離床警報装置
【課題】 入院入所者等の夜間等におけるベッドなどからの離床を早期にしかも確実に判別し、これを介護者へ通報することにより、入院入所者の転倒やベッドからの転落、施設からの離脱等の事故を未然に防止する。
【解決手段】 寝台や寝具に固定され、人の生体活動により生じた振動を検出する超音波振動検知センサAと、寝台や寝具に敷設され、人の体重が加わることにより生じた空気圧を検出する空気圧検知センサBと、前記超音波振動検知センサA及び空気圧検知センサBからの各検出信号が入力されると共に当該各検出信号をデータ通信回路Hへ出力する制御装置Eと、前記制御装置Eからの各検出信号が入力され、超音波振動検知センサAからの検出信号が増大すると共に前記空気圧検知センサBからの圧力検出信号が減少した時に、入院入所者の離床動作又は離床のための予備動作の警報を発する演算制御装置Fとから構成する。
【解決手段】 寝台や寝具に固定され、人の生体活動により生じた振動を検出する超音波振動検知センサAと、寝台や寝具に敷設され、人の体重が加わることにより生じた空気圧を検出する空気圧検知センサBと、前記超音波振動検知センサA及び空気圧検知センサBからの各検出信号が入力されると共に当該各検出信号をデータ通信回路Hへ出力する制御装置Eと、前記制御装置Eからの各検出信号が入力され、超音波振動検知センサAからの検出信号が増大すると共に前記空気圧検知センサBからの圧力検出信号が減少した時に、入院入所者の離床動作又は離床のための予備動作の警報を発する演算制御装置Fとから構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布団やベッド等の寝具上に於ける入院入所者などの生体情報や動作情報を介護室等へ送り、これ等の各情報を用いて人の状態判別をすることにより、介護や看護の充実と安全性の向上を図るようにした人の状態判別装置の改良に関するものであり、特に、入院入所者の離床動作又は離床のための準備動作をより迅速且つ正確に判別し、これを警報できるようにした離床警報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は、先に超音波振動検知センサを用いて人の正常又は異常を自動的に且つ正確に判別し、介護士や看護師へ通報することにより介護や看護活動のより一層の充実を可能とした人の状態判別装置を開発し、これを特開2004−216006号として公開している。
【0003】
図10は、上記特開2004−216006号に係る人の状態判別装置の適用例を示すものであり、当該人の状態判別装置は、ベッドCに取り付けした超音波振動検知センサAと、ケーブル24を介して超音波振動検知センサAに連結した超音波送受信制御部Dとから構成されている。
【0004】
また、前記超音波振動検知センサAは、図11に示す如く容器本体21と液体22と超音波振動子23等から構成されており、超音波送受信制御部Dからケーブル24を介して超音波入力信号aが超音波振動子23へ入力されることにより、超音波振動子23から超音波信号cが発信され、この超音波信号cが液面22aで反射されることにより、反射超音波dが超音波振動子23で受信され、ケーブル24を介して超音波受信信号bが超音波送受信制御部Dへ入力される。
【0005】
更に、前記超音波送受信制御部Dは、超音波送受信部26と信号変換部27とマイクロコンピュータ部28等とから形成されており、マイクロコンピュータ部28から送信パルス信号apが発信されることにより、超音波送受信部26から超音波入力信号aが発信されると共に、超音波受信信号bが超音波送受信部26へ入力されることにより、受信信号(検出信号)bpがマイクロコンピュータ部28へ入力される。
【0006】
マイクロコンピュータ部28では、前記所定の一定時間間隔毎に入力されて来る受信信号bpの最大振幅値を基にして、最大振幅値のプロット、時系列データの正規化、標準偏差値の演算、高速フーリエ変換処理、危険度の演算及び演算した危険度と設定値との比較による人の状態の判定等の予め定められた処理を行い、人の状態の異常(例えば、心拍数の異常、動作の異常等)を看護師や介護師へ通報する。
【0007】
上記特開2004−216006号に係る人の状態判別装置は、病院や介護施設における入院入所者のベッド上に於ける状態を比較的正確に遠隔から把握することができると共に、多数のベッドに対する集中管理システムを比較的安価に構築することができ、優れた実用的効用を奏するものである。
【0008】
ところで、近年、認知症患者、車椅子の患者、寝たきり患者等を多く収容、看護する病院や介護施設においては、所謂医療技術上の事故以外に、入院入所者の転倒やベッドからの転落、施設から離脱等の医療技術以外の事故が多発する傾向にある。そのため、介護師や看護師の負担を軽減すると共に入院入所者の安全性を確保する観点から、前記転倒や転落、施設からの離脱等の事故を有効に防止する方策の確立が、緊急の課題とされている。
【0009】
而して、上記の入院入所者の転倒や転落、施設からの離脱等の事故を防止するためには、事故に至る以前の入院入所者の行動、即ちベッドからの離床動作若しくは離床の前段階動作であるベッド上に於ける起き上がり動作を早期に検知し、看護師や施設のスタッフへ通報すると共に看護師やスタッフがベッドに駆けつけて介助することにより、入院入所者単独でのベッドからの完全な離脱を可能な限り防止する必要がある。
【0010】
これに対して、前記特開2004−216006号に係る人の状態判別装置に於いては、超音波振動検知センサAによるベッド等の振動の検知を介して人の状態を判断するようにしているため、所謂就寝中の入院入所者のベッド上に於ける通常の寝返り動作と、ベッドからの離床のための予備動作(即ち、上半身の起き上りやベッドサイド方向への身体の向きの変更)とを竣別することが困難で、結果として、入院入所者の離床動作を正確に検知することが出来ないという問題を抱えている。何故なら、両動作とも、ベッドの振動が比較的大きく且つ検出信号が類似した振動状態となるからである。
【0011】
図12の(a)は、ベッドに取付けたこの種超音波振動検知センサによる代表的な振動検知データの一例を示すものであり、Q部が寝返りによる振動状態、S部が離床前の上半身の起き上り時の振動状態、U部が安静状態及びX部が離床状態を夫々示すものである。
同様に、図12の(b)は、上記振動検知データの他の例を示すものであり、Q部が寝返り行動の、またS部が離床前の離床予備行動の位置を夫々示すものである。
【0012】
ベッドに入院入所者が目をさまして横になっているときに多い現象であるが、振幅の範囲で設定する従来のデータから決定した離床行動を検出するための振動の振幅が一定時間継続する一般的な閾値に於いて、前記図12の(b)のQ部及びS部の対比からも明らかなように、両者には、振動の振幅と継続時間が同じになる場合がある。従って、寝返りと離床前の上半身の起き上り動作とを正確に判別することが著しく困難となる。更に、「寝返り」と「ベッドからの離脱するためのベッドサイド側への寝返り」とを判別することは殆ど不可能であり、結果として、上述のように、離床のための予備動作中の入院入所者の状態変化を正確に検知できないと云う問題が残されている。
【0013】
【特許文献1】特開2004−216006号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従前の人の状態判別装置に於ける上述の如き問題、即ち超音波振動検知センサによるベッド上の入院入所者の就寝中における寝返り動作の検出信号と、ベッドからの離脱の予備動作としてのベッドサイド方向への寝返り動作や上半身の起き上り動作の検出信号とを正確に判別することができないため、入院入所者がベッドから完全に離床してしまう前の離床準備動作の段階でこれを検知することが困難で、結果として、転倒等の事故の発生を確実に防止することが出来ないと云う問題を解決せんとするものであり、超音波振動検知センサと圧力式振動感知センサとを併用することにより、迅速且つ確実に入院入所者の離床前の予備動作による振動と、通常の寝返りによる振動とを竣別することを可能とした離床警報装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本願請求項1の発明は、離床警報装置を、寝台や寝具に固定され、人の生体活動により生じた振動を検出する超音波振動検知センサAと、寝台や寝具に敷設され、人の体重が加わることにより生じた空気圧を検出する空気圧検知センサBと、前記超音波振動検知センサA及び空気圧検知センサBからの各検出信号が入力されると共に当該各検出信号をデータ通信回路Hへ出力する制御装置Eと、前記制御装置Eからの各検出信号が入力され、超音波振動検知センサAからの検出信号が増大すると共に前記空気圧検知センサBからの圧力検出信号が減少した時に、入院入所者の離床動作又は離床のための予備動作を知らせる警報を発する演算制御装置Fとから構成したことを特徴とするものである。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、演算制御装置Fを、超音波振動検知センサAからの検出信号により入院入所者の安静、睡眠、異常等の状態判別を行なえる演算制御装置Fとしたものである。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、空気圧検知センサBを適宜の面積を有する2枚の合成樹脂製薄板と、前記両薄板の間に挟着固定した適宜の長さを有し且つその一端を閉鎖した弾性チューブと、弾性チューブの他端に連結した圧力検出器とから構成するようにしたものである。
【0018】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、空気圧検知センサBの弾性チューブをゴム硬度40〜100のゴムチューブとすると共に、その外径を5〜10mm及び内径を3〜8mmとするようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
本願発明に於いては、入院入所者の動作に起因するベッドの振動を超音波振動検知センサにより、また、入院入所者の動作の変化を空気圧検知センサにより検出し、両センサの振動検知信号の変化から入院入所者の離床前の予備動作、即ちベッドや布団上における上半身の起き上り動作を検知する構成としているため、より確実に入院入所者の離床のための予備動作(離床前段階の動作)を検知することができる。その結果、入院入所者のベッド等からの離脱が確実に防止されることになり、徘徊中の転倒やベッドからの転落、施設からの離脱等の事故を大幅に減少させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る離床警報装置の全体系統図であり、人の状態判別と離床警報の両方を行えるようにした装置を示すものである。即ち、当該離床警報装置は、ベッドに取付けした超音波振動検知センサAと、ベッドCのマットC1上に敷設した空気圧検知センサBと、超音波振動検知センサA及び空気圧検知センサBの制御装置Eと、ナース室等の集中管理室に設置した演算制御装置Fと、各検知センサA、Bと制御装置E間を連結する信号ケーブルK1、K2と、各病室に設けた制御装置Eと集中管理室の演算制御装置F間を連結するデータ通信回路H及びLAN回路Lと、LAN回路に介設したPLC(プログラマブルロジックコントローラ)P等から人の状態判別装置と離床警報を行えるシステムが構成されている。尚、MはベッドC上の入院入所者である。
【0021】
前記超音波振動検知センサAは、従前の図10に示した超音波振動検知センサと同構造のものであるため、ここではその構造の説明を省略する。
【0022】
前記空気圧検知センサBは、図2及び図3に示す如く2枚の可撓性のプラスチック(ポリプロピレン)シート1(150mm×200mm、厚さ0.75mm)の間に外径7mm×内径5mmの硬度40〜100のゴム製の断面円形のチューブ2を配設して、両シート1、1間にチューブ2を接着固定した状態で挟持したものである。
【0023】
また、前記チューブ2は、図2のように水平に4段に亘って配設されており、各チューブ2の間隔は40mmに選定されている。
【0024】
更に、前記チューブ2の一端開口には所謂圧力検出器B1が固定されており、また、チューブ2の他端は栓(図示省略)等により密封されている。
尚、両プラスチックシート1、1の外周縁は夫々接着により固定されている。また、シート1、1の外形寸法は任意に選定可能であるが、本発明のように入院入所者の上半身の起き上りを検出するような場合には200〜300mm×300〜500mm程度の大きさで十分である。
【0025】
また、本実施形態では硬度40〜100のゴム製のチューブ2を使用しているが、弾力性を有するものであれば、その材質は如何なるものであってもよい。チューブ2の外・内径やその亘長も同様であり、外径3.5mm、内径2mmの細パイプであっても使用可能であり、パイプ亘長も800〜2000mm位の間で適宜に選定可能である。また、パイプ2の配設形態も2〜10段位の間で自由に選択可能であり、パイプの配列方向も縦方向配列であってもよい。
【0026】
前記圧力検出器B1は、チューブ2の加圧力の変化(即ち、チューブ2の弾性歪みによる内圧変化)を検出し、これを電気出力epとして出力するためのものであり、圧電セラミックを利用する構成のものであっても、或いはコンデンサマイクロフォンを利用する構成のものであってもよいが、圧力分解能としては5kPa以上のものが望ましい。
【0027】
前記各病室のベッドC毎に設けられる制御装置Eは、図4に示す如く、従前の超音波送受信制御装置Dの送受信部26と信号変換部27の機構と、空気圧検知センサBの圧力検出器B1からの電気信号eb′のフィルタ装置29及び信号変換器(A/D)30とを一体的に組付けしたものであり、当該制御装置Eからデータ通信回路HやLAN回路を通して演算制御装置Fへ超音波振動検知センサAの出力bp及び空気圧検知センサBの出力epが夫々送信されると共に、演算制御装置Fから制御装置Eへ超音波の送信パルス信号apが入力される。
【0028】
尚、本実施形態に於いては、前記空気圧検知センサBの圧力検出器B1として(株)富士セラミックスのFKS−111型超高感度空圧センサを、超音波振動検知センサAとして日本医療機器株式会社製のANC-01型センサを夫々使用している。
また、本発明においては、後述するように人の心拍数や呼吸、寝返り、離床等の人の状態(動作状態)を超音波振動検知センサAからの検知信号を用いて判別するようにしているが、空気圧検知センサBからの検知信号epを用いて前記各動作状態を判別するようにしてもよいことは勿論である。
【0029】
次に、本発明に係る離床警報装置の作動について説明する。
図1を参照して、ベッドCに取付けされた超音波振動検知センサAからの超音波受信信号bは、制御装置Eに於いてディジタル信号に変換され、データ通信回線Hを通して演算制御装置Fの演算制御部Faへ入力され、ここで前記特開2004−216006号に開示されている如きデータ処理が行われることにより、人の睡眠、寝返り、離床及び心拍、脈拍等の正常又は異常の判断等が行われる。また、各入院入所者Mのデータ等は適宜に表示部Fbに表示されると共に、プリントアウトされる。更に、PLCを介してナースコールユニットへも必要な情報が移送される。
なお、図1の実施例では、監視対象ベッドCを2箇所としているが、1から36箇所程度を順次切り替え的に監視するようにしても良いことは勿論である。
【0030】
前記空気圧検知センサBの圧力検出器B1からの出力信号epも同様であり、制御装置Eからデータ通信回路Hを通して演算制御装置Fへ入力される。
【0031】
而して、本発明に於いては、演算制御装置Fへ入力された空気圧検知センサBからの圧力検出信号epは、入院入所者の離床前の予備動作(即ち、上半身の起立動作)の検出用信号として利用されており、具体的には超音波振動検知センサAからの検出信号(受信信号)bpと圧力センサからの検出信号epを比較し、両者の振幅値の変動幅の和が最大値になった時点を入院入所者Mが上半身を起して離床の準備に入った時点として、警報その他の必要な信号が発信される。
【0032】
図5は、図1の実施形態に於いて、前記入院入所者Mが離床の準備動作に入った場合(即ち半身を起こしにかかった場合)の前記超音波振動検知センサAの検出信号bpと空気圧検知センサBの検出信号epの一例を示すものであり、振動検知センサAの検出信号bpは、入院入所者MがベッドC上で上半身を起こすことによりベッドCの振動が増加するため、その振幅値が増大する。
一方、空気圧検知センサBの検出信号epの方は、入院入所者Mが上半身を起こすことにより、空気圧検知センサBの弾性チューブ2内の内圧が減少し、その結果、圧力検出信号epの出力が低下し、その振幅値が下降する。
その結果、前記検出信号bpは+側に、また検出信号epは−側に夫々大きく変動し、両者の変動幅の和は最大値となる。本発明では、この最大値となった時点Tで、離床警報を発信するようにしている。
【実施例1】
【0033】
図6の(a)・(b)は、ベッドC上で入院入所者Mが就寝中の20:00〜6:00の間に於ける超音波振動検知センサAの出力bpと、空気圧検知センサBの検知出力epの一例を示す線図であり、図6の(a)・(b)において、□は目視により入院入所者の離床動作を確認した時間位置を、また、○は警報が発生した時間位置を夫々示すものである。
【0034】
この図6の(a)に示した実施例では、23:30及び4:30に誤警報が夫々発せされており、更に5:10頃には警報漏れが生じている。
誤警報や警報漏れを少なくして、離床の警報を最適に出力するためには、各センサA、Bの出力bp、apに対する閾値の設定を的確に行う必要がある。そのため、某病院で入院入所者の就寝時間中のベッド振動を取得し、離床する際に発生する振動を確認して、空気圧検知センサBと超音波振動検知センサAとの離床警報を発する場合の閾値を検討した。
【0035】
上記図6の(b)は、閾値の設定調整により誤報及び警報漏れが無くなった場合の一例を示すものである。尚、図6の(a)で、□は目視により入院入所者が離床準備をしたことを判断した警報位置であり、また、○は空気圧検知センサBが350及び超音波振動検知センサAが500の閾値であるときの警報発生位置である。図6の(b)からも明らかなように、空気圧検知センサBの閾値を250及び超音波振動検知センサAの閾値を450とすることにより、誤警報及び漏れ警報の発生が皆無にとなる。
【0036】
図7は、振動検知センサAの警報発振閾値を400、450、500とした場合の空気圧検知センサBの警報発信閾値に対する警報漏れ数を示すものであり、また、図8は誤報数を示すものである。このような検討を数箇所の病院から得たデータを基にして実施し、その結果から、本実施例においては、前述の通り警報を発する場合の具体的な閾値を空気圧検知センサBについては250及び超音波振動検知センサAについては450とするようにしており、両者の閾値250及び閾値450が夫々後述する図9の(a)・(b)の如き条件下にあるときに、離床又は離床前の予備的動作に入ったことの警報を発するようにしている。
尚、図7等では、空気圧検知センサBと超音波振動検知センサAの閾値を変化させたときに目視判断の警報位置に警報がない場合は警報漏れとし、また、目視判断の警報位置以外に警報がある場合は誤報として、夫々閾値を検討した。なお、ここでは前記閾値として、両センサA,Bの検出出力bp,epの最大振動振幅を1000として、これを基準として各閾値を定めている。
【0037】
即ち、図9の(a)・(b)に示すように、空気検知センサBの検出出力epについては、警報を発信する一つ前のステップに於ける値がその閾値を越えていることが、離床又は離床前の予備的動作の警報の発信条件になっており、振動検知センサAの検出出力bpが閾値を越え且つ空気圧検知センサの検知出力epが上方から下方へクロスしている場合に、警報が発信されることになる。
【0038】
尚、本発明に於いては、上記の他に、図9の(c)に示すように、保持時間tによる警報待機が警報発信条件の一つとして加えられており、検出出力bpが閾値を越えると、保持時間tを1ポイント設定し、その期間中に検出出力epが閾値を下回ったときにも、警報を発信するようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、入院入所者等を対象とする介護施設や病院のみならず、子どもや成人等を対象とする一般病院等へも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の離床警報装置の使用状態を示す全体系統図である。
【図2】空気圧検知センサBの平面図である。
【図3】図2のイーイ断面図である。
【図4】制御装置Eの構成系統図である。
【図5】超音波振動検知センサAの検出信号bpと空気圧検知センサBの検出信号apの入院入所者が上半身を起こした場合の変化状況を示すものである。
【図6】(a)、(b)は、ベッドC上で入院入所者Mが就寝中の20:00〜6:00の間超音波振動検知センサAと空気圧検知センサBの各出力振動の一例を示すものである。
【図7】超音波振動検知センサAの警報発信閾値を400、450、500とした場合の空気圧検知センサBの警報発信閾値と警報漏れの関係を示す線図である。
【図8】図7と同じ条件下における空気圧検知センサBの警報発信閾値と誤報数の関係を示す線図であり、(a)は誤報を生じたケースを、また、(b)は誤報を生じなかったケースを夫々示すものである。
【図9】(a)、(b)は、各検出出力bp・epの閾値から警報判定をする場合の一例を示すものであり、また、(c)は保持時間による警報待機を警報発信の条件に加えた場合の警報判定の一例を示すものである。
【図10】特開2004−216006号に係る人の状態判別装置の全体構成図である。
【図11】特開2004−216006号に係る超音波振動検知センサの構造説明図である。
【図12】超音波振動検知センサAによる代表的なベッド上の入院入所者の動作と振動データとの関係を示すものである。
【符号の説明】
【0041】
a 超音波入力信号
b 超音波受信信号
c 超音波信号
d 反射超音波
ap 送信パルス信号
bp 超音波振動検知センサからの受信信号(検出信号)
ep 空気圧検知センサからの圧力検出信号
A 超音波振動検知センサ
B 空気圧検知センサ
B1 圧力検出器
C ヘッド
C1 敷マット
E 制御装置
F 演算制御装置
Fa 演算制御部
Fb 表示部
Fc メモリー部
K1・K2 ケーブル
M 入院入所者
H データ通信回路
L LAN回路
P PLC
T 離床警報発信点
1 プラスチック薄板
2 弾性チューブ
26 超音波送受信部
27 信号変換部
29 フィルタ装置
30 信号変換器
【技術分野】
【0001】
本発明は、布団やベッド等の寝具上に於ける入院入所者などの生体情報や動作情報を介護室等へ送り、これ等の各情報を用いて人の状態判別をすることにより、介護や看護の充実と安全性の向上を図るようにした人の状態判別装置の改良に関するものであり、特に、入院入所者の離床動作又は離床のための準備動作をより迅速且つ正確に判別し、これを警報できるようにした離床警報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は、先に超音波振動検知センサを用いて人の正常又は異常を自動的に且つ正確に判別し、介護士や看護師へ通報することにより介護や看護活動のより一層の充実を可能とした人の状態判別装置を開発し、これを特開2004−216006号として公開している。
【0003】
図10は、上記特開2004−216006号に係る人の状態判別装置の適用例を示すものであり、当該人の状態判別装置は、ベッドCに取り付けした超音波振動検知センサAと、ケーブル24を介して超音波振動検知センサAに連結した超音波送受信制御部Dとから構成されている。
【0004】
また、前記超音波振動検知センサAは、図11に示す如く容器本体21と液体22と超音波振動子23等から構成されており、超音波送受信制御部Dからケーブル24を介して超音波入力信号aが超音波振動子23へ入力されることにより、超音波振動子23から超音波信号cが発信され、この超音波信号cが液面22aで反射されることにより、反射超音波dが超音波振動子23で受信され、ケーブル24を介して超音波受信信号bが超音波送受信制御部Dへ入力される。
【0005】
更に、前記超音波送受信制御部Dは、超音波送受信部26と信号変換部27とマイクロコンピュータ部28等とから形成されており、マイクロコンピュータ部28から送信パルス信号apが発信されることにより、超音波送受信部26から超音波入力信号aが発信されると共に、超音波受信信号bが超音波送受信部26へ入力されることにより、受信信号(検出信号)bpがマイクロコンピュータ部28へ入力される。
【0006】
マイクロコンピュータ部28では、前記所定の一定時間間隔毎に入力されて来る受信信号bpの最大振幅値を基にして、最大振幅値のプロット、時系列データの正規化、標準偏差値の演算、高速フーリエ変換処理、危険度の演算及び演算した危険度と設定値との比較による人の状態の判定等の予め定められた処理を行い、人の状態の異常(例えば、心拍数の異常、動作の異常等)を看護師や介護師へ通報する。
【0007】
上記特開2004−216006号に係る人の状態判別装置は、病院や介護施設における入院入所者のベッド上に於ける状態を比較的正確に遠隔から把握することができると共に、多数のベッドに対する集中管理システムを比較的安価に構築することができ、優れた実用的効用を奏するものである。
【0008】
ところで、近年、認知症患者、車椅子の患者、寝たきり患者等を多く収容、看護する病院や介護施設においては、所謂医療技術上の事故以外に、入院入所者の転倒やベッドからの転落、施設から離脱等の医療技術以外の事故が多発する傾向にある。そのため、介護師や看護師の負担を軽減すると共に入院入所者の安全性を確保する観点から、前記転倒や転落、施設からの離脱等の事故を有効に防止する方策の確立が、緊急の課題とされている。
【0009】
而して、上記の入院入所者の転倒や転落、施設からの離脱等の事故を防止するためには、事故に至る以前の入院入所者の行動、即ちベッドからの離床動作若しくは離床の前段階動作であるベッド上に於ける起き上がり動作を早期に検知し、看護師や施設のスタッフへ通報すると共に看護師やスタッフがベッドに駆けつけて介助することにより、入院入所者単独でのベッドからの完全な離脱を可能な限り防止する必要がある。
【0010】
これに対して、前記特開2004−216006号に係る人の状態判別装置に於いては、超音波振動検知センサAによるベッド等の振動の検知を介して人の状態を判断するようにしているため、所謂就寝中の入院入所者のベッド上に於ける通常の寝返り動作と、ベッドからの離床のための予備動作(即ち、上半身の起き上りやベッドサイド方向への身体の向きの変更)とを竣別することが困難で、結果として、入院入所者の離床動作を正確に検知することが出来ないという問題を抱えている。何故なら、両動作とも、ベッドの振動が比較的大きく且つ検出信号が類似した振動状態となるからである。
【0011】
図12の(a)は、ベッドに取付けたこの種超音波振動検知センサによる代表的な振動検知データの一例を示すものであり、Q部が寝返りによる振動状態、S部が離床前の上半身の起き上り時の振動状態、U部が安静状態及びX部が離床状態を夫々示すものである。
同様に、図12の(b)は、上記振動検知データの他の例を示すものであり、Q部が寝返り行動の、またS部が離床前の離床予備行動の位置を夫々示すものである。
【0012】
ベッドに入院入所者が目をさまして横になっているときに多い現象であるが、振幅の範囲で設定する従来のデータから決定した離床行動を検出するための振動の振幅が一定時間継続する一般的な閾値に於いて、前記図12の(b)のQ部及びS部の対比からも明らかなように、両者には、振動の振幅と継続時間が同じになる場合がある。従って、寝返りと離床前の上半身の起き上り動作とを正確に判別することが著しく困難となる。更に、「寝返り」と「ベッドからの離脱するためのベッドサイド側への寝返り」とを判別することは殆ど不可能であり、結果として、上述のように、離床のための予備動作中の入院入所者の状態変化を正確に検知できないと云う問題が残されている。
【0013】
【特許文献1】特開2004−216006号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従前の人の状態判別装置に於ける上述の如き問題、即ち超音波振動検知センサによるベッド上の入院入所者の就寝中における寝返り動作の検出信号と、ベッドからの離脱の予備動作としてのベッドサイド方向への寝返り動作や上半身の起き上り動作の検出信号とを正確に判別することができないため、入院入所者がベッドから完全に離床してしまう前の離床準備動作の段階でこれを検知することが困難で、結果として、転倒等の事故の発生を確実に防止することが出来ないと云う問題を解決せんとするものであり、超音波振動検知センサと圧力式振動感知センサとを併用することにより、迅速且つ確実に入院入所者の離床前の予備動作による振動と、通常の寝返りによる振動とを竣別することを可能とした離床警報装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本願請求項1の発明は、離床警報装置を、寝台や寝具に固定され、人の生体活動により生じた振動を検出する超音波振動検知センサAと、寝台や寝具に敷設され、人の体重が加わることにより生じた空気圧を検出する空気圧検知センサBと、前記超音波振動検知センサA及び空気圧検知センサBからの各検出信号が入力されると共に当該各検出信号をデータ通信回路Hへ出力する制御装置Eと、前記制御装置Eからの各検出信号が入力され、超音波振動検知センサAからの検出信号が増大すると共に前記空気圧検知センサBからの圧力検出信号が減少した時に、入院入所者の離床動作又は離床のための予備動作を知らせる警報を発する演算制御装置Fとから構成したことを特徴とするものである。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、演算制御装置Fを、超音波振動検知センサAからの検出信号により入院入所者の安静、睡眠、異常等の状態判別を行なえる演算制御装置Fとしたものである。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、空気圧検知センサBを適宜の面積を有する2枚の合成樹脂製薄板と、前記両薄板の間に挟着固定した適宜の長さを有し且つその一端を閉鎖した弾性チューブと、弾性チューブの他端に連結した圧力検出器とから構成するようにしたものである。
【0018】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、空気圧検知センサBの弾性チューブをゴム硬度40〜100のゴムチューブとすると共に、その外径を5〜10mm及び内径を3〜8mmとするようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
本願発明に於いては、入院入所者の動作に起因するベッドの振動を超音波振動検知センサにより、また、入院入所者の動作の変化を空気圧検知センサにより検出し、両センサの振動検知信号の変化から入院入所者の離床前の予備動作、即ちベッドや布団上における上半身の起き上り動作を検知する構成としているため、より確実に入院入所者の離床のための予備動作(離床前段階の動作)を検知することができる。その結果、入院入所者のベッド等からの離脱が確実に防止されることになり、徘徊中の転倒やベッドからの転落、施設からの離脱等の事故を大幅に減少させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る離床警報装置の全体系統図であり、人の状態判別と離床警報の両方を行えるようにした装置を示すものである。即ち、当該離床警報装置は、ベッドに取付けした超音波振動検知センサAと、ベッドCのマットC1上に敷設した空気圧検知センサBと、超音波振動検知センサA及び空気圧検知センサBの制御装置Eと、ナース室等の集中管理室に設置した演算制御装置Fと、各検知センサA、Bと制御装置E間を連結する信号ケーブルK1、K2と、各病室に設けた制御装置Eと集中管理室の演算制御装置F間を連結するデータ通信回路H及びLAN回路Lと、LAN回路に介設したPLC(プログラマブルロジックコントローラ)P等から人の状態判別装置と離床警報を行えるシステムが構成されている。尚、MはベッドC上の入院入所者である。
【0021】
前記超音波振動検知センサAは、従前の図10に示した超音波振動検知センサと同構造のものであるため、ここではその構造の説明を省略する。
【0022】
前記空気圧検知センサBは、図2及び図3に示す如く2枚の可撓性のプラスチック(ポリプロピレン)シート1(150mm×200mm、厚さ0.75mm)の間に外径7mm×内径5mmの硬度40〜100のゴム製の断面円形のチューブ2を配設して、両シート1、1間にチューブ2を接着固定した状態で挟持したものである。
【0023】
また、前記チューブ2は、図2のように水平に4段に亘って配設されており、各チューブ2の間隔は40mmに選定されている。
【0024】
更に、前記チューブ2の一端開口には所謂圧力検出器B1が固定されており、また、チューブ2の他端は栓(図示省略)等により密封されている。
尚、両プラスチックシート1、1の外周縁は夫々接着により固定されている。また、シート1、1の外形寸法は任意に選定可能であるが、本発明のように入院入所者の上半身の起き上りを検出するような場合には200〜300mm×300〜500mm程度の大きさで十分である。
【0025】
また、本実施形態では硬度40〜100のゴム製のチューブ2を使用しているが、弾力性を有するものであれば、その材質は如何なるものであってもよい。チューブ2の外・内径やその亘長も同様であり、外径3.5mm、内径2mmの細パイプであっても使用可能であり、パイプ亘長も800〜2000mm位の間で適宜に選定可能である。また、パイプ2の配設形態も2〜10段位の間で自由に選択可能であり、パイプの配列方向も縦方向配列であってもよい。
【0026】
前記圧力検出器B1は、チューブ2の加圧力の変化(即ち、チューブ2の弾性歪みによる内圧変化)を検出し、これを電気出力epとして出力するためのものであり、圧電セラミックを利用する構成のものであっても、或いはコンデンサマイクロフォンを利用する構成のものであってもよいが、圧力分解能としては5kPa以上のものが望ましい。
【0027】
前記各病室のベッドC毎に設けられる制御装置Eは、図4に示す如く、従前の超音波送受信制御装置Dの送受信部26と信号変換部27の機構と、空気圧検知センサBの圧力検出器B1からの電気信号eb′のフィルタ装置29及び信号変換器(A/D)30とを一体的に組付けしたものであり、当該制御装置Eからデータ通信回路HやLAN回路を通して演算制御装置Fへ超音波振動検知センサAの出力bp及び空気圧検知センサBの出力epが夫々送信されると共に、演算制御装置Fから制御装置Eへ超音波の送信パルス信号apが入力される。
【0028】
尚、本実施形態に於いては、前記空気圧検知センサBの圧力検出器B1として(株)富士セラミックスのFKS−111型超高感度空圧センサを、超音波振動検知センサAとして日本医療機器株式会社製のANC-01型センサを夫々使用している。
また、本発明においては、後述するように人の心拍数や呼吸、寝返り、離床等の人の状態(動作状態)を超音波振動検知センサAからの検知信号を用いて判別するようにしているが、空気圧検知センサBからの検知信号epを用いて前記各動作状態を判別するようにしてもよいことは勿論である。
【0029】
次に、本発明に係る離床警報装置の作動について説明する。
図1を参照して、ベッドCに取付けされた超音波振動検知センサAからの超音波受信信号bは、制御装置Eに於いてディジタル信号に変換され、データ通信回線Hを通して演算制御装置Fの演算制御部Faへ入力され、ここで前記特開2004−216006号に開示されている如きデータ処理が行われることにより、人の睡眠、寝返り、離床及び心拍、脈拍等の正常又は異常の判断等が行われる。また、各入院入所者Mのデータ等は適宜に表示部Fbに表示されると共に、プリントアウトされる。更に、PLCを介してナースコールユニットへも必要な情報が移送される。
なお、図1の実施例では、監視対象ベッドCを2箇所としているが、1から36箇所程度を順次切り替え的に監視するようにしても良いことは勿論である。
【0030】
前記空気圧検知センサBの圧力検出器B1からの出力信号epも同様であり、制御装置Eからデータ通信回路Hを通して演算制御装置Fへ入力される。
【0031】
而して、本発明に於いては、演算制御装置Fへ入力された空気圧検知センサBからの圧力検出信号epは、入院入所者の離床前の予備動作(即ち、上半身の起立動作)の検出用信号として利用されており、具体的には超音波振動検知センサAからの検出信号(受信信号)bpと圧力センサからの検出信号epを比較し、両者の振幅値の変動幅の和が最大値になった時点を入院入所者Mが上半身を起して離床の準備に入った時点として、警報その他の必要な信号が発信される。
【0032】
図5は、図1の実施形態に於いて、前記入院入所者Mが離床の準備動作に入った場合(即ち半身を起こしにかかった場合)の前記超音波振動検知センサAの検出信号bpと空気圧検知センサBの検出信号epの一例を示すものであり、振動検知センサAの検出信号bpは、入院入所者MがベッドC上で上半身を起こすことによりベッドCの振動が増加するため、その振幅値が増大する。
一方、空気圧検知センサBの検出信号epの方は、入院入所者Mが上半身を起こすことにより、空気圧検知センサBの弾性チューブ2内の内圧が減少し、その結果、圧力検出信号epの出力が低下し、その振幅値が下降する。
その結果、前記検出信号bpは+側に、また検出信号epは−側に夫々大きく変動し、両者の変動幅の和は最大値となる。本発明では、この最大値となった時点Tで、離床警報を発信するようにしている。
【実施例1】
【0033】
図6の(a)・(b)は、ベッドC上で入院入所者Mが就寝中の20:00〜6:00の間に於ける超音波振動検知センサAの出力bpと、空気圧検知センサBの検知出力epの一例を示す線図であり、図6の(a)・(b)において、□は目視により入院入所者の離床動作を確認した時間位置を、また、○は警報が発生した時間位置を夫々示すものである。
【0034】
この図6の(a)に示した実施例では、23:30及び4:30に誤警報が夫々発せされており、更に5:10頃には警報漏れが生じている。
誤警報や警報漏れを少なくして、離床の警報を最適に出力するためには、各センサA、Bの出力bp、apに対する閾値の設定を的確に行う必要がある。そのため、某病院で入院入所者の就寝時間中のベッド振動を取得し、離床する際に発生する振動を確認して、空気圧検知センサBと超音波振動検知センサAとの離床警報を発する場合の閾値を検討した。
【0035】
上記図6の(b)は、閾値の設定調整により誤報及び警報漏れが無くなった場合の一例を示すものである。尚、図6の(a)で、□は目視により入院入所者が離床準備をしたことを判断した警報位置であり、また、○は空気圧検知センサBが350及び超音波振動検知センサAが500の閾値であるときの警報発生位置である。図6の(b)からも明らかなように、空気圧検知センサBの閾値を250及び超音波振動検知センサAの閾値を450とすることにより、誤警報及び漏れ警報の発生が皆無にとなる。
【0036】
図7は、振動検知センサAの警報発振閾値を400、450、500とした場合の空気圧検知センサBの警報発信閾値に対する警報漏れ数を示すものであり、また、図8は誤報数を示すものである。このような検討を数箇所の病院から得たデータを基にして実施し、その結果から、本実施例においては、前述の通り警報を発する場合の具体的な閾値を空気圧検知センサBについては250及び超音波振動検知センサAについては450とするようにしており、両者の閾値250及び閾値450が夫々後述する図9の(a)・(b)の如き条件下にあるときに、離床又は離床前の予備的動作に入ったことの警報を発するようにしている。
尚、図7等では、空気圧検知センサBと超音波振動検知センサAの閾値を変化させたときに目視判断の警報位置に警報がない場合は警報漏れとし、また、目視判断の警報位置以外に警報がある場合は誤報として、夫々閾値を検討した。なお、ここでは前記閾値として、両センサA,Bの検出出力bp,epの最大振動振幅を1000として、これを基準として各閾値を定めている。
【0037】
即ち、図9の(a)・(b)に示すように、空気検知センサBの検出出力epについては、警報を発信する一つ前のステップに於ける値がその閾値を越えていることが、離床又は離床前の予備的動作の警報の発信条件になっており、振動検知センサAの検出出力bpが閾値を越え且つ空気圧検知センサの検知出力epが上方から下方へクロスしている場合に、警報が発信されることになる。
【0038】
尚、本発明に於いては、上記の他に、図9の(c)に示すように、保持時間tによる警報待機が警報発信条件の一つとして加えられており、検出出力bpが閾値を越えると、保持時間tを1ポイント設定し、その期間中に検出出力epが閾値を下回ったときにも、警報を発信するようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、入院入所者等を対象とする介護施設や病院のみならず、子どもや成人等を対象とする一般病院等へも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の離床警報装置の使用状態を示す全体系統図である。
【図2】空気圧検知センサBの平面図である。
【図3】図2のイーイ断面図である。
【図4】制御装置Eの構成系統図である。
【図5】超音波振動検知センサAの検出信号bpと空気圧検知センサBの検出信号apの入院入所者が上半身を起こした場合の変化状況を示すものである。
【図6】(a)、(b)は、ベッドC上で入院入所者Mが就寝中の20:00〜6:00の間超音波振動検知センサAと空気圧検知センサBの各出力振動の一例を示すものである。
【図7】超音波振動検知センサAの警報発信閾値を400、450、500とした場合の空気圧検知センサBの警報発信閾値と警報漏れの関係を示す線図である。
【図8】図7と同じ条件下における空気圧検知センサBの警報発信閾値と誤報数の関係を示す線図であり、(a)は誤報を生じたケースを、また、(b)は誤報を生じなかったケースを夫々示すものである。
【図9】(a)、(b)は、各検出出力bp・epの閾値から警報判定をする場合の一例を示すものであり、また、(c)は保持時間による警報待機を警報発信の条件に加えた場合の警報判定の一例を示すものである。
【図10】特開2004−216006号に係る人の状態判別装置の全体構成図である。
【図11】特開2004−216006号に係る超音波振動検知センサの構造説明図である。
【図12】超音波振動検知センサAによる代表的なベッド上の入院入所者の動作と振動データとの関係を示すものである。
【符号の説明】
【0041】
a 超音波入力信号
b 超音波受信信号
c 超音波信号
d 反射超音波
ap 送信パルス信号
bp 超音波振動検知センサからの受信信号(検出信号)
ep 空気圧検知センサからの圧力検出信号
A 超音波振動検知センサ
B 空気圧検知センサ
B1 圧力検出器
C ヘッド
C1 敷マット
E 制御装置
F 演算制御装置
Fa 演算制御部
Fb 表示部
Fc メモリー部
K1・K2 ケーブル
M 入院入所者
H データ通信回路
L LAN回路
P PLC
T 離床警報発信点
1 プラスチック薄板
2 弾性チューブ
26 超音波送受信部
27 信号変換部
29 フィルタ装置
30 信号変換器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝台や寝具に固定され、人の生体活動により生じた振動を検出する超音波振動検知センサAと、寝台や寝具に敷設され、人の体重が加わることにより生じた空気圧を検出する空気圧検知センサBと、前記超音波振動検知センサA及び空気圧検知センサBからの各検出信号が入力されると共に当該各検出信号をデータ通信回路Hへ出力する制御装置Eと、前記制御装置Eからの各検出信号が入力され、超音波振動検知センサAからの検出信号が増大すると共に前記空気圧検知センサBからの圧力検出信号が減少した時に、入院入所者の離床動作又は離床のための予備動作を知らせる警報を発する演算制御装置Fとから構成したことを特徴とする離床警報装置。
【請求項2】
演算制御装置Fを、超音波振動検知センサAからの検出信号により入院入所者の安静、睡眠、異常等の状態判別を行なえる演算制御装置Fとした請求項1に記載の離床警報装置。
【請求項3】
空気圧検知センサBを適宜の面積を有する2枚の合成樹脂製薄板と、前記両薄板の間に挟着固定した適宜の長さを有し且つその一端を閉鎖した弾性チューブと、弾性チューブの他端に連結した圧力検出器とから構成したことを特徴とする請求項1に記載の離床警報装置。
【請求項4】
空気圧検知センサBの弾性チューブをゴム硬度40から100のゴムチューブとすると共に、その外径を5〜10mm及び内径を3〜8mmとするようにした請求項3に記載の離床警報装置。
【請求項1】
寝台や寝具に固定され、人の生体活動により生じた振動を検出する超音波振動検知センサAと、寝台や寝具に敷設され、人の体重が加わることにより生じた空気圧を検出する空気圧検知センサBと、前記超音波振動検知センサA及び空気圧検知センサBからの各検出信号が入力されると共に当該各検出信号をデータ通信回路Hへ出力する制御装置Eと、前記制御装置Eからの各検出信号が入力され、超音波振動検知センサAからの検出信号が増大すると共に前記空気圧検知センサBからの圧力検出信号が減少した時に、入院入所者の離床動作又は離床のための予備動作を知らせる警報を発する演算制御装置Fとから構成したことを特徴とする離床警報装置。
【請求項2】
演算制御装置Fを、超音波振動検知センサAからの検出信号により入院入所者の安静、睡眠、異常等の状態判別を行なえる演算制御装置Fとした請求項1に記載の離床警報装置。
【請求項3】
空気圧検知センサBを適宜の面積を有する2枚の合成樹脂製薄板と、前記両薄板の間に挟着固定した適宜の長さを有し且つその一端を閉鎖した弾性チューブと、弾性チューブの他端に連結した圧力検出器とから構成したことを特徴とする請求項1に記載の離床警報装置。
【請求項4】
空気圧検知センサBの弾性チューブをゴム硬度40から100のゴムチューブとすると共に、その外径を5〜10mm及び内径を3〜8mmとするようにした請求項3に記載の離床警報装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−151473(P2009−151473A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327663(P2007−327663)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000163419)株式会社きんでん (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000163419)株式会社きんでん (37)
【Fターム(参考)】
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