説明

離型シート、原反、離型シートの製造方法およびエンボス加工システム

【課題】使用時における平坦化が抑制される離型シートを提供することを目的とする。
【解決手段】離型シート10は、基材12と、電離放射線硬化樹脂からなり基材の両側にそれぞれ配置された第1樹脂層14および第2樹脂層16と、を有する。基材は、一方の側の表面に凹凸形状が形成されるとともに、他方の側の表面にも一方の側の表面の凹凸形状に対応した凹凸形状が形成されている。第1樹脂層14および第2樹脂層16は、基材の表面の凹凸形状に沿うようにして延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対応する凹凸形状が両側の面に形成されるようにエンボス加工を施された離型シートに係り、とりわけ、使用している間の凹凸形状の平坦化を効果的に抑制することができる離型シートに関する。
【0002】
また、本発明は、互いに対応する凹凸形状が両側の面に形成されるようにエンボス加工を施される原反に係り、とりわけ、エンボス加工によって形成される凹凸形状の平坦化が効果的に抑制されるようになる原反に関する。
【0003】
さらに、本発明は、互いに対応する凹凸形状が両側の面に形成されるように原反にエンボス加工を施して離型シートを製造する方法に係り、とりわけ、使用している間の凹凸形状の平坦化が効果的に抑制されるようになる離型シートの製造方法に関する。
【0004】
さらに、本発明は、互いに対応する凹凸形状が両側の面に形成されるように原反にエンボス加工を施すエンボス加工システムに係り、とりわけ、エンボス加工によって形成される凹凸形状の平坦化が効果的に抑制されるようになるエンボス加工システムに関する。
【背景技術】
【0005】
今般、合皮製品、化粧シート、内装材等のシート状材料を作製するための型(型紙)として用いられる離型シート(離型紙)が、知られている。特許文献1には、原反にエンボス加工を施すことによって、離型シートを製造する方法が開示されている。
【0006】
離型シートをエンボス加工で作製する場合には、少ないエンボス加工圧力で大きな高低差を有した凹凸形状を作製するため、シート状からなる原反は全体的にうねるように変形させられる。すなわち、エンボス加工を施された原反(つまり、離型シート)は、互いに対応する凹凸形状を両側の面に形成される。言い換えると、原反の両側の面に凹凸形状が形成され、一方の面に形成された凹凸形状は、概ね、他方の面に形成された凹凸形状の起伏を反転させた形状となっている。エンボス加工圧力が低いと、原反やエンボス加工装置の損傷を防止することができるとともに、短時間でのエンボス加工を行うことができる。
【0007】
離型シートを用いて合成皮革製品等のシート状部材を作製する場合、まず、離型紙シートの一方の面に流動性を有した樹脂製の塗工液を塗工する。次に、樹脂塗工液上に基布を積層する。その後、基布と離型シートとを互いに押圧しながら加熱することによって、離型シートの凹凸形状が転写された樹脂塗工液を硬化させるとともに、樹脂塗工液からなる塗工膜を基布に接着する。最後に、塗工膜と基布とからなるシート状部材を、離型シートから剥がすことにより、シート状部材が得られる。
【0008】
多くの場合、離型シートは、紙やPET等からなる基材と、基材の一方の側に積層された樹脂層と、を有している。そして、上述した樹脂塗工液は原反の樹脂層上に塗工されるようになり、原反の樹脂層は、樹脂塗工液を硬化させてなる塗工膜に対して剥離性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−205311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、製造コスト削減のため、離型シートは、繰り返し使用されることが好ましい。しかしながら、上述したように、離型シート上に塗布された樹脂塗工液を硬化させて基布に接着させるための加熱加圧によって、離型シートの凹凸形状が平坦化してしまう。とりわけ、上述した原反を全体的にうねるように変形させて形成された離型シートにおいては、樹脂塗工液を充填されていない他方の面の側から、凹凸形状の平坦化が急速に進んでしまう。
【0011】
離型シートの凹凸形状が平坦化すると、合皮製品、化粧シート、内装材等のシート状材料に形成される柄の深さも浅くなってしまう。すなわち、離型シートの凹凸形状が平坦化していくと、シート状材料に所望の凹凸形状を転写することが不可能となり、もはや、離型シートとして使用することができなくなる。
【0012】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、互いに対応する凹凸形状が両側の面に形成されるようにエンボス加工を施された離型シートであって、使用している間の凹凸形状の平坦化を効果的に抑制することができる離型シートを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、互いに対応する凹凸形状が両側の面に形成されるようにエンボス加工を施される原反であって、エンボス加工によって形成される凹凸形状の平坦化が効果的に抑制されるようになる原反を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本発明は、互いに対応する凹凸形状が両側の面に形成されるように原反にエンボス加工を施して離型シートを製造する方法であって、使用している間の凹凸形状の平坦化が効果的に抑制されるようになる離型シートを製造する方法を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、互いに対応する凹凸形状が両側の面に形成されるように原反にエンボス加工を施すエンボス加工システムであって、平坦化が効果的に抑制されるようになる凹凸形状を形成し得るエンボス加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による離型シートは、エンボス加工を施された離型シートであって、前記エンボス加工によって、一方の側の表面に凹凸形状が形成されるとともに、他方の側の表面にも、一方の側の表面の凹凸形状に対応した凹凸形状が形成されている基材と、電離放射線硬化樹脂からなり、前記基材の前記一方の側に配置された第1樹脂層と、電離放射線硬化樹脂からなり、前記基材の前記他方の側に配置された第2樹脂層と、を備え、前記第1樹脂層は、前記基材の前記一方の側の表面の凹凸形状に沿うようにして延び、前記第2樹脂層は、前記基材の前記他方の側の表面の凹凸形状に沿うようにして延びていることを特徴とする。
【0017】
本発明による離型シートにおいて、前記第1樹脂層は、前記離型シートの一方の側の表面を形成し、前記第2樹脂層は、前記離型シートの他方の側の表面を形成するようにしてもよい。
【0018】
また、本発明による離型シートが、合皮製品を作製するための型紙として機能するようにしてもよい。
【0019】
本発明による原反は、エンボス加工を施されるシート状の原反であって、シート状の基材と、硬化前の電離放射線硬化型樹脂からなり、前記基材の一方の側に配置された第1樹脂層と、硬化前の電離放射線硬化型樹脂からなり、前記基材の他方の側に配置された第2樹脂層と、を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明による原反において、前記第1樹脂層は、前記原反の一方の側の表面を形成し、前記第2樹脂層は、前記原反の他方の側の表面を形成するようにしてもよい。
【0021】
また、本発明による原反が、合皮製品を作製するための原材料であるようにしてもよい。
【0022】
本発明による離型シートの製造方法は、エンボス加工を施してなる離型シートを製造する方法であって、シート状の基材の両側に電離放射線硬化型樹脂を塗布して、前記基材と、前記基材の一方の側に配置され前記電離放射線硬化型樹脂からなる第1樹脂層と、前記基材の他方の側に配置され前記電離放射線硬化型樹脂からなる第2樹脂層と、を含む原反を形成する工程と、前記基材の一方の側の表面に凹凸形状が形成されるとともに、前記基材の他方の側の表面にも、一方の側の表面の凹凸形状に対応した凹凸形状が形成されるように、前記原反にエンボス加工を施す工程と、エンボス加工を施された前記原反の前記第1樹脂層および前記第2樹脂層を硬化させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明による離型シートの製造方法の、前記基材に電離放射線硬化型樹脂を塗布して前記原反を形成する工程において、前記基材の一方の側および前記基材の他方の側のうちの一方に、電離放射線硬化型樹脂を塗布し、その後、前記基材の一方の側および前記基材の他方の側のうちの他方に、電離放射線硬化型樹脂を塗布するようにしてもよい。
【0024】
本発明による離型シートの製造方法において、前記第1樹脂層および前記第2樹脂層を硬化する工程において、前記第1樹脂層および前記第2樹脂層を、同時に硬化させるようにしてもよい。
【0025】
本発明によるエンボス加工システムは、エンボス加工装置と、前記エンボス加工装置の上流側に配置され、電離放射線硬化型樹脂を塗布する塗布装置と、前記エンボス加工装置の下流側に配置され、前記塗布装置で塗布された電離放射線硬化型樹脂を硬化させる硬化装置と、を備え、前記塗布装置は、シート状の基材の両側に電離放射線硬化型樹脂を塗布して、前記基材と、前記基材の一方の側に配置され前記電離放射線硬化型樹脂からなる第1樹脂層と、前記基材の他方の側に配置され前記電離放射線硬化型樹脂からなる第2樹脂層と、を含む原反を形成し、前記エンボス加工装置は、前記基材と前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とを有する原反に対してエンボス加工を施して、前記基材の一方の側の表面に凹凸形状が形成されるとともに、前記基材の他方の側の表面にも、一方の側の表面の凹凸形状に対応した凹凸形状が形成されるようにし、前記硬化装置は、エンボス加工を施された原反の前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とを硬化させることを特徴とする。
【0026】
本発明によるエンボス加工システムにおいて、前記塗布装置は、前記基材の一方の側に電離放射線硬化型樹脂を塗布する第1塗布部材と、前記基材の他方の側に電離放射線硬化型樹脂を塗布する第2塗布部材と、を有し、前記第1塗布部材および前記第2塗布部材は、前記基材の搬送経路に沿ってずれた位置に配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であり、離型シートを用いてシート状部材を作製する方法を示す図である。
【図2】図2は、図1の離型シートを製造するための装置および方法を説明するための概略図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った断面を示す図であって、離型シートを製造するために用いられる基材をそのシート面の法線方向に沿った断面において示す断面図である。
【図4】図4は、図2のIV−IV線に沿った断面を示す図であって、離型シートを製造するために用いられる原反をそのシート面の法線方向に沿った断面において示す断面図である。
【図5】図5は、図2のV−V線に沿った断面を示す図であって、離型シートをそのシート面の法線方向に沿った断面において示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0029】
図1〜図5は本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1は、離型シートを用いてシート状部材を作製する方法を説明するための図である。図2は、図1の離型シートを製造するための装置および方法を模式的に示す図である。
【0030】
まず、離型シート10について説明する。図1および図5に示すように、離型シート10は、基材12と、基材12の一方の側に配置された第1樹脂層14と、基材12の他方の側に配置された第2樹脂層16と、を有している。図1に示す例において、第1樹脂層14は、基材12の一方の側(図1の紙面における上側)の表面上に積層され、且つ、離型シート10の一方の側の表面を構成している。同様に、第2樹脂層16は、基材12の他方の側(図1の紙面における下側)の表面上に積層され、且つ、離型シート10の他方の側の表面を構成している。
【0031】
基材12は、支持基材として機能し、例えば紙やPETから構成される。一方、第1樹脂層14および第2樹脂層16は、電離放射線硬化型樹脂、例えば、オリゴマー型のUV硬化型樹脂から形成されている。完成された離型シート10において、第1樹脂層14および第2樹脂層16をなす電離放射線硬化型樹脂は、既に対応する電離放射線を照射されて硬化している。一例として、基材12の厚みを150〜200μmとすることができ、樹脂層14,16の厚みを30〜50μmとすることができる。
【0032】
離型シート10は、後述するように、基材12と第1樹脂層14と第2樹脂層16とを有した原反20にエンボス加工を施すことによって作製されている。図1に示すように、シート状からなる離型シート10はうねるように変形させられている。すなわち、離型シート10の両側の面に凹凸形状が形成され、一方の面に形成された凹凸形状は、概ね、対応する位置において他方の面に形成された凹凸形状の起伏を反転させた形状となっている。
【0033】
このため、エンボス加工を施された離型シート10の基材12も、互いに対応する凹凸形状が両側の面に形成されるように、うねっている。また、第1樹脂層14は、基材12の一方の側の表面の凹凸形状に沿うようにして延び、これにより、離型シート10の一方の側に表面に、基材12の一方の側の表面に形成された凹凸形状に対応する凹凸形状を形成している。同様に、第2樹脂層16は、基材12の他方の側の表面の凹凸形状に沿うようにして延び、これにより、離型シート10の他方の側に表面に、基材12の他方の側の表面に形成された凹凸形状に対応する凹凸形状を形成している。
【0034】
このような離型シート(離型紙)10は、ビニールレザーや壁紙等のシート状部材を作製するための型紙として用いられる。とりわけ本実施の形態においては、作製された離型シート10が、合成皮革として用いられるシート状部材30を作製するための型紙として機能するようになる例を説明する。
【0035】
次に、このような離型シート10を用いて、シート状部材(本実施の形態においては、合成皮革製品)25を作製する際の作用について、説明する。
【0036】
シート状部材25を作製する場合、まず、第1樹脂層14によって形成された離型シート10の一方の表面に、熱硬化性樹脂等からなる樹脂製の塗工液26を塗工する。次に、図1に示すように、樹脂塗工液26を離型シート10との間に挟むようにして、樹脂塗工液26上に基布28を積層する。このとき、適当なラミネータを用いて、基布28を離型シート10に向けて押圧しながら、基布28と離型シート10との間に位置する樹脂塗工液26を硬化させる。図1に示す例では、ヒータは内蔵されたニップローラ29によって、樹脂塗工液26を加熱しながら硬化させている。これにより、樹脂塗工液26からなる塗工膜27が形成される。この塗工膜27は、加熱加圧されることにより、基布28と接着されるようになる。その後、図1に二点鎖線で示すように、塗工膜27と基布28との積層体を離型シート10から剥がすことにより、塗工膜27と基布28とからなるシート状部材25が得られる。
【0037】
得られたシート状部材25の塗工膜27には、離型シート(離型紙)10の一方の表面に形成された凹凸形状が転写されており、転写された凹凸形状により、シート状部材25の意匠性を向上させている。
【0038】
なお、基布28と離型シート10とが互いに向けて押圧される際、離型シート10の他方の側の表面は、例えば、図1に示すようなニップローラによって、押圧される。そして、本実施の形態においては、離型シート10がうねっており、離型シート10の他方の側の表面にも凹凸形状が形成されている。
【0039】
しかしながら、離型シート10の他方の側の表面は、硬化処理を施された電離放射線硬化型樹脂からなる第2樹脂層16によって形成され、紙等からなる基材12と比較して高強度となっており、また、加熱による強度低下も少ない。したがって、基布28と離型シート10とが互いに向けて押圧される際に、例えば図1に示すように、離型シート10の他方の側の表面がニップローラ29によって押圧されたとしても、離型シート10の他方の側の表面に形成された凹凸形状を効果的に維持することができる。すなわち、硬化処理を施された電離放射線硬化樹脂によって表面層が形成された離型シート10は、加熱および加圧に対して優れた耐久性を呈し、その表面の凹凸形状を効果的に維持することができる。これにより、離型シート10を多数回繰り返して使用することができるようになり、シート状部材の製造コストを効果的に低減することができる。
【0040】
次に、主に図2〜図5を参照して、離型シート10を製造する方法について説明する。まず、図2を参照して、離型シート10を製造するためのエンボス加工システムについて説明する。
【0041】
図2に示すように、エンボス加工システム30は、エンボス加工装置40と、エンボス加工装置40の上流側に配置され、電離放射線硬化型樹脂を塗布する塗布装置35と、エンボス加工装置40の下流側に配置され、塗布装置35で塗布された電離放射線硬化型樹脂を硬化させる硬化装置45と、を有している。また、エンボス加工システム30は、塗布装置35よりも上流に配置された供給装置32と、硬化装置45の下流側に配置された回収装置33と、をさらに有している。供給装置32は、塗布装置35に向けて基材12を供給する。また、回収装置33は、作製された離型シート10を巻き取って回収するようになっている。
【0042】
塗布装置35は、基材12の一方の側に電離放射線硬化型樹脂を塗布する第1塗布部材36と、基材12の他方の側に電離放射線硬化型樹脂を塗布する第2塗布部材37と、を有している。本実施の形態において、第1塗布部材36および第2塗布部材37は、それぞれ、オリゴマー型のUV硬化型樹脂を塗布するように構成されている。また、硬化装置45は、基材12の両側にUV光を照射し得るように構成されている。
【0043】
エンボス加工装置40は、原反20に形成されるべき凹凸形状に対応した凹凸形状を有するエンボス型41と、エンボス型41に対向して配置され、エンボス型41との間で原反20を圧するようになるバックアップ体42と、を有している。
【0044】
図示する例において、エンボス型41は、ロール状のエンボスロールとして構成されている。エンボスロール41は回転駆動されるロール本体を有し、ロール本体の外周面には凹凸形状を有するエンボス型面41aが形成されている。本実施の形態においては、合成皮革用の離型シート10を作製することができるよう、エンボス型面41aの凹凸形状は、原反20に皮模様を付与し得るように形成されている。
【0045】
また、本実施の形態において、バックアップ体42は、エンボスロール41に対向して配置され、原反20の移動速度に同期して回転可能なバックアップロールとして構成されている。図2に示すように、バックアップロール42は、エンボスロール41との間で原反20を挟圧するようになる。本実施の形態においては、バックアップロール42の外周面42aにも、エンボス型面41aの凹凸形状の形状に対応した凹凸形状が形成されている。より具体的には、バックアップロール42の外周面42aにも、エンボス型面41aの凹凸形状に対して相補的に形成された凹凸形状、すなわち、エンボス型面41aの凹凸形状と起伏が逆になっている凹凸形状が、形成されている。これにより、エンボスロール41とバックアップロール42との間を通過する原反20をうねるように変形させることができる。
【0046】
なお、このようなバックアップロール41として、例えば、紙や羊毛等の繊維を押し固めてなる表層部を有したペーパーロールが用いられ得る。そして、上述したバックアップロール42の外周面42aの凹凸形状は、例えば、エンボスロール41のエンボス型面41とバックアップロール42の外周面42aとを互いに向けて押圧した状態で、エンボスロール41とバックアップロール42とを空運転させることにより、形成され得る。
【0047】
このような構成を有するエンボス加工システム30を用いて、基材12から原反20を作製して離型シート(離型紙)10を製造する方法の一例を、以下に説明する。
【0048】
まず、図2に示すように、基材12が、供給装置32から供給されて、塗布装置35へと搬送される。図3の断面図に示すように、供給装置32から繰り出される基材12は平坦である。
【0049】
塗布装置35は、基材12の搬送経路に沿って設けられた第1塗布部材36と第2塗布部材37とを有している。図2に示すように、第1塗布部材36および第2塗布部材37は、基材32の搬送経路に沿ってすれた位置に配置されている。また、第1塗布部材36は、搬送されてくる基材12の一方の側の表面に対面する位置に配置され、第2塗布部材37は、搬送されてくる基材12の他方の側の表面に対面する位置に配置されている。この結果、搬送されていく基材12の一方の側に、第1塗布部材36からUV硬化型樹脂が電離放射線硬化型樹脂として塗布される。また、基材12の一方の側への電離放射線硬化型樹脂の塗布とタイミングをずらして、基材12の他方の側に、第2塗布部材37からUV硬化型樹脂が電離放射線硬化型樹脂として塗布される。このようにして、図4に示すように、シート状の基材12と、硬化前の電離放射線硬化型樹脂からなり、基材12の一方の側に配置された第1樹脂層14と、硬化前の電離放射線硬化型樹脂からなり、基材12の他方の側に配置された第2樹脂層16と、を有する原反20が得られる。
【0050】
次に、得られた原反20は、エンボス加工装置40のエンボスロール41とバックアップロール42との間に送り込まれる。上述したように、エンボスロール41のエンボス型面41aだけでなく、バックアップロール42の外周面42aにも、エンボス型面41aの凹凸形状に対して相補的に形成された凹凸形状、すなわち、エンボス型面41aの凹凸形状と起伏が逆になっている凹凸形状が、形成されている。このため、エンボスロール41とバックアップロール42との間で加圧された原反20は、うねるように、言い換えると、波を打つように変形させられることになる。これにより、原反20の表層部に凹凸形状が形成されるだけでなく、基材12の一方の側の表面に凹凸形状が形成されるとともに、基材12の他方の側の表面にも、一方の側の表面の凹凸形状に対応した凹凸形状が形成されるようになる。このような方法によれば、大きな高低差を有した凹凸形状を、低いエンボス圧力で、形成することができる。そして、エンボス圧力が低圧力であることから、エンボス加工装置40や原反20に対する負荷も少なく、且つ、高速でのエンボス加工が可能となる。
【0051】
凹凸形状を形成された原反20(離型シート10)は、その後、硬化装置45へと搬送される。硬化装置45では、原反20(離型シート10)の一方の側の表面および他方の側の表面、すなわち、第1樹脂層14および第2樹脂層16の両方に、UV光が電離放射線として照射される。電離放射線硬化型樹脂からなる第1樹脂層14および第2樹脂層16は、電離放射線を照射されることにより硬化する。これにより、エンボス加工工程で形成された凹凸形状が、硬化した第1樹脂層14および第2樹脂層16によって維持されるようになる。以上のようにして、図5に示す離型シート10が得られるようになる。
【0052】
なお、紙や樹脂等は、応力緩和時間が長時間となる。このため、紙や樹脂等からなる基材12および樹脂層14,16は、エンボス加工での短時間の圧力付加では、完全に変形しきらない。すなわち、エンボス加工での圧力が解放されると、紙や樹脂等からなる原反20は元の平坦な形状に戻ろうとする。しかしながら、硬化装置45による硬化処理がエンボス加工後に迅速に行われることにより、エンボス圧力解放後における原反20(離型シート10)の復元変形を効果的に拘束することができる。すなわち、エンボス加工でいったん形成された凹凸形状の平坦化を防止して、凹凸形状を維持することが可能となる。
【0053】
以上のような本実施の形態によれば、基材12の一方の側の表面に凹凸形状が形成されるとともに、基材12の他方の側の表面にも、前記一方の側の表面の凹凸形状に対応した凹凸形状が形成されている。また、基材12の両側の表面上には、硬化処理が施された電離放射線硬化樹脂からなる第1樹脂層14および第2樹脂部16が設けられている。第1樹脂層14および第2樹脂部16は、それぞれ、基材12の表面の凹凸形状に沿って、略一定の厚みで延びている。すなわち、離型シート10は、互いに対して相補的な凹凸形状が両面に形成されており、両方の表面層が硬化処理を施された電離放射線硬化型樹脂によって構成されている。このような離型シート10によれば、従来の離型シートにおいて裏面側(他方の側)の表面層を構成していた紙等と比較して格段に強い強度を有した硬化処理後の電離放射線硬化樹脂からなる第2樹脂層16によって、離型シート10の裏面側(他方の側)の表面が形成されている。したがって、離型シート10を用いてシート状部材25を作製する際における、離型シート10の裏面側(他方の側)からの平坦化を効果的に防止することができる。
【0054】
また、離型シート10のシート状部材25と対面する側(一方の側)の表面も、硬化処理後の電離放射線硬化樹脂からなる第1樹脂層14によって形成されている。すなわち、離型シート10のシート状部材25と対面する側(一方の側)の表面は、高い強度を有するとともに、樹脂塗工液26の硬化のための加熱で軟化することもない。したがって、離型シート10を用いてシート状部材25を作製する際における、離型シート10のシート状部材25と対面する側(一方の側)からの平坦化も抑制することができる。
【0055】
このようにして、本実施の形態によれば、シート状部材25を作製する際における加熱加圧に起因した離型シート10の平坦化を極めて効果的に防止することができる。
【0056】
さらに、本実施の形態による離型シート10は、基材12を中心として対称的な構成となっている。すなわち、基材12の両側に、電離放射線硬化樹脂からなる第1樹脂層14および第2樹脂層16が配置されている。しかも、第1樹脂層14および第2樹脂層16は、互いに相補的な形状でうねっている。したがって、離型シート10に反り(カール)が発生することを極めて効果的に防止することができる。とりわけ、電離放射線硬化型樹脂を用いる場合には、硬化処理時に重合収縮が生じるため、大きな反りが生じる可能性がある。本実施の形態によれば、電離放射硬化型樹脂の高強度という利点を有効に享受しながら、離型シート10の対称的な構成により、電離放射硬化型樹脂の重合収縮に起因した不具合を解消することができる。
【0057】
なお、上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0058】
例えば、上述した実施の形態において、合成皮革用の離型紙を離型シート10として製造する例を挙げたが、これに限られず、その他の用途に用いられる離型シート10を製造することも当然に可能である。
【0059】
また、上述した実施の形態において、塗布装置35の第1塗布部材36と第2塗布部材37が基材12の搬送経路に沿って互いに異なる位置に配置されている例を示したが、これに限られない。第1塗布部材36と第2塗布部材37が基材12の搬送経路に沿って同じ位置に配置され、基材12の両側に同時に電離放射線硬化型樹脂が塗布されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 離型シート
12 基材
14 第1樹脂層
16 第2樹脂層
20 原反
25 シート状部材
26 樹脂塗工液
27 塗工膜
28 基布
30 エンボス加工システム
32 供給装置
33 回収装置
35 塗布装置
36 第1塗布部材
37 第2塗布部材
40 エンボス加工装置
45 硬化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボス加工を施された離型シートであって、
前記エンボス加工によって、一方の側の表面に凹凸形状が形成されるとともに、他方の側の表面にも、一方の側の表面の凹凸形状に対応した凹凸形状が形成されている基材と、
電離放射線硬化樹脂からなり、前記基材の前記一方の側に配置された第1樹脂層と、
電離放射線硬化樹脂からなり、前記基材の前記他方の側に配置された第2樹脂層と、を備え、
前記第1樹脂層は、前記基材の前記一方の側の表面の凹凸形状に沿うようにして延び、
前記第2樹脂層は、前記基材の前記他方の側の表面の凹凸形状に沿うようにして延びている
ことを特徴とする離型シート。
【請求項2】
前記第1樹脂層は、前記離型シートの一方の側の表面を形成し、
前記第2樹脂層は、前記離型シートの他方の側の表面を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の離型シート。
【請求項3】
合皮製品を作製するための型紙として機能する
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の離型シート。
【請求項4】
エンボス加工を施されるシート状の原反であって、
シート状の基材と、
硬化前の電離放射線硬化型樹脂からなり、前記基材の一方の側に配置された第1樹脂層と、
硬化前の電離放射線硬化型樹脂からなり、前記基材の他方の側に配置された第2樹脂層と、を備える
ことを特徴とする原反。
【請求項5】
前記第1樹脂層は、前記原反の一方の側の表面を形成し、
前記第2樹脂層は、前記原反の他方の側の表面を形成する
ことを特徴とする請求項4に記載の原反。
【請求項6】
合皮製品を作製するための原材料である
ことを特徴とする請求項4または5に記載の原反。
【請求項7】
エンボス加工を施してなる離型シートを製造する方法であって、
シート状の基材の両側に電離放射線硬化型樹脂を塗布して、前記基材と、前記基材の一方の側に配置され前記電離放射線硬化型樹脂からなる第1樹脂層と、前記基材の他方の側に配置され前記電離放射線硬化型樹脂からなる第2樹脂層と、を含む原反を形成する工程と、
前記基材の一方の側の表面に凹凸形状が形成されるとともに、前記基材の他方の側の表面にも、一方の側の表面の凹凸形状に対応した凹凸形状が形成されるように、前記原反にエンボス加工を施す工程と、
エンボス加工を施された前記原反の前記第1樹脂層および前記第2樹脂層を硬化させる工程と、を備える
ことを特徴とする離型シートの製造方法。
【請求項8】
前記基材に電離放射線硬化型樹脂を塗布して前記原反を形成する工程において、前記基材の一方の側および前記基材の他方の側のうちの一方に、電離放射線硬化型樹脂を塗布し、その後、前記基材の一方の側および前記基材の他方の側のうちの他方に、電離放射線硬化型樹脂を塗布する
ことを特徴とする請求項7に記載の離型シートの製造方法。
【請求項9】
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層を硬化する工程において、前記第1樹脂層および前記第2樹脂層を、同時に硬化させる
ことを特徴とする請求項7または8に記載の離型シートの製造方法。
【請求項10】
エンボス加工装置と、
前記エンボス加工装置の上流側に配置され、電離放射線硬化型樹脂を塗布する塗布装置と、
前記エンボス加工装置の下流側に配置され、前記塗布装置で塗布された電離放射線硬化型樹脂を硬化させる硬化装置と、を備え、
前記塗布装置は、シート状の基材の両側に電離放射線硬化型樹脂を塗布して、前記基材と、前記基材の一方の側に配置され前記電離放射線硬化型樹脂からなる第1樹脂層と、前記基材の他方の側に配置され前記電離放射線硬化型樹脂からなる第2樹脂層と、を含む原反を形成し、
前記エンボス加工装置は、前記基材と前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とを有する原反に対してエンボス加工を施して、前記基材の一方の側の表面に凹凸形状が形成されるとともに、前記基材の他方の側の表面にも、一方の側の表面の凹凸形状に対応した凹凸形状が形成されるようにし、
前記硬化装置は、エンボス加工を施された原反の前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とを硬化させる
ことを特徴とするエンボス加工システム。
【請求項11】
前記塗布装置は、前記基材の一方の側に電離放射線硬化型樹脂を塗布する第1塗布部材と、前記基材の他方の側に電離放射線硬化型樹脂を塗布する第2塗布部材と、を有し、
前記第1塗布部材および前記第2塗布部材は、前記基材の搬送経路に沿ってずれた位置に配置されている
ことを特徴とする請求項10に記載のエンボス加工システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−280120(P2010−280120A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134919(P2009−134919)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】