難加工性金属材料を多軸鍛造処理する方法、それを実施する装置、および金属材料
【課題】従来の降温多軸鍛造処理法に比べて、産業レベルでの適用により適したより簡便な工程で、難加工性材料に多量の歪みを導入することの可能な加工方法を提供する。
【解決手段】難加工性金属材料を多軸鍛造処理する方法であって、(a)難加工性金属材料からなる被加工体を準備するステップと、(b)前記被加工体を、相互に直交する3つの鍛造方向に沿って順次鍛造する処理を、1サイクル以上実施するステップと、を有し、前記ステップ(b)は、最大100℃以下の温度環境において、各1回の鍛造で導入される歪み量が0.01〜0.2の範囲となるように行われることを特徴とする方法。
【解決手段】難加工性金属材料を多軸鍛造処理する方法であって、(a)難加工性金属材料からなる被加工体を準備するステップと、(b)前記被加工体を、相互に直交する3つの鍛造方向に沿って順次鍛造する処理を、1サイクル以上実施するステップと、を有し、前記ステップ(b)は、最大100℃以下の温度環境において、各1回の鍛造で導入される歪み量が0.01〜0.2の範囲となるように行われることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難加工性金属材料の鍛造方法に関し、特に、難加工性金属材料の多軸鍛造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、例えばマグネシウム合金のような難加工性金属材料に、圧延処理または鍛造処理などの一般的な加工処理を適用すると、容易にワレや欠陥が生じてしまうことが知られている。従って、難加工性金属材料は、加工硬化処理による大きな強度向上効果を期待することは難しく、このため、難加工性金属材料の適用分野は、強度があまり重要視されない、特定の分野に限定されているのが現状である。例えば、マグネシウム合金は、アルミニウム合金を超える比強度を有するにも関わらず、その適用分野は、小型電子機器用の部品など、限られた一部の用途に留まっている。
【0003】
このような問題に対処するため、近年、降温多軸鍛造処理と呼ばれる鍛造方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−291488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の降温多軸鍛造処理方法では、鍛造の1パス毎に、鍛造方向を変えるとともに、被加工体の温度を低下させることにより、最終的に被加工体に多くの歪みを導入することができる。従って、難加工性金属材料からなる被加工体に降温多軸鍛造処理を適用した場合、結晶粒が微細化し、強度を向上させることができると予想される。
【0006】
しかしながら、このような降温多軸鍛造処理方法では、被加工体の温度、各鍛造パス時の導入歪み量など、加工の際に制御すべき条件が多岐にわたり、操作が煩雑で大変であるという問題がある。また、処理の際には、雰囲気の温度を高精度で調節することの可能な高温用の電気炉が必要になるという問題がある。従って、降温多軸鍛造処理方法は、製品の大量生産や低コスト化が必要となるような、産業レベルでの適用には不向きである。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、従来の降温多軸鍛造処理方法に比べて、産業レベルでの適用により適したより簡便な工程で、難加工性材料に多量の歪みを導入することの可能な加工方法を提供することを目的とする。また、そのような方法を実施するための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、難加工性金属材料を多軸鍛造処理する方法であって、
(a)難加工性金属材料からなる被加工体を準備するステップと、
(b)前記被加工体を、相互に直交する3つの鍛造方向に沿って順次鍛造する処理を、1サイクル以上実施するステップと、
を有し、
前記ステップ(b)は、最大100℃以下の温度環境において、各1回の鍛造で導入される歪み量が0.01〜0.2の範囲となるように行われることを特徴とする方法が提供される。
【0009】
ここで、本発明による方法において、前記ステップ(b)は、室温の環境下で実施されても良い。
【0010】
また、本発明による方法において、前記ステップ(b)は、2サイクル〜40サイクル実施されても良い。
【0011】
また、本発明による方法では、前記ステップ(b)において、1回の鍛造は、3×10−3/sec〜10/secの範囲の歪み速度で実施されても良い。
【0012】
また、本発明による方法において、前記ステップ(b)は、前記被加工体に、0.5〜6.4の範囲の総歪み量が導入されるまで繰り返されても良い。
【0013】
また、本発明による方法において、前記難加工性金属材料は、マグネシウム合金、チタン合金および銅合金からなる群中から選定された材料であっても良い。
【0014】
また、本発明による方法は、さらに、前記ステップ(b)の後、
(c)前記被加工体を時効処理するステップ
を有しても良い。
【0015】
この場合、前記時効処理するステップは、
前記被加工体を、373K〜473Kの温度範囲で時効処理するステップを有しても良い。
【0016】
また、本発明では、難加工性金属材料を多軸鍛造処理する装置であって、
前述のいずれかの方法を実施することの可能な装置が提供される。
【0017】
さらに、本発明では、難加工性金属材料を多軸鍛造処理する装置であって、
難加工性金属材料からなる被加工体を支持する台と、
一つの鍛造方向に沿って前記被加工体を鍛造する鍛造手段と、
前記被加工体の前記鍛造手段に対する配向方向を調整することの可能な、被加工体配向制御手段と、
を有し、
前記鍛造手段は、最大100℃以下の温度環境において、1回の鍛造で、前記一つの鍛造方向に沿って前記被加工体に、0.01〜0.2の範囲の歪み量を導入することができることを特徴とする装置が提供される。
【0018】
ここで、本発明による装置において、前記鍛造手段の前記一つの鍛造方向は、鉛直方向であって、
前記被加工体配向制御手段は、前記被加工体の鍛造される表面が上面となるように動作しても良い。
【0019】
また、本発明による装置において、前記被加工体配向制御手段は、1回の鍛造の後に、前記被加工体の前記台との接触面が前記被加工体の側面の一つとなり、前記被加工体の側面の一つが前記台との接触面となるように、前記被加工体を回転させても良い。
【0020】
さらに、本発明では、
組織内に、
少なくとも3つの異なる方向に延在する、幅が5μm以下の第1の変形双晶を複数含み、
少なくとも一つの前記第1の変形双晶の中には、より微細な第2の変形双晶が形成されていることを特徴とする金属材料が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、従来の降温多軸鍛造処理法に比べて、産業レベルでの適用により適したより簡便な工程で、難加工性材料に多量の歪みを導入することの可能な加工方法を提供することができる。また、そのような方法を実施するための装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】多軸鍛造処理法の一例を概略的に示した図である。
【図2】本発明による難加工性金属材料を多軸鍛造処理する方法のフローチャートの一例である。
【図3】本発明による方法によって得られた難加工性金属材料組織の一例を模式的に示した図である。
【図4】本発明による方法によって得られたマグネシウム合金の組織のTEM写真である。
【図5】本発明による方法を実施するための装置の一例を模式的に示した図である。
【図6】本発明による方法を実施するための装置を用いて、被加工体を鍛造する際の各工程を模式的に示した図である。
【図7】本発明による方法を実施するための装置を用いて、被加工体を鍛造する際の各工程を模式的に示した図である。
【図8】マグネシウム合金における累積歪み量Σεと真応力σ(MPa)の関係を示したグラフである。
【図9】各鍛造パス後のサンプルの光学顕微鏡写真を示した図である。
【図10】結晶方位分散分析装置による、4パス後のマグネシウム合金サンプルの組織観察結果を示した図である。
【図11】鍛造パス数とサンプルの硬度の関係を示した図である。
【図12】各サンプルにおける累積歪みΣεと硬度の関係を示したグラフである。
【図13】サンプルA1およびA2の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示したグラフである。
【図14】サンプルB1およびB2の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示したグラフである。
【図15】サンプルC1およびC2の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示したグラフである。
【図16】サンプルD0〜D3の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一般に、マグネシウム合金等の難加工性材料は、加工性が悪く、圧延処理または鍛造処理などの一般的な加工処理を施工すると、容易にワレや欠陥が生じてしまうことが知られている。従って、難加工性金属材料の場合、加工により多くの歪みを導入することはできず、加工硬化処理による大きな強度向上効果を期待することは難しいという問題がある。
【0024】
このため、近年、降温多軸鍛造処理と呼ばれる鍛造方法が提案されている。この方法では、鍛造の1パス毎に、鍛造方向が長手方向となるようにし、すなわち鍛造方向を相互に直交する3方向の順(例えば、X方向→Y方向→Z方向の順)に変化させるとともに、被加工体の温度を低下させる。この方法では、3方向の鍛造を繰り返すことにより、最終的に被加工体に多くの歪みを導入することができる。従って、難加工性金属材料からなる被加工体に降温多軸鍛造処理を適用した場合、結晶粒が微細化し、材料強度を向上させることができると考えられる。
【0025】
しかしながら、このような降温多軸鍛造処理では、被加工体の温度、各鍛造パス時の導入歪み量など、加工の際に制御すべき条件が多岐にわたり、操作が煩雑で大変であるという問題がある。また、処理の際には、雰囲気の温度を高精度で調節することの可能な高温用の電気炉が必要になるという問題がある。従って、降温多軸鍛造処理方法は、実験室レベルでの適用は可能であっても、製品の大量生産や低コスト化が必要となる、産業レベルでの適用には不向きである。
【0026】
これに対して、本願発明者らによって見出された新たな方法(本発明の方法)は、以下に詳細を示すように、制御すべき加工条件が少なく、より簡便に実施することができるという特徴を有する。また、本発明の方法は、室温近傍(最大でも100℃以下、例えば50℃)の温度で実施することができるため、高温の電気炉も不要である。従って、大量生産に適し、低コスト化も実現できるという特徴を有する。
【0027】
以下、図面を参照して、本発明について詳しく説明する。
【0028】
本発明は、難加工性金属材料を多軸鍛造処理する方法であって、
(a)難加工性金属材料からなる被加工体を準備するステップと、
(b)前記被加工体を、相互に直交する3つの鍛造方向に沿って順次鍛造する処理を、1サイクル以上実施するステップと、
を有し、
前記ステップ(b)は、最大100℃以下の温度環境において、各1回の鍛造で導入される歪み量が0.01〜0.2の範囲となるように行われることを特徴とする方法に関する。
【0029】
本発明による方法は、「多軸鍛造処理」を基本とするものである。ここで、「多軸鍛造処理」とは、1方向での鍛造処理毎に、長手方向が圧縮方向となるようにして、被加工材料の鍛造方向を変えて圧縮を繰り返す加工処理方法を意味する。
【0030】
図1は、多軸鍛造処理方法を概略的に説明する図である。まず最初に、図1(1)に示すような矩形状の被加工体(サンプル)4が準備される。次に、この被加工体4が第1の方向(X軸方向)に沿って鍛造される(第1回目のパス)。
【0031】
次に図1(2)に示すように、被加工体4が第2の方向(Y軸方向)に沿って鍛造される(第2回目のパス)。さらに、図1(3)に示すように、被加工体4が第3の方向(Z軸方向)に沿って鍛造される(第3回目のパス)。3回分のパスによって、被加工体4は、外観上、実質的に最初の形状に戻る(図1(4))。
【0032】
ここで、被加工体4のアスペクト比は、図1(1)〜(3)に示す各圧縮軸方向(X、YおよびZ方向)からの鍛造による圧縮率によって決まる。換言すれば、被加工体4のアスペクト比は、採用するパス毎の圧縮率によって変化させることができる。例えば、図1の例では、被加工体1のアスペクト比は、1.0(Z方向):1.49(Y方向):2.22(X方向)となっており、これは、各方向での1回のパスにおいて、被加工材料4に導入される加工歪み量εが、いずれも0.8の場合に相当する。鍛造毎の加工歪み量が0.01〜0.2の場合、このアスペクト比は必要ではないが、後の説明と理解が容易であるため、このアスペクト比を有する被加工体を利用する。ちなみに鍛造毎の加工ひずみが0.1の場合、アスペクト比は1.11:1.10:1.00となる。
【0033】
このような「多軸鍛造処理」方法では、各方向からの鍛造パスを順次繰り返すことにより、結果的に、被加工体4中に多量の歪みを導入することができる。
【0034】
ただし、前述のように、難加工性材料は、加工性が悪いため、難加工性材料に対して、1回のパスで大きな歪みを導入しようとすると、容易にワレや欠陥が生じてしまう。そこで、本発明では、各1回の鍛造(1パスとも言う)で導入される歪み量を少なくして、各方向の鍛造を実施することに特徴がある。具体的には、各1回の鍛造(1パスとも言う)で導入される歪み量は、0.01〜0.2の範囲である。そのため、本発明では、鍛造毎の加工歪み量が小さく、鍛造方向は必ずしも被加工体の長手方向である必要はない。
【0035】
これにより、難加工性金属材料であっても、多軸鍛造処理後に、被加工体にワレおよび/または欠陥が生じることを回避することができる。また、鍛造毎の加工ひずみが小さいため、結果として加工による集合組織の形成を防ぐことができ、加工性の低下を防ぐことができる。
【0036】
図2には、本発明による方法のフローの一例を模式的に示す。本発明による方法は、難加工性金属材料からなる被加工体を準備するステップ(S110)と、この被加工体を、相互に直交する3つの鍛造方向に沿って、順次鍛造する処理を、1サイクル以上実施するステップ(S120)と、を有する。また、本発明による方法は、さらに任意で、多軸鍛造処理された被加工体を時効処理するステップ(S130)を含んでも良い。また多軸鍛造するステップ(S120)と時効処理するステップ(S130)を繰り返しても良い。この場合、時効後の回復軟化による強度低下を加工硬化によって補うことができる。
【0037】
以下、各ステップについて、詳しく説明する。
【0038】
(1.被加工体を準備するステップ)
まず最初に、難加工性金属材料からなる被加工体が準備される。
【0039】
ここで、「難加工性金属材料」とは、室温での引張試験における破断伸びが40%以下の金属および合金を表す。「難加工性金属材料」には、例えば、マグネシウム合金、チタン合金、銅合金、鉄合金、ジルコニウム合金、モリブデン合金、およびニオブ合金などが含まれる。
【0040】
マグネシウム合金の一例は、AZ系マグネシウム合金(アルミニウムと亜鉛とを含むマグネシウム合金)、希土類元素添加マグネシウム合金、およびCa添加マグネシウム合金等である。
【0041】
チタン合金の一例は、アルミニウム添加チタン合金、スズ添加チタン合金、およびバナジウム添加チタン合金等である。
【0042】
銅合金の一例は、銅−チタン合金、およびニッケル−シリコン添加銅合金である。
【0043】
鉄合金の一例は、マルテンサイト相を含む鋼等である。
【0044】
被加工体の平均結晶粒径は、特に限られない。ただし、多軸鍛造処理後に、微細な結晶粒からなる材料組織を得るためには、平均結晶粒径が大きい被加工体ほど、多軸鍛造処理ステップにおいて、より多くの歪みを被加工体に導入する必要がある。
【0045】
(2.鍛造処理ステップ)
次に、前述の被加工体がX方向、Y方向、およびZ方向(図1参照)に沿って、順次鍛造処理される。
【0046】
本発明では、多軸鍛造処理は、室温近傍(最大でも100℃以下の温度)で実施される。従って、降温多軸鍛造処理方法において必要となる、高温の電気炉のような設備は不要であり、低コストかつ簡便な鍛造方法を提供することができる。なお、ここでの「温度」は、主として被加工体がさらされる環境側の温度を意味する。これは、被加工体の温度は、鍛造の実施によってある程度上昇するため、被加工体の温度で「温度」を規定すると、その値が曖昧になるためである。
【0047】
また前述のように、各方向における1パスの鍛造において、被加工体に導入される歪み量は、0.01〜0.2の範囲である。この値は、降温多軸鍛造処理方法において、1回のパスで被加工体に導入される典型的な歪み量、すなわち0.6〜0.8に比べて有意に小さい。これにより、難加工性金属材料であっても、多軸鍛造処理の後に、被加工体にワレおよび/または欠陥が生じることを回避することができる。
【0048】
なお、1回の鍛造パスにおいて導入される歪み量は、正確には、被加工体の材料等に依存する。例えば、被加工体がマグネシウム合金の場合、1回の鍛造パスにおいて導入される歪み量は、0.1〜0.2程度であることが好ましい。ただし、いずれの難加工性金属材料の場合も、歪み量は、最大でも0.2以内とされる。これを超える歪み量を一度に加えると、鍛造後にワレが生じる可能性が高まるからである。
【0049】
また、多軸鍛造処理によって被加工体に導入される総歪み量(Σε)は、被加工体を構成する材質にもよるが、1.0〜40程度であることが好ましい。
【0050】
また、本発明では、各パスでの歪み速度は、通常、3×10−3/sec〜10/secの範囲である。この歪み速度は、各パスにおいて実質的に一定であっても良い。
【0051】
また、X、YおよびZの各鍛造方向での1回ずつの鍛造を1サイクルとした場合、このサイクル数は、1サイクル以上であることが好ましく、2〜40サイクルの範囲であることがより好ましい。ここで、サイクル数は、整数に限られないことは、明らかであろう。すなわち、サイクル数は、整数+1/3または整数+2/3の値であっても良く、これらのサイクル数は、それぞれ、X方向→Y方向→Z方向→...の各鍛造がX方向での鍛造で完了する場合、およびY方向で完了する場合を意味する。また、この鍛造方向は、被加工体の状況や形状によって、途中でX方向→Z方向→Y方向のように変えても良い。
【0052】
(3.時効処理ステップ)
次に、必要な場合、被加工体に、さらに時効処理を行っても良い。時効処理の温度は、これに限られるものではないが、例えば、373K〜473Kの範囲である。また、時効処理の時間は、これに限られるものではないが、例えば、数分〜数時間の範囲である。時効処理は、例えば、オイルバス中で実施されても良い。
【0053】
以上の工程を経て、多量の歪みが導入された、難加工性金属材料からなる被加工体を得ることができる。
【0054】
このような方法で得られる難加工性金属材料の組織は、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察した場合、少なくとも3つの異なる方向に延在する、幅が5μm以下の1次変形双晶を多数含み、少なくとも一つの前記1次変形双晶の中には、より微細な2次変形双晶が形成されていると言う特徴を有する。
【0055】
ここで、変形双晶とは、ある面に平行な剪断変形によって形成された母相と同じ結晶構造を有する方位の異なる領域を意味する。また、1次変形双晶の「幅」とは、1次変形双晶の縦および横の寸法のうち、短い方の長さを意味する。この「幅」は、特に、1μm以下であることが好ましい。一方、1次変形双晶の長い方の長さ、すなわち全長は、特に限られないが、例えば、0.1μm〜数百μmの範囲であり、これは、変形前の結晶粒径に依存する。また、2次変形双晶の全長および幅は、特に限られないが、通常の場合、全長は、約0.2μm〜約数百μmの範囲であり、幅は、約0.1μm〜約50μmの範囲である。
【0056】
また、「変形双晶を多数含む」とは、TEM観察の際に、一視野(倍率:5000倍〜1万倍)において、組織内に少なくとも5個以上の変形双晶が認められることを意味する。なお、通常の場合、変形双晶は、少なくとも10個以上認められる場合が多いであろう。
【0057】
図3には、本発明による方法によって得られた難加工性金属材料組織の一例を模式的に示す。この図は、TEM装置による1万倍の倍率で得られたものである。
【0058】
図3に示すように、組織200内には、多数の1次変形双晶210が認められる。また、1次変形双晶210の少なくとも1つには、内部に2次変形双晶220が形成されていることがわかる。例えば、図3の例では、n次(ただしnは1以上)変形双晶210Aの内部に、複数の(n+1)次の高次変形双晶220Aが形成されており、n次変形双晶210Bの内部に、複数の(n+1)次の高次変形双晶220Bが形成されており、n次変形双晶210Cの内部に、複数の(n+1)次変形双晶220Cが形成されている。
【0059】
図4には、多軸鍛造処理後のマグネシウム合金の実際の組織のTEM写真(倍率1万倍)の一例を示す。このマグネシウム合金は、室温で、合計20パス(サイクル数6+2/3回)の多軸鍛造処理後に得られたものである。1回のパスでの導入される歪み量εは、0.1である。
【0060】
この組織写真から明らかなように、本発明による方法で調製されたマグネシウム合金の組織は、多くの1次変形双晶を有し、これらの1次変形双晶は、少なくとも3方向に延在している。また、いくつかの1次変形双晶内には、2次変形双晶が形成されていることが確認される。図10からもわかるとおり、一次変形双晶は非常に大きい。従って、図4のTEM写真の微細な変形双晶は、変形双晶内に形成された高次双晶変形の発達によるものであることが理解できる。
【0061】
このように、本発明による方法で処理された難加工性金属材料では、結晶粒が微細化され、多数の1次変形双晶および2次変形双晶が形成され、これにより、強度等の材料特性を向上させることができる。
【0062】
(本発明による装置)
次に、本発明による方法を実施するための装置について説明する。
【0063】
本発明による方法を実施するための装置は、少なくとも、
被加工体を支持する台と、
少なくとも一つの鍛造方向に沿って、前記被加工体を鍛造する鍛造手段と、
前記被加工体の前記鍛造手段に対する配向方向を調整することの可能な、被加工体配向制御手段と、
を有する。
【0064】
ただし、鍛造手段が、相互に垂直な3方向(X方向、Y方向およびZ方向)のそれぞれに沿って、被加工体を鍛造することが可能である場合、被加工体配向制御手段は、不要である。
【0065】
図5には、そのような本発明による方法を実施するための装置の一例を模式的に示す。この装置100は、被加工体110を支持する台120と、一つの鍛造方向(図の例では、Z方向)に沿って、被加工体110を鍛造する鍛造手段130と、被加工体110の鍛造手段130に対する配向方向を調整することの可能な、被加工体配向制御手段140とを有する。
【0066】
鍛造手段130は、図5のZ方向の1回のパスで、被加工体110に対して、0.01〜0.2の歪みを導入するように動作する。
【0067】
また、被加工体配向制御手段140は、この図の例では、X方向およびY方向に、4行×4列の16個の区画141A〜141Pを有する板状部材を有する。被加工体配向制御手段140は、台120に埋設されている。
【0068】
なお、通常の場合、装置100は、さらに、被加工体110が鍛造される際に、被加工体110の位置ずれを防止する固定部材等を有するが、そのような部材は、本発明に特有のものではないため、ここではその説明を省略する。
【0069】
次に、このような装置100の動作について説明する。図6および図7には、装置100を用いて、被加工体110に対して本発明による多軸鍛造処理方法を適用する際の各工程を模式的に示した図である。
【0070】
まず、図6(a)に示すように、図6のZ方向に沿って、鍛造手段130により、被加工体110の鍛造(第1パス)を行う。この段階では、被加工体110の底面110Aが台120(正確には、台120に埋設された被加工体配向制御手段140)と接触している。これにより、被加工体110は、図6(b)に示すような形状となる。
【0071】
次に、図6(c)に示すように、台120に埋設された被加工体配向制御手段140の区画141のうち、被加工体110の底面110Aの一部と接触する区画141(例えば区画141Fおよび141G)、およびこれと同じX座標にある区画141(例えば、区画141E、141H)が、Z方向に沿って緩やかに上昇する。
【0072】
これにより、図6(d)に示すように、被加工体110の底面110Aが点Q1を回転中心とした状態で持ち上げられる。最終的に、図6(e)に示すように、被加工体110がXZ平面において、半時計方向に90゜回転すると、被加工体110の当初の底面110Aは、YZ平面と平行な側面110Aとなる。また今度は、被加工体110の当初の側面110Bが、台120(正確には、台120に埋設された被加工体配向制御手段140)と接触する。ここで、必要な場合、区画141は、Y軸を回転軸として回転し、これにより被加工体を回転させても良い。
【0073】
図6(e)に示すように、この状態で、鍛造手段130により、Z方向に沿って、被加工体110の鍛造(第2パス)が行われる。
【0074】
これにより、被加工体110は、図7(a)に示すような形状となる。この段階では、被加工体110の側面110B(見た目上、被加工体110の新たな底面)が台120(正確には、台120に埋設された被加工体配向制御手段140)と接触している。
【0075】
次に、図7(b)に示すように、台120に埋設された被加工体配向制御手段140の区画141のうち、被加工体110の側面110Bの一部と接触する区画141(例えば区画141Fおよび141J)、およびこれと同じY座標にある区画141(例えば、区画141B、141N)が、Z方向に緩やかに上昇する。
【0076】
これにより、図7(c)に示すように、被加工体110の側面110Bが点Q2を回転中心とした状態で持ち上げられる。最終的に、図7(d)に示すように、被加工体110がYZ平面において、時計方向に90゜回転すると、被加工体110の側面110Bは、XZ平面と平行な新たな側面110Bとなる。また今度は、被加工体110のXZ平面と平行な側面110Cが、台120(正確には、台120に埋設された被加工体配向制御手段140)と接触するようになる。ここで、必要な場合、区画141は、X軸を回転軸として回転し、これにより被加工体を回転させても良い。
【0077】
図7(d)に示すように、この状態で、鍛造手段130により、Z方向に沿って、被加工体110の鍛造(第3パス)が行われる。
【0078】
以上の工程を繰り返すことにより、装置100により、被加工体110に対して、本発明による多軸鍛造処理方法を実施することができる。
【0079】
なお、図5に示した装置、および図6,図7に示した工程は、一例であって、別の構成の装置、および別の工程により、被加工体110に対して、本発明による方法を実施しても良いことは、明らかであろう。
【実施例】
【0080】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0081】
(実施例1)
表1に示す組成のAZ系のマグネシウム合金材料(大阪冨士工業株式会社製:AZ61)を準備した。合金材料の寸法は、縦(X方向)20mm×横(Y方向)20mm×高さ(Z方向)20mmである。平均結晶粒径は、約62μmであった。
【0082】
【表1】
次に、この合金材料を用いて、多軸鍛造処理を実施した。まず最初に、室温(300K)で、合金材料の第1の方向(X方向)に沿って、合金材料を鍛造した(第1パス)。第1パスにより導入される歪み量εは、0.1とした。次に、合金材料の第2の方向(Y方向)に沿って、合金材料を鍛造した(第2パス)。第2パスにより導入される歪み量εは、0.1とした。次に、合金材料の第3の方向(Z方向)に沿って、合金材料を鍛造した(第3パス)。第3パスにより導入される歪み量εは、0.1とした。以上のサイクルを1サイクルとし、合金材料を最大13サイクル鍛造した(総パス数は、39)。以上の多軸鍛造工程により、合金材料には、最大3.9の累積歪みΣεが導入された。各パスにおいて、歪み速度は、いずれも3×10−3/secとした。
【0083】
図8には、38パスまでの累積歪み量Σεと真応力σ(MPa)の関係を示した。
【0084】
次に、パス数が4回(サイクル数1+1/3)の合金材料サンプル(総歪み量0.4)と、パス数が38回(サイクル数12+2/3)の合金材料サンプル(総歪み量3.8)とを用いて、多軸鍛造処理後の組織の観察を行った。
【0085】
図9には、各サンプルの光学顕微鏡の写真を示す。図において、(a)は、鍛造前の組織を示している。また、(b)および(c)は、それぞれ、パス数が4回および38回のサンプルにおける組織を示している。
【0086】
図9の(a)および(b)の比較では、組織間に巨視的な差異は認められないが、図9の(c)では、結晶粒径が判別し難いほど、結晶が微細化していることがわかる。また、図10には、結晶方位分散分析装置を用いて、パス数が4回のサンプルの組織を観察した結果を示す。この図から、組織内には、変形双晶が多数形成されていること(右上の斜め方向に延在する灰色線状組織)、およびキンク帯(中央部の黒色線状部分)による結晶粒の分断が生じていることがわかる。従って、微視的には、パス数が4回のサンプルにおいても、鍛造前のサンプルに比べて、大きな組織変化が生じていると言える。すなわち、難加工材の一つであるMg合金に本発明を適用することにより、室温での巨大歪み加工が可能となった。また、その結果、変形双晶等の結晶粒微細化機構の働きにより、結晶粒が微細化した。
【0087】
図11には、累積歪み量Σεとサンプルの硬度Hvの関係を示す。この結果から、累積歪み量Σε、すなわち鍛造のパス数を増加させるほど、硬度が上昇する傾向にあることがわかる。特に、鍛造のパス数が40に近づき、累積歪み量Σεが4に近くになると、合金材料の硬度は、1200MPaという、マグネシウム合金としては異例の、極めて高い値に達することが予想される。
【0088】
(実施例2)
次に、以下の方法で、各種サンプルを調製し、マグネシウム合金材料の材料特性について評価した。
【0089】
(サンプルA群)
まず、前述の実施例1と同様の方法により、マグネシウム合金材料に対して多軸鍛造処理を実施し、パス数、すなわち累積歪みΣεが異なる多数のサンプルを調製した(以下、サンプルA群と称する)。多軸鍛造処理により、マグネシウム合金材料には、最大で2.0の累積歪みΣεが導入された。特に、累積歪みΣεが1.0のマグネシウム合金材料をサンプルA1と称し、累積歪みΣεが2.0のマグネシウム合金材料をサンプルA2と称する。
【0090】
(サンプルB群)
サンプルA2に対して、403Kで1時間の時効処理を行った。さらに、時効処理後に、再度、このサンプルに対して、多軸鍛造処理を行った。2回目の多軸鍛造処理は、1回目の多軸鍛造処理と同条件で実施した。これにより、2回目の多軸鍛造処理のパス数、すなわち累積歪みΣεが異なる多数のサンプルを調製した(以下、サンプルB群と称する)。特に、2回目の多軸鍛造処理での累積歪みΣεが0.2のマグネシウム合金材料をサンプルB2と称する。また、2回目の多軸鍛造処理を実施していないマグネシウム合金材料をサンプルB1と称する。
【0091】
(サンプルC群)
まず最初に時効処理を行ってから、各パス数の多軸鍛造処理を実施することにより、累積歪みΣεが異なる多数のサンプルを調製した(以下、サンプルC群と称する)。時効処理の条件は、403K、1時間である。
【0092】
多軸鍛造処理により、マグネシウム合金材料には、最大で1.7の累積歪みΣεが導入された。特に、累積歪みΣεが0.5のマグネシウム合金材料をサンプルC1と称し、累積歪みΣεが1.0のマグネシウム合金材料をサンプルC2と称し、累積歪みΣεが1.7のマグネシウム合金材料をC3と称する。
【0093】
(サンプルD群)
まずサンプルA群と同様の条件で、多軸鍛造処理を行い、1.0の累積歪みΣεを導入した。次に、このマグネシウム合金材料を時効処理した。時効処理の条件は、403K、1時間である。さらに、このマグネシウム合金材料に対して、2回目の多軸鍛造処理を行い、累積歪みΣεが異なる多数のサンプルを調製した(以下、サンプルD群と称する)。
【0094】
特に、2回目の多軸鍛造処理での累積歪みΣεが0.4のマグネシウム合金材料をサンプルD1と称し、2回目の多軸鍛造処理での累積歪みΣεが0.8のマグネシウム合金材料をサンプルD2と称し、2回目の多軸鍛造処理での累積歪みΣεが1.0のマグネシウム合金材料をサンプルD3と称する。また、2回目の多軸鍛造処理を実施していないマグネシウム合金材料をサンプルD0と称する。
【0095】
図12には、各サンプル群における累積歪みΣεと硬度の関係を示す。
【0096】
この図から、時効処理を実施していないサンプルA群に比べて、時効処理を行った各サンプルB群〜D群では、いずれも硬度が向上していることがわかる。
【0097】
この原因として、(1)時効による析出物が転位の移動を妨げ、これにより変形抵抗が向上したこと、ならびに(2)変形抵抗が上昇して、転位の移動がより困難になることにより、変形双晶が多数発生したことが考えられる。
【0098】
次に、各サンプルを用いて引張試験を行った。引張試験は、室温で、歪み速度10−3/秒で実施した。
【0099】
図13には、サンプルA1およびA2の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示す。図には、比較のため、焼鈍処理のままのマグネシウム合金材料サンプル(A0)の結果を同時に示した。
【0100】
この図から、サンプルA1およびA2では、焼鈍処理のままのサンプルA0に比べて、最大応力および降伏応力が増大していることがわかる。これは、変形抵抗の向上によるものである。
【0101】
図14には、サンプルB1およびB2の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示す。この図から明らかなように、いずれのサンプルにおいても、高い最大応力および降伏応力が得られていることがわかる。また、時効処理後の多軸鍛造処理により、最大強度がさらに向上することがわかる。
【0102】
図15には、サンプルC1およびC2の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示す。図には、比較のため、時効処理のままのマグネシウム合金材料サンプル(C0)の結果を同時に示した。
【0103】
この図から、サンプルC1およびC2では、時効処理のままのサンプルC0に比べて、最大応力および降伏応力が増大していることがわかる。また、2回目の多軸鍛造処理のパス数を増やすことにより、最大強度がさらに向上することがわかる。
【0104】
図16には、サンプルD0〜D3の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示す。
【0105】
この結果から、いずれのサンプルにおいても、高い最大応力および降伏応力が得られていることがわかる。また、2回目の多軸鍛造処理のパス数を増やすことにより、最大強度がさらに向上することがわかる。
【0106】
このように、本発明による方法により、マグネシウム合金のような難加工性金属材料の材料特性が向上することが確認された。また、全伸びも焼鈍剤A0と同等か半分程度であり、巨大ひずみ加工によっても伸びは損なわれていない。これは、鍛造毎の加工ひずみ量が小さく、集合組織が形成されにくいためと考えられる。特に、時効処理と多軸鍛造処理とを組み合わせた場合、多軸鍛造処理の少ないパス数で、材料特性(最大強度、降伏応力、伸び等)を有意に向上させることが可能となる。
【0107】
以上のように、本発明による多軸鍛造処理方法の適用により、難加工性金属材料内に多量の歪みが導入されることが確認された。また、これにより、難加工性金属材料の結晶粒が微細化され、材料の各特性が有意に向上することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、マグネシウム合金など、難加工性金属材料の加工方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
4 被加工体
100 装置
110 被加工体
110A 当初の底面
110B 当初の側面
110C 当初の側面
120 台
130 鍛造手段
140 被加工体配向制御手段
141 区画
200 組織
210(210A〜210C) n次変形双晶(ただしnは1以上)
220(220A〜220C) (n+1)次変形双晶(ただしnは1以上)
【技術分野】
【0001】
本発明は、難加工性金属材料の鍛造方法に関し、特に、難加工性金属材料の多軸鍛造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、例えばマグネシウム合金のような難加工性金属材料に、圧延処理または鍛造処理などの一般的な加工処理を適用すると、容易にワレや欠陥が生じてしまうことが知られている。従って、難加工性金属材料は、加工硬化処理による大きな強度向上効果を期待することは難しく、このため、難加工性金属材料の適用分野は、強度があまり重要視されない、特定の分野に限定されているのが現状である。例えば、マグネシウム合金は、アルミニウム合金を超える比強度を有するにも関わらず、その適用分野は、小型電子機器用の部品など、限られた一部の用途に留まっている。
【0003】
このような問題に対処するため、近年、降温多軸鍛造処理と呼ばれる鍛造方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−291488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の降温多軸鍛造処理方法では、鍛造の1パス毎に、鍛造方向を変えるとともに、被加工体の温度を低下させることにより、最終的に被加工体に多くの歪みを導入することができる。従って、難加工性金属材料からなる被加工体に降温多軸鍛造処理を適用した場合、結晶粒が微細化し、強度を向上させることができると予想される。
【0006】
しかしながら、このような降温多軸鍛造処理方法では、被加工体の温度、各鍛造パス時の導入歪み量など、加工の際に制御すべき条件が多岐にわたり、操作が煩雑で大変であるという問題がある。また、処理の際には、雰囲気の温度を高精度で調節することの可能な高温用の電気炉が必要になるという問題がある。従って、降温多軸鍛造処理方法は、製品の大量生産や低コスト化が必要となるような、産業レベルでの適用には不向きである。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、従来の降温多軸鍛造処理方法に比べて、産業レベルでの適用により適したより簡便な工程で、難加工性材料に多量の歪みを導入することの可能な加工方法を提供することを目的とする。また、そのような方法を実施するための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、難加工性金属材料を多軸鍛造処理する方法であって、
(a)難加工性金属材料からなる被加工体を準備するステップと、
(b)前記被加工体を、相互に直交する3つの鍛造方向に沿って順次鍛造する処理を、1サイクル以上実施するステップと、
を有し、
前記ステップ(b)は、最大100℃以下の温度環境において、各1回の鍛造で導入される歪み量が0.01〜0.2の範囲となるように行われることを特徴とする方法が提供される。
【0009】
ここで、本発明による方法において、前記ステップ(b)は、室温の環境下で実施されても良い。
【0010】
また、本発明による方法において、前記ステップ(b)は、2サイクル〜40サイクル実施されても良い。
【0011】
また、本発明による方法では、前記ステップ(b)において、1回の鍛造は、3×10−3/sec〜10/secの範囲の歪み速度で実施されても良い。
【0012】
また、本発明による方法において、前記ステップ(b)は、前記被加工体に、0.5〜6.4の範囲の総歪み量が導入されるまで繰り返されても良い。
【0013】
また、本発明による方法において、前記難加工性金属材料は、マグネシウム合金、チタン合金および銅合金からなる群中から選定された材料であっても良い。
【0014】
また、本発明による方法は、さらに、前記ステップ(b)の後、
(c)前記被加工体を時効処理するステップ
を有しても良い。
【0015】
この場合、前記時効処理するステップは、
前記被加工体を、373K〜473Kの温度範囲で時効処理するステップを有しても良い。
【0016】
また、本発明では、難加工性金属材料を多軸鍛造処理する装置であって、
前述のいずれかの方法を実施することの可能な装置が提供される。
【0017】
さらに、本発明では、難加工性金属材料を多軸鍛造処理する装置であって、
難加工性金属材料からなる被加工体を支持する台と、
一つの鍛造方向に沿って前記被加工体を鍛造する鍛造手段と、
前記被加工体の前記鍛造手段に対する配向方向を調整することの可能な、被加工体配向制御手段と、
を有し、
前記鍛造手段は、最大100℃以下の温度環境において、1回の鍛造で、前記一つの鍛造方向に沿って前記被加工体に、0.01〜0.2の範囲の歪み量を導入することができることを特徴とする装置が提供される。
【0018】
ここで、本発明による装置において、前記鍛造手段の前記一つの鍛造方向は、鉛直方向であって、
前記被加工体配向制御手段は、前記被加工体の鍛造される表面が上面となるように動作しても良い。
【0019】
また、本発明による装置において、前記被加工体配向制御手段は、1回の鍛造の後に、前記被加工体の前記台との接触面が前記被加工体の側面の一つとなり、前記被加工体の側面の一つが前記台との接触面となるように、前記被加工体を回転させても良い。
【0020】
さらに、本発明では、
組織内に、
少なくとも3つの異なる方向に延在する、幅が5μm以下の第1の変形双晶を複数含み、
少なくとも一つの前記第1の変形双晶の中には、より微細な第2の変形双晶が形成されていることを特徴とする金属材料が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、従来の降温多軸鍛造処理法に比べて、産業レベルでの適用により適したより簡便な工程で、難加工性材料に多量の歪みを導入することの可能な加工方法を提供することができる。また、そのような方法を実施するための装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】多軸鍛造処理法の一例を概略的に示した図である。
【図2】本発明による難加工性金属材料を多軸鍛造処理する方法のフローチャートの一例である。
【図3】本発明による方法によって得られた難加工性金属材料組織の一例を模式的に示した図である。
【図4】本発明による方法によって得られたマグネシウム合金の組織のTEM写真である。
【図5】本発明による方法を実施するための装置の一例を模式的に示した図である。
【図6】本発明による方法を実施するための装置を用いて、被加工体を鍛造する際の各工程を模式的に示した図である。
【図7】本発明による方法を実施するための装置を用いて、被加工体を鍛造する際の各工程を模式的に示した図である。
【図8】マグネシウム合金における累積歪み量Σεと真応力σ(MPa)の関係を示したグラフである。
【図9】各鍛造パス後のサンプルの光学顕微鏡写真を示した図である。
【図10】結晶方位分散分析装置による、4パス後のマグネシウム合金サンプルの組織観察結果を示した図である。
【図11】鍛造パス数とサンプルの硬度の関係を示した図である。
【図12】各サンプルにおける累積歪みΣεと硬度の関係を示したグラフである。
【図13】サンプルA1およびA2の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示したグラフである。
【図14】サンプルB1およびB2の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示したグラフである。
【図15】サンプルC1およびC2の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示したグラフである。
【図16】サンプルD0〜D3の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一般に、マグネシウム合金等の難加工性材料は、加工性が悪く、圧延処理または鍛造処理などの一般的な加工処理を施工すると、容易にワレや欠陥が生じてしまうことが知られている。従って、難加工性金属材料の場合、加工により多くの歪みを導入することはできず、加工硬化処理による大きな強度向上効果を期待することは難しいという問題がある。
【0024】
このため、近年、降温多軸鍛造処理と呼ばれる鍛造方法が提案されている。この方法では、鍛造の1パス毎に、鍛造方向が長手方向となるようにし、すなわち鍛造方向を相互に直交する3方向の順(例えば、X方向→Y方向→Z方向の順)に変化させるとともに、被加工体の温度を低下させる。この方法では、3方向の鍛造を繰り返すことにより、最終的に被加工体に多くの歪みを導入することができる。従って、難加工性金属材料からなる被加工体に降温多軸鍛造処理を適用した場合、結晶粒が微細化し、材料強度を向上させることができると考えられる。
【0025】
しかしながら、このような降温多軸鍛造処理では、被加工体の温度、各鍛造パス時の導入歪み量など、加工の際に制御すべき条件が多岐にわたり、操作が煩雑で大変であるという問題がある。また、処理の際には、雰囲気の温度を高精度で調節することの可能な高温用の電気炉が必要になるという問題がある。従って、降温多軸鍛造処理方法は、実験室レベルでの適用は可能であっても、製品の大量生産や低コスト化が必要となる、産業レベルでの適用には不向きである。
【0026】
これに対して、本願発明者らによって見出された新たな方法(本発明の方法)は、以下に詳細を示すように、制御すべき加工条件が少なく、より簡便に実施することができるという特徴を有する。また、本発明の方法は、室温近傍(最大でも100℃以下、例えば50℃)の温度で実施することができるため、高温の電気炉も不要である。従って、大量生産に適し、低コスト化も実現できるという特徴を有する。
【0027】
以下、図面を参照して、本発明について詳しく説明する。
【0028】
本発明は、難加工性金属材料を多軸鍛造処理する方法であって、
(a)難加工性金属材料からなる被加工体を準備するステップと、
(b)前記被加工体を、相互に直交する3つの鍛造方向に沿って順次鍛造する処理を、1サイクル以上実施するステップと、
を有し、
前記ステップ(b)は、最大100℃以下の温度環境において、各1回の鍛造で導入される歪み量が0.01〜0.2の範囲となるように行われることを特徴とする方法に関する。
【0029】
本発明による方法は、「多軸鍛造処理」を基本とするものである。ここで、「多軸鍛造処理」とは、1方向での鍛造処理毎に、長手方向が圧縮方向となるようにして、被加工材料の鍛造方向を変えて圧縮を繰り返す加工処理方法を意味する。
【0030】
図1は、多軸鍛造処理方法を概略的に説明する図である。まず最初に、図1(1)に示すような矩形状の被加工体(サンプル)4が準備される。次に、この被加工体4が第1の方向(X軸方向)に沿って鍛造される(第1回目のパス)。
【0031】
次に図1(2)に示すように、被加工体4が第2の方向(Y軸方向)に沿って鍛造される(第2回目のパス)。さらに、図1(3)に示すように、被加工体4が第3の方向(Z軸方向)に沿って鍛造される(第3回目のパス)。3回分のパスによって、被加工体4は、外観上、実質的に最初の形状に戻る(図1(4))。
【0032】
ここで、被加工体4のアスペクト比は、図1(1)〜(3)に示す各圧縮軸方向(X、YおよびZ方向)からの鍛造による圧縮率によって決まる。換言すれば、被加工体4のアスペクト比は、採用するパス毎の圧縮率によって変化させることができる。例えば、図1の例では、被加工体1のアスペクト比は、1.0(Z方向):1.49(Y方向):2.22(X方向)となっており、これは、各方向での1回のパスにおいて、被加工材料4に導入される加工歪み量εが、いずれも0.8の場合に相当する。鍛造毎の加工歪み量が0.01〜0.2の場合、このアスペクト比は必要ではないが、後の説明と理解が容易であるため、このアスペクト比を有する被加工体を利用する。ちなみに鍛造毎の加工ひずみが0.1の場合、アスペクト比は1.11:1.10:1.00となる。
【0033】
このような「多軸鍛造処理」方法では、各方向からの鍛造パスを順次繰り返すことにより、結果的に、被加工体4中に多量の歪みを導入することができる。
【0034】
ただし、前述のように、難加工性材料は、加工性が悪いため、難加工性材料に対して、1回のパスで大きな歪みを導入しようとすると、容易にワレや欠陥が生じてしまう。そこで、本発明では、各1回の鍛造(1パスとも言う)で導入される歪み量を少なくして、各方向の鍛造を実施することに特徴がある。具体的には、各1回の鍛造(1パスとも言う)で導入される歪み量は、0.01〜0.2の範囲である。そのため、本発明では、鍛造毎の加工歪み量が小さく、鍛造方向は必ずしも被加工体の長手方向である必要はない。
【0035】
これにより、難加工性金属材料であっても、多軸鍛造処理後に、被加工体にワレおよび/または欠陥が生じることを回避することができる。また、鍛造毎の加工ひずみが小さいため、結果として加工による集合組織の形成を防ぐことができ、加工性の低下を防ぐことができる。
【0036】
図2には、本発明による方法のフローの一例を模式的に示す。本発明による方法は、難加工性金属材料からなる被加工体を準備するステップ(S110)と、この被加工体を、相互に直交する3つの鍛造方向に沿って、順次鍛造する処理を、1サイクル以上実施するステップ(S120)と、を有する。また、本発明による方法は、さらに任意で、多軸鍛造処理された被加工体を時効処理するステップ(S130)を含んでも良い。また多軸鍛造するステップ(S120)と時効処理するステップ(S130)を繰り返しても良い。この場合、時効後の回復軟化による強度低下を加工硬化によって補うことができる。
【0037】
以下、各ステップについて、詳しく説明する。
【0038】
(1.被加工体を準備するステップ)
まず最初に、難加工性金属材料からなる被加工体が準備される。
【0039】
ここで、「難加工性金属材料」とは、室温での引張試験における破断伸びが40%以下の金属および合金を表す。「難加工性金属材料」には、例えば、マグネシウム合金、チタン合金、銅合金、鉄合金、ジルコニウム合金、モリブデン合金、およびニオブ合金などが含まれる。
【0040】
マグネシウム合金の一例は、AZ系マグネシウム合金(アルミニウムと亜鉛とを含むマグネシウム合金)、希土類元素添加マグネシウム合金、およびCa添加マグネシウム合金等である。
【0041】
チタン合金の一例は、アルミニウム添加チタン合金、スズ添加チタン合金、およびバナジウム添加チタン合金等である。
【0042】
銅合金の一例は、銅−チタン合金、およびニッケル−シリコン添加銅合金である。
【0043】
鉄合金の一例は、マルテンサイト相を含む鋼等である。
【0044】
被加工体の平均結晶粒径は、特に限られない。ただし、多軸鍛造処理後に、微細な結晶粒からなる材料組織を得るためには、平均結晶粒径が大きい被加工体ほど、多軸鍛造処理ステップにおいて、より多くの歪みを被加工体に導入する必要がある。
【0045】
(2.鍛造処理ステップ)
次に、前述の被加工体がX方向、Y方向、およびZ方向(図1参照)に沿って、順次鍛造処理される。
【0046】
本発明では、多軸鍛造処理は、室温近傍(最大でも100℃以下の温度)で実施される。従って、降温多軸鍛造処理方法において必要となる、高温の電気炉のような設備は不要であり、低コストかつ簡便な鍛造方法を提供することができる。なお、ここでの「温度」は、主として被加工体がさらされる環境側の温度を意味する。これは、被加工体の温度は、鍛造の実施によってある程度上昇するため、被加工体の温度で「温度」を規定すると、その値が曖昧になるためである。
【0047】
また前述のように、各方向における1パスの鍛造において、被加工体に導入される歪み量は、0.01〜0.2の範囲である。この値は、降温多軸鍛造処理方法において、1回のパスで被加工体に導入される典型的な歪み量、すなわち0.6〜0.8に比べて有意に小さい。これにより、難加工性金属材料であっても、多軸鍛造処理の後に、被加工体にワレおよび/または欠陥が生じることを回避することができる。
【0048】
なお、1回の鍛造パスにおいて導入される歪み量は、正確には、被加工体の材料等に依存する。例えば、被加工体がマグネシウム合金の場合、1回の鍛造パスにおいて導入される歪み量は、0.1〜0.2程度であることが好ましい。ただし、いずれの難加工性金属材料の場合も、歪み量は、最大でも0.2以内とされる。これを超える歪み量を一度に加えると、鍛造後にワレが生じる可能性が高まるからである。
【0049】
また、多軸鍛造処理によって被加工体に導入される総歪み量(Σε)は、被加工体を構成する材質にもよるが、1.0〜40程度であることが好ましい。
【0050】
また、本発明では、各パスでの歪み速度は、通常、3×10−3/sec〜10/secの範囲である。この歪み速度は、各パスにおいて実質的に一定であっても良い。
【0051】
また、X、YおよびZの各鍛造方向での1回ずつの鍛造を1サイクルとした場合、このサイクル数は、1サイクル以上であることが好ましく、2〜40サイクルの範囲であることがより好ましい。ここで、サイクル数は、整数に限られないことは、明らかであろう。すなわち、サイクル数は、整数+1/3または整数+2/3の値であっても良く、これらのサイクル数は、それぞれ、X方向→Y方向→Z方向→...の各鍛造がX方向での鍛造で完了する場合、およびY方向で完了する場合を意味する。また、この鍛造方向は、被加工体の状況や形状によって、途中でX方向→Z方向→Y方向のように変えても良い。
【0052】
(3.時効処理ステップ)
次に、必要な場合、被加工体に、さらに時効処理を行っても良い。時効処理の温度は、これに限られるものではないが、例えば、373K〜473Kの範囲である。また、時効処理の時間は、これに限られるものではないが、例えば、数分〜数時間の範囲である。時効処理は、例えば、オイルバス中で実施されても良い。
【0053】
以上の工程を経て、多量の歪みが導入された、難加工性金属材料からなる被加工体を得ることができる。
【0054】
このような方法で得られる難加工性金属材料の組織は、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察した場合、少なくとも3つの異なる方向に延在する、幅が5μm以下の1次変形双晶を多数含み、少なくとも一つの前記1次変形双晶の中には、より微細な2次変形双晶が形成されていると言う特徴を有する。
【0055】
ここで、変形双晶とは、ある面に平行な剪断変形によって形成された母相と同じ結晶構造を有する方位の異なる領域を意味する。また、1次変形双晶の「幅」とは、1次変形双晶の縦および横の寸法のうち、短い方の長さを意味する。この「幅」は、特に、1μm以下であることが好ましい。一方、1次変形双晶の長い方の長さ、すなわち全長は、特に限られないが、例えば、0.1μm〜数百μmの範囲であり、これは、変形前の結晶粒径に依存する。また、2次変形双晶の全長および幅は、特に限られないが、通常の場合、全長は、約0.2μm〜約数百μmの範囲であり、幅は、約0.1μm〜約50μmの範囲である。
【0056】
また、「変形双晶を多数含む」とは、TEM観察の際に、一視野(倍率:5000倍〜1万倍)において、組織内に少なくとも5個以上の変形双晶が認められることを意味する。なお、通常の場合、変形双晶は、少なくとも10個以上認められる場合が多いであろう。
【0057】
図3には、本発明による方法によって得られた難加工性金属材料組織の一例を模式的に示す。この図は、TEM装置による1万倍の倍率で得られたものである。
【0058】
図3に示すように、組織200内には、多数の1次変形双晶210が認められる。また、1次変形双晶210の少なくとも1つには、内部に2次変形双晶220が形成されていることがわかる。例えば、図3の例では、n次(ただしnは1以上)変形双晶210Aの内部に、複数の(n+1)次の高次変形双晶220Aが形成されており、n次変形双晶210Bの内部に、複数の(n+1)次の高次変形双晶220Bが形成されており、n次変形双晶210Cの内部に、複数の(n+1)次変形双晶220Cが形成されている。
【0059】
図4には、多軸鍛造処理後のマグネシウム合金の実際の組織のTEM写真(倍率1万倍)の一例を示す。このマグネシウム合金は、室温で、合計20パス(サイクル数6+2/3回)の多軸鍛造処理後に得られたものである。1回のパスでの導入される歪み量εは、0.1である。
【0060】
この組織写真から明らかなように、本発明による方法で調製されたマグネシウム合金の組織は、多くの1次変形双晶を有し、これらの1次変形双晶は、少なくとも3方向に延在している。また、いくつかの1次変形双晶内には、2次変形双晶が形成されていることが確認される。図10からもわかるとおり、一次変形双晶は非常に大きい。従って、図4のTEM写真の微細な変形双晶は、変形双晶内に形成された高次双晶変形の発達によるものであることが理解できる。
【0061】
このように、本発明による方法で処理された難加工性金属材料では、結晶粒が微細化され、多数の1次変形双晶および2次変形双晶が形成され、これにより、強度等の材料特性を向上させることができる。
【0062】
(本発明による装置)
次に、本発明による方法を実施するための装置について説明する。
【0063】
本発明による方法を実施するための装置は、少なくとも、
被加工体を支持する台と、
少なくとも一つの鍛造方向に沿って、前記被加工体を鍛造する鍛造手段と、
前記被加工体の前記鍛造手段に対する配向方向を調整することの可能な、被加工体配向制御手段と、
を有する。
【0064】
ただし、鍛造手段が、相互に垂直な3方向(X方向、Y方向およびZ方向)のそれぞれに沿って、被加工体を鍛造することが可能である場合、被加工体配向制御手段は、不要である。
【0065】
図5には、そのような本発明による方法を実施するための装置の一例を模式的に示す。この装置100は、被加工体110を支持する台120と、一つの鍛造方向(図の例では、Z方向)に沿って、被加工体110を鍛造する鍛造手段130と、被加工体110の鍛造手段130に対する配向方向を調整することの可能な、被加工体配向制御手段140とを有する。
【0066】
鍛造手段130は、図5のZ方向の1回のパスで、被加工体110に対して、0.01〜0.2の歪みを導入するように動作する。
【0067】
また、被加工体配向制御手段140は、この図の例では、X方向およびY方向に、4行×4列の16個の区画141A〜141Pを有する板状部材を有する。被加工体配向制御手段140は、台120に埋設されている。
【0068】
なお、通常の場合、装置100は、さらに、被加工体110が鍛造される際に、被加工体110の位置ずれを防止する固定部材等を有するが、そのような部材は、本発明に特有のものではないため、ここではその説明を省略する。
【0069】
次に、このような装置100の動作について説明する。図6および図7には、装置100を用いて、被加工体110に対して本発明による多軸鍛造処理方法を適用する際の各工程を模式的に示した図である。
【0070】
まず、図6(a)に示すように、図6のZ方向に沿って、鍛造手段130により、被加工体110の鍛造(第1パス)を行う。この段階では、被加工体110の底面110Aが台120(正確には、台120に埋設された被加工体配向制御手段140)と接触している。これにより、被加工体110は、図6(b)に示すような形状となる。
【0071】
次に、図6(c)に示すように、台120に埋設された被加工体配向制御手段140の区画141のうち、被加工体110の底面110Aの一部と接触する区画141(例えば区画141Fおよび141G)、およびこれと同じX座標にある区画141(例えば、区画141E、141H)が、Z方向に沿って緩やかに上昇する。
【0072】
これにより、図6(d)に示すように、被加工体110の底面110Aが点Q1を回転中心とした状態で持ち上げられる。最終的に、図6(e)に示すように、被加工体110がXZ平面において、半時計方向に90゜回転すると、被加工体110の当初の底面110Aは、YZ平面と平行な側面110Aとなる。また今度は、被加工体110の当初の側面110Bが、台120(正確には、台120に埋設された被加工体配向制御手段140)と接触する。ここで、必要な場合、区画141は、Y軸を回転軸として回転し、これにより被加工体を回転させても良い。
【0073】
図6(e)に示すように、この状態で、鍛造手段130により、Z方向に沿って、被加工体110の鍛造(第2パス)が行われる。
【0074】
これにより、被加工体110は、図7(a)に示すような形状となる。この段階では、被加工体110の側面110B(見た目上、被加工体110の新たな底面)が台120(正確には、台120に埋設された被加工体配向制御手段140)と接触している。
【0075】
次に、図7(b)に示すように、台120に埋設された被加工体配向制御手段140の区画141のうち、被加工体110の側面110Bの一部と接触する区画141(例えば区画141Fおよび141J)、およびこれと同じY座標にある区画141(例えば、区画141B、141N)が、Z方向に緩やかに上昇する。
【0076】
これにより、図7(c)に示すように、被加工体110の側面110Bが点Q2を回転中心とした状態で持ち上げられる。最終的に、図7(d)に示すように、被加工体110がYZ平面において、時計方向に90゜回転すると、被加工体110の側面110Bは、XZ平面と平行な新たな側面110Bとなる。また今度は、被加工体110のXZ平面と平行な側面110Cが、台120(正確には、台120に埋設された被加工体配向制御手段140)と接触するようになる。ここで、必要な場合、区画141は、X軸を回転軸として回転し、これにより被加工体を回転させても良い。
【0077】
図7(d)に示すように、この状態で、鍛造手段130により、Z方向に沿って、被加工体110の鍛造(第3パス)が行われる。
【0078】
以上の工程を繰り返すことにより、装置100により、被加工体110に対して、本発明による多軸鍛造処理方法を実施することができる。
【0079】
なお、図5に示した装置、および図6,図7に示した工程は、一例であって、別の構成の装置、および別の工程により、被加工体110に対して、本発明による方法を実施しても良いことは、明らかであろう。
【実施例】
【0080】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0081】
(実施例1)
表1に示す組成のAZ系のマグネシウム合金材料(大阪冨士工業株式会社製:AZ61)を準備した。合金材料の寸法は、縦(X方向)20mm×横(Y方向)20mm×高さ(Z方向)20mmである。平均結晶粒径は、約62μmであった。
【0082】
【表1】
次に、この合金材料を用いて、多軸鍛造処理を実施した。まず最初に、室温(300K)で、合金材料の第1の方向(X方向)に沿って、合金材料を鍛造した(第1パス)。第1パスにより導入される歪み量εは、0.1とした。次に、合金材料の第2の方向(Y方向)に沿って、合金材料を鍛造した(第2パス)。第2パスにより導入される歪み量εは、0.1とした。次に、合金材料の第3の方向(Z方向)に沿って、合金材料を鍛造した(第3パス)。第3パスにより導入される歪み量εは、0.1とした。以上のサイクルを1サイクルとし、合金材料を最大13サイクル鍛造した(総パス数は、39)。以上の多軸鍛造工程により、合金材料には、最大3.9の累積歪みΣεが導入された。各パスにおいて、歪み速度は、いずれも3×10−3/secとした。
【0083】
図8には、38パスまでの累積歪み量Σεと真応力σ(MPa)の関係を示した。
【0084】
次に、パス数が4回(サイクル数1+1/3)の合金材料サンプル(総歪み量0.4)と、パス数が38回(サイクル数12+2/3)の合金材料サンプル(総歪み量3.8)とを用いて、多軸鍛造処理後の組織の観察を行った。
【0085】
図9には、各サンプルの光学顕微鏡の写真を示す。図において、(a)は、鍛造前の組織を示している。また、(b)および(c)は、それぞれ、パス数が4回および38回のサンプルにおける組織を示している。
【0086】
図9の(a)および(b)の比較では、組織間に巨視的な差異は認められないが、図9の(c)では、結晶粒径が判別し難いほど、結晶が微細化していることがわかる。また、図10には、結晶方位分散分析装置を用いて、パス数が4回のサンプルの組織を観察した結果を示す。この図から、組織内には、変形双晶が多数形成されていること(右上の斜め方向に延在する灰色線状組織)、およびキンク帯(中央部の黒色線状部分)による結晶粒の分断が生じていることがわかる。従って、微視的には、パス数が4回のサンプルにおいても、鍛造前のサンプルに比べて、大きな組織変化が生じていると言える。すなわち、難加工材の一つであるMg合金に本発明を適用することにより、室温での巨大歪み加工が可能となった。また、その結果、変形双晶等の結晶粒微細化機構の働きにより、結晶粒が微細化した。
【0087】
図11には、累積歪み量Σεとサンプルの硬度Hvの関係を示す。この結果から、累積歪み量Σε、すなわち鍛造のパス数を増加させるほど、硬度が上昇する傾向にあることがわかる。特に、鍛造のパス数が40に近づき、累積歪み量Σεが4に近くになると、合金材料の硬度は、1200MPaという、マグネシウム合金としては異例の、極めて高い値に達することが予想される。
【0088】
(実施例2)
次に、以下の方法で、各種サンプルを調製し、マグネシウム合金材料の材料特性について評価した。
【0089】
(サンプルA群)
まず、前述の実施例1と同様の方法により、マグネシウム合金材料に対して多軸鍛造処理を実施し、パス数、すなわち累積歪みΣεが異なる多数のサンプルを調製した(以下、サンプルA群と称する)。多軸鍛造処理により、マグネシウム合金材料には、最大で2.0の累積歪みΣεが導入された。特に、累積歪みΣεが1.0のマグネシウム合金材料をサンプルA1と称し、累積歪みΣεが2.0のマグネシウム合金材料をサンプルA2と称する。
【0090】
(サンプルB群)
サンプルA2に対して、403Kで1時間の時効処理を行った。さらに、時効処理後に、再度、このサンプルに対して、多軸鍛造処理を行った。2回目の多軸鍛造処理は、1回目の多軸鍛造処理と同条件で実施した。これにより、2回目の多軸鍛造処理のパス数、すなわち累積歪みΣεが異なる多数のサンプルを調製した(以下、サンプルB群と称する)。特に、2回目の多軸鍛造処理での累積歪みΣεが0.2のマグネシウム合金材料をサンプルB2と称する。また、2回目の多軸鍛造処理を実施していないマグネシウム合金材料をサンプルB1と称する。
【0091】
(サンプルC群)
まず最初に時効処理を行ってから、各パス数の多軸鍛造処理を実施することにより、累積歪みΣεが異なる多数のサンプルを調製した(以下、サンプルC群と称する)。時効処理の条件は、403K、1時間である。
【0092】
多軸鍛造処理により、マグネシウム合金材料には、最大で1.7の累積歪みΣεが導入された。特に、累積歪みΣεが0.5のマグネシウム合金材料をサンプルC1と称し、累積歪みΣεが1.0のマグネシウム合金材料をサンプルC2と称し、累積歪みΣεが1.7のマグネシウム合金材料をC3と称する。
【0093】
(サンプルD群)
まずサンプルA群と同様の条件で、多軸鍛造処理を行い、1.0の累積歪みΣεを導入した。次に、このマグネシウム合金材料を時効処理した。時効処理の条件は、403K、1時間である。さらに、このマグネシウム合金材料に対して、2回目の多軸鍛造処理を行い、累積歪みΣεが異なる多数のサンプルを調製した(以下、サンプルD群と称する)。
【0094】
特に、2回目の多軸鍛造処理での累積歪みΣεが0.4のマグネシウム合金材料をサンプルD1と称し、2回目の多軸鍛造処理での累積歪みΣεが0.8のマグネシウム合金材料をサンプルD2と称し、2回目の多軸鍛造処理での累積歪みΣεが1.0のマグネシウム合金材料をサンプルD3と称する。また、2回目の多軸鍛造処理を実施していないマグネシウム合金材料をサンプルD0と称する。
【0095】
図12には、各サンプル群における累積歪みΣεと硬度の関係を示す。
【0096】
この図から、時効処理を実施していないサンプルA群に比べて、時効処理を行った各サンプルB群〜D群では、いずれも硬度が向上していることがわかる。
【0097】
この原因として、(1)時効による析出物が転位の移動を妨げ、これにより変形抵抗が向上したこと、ならびに(2)変形抵抗が上昇して、転位の移動がより困難になることにより、変形双晶が多数発生したことが考えられる。
【0098】
次に、各サンプルを用いて引張試験を行った。引張試験は、室温で、歪み速度10−3/秒で実施した。
【0099】
図13には、サンプルA1およびA2の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示す。図には、比較のため、焼鈍処理のままのマグネシウム合金材料サンプル(A0)の結果を同時に示した。
【0100】
この図から、サンプルA1およびA2では、焼鈍処理のままのサンプルA0に比べて、最大応力および降伏応力が増大していることがわかる。これは、変形抵抗の向上によるものである。
【0101】
図14には、サンプルB1およびB2の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示す。この図から明らかなように、いずれのサンプルにおいても、高い最大応力および降伏応力が得られていることがわかる。また、時効処理後の多軸鍛造処理により、最大強度がさらに向上することがわかる。
【0102】
図15には、サンプルC1およびC2の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示す。図には、比較のため、時効処理のままのマグネシウム合金材料サンプル(C0)の結果を同時に示した。
【0103】
この図から、サンプルC1およびC2では、時効処理のままのサンプルC0に比べて、最大応力および降伏応力が増大していることがわかる。また、2回目の多軸鍛造処理のパス数を増やすことにより、最大強度がさらに向上することがわかる。
【0104】
図16には、サンプルD0〜D3の引張試験によって得られた応力と歪みの関係を示す。
【0105】
この結果から、いずれのサンプルにおいても、高い最大応力および降伏応力が得られていることがわかる。また、2回目の多軸鍛造処理のパス数を増やすことにより、最大強度がさらに向上することがわかる。
【0106】
このように、本発明による方法により、マグネシウム合金のような難加工性金属材料の材料特性が向上することが確認された。また、全伸びも焼鈍剤A0と同等か半分程度であり、巨大ひずみ加工によっても伸びは損なわれていない。これは、鍛造毎の加工ひずみ量が小さく、集合組織が形成されにくいためと考えられる。特に、時効処理と多軸鍛造処理とを組み合わせた場合、多軸鍛造処理の少ないパス数で、材料特性(最大強度、降伏応力、伸び等)を有意に向上させることが可能となる。
【0107】
以上のように、本発明による多軸鍛造処理方法の適用により、難加工性金属材料内に多量の歪みが導入されることが確認された。また、これにより、難加工性金属材料の結晶粒が微細化され、材料の各特性が有意に向上することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、マグネシウム合金など、難加工性金属材料の加工方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
4 被加工体
100 装置
110 被加工体
110A 当初の底面
110B 当初の側面
110C 当初の側面
120 台
130 鍛造手段
140 被加工体配向制御手段
141 区画
200 組織
210(210A〜210C) n次変形双晶(ただしnは1以上)
220(220A〜220C) (n+1)次変形双晶(ただしnは1以上)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難加工性金属材料を多軸鍛造処理する方法であって、
(a)難加工性金属材料からなる被加工体を準備するステップと、
(b)前記被加工体を、相互に直交する3つの鍛造方向に沿って順次鍛造する処理を、1サイクル以上実施するステップと、
を有し、
前記ステップ(b)は、最大100℃以下の温度環境において、各1回の鍛造で導入される歪み量が0.01〜0.2の範囲となるように行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)は、室温の環境下で実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)は、2サイクル〜40サイクル実施されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)において、1回の鍛造は、3×10−3/sec〜10/secの範囲の歪み速度で実施されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)は、前記被加工体に、0.5〜6.4の範囲の総歪み量が導入されるまで繰り返されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記難加工性金属材料は、マグネシウム合金、チタン合金および銅合金からなる群中から選定された材料であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
さらに、前記ステップ(b)の後、
(c)前記被加工体を時効処理するステップ
を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記時効処理するステップは、
前記被加工体を、373K〜473Kの温度範囲で時効処理するステップを有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
難加工性金属材料を多軸鍛造処理する装置であって、
前記請求項1乃至8のいずれか一つに記載の方法を実施することの可能な装置。
【請求項10】
難加工性金属材料を多軸鍛造処理する装置であって、
難加工性金属材料からなる被加工体を支持する台と、
一つの鍛造方向に沿って前記被加工体を鍛造する鍛造手段と、
前記被加工体の前記鍛造手段に対する配向方向を調整することの可能な、被加工体配向制御手段と、
を有し、
前記鍛造手段は、最大100℃以下の温度環境において、1回の鍛造で、前記一つの鍛造方向に沿って前記被加工体に、0.01〜0.2の範囲の歪み量を導入することができることを特徴とする装置。
【請求項11】
前記鍛造手段の前記一つの鍛造方向は、鉛直方向であって、
前記被加工体配向制御手段は、前記被加工体の鍛造される表面が上面となるように動作することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記被加工体配向制御手段は、1回の鍛造の後に、前記被加工体の前記台との接触面が前記被加工体の側面の一つとなり、前記被加工体の側面の一つが前記台との接触面となるように、前記被加工体を回転させることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
組織内に、
少なくとも3つの異なる方向に延在する、幅が5μm以下の第1の変形双晶を複数含み、
少なくとも一つの前記第1の変形双晶の中には、より微細な第2の変形双晶が形成されていることを特徴とする金属材料。
【請求項1】
難加工性金属材料を多軸鍛造処理する方法であって、
(a)難加工性金属材料からなる被加工体を準備するステップと、
(b)前記被加工体を、相互に直交する3つの鍛造方向に沿って順次鍛造する処理を、1サイクル以上実施するステップと、
を有し、
前記ステップ(b)は、最大100℃以下の温度環境において、各1回の鍛造で導入される歪み量が0.01〜0.2の範囲となるように行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)は、室温の環境下で実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)は、2サイクル〜40サイクル実施されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)において、1回の鍛造は、3×10−3/sec〜10/secの範囲の歪み速度で実施されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)は、前記被加工体に、0.5〜6.4の範囲の総歪み量が導入されるまで繰り返されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記難加工性金属材料は、マグネシウム合金、チタン合金および銅合金からなる群中から選定された材料であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
さらに、前記ステップ(b)の後、
(c)前記被加工体を時効処理するステップ
を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記時効処理するステップは、
前記被加工体を、373K〜473Kの温度範囲で時効処理するステップを有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
難加工性金属材料を多軸鍛造処理する装置であって、
前記請求項1乃至8のいずれか一つに記載の方法を実施することの可能な装置。
【請求項10】
難加工性金属材料を多軸鍛造処理する装置であって、
難加工性金属材料からなる被加工体を支持する台と、
一つの鍛造方向に沿って前記被加工体を鍛造する鍛造手段と、
前記被加工体の前記鍛造手段に対する配向方向を調整することの可能な、被加工体配向制御手段と、
を有し、
前記鍛造手段は、最大100℃以下の温度環境において、1回の鍛造で、前記一つの鍛造方向に沿って前記被加工体に、0.01〜0.2の範囲の歪み量を導入することができることを特徴とする装置。
【請求項11】
前記鍛造手段の前記一つの鍛造方向は、鉛直方向であって、
前記被加工体配向制御手段は、前記被加工体の鍛造される表面が上面となるように動作することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記被加工体配向制御手段は、1回の鍛造の後に、前記被加工体の前記台との接触面が前記被加工体の側面の一つとなり、前記被加工体の側面の一つが前記台との接触面となるように、前記被加工体を回転させることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
組織内に、
少なくとも3つの異なる方向に延在する、幅が5μm以下の第1の変形双晶を複数含み、
少なくとも一つの前記第1の変形双晶の中には、より微細な第2の変形双晶が形成されていることを特徴とする金属材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図4】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図4】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−121118(P2011−121118A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253042(P2010−253042)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】
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