防水シート及びその検査方法を提供する。
請求項1:
不透水性層と、電磁波照射によってルミネセンスを起こす発光物質を含む発光層との、少なくとも2層が積層・接合されてなることを特徴とする防水シート。
請求項2:
前記発光層が、前記不透水性層に熱融着可能な熱可塑性樹脂中に前記発光物質を0.5〜10質量%分散してなることを特徴とする請求項1記載の防水シート。
請求項3:
前記発光層の厚さが、該発光層の厚さと前記不透水性層の厚さの合計の厚さに対して10〜50%の厚みであることを特徴とする請求項1又は2記載の防水シート。
請求項4:
前記発光層が、環境照度0.1lx以下,10mの距離からの電磁波発生装置による波長300〜450nm,出力17〜34Wの電磁波照射によって、輝度3mcd/m2以上のルミネセンスを起こすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の防水シート。
請求項5:
請求項1乃至4のいずれか1項記載の防水シートを用い、トンネル地山、一次覆工コンクリート側に前記発光層側を対向させて取り付ける共に、前記不透水性層側に二次覆工コンクリートを打設するに際し、トンネル内の照明を消した状態で該不透水性層側への電磁波発生装置による波長300〜450nm,出力17〜34Wの電磁波照射によって、該不透水性層の損傷部位を介して前記発光層中の発光物質にルミネセンスを起こさせ、該損傷部位を発見することを特徴とする防水シートの検査方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トンネル等の施工に用いる防水シートに生じた損傷部位を簡便に作業性良く、かつ高い精度で発見することが可能な防水シート及びその検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態及び実施例】
【0012】
以下、本発明について図面を参照してより詳細に説明する。
図1は本発明の一構成例に係る防水シート1の一部を拡大して示す断面図であり、図2は本発明の一構成例に係る防水シート1の発光層4が発光する様子の一部を拡大して示す断面図であり、図3は図2の全体を示す斜視図である。
なお、図1,2の図上の円内の図は発光層4の細部を拡大したものである。
【0013】
図1は本発明の一構成例に係る防水シート1で、不透水性層3と、電磁波照射によってルミネセンスを起こす発光物質4aを含む発光層4との2層の他、さらに透水性層2が、この順に積層・接合されてなる。
透水性層2と発光層4との接合はそれぞれの側端部が接合されず、互いに自由端となり、他の部分は接合される部分的な接合であり、発光層4と不透水性層3の接合は全面的に接合・一体化されている。
図3は透水性層2と発光層4とは側端部において接合されず(側端部でめくれている)、他は接合されている部分的な接合で、さらに発光層4と不透水性層3とは全面的に接合されている(即ち、透水性層2を介して、地山、一次覆工コンクリート9側に発光層4の一面が対向し,他方の面が不透水性層3となっている)ことを示している。
【0014】
図2,3に示すように本発明の一構成例に係る防水シート1は、トンネル地山、一次覆工コンクリート9の面に前記透水性層2側の面が対向するように該透水性層2の側端部を釘10でアンカーリングし展張した後、前記不透水性層3側の面(発光層4と反対側の面)に図示しない二次覆工コンクリートが打設されるが、同図では二次覆工コンクリート打設までに、防水シート1の不透水性層3側の面に微小な損傷部位5(穴など)が生じた状況を示している。
従来、このような状況では、該損傷部位5を発見することは極めて困難であるが、本発明の防水シート1によれば、不透水性層3の二次覆工コンクリート打設面への電磁波発生装置6による電磁波7の全面的な照射により、不透水性層3の遮蔽がない損傷部位5において、電磁波7が不透水性層3の下層の発光層4の発光物質4aに到達し、該発光物質4aが該電磁波7のエネルギーを吸収して、該発光物質4a固有の発光8をするため、この発光8により該損傷部位5を容易に発見することができるものである。この場合、発見できる損傷部位5の大きさの精度は、直径2mm以上であり、電磁波照射の条件(波長,出力など)を整えることにより、直径0.5mm程度以上とすることもできる。
また、損傷部位5が図2のように必ずしも不透水性層3を貫通するものではなく、発光層4上に薄肉を形成するものであっても、電磁波照射の条件(波長,出力など)を整えることにより、該損傷部位5(不透水性層3)の下層の発光層4の発光物質4aを刺激し、該発光物質4aに該電磁波7のエネルギーを吸収させ、該発光物質4a固有の発光8をさせることにより、この発光8により該損傷部位5を容易に発見することができる。
即ち、このような防水シート1の構成は、トンネル等の施工に用いる防水シート1に生じた損傷部位5を簡便に作業性良く、かつ高い精度で発見することを可能にするものである。
【0015】
このように発光物質4aが電磁波7などの外部エネルギーを吸収してその物質固有の光を放出する現象をルミネセンス(luminescence)というが、本発明のルミネセンスには外部エネルギー(電磁波7)の入射停止後、発光物質4aの発光8も停止してしまう蛍光のみならず、外部エネルギー(電磁波7)の入射停止後も数秒間から数分間に渡って発光8を続ける燐光も含まれる。
【0016】
本発明に用いられる発光物質4aは、通常1〜数10μm程度の径をもつ単結晶に近い粒子で、母体組成単体のものの他、母体組成に数10ppm〜数%の付活剤をドープしたものを用いることができる。前者をそのまま化学式で表現し、後者を「母体組成:付活剤」の化学式として表現すると、例えば、BaSi25:Pb,Sr227:Eu,BaMg2Al1627:Eu,MgWO4,3Ca3(PO42・Ca(F,Cl)2:(Sb,Mn),MgGa24:Mn,Zn2SiO4:Mn,(Ce,Tb)MgAl1119,Y2SiO5:(Ce,Tb),Y23:Eu,YVO4:Eu,(Sr,Mg,Ba)3(PO42:Sn,3.5MgO・5MgF2・GeO2:Mn,ZnS:Cuなどを挙げることができる。いずれも遠・近紫外線域近傍の電磁波励起(波長域200〜450nm程度)なる発光物質であるが、発光効率が良く(通常30%程度以上)、かつ視認性に優れた緑〜赤系(波長域500〜800nm程度)の発光色を有するものが好ましいことから、これらの中でも(Ce,Tb)MgAl1119,Y2SiO5:(Ce,Tb),Y23:Eu,YVO4:Eu,(Sr,Mg,Ba)3(PO42:Sn,3.5MgO・5MgF2・GeO2:Mn,ZnS:Cuを用いることが好ましい。
【0017】
また、上記以外でも遠・近紫外線域近傍の電磁波励起(波長域200〜450nm程度)なる発光物質4aであって、発光効率が良く、かつ視認性に優れた緑〜赤系(波長域500〜800nm程度)、さらに好ましくは黄〜赤系(波長域570〜800nm程度)の発光色を有するものであれば特に限定されない。
【0018】
さらに、紫外線の中でもエネルギーが小さい近紫外線域近傍の電磁波励起(波長域300〜450nm程度)なる発光物質4aであって、発光効率が良く、かつ視認性に優れた緑〜赤系(波長域500〜800nm程度)、さらに好ましくは黄〜赤系(波長域570〜800nm程度)の発光色を有するものであればなおよい。
【0019】
このような発光物質4aと、不透水性層3に熱融着可能な熱可塑性樹脂4bを、それぞれ分散材、マトリクスとし、前者を後者に分散させシート化することによって発光層4を形成することができる。
【0020】
本発明の防水シート1の不透水性層3の材質には、従来と同様にエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、‘EVA’と略記)樹脂、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(以下、‘PVC’と略記)などの樹脂を用いることができるので、上記発光物質4aを分散させるマトリクスとしての熱可塑性樹脂4bには該不透水性層3への接着性を考慮し、これらと同種の樹脂や、これらの樹脂をベースに極性基を導入した変性樹脂を用いることができる。中でも該不透水性層3に対する設計(接着性や強度設計など)の自由度が高いEVA樹脂、ポリオレフィン樹脂又は変性ポリオレフィン樹脂を好適に用いることができる。
【0021】
このような発光層4のマトリクスをなす熱可塑性樹脂4bに用いられるEVA樹脂は、酢酸ビニル(以下、‘VA’と略記)含有量を適宜調整することによりEVA樹脂の接着性、強度、伸びを調整することができる。一般に、EVA樹脂へのVA含有量を増やせば、強度は減少し、接着性、伸びは増大し、逆にEVA樹脂へのVA含有量を減らせば、強度は増大し、接着性、伸びは減少することから、EVA樹脂のVA含有量は5〜30質量%が好ましく、より好ましくは10〜20質量%とすることができる。
【0022】
また、発光層4のマトリクスをなす熱可塑性樹脂4bに用いられるポリオレフィン樹脂には、通例のポリエチレン(以下、‘PE’と略記)やポリプロピレン(以下、‘PP’と略記)などの完全非極性のポリオレフィン樹脂、及びそれらにアクリル酸や無水マレイン酸などの極性基(カルボキシル基)をグラフト重合することにより極性を持たせ、接着性を付与させた変性ポリオレフィン樹脂を用いることができる。
この場合、ポリオレフィン樹脂(PE樹脂,PP樹脂等)へのアクリル酸や無水マレイン酸などの極性基(カルボキシル基)のグラフト量は3〜50質量%、より好ましくは7〜40質量%とすることができる。3質量%よりも極性基のグラフト量が少ないと十分な接着性を付与させることができず、逆に50質量%より極性基のグラフト量が多いとポリオレフィン樹脂本来の化学的特性(耐薬品性等)や物理的特性(剛性強度等)が失われるばかりか、接着性も効率的に上げられないため好ましくない。
【0023】
上記発光物質4aの上記熱可塑性樹脂4bへの分散量は、上記熱可塑性樹脂4bに対して0.5〜10質量%が好ましい。発光物質4aの熱可塑性樹脂4bへの分散量が0.5質量%未満であると電磁波照射による発光輝度に支障をきたすおそれがあり、10質量%超過であると発光層4の成形性(平坦性や厚さ制御など)に支障をきたすばかりか、思った程の発光輝度が期待できないおそれがある。
【0024】
上記発光物質4aを上記熱可塑性樹脂4bへ分散させ、発光層(シート)4を形成する方法は、顔料や添加剤を含む公知のプラスチックシート化技術を用いることによって得られる。
即ち、上記熱可塑性樹脂4bの熱溶融体中に上記分散量となるように発光物質4aを直接混合し、撹拌・均一分散させながら、これをスリットから押出して加圧ロール間に通過させてシート化するか、又は予め上記熱可塑性樹脂4bの熱溶融体中に任意の分散量の発光物質4aを混合し、撹拌・均一分散させながら、マスターバッチを作製し、このマスターバッチを用いて、熱可塑性樹脂4bと発光物質4aが最終的に上記分散量となるように追配合し、撹拌・均一分散させながら、これを溶融し、スリットから押出して加圧ロール間に通過させてシート化し、それぞれ必要に応じて適宜所定の寸法となるようレベリングとスリッティングをして巻き取っていけばよい。
【0025】
こうして得られる発光層(シート)4は、不透水性層(シート)3と全面的に接合・一体化される。全面的に接合・一体化することによって、展張作業上、該2枚の層(シート)を従来の1枚の不透水性層(シート)と同じ使い勝手にできるため好ましい。
【0026】
発光層(シート)4と不透水性層(シート)3と全面的に接合・一体化する方法は、前述の通り、不透水性層(シート)3の材質と発光層(シート)4の熱可塑性樹脂4bの材質とを熱融着性が高い組み合わせとしているため、公知のプラスチックラミネート技術を用いて容易に積層・接合することができる。
即ち、不透水性層(シート)3の巻取り品と発光層(シート)4の巻取り品を用意し、それぞれの巻取り品から不透水性層(シート)3と発光層(シート)4をそれぞれ巻出・重ね、これらを加熱、加圧ロール間に通過させて積層一体化し、必要に応じて適宜所定の寸法となるようレベリングとスリッティングをして巻き取っていけばよい。
【0027】
或いは、上記不透水性層(シート)3を構成する樹脂と、上記組成の発光層(シート)4を構成する発光物質4a及び熱可塑性樹脂4bを用いて、共押出しラミネート法によって積層一体化したり、予め作製した不透水性層(シート)3に上記組成の発光層(シート)4を構成する発光物質4a及び熱可塑性樹脂4bを溶融押出しして積層したり、その逆に予め作製した発光層(シート)4に不透水性層(シート)3を構成する樹脂を溶融押出しして積層したりして、これらを加圧ロール間に通過させて積層一体化し、それぞれ必要に応じて適宜所定の寸法となるようレベリングとスリッティングをして巻き取っていってもよい。
【0028】
なお、不透水性層3としては、上記損傷部位5を介した発光層4による発光の視認性を高めるため、不透水性層3を不透明の白色又は乳白色とするのが好ましい。
【0029】
こうして接合・一体化される発光層4と不透水性層3の大きさ、厚さなどは特に制限されるものではなく、トンネルの防水施工に、従来使用されている不透水性層と同程度のものとすることができ、例えば厚さ0.4〜2.5mm程度、幅1600〜4500mm程度のものが好適である。このようにすることにより従来の不透水性層と同じ使い勝手にできるため好ましい。
【0030】
なお、発光層4の厚さは、接合・一体化される発光層4の厚さと不透水性層3の厚さの合計の厚さに対して10〜50%、さらに好ましくは15〜30%の厚みとすることができる。
ここでこれらの値は、接合・一体化される発光層4と不透水性層3の全体の厚さに対する損傷部位の深度検出設計の基本となるもので、発光層4の厚さが上記10%よりも薄いと、接合・一体化される発光層4と不透水性層3の全体の厚さに対して損傷部位5が90%の深度を超えないと検出されず好ましくないことを意味し、逆に発光層4の厚さが上記50%よりも厚いと接合・一体化される発光層4と不透水性層3の全体の厚さに対して損傷部位5が50%に満たない深度で検出されてしまい好ましくないことを意味する。
【0031】
このようにして構成される発光層4は、環境照度0.1lx以下,10mの距離からの電磁波発生装置による波長300〜450nm,出力17〜34Wの電磁波照射によって、輝度3mcd/m2以上のルミネセンスを起こすものが好ましい。これはトンネル内で輝度3mcd/m2未満では明るさが不十分で不透水性層3に生じた損傷部位5を発見できないためである。
なお、環境照度0.1lx以下とはトンネル内で照明を消した状態を想定しており、例えばコニカミノルタ(株)T−10Pを用い、公知の測定方法でその閾値(0.1lx)を測定することができる。また、輝度測定に関しては、例えばコニカミノルタ(株)CS−200を用い、公知の測定方法で測定することができる。
【0032】
本発明の一構成例に係る防水シート1の透水性層2は、その材質が特に制限されるものではなく、トンネルの防水施工に、従来使用されている通水機能と地山の凹凸を緩衝する機能とを有する透水性層と同様のものを使用することができる。具体的には、PE,PP,ポリエチレンテレフタレート,ナイロン等の合成樹脂製織布,不織布などによって形成することができ、不織布としては、目付量50〜500g/m2、好ましくは200〜450g/m2のものが用いられる。また、透水性層2の大きさ、厚さなども特に制限されるものではなく、トンネルの防水施工に、従来使用されている透水性層と同程度のものを使用することができ、例えば厚さ3〜5mm程度、幅1600〜4500mm程度のものが好適である。
【0033】
このような透水性層2に上記電磁波照射によってルミネセンスを起こす発光物質4aを含む発光層4と不透水性層3との一体ものを積層・接合する方法は、特に制限されるものではなく、公知の透水性層と不透水性層の積層・接合方法を用いることができる。
即ち、透水性層2と発光層4の間にホットメルト樹脂やホットエアーを供出し、透水性層2と対向する発光層4の表面の一部を溶融させ、更に透水性層2と発光層4を圧着させて接合させればよい。また、両層を接着剤などで接合して一体化しても良い。いずれにしても透水性層2と発光層4とが積層されていれば、その手法は特に限定されない。
なお、透水性層2と発光層4との接合は上述の通りそれぞれの側端部が接合されず、互いに自由端となり、他の部分は接合される部分的な接合である。
【0034】
このようにして形成される防水シート1の大きさ、厚さなどは、特に制限されず、従来トンネルの防水施工に使用されている防水シートの大きさ、厚さと同程度のものとすることができ、例えば、厚さ3.4〜7.5mm程度、幅1600〜4500mm程度のものが好適である。
【0035】
こうして得られる防水シート1を用いて、防水シート1の不透水性層3の微小な損傷部位5を発見するに際しては、トンネル内の照明を消した状態で該不透水性層3側への電磁波発生装置6による約10mの距離からの波長300〜450nm,出力17〜34Wの電磁波7照射によって、該不透水性層3の損傷部位5を介して前記発光層4中の発光物質4aにルミネセンスを起こさせ、該損傷部位5を発見する防水シート1の検査方法を採ることができる。
【0036】
このような防水シート1の検査方法によれば、上記不透水性層3に上記電磁波発生装置6によって上記電磁波7を照射するだけで該不透水性層3に生じた損傷部位5をその下層にある発光層4の発光物質4aの発光8によって発見することができるため、防水シート1に生じた損傷部位5を簡便に作業性良く、かつ高い精度で発見することが可能となる。
【0037】
ここで用いられる電磁波発生装置6としては、遠・近紫外線域近傍の波長域200〜450nmの電磁波を発生する多くのものを用いることでき、例えばブラックライト,超高圧水銀灯,高圧水銀灯,低圧水銀灯,ケミカルランプ,キセノンランプ,ハロゲンランプ,マーキュリーハロゲンランプ,カーボンアーク灯,白熱灯,レーザー光などが挙げられるが、特に可視光線域を吸収し、被爆の悪影響もない近紫外線域近傍の波長域300〜450nmの電磁波をよく透過する濃青色のフィルターガラスを備えたブラックライトが好適である。
【0038】
また、当該ブラックライトの定格としては、ランプ電力250〜500W(例えば200V),近紫外線域近傍の波長域300〜450nmの電磁波出力17〜34Wのもの、例えば岩崎電気(株)H250BL−L(ランプ電力250W,300〜450nmの電磁波出力17W)又はH400BL−L(ランプ電力400W,300〜450nmの電磁波出力27W)がトンネル内での検査には、照射距離や取り回しの点で適切であるため好適である。
【0039】
また、必要に応じてランプシェード、安定器などを適宜組み合わせることができる。例えば、前者としては岩崎電気(株)H5312Sなど、後者としては岩崎電気(株)H4CC2A(B)41などを挙げることができる。
【0040】
ここで、電磁波発生装置6による10m程度の距離からの波長域300〜450nmの近紫外線域近傍の電磁波の不透水性層3への照射時間は、発光層4を形成する発光物質4aや電磁波発生装置6の種類により一概にいえないが、概ね2秒以上が好適である。
これは、該照射時間が2秒よりも少ないと発光層4を形成する発光物質4aが十分なルミネセンス(蛍光乃至燐光を発する現象)を起こすのに必要なエネルギーが不足するおそれがあるためである。
【0041】
なお、本発明は不透水性層3と、電磁波照射によってルミネセンスを起こす発光物質4aを含む発光層4との、少なくとも2層が積層・接合されてなることを特徴とする防水シートであるから、例えば図4(特開平8−135393号公報参照)のような帯状プレート13を介して移動可能な熱融着ディスク12を具備した係止部材11を用い、図5のように透水性層(シート)2を、帯状プレート13と共にトンネルの一次覆工コンクリート9面に釘10でアンカーリングし展張した後、本発明の上記不透水性層3と発光層4の2層が積層・接合されてなる他の構成例の防水シート1’の該発光層4を該熱融着ディスク12に押し当てて、近赤外線ウェルダーや高周波ウェルダーなどの溶着機により、該熱溶着ディスク12と該発光層4とを溶着・接合する構成であっても、また図6(実開平7−35597号公報参照)の断面図(A),平面図(B)のような耳片16を介して可撓可能な熱融着ディスク15を具備した他の係止部材14を用い、図7のように透水性層(シート)2を、耳片16と共にトンネルの一次覆工コンクリート9面に釘10でアンカーリングし展張した後、本発明の上記防水シート1’を用い、該防水シート1’の該発光層4を該熱融着ディスク15に押し当てて、近赤外線ウェルダーや高周波ウェルダーなどの溶着機により、該熱溶着ディスク15と該発光層4とを溶着・接合する構成であっても何ら問題なく、本発明と同様な作用効果を奏することができる。
また、その他の構成についても本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更して差支えない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一構成例に係る防水シートの一部を拡大して示す断面図である。
【図2】本発明の一構成例に係る防水シートが該防水シートに生じた損傷部位を介して発光する様子の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】図2の全体を示す斜視図である。
【図4】従来例による係止用部材の斜視図である。
【図5】本発明の他の構成例に係る防水シートが図4の係止用部材を用いて一次覆工コンクリートに付設される一部を拡大して示す断面図である。
【図6】従来例による他の係止用部材で、(A)は断面図、(B)は平面図を示す。
【図7】本発明の他の構成例に係る防水シートが図6の係止用部材を用いて一次覆工コンクリートに付設される一部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 防水シート
2 透水性層
3 不透水性層
4 発光層
4a 発光物質
4b 熱可塑性樹脂
5 損傷部位
6 電磁波発生装置
7 電磁波発生装置による電磁波
8 発光物質による発光(可視光線)
9 一次覆工コンクリート
10 (コンクリート)釘
11 係止部材
12 熱溶着ディスク
13 帯状プレート
14 他の係止部材
15 熱溶着ディスク
16 耳片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透水性層と、電磁波照射によってルミネセンスを起こす発光物質を含む発光層との、少なくとも2層が積層・接合されてなることを特徴とする防水シート。
【請求項2】
前記発光層が、前記不透水性層に熱融着可能な熱可塑性樹脂中に前記発光物質を0.5〜10質量%分散してなることを特徴とする請求項1記載の防水シート。
【請求項3】
前記発光層の厚さが、該発光層の厚さと前記不透水性層の厚さの合計の厚さに対して10〜50%の厚みであることを特徴とする請求項1又は2記載の防水シート。
【請求項4】
前記発光層が、環境照度0.1lx以下,10mの距離からの電磁波発生装置による波長300〜450nm,出力17〜34Wの電磁波照射によって、輝度3mcd/m2以上のルミネセンスを起こすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の防水シート。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の防水シートを用い、トンネル地山、一次覆工コンクリート側に前記発光層側を対向させて取り付ける共に、前記不透水性層側に二次覆工コンクリートを打設するに際し、トンネル内の照明を消した状態で該不透水性層側への電磁波発生装置による波長300〜450nm,出力17〜34Wの電磁波照射によって、該不透水性層の損傷部位を介して前記発光層中の発光物質にルミネセンスを起こさせ、該損傷部位を発見することを特徴とする防水シートの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−82716(P2008−82716A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259940(P2006−259940)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(391023518)社団法人日本建設機械化協会 (19)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【出願人】(591029921)フジモリ産業株式会社 (65)
【Fターム(参考)】