説明

防犯センサ

【課題】誤報の発生を極力防止して的確な検知を行うことができる信頼性の高い防犯センサを提供する。
【解決手段】検知エリアに向けてマイクロ波を送信し、この検知エリア内に存在する物体からの前記マイクロ波の反射波を受信して、その物体までの距離に対応する距離情報を出力するとともに、その物体の方向に対応する鉛直角情報を出力するマイクロウエーブセンサ110と、前記距離情報が、前記鉛直角情報と設置されている位置の高さ情報とに応じて定められている所定距離範囲内である場合に、前記検知エリア内に検知対象物体が存在していると判別する検知対象物体存在判別手段120と、この検知対象物体存在判別手段によって検知対象物体が存在していると判別された場合に警告信号を出力するように制御する警告信号出力制御手段130とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロウエーブセンサを内蔵する防犯センサに関し、特に、誤報の発生を極力回避して信頼性を向上させた防犯センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防犯装置の一つとして、マイクロ波を検知エリアに向けて送信し、検知エリア内に人体(侵入者)が存在する場合には、その人体からの反射波(ドップラー効果によって変調したマイクロ波)を受信して人体を検知するマイクロウエーブセンサが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
さらに、マイクロウエーブセンサの1タイプとして、周波数の異なる複数のマイクロ波を利用して検知エリア内に存在する人体などの検知対象物体までの距離を計測するようにしたものも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この種のセンサは、例えば周波数の異なる2種類のマイクロ波を検知エリアに向けて送信し、それぞれの反射波に基づく2つのIF信号の位相差を検出するようになっている。この位相差は、検知対象物体までの距離に相関があり、検知対象物体までの距離が大きいほど位相差も大きくなる傾向がある。つまり、この位相差を求めることにより検知対象物体までの距離を計測することが可能である。また、この位相差の時間的な変化を認識することにより検知エリア内の検知対象物体が移動しているか否かを判定することも可能である。これにより、例えば検知エリア内で移動している検知対象物体のみを識別することが可能になる。
【特許文献1】特開平7−37176号公報
【特許文献2】特開2003−207462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のようなマイクロウエーブセンサを壁面などの比較的高い位置(例えば、地面から4mの高さ)に取り付けて、その位置から警戒対象とする領域を見下ろすようにした場合には、次のような誤報の要因が考えられた。
【0005】
例えば、マイクロウエーブセンサの設置位置からほぼ水平方向であって、人体が存在することが通常は考えられない高さを飛ぶ鳥などを検知した場合や、実際には遠方の自動車などで反射されたマイクロ波を拾ってしまう場合である。また、地面を歩いたり這ったりしている小動物を検知した場合も同様である。
【0006】
従来技術のこのような課題に鑑み、本発明の目的は、検知対象物体までの距離とその検知対象物体の高さを正確に認識することで、誤報の発生を極力防止して的確な検知を行うことができる信頼性の高い防犯センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の防犯センサは、検知エリアに向けてマイクロ波を送信し、この検知エリア内に存在する物体からの前記マイクロ波の反射波を受信して、その物体までの距離に対応する距離情報を出力するとともに、その物体の方向に対応する鉛直角情報を出力するマイクロウエーブセンサと、前記距離情報が、前記鉛直角情報と設置されている位置の高さ情報とに応じて定められている所定距離範囲内である場合に、前記検知エリア内に検知対象物体が存在していると判別する検知対象物体存在判別手段と、この検知対象物体存在判別手段によって検知対象物体が存在していると判別された場合に警告信号を出力するように制御する警告信号出力制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記マイクロウエーブセンサに距離検知をさせるには、例えば、前記検知エリアに向けて周波数の異なる複数のマイクロ波を送信し、この検知エリア内に存在する物体からの前記マイクロ波それぞれの反射波を受信して、前記距離情報を求めるような構成が挙げられるが、これに限るものではない。
【0009】
また、前記マイクロウエーブセンサに鉛直角検知をさせるには、例えば、前記マイクロ波の送受信方向の鉛直角を変更可能な方向可変アンテナ装置と、この方向可変アンテナ装置に対して前記送受信方向を所定角度範囲内にわたって走査するよう指示するとともにその走査中に前記距離情報を監視して、その結果に基づいて前記鉛直角情報を求める走査測定手段とをさらに備える構成が挙げられる。その場合、前記鉛直角情報がとり得る範囲が複数区間に分割され、これらの複数区間毎に前記所定距離範囲が定められていてもよい。前記方向可変アンテナ装置としては、例えばフェイズドアレーアンテナが挙げられるが、これに限るものではない。
【0010】
また、前記マイクロウエーブセンサに鉛直角検知をさせる他の例としては、受信用に複数のアンテナを用いるモノパルス方式によって前記鉛直角情報を求める構成が挙げられる。このモノパルス方式としては、受信用にビームの一部が重なり合う複数のアンテナを用いる振幅比較モノパルス方式や、位相比較モノパルス方式などが挙げられる。なお、このモノパルス方式は、1つのビーム位置における1つのパルス(モノパルス)を処理するものである。
【0011】
このような構成の防犯センサによれば、空中を飛んでいる鳥などによる誤報などを極力防止することが可能となり、防犯センサとしての信頼性を高めることができる。
【0012】
あるいは、本発明の防犯センサは、検知エリアに向けてマイクロ波を送信し、この検知エリア内に存在する物体からの前記マイクロ波の反射波を受信して、その物体までの距離に対応する距離情報を出力するとともに、その物体の方向に対応する鉛直角情報を出力するマイクロウエーブセンサと、前記距離情報と前記鉛直角情報と設置されている位置の高さ情報とに基づいて前記物体の高さ情報を求め、前記物体の高さ情報が所定高さ範囲内である場合に、前記検知エリア内に検知対象物体が存在していると判別する検知対象物体存在判別手段と、この検知対象物体存在判別手段によって検知対象物体が存在していると判別された場合に警告信号を出力するように制御する警告信号出力制御手段とを備えることを特徴としてもよい。
【0013】
このような構成の防犯センサによれば、空中を飛んでいる鳥などによる誤報だけでなく、地面を歩いたり這ったりしている小動物などによる誤報なども極力防止することが可能となり、防犯センサとしての信頼性をより高めることができる。
【0014】
また、上記防犯センサにおいて、設置状態における姿勢の傾斜を入力する傾斜入力手段をさらに備え、前記検知対象物体存在判別手段は、この傾斜入力手段によって入力される情報と前記距離情報と前記鉛直角情報と設置されている位置の高さ情報とに基づいて前記物体の高さ情報を求めるようにしてもよい。
【0015】
ここで、前記傾斜入力手段として、角度センサを内蔵させて自動的に傾斜を検知して入力するようにしてもよい。もしくは、スイッチやボリュームなどを接続してそれらの状態を手動で変更することにより入力するようにしてもよい。
【0016】
このような構成の防犯センサによれば、空中を飛んでいる鳥などによる誤報だけでなく、地面を歩いたり這ったりしている小動物などによる誤報なども極力防止することが可能であり、また、設置姿勢によらず常に正確な検知が可能となるから、防犯センサとしての信頼性を一層高めることができる。
【0017】
また、上記防犯センサにおいて、高さ範囲入力手段をさらに備え、前記検知対象物体存在判別手段は、この高さ範囲入力手段によって入力される情報に基づいて前記所定高さ範囲を定めるようにしてもよい。
【0018】
ここで、前記高さ範囲入力手段としては、例えばDIPスイッチが挙げられるが、これに限るものではない。
【0019】
このような構成の防犯センサによれば、前記所定高さ範囲の変更が容易となり、目的や設置場所などに応じて適切な検知を行うことができるので、防犯センサとしての適用範囲を広げることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の防犯センサによれば、空中を飛んでいる鳥や地面を歩いたり這ったりしている小動物などによる誤報なども極力防止することが可能となり、防犯センサとしての信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係る防犯センサ100の概略構成を示すブロック図である。この図1に示すように、防犯センサ100は、マイクロ波の送受信方向の鉛直角を変更可能なフェイズドアレーアンテナ111を有するマイクロウエーブセンサ110と、このマイクロウエーブセンサ110からの出力に基づいて人体などの検知対象物体が検知エリア内に存在するか否かを判別する検知対象物体存在判別部120と、この検知対象物体存在判別部120による判別結果に基づいて警告信号の出力を制御する警告出力制御部130とを備えている。
【0023】
フェイズドアレーアンテナ111は、同一方向に向けて上下に等間隔に配置された複数のアンテナ素子112と、これらのアンテナ素子112間の信号伝達経路における移相量を所定範囲内で制御する移相制御回路113とを有している。なお、フェイズドアレーアンテナ111の指向性は狭くしておくことが望ましい。また、移相制御回路113は、移相量を段階的に変更することによりマイクロ波の送受信方向(アンテナのビーム方向)を段階的に変更可能なタイプであるものとする。ここでは、送受信方向を約90度の範囲内で4方向に変更可能としておくが、これはあくまでも例示に過ぎない。
【0024】
マイクロウエーブセンサ110は、2つの異なる周波数のマイクロ波を送受信するタイプのもので、検知エリア内に対してフェイズドアレーアンテナ111からマイクロ波を送信する。送信されたマイクロ波は、検知エリア内に何らかの物体が存在すると反射され、反射されたマイクロ波の一部はフェイズドアレーアンテナ111の方向に戻って受信される。そして、マイクロウエーブセンサ110は、受信したそれぞれの反射波に基づく2つのIF信号の位相差を検出し、この位相差に基づいて検知した物体までの距離を求めるとともに、検知物体距離信号として出力する。
【0025】
また、このマイクロウエーブセンサ110はさらに、移相制御回路113に対して移相量の制御を指示して走査を行うとともにその走査中に検知物体距離信号をモニターし、有効な検知物体距離信号が得られたときのマイクロ波の送受信方向(上記4方向のいずれかに相当)を求める走査測定部114を有している。そして、求められたその送受信方向を検知した物体の方向に対応する鉛直角信号として出力する。
【0026】
検知対象物体存在判別部120には、マイクロウエーブセンサ110から出力される上記検知物体距離信号および上記鉛直角信号が入力されている。また、マイクロウエーブセンサ110が実際に設置されている高さに基づいて、上記鉛直角信号の4方向それぞれについて、侵入者が存在する場合に検出され得る距離範囲が設定されている(詳細は図2を参照して後述)。そして、上記検知物体距離信号が上記鉛直角信号に応じた距離範囲内にある場合に限って、検知エリア内に侵入者などが存在していると判別する。
【0027】
警告出力制御部130は、検知対象物体存在判別部120の判別結果出力を受け、この判別結果出力に基づいて警告信号Dout1の出力を制御する。ここで、警告信号Dout1の出力形式はオープンドレインあるいはオープンコレクタとする。そして、警告信号Dout1の出力は、検知対象物体存在判別部120が検知対象物体が存在していると判別しているときにONとなり、検知対象物体が存在していないと判別しているときにはオープンになるものとする。ただし、このような出力形式などに限るものではない。
【0028】
なお、例えば、走査測定部114、検知対象物体存在判別部120、警告出力制御部130などはワンチップマイコンなどの組み込みソフトウェアによって実現できるが、このような実現方法に限るものではない。
【0029】
図2は本発明の第1実施形態に係る防犯センサ100の設置例を側面から示す図である。この図2に示すように、この防犯センサ100の定格距離(有効な検知が可能な最大距離)は30mであり、地面12からの設置高さH0は4mとするが、これらの値に限るわけではない。
【0030】
検知エリアは、フェイズドアレーアンテナ111によって送受信可能な4方向に対応する4つの小検知エリアA1〜A4に分かれている。まず、小検知エリアA1は、防犯センサ100の設置位置から水平方向に対してやや下向きに形成されている。小検知エリアA1の上側境界の位置はほぼ全体が設置高さH0にあり、下側境界先端の位置は定格距離において所定高さH1にある。ここで、所定高さH1には、通常の侵入者10などが検知され得る高さの最大値を設定する。例えば、2.5mとしているが、この高さに限るものではない。
【0031】
小検知エリアA2は小検知エリアA1の下側に隣接して形成され、定格距離において下側境界先端の位置がちょうど地面12となる。小検知エリアA3は小検知エリアA2の下側に隣接して形成され、下側境界先端の位置は10m先の地面12とする。そして、小検知エリアA4は小検知エリアA3の下側に隣接して形成され、下側境界先端の位置は約3m先の地面12とする。
【0032】
このような場合に実際の侵入者10などが検知されたときは、その侵入者10までの距離は、防犯センサ100からの水平距離が設置場所の直下から定格距離までの範囲内であり、その侵入者10の高さは所定高さH1以下のはずである。また、小動物などのように高さがかなり低い物体を識別するために、所定高さH2(例えば0.5m)を定義すれば、侵入者10の高さは所定高さH2以上のはずである。すなわち、侵入者10などは、防犯センサ100からの水平距離が設置場所の直下から定格距離まででその高さの下限値が所定高さH2であってその高さの上限値が所定高さH1で定義される矩形領域R1内に存在するはずである。したがって、検知された物体が矩形領域R1外に存在する場合は実際の侵入者10などとは考え難く、誤検知の可能性が高いので、警告信号Dout1の出力をONにしないようにすればよい。
【0033】
ただし、この防犯センサ100の構成では、検知された物体の方向に対応する鉛直角については大まかに上記4方向のいずれなのかが分かるだけであり、距離情報を併せることにより検知された物体の2次元位置を正確に認識して、矩形領域R1の内外を直接的に判別できるわけではない。
【0034】
そこで、それに代わる簡易的な判別方法として、小検知エリアA1〜A4それぞれについて、侵入者10が存在する場合に検出され得る距離範囲を予め設定しておき、検知物体距離信号がその距離範囲内にある場合に限って検知エリア内に侵入者10などが存在していると判別するようにする。逆に言えば、検知物体距離信号がその距離範囲外であれば誤検知の可能性が高いと判断する。
【0035】
なお、この検知物体距離信号は、厳密には防犯センサ100の設置場所の直下点から侵入者10の足下までの地面12における水平方向の距離(図2の地面12下部の目盛りの数値。以下「水平距離」と記す)ではなく、防犯センサ100から侵入者10までの斜め方向の距離に対応している。しかし、説明の簡略化のために、以下では水平距離の値で示すものとする。
【0036】
まず、小検知エリアA1については、このような高さに侵入者10が存在することは通常は想定できないので、検出され得る距離範囲は「なし」と設定する。
【0037】
小検知エリアA2については、検出され得る最短距離は、この小検知エリアA2の下側境界と矩形領域R1の上側境界の交点付近までの距離と考えられ、約12mである。検出され得る最長距離の方は定格距離によって実質的に制限されるため、この定格距離以上の距離が検出されることはない。そこで、検出され得る距離範囲としては「12m以上」のように下限値のみ設定すればよい。
【0038】
小検知エリアA3については、検出され得る最短距離は、この小検知エリアA3の下側境界と矩形領域R1の上側境界の交点付近までの距離と考えられ、約4mである。検出され得る最長距離の方は、この小検知エリアA3の上側境界と矩形領域R1の下側境界の交点付近までの距離と考えられ、約25mである。そこで、検出され得る距離範囲として「4〜25m」のように設定する。
【0039】
小検知エリアA4については、検出され得る最短距離は、この小検知エリアA4の下側境界と矩形領域R1の上側境界の交点付近までの距離と考えられ、約2mである。検出され得る最長距離の方は、この小検知エリアA4の上側境界と矩形領域R1の下側境界の交点付近までの距離と考えられ、約8mである。そこで、検出され得る距離範囲として「2〜8m」に設定する。
【0040】
このような距離範囲の設定を行うことで、空中を飛んでいる鳥などによる誤報などを極力防止することが可能となり、防犯センサとしての信頼性を高めることができる。
【0041】
<第2実施形態>
検知物体の鉛直角をより詳細に測定できれば、防犯センサを含む鉛直面に投影した検知物体の2次元位置を正確に特定できる。この場合には、高過ぎる位置にある物体だけでなく、低過ぎる位置にある物体も実際の侵入者ではないと判断して、警告を行わないようにすることが可能となる。そこで、検知物体の鉛直角を求める他の方法として、1つのビーム位置における1つのパルス(モノパルス)を処理することで角度情報が得られるモノパルス方式を採用したものを第2実施形態として以下で説明する。なお、上述の第1実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付すこととし、説明は主として相違点について行う。
【0042】
図3は本発明の第2実施形態に係る防犯センサ200の概略構成を示すブロック図である。この図3に示すように、防犯センサ200は、ビームの一部が互いに重なるように上下に並べられたアンテナ素子212、212を有するマイクロウエーブセンサ210と、このマイクロウエーブセンサ210からの出力に基づいて人体などの検知対象物体が検知エリア内に存在するか否かを判別する検知対象物体存在判別部220と、この検知対象物体存在判別部220による判別結果に基づいて警告信号の出力を制御する警告出力制御部130とを備えている。
【0043】
マイクロウエーブセンサ210は、振幅比較モノパルス方式によって検知物体の鉛直角情報を求めて鉛直角信号として出力するとともに、第1実施形態と同様に2つの異なる周波数のマイクロ波を送受信することでその検知物体までの距離情報を求めて検知物体距離信号として出力する。ただし、振幅比較モノパルス方式に限るものではなく、位相比較モノパルス方式を用いてもよい。
【0044】
検知対象物体存在判別部220には、マイクロウエーブセンサ210から出力される上記検知物体距離信号および上記鉛直角信号が入力されている。第1実施形態とは異なり、鉛直角は高い分解能を有しているので、防犯センサ200の設置高さH0も併せることで検知物体の2次元位置を計算によって求めることができる。そして、この2次元位置に基づいて検知エリア内の侵入者などの有無を判別する。
【0045】
図4は本発明の第2実施形態に係る防犯センサ200の設置例を側面から示す図である。この図4に示すように、この防犯センサ200の定格距離および地面12からの設置高さH0は第1実施形態と同様の値とするが、これらの値に限るわけではない。
【0046】
実際の侵入者10の2次元位置として考えられるのは、水平距離については防犯センサ200の設置場所の直下点に対応する距離から定格距離までの範囲である。高さについても一定の範囲内であると考えられるが、その上限値として第1実施形態と同じ所定高さH1(例えば、2.5m)を用いるとともに、その下限値も第1実施形態と同様に所定高さH2を用いる。所定高さH2の具体的な設定としては、例えば0.5mとすればよいが、この高さに限るものではない。
【0047】
検知した物体が実際の侵入者10であるか否かは、その2次元位置が、防犯センサ200からの水平距離が設置場所の直下から定格距離まででその高さの下限値が所定高さH2であってその高さの上限値が所定高さH1で定義される矩形領域R1内であるか否かの判別に相当する。ただし、マイクロウエーブセンサ210が検知する距離は最大でも定格距離までであるから、結局、検知した物体の高さが所定高さH2〜所定高さH1の範囲内であるかのみを判別すれば足りることになる。
【0048】
侵入者10までの距離をd、鉛直角情報としての俯角(水平方向から下向きの角度)をθとすれば、侵入者10の高さHtは次式で算出できる。
【0049】
Ht = H0 − d・sinθ ・・・ (1)
そこで、検知対象物体存在判別部220に上式にしたがった計算を行わせて高さHtを求めるとともに、その高さHtが次の条件式を満たすか否かを判定させればよい。
【0050】
H2 ≦ Ht ≦ H1 ・・・ (2)
以上のような構成によれば、空中を飛んでいる鳥などによる誤報だけでなく、地面を歩いたり這ったりしている小動物などによる誤報なども極力防止することが可能となり、防犯センサとしての信頼性をより高めることができる。
【0051】
<第3実施形態>
上述の第1実施形態や第2実施形態の防犯センサを、壁面などに設置するとともに、その設置位置のほぼ直下の位置からかなり遠くまでを見下ろすように監視するものであった。しかし、設置場所は壁面などに限るわけではなく、例えば、室内の天井などに設置することも考えられる。また、設置の際の防犯センサの姿勢も常に同じにできるとは限らない。そこで、このような点を考慮した防犯センサを第3実施形態として以下で説明する。なお、上述の各実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付すこととし、説明は主として相違点について行う。
【0052】
図5は本発明の第3実施形態に係る防犯センサ300の概略構成を示すブロック図である。この図5に示すように、防犯センサ300は、マイクロ波の送受信方向の鉛直角を変更可能なフェイズドアレーアンテナ311を有するマイクロウエーブセンサ310と、設置姿勢が標準的な状態からどの程度傾斜しているかを検知する角度センサ340と、各種設定を手動で変更可能とするDIPスイッチ350と、マイクロウエーブセンサ310、角度センサ340およびDIPスイッチ350からの信号に基づいて人体などの検知対象物体が検知エリア内に存在するか否かを判別する検知対象物体存在判別部320と、この検知対象物体存在判別部320による判別結果に基づいて警告信号の出力を制御する警告出力制御部130とを備えている。
【0053】
ここで、フェイズドアレーアンテナ311が有する移相制御回路313は、移相量を細かく変更可能なタイプであるものとし、マイクロウエーブセンサ310が有する走査測定部314はこれに対応して移相量を細かく制御可能とする。これにより、検知した物体の方向に対応する鉛直角信号は高い分解能が確保されることになる。
【0054】
角度センサ340は傾斜センサとも呼ばれるもので、防犯センサ300の設置姿勢が標準的な状態からどの程度傾斜しているかを検知する。例えば、水平方向もしくは真下方向に向けて設置されていたり、または斜め下方向に向けて設置されているときでも、これらの状態の識別が可能となる。
【0055】
DIPスイッチ350では、検知した物体が実際の侵入者などであるか判別するための高さの上限値および下限値を手動で変更できるようにしている。なお、設定を変更できるようにする値はこれらに限るものではなく、例えば、設置高さなども入力できるようにしてもよい。
【0056】
図6は侵入者などと小動物などとの高さの違いを説明する図である。この図6に示すように、侵入者としての人間の高さは例えば1.7m程度、犬などの小動物の高さは例えば0.5m程度である。したがって、これらを高さの違いで的確に識別するには、例えば、1m以上の差が検知可能である必要がある。
【0057】
図7はこの防犯センサ300を天井14に真下方向に向けて設置した例を示す図である。この図7に示すように、防犯センサ300は正面方向C300を中心としてその両側に約45度ずつ、併せて約90度の範囲の検知エリアA300を形成する。
【0058】
ここで、防犯センサ300の設置高さH10は例えば10mとすれば、防犯センサ300から正面方向C300に沿った床面13までの距離は同じ10mであるが、検知エリアA300の両側境界に沿った床面13までの距離は14.1mであり、4,1mもの差が生じている。すなわち、防犯センサ300が検知した物体までの距離だけでは、その物体の高さを正確に判定することはできない。
【0059】
そこで、侵入者10を検知したときの鉛直角をθ(正面方向C300を基準とし、図中で反時計回り方向をプラス側とする)を考慮に入れて侵入者10の高さHtを正確に算出すればよい。侵入者10までの距離をdとすると、この高さHtは次式で算出できる。
【0060】
Ht = H10 − d・cosθ ・・・ (3)
防犯センサ300の検知動作としては、検知対象物体存在判別部320にまずDIPスイッチ350の状態に応じて高さ判定の上限値H11および下限値H12を決定させ、次に上式にしたがった計算を行わせて高さHtを求めるとともに、その高さHtが次の条件式を満たすか否かを判定させればよい。
【0061】
H12 ≦ Ht ≦ H11 ・・・ (4)
図8はこの防犯センサ300を高い位置から斜め下方向に向けて設置した例を示す図である。この図8に示すように、防犯センサ300は図7の設置状態に対して約45度傾斜して設置されており、検知エリアA300は、一方の境界が防犯センサ300の設置場所からほぼ真下方向に位置するとともに他方の境界が防犯センサ300の設置場所からほぼ水平方向に位置するように形成される。
【0062】
この場合の防犯センサの設置高さをH10、角度センサ340によって検知された図7の設置状態に対する傾斜をφ、侵入者10を検知したときの鉛直角をθ(正面方向C300を基準とし、図中で反時計回り方向をプラス側とする)、侵入者10までの距離をdとすると、侵入者10の高さHtは次式で算出できる。なお、この図8では、θはマイナスの値であるから、(φ+θ)はφのみより角度としては小さな値となる。
【0063】
Ht = H10 − d・cos(φ+θ) ・・・ (5)
そして、上述した場合と同様に、この高さHtが次の条件式を満たすか否かを判定させればよい。
【0064】
H12 ≦ Ht ≦ H11 ・・・ (6)
図9は、この防犯センサ300の検知動作の概略を示すフローチャートである。
【0065】
この図9に示すように、検知対象物体存在判別部320はまず、角度センサ340によって検知された防犯センサ300の傾斜φを読み込むとともに、DIPスイッチ350の状態から検知した物体の高さ判定のための上限値H11および下限値H12を読み込む(ステップS1)。
【0066】
次に、上述した式(5)にしたがって高さHtを計算する(ステップS2)。
【0067】
そして、この高さHtを下限値H12と比較し(ステップS3)、下限値H12より大きければ、さらにこの高さHtを上限値H11と比較し(ステップS4)、上限値H11より小さければ、侵入者などの存在を警告する発報を行う(ステップS5)。高さHtが下限値H12以下または上限値H11以上であれば、ステップS1に戻って最初からの各ステップの処理を繰り返す。
【0068】
以上のような構成によれば、空中を飛んでいる鳥などによる誤報だけでなく、地面を歩いたり這ったりしている小動物などによる誤報なども極力防止することが可能であり、また、設置姿勢によらず常に正確な検知が可能となるから、防犯センサとしての信頼性を一層高めることができる。
【0069】
<その他の実施形態>
上述の第3実施形態の角度センサ340の代わりに、スイッチやボリュームを検知対象物体存在判別部320に接続するようにして、これらのスイッチやボリュームによって防犯センサ300の設置状態の傾斜φを入力できるように構成してもよい。また、上記の各実施形態の構成要素を適宜組み合わせたり、一部を置換して構成してもよい。
【0070】
なお、本発明は、その主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の各実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態に係る防犯センサの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る防犯センサの設置例を側面から示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る防犯センサの概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る防犯センサの設置例を側面から示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る防犯センサの概略構成を示すブロック図である。
【図6】侵入者などと小動物などとの高さの違いを説明する図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る防犯センサを天井に真下方向に向けて設置した例を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る防犯センサを高い位置から斜め下方向に向けて設置した例を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る防犯センサの検知動作の概略を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
100 防犯センサ(第1実施形態)
110 マイクロウエーブセンサ
111 フェイズドアレーアンテナ
112 アンテナ素子
113 移相制御回路
114 走査測定部
120 検知対象物体存在判別部
130 警告出力制御部
200 防犯センサ(第2実施形態)
210 マイクロウエーブセンサ
212 アンテナ素子
220 検知対象物体存在判別部
300 防犯センサ(第3実施形態)
310 マイクロウエーブセンサ
311 フェイズドアレーアンテナ
313 移相制御回路
314 走査測定部
320 検知対象物体存在判別部
340 角度センサ
350 DIPスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知エリアに向けてマイクロ波を送信し、この検知エリア内に存在する物体からの前記マイクロ波の反射波を受信して、その物体までの距離に対応する距離情報を出力するとともに、その物体の方向に対応する鉛直角情報を出力するマイクロウエーブセンサと、
前記距離情報が、前記鉛直角情報と設置されている位置の高さ情報とに応じて定められている所定距離範囲内である場合に、前記検知エリア内に検知対象物体が存在していると判別する検知対象物体存在判別手段と、
この検知対象物体存在判別手段によって検知対象物体が存在していると判別された場合に警告信号を出力するように制御する警告信号出力制御手段と
を備えることを特徴とする防犯センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の防犯センサにおいて、
前記マイクロウエーブセンサは、前記検知エリアに向けて周波数の異なる複数のマイクロ波を送信し、この検知エリア内に存在する物体からの前記マイクロ波それぞれの反射波を受信して、前記距離情報を求めることを特徴とする防犯センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の防犯センサにおいて、
前記マイクロウエーブセンサはさらに、
前記マイクロ波の送受信方向の鉛直角を変更可能な方向可変アンテナ装置と、
この方向可変アンテナ装置に対して前記送受信方向を所定角度範囲内にわたって走査するよう指示するとともにその走査中に前記距離情報を監視して、その結果に基づいて前記鉛直角情報を求める走査測定手段と
を備えることを特徴とする防犯センサ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の防犯センサにおいて、
前記鉛直角情報がとり得る範囲が複数区間に分割され、これらの複数区間毎に前記所定距離範囲が定められていることを特徴とする防犯センサ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の防犯センサにおいて、
前記方向可変アンテナ装置はフェイズドアレーアンテナであることを特徴とする防犯センサ。
【請求項6】
請求項1に記載の防犯センサにおいて、
前記マイクロウエーブセンサは、受信用に複数のアンテナを用いるモノパルス方式によって前記鉛直角情報を求めることを特徴とする防犯センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の防犯センサにおいて、
前記マイクロウエーブセンサは、受信用にビームの一部が重なり合う複数のアンテナを用いる振幅比較モノパルス方式によって前記鉛直角情報を求めることを特徴とする防犯センサ。
【請求項8】
請求項6に記載の防犯センサにおいて、
前記マイクロウエーブセンサにおけるモノパルス方式は、位相比較モノパルス方式であることを特徴とする防犯センサ。
【請求項9】
検知エリアに向けてマイクロ波を送信し、この検知エリア内に存在する物体からの前記マイクロ波の反射波を受信して、その物体までの距離に対応する距離情報を出力するとともに、その物体の方向に対応する鉛直角情報を出力するマイクロウエーブセンサと、
前記距離情報と前記鉛直角情報と設置されている位置の高さ情報とに基づいて前記物体の高さ情報を求め、前記物体の高さ情報が所定高さ範囲内である場合に、前記検知エリア内に検知対象物体が存在していると判別する検知対象物体存在判別手段と、
この検知対象物体存在判別手段によって検知対象物体が存在していると判別された場合に警告信号を出力するように制御する警告信号出力制御手段と
を備えることを特徴とする防犯センサ。
【請求項10】
請求項9に記載の防犯センサにおいて、
設置状態における姿勢の傾斜を入力する傾斜入力手段をさらに備え、
前記検知対象物体存在判別手段は、この傾斜入力手段によって入力される情報と前記距離情報と前記鉛直角情報と設置されている位置の高さ情報とに基づいて前記物体の高さ情報を求めることを特徴とする防犯センサ。
【請求項11】
請求項10に記載の防犯センサにおいて、
前記傾斜入力手段は角度センサであることを特徴とする防犯センサ。
【請求項12】
請求項10に記載の防犯センサにおいて、
前記傾斜入力手段はスイッチであることを特徴とする防犯センサ。
【請求項13】
請求項10に記載の防犯センサにおいて、
前記傾斜入力手段はボリュームであることを特徴とする防犯センサ。
【請求項14】
請求項9に記載の防犯センサにおいて、
高さ範囲入力手段をさらに備え、
前記検知対象物体存在判別手段は、この高さ範囲入力手段によって入力される情報に基づいて前記所定高さ範囲を定めることを特徴とする防犯センサ。
【請求項15】
請求項14に記載の防犯センサにおいて、
前記高さ範囲入力手段はDIPスイッチであることを特徴とする防犯センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−71605(P2007−71605A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257000(P2005−257000)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】