説明

難分解性物質含有水の処理方法

【課題】汚染水(処理原水)に含まれるダイオキシン類等の難分解性物質を濃縮して無害化するにあたり、遊離塩素を中和する重亜硫酸塩等の還元性物質を含む水にも適用できるとともに、含有される難分解性物質の性状に制限されず、効率よく低コストで無害化することが可能な難分解性物質含有水の処理装置を提供する。
【解決手段】吸着剤添加部、第1の膜濾過処理部、逆洗処理部、化学分解部を備え、さらに前記第1の膜濾過処理部で分離された透過水を、逆浸透膜又はナノフィルターを用いて、難分解性物質が濃縮された水と透過水に分離するための第2の膜濾過処理部、及び前記第2の膜濾過処理部で分離された難分解性物質が濃縮された水を前記吸着剤添加部に返送するための返送部を備える難分解性物質含有水の処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオキシン類やその他の内分泌攪乱性物質等の難分解性物質含有水を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国においては、平成11年にダイオキシン対策特別措置法が制定され、かかるダイオキシン対策特別措置法において、ダイオキシン類の排出基準は10pg−TEQ/L以下と規制されている。その一方、焼却炉解体工事排水や特定施設からの産業排水や一部土壌浸出水等は、かかる基準を大きく上回る高濃度のダイオキシン類が含まれる場合があるため、その低減化処理技術ないし除去技術の開発が強く望まれている。
【0003】
また、ダイオキシン類以外のビスフェノール等の内分泌攪乱性物質(いわゆる環境ホルモン、内分泌攪乱化学物質ともいう)や、トリクロロエタンに代表される各種有機塩素化合物も難分解性な物質であり、それらの排出基準が定められている一方、前記したダイオキシン類等と同様に、低減化処理技術ないし除去技術の開発が強く望まれている。
【0004】
これらの難分解性物質を含有する排水(汚染水)からの当該物質の除去方法としては、例えばダイオキシン類の除去として、排水を直接、オゾン、光分解、過酸化水素によるダイオキシンの化学的分解、微生物による分解、吸着剤や凝集剤を用いた分離除去等が行われている。しかしながら、このような分離除去技術は、希釈液を直接処理することになるため、効率が悪いことに加え、大きな設備投資が必要となっていた。また、排水が高濃度に汚染されている場合には、排出基準を満足することができない場合があり、好ましい手段とはいえなかった。
【0005】
このような難分解性有機化合物を無害化処理する手段としては、例えば、ダイオキシン類の除去方法として、当該ダイオキシン類に対してオゾン、光分解、過酸化水素による化学的分解、微生物による分解、吸着剤や凝集剤を用いた分離除去等の手段が知られている。この中では操作が簡便であるという点で、ダイオキシン類に対して酸化剤を添加して化学分解して無害化する処理が用いられており、また、ダイオキシン類を化学分解する酸化剤としては、例えば、過硫酸塩を用いた技術が提供されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0006】
一方、汚染水に対して沈降処理する工程、平均孔径が10〜100μmのネットで濾過処理する工程、その透過水を光触媒粉末の存在下、紫外線照射して接触分解する工程、次いで限外濾過膜で処理する工程を行う排水処理方法についての技術が報告されている(例えば、特許文献3)。
また、排水に対して、逆浸透膜(RO膜)で分離処理を施した後、濃縮液を活性酸素により化学分解する酸化処理工程に導入する処理方法についても提案されている(例えば、特許文献4及び特許文献5)。
【0007】
また、難分解性物質の排出を防止する技術としては、例えば物理的方法、化学的方法及び生物的方法が知られている。物理的方法の一つとして吸着法があり、水中への活性炭投入による吸着法(例えば、非特許文献1参照)や、排ガスへの活性炭投入法が開発されている。しかしながら、この場合、難分解性物質を吸着した活性炭には、その内部に依然として難分解性物質が保持されており、そのまま廃棄することはできない。
【0008】
したがって、この吸着に使用済の活性炭は、焼却、熱分解処理、あるいは埋め立て、廃棄処理する方法が行われているが、排ガスと共に排出されて二次汚染の原因となったり、埋立地から溶出して再汚染の原因となる危険性があり、安全で経済的な処理方法が望まれている。
【0009】
難分解性物質を含む排水や、土壤、スラッジ中の難分解性物質の分解方法としては、熱分解法やアルカリによる化学的分解法、超臨界液体による方法、オゾンや過酸化水素のような過酸化物、あるいは次亜塩素酸塩と紫外線との組み合わせによる方法等があり、さらに、白色腐朽菌や微生物が産生する酵素等を用いる生物的方法も研究されている。
【0010】
これらの方法には、それぞれ特徴があり、難分解性物質の存在状態により適用しやすい場合と、適用しにくい場合がある。例えば熱分解法や超臨界水分解法は、高価な設備やエネルギーを必要とし、経済的に利用しにくい場合が多い。また、オゾンや過酸化水素と紫外線との組み合わせの方法は、紫外線が透過しにくい懸濁物や、土壤、スラッジ等の固体には適用できない。そのため、懸濁物や浮遊物を含む排水は、懸濁物、浮遊物を一旦濾過や沈降分離して除去したのち、処理が行われるが、懸濁物や浮遊物に吸着されている難分解性物質は、別途無害化する必要がある。
【0011】
また、排水については、過酸化水素と鉄塩を組み合わせた化学分解法や、過硫酸塩、過マンガン酸塩を用いる化学分解法が種々提案されている。
例えば、特許文献6には、簡単な装置と操作により短時間で内分泌撹乱性物質を低濃度にまで除去することができる処理方法が開示されている。当該技術は、内分泌撹乱性物質含有水を活性炭等により吸着させ、これを脱着することにより濃縮し、その濃縮液に過硫酸塩等の過酸化物を接触させて、分解処理するものである。一般に、内分泌撹乱物質等の有害物は操作が煩雑になるほど人体や周辺環境を再汚染する可能性も高いという問題を生じる。
【0012】
したがって、固体に吸着されている難分解性物質を溶出させることなく、そのままの状態で分解することができれば、操作が簡便であり、人体や周辺環境を再汚染する危険性を回避できる。難分解性物質の吸着分離に用いた吸着剤の再利用及び被処理物の輸送が可能であり、しかも土壤やスラッジの固体状汚染物質に適用し得る等、工業的な利点が多く、その技術の開発が望まれている。
【0013】
以下、難分解性物質を含有する排水の処理についてさらに詳述する。
難分解性物質を含む排水の発生源としては、クラフトパルプ製造プラントにおける塩素系漂白設備、廃PCB又はPCB処理物の分解設備、PCB汚染物又はPCB処理物の洗浄設備、アルミニウムやアルミニウム合金の製造用に供する溶解炉等に係る廃ガス洗浄設備、湿式集塵設備、汚水等を排出する廃ピット等が知られている。
【0014】
また、環境庁によって水環境汚染物質の基準が改定され、それまで重金属主体であった環境基準の対象物質にトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、PCB等の有機化合物が新たに加わった。
【0015】
従来、難分解有害性物質を含む処理対象水から、濾過装置、膜分離法等を用いて可能なかぎり難分解性物質を除き、処理水中の難分解性物質を分解する技術が開発されている。(例えば特許文献7参照)
【0016】
上記のように難分解性物質を含む排水を処理するためには、前処理として濾過処理、生物処理等を施し、後処理としてオゾン処理、紫外線照射処理、触媒処理、又は活性炭処理等が施される。このように、これまでは、多大な労力と資材を使用して分解、除去しなければならなかった。
【0017】
また、紫外線照射処理を例にとると、紫外線が透過できる反応系のみで利用できる技術であり、固形物を含む液体や固形物には利用できないという問題がある。さらに、前処理で除去した難分解性物質は二次汚染を防止するために別途無害化する必要がある。
【0018】
そこで、これら難分解性物質を効率よく、人体や周辺環境を再汚染することの
ないクローズドシステムで分解処理する技術の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2003−93999号公報
【特許文献2】特開2003−285043号公報
【特許文献3】特開2003−144857号公報
【特許文献4】特開平11−347591号公報
【特許文献5】特開2000−354894号公報
【特許文献6】特開2000−189945号公報
【特許文献7】特開平11−99395号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】平山直道監修「ダイオキシン類の対策技術」シーエムシー社刊行、197〜205ページ(1998年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、前記した特許文献1や特許文献2に開示されるような、難分解性有機化合物に対して過硫酸塩を添加して当該化合物を化学分解させた場合にあっては、難分解性有機化合物の分解効率が低いため、高濃度のものに対応することは極めて困難であった。一方、このような高濃度の難分解性有機化合物の処理手段としては、過硫酸塩に対してルテニウム塩等の金属塩を添加して用いることもあるが、かかる金属塩は非常に高価であり、コスト面から実用的なものではなかった。
【0022】
特許文献3に開示されるような技術は、分解物中の固体が少ない排水では、金属メッシュ上に分解物中の固体沈着の膜層が形成されないため、ダイオキシンを含む微粒子の分解物中の固体や溶解したダイオキシンが金属メッシュを透過してしまい、処理が不十分となる場合があった。
【0023】
特許文献4や特許文献5に開示される技術にあっては、汚染水中に遊離塩素が存在する場合には、これを中和するために重亜硫酸塩等の還元性物質を過剰に加える必要があるが、この重亜硫酸塩等が化学分解を阻害してしまうため、難分解性物質の分離除去を効率的に行う手段とはいえなかった。
【0024】
そこで、本発明の目的は、焼却炉解体工事排水や特定施設からの産業排水や一部土壌浸出水等の汚染水(処理原水)に含まれるダイオキシン類等の難分解性物質を濃縮して無害化するにあたり、遊離塩素を中和する重亜硫酸塩等の還元性物質を含む水にも適用できるとともに、含有される難分解性物質の性状に制限されず、効率よく低コストで無害化することが可能な難分解性物質含有水の処理方法を提供することにある。
【0025】
本発明は、上記のような状況下で、固体に吸着されている難分解性物質を、脱着等の操作を行うことなく、そのままの状態で効果的に分解処理する方法、及び難分解性物質の吸着分離に用いた吸着剤の再生方法を提供することを目的とするものである。
【0026】
さらに本発明は、有害な難分解性物質を含有する排水から難分解性物質を吸着分離し、分離した難分解性物質を固形分の状態で効率よく分解し、クローズドシステムが可能な排水処理方法を提供することを第2の目的とするものである。
【0027】
そして、本発明は、種々の分離工程及び分解工程を組み合わせ、排水中の難分解性物質の濃度が変動した場合においても、確実に排出基準を満たすことができる、信頼性の高い排水処理システムを提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ね、膜分離による濃縮技術、化学分解技術及び/又は光分解技術を組み合わせることにより、排水あるいは廃棄物中のダイオキシン等の難分解性物質の濃度をより低いレベルまで低減することができることを見出した。
また、塩を濃縮することができる逆浸透膜(RO膜)又はナノフィルター膜(NF膜)による処理と、塩が通過する限外濾過膜(UF膜)とを組み合わせ、汚水等に含まれる塩のプロセス内濃縮による浸透圧の増加を抑えられ、濾過能力の低下を抑制できることを見出した。
さらに、吸着剤として、吸着効率の高い二酸化チタンを用いることで、化学分解の効率を高めることができると同時に、二酸化チタンは光触媒として機能するため、光分解における触媒として利用し、光分解を組み合わせることで、より信頼性の高い難分解性物質含有水の処理システムを提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0029】
即ち、本発明は、下記の難分解性物質含有水の処理方法及び処理装置を提供する。
[1]下記工程:
(B)難分解性物質含有水(処理原水)に吸着剤を添加し、該吸着剤に難分解性物質を吸着させる工程(吸着処理工程)
(C)該難分解性物質を吸着した吸着剤を、濾過膜を用いて分離し、難分解性物質を吸着した吸着剤が濃縮された水を得る工程(膜濾過処理工程)
(D)該分離された吸着剤に吸着された難分解性物質を、該吸着剤から脱着操作を行うことなく、該難分解性物質に対して過酸化物を接触させて、難分解性物質を化学分解する工程(化学分解工程)
を含む難分解性物質含有水の処理方法。
[2]前記工程(D)において、前記難分解性物質に対して100倍モル以上の前記過酸化物を用いる上記[1]に記載の難分解性物質含有水の処理方法。
[3]さらに、(A)難分解性物質含有水から、逆浸透膜(RO膜)又はナノフィルター膜(NF膜)を用いて難分解性物質が濃縮された水を得る工程(膜濃縮処理工程)
を含む上記[1]又は[2]に記載の難分解性物質含有水の処理方法。
[4]さらに(E)難分解性物質含有水中の塩素を中和する工程(塩素中和工程)を含む上記[1]〜[3]のいずれかに記載の難分解性物質含有水の処理方法。
[5]さらに(F)紫外線を照射して難分解性物質を分解する工程(光分解工程)を含む上記[1]〜[4]のいずれかに記載の難分解性物質含有水の処理方法。
[6](G)前記工程(C)において難分解性物質を吸着した吸着剤を分離した濾過膜を逆洗し、難分解性物質を吸着した吸着剤が濃縮された水を得る工程(逆洗工程)
を含む上記[1]〜[5]のいずれかに記載の難分解性物質含有水の処理方法。
[7]さらに、(H)難分解性物質を吸着した吸着剤が濃縮された水に、凝集剤を添加し、該難分解性物質を吸着した吸着剤を凝集・沈降させる工程(凝集分離工程)
を含む上記[1]〜[6]のいずれかに記載の難分解性物質含有水の処理方法。
[8]前記工程(B)で添加される吸着剤が、二酸化チタン、ゼオライト、酸性白土、活性白土、珪藻土、金属酸化物、金属粉末、活性炭及びカーボンブラックからなる群から選ばれる1種又は2種以上の無機系吸着剤である上記[1]〜[7]のいずれかに記載の難分解性物質含有水の処理方法。
[9]前記工程(B)で添加される吸着剤が、二酸化チタンである上記[8]に記載の難分解性物質含有水の処理方法。
[10]前記工程(C)で用いる濾過膜が、限外濾過膜(UF膜)、ナノフィルター膜(NF膜)、精密濾過膜(MF膜)及び逆浸透膜(RO膜)からなる群から選択される上記[1]〜[9]のいずれかに記載の難分解性物質含有水の処理方法。
[11]前記工程(D)で用いる過酸化物が、過硫酸塩である上記[1]〜[10]のいずれかに記載の難分解性物質含有水の処理方法。
[12]前記工程(A)で得られた難分解性物質が濃縮された水及び/又は前記工程(C)で得られた難分解性物質を吸着した吸着剤が濃縮された水の少なくとも一部を、難分解性物質含有水(処理原水)に添加して、再度前記工程(A)、前記工程(B)及び前記工程(C)からなる群から選択される少なくとも一つの工程を実施する上記[1]〜[11]のいずれかに記載の難分解性物質含有水の処理方法。
[13]難分解性物質含有水(処理原水)に吸着剤を添加するための吸着剤添加部、
該難分解性物質を吸着した吸着剤を、濾過膜を用いて分離し、難分解性物質を吸着した吸着剤を濃縮するための膜濾過処理部、
該難分解性物質を吸着した吸着剤に過酸化物を添加して難分解性物質を酸化分解するための化学分解部
を備える難分解性物質含有水の処理装置。
[14]難分解性物質含有水(処理原水)に、該水中の塩素を中和する還元性物質を投入するための還元性物質投入部、
難分解性物質含有水から、逆浸透膜(RO膜)又はナノフィルター膜(NF膜)を用いて難分解性物質を濃縮するための膜濃縮処理部、
該難分解性物質が濃縮された水に吸着剤を添加し、難分解性物質を吸着剤に吸着させるための吸着剤添加部、
該難分解性物質を吸着した吸着剤を、濾過膜を用いて分離し、難分解性物質を吸着した吸着剤を濃縮するための膜濾過処理部、
該難分解性物質を吸着した吸着剤が濃縮された水に凝集剤を添加し、該難分解性物質を吸着した吸着剤を凝集させるための凝集剤添加部、
該凝集剤によって凝集された難分解性物質を吸着した吸着剤を沈降させて沈降物と上澄みを固液分離するための固液分離部、及び
該沈降物に過酸化物を添加して該沈降物中の難分解性物質を酸化分解するための化学分解部
を備える難分解性物質含有水の処理装置。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、水中に含まれるダイオキシン等の難分解性物質を、その濃度に左右されることなく効率よく分解除去することができる。
本発明によれば、酸化剤による化学分解と紫外線照射による光分解とを組み合わせて、水中に含まれる難分解性物質をより低いレベルまで効率よく低減することができ、信頼性の高い処理システムを提供することができる。
【0031】
さらに、本発明によれば、難分解性物質を固体に吸着させた状態で、脱着操作を施すこともなく、前記のようにして化学分解処理することにより、該吸着剤を再生し得るので、吸着剤を繰り返し使用することができる。
【0032】
また、本発明の難分解性物質含有水の処理方法によれば、難分解性物質を含む水をクローズドシステムにより効率よく安全に処理することができ、難分解性物質含有水の生じる敷地内で、全ての処理が完了するため、環境汚染の原因となる難分解性物質の運搬等の必要性もなくなり、環境に悪影響を及ぼすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の難分解性物質含有水の処理方法の必須工程の構成を示すフロー図である。
【図2】本発明の難分解性物質含有水の処理方法の一態様の構成を示すフロー図である。
【図3】本発明の難分解性物質含有水の処理方法の一態様を実施するための処理装置の模式図である。
【図4】多重濾過工程を含む本発明の装置の一実施態様である。
【図5】多重濾過工程を含む本発明の装置の別の一実施態様である。
【図6】参考例1で用いた装置の模式図である。
【図7】参考例2で用いた装置の模式図である。
【図8】参考例3で用いた装置の模式図である。
【図9】参考例4で用いた装置の模式図である。
【図10】参考例5で用いた装置の模式図である。
【図11】参考例6で用いた装置の模式図である。
【図12】実施例7で用いた装置の模式図である。
【図13】実施例8及び9で用いた装置の模式図である。
【図14】参考例7で用いた装置の模式図である。
【図15】参考例8で用いた装置の模式図である。
【図16】参考例9で用いた装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の難分解性物質含有水の処理方法(以下、本発明の方法という)は、下記工程:
(B)難分解性物質含有水(処理原水)に吸着剤を添加し、該吸着剤に難分解性物質を吸着させる工程(吸着処理工程)
(C)該難分解性物質を吸着した吸着剤を、濾過膜を用いて分離し、難分解性物質を吸着した吸着剤が濃縮された水を得る工程(膜濾過処理工程)
(D)該分離された吸着剤に吸着された難分解性物質を、該吸着剤から脱着操作を行うことなく、該難分解性物質に対して過酸化物を接触させて、難分解性物質を化学分解する工程(化学分解工程)を含むことを特徴とする。
本発明の方法は、水中に含まれる難分解性物質を膜濾過処理により濃縮して除くとともに、濃縮された難分解性物質を化学分解、及び必要に応じて光分解することによって無害化処理するものである。本発明の方法の必須工程を図1に示す。
【0035】
本発明の方法によって無害化処理できる難分解性物質の例としては、土壌やヘドロ中の有害な汚染物質であるダイオキシン類や他の内分泌攪乱性物質や発癌性物質等が挙げられる。
【0036】
ここで、ダイオキシン類としては、例えば、ハロゲン化ジベンゾジオキシン類やハロゲン化ジベンゾフラン類、PCB類(特に、オルト位以外に塩素原子が置換したコプラナーPCB類)等が挙げられる。
【0037】
ハロゲン化ジベンゾジオキシン類の例としては、2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−P−ジオキシン、1,2,3,7,8−ペンタクロロジベンゾ−P−ジオキシン、1,2,3,4,7,8−ヘキサクロロジベンゾ−P−ジオキシン、1,2,3,4,6,7,8−ヘプタクロロジベンゾ−P−ジオキシン、1,2,3,4,6,7,8,9−オクタクロロジベンゾ−P−ジオキシン等が挙げられる。
【0038】
ハロゲン化ジベンゾフラン類の例としては、2,3,7,8−テトラクロロジベンゾフラン、1,2,3,7,8−ペンタクロロジベンゾフラン、1,2,3,4,7,8−ヘキサクロロジベンゾフラン、1,2,3,4,6,7,8−ヘプタクロロジベンゾフラン、1,2,3,4,6,7,8,9−オクタクロロジベンゾフラン等が挙げられる。
【0039】
PCB類(特に、オルト位以外に塩素原子が置換したコプラナーPCB類)の例としては、3,3’,4,4’,5−テトラクロロビフェニル、3,3´,4,4’,5−ペンタクロロビフェニル、3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサクロロビフェニル等が挙げられる。
【0040】
ダイオキシン類以外の内分泌攪乱性物質や発癌性物質としては、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール等のアルキルフェノール類や、テトラクロロフェノール、ペンタクロロフェノール等のハロゲン化フェノール類や、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1−ビス)4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビスフェノール類、ベンゾピレン、クリセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフルオランセン、ピセン等の多環芳香族炭化水素、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジ−2−エチルへキシルフタレート等のフタル酸エステルが挙げられる。
【0041】
また、前記したダイオキシン類、PCB類のほか、ジクロロプロパン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロエチレン等の難分解性有機ハロゲン化合物も、本発明の方法により光分解又は化学分解して除去処理することができる。
【0042】
本発明の方法は、(B)吸着処理工程、(C)膜濾過処理工程、及び(D)化学分解工程を含み、さらに必要に応じて、(A)膜濃縮処理工程、(E)塩素中和工程、(I)プレ濾過工程、(F)光分解工程、(G)逆洗工程、及び(H)凝集分離工程からなる群から選択される1つ以上の工程を含んでいてもよい。上記各工程は、1回のみ実施してもよいし、2回以上実施してもよい。上記工程の一つ又は二つ以上を複数回実施することにより、より信頼性が高く、より低濃度まで難分解性物質を分解除去することが可能となる。以下、図2を参照しながら各工程について説明する。
【0043】
(E)塩素中和工程
難分解性物質含有水中の残留塩素を中和する工程である。残留塩素は、逆浸透膜を酸化し、劣化させる原因となるため、予め除去することが望ましい。塩素濃度計により塩素濃度を測定し、還元性物質を適量添加する。
還元性物質としては、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄等が挙げられ、なかでも、重亜硫酸ナトリウムが好ましい。
【0044】
(I)プレ濾過工程
難分解性物質含有水中のゴミによる、逆浸透膜の目詰まりを防止するため、例えば、10μmのプレフィルターで濾過する工程である。
【0045】
(A)膜濃縮処理工程
難分解性物質含有水から、逆浸透膜(RO膜)又はナノフィルター膜(NF膜)を用いて難分解性物質が濃縮された水を得る工程である。例えば、ダイオキシンの分子量は200以上であり逆浸透膜又はナノフィルター膜により分子レベルで分離することができる。逆浸透膜及びナノフィルター膜は、難分解性物質のみならず、水中に含まれる塩等をも透過させない。そのため、塩も同時に濃縮されるため、濃縮された難分解性物質含有水の浸透圧が増加し、濾過性能が低下する。
ここで、「塩」とは、難分解性物質含有水中に含まれている全ての種類の塩(アルカリ金属の無機塩)を含み、主な塩としては、塩化ナトリウム、メタ重亜硫酸塩若しくは重亜硫酸塩、硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。塩化ナトリウムは、残留塩素を中和する際に生成するため、処理しようとする難分解性物質含有水中に多く含まれる。
【0046】
逆浸透膜による膜濃縮処理における運転圧力は、特に限定されないが、通常は運転圧が高いほどダイオキシン等の難分解性物質の除去率が上昇するので、一般的な設定である0.3MPaより高い、1MPa以上、より好ましくは1.5MPa以上で運転するのが好ましい。さらに、逆浸透膜を長期間運転するため、かつ、循環水濃縮による除去率の低下を防ぐため、濃縮水と透過水との比率は、排水の性状に応じて適宜決定すればよいが、通常は1:99〜80:20の範囲内、好ましくは30:70〜60:40、特に50:50であることが好ましい。
【0047】
逆浸透膜(以下、RO膜ということもある)の構成材料としては、ポリアミド系(架橋ポリアミド系や芳香族ポリアミド系等を含む)、脂肪族アミン縮合物系、複素環ポリマー系、酢酸セルロース系、ポリエチレン系、ポリビニルアルコール系、ポリエーテル系等の樹脂材料が挙げられる。
【0048】
逆浸透膜の膜形態としては、特に制限はなく、非対称膜、あるいは複合膜とすることができる。
また、膜モジュールとして、平膜型、中空糸型、スパイラル型、円筒型、ブリーツ型等を適宜採用することができる。
【0049】
ナノフィルター膜(NF膜)の構成材料としては、ポリアミド系(架橋ポリアミド系や芳香族ポリアミド系等を含む)、脂肪族アミン縮合物系、複素環ポリマー系、酢酸セルロース系、ポリエチレン系、ポリビニルアルコール系、ポリエーテル系等の樹脂材料が挙げられる。
【0050】
ナノフィルター膜の膜形態としては、特に制限はなく、前記した逆浸透膜と同様に、非対称膜、あるいは複合膜とすることができる。
また、膜モジュールは、平膜型、中空糸型、スパイラル型、円筒型、プリーツ型等の形式のものを適宜採用することができる。
【0051】
逆浸透膜の脱塩率(塩化ナトリウム排除率)としては、特に制限はないが、概ね95%以上の選択性のものを使用することが好ましい。また、ナノフィルター膜であれば、脱塩率が概ね40%以上の選択性のものを使用することが好ましい。
また、この逆浸透膜又はナノフィルター膜による膜濃縮処理により膜を通過しなかった液分(濃縮水)を再度未処理の難分解性物質含有水に戻してもよい。
【0052】
(B)吸着処理工程
難分解性物質含有水(処理原水)又は前記(A)工程において難分解性物質が濃縮された水に吸着剤を添加し、吸着剤に難分解性物質を吸着させる工程である。難分解性物質又は上記膜濃縮処理によって濃縮された水をそのまま(C)膜濾過処理工程に付しても、ダイオキシン等の難分解性物質のサイズに対して濾過膜の分画分子量が大きいため、難分解性物質を濃縮することはできない。そのため、吸着剤を添加して、微細な難分解性物質を大きな吸着剤粒子に吸着させた後、(C)膜濾過処理を行うことで、難分解性物質を濃縮する。
【0053】
本発明の方法に用いられる吸着剤としては、無機質多孔体及び有機質多孔体があり、具体的には、ゼオライト、珪藻土、酸性白土、活性白土、カーボンブラック等の無機質多孔体、二酸化チタン等の金属酸化物、金属粉末等の無機系吸着剤、活性炭やイオン交換樹脂等の有機質多孔体を挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。吸着剤としては、無機系吸着剤が好ましく、中でも吸着効率の高い二酸化チタンが特に好ましい。
また、後述する(F−1)及び(F−2)光分解工程を設ける場合には、光触媒として機能しうる吸着剤を用いることが好ましく、このような吸着剤としては、例えば、二酸化チタンが挙げられる。
【0054】
吸着剤の添加量は、吸着剤の種類、吸着性能、処理する汚染物の種類や量、処理時間及びコスト等を勘案して適宜決定すればよいが、一般に、1〜1000ppmとすればよく、10〜100ppmとすることが好ましい。
吸着剤として二酸化チタンを用いる場合には、その添加量が多い程、難分解性物質の吸着量も増すが、コストは高くなる。それ故、二酸化チタンの添加量は、コスト等を勘案して適宜選択すべきであり、通常1〜100,000ppmの範囲内とすることが好ましく、10〜1,000ppmの範囲内とすることがより好ましい。
また、吸着効率及び分解効率を高めるためには、比表面積の大きな吸着剤を用いることが好ましい。例えば、二酸化チタンであれば、X線粒径が7nm程度のものが好ましい。
【0055】
また、難分解性物質含有水に対する吸着剤の接触時間は、長ければ長い方が吸着効率は向上するが、処理槽の大きさ等を考慮して適宜決定すればよく、例えば、1〜2時間程度とすることが好ましい。
【0056】
(F)光分解工程
難分解性物質含有水又は難分解性物質を吸着した吸着剤を含有する水に、紫外線を照射して難分解性物質を分解する工程である。即ち、吸着剤に吸着されていない、水中の難分解性物質並びに吸着剤に吸着されている難分解性物質の一部を分解する。この工程を設けることにより、処理後の排出水中に含まれる難分解性物質をより低濃度まで低減することができる。
さらにこの工程では、本発明で用いる吸着剤が、二酸化チタンである場合、光照射(好ましくは250〜380nm)を行うことにより、水中の難分解性物質がより効率よく光分解される。光分解は長時間行うほど分解効率は高くなる。例えば、二酸化チタン20ppm添加、30分間紫外線(254nm)照射した場合、60〜70%程度のダイオキシン類の分解効率が得られる。
【0057】
(C)膜濾過処理工程
難分解性物質を吸着した吸着剤を通過させないが、塩は通過させる濾過膜を用いて、塩を含むが難分解性物質を実質的に含まない透過水を分離し、難分解性物質を吸着した吸着剤が濃縮された水を得る工程である。この工程により、塩の除去を行うことができる。
【0058】
膜濾過処理において使用される膜の種類としては、上記分離性能を有するものであれば特に制限はないが、良好な分離性能、簡便性等の点で、例えば、限外濾過膜(UF膜)、ナノフィルター膜(NF膜)、精密濾過膜(MF膜)、逆浸透膜(RO膜)等を使用することが好ましい。
【0059】
この中でも、限外濾過膜(以下、UF膜ということもある)を使用することが、ダイオキシン類等を吸着している微細な吸着剤や水に不溶のダイオキシン等の微細粒子を十分に除去することができるとともに、操作性、経済性も良好である。
【0060】
限外濾過膜(UF膜)の構成材料としては、酢酸セルロース系、ポリアクリロニトリル系、ポリスルフィン系、ポリエーテルサルホン系等の樹脂材料が挙げられる。
また、膜モジュールは、平膜型、中空糸型、スパイラル型、円筒型、プリーツ型等の形式のものを適宜採用することができる。
そして、限外濾過膜の分画分子量としては、特に制限はないが、3000〜150000程度のものを使用すればよい。
【0061】
精密濾過膜(MF膜)の構成材料としては、セルロースエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリスルフィン系、ポリエーテルサルホン系等の樹脂材料が挙げられる。また、形式としては、平膜、フィルターカートリッジ、ディスポーザルカートリッジ等を要求に応じて選択すればよい。
精密濾過膜の孔(細孔)の大きさは、例えば、吸着処理により使用される吸着剤の粒径により適宜決定すればよいが、0.01〜1μm程度とすればよい。
【0062】
なお、逆浸透膜(RO膜)及びナノフィルター膜(NF膜)については、前述の(A)膜濃縮処理工程で説明した通りである。
【0063】
(G)逆洗工程
上記(C)工程において、限外濾過膜を用いる場合にあっては、難分解性物質を吸着した吸着剤(特に吸着剤として二酸化チタンを用いた場合)が限外濾過膜の目詰まりの原因となる。それ故、当該濾過膜の濾過能力の低下を防止するために、定期的に逆洗を行うことが好ましい。逆洗の頻度は適宜選択すればよいが、例えば、30〜120分に1回、1〜10分間程度が好ましい。また、かかる逆洗を行うにあっては、固形物を含まない清澄な水を用いるのが好ましい。前記(A)膜濃縮処理工程で得た透過水又は(C)膜濾過処理工程で得られた透過水を、逆洗を行う水(逆洗水)として用いると経済的でよい。特に好ましいのは(A)膜濃縮処理工程で得た透過水である。
【0064】
そして、この逆洗水に対しては、殺菌のために次亜塩素酸ナトリウム等の殺菌剤を添加することが好ましく、かかる次亜塩素酸ナトリウムの添加量としては、逆洗後の残留塩素濃度が1〜100mg/Lの範囲内になるように添加すればよい。
【0065】
尚、後段における難分解性物質の分解効率を向上させるため、後述する(D)化学分解工程へ移送する水は、難分解性物質を吸着した吸着剤を洗い出した逆洗排水のみとするのが好ましく、又は、必要に応じて(A)膜濃縮処理工程で得られた難分解性物質濃縮水を(D)化学分解工程に移送してもよい。
【0066】
(H)凝集分離工程
前記(C)工程で得られた難分解性物質を吸着した吸着剤が濃縮された水に、凝集剤を添加して、難分解性物質を吸着した吸着剤をさらに凝集・沈降させて難分解性物質を含む沈降物を得る工程である。
尚、本工程で沈降物を分離して得られる上澄み液は、本発明の処理方法におけるいずれの工程にも返送することができる。また、難分解性物質濃度が排出基準値以下であれば、放流してもよい。
【0067】
本工程は、難分解性物質を吸着した吸着剤が微細であり、固液分離に時間を要するのでこれを短縮するため、及びこれに続く(D)化学分解工程における分解効率を高めるために行う。
【0068】
凝集剤としては、無機系凝集剤、有機系凝集剤のいずれかを単独で、あるいは両者を組み合わせて使用することができる。無機系凝集剤の例としては、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ塩化アルミニウム、ゼオライト系等が挙げられる。
【0069】
有機系凝集剤の例としては、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体等の各種アニオン系高分子凝集剤やカチオン系高分子凝集剤等が挙げられる。
【0070】
凝集剤は、(D)化学分解工程において悪影響を及ぼさないものであれば特に制限されないが、少量で、嵩密度の高い凝集物が得られる無機物が主成分のものが好ましい。
【0071】
凝集剤の添加量は、吸着剤と同様、凝集剤の種類、吸着性能及びコスト等を勘案して適宜決定すればよいが、一般に、1〜10,000ppmとすればよく、10〜1,000ppmとすることが好ましい。
【0072】
(D)化学分解工程
前記工程(C)で得られた分離された難分解性物質を吸着した吸着剤、又は工程(H)で得られた沈降物に、過酸化物を接触させて難分解性物質を酸化分解する工程である。化学分解を行う際、吸着剤に吸着された難分解性物質を、吸着剤から脱着操作を行うことなく、難分解性物質に対して過酸化物を接触させる。
【0073】
本工程で用いられる過酸化物としては、過マンガン酸塩、過硫酸塩、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、過酸化亜鉛、過酸化カドミウム、過酸化カリウム、過酸化カルシュウム、過酸化クロム等の各種金属塩、過酸化水素、オゾン及び金属触媒と水素供給体の併用系等が挙げられる。
中でも好ましい酸化剤として用いられる過酸化物は、過マンガン酸塩及び過硫酸塩である。
【0074】
過マンガン酸塩としては、過マンガン酸亜鉛、過マンガン酸カドミウム、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸カルシュウム、過マンガン酸銀、過マンガン酸ストロンチウム、過マンガン酸セシウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸バリウム、過マンガン酸マグネシウム、過マンガン酸リチウム、過マンガン酸ルビジウム等が挙げられる。
【0075】
また、過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸水素カリウム、過硫酸鉛、及び過硫酸ルビジウム等が挙げられるが、酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウム等の過硫酸塩が特に好ましい。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、吸着剤に吸着された難分解性物質のモル数を基準にして、100倍モル以上であることが好ましく、より好ましくは10〜1012倍モル、さらに好ましくは10〜1010倍モルの範囲で選定される。過酸化物の使用量が難分解性物質に対して100倍モル以上であれば、難分解性物質含有水中の難分解性物質濃度が変動した場合であっても、吸着剤に吸着された難分解性物質を産業廃棄物の排出基準値(3,000pg−TEQ/g)以下まで安定して化学分解することができる。
【0076】
具体的には、過酸化物の添加量は、難分解性物質含有物中の難分解性有機化合物の種類やその濃度、及び共存物質の種類やその濃度により適宜決定すればよいが、難分解性物質含有物が溶液状である場合には、100〜100,000ppmであることが好ましく、1000〜50,000ppmであることが特に好ましい。一方、難分解性物質含有物が固形物である場合には、難分解性物質含有物に対して0.01〜100質量%とすることが好ましく、0.1〜20質量%とすることが特に好ましい。
【0077】
過酸化物の添加量は、処理対象である水のpHによって異なるが、反応のみを促進する場合は、過硫酸の酸化力を考慮して添加すればよい。
また、過酸化物による分解を促進させるために過酸化物は、水中で溶解している状態で接触させることが好ましく、更に他の酸化剤、例えば過酸化水素やオゾンを共存させてもよい。
【0078】
さらに、この分解反応をより効果的に行うために、この反応系に有機溶剤を適宜量添加することができる。このような有機溶媒としては、炭素数2〜12の炭化水素類、例えば、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、メチルフタレン等が好適に用いられる。
【0079】
過硫酸塩は加熱により分解して、重硫酸イオンラジカル、硫酸イオンラジカルやヒドロキシラジカルが発生して、このラジカルがダイオキシン等の難分解性物質を分解するが、該ラジカルは短時間で電子を放出することから、分解効率を高めるために、難分解性物質を吸着した吸着剤をスラリー状にして、攪拌することが好ましい。この攪拌は激しいほどラジカルと難分解性物質が接触する確率が高まるために有利であるが、攪拌には限度があり、分解容器の容量やスラリーの粘度等により、経済的に著しく不利にならない範囲で激しく行うことが好ましい。
【0080】
また、吸着剤に吸着された難分解性物質を過酸化物によって化学分解する反応温度は、室温から100℃までが好ましい。さらに好ましくは40℃〜100℃である。40℃未満では分解に要する時間が長くかかる場合がある。
【0081】
化学分解処理温度は高いほど分解速度は高まるが、水の沸騰温度(塩濃度が高くなると100℃より高くなる)以上で分解処理しようとすると圧力容器を必要とするため、沸騰温度以下の大気圧下で分解処理することが好ましい。なお、沸騰温度以上の大気圧下で分解処理を行う場合、水分の蒸発と共に、ダイオキシン等の難分解性物質も温度が高くなるほど蒸発するため、二次汚染防止の観点から、廃ガス処理設備を設けることが必要となる。
【0082】
本発明においては、加熱する場合、加熱方式としては特に制限はなく、電熱式、加熱水供給式、蒸気吸込み式、ボイラー式等、いずれも用いることができるが、加熱水供給式の場合には、水分量が多くならないように注意を要する。水分量が多くなりすぎると、反応のための過硫酸塩濃度が低下する。化学分解処理時間については、処理温度やその他の条件等により左右され、一概に定めることはできないが、通常10分ないし500時間程度である。
【0083】
化学分解を経た難分解性物質を吸着していた吸着剤は、化学分解後、難分解性有機化合物の含有量が排出基準値(3,000pg−TEQ/g)以下であることを確認して、通常の産業廃棄物と同様に廃棄することができる。
【0084】
また、難分解性物質の吸着に一度使用した吸着剤を、直ちに廃棄することなく、吸着剤としての性能の低下をきたすまで繰返し使用することもでき、オンサイト、クローズドシステムとして排水を処理することが可能であり、極めて安全性が高く、かつ経済的である。また、この難分解性物質の吸着剤を最終的に廃棄する場合においても、難分解性物質の残存量を充分に低減して廃棄処分することができるので、自然環境に悪影響を及ぼすことがない。
【0085】
廃棄物のさらなる低減のために、工程(D)の化学分解終了後、分解物を静置して固液分離することもできる。分解物を固液分離して得られる上澄み液は、本発明の処理方法におけるいずれの工程にも返送することができる。また、難分解性物質濃度が排出基準値以下であれば、放流してもよい。
一方、沈降物は、3,000ppm−TEQ/g以下であることを確認して、産業廃棄物として処分することができる。
【0086】
次に、本発明の難分解性物質含有水の処理装置(以下、本発明の装置という)は、
難分解性物質含有水に吸着剤を添加するための吸着剤添加部、
該難分解性物質を吸着した吸着剤を、濾過膜を用いて分離し、難分解性物質を吸着した吸着剤を濃縮するための膜濾過処理部、
該難分解性物質を吸着した吸着剤に過酸化物を添加して難分解性物質を酸化分解するための化学分解部
を備える。
【0087】
上記各部は、1又は2以上設けられていてもよい。上記各部のいずれかが2以上設けられている態様を図3〜5に示す。
【0088】
本発明の装置の特に好ましい実施態様は、
難分解性物質含有水に、該水中の塩素を中和する還元性物質を投入するための還元性物質投入部、
難分解性物質含有水から、逆浸透膜(RO膜)又はナノフィルター膜(NF膜)を用いて難分解性物質を濃縮するための膜濃縮処理部、
該難分解性物質が濃縮された水に吸着剤を添加し、難分解性物質を吸着剤に吸着させるための吸着剤添加部、
該難分解性物質を吸着した吸着剤を、濾過膜を用いて分離し、難分解性物質を吸着した吸着剤を濃縮するための膜濾過処理部、
該難分解性物質を吸着した吸着剤が濃縮された水に凝集剤を添加し、該難分解性物質を吸着した吸着剤を凝集させるための凝集剤添加部、
該凝集剤によって凝集された難分解性物質を吸着した吸着剤を沈降させて沈降物と上澄みを固液分離するための固液分離部、及び
該沈降物に過酸化物を添加して該沈降物中の難分解性物質を酸化分解するための化学分解部を備える。
【0089】
以下、本発明の装置の好ましい実施形態の一例について、難分解性物質含有水の処理の全体の流れを図3を用いて説明する。
図3は、本発明の難分解性物質含有水の処理方法の一態様を実施するための処理装置1の模式図である。図3に示される処理装置1は、還元性物質投入部10、膜濃縮処理部20、吸着剤添加部30、膜濾過処理部40、凝集剤添加部60、固液分離部70、化学分解処理部80を基本構成とする。図3には、さらに、必要に応じて設ける紫外線照射部50が記載されている。
【0090】
[還元性物質投入部10]
ダイオキシン類等の難分解性物質含有水は、まず、投入タンク11に入れられる。この投入タンク11には、図示しないポンプを介して還元性物質供給部12より重亜硫酸ナトリウムが添加されることにより、原水中の遊離塩素が中和される。また、投入タンク11内で原水と重亜硫酸ナトリウムは攪拌手段により混合され、また、原水の残留塩素濃度は、図示しない塩素濃度計により測定される。
【0091】
[膜濃縮処理部20]
重亜硫酸ナトリウムにより中和された難分解性物質含有水は、プレフィルター21を通過することにより懸濁物質等を除去することができる。そして、プレフィルター21を通過した水は、図示しないポンプを介して逆浸透膜22に送られ、当該逆浸透膜22で膜処理される。そして、当該逆浸透膜22を通過した透過水と膜を通過しなかった液分(濃縮物)に分けられることになる。
このうち、逆浸透膜22を通過した透過水は、難分解性物質の含有量が排出基準値(10pg−TEQ/L)以下であれば、外部に排出することができる。また、後述する膜濾過処理部40の逆洗水タンク42に蓄え、限外濾過膜41を逆洗するための逆洗水として使用することができる。
【0092】
また、図3に示されるように、逆浸透膜22を通過しなかった液分(濃縮物)については、プレフィルター21を通過した後の難分解性物質含有水に混合するようにして、再度逆浸透膜処理を行う。
このようにして、濃縮物は数回再送されるが、これによっても逆浸透膜22を通過しなかった濃縮物は、吸着剤添加・紫外線照射部30に配設される処理タンク31に送られていくことになる。
【0093】
[吸着剤添加部30]
吸着剤添加部30においては、処理タンク31に送られた液分(濃縮物)に対して、吸着剤供給部32から図示しないフィーダーを介して送られてくる吸着剤が添加される。処理タンク31内では、濃縮物の液分と吸着剤は攪拌手段により混合されることにより、液分中に残存している難分解性物質が、添加された吸着剤に効率よく吸着されることになる。
【0094】
また、吸着剤として二酸化チタンを用いた場合、液分中の難分解性物質を吸着剤に吸着させるのと同時に、UVランプ33により紫外線照射して、難分解性物質を光分解することもできる。この際、吸着剤である二酸化チタンが光触媒として機能し、難分解性物質の光分解を促進する。
【0095】
[膜濾過処理部40]
吸着剤が添加された液分(濃縮物)は、膜濾過処理部40で、図示しないポンプを介して限外濾過膜41により膜濾過処理が施される。また、限外濾過膜41による膜濾過処理を行う場合には、当該濾過膜41の逆洗を行うようにすれば、濾過能力の低下を防止することができる一方、かかる逆洗を行うにあっては、図3に示すように、膜濃縮処理部20で逆浸透膜22を通過した透過水を、逆洗を行う水(逆洗水)として用いてもよい。
そして、この逆洗水に対しては、逆洗水タンク42から図示しないポンプを介して、殺菌剤供給部43から次亜塩素酸ナトリウムを添加してもよい。
【0096】
限外濾過膜41による膜濾過処理により、吸着剤が添加された難分解性物質含有水の液分は透過水と濃縮物(逆洗液)とに分けられる。このうち、透過水は難分解性物質の含有量が排出基準値(10pg−TEQ/L)以下であれば、排出水として外部に排出することができる。
【0097】
[紫外線照射部50]
紫外線照射部50では、膜濾過処理部40における限外濾過膜41を通過しなかった濃縮物(逆洗液)を分解タンク51に送り出し、攪拌手段により攪拌しながら、紫外線ランプ53により紫外線照射して、難分解性物質を分解してもよい。この紫外線照射部50においては、紫外線による光分解の促進のために、促進剤供給部52から図示しないポンプを介して過酸化水素水を添加するようにしてもよい。
尚、本発明において、光分解を行うためには、吸着剤添加部30において添加される吸着剤が光触媒として機能する二酸化チタンであることが必要である。二酸化チタンを用いることによって、分解能の高い光分解処理が施されることになる。
【0098】
[凝集剤添加部60]
凝集剤添加部60においては、凝集槽61に送られた、限外濾過膜により濃縮され、必要に応じて光分解処理された難分解性物質を含有する濃縮物(逆洗水)に対し、凝集剤供給部62から図示しないフィーダーを介して送られてくる凝集剤が添加される。凝集槽61内では、濃縮物(逆洗水)の液分と凝集剤は攪拌手段により混合されることにより、液分中に残存している、吸着剤に吸着されている難分解性物質が、添加された凝集剤によって効率よく凝集され、沈降しやすくする。
【0099】
[固液分離部70]
固液分離部70では、凝集剤添加部60で凝集剤により凝集された難分解性物質を沈殿槽71中で沈降させ、上澄みと沈降物(スラリー)とに固液分離する。
沈降物が沈殿槽71の底部で固まらないように図示しない撹拌手段を設け、1rpm程度の緩やかな回転速度で撹拌する。
清澄な上澄みは、吸着剤添加部30の処理タンク31に返送されるか、排出基準値(10pg−TEQ/L)以下であれば排出することができる。
【0100】
[化学分解部80]
化学分解部80では、分解槽81に送られた、前記固液分離部70の沈降槽71の底部抜き出し口から抜き出した沈降物(スラリー)に、酸化剤供給部82から過酸化物を添加し、撹拌手段により撹拌し、沈降物(スラリー)中の難分解性物質を化学分解する。
【0101】
化学分解終了後、清澄な上澄みは吸着剤添加部30の処理タンク31に返送されるか、排出基準値(10pg−TEQ/L)以下であれば排出することができる。
【0102】
一方、固体分(排出固体)は、産業廃棄物の排出基準を満たしていることを確認して産業廃棄物として処分することもできるし、吸着剤として再利用することもできる。
【0103】
上記の(A)逆浸透膜処理工程及び(C)膜濾過工程で生じる透過水については、上述したように、逆洗水として利用したり、(B)吸着処理工程等に返送する他、排出基準値(10pg−TEQ/L)以下であれば排出水として外部へ排出することができる。外部への排出とは、通常、河川等に放流することを意味する。
【0104】
ところで、原水中の難分解性物質濃度が変動した場合、排水処理を施した後の排出水の出口濃度もこれに連動して変動し、排出基準値を超える濃度で難分解性物質を含有する排出水が放流されてしまう可能性がある。しかしながら、排出水中のダイオキシン等の難分解性物質濃度を測定するには、公定法で約1ヶ月、簡易法で約2週間を要し、その間、排出水を貯留しておくことは現実的に不可能である。
【0105】
そこで、本発明おいては、原水中の難分解性物質濃度が変動した場合においても、排出水中の難分解性物質濃度を安定して排出基準値以下とするため、透過水について、複数回の(C)膜濾過処理工程を行うことが好ましい。また、透過水に対して吸着剤を添加した後、さらに(C)膜濾過処理工程を行うことが好ましい。
本発明者らの実験によれば、2回以上の膜濾過処理によって、安定して排出基準値(10pg−TEQ/L)以下になるだけでなく、環境基準値(1pg−TEQ/L)以下となることをも確認した。下記表1に2回の膜濾過処理を行った場合の、透過水中のダイオキシンの濃度変化及びダイオキシンの除去率(%)を示す。
【0106】
【表1】

【0107】
複数回の(C)膜濾過処理工程を含む汚染水処理システムの実施態様を図4及び5に示す。
【0108】
例えば、図4(a)の実施態様では、難分解性物質含有水(原水)に吸着剤を添加し((B−1)吸着処理工程)、膜濾過により濃縮物と透過水とに分離する((C−1)膜濾過処理工程)。濃縮物については、上述の(D)化学分解工程において処理される。透過水には、さらに吸着剤が添加された((B−2)吸着処理工程)後、再度膜濾過((C−2)膜濾過処理工程)を行い、濾過膜を透過しない濃縮物については(B−1)吸着処理工程に返送され、透過水は排出基準値以下となっているので、排出水として外部に出すことができる。
【0109】
図4(b)の実施態様では、(B)吸着処理工程が1回、(C)膜濾過処理工程が2回設けられており、より経済的なシステムとなる。
【0110】
図5は吸着剤添加前に難分解性物質含有水を膜濃縮処理(A)している。ここで用いる濾過膜は逆浸透膜又はナノフィルター膜であることが好ましい。
この初段の膜濃縮処理(A)の濃縮液は吸着剤を添加(B)した後に膜濾過処理(C)し、透過水と濃縮液を得る。濃縮液は化学分解工程(D)に送られる。
初段の膜濃縮処理(A)の透過水は図5(c)ではさらに吸着剤を加えて(B−2)、膜濾過処理(C−2)した後に排出水となる。この膜濾過処理(C−2)の濃縮液は初段の膜濃縮処理(A)の濃縮液と同じく吸着剤を添加(B)した後に膜濾過処理(C)される。
膜濾過処理(C−2)の透過水はさらに吸着剤を加えて(B−3)、膜濾過処理(C−3)した後に排出水となる。この膜濾過処理(C−3)の濃縮液は初段の膜濃縮処理(A)の濃縮液と同じく吸着剤を添加(B)した後に膜濾過処理(C)される。
【0111】
図5(d)の実施形態では、(A)膜濃縮処理工程が1回、(B)吸着処理工程が1回、(C)膜濾過処理工程が3回設けられており、図5(c)の実施形態の(B)吸着処理工程が3回に比べて、より経済的なシステムとなる。
【0112】
図5(e)の実施形態では、(A)膜濃縮処理工程が1回、(B)吸着処理工程が1回、(C)膜濾過工程が2回設けられており、図5(d)の実施形態の(C)膜濾過処理工程が3回に比べて、より経済的なシステムとなる。
【0113】
本発明の方法及び装置によれば、上記図3〜5に示されるように、(A)膜濃縮処理工程と膜濾過処理工程を複数回設けることによって、排出水中のダイオキシン類等の難分解性物質濃度を排出基準値以下までより安定して低下させることができる。
【0114】
さらに、本発明の方法及び装置によれば、汚染水中に含まれる難分解性物質を、濃縮、光分解及び化学分解を組み合わせて処理することにより、従来よりも安定して難分解性物質の濃度を低下させることができる。
【実施例】
【0115】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0116】
参考例1(図6参照)
(B)吸着処理工程
原水(ダイオキシン濃度 6500pg−TEQ/L)を滞留時間1時間の吸着槽に入れ、吸着剤として珪藻土を1000ppm添加し攪拌吸着させた。
【0117】
(C)膜濾過処理工程
上記の吸着剤が添加された水を限外濾過膜(中空糸型、分画分子量15万)で膜濾過処理し、限外濾過膜を通過しなかった液分の一部を吸着剤が添加された原水に添加(返送)して、0.3MPaの運転圧で完全濾過した。このときの透過水は2.5pg−TEQ/Lであり排出基準値以下(10pg−TEQ/L)であった。洗浄水として限外濾過膜透過水量の4倍量の透過水量で1分間逆洗し、この逆洗液を濃縮物(スラリー)とした。
【0118】
(D)化学分解工程
上記工程(C)で得られた濃縮物に、濃度10質量%になるように過硫酸ナトリウムを添加し、70℃で7時間反応させた。反応後の分解物中の固体のダイオキシン濃度は1,000pg−TEQ/gであり、排出基準値(3,000pg−TEQ/g)以下であった。
【0119】
参考例2(図7参照)
(A)膜濃縮処理工程
原水(ダイオキシン濃度 6,500pg−TEQ/L)を逆浸透膜(スパイラル型、塩化ナトリウム阻止率95%)で濾過した。この逆浸透膜を通過しなかった液分(濃縮水)の一部を、原水に添加(返送)して1MPa以上の運転圧で濾過した。処理量の2/3を透過水とした。このときの透過水のダイオキシン濃度は、1pg−TEQ/Lであり排出基準値(10pg−TEQ/L)以下であった。
【0120】
(B)吸着処理工程
上記工程(A)で得られた処理量の1/3の濃縮水は、参考例1と同様に、滞留時間1時間の吸着槽に入れ、吸着剤として活性白土2,000ppmを添加し攪拌吸着させた。
【0121】
(C)膜濾過処理工程
この吸着剤が添加された濃縮水を、限外濾過膜(中空糸型、1万分画)で膜濾過処理した。限外濾過膜を通過しなかった液分(濃縮物)の一部を、上記工程(B)で得られた吸着剤が添加された濃縮水に添加(返送)して0.3MPaの運転圧で濾過した。限外濾過膜を通過した透過水のダイオキシン濃度は1.8pg−TEQ/Lで排出基準値以下(10pg−TEQ/L)であった。尚、工程(C)で得られた濃縮物の一部を、工程(B)の吸着槽に返送してもよい。
上記工程(A)で得られた逆浸透膜透過水と上記工程(C)で得られた限外濾過膜透過水を合わせて排出水とした(ダイオキシン濃度は1.3pg−TEQ/L)。
(G)逆洗工程
上記工程(C)で限外濾過膜に付着した固形分(濃縮物)を、膜濃縮処理工程の透過水を用いて、限外濾過膜透過水量の4倍量の透過水量で1分間逆洗し、この逆洗液を濃縮物とした。
【0122】
(D)化学分解工程
上記工程(G)で得られた濃縮物に、濃度10質量%となるように過硫酸ナトリウムを添加し、参考例1と同様に、70℃で7時間反応させた。反応後の分解物中の固体のダイオキシン濃度は950pg−TEQ/gであり、排出基準値以下(3,000pg−TEQ/g)であった。
【0123】
参考例3(図8参照)
(E)塩素中和工程及び(A)膜濃縮処理工程
原水(ダイオキシン濃度 6,500pg−TEQ/L、遊離塩素濃度 50mg/L)に対して、重亜硫酸ナトリウムを、遊離塩素の3倍量である150mg/Lになるように添加し、撹拌した。これを逆浸透膜(スパイラル型、塩化ナトリウム阻止率95%)で濾過した。この逆浸透膜を通過しなかった液分(濃縮水)の一部を、重亜硫酸ナトリウムを添加した原水に添加(返送)して1MPa以上の運転圧で濾過した。処理量の2/3を透過水とした。このときの透過水のダイオキシン濃度は、1.1pg−TEQ/Lで排出基準値(10pg−TEQ/L)以下であった。
【0124】
(B)吸着処理工程
上記工程(A)で得られた処理量の1/3の濃縮水は、参考例1と同様に、滞留時間1時間の吸着槽に入れ、吸着剤として活性白土を2,000ppm添加し攪拌吸着させた。
【0125】
(C)膜濾過処理工程
吸着剤が添加された濃縮水を、限外濾過膜(中空糸型、1万分画)で限外濾過した。限外濾過膜を通過しなかった液分(濃縮物)の一部を、吸着剤が添加された濃縮水に添加(返送)して0.1MPaの運転圧で濾過した。限外濾過膜を通過した透過水のダイオキシン濃度は1.7pg−TEQ/Lであり、排出基準値(10pg−TEQ/L)以下であった。
上記工程(A)で得られた逆浸透膜透過水と上記工程(C)で得られた限外濾過膜透過水を合わせて排出水とした(ダイオキシン濃度は1.3pg−TEQ/L)。
【0126】
(G)逆洗工程
上記工程(C)で限外濾過膜に付着した固形分(濃縮物)を、膜濃縮処理工程の透過水を用いて、限外濾過透過水量の4倍量の透過水量で1分間逆洗し、この逆洗液を濃縮物とした。
【0127】
(D)化学分解工程
上記工程(G)で得られた濃縮物に、濃度10質量%となるように過硫酸ナトリウムを添加し、参考例1と同様に、70℃で7時間反応させた。反応後の分解物中の固体のダイオキシン濃度は、970pg−TEQ/gであり排出基準値(3,000pg−TEQ/g)以下であった。
以上より、膜を劣化させる原因となる遊離塩素を重亜硫酸ナトリウムにより中和する処理が、化学分解反応に影響を及ぼさないことを確認した。
【0128】
参考例4(図9参照)
(E)塩素中和工程及び(A)膜濃縮処理工程
原水(ダイオキシン濃度 6,500pg−TEQ/L、遊離塩素濃度50mg/L)に対して、重亜硫酸ナトリウムを、遊離塩素の3倍量である150mg/Lになるように添加し、撹拌した。逆浸透膜(スパイラル型、塩化ナトリウム阻止率95%)で、逆浸透膜を通過しなかった液分(濃縮水)の一部を重亜硫酸ナトリウムを添加した原水に添加(返送)して、1.5MPa以上の運転圧で濾過した。処理量の2/3を透過水とした。このときの透過水のダイオキシン濃度は1.1pg−TEQ/Lであり、排出基準値(10pg−TEQ/L)以下であった。処理量の1/3となった濃縮水のダイオキシン濃度は、20,000pg−TEQ/Lであった。
【0129】
(B)吸着処理工程及び(F)光分解工程
上記工程(A)で得られた濃縮水を、滞留時間1時間の吸着槽に入れ、吸着剤として二酸化チタンを15ppm添加し攪拌吸着させながら、紫外線(波長254nm)を照射した。光分解処理後の濃縮水のダイオキシン濃度は、6,000pg−TEQ/Lであった。
【0130】
(C)膜濾過処理工程
吸着剤が添加され、紫外線照射した後の濃縮水を、限外濾過膜(中空糸型、1万分画)で膜濾過処理した。限外濾過膜を通過しなかった液分(濃縮物)の一部を、吸着剤が添加され、光分解処理が施された後の濃縮水に添加(返送)して、0.3MPaの運転圧で濾過した。限外濾過膜を通過した透過水のダイオキシン濃度は1.2pg−TEQ/Lであり、排出基準値(10pg−TEQ/L)以下であった。
【0131】
(G)逆洗工程
上記工程(C)で限外濾過膜に付着した固形分(濃縮物)を、膜濃縮処理工程の透過水を用いて、限外濾過透過水量の4倍量の透過水量で1分間逆洗し、この逆洗液を濃縮物(スラリー)とした。
(D)化学分解工程
上記工程(G)で得られた濃縮物に、濃度10質量%となるように過硫酸ナトリウムを添加し、参考例1と同様に、70℃で7時間反応させた。反応後の分解物中の固体のダイオキシン濃度は900pg−TEQ/gであり、排出基準値(3,000pg−TEQ/g)以下であった。
以上より、逆浸透膜を通過しなかった濃縮液に二酸化チタンを添加して紫外線照射を行なうことにより当該濃縮物を分解できることがわかった。
【0132】
参考例5(図10参照)
工程(G)までは、参考例4と同様に処理を行い、続けて下記工程を実施した。
(F−2)第二光分解工程
上記工程(G)で得られた濃縮物(逆洗水:ダイオキシン濃度 15,000pg-TEQ/L)に対して、紫外線照射(波長254nm)を24時間行なったところ、紫外線照射後のダイオキシン濃度は750pg−TEQ/Lであった。
【0133】
(D)化学分解工程
上記工程(G)で得られた濃縮物(スラリー)に、濃度10質量%となるように過硫酸ナトリウムを添加し、参考例1と同様に、70℃で7時間反応させた。反応後の分解物中の固体のダイオキシン濃度は850pg−TEQ/gであり、排出基準値(3,000pg−TEQ/g)以下であった。
これにより、限外濾過膜を通過しなかった濃縮物に対して、紫外線照射を行なうことにより当該濃縮物を分解できることが分かった。
【0134】
参考例6(図11参照)
(H)凝集分離工程
参考例5の工程(G)で得られた濃縮物(スラリー)に対して、無機系凝集剤であるポリ塩化アルミニウムを1,000ppm添加し、撹拌した。12時間後、沈降物を10質量%濃度のスラリー濃縮物として抜き出した。
【0135】
(D)化学分解工程
上記工程(H)で得られたスラリー濃縮物に、過硫酸ナトリウムを20質量%になるように添加し、90℃で24時間反応させた。反応後のダイオキシン濃度は550pg-TEQ/gであり、排出基準値(3,000pg−TEQ/g)以下であった。
【0136】
実施例7(多重濾過の例)(図12参照)
(B)吸着処理工程、(C)膜濾過処理工程及び(D)化学分解工程については、参考例1と同様に実施し、工程(C)で得られた透過水をさらに下記のように処理した。
(C−2)第2膜濾過処理工程
参考例1の原水(ダイオキシン濃度 6,500pg−TEQ/L)から(C)膜濾過処理工程で得られた透過水を、滞留時間1時間の吸着槽に入れ、吸着剤として珪藻土を100ppm添加し攪拌吸着させた。この吸着剤が添加された透過水を、限外濾過膜(中空糸型、分画分子量15万)で膜濾過((C−2)膜濾過処理工程)した。限外濾過膜を通過しなかった液分(濃縮物)の一部を工程(C)の限外濾過膜を透過し、吸着剤が添加された透過水に添加(返送)して、0.2MPaの運転圧で濾過した。このときの透過水のダイオキシン濃度は1pg−TEQ/L以下であり、環境基準値(1pg−TEQ/L)以下であった。
【0137】
工程(C−2)で得られた限外濾過膜の濃縮液は、参考例1の(C)膜濾過処理工程前の吸着槽にも返送したが、処理水(排出水)及び化学分解物のダイオキシン濃度に変化はなかった。
【0138】
実施例8(多重濾過の例)(図13参照)
(B)吸着処理工程、(C)膜濾過処理工程及び(D)化学分解工程については、参考例1と同様に実施し、工程(C)で得られた透過水をさらに下記のように処理した。
(C−2)第2膜濾過処理工程
参考例1の原水(ダイオキシン濃度 6,500pg−TEQ/L)から(C)膜濾過処理工程で得られた透過水を、限外濾過膜(中空糸型、分画分子量3,000)で濾過した。限外濾過膜を通過しなかった液分(濃縮物)の一部を(C−1)膜濾過処理工程で得られる透過水に添加(返送)して、0.2MPaの運転圧で濾過した。このときの透過水中のダイオキシン濃度は1pg−TEQ/L以下であり、環境基準値(1pg−TEQ/L)以下であった。
工程(C−2)で得られた限外濾過膜の濃縮物は、参考例1の(C)膜濾過処理工程前の吸着槽に返送したが、処理水(排出水)及び化学分解物のダイオキシン濃度に変化はなかった。
【0139】
実施例9(多重濾過の例)(図13参照)
(B)吸着処理工程、(C)膜濾過処理工程及び(D)化学分解工程については、参考例1と同様に実施し、工程(C)で得られた透過水をさらに下記のように処理した。
(C−2)第2膜濾過処理工程
参考例1の(C)膜濾過処理工程で得られた透過水を、ナノフィルター膜(中空糸型、塩化ナトリウム阻止率30%)で濾過した。ナノフィルター膜を通過しなかった液分(濃縮物)の一部を(C)膜濾過処理工程で得られる透過水に添加(返送)して、0.5MPaの運転圧で濾過した。このときの透過水中のダイオキシン濃度は1pg−TEQ/L以下であり、環境基準値(1pg−TEQ/L)以下であった。
工程(C−2)で得られたナノフィルター膜の濃縮物は、参考例1の(C)膜濾過処理工程前の吸着槽に返送したが、処理水(排出水)及び化学分解物のダイオキシン濃度に変化はなかった。
【0140】
参考例7(多段濾過の例)(図14参照)
(A)膜濃縮処理工程、(B)吸着処理工程、(C)膜濾過処理工程及び(D)化学分解工程については、参考例2と同様に実施し、工程(A)及び工程(C)で得られた透過水をさらに下記のように処理した。
【0141】
(1)工程(A)で得られた透過水に対する(B−2)第2吸着処理工程及び(C−2)第2膜濾過処理工程
参考例2の(A)膜濃縮処理工程で得られた透過水を、滞留時間1時間の吸着槽に入れ、吸着剤として活性白土を100ppm添加し攪拌吸着させた。この吸着剤が添加された透過水を、限外濾過膜(中空糸型、分画分子量15万)で濾過した。限外濾過膜を通過しなかった液分(濃縮物)の一部を吸着剤が添加された工程(B−2)からの透過水に添加(返送)して、0.2MPaの運転圧で濾過した。この透過水中のダイオキシン濃度は1pg−TEQ/L以下であり、環境基準値(1pg−TEQ/L)以下であった。
【0142】
(2)工程(C)で得られた透過水に対する(B−3)第3吸着処理工程及び(C−3)第3膜濾過処理工程
参考例2の(C)膜濾過処理工程で得られた透過水を、滞留時間1時間の吸着槽に入れ、吸着剤として活性白土を1,000ppm添加し攪拌吸着させた。この吸着剤が添加された透過水を、限外濾過膜(中空糸型、分画分子量15万)で濾過した。限外濾過膜を通過しなかった液分(濃縮物)の一部を、吸着剤が添加された工程(B−3)からの透過水に添加(返送)して、0.3MPaの運転圧で濾過した。この透過水のダイオキシン濃度は1pg−TEQ/Lであり、環境基準値(1pg−TEQ/L)以下であった。
いずれの濃縮物も、(B)吸着処理工程の吸着槽に返送したが、処理水(排出水)及び化学分解物のダイオキシン濃度に変化はなかった。
【0143】
参考例8(多重濾過の例)(図15参照)
(A)膜濃縮処理工程、(B)吸着処理工程、(C)膜濾過処理工程及び(D)化学分解工程については、参考例2と同様に実施し、工程(A)及び工程(C)で得られた透過水をさらに下記のように処理した。
【0144】
(1)工程(A)で得られた透過水に対する(C−2)第2膜濾過処理工程
参考例2の工程(A)で得られた透過水を、逆浸透膜(スパイラル型、塩化ナトリウム阻止率95%)で濾過した。この逆浸透膜を透過しなかった液分(濃縮物)の一部を工程(A)からの透過水に添加(返送)して1MPa以上で運転した。透過水のダイオキシン濃度は1pg−TEQ/L以下であり、環境基準値(1pg−TEQ/L)以下であった。
【0145】
(2)工程(C)で得られた透過水に対する(C−3)第3膜濾過処理工程
参考例2の工程(C)で得られた透過水を、ナノフィルター膜(中空糸型、塩化ナトリウム阻止率30%)で濾過した。ナノフィルター膜を透過しなかった液分(濃縮物)の一部を工程(C)で得られた透過水に添加(返送)して、0.6MPaの運転圧で濾過した。このときの透過水のダイオキシン濃度は1pg−TEQ/L以下であり、環境基準値(1pg−TEQ/L)以下であった。
上記工程(C−2)で得られた濃縮物及び上記工程(C−3)で得られた濃縮物は、工程(B)の吸着槽へ返送したが、処理水(排出水)及び化学分解物のダイオキシン濃度に変化はなかった。
【0146】
参考例9(多重濾過の例)(図16参照)
(A)膜濃縮処理工程、(B)吸着処理工程、(C)膜濾過処理工程及び(D)化学分解工程については、参考例2と同様に実施し、工程(A)及び工程(C)で得られた透過水をさらに下記のように処理した。
【0147】
工程(A)で得られた透過水及び工程(C)で得られた透過水に対する(C−2)第2膜濾過処理工程
参考例2の工程(A)で得られた透過水と工程(C)で得られた透過水とを合わせた排水(ダイオキシン濃度 1.2pg−TEQ/L)をナノフィルター膜(中空糸型、塩化ナトリウム阻止率30%)で濾過した。ナノフィルター膜を透過しなかった液分(濃縮物)の一部を、上記工程(A)及び(C)で得られた透過水に合わせた排出水に添加(返送)して、0.5MPaの運転圧で濾過した。このときの透過水のダイオキシン濃度は1pg−TEQ/L以下であり環境基準値(1pg−TEQ/L)以下であった。
工程(C−2)で得られた濃縮物は、工程(B)の吸着槽へ戻したが、処理水(排出水)及び化学分解物のダイオキシン濃度に変化はなかった。
【0148】
実施例13
図3に示した処理装置を用いて、ダイオキシン類を含有する汚染水の無害化処理を行った。
(A)膜濃縮処理工程((E)塩素中和工程及び(I)プレ濾過工程を含む)
還元性物質投入部10において、ダイオキシン類を含有する汚染水(ダイオキシン類濃度 6,300pg−TEQ/L、遊離塩素濃度 50mg/L)に対して、重亜硫酸ナトリウムを遊離塩素量の3倍量である150mg/Lになるように攪拌下添加した。
【0149】
この重亜硫酸ナトリウムを添加した汚染水(電気伝導度 3,000μS/cm)を、逆浸透膜処理部20において、プレフィルターを通過させて大きな懸濁物質を除去した後、脱塩率が95%以上の逆浸透膜にて膜処理を施した。尚、この逆浸透膜処理においては、逆浸透膜を透過しなかった液分の一部を、プレフィルターを通過した汚染水に対して合わせて再度逆浸透膜に供給したが、当該液分の電気伝導度を汚染水の3倍以下である9,000μS/cm以下に調整して運転した。透過水のダイオキシン類濃度は、1.9pg−TEQであり、排出基準値(10pg−TEQ/L)以下であった。
【0150】
(B)吸着処理工程及び(F−1)第一光分解工程
次に、逆浸透膜を通過しなかった液分(ダイオキシン類濃度 3,000pg−TEQ/L)に対して、吸着剤添加・紫外線照射部30において、光触媒として機能しうる吸着剤である二酸化チタンを10ppm添加し、撹拌混合した後、波長254nmの紫外線を照射してダイオキシン類を光分解した。このときの液分中のダイオキシン類の濃度は、1,200pg−TEQ/Lであり、60%が光分解されたことがわかる。
【0151】
(C)膜濾過処理工程((G)逆洗工程を含む)
上記光分解後の液分を、膜濾過処理部40において、分画分子量15万の限外濾過膜を通過させることにより膜濾過処理した。尚、この限外濾過膜による膜濾過処理においては、前記した(A)逆浸透膜処理による処理により得られた透過水に対して次亜塩素酸を3ppm添加したものを逆洗水として、60分に1回、限外濾過膜透過水量の4倍量の水で限外濾過膜を洗浄するようにした。限外濾過膜を通過した透過水のダイオキシン類濃度は、0.65pg−TEQ/Lと排出基準値(10pg−TEQ/L)以下であった。
そして、逆浸透膜透過水と限外濾過膜透過水は合わせて、排出水とした(ダイオキシン類濃度は1.5pg−TEQ/L)。
【0152】
(F−2)第二光分解工程
膜濾過処理によって得られた濃縮物(逆洗水)は、紫外線照射部50に移送され、光分解の促進剤である過酸化水素を100ppm添加して、再度、波長254nmの紫外線を照射してダイオキシン類を光分解した。このときの液分中のダイオキシン類の濃度は、120pg−TEQ/Lであり、90%が光分解されたことがわかる。
【0153】
(H)凝集分離工程
光分解後の濃縮物は、凝集剤添加部60において、凝集剤としてポリ塩化アルミニウムを1,000ppm添加し、緩やかに撹拌して、ダイオキシン類を吸着した吸着剤を十分に凝集させた後、沈降物が底部で固まらないように1rpmの回転速度で撹拌しながら、18時間凝集物を沈降させた。清澄な上澄みは、吸着剤添加・紫外線照射部30に返送した。
【0154】
(D)化学分解工程
沈降物は、化学分解処理部80において、過酸化物として粉末状の過硫酸ナトリウムを4g(ダイオキシン類に対して100倍モル)添加して、水で全容が40mLとなるようにした後、温度を70℃として24時間、撹拌状態で加熱することにより化学分解処理を行った。化学分解終了後、分解物を静置して固液分離した。
上澄みのダイオキシン類濃度は、32pg−TEQ/Lであった。この上澄みは、20%水酸化ナトリウム水溶液により中和して、吸着剤添加・紫外線照射部30に返送した。
化学分解後の濃縮物(固形物)のダイオキシン類量は、270pg−TEQ/gであり、産業廃棄物の排出基準値(3,000pg−TEQ/g)以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の方法は、例えば、工業排水、土壌浸出水、焼却炉解体工事等で発生する洗浄排水等やその濃縮物等に含まれるダイオキシン類、PCB類等の難分解性有機化合物を化学分解して無害化することができ、かつ、排出水中の難分解性物質の濃度を安定して排出基準値以下とすることができる処理方法として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0156】
1 処理装置
10 還元性物質投入部
11 投入タンク
12 還元性物質供給部
20 膜濃縮処理部
21 プレフィルター
22 逆浸透膜
30 吸着剤添加・紫外線照射部
31 処理タンク
32 吸着剤添加部
33 紫外線ランプ
40 膜濾過処理部
41 限外濾過膜
42 逆洗水タンク
43 殺菌剤供給部
50 紫外線照射部
51 分解タンク
52 促進剤供給部
53 紫外線ランプ
60 凝集剤添加部
61 凝集槽
62 凝集剤供給部
70 固液分離部
71 沈降槽
80 化学分解処理部
81 分解槽
82 酸化剤供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化ジベンゾジオキシン類、ハロゲン化ジベンゾフラン類、及びオルト位以外に塩素原子が置換したコプラナーPCB類を含むPCB類からなる群から選択される難分解性物質を含有する水(処理原水)に、吸着剤として、二酸化チタン及び/又は珪藻土を、1〜1000ppmとなるように添加するための吸着剤添加部、
該難分解性物質を吸着した吸着剤を含む水を、限外濾過膜(UF膜)、ナノフィルター膜(NF膜)、精密濾過膜(MF膜)及び逆浸透膜(RO膜)からなる群から選択される濾過膜を用いて、難分解性物質を吸着した吸着剤を含まない透過水を分離するための第1の膜濾過処理部、
該濾過膜を逆洗して難分解性物質を吸着した吸着剤が濃縮された水を得るための逆洗処理部、
該難分解性物質を吸着した吸着剤が濃縮された水に過酸化物を添加して難分解性物質を酸化分解するための化学分解部
を備え、さらに
前記第1の膜濾過処理部で分離された透過水を、逆浸透膜又はナノフィルターを用いて、難分解性物質が濃縮された水と透過水に分離するための第2の膜濾過処理部、及び
前記第2の膜濾過処理部で分離された難分解性物質が濃縮された水を前記吸着剤添加部に返送するための返送部
を備える難分解性物質含有水の処理装置。
【請求項2】
前記吸着剤添加部の前に、前記難分解性物質を含有する水(処理原水)に、前記難分解性物質含有水中の塩素を中和する還元性物質を投入するための還元性物質投入部をさらに備える請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記吸着剤添加部の前に、前記難分解性物質を含有する水(処理原水)又は前記還元性物質投入部で得られた前記還元性物質が投入された難分解性物質含有水から、逆浸透膜(RO膜)又はナノフィルター膜(NF膜)を用いて難分解性物質が濃縮された水と透過水を分離するための膜濃縮処理部をさらに備える請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記逆洗処理部で得られた前記難分解性物質を吸着した吸着剤が濃縮された水に凝集剤を添加し、前記難分解性物質を吸着した吸着剤を凝集させるための凝集剤添加部と凝集剤添加部で得られた凝集剤によって凝集された難分解性物質を吸着した吸着剤を沈降させて沈降物と上澄みを固液分離するための固液分離部をさらに備える請求項1〜3のいずれかに記載の処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−45550(P2012−45550A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258592(P2011−258592)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【分割の表示】特願2005−7274(P2005−7274)の分割
【原出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】